説明

カード用コネクタ

【課題】ハウジングからのカードの無理な引抜きの防止の確実性を向上させること。
【解決手段】カード1の排出機構20は、ハウジング11内をカード1の挿入方向および排出方向に移動可能でカード1の挿入方向の前端部に前方から当接可能なスライダ21と、このスライダ21をカード排出位置の方向に付勢するコイルスプリング22と、このコイルスプリング22に抗してスライダ21をカード装着位置にロックすること、および、このロックを解除することが可能なハート型カム機構23とを有する。スライダ21には、カード1の一方の側部に形成された凹部1eに挿入可能で、剛性を有する凸部21cが形成されている。ハウジング11の内壁面には、カード装着位置に位置したスライダ21との間でカード1を挟んで位置し、凸部21cが凹部1eから抜ける方向へのカード1の移動を阻止する抜け止め部12c1が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内をカードの挿入方向および排出方向にスライド可能に設けられたスライダを含み、このスライダによりカードを排出方向に押し動かす排出機構を備えたカード用コネクタであって、カードが装着された状態において、スライダに対するカードの排出方向の移動を阻止するカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカード用コネクタは、カードが挿入されるハウジングと、このハウジング内でカードを排出方向に押し動かすことが可能な排出機構とを有する。排出機構は、ハウジング内をカードの挿入方向および排出方向に移動可能で、かつカードの挿入方向の前端部に前方から当接可能なスライダと、このスライダを所定のカード排出位置の方向に付勢する付勢手段と、スライダの所定のカード装着位置へのロック、および、このロックの解除が可能なロック手段とを有する。付勢手段はコイルスプリングであり、ハウジングとスライダとの間に設けられている。ロック手段はハート型カム機構であり、これによってスライダをロックさせるための操作と、そのロックを解除するための操作との両方がスライダの挿入方向へのプッシュ操作であるプッシュプッシュ操作式の排出機構が構成されている。
【0003】
カードの一方の側部には凹部が形成されている。スライダはカードのその一方の側部に対向するように配置されている。このスライダには、カードの一方の側部の凹部に挿入可能な屈曲部を有する片持ち板バネが設けられている。この片持ち板バネは、ハウジングにカードが挿入された初期段階において、そのカードの一方の側部に屈曲部を押し退けられて撓み、この状態のままカードの挿入が進行してカードがスライダに対する所定位置に達したときに、カードの一方の側部の凹部に屈曲部を挿入することで復元する。つまり、カードの凹部が屈曲部に引っ掛かることによって、カードの排出方向の移動が抑制される状態となる。
【0004】
ハウジングの内壁面は、スライダがカード装着位置に位置しているときに、屈曲部がカードの凹部から抜ける方向への片持ち板バネの撓みを阻止するよう形成されている。ハウジングにカードが挿入されてスライダがカード装着位置に達すると、凹部から屈曲部が抜けなくなった状態で、ロック手段(ハート型カム機構)によりスライダがカード装着位置にロックされる。これにより、ハウジングにカードが装着された状態でのカードの排出方向の移動が阻止された状態となる。
【0005】
この種の従来のカード用コネクタについては特許文献1を参照されたい。
【特許文献1】特開2006−294636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のカード用コネクタでは、ハウジングにカードが装着された状態においてカードの排出方向への移動を阻止するために、カードの凹部に片持ち板バネの屈曲部が挿入された状態で、かつ、屈曲部がカードの凹部から抜ける方向への片持ち板バネの撓みが阻止された状態が形成される。このような状態が形成されても、屈曲部は片持ち板バネを折り曲げ加工して形成されたものであるため、ユーザーが過誤により排出機構を操作せずにカードを無理に引き抜こうとした場合に、屈曲部がカードの凹部から受けた排出方向の力により変形して潰れ、カードの誤った引抜きを許してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ハウジングからのカードの無理な引抜きの防止の確実性を向上させることができるカード用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために本発明のカード用コネクタは次のように構成されている。
