説明

ガスの存在下で材料をエッチングする方法

本発明は、エッチングすべき少なくとも1つの材料(4)を含む構造体(1)をエッチングするための方法であって、エッチングすべき前記材料(4)と反応できる少なくとも1つの化学種を選択するステップと、前記材料とは反応しないが、前記化学種を放出できる少なくとも1つの可溶性化合物を選択するステップと、前記化合物を含む溶液(11)を製造するステップと、エッチングすべき前記材料の表面が前記溶液内およびガス(G)の付加的バブル内に存在するような位置に前記構造体(1)を置くステップと、可溶性化合物または沈殿物を生成しながら前記化学種を発生し、これら化学種がエッチングすべき前記材料と反応するように、前記付加的バブルの存在下で反応性キャビテーションバブルを発生できる少なくとも1つの周波数で高周波超音波を溶液内で発生させるステップとを備える、構造体をエッチングするための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料をエッチングする技術分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、製造中に、ある材料を別のまたは他の材料に対して選択的にエッチングするための一般に多数のステップが設けられている、半導体部品を製造する技術分野に関し、また、適当な方法で形成された所定の数の層が既に設けられている直下の基板を再生するよう表面の層を除去したい、欠陥のある半導体基板を再生する技術分野に関し、更に、ある材料の層の表面状態を改善する技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、基板上に堆積された層を別の層に対して選択的に除去したいときにおいて、除去すべき層の一部を、可能な場合にマスクした後に、この部分だけを除去したい場合、半導体部品を製造する技術分野では、主に2つの方法が存在する。
【0004】
第1群の方法は、1つの層をエッチングすべき構造体を、一般に塩化水素酸またはフッ化水素酸をベースとするエッチャント内に浸漬する「ウェット」エッチング方法から成る。ある層を別の層に対して、例えばシリコン酸化膜を窒化シリコン層に対して、シリコン酸化膜をシリコンに対して、または金属膜を絶縁層に対して、選択的にエッチングできるようにするためのいくつかの混合物がこれまで開発されている。
【0005】
この群では、米国特許第6,746,967号が、制御されたpHの酸化溶液内でニッケルを酸化するための方法について述べている。単に酸化を加速するために低周波の超音波が存在することによって、この溶液によってエッチングすべきニッケルに対して必要なエネルギーバリアを変えている。
【0006】
「ドライ」エッチングと称される第2の群の方法は、例えば塩素、フッ素、酸素などのラジカル種、すなわち活性ラジカルであるエッチャントを含むプラズマ内に、除去すべき層を支持する構造体を入れるステップを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この第2の群の方法は、特に異方性侵食を可能にし、かつ2つの材料の間のエッチングの選択性がより良好であるという事実から、第1の群の方法と比較して多くの利点を有する。しかしながらこの第2の群の方法は、複雑な機器が必要であり、かつエッチングすべき層がシリコン基板に支持されている場合、同時に1つまたは2つのシリコン基板しか処理できないという欠点をする。他方、第1の群の方法は、ある材料を別の材料に対して極めて選択的にエッチングしたいときに、実行が不可能であることが多いが、多数のウェーハを1つのボート内に設置し、次にこれら多数のウェーハをエッチング溶液内に浸漬するバッチ処理が可能である利点を持つ。
【0008】
当業者にはこれら2つの群の方法の種々の変形例が知られている。例えば「ウェット」エッチング方法に関して、処理すべき材料とエッチング溶液との間に電界を印加することによって、得られる結果を改善することが時々提案されている。
【0009】
表面をクリーニングし脱脂するのに、より一般的に使用される第3の群の方法は、クリーニング浴、例えばアルコール浴内に表面を浸漬するステップと、一般に20〜45kHzの高さの比較的低い音の周波数で液体媒体に音の振動を加えるステップとから成る。これら音の振動は、クリーニングすべき表面からの汚染粒子を剥離するのを補助する。