【0009】
〔1〕 本発明は、カードが挿入されるハウジングと、このハウジング内で前記カードを排出方向に押し動かすことが可能な排出機構とを有し、前記排出機構は、前記ハウジング内を前記カードの挿入方向および排出方向に移動可能で、かつ前記カードの挿入方向の前端部に前方から当接可能なスライダと、このスライダを所定のカード排出位置の方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段の付勢力に抗して前記スライダを所定のカード装着位置にロックすること、および、このロックを解除することが可能なロック手段とを有するカード用コネクタであって、前記スライダには、前記カードの側部に形成された凹部に挿入可能で剛性を有する凸部が形成されていて、前記ハウジングには、前記カード装着位置に位置した前記スライダとの間で前記カードを挟んで位置し、前記凸部が前記凹部から抜ける方向への前記カードの移動を阻止する抜け止め部が設けられたことを特徴とする。
【0010】
「〔1〕」に記載された本発明では、ハウジングにカードが挿入されると、カードの前端部は、カード排出位置に位置したスライダに当接する。そして、スライダはカードの前端部に押圧されてカードと一体的に挿入方向に移動し、その後、カード装着位置でロック手段によりロックされる。スライダがカード装着位置に位置した状態では、スライダの凸部がカードの凹部に挿入されているとともに、凸部が凹部から抜ける方向へのカードの移動が抜け止め部によって阻止されている。これにより、ハウジングにカードが装着された状態でのカードの排出方向の移動が阻止された状態となる。
【0011】
スライダの凸部は剛性を有する。したがって、前述のようにしてハウジングにカードが装着された状態において、ユーザーがカードを無理に引き抜こうとしてカードの凹部からスライダの凸部に排出方向の力が作用しても、凸部は変形しづらいものとなっている。これにより、ハウジングからのカードの無理な引抜きの防止の確実性を向上させることができる。
【0012】
〔2〕 本発明は、「〔1〕」に記載の発明において、前記ハウジングには、前記抜け止め部に前記カードを案内する案内部が設けられたことを特徴とする。
【0013】
「〔2〕」に記載された本発明によれば、スライダの凸部がカードの凹部に挿入された状態を維持しつつ、スライダと抜け止め部との間にカードを円滑に挿入することができる。
【0014】
〔3〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記抜け止め部は前記ハウジングの内壁面であることを特徴とする。
【0015】
「〔3〕」に記載された本発明によれば、抜け止め部をハウジングの成形と同工程で容易に設けることができる。
【0016】
〔4〕 本発明は「〔2〕」に記載の発明において、前記案内部は前記ハウジングの内壁面であることを特徴とする。
【0017】
「〔4〕」に記載された本発明によれば、案内部をハウジングの成形と同工程で容易に設けることができる。
【0018】
〔5〕 本発明は「〔1〕」〜「〔4〕」のいずれか1に記載の発明において、前記ハウジングには、このハウジングに挿入された前記カードを前記スライダの方向に弾性的に押圧する押圧部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
「〔5〕」に記載された本発明によれば、押圧部がカードを押圧してスライダに押し付けるので、スライダがカード排出位置に位置した状態等、カードがハウジングに完全に装着されていない状態であっても、ハウジングに対するカードの排出方向の移動を抑制することができる。
【0020】
〔6〕 本発明は、「〔5〕」に記載の発明において、前記ハウジングは金属製のカバー部材を有し、前記押圧部は前記カバー部材の一部を折り曲げ加工して形成されていることを特徴とする。
【0021】
「〔6〕」に記載された本発明によれば、磁気シールドとして機能するカバー部材と押圧部とを同工程で容易に設けることができる。
【0022】
〔7〕 本発明は「〔5〕」または「〔6〕」に記載の発明において、前記抜け止め部および前記押圧部と、前記スライダとは、前記カードの幅方向において前記カードを挟んで対向して位置する位置関係にあることを特徴とする。
【0023】