【0010】
更に、「ウェット」エッチング方法では、エッチングすべき材料の表面を覆うようエッチング液を循環させるのに通常ミキサーが使用され、混合を改善するために、更に可能な場合には1〜40kHzの間の低周波の音波を加える。例えば米国特許第4,544,066号では、表面の上の反応を均一にするように、低周波超音波によって溶液を撹拌している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、エッチングすべき少なくとも1つの材料を含む構造体をエッチングするための方法である。
【0012】
エッチングすべき少なくとも1つの材料を含む構造体をエッチングするための方法であって、
エッチングすべき前記材料と反応できる少なくとも1つの化学種を選択するステップと、
前記材料とは反応しないが、前記化学種を放出できる少なくとも1つの可溶性化合物を選択するステップと、
前記化合物を含む溶液を製造するステップと、
エッチングすべき前記材料の表面が前記溶液内およびガスの付加的バブル内に存在するような位置に前記構造体を置くステップと、
可溶性化合物または沈殿物を発生しながら、前記化学種を発生させ、これら化学種がエッチングすべき前記材料と反応するように、前記付加的バブルの存在下で反応性キャビテーションバブルを発生できる少なくとも1つの周波数の高周波超音波を溶液内で発生するステップとを備える、構造体をエッチングするための方法が提案される。
【0013】
本発明に関連し、「エッチングすべき材料と反応できる化学種」なる用語は、原子化学種および/または分子化学種および/またはイオン化学種および/またはラジカル化学種を意味するものと理解する。
【0014】
溶液とガスとの間の境界の少なくとも一部を溶液の物理的表面により形成でき、物理的表面の上にはガスが存在し、エッチングすべき材料のエッチングすべき表面は、溶液の物理的表面に接触しており、溶液の方向に向けられている。
【0015】
溶液の物理的表面をかき乱す、または撹拌することができる。
【0016】
エッチングすべき材料のエッチングすべき前記表面を前記溶液内に浸漬してもよい。
【0017】
溶液内に前記付加的ガスバブルを含ませ、分散させ、または発生させてよい。
【0018】
前記溶液内に前記ガスを注入することにより、前記ガスバブルを生じさせてもよい。
【0019】
低周波超音波発生器の作用により、前記別のガスバブルを発生させてもよい。
【0020】
前記低周波超音波は、50kHz未満の周波数を有してもよい。
【0021】
前記高周波超音波の前記周波数は前記低周波超音波の周波数よりも少なくとも10倍高くてもよい。
【0022】
前記高周波超音波の周波数は100kHz〜3MHzの間でもよい。
【0023】
前記高周波超音波の周波数は200kHz〜600kHzの間でもよい。
【0024】
エッチングすべき少なくとも1つの第1材料および少なくとも1つの第2材料を含む構造体を選択的にエッチングするために、前記選択された化学種および可溶性化合物は、前記第2材料とは反応しなくてよい。
【0025】
エッチングすべき材料の全体または一部を除去するため、エッチングすべき材料の表面の凹凸を低減するため、またはエッチングすべき材料の厚さを薄くするために、前記高周波超音波を発生する時間の長さを決定できる。
【0026】
以下、添付図面に略図で示されたエッチング装置に関連して、非限定的な例として特定の実施形態を説明することにより、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】エッチングすべき構造体が溶液の上方に置かれている、エッチング装置の垂直横断面図を示す。
【図2】エッチングすべき構造体が溶液内に浸漬されているエッチング装置の垂直横断面図を示す。
【図3】エッチングすべき別の構造体を示す。
【図4】図2のエッチング装置内で浸漬されているエッチングすべき別の構造体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1にはエッチング装置が示されており、この装置は容器またはチャンバ10を備え、このチャンバ10は液体溶液11と、少なくとも一部が溶液11内に導入され、高周波超音波を溶液11内に発生し、溶液11内に反応性キャビテーションバブルを発生できる超音波発生器12、または超音波の他のソースとを含む。