「〔7〕」に記載された本発明によれば、挿入時および排出時におけるカードの軌道を直線状に安定させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前述のように、ハウジングからのカードの無理な引抜きの防止の確実性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係るカード用コネクタについて図を用いて説明する。
【0026】
図1−1は本発明の一実施形態に係るカード用コネクタに挿入されるカードの上面図である。図1−2は図1−1に示したカードの下面図である。図1−3は図1−1に示したカードの左側面図である。
【0027】
カード1の外郭は合成樹脂により形成されていて剛性を有する。カード1の上面視形状はほぼ矩形である。図1−1の上側が、後述のカード用コネクタに対するカード1の挿入方向の前側である。カード1の前端部1aの左側には面取りされて傾斜部1dが形成されている。図1−2,図1−3に示すように、カード1の左側部1b(図1−2の右側)における傾斜部1dよりも後方には、右方向に凹んだ凹部1eが形成されている。図1−2に示すように、カード1の下面の前部には、複数の端子2が露出して設けられている。
【0028】
図2−1は本発明の一実施形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2−2は図2−1に示したカード用コネクタからカバー部材を取り除いた状態の斜視図である。図2−3はカバー部材の斜視図である。図2−4はカバー部材の下面図である。図2−5はハウジング内を示す上面図である。
【0029】
図2−1に示すように、本実施形態に係るカード用コネクタ10は、その外郭をハウジング11により形成されている。このハウジング11は、ハウジング11の主に下面側を形成している構成樹脂製のハウジング本体12と、このハウジング11の主に上面側を形成している金属製のカバー部材14とが結合してなっている。
【0030】
図2−2に示すように、ハウジング本体12は、前端壁部12a、左側壁部12b、右側壁部12cを有する。これら前端壁部12a、左側壁部12b、右側壁部12cはそれぞれ、ハウジング11にカード1が装着された状態において、カード1の前端部1a、左側部1bおよび右側部1cのそれぞれに対向して位置するハウジング11の内壁面を形成している。さらに、ハウジング本体12は、ハウジング11にカード1が装着された状態においてカード1の下面に対向して位置する底板部12dを有する。底板部12dには、片持ち板バネ状の複数のコンタクト端子13が突出して設けられている。複数のコンタクト端子13のそれぞれはハウジング11にカード1が装着された状態においてカード1の複数の端子2のそれぞれに接触するよう位置する。
【0031】
図2−3,図2−4に示すように、カバー部材14は、ハウジング本体12を上面側から覆っている上板部14aと、折り曲げ加工によって上板部14aと一体に形成された前端板部14b、左側板部14cおよび右側板部14dとを有する。前端板部14b、左側板部14cおよび右側板部14dがそれぞれ、前端壁部12a、左側壁部12bおよび右側壁部12cのそれぞれの外側の面にスナップフィット結合していることにより、ハウジング本体12とカバー部材14とが結合している。
【0032】
ハウジング本体12の前端壁部12aと反対側の端部には、図2−1に示すように、左側壁部12b、右側壁部12c、底板部12dおよびカバー部材14の上板部14aによって、カード1の挿入口10aが形成されている。
【0033】
図2−5に示すように、ハウジング11内の左側または右側、例えば、左側には、ハウジング11内でカード1を排出方向に押し動かすことが可能な排出機構20が設けられている。この排出機構20は、ハウジング11内をカード1の挿入方向および排出方向に移動可能なスライダ21を有する。このスライダ21には、カード1の挿入方向の前端部1aに前方から当接可能な前側当接部21aと、カード1の左側部1bに当接可能な左側当接部21bとが形成されている。スライダ21とハウジング本体12の前端壁部12aとの間には、スライダ21を所定のカード排出位置(図2−5等に示す位置)の方向に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング22が設けられている。また、コイルスプリング22の付勢力(弾性力)に抗してスライダ21を所定のカード装着位置(図5−1等に示す位置)にロックすること、および、このロックを解除することが可能なロック手段としてのハート型カム機構23が設けられている。このハート型カム機構23は、ハウジング本体12の左側壁部12bに一端側が回動可能に支持されたピン24と、スライダ21に形成されピン24の他端部が挿入されたハート型カム溝25と、ピン24をハート型カム溝25の底面に弾性的に押し付ける片持ち板バネ26(図2−1等に示す)とを有する。排出機構20はハート型カム機構23によって、スライダ21をロックさせるための操作と、そのロックを解除するための操作との両方がスライダ21の挿入方向のプッシュ操作であるプッシュプッシュ操作式となっている。
【0034】
ハウジング11内の前端には、ハウジング11に対するカード1の装着の完了を検知する検知スイッチ30が設けられている。この検知スイッチ30は、カード1の前端部1aにより回動レバー31が前端壁部12aの方向に回動操作されることによってオンするようになっている。
【0035】
スライダ21は例えば合成樹脂製で形成されている。スライダ21の左側当接部21bには、カード1の左側部1bに形成された前出の凹部1e(図1−2,図1−3に示す)に挿入可能な凸部21cが形成されている。この凸部21cは剛性を有する。この凸部21cは、ハウジング11の内側方向(右方向)に突出する凸曲面を形成しているとともに、この凸部21cにおいて、頂部よりも後方の傾斜面21c1は頂部よりも前方の傾斜面21c2よりも、緩い傾斜に設定されている。
【0036】
図2−5に示すように、ハウジング本体12の幅方向(図の左右方向)におけるスライダ21側とは反対側の壁部、すなわち、右側壁部12cには、カード装着位置に位置したスライダ21との間でカード1を挟んで位置し、凸部21cが凹部1eから抜ける方向へのカード1の移動を阻止する抜け止め部12c1と、この抜け止め部12c1にカード1の右側部1cを案内する案内部12c2が設けられている。これら抜け止め部12c1および案内部12c2は、右側壁部12cが形成しているハウジング11の内壁面の一部である。抜け止め部12c1は、その後方の右側壁部12cの部分よりもハウジング11の内側方向(左方向)に突出していて、カード1の挿入方向と平行な直線状に延びている。案内部12c2は、抜け止め部12c1の後端からカード1の排出方向においてハウジング11の方向に向かって直線状に傾斜している。
【0037】
カード1の挿入口10aの幅寸法W1(図2−5に示す)は、カード1の幅寸法W(図1−1に示す)よりも長く設定されている。この抜け止め部12c1とスライダ21の左側当接部21bとの間隔寸法W2は幅寸法W1よりも短い寸法で、カード1を挿入可能な寸法に設定されている。
【0038】
図2−5に示すように、ハウジング本体12の幅方向(図2−5の左右方向)におけるスライダ21側とは反対側、すなわち、ハウジング本体12の右側には、ハウジング11に挿入されたカード1をスライダ21の方向に弾性的に押圧可能な押圧部14eが設けられている。この押圧部14eは、図2−4の左側に示すように、カバー部材14の右側板部14dの一部を折り曲げ加工して形成された片持ち板バネならなる。図2−2に示すように、ハウジング本体12の右側壁部12cには切欠き12eが形成されていて、押圧部14eは、図2−5に示すように、切欠き12eからハウジング11内に突出し、カード1の挿入方向においてハウジング11の外側方向(右方向)に傾斜して延びている。カード1に接触する押圧部14eの終端部は、カード1の右側部1cに接触する部分であり、ハウジング11の内側方向(左方向)に膨らんだ凸曲面を形成している。
【0039】
このように構成された本実施形態に係るカード用コネクタ10は次のように動作する。
【0040】
図3−1は図2−1に示したカード用コネクタにカードの前端部が挿入された状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。図3−2図3−1に示した状態におけるカード用コネクタ内を示す拡大上面図である。図3−3は図3−2のIII−iii部拡大図である。図3−4は図3−2のIII−iv部拡大図である。なお、図3−1,図3−2においてコイルスプリング22は省略してある。
【0041】
ユーザーは、図3−1に示すように、カード1の前端部1aをハウジング11に挿入する。これにより、図3−2,図3−3に示すように、ハウジング11内の右側では、カード1がその前端部1aの右側で押圧部14eに当接し、この押圧部14eの弾性力によりスライダ21の方向に押圧される。この結果、カード1は挿入方向に移動しながらスライダ21の方向に誘導される。一方、図3−2,図3−4に示すように、ハウジング11内の左側では、カード1の傾斜部1dがスライダ21の凸部21cの頂部よりも後方の傾斜面21c1に当接する。