【0029】
エッチングすべき材料から構成された層4がその上に形成されている層2を例えば含む構造体1は、エッチングすべき表面4aが実質的に溶液11の物理的表面11aに接触するような位置に、エッチングすべき材料から構成された層4が位置するように置かれており、物理的表面11aの上にはガスGが存在し、この表面4aは溶液1の方向に底部に向けられている。
【0030】
より詳細には、層4のうちのエッチングすべき表面4aは、溶液11の物理的表面11aが安定しているときに、この物理的表面11aとエッチングすべき表面4aとの間に隙間が存在するように位置しており、この隙間はガスGを含む。
【0031】
一実施例によれば、溶液11の物理的表面11aは、ガスGが空気となるように開放された空気内にあってもよい。
【0032】
別の実施例によれば、容器すなわちチャンバ10は、蓋13を含むことができ、従って溶液11の物理的表面11aよりも上方に空気以外の選択されたガスGを含むことができる。
【0033】
高周波超音波発生器12が附勢されると、後述するように、溶液11内、より詳細にはその表面の層内で反応性キャビテーションバブルが発生される。これら反応性キャビテーションバブルは、溶液11の物理的表面11aを撹拌するので、溶液はエッチングすべき材料4の表面4aに接触し、溶液とガスGとの境界内にエッチングすべき表面4aが存在する。このガスGは、キャビテーションバブルとは異なる付加的バブルの形態となっている。
【0034】
これら別のガスバブルは、溶液11の表面層内にも進入してよい。
【0035】
更に、溶液11の物理的表面11aの撹拌を増強するように、溶液11の撹拌器14を追加してもよい。
【0036】
図2には、エッチング装置が示されており、この装置は、液状溶液11を含む容器またはチャンバ10と、容器11内に部分的に導入される音波の超音波発生器12または他のソースも含み、この超音波発生器12はこの溶液11内に高周波の超音波を発生でき、溶液11内に反応性キャビテーションバブルを発生できる。
【0037】
層4のエッチングすべき表面4aが実質的に溶液11の物理的表面11aに浸漬されるような位置に、例えば層2を含む構造体1が置かれており、層2の上にはエッチングすべき材料から構成された層4が形成されており、エッチングすべきこの表面4aは、垂直または傾斜した状態に置くことが好ましい。
【0038】
侵食されてはならない層4のその他の表面および構造体のその他の表面は、例えばマスクを介して侵食されないようになっている。すなわち保護されている。
【0039】
図2のエッチング装置は、反応性キャビテーションバブルとは異なるガスGのバブルの発生器15を更に含む。
【0040】
一実施例によれば、発生器15は、キャビテーションにより溶液11内にガスGの付加的バブルを発生する50kHz未満の周波数を有する低周波超音波発生器により形成できる。この高周波超音波の周波数は、低周波超音波の周波数よりも少なくとも10倍に等しい周波数とすることができ、この追加バブルの寿命は、反応性キャビテーションバブルの寿命よりも著しく長い。
【0041】
別の実施例によれば、選択されたガスGの付加的バブルのインジェクターによって発生器15を形成してもよい。
【0042】
上記の場合、溶液11内に発生されるガスGの付加的バブルは、発生される反応性キャビテーションバブルの体積よりも著しく大きい体積、例えば少なくとも100倍の体積、場合によっては数百倍大きい体積を有する。
【0043】
このように、材料4のエッチングすべき表面4aは、ガスGの付加的バブル内に存在でき、付加的バブルはエッチングすべき浸漬された表面4aに対向し、この表面の近くに存在する。
【0044】
次に、エッチングすべき材料およびエッチングしない他の材料に対して材料をエッチングするのに適した溶液に関する実施例の説明について記載する。この場合、図1のエッチング装置または図2のエッチング装置を使用する。
【0045】
これら例では、記載上の理由から、「点」により表示できた反応可能な化学種に対しては、上付き文字「°」を付する。
【0046】
実施例1.