【0042】
ユーザーがカード1に対する挿入方向の押圧を継続すると、カード1は押圧部14eに抗し凸部21cの傾斜面21c1に沿って凸部21cの突出方向(図3−4の右方向)に移動しながら挿入方向への移動を継続する。
【0043】
図4−1は図3−1に示した状態からカードの挿入が進行してカードがスライダの前側当接部に当接した状態を示す上面図である。図4−2は図4−1に示した状態におけるカード用コネクタ内を示す拡大上面図である。図4−3は図4−2のIV−iii部拡大図である。図4−4は図4−2のIV−iv部拡大図である。なお、図4−1,図4−2においてもコイルスプリング22は省略してある。
【0044】
カード1は押圧部14eによりスライダ21に押し付けられながら、ユーザーによる押圧により挿入方向への移動を継続する。そして、図4−1,図4−2,図4−4に示すようにカード1の前端部1aがスライダ21の前側当接部21aに当接するのとほぼ同時に、凹部1eの前端がスライダ21の凸部21cを超えて、スライダ21の凸部21cがカード1の凹部1eに挿入される。この状態では、カード1は図4−2,図4−3に示すように押圧部14eによってスライダ21に押し付けられているため、排出方向に移動しようとするカード1には、押圧部14eの弾性力と、凸部21cの傾斜面21c2と凹部1eの引っ掛かりに伴う抵抗力とによる抑制力が付与される。つまり、カード排出位置に位置したスライダ21、およびハウジング11に対して、カード1の排出方向の移動が抑制されている。
【0045】
なお、スライダ21の凸部21cがカード1の凹部1eに挿入されるとき、押圧部14eの弾性力により衝撃が発生する。ユーザーは、その衝撃に伴う感触よって、凸部21cが凹部1eに挿入されたこと、すなわちハウジング11に対するカード1の排出方向の移動が抑制された状態となる位置(カード排出位置)までカード1が挿入されたことを明確に認識できる。
【0046】
図5−1は図4−1に示した状態からカードの挿入が進行してカードの装着が完了した状態を示す上面図である。図5−2は図5−1に示した状態におけるカード用コネクタ内を示す拡大上面図である。図5−3は図5−2のV−iii部拡大図である。図5−4は図5−2のV−iv部拡大図である。なお、図5−1,図5−2においてもコイルスプリング22は省略してある。
【0047】
ユーザーは「コイルスプリング22に抗してカード1越しにスライダ21をカード排出位置から限界位置まで押込み、その後、カード1の押圧を止める」という、ハート型カム機構23でスライド21をロックさせるためのロック操作を行う。このロック操作において、カード1の押圧が止められたとき、スライダ21はコイルスプリング22によって限界位置からカード装着位置(図5−1,図5−2に示す位置)に押し戻される。このとき、スライダ21はハート型カム機構23によりコイルスプリング22に抗してカード装着位置にロックされた状態となる。この状態が、ハウジング11にカード1が装着された状態である。
【0048】
また、ロック操作において、カード1がスライダ21をカード排出位置から挿入方向に押し動かすとき、カード1の右側部1cは案内部12c2により抜け止め部12c1に案内される。これにより、カード1は抜け止め部12c1とスライダ21の左側当接部21bの間に配置された状態、すなわち、カード1は抜け止め部12c1によって凸部21cが凹部1eから抜ける方向の移動が阻止された状態となる(図5−2,図5−3および図5−4参照)。この状態は、カード1に排出方向の力が作用すると凸部21cの傾斜面21c2が凹部1eに引っ掛かり、カード1の排出方向の移動が阻止される状態である。このようにして、ハウジング11にカード1が装着された状態でのカード1の排出方向の移動が阻止される。
【0049】
なお、ハウジング11にカード1が装着された状態では、カード1の前端部1aにより回動レバー31が前端壁部12aの方向に回動操作されて検知スイッチ30がオンしている。また、カード1の複数の端子2がそれぞれハウジング11の複数のコンタクト端子13のそれぞれに接触している。
【0050】
図5−1に示すようにハウジング11に装着されたカード1を、ハウジング11から抜き取るには、まず、「コイルスプリング22に抗してカード1越しにスライダ21をカード装着位置から限界位置まで押込み、その後、カード1の押圧を止める」という、ハート型カム溝25によるスライダ21のロックを解除するための解除操作を行う。この解除操作によってロックが解除されると、スライダ21はコイルスプリング22によりカード排出位置に押し動かされ、これに伴ってハウジング11の挿入口10aからのカード1の突出部分が大きくなる。ユーザーは、その突出部分を把持し、カード1を抑制力よりも大きな力で引くことによって、ハウジング11からカード1を抜き取ることができる。
【0051】
本実施形態に係るカード用コネクタ10によれば、次の効果を得られる。
【0052】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、スライダ21の凸部21cは剛性を有する。したがって、ハウジング11にカード1が装着された状態においてユーザーがカード1を無理に引き抜こうとしてカード1の凹部1eからスライダ21の凸部21cに排出方向の力が作用しても、凸部21cは変形しづらいものとなっている。これにより、カード1のハウジング11からの無理な引抜きの防止の確実性を向上させることができる。
【0053】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、ハウジング11には、抜け止め部12c1にカード1の右側部1cを案内する案内部12c2が設けられている。これにより、スライダ21の凸部21cがカード1の凹部1eに挿入された状態を維持しつつ、スライダ21と抜け止め部12c1との間にカード1を円滑に挿入することができる。
【0054】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、抜け止め部12c1はハウジング本体12の右側壁部12cが形成するハウジング11の内壁面の一部である。これにより、抜け止め部12c1をハウジング11の成形と同工程で容易に設けることができる。
【0055】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、案内部12c2はハウジング本体12の右側壁部12cが形成するハウジング11の内壁面の一部である。これにより、案内部12c2をハウジング11の成形と同工程で容易に設けることができる。
【0056】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、ハウジング11には、このハウジング11に挿入されたカード1をスライダ21の方向に弾性的に押圧する押圧部14eが設けられている。この押圧部14eがカード1を押圧してスライダ21に押し付けるので、スライダ21がカード排出位置に位置した状態等、カード1がハウジング11に完全に装着されていない状態であっても、ハウジング11に対するカード1の排出方向の移動を抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、ハウジング11は金属製のカバー部材14を有し、押圧部14eはカバー部材14の一部を折り曲げ加工して形成されている。磁気シールドとして機能するカバー部材14と押圧部14eとを同工程で容易に設けることができる。
【0058】
本実施形態に係るカード用コネクタ10において、抜け止め部12c1および押圧部14eと、スライダ21とは、カード1の幅方向においてカード1を挟んで対向して位置する位置関係にある。これにより、カード1の挿入方向および排出方向への直線的な移動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1−1】本発明の一実施形態に係るカード用コネクタに挿入されるカードの上面図である。
【図1−2】図2−1に示したカードの下面図である。
【図1−3】図2−1に示したカードの左側面図である。
【図2−1】本発明の一実施形態に係るカード用コネクタの斜視図である。
【図2−2】図2−1に示したカード用コネクタからカバー部材を取り除いた状態の斜視図である。
【図2−3】カバー部材の斜視図である。
【図2−4】カバー部材の下面図である。
【図2−5】ハウジング内を示す上面図である。
【図3−1】図2−1に示したカード用コネクタにカードの前端部が挿入された状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。
【図3−2】図3−1に示した状態におけるカード用コネクタ内を示す拡大上面図である。
【図3−3】図3−2のIII−iii部拡大図である。
【図3−4】図3−2のIII−iv部拡大図である。
【図4−1】図3−1に示した状態からカードの挿入が進行してカードがスライダの前側当接部に当接した状態を示す上面図である。
【図4−2】図4−1に示した状態におけるカード用コネクタ内を示す拡大上面図である。
【図4−3】図4−2のIV−iii部拡大図である。
【図4−4】図4−2のIV−iv部拡大図である。
【図5−1】図4−1に示した状態からカードの挿入が進行してカードの装着が完了した状態を示す上面図である。
【図5−2】図5−1に示した状態におけるカード用コネクタ内を示す拡大上面図である。
【図5−3】図5−2のV−iii部拡大図である。
【図5−4】図5−2のV−iv部拡大図である。
【符号の説明】
【0060】
1 カード
1a 前端部
1b 左側部
1c 右側部
1d 傾斜部
1e 凹部
2 端子
10 カード用コネクタ
10a 挿入口
11 ハウジング
12 ハウジング本体
12a 前端壁部
12b 左側壁部
12c 右側壁部
12c1 抜け止め部
12c2 案内部
12d 底板部
12e 切欠き
13 コンタクト端子
14 カバー部材
14a 上板部
14b 前端板部
14c 左側板部
14d 右側板部
14e 押圧部
20 排出機構
21 スライダ
21a 前側当接部
21b 左側当接部
21c 凸部
21c1,21c2 傾斜面
22 コイルスプリング
23 ハート型カム機構
24 ピン
25 ハート型カム溝
26 片持ち板バネ
30 検知スイッチ
31 回動レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるハウジングと、このハウジング内で前記カードを排出方向に押し動かすことが可能な排出機構とを有し、
前記排出機構は、前記ハウジング内を前記カードの挿入方向および排出方向に移動可能で、かつ前記カードの挿入方向の前端部に前方から当接可能なスライダと、このスライダを所定のカード排出位置の方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段の付勢力に抗して前記スライダを所定のカード装着位置にロックすること、および、このロックを解除することが可能なロック手段とを有するカード用コネクタであって、
前記スライダには、前記カードの側部に形成された凹部に挿入可能で剛性を有する凸部が形成されていて、
前記ハウジングには、前記カード装着位置に位置した前記スライダとの間で前記カードを挟んで位置し、前記凸部が前記凹部から抜ける方向への前記カードの移動を阻止する抜け止め部が設けられている
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記ハウジングには、前記抜け止め部に前記カードを案内する案内部が設けられた
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の発明において、
前記抜け止め部は前記ハウジングの内壁面である
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項4】
請求項2に記載の発明において、
前記案内部は前記ハウジングの内壁面である
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、
前記ハウジングには、このハウジングに挿入された前記カードを前記スライダの方向に弾性的に押圧可能な押圧部が設けられている
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載の発明において、
前記ハウジングは金属製のカバー部材を有し、
前記押圧部は前記カバー部材の一部を折り曲げ加工して形成されている
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項7】
請求項5または6に記載の発明において、
前記抜け止め部および前記押圧部と、前記スライダとは、前記カードの幅方向において前記カードを挟んで対向して位置する位置関係にある
ことを特徴とするカード用コネクタ。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【公開番号】特開2009−272082(P2009−272082A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119906(P2008−119906)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】