図3に示されているような構造体1は、絶縁層3、例えば厚み方向に凹凸を有するよう、所定のパターン、例えばチェッカーパターンでエッチングされ、銅の層4でカバーされたシリコン酸化膜でコーティングされたシリコン基板2を含むことができる。通常、実際には酸化膜3と銅の層4との間の境界に中間結合層、例えば窒化チタンTiNの層が堆積されている。
【0047】
大きさの順に例を挙げると、シリコン基板1は数百μmの厚さを有することができ、銅の層4は1μmの厚さを有することができる。
【0048】
図3の右側部分に示された変形例では、直下の基板を再生するように銅の層3を完全に除去する試みを行うことができる。
【0049】
図3の左側部分に示された別の変形例では、半導体デバイスを製造するための中間ステップを実行するために、マスク5によっては保護されていない層4の一部を局部的に除去する試みを行うことができる。
【0050】
溶液11内の構造体1の銅の層4をエッチングするのに、次の選択が可能である。
【0051】
銅またはシリコン、もしくはマスクをエッチングせず、化学種がシリコンと反応することなく、更にマスクを構成する材料と反応することなく、銅と反応できる化学種を放出できる分子を含む溶液11を選択できる。
【0052】
反応性キャビテーションバブル、すなわち100kHzを超える周波数、例えば10kHz〜3MHzの周波数、好ましくは200kHz〜3MHzの間の周波数、より好ましくは200〜600kHzの高さの周波数を有する音波を発生できる高周波超音波を選択してもよい。これら周波数のレンジ内では、反応性キャビテーションバブルのサイズは、400kHzのオーダーの周波数に対して1μmのオーダーの値に達し、1MHzのオーダーの周波数に対しては0.1μmのオーダーの値に再び低下し得る。
【0053】
特定の例によれば、銅の層4を侵食するために1リットル当たり1モルのHClの溶液を選択でき、400kHzのオーダーの周波数において、300ワットのパワーで音波を発生する超音波発生器12を選択できる。
【0054】
これら条件下では、特により詳細にはウェーハ1の表面で、存在時間が極めて短い反応性キャビテーションバブルが発生され、これらバブルは、HClの分子からラジカルな化学種Cl°を形成させる。これらキャビテーションバブルでは、圧力が数大気圧のオーダーの値に達することができ、温度は数千度に接近し得る。発生した化学種Cl°は銅と反応し、CuClまたはCuClを発生させる。
【0055】
生じるエッチングは、活性化学種Cl°を形成する現象に極めて特有である。事実、同じ濃度を有するHCl溶液と接触する銅は反応しない。
【0056】
上記厚さにおいて、シリコン酸化膜3がエッチングされることなく、すなわち約1ナノメータよりも大きいエッチングを生じることなく、全体または局部的に金属銅の層4の完全な除去が得られる。
【0057】
実施例2.
シリコン酸化膜4を支持するシリコンウェーハ2を含む構造体1を使って、このシリコン酸化膜を除去する試みを行うことができる。
【0058】
1リットル当たり1モルのNaOH(水酸化ナトリウム)の溶液11を使用し、400kHzのオーダーの周波数および300ワットのオーダーのパワーの音波をこの溶液内に発射する。
【0059】
この条件下では、前の実施例と同じように、顕著にかつより特別にウェーハ1の表面において、溶液内で生じた反応性キャビテーションバブルがNaOHの分子から化学種OH°を形成させる。発生したラジカル化学種OH°が酸化シリコンと反応し、HSiOを発生する。
【0060】
直下のシリコンをエッチングすることなくシリコン酸化膜を除去できる。
【0061】
実施例3.
実施例1の場合のように銅の層を支持するか、または実施例2のようにシリコン酸化膜を支持するシリコンウェーハを使用し、この層の表面の凹凸を減少させ試みを行うことができる。
【0062】
この目的のために、例えば実施例1または実施例2の条件をそれぞれ使用できるが、超音波発生器12の作用は、使用時間が限られているので、凹凸のある領域またはアスペリティを構成する材料のみが少なくとも部分的にエッチングされる。
【0063】
キャビテーションバブルの密度は、これら凹凸のある領域またはアスペリティの端部で高くなるので、凹凸のある領域への侵食はより効果的となる。
【0064】
実施例4.
実施例1のように銅の層を有するか、または実施例2のようにシリコン酸化膜を有するウェーハ1を使用して、この層の厚さを薄くする試みを行うことができる。
【0065】
この目的のためには、例えば実施例1または実施例2の条件を使用することが可能であるが、層の残留厚さが所望する値に達するよう、高周波超音波発生器12の作動時間の長さを制限し、制御しなければならない。
【0066】
次に、前の実施例を検討しながら、次の項目に従い、構造体1の第2材料2に対する第1材料4の選択的エッチングのより詳細な説明を続ける。
【0067】
エッチングすべき第1材料と反応できるが、第2材料とは反応できない化学種を選択する。
【0068】
材料をエッチングしないが、選択された化学種を放出できる可溶性化合物を選択する。
【0069】
この化合物を含む溶液を調製し、この溶液内に構造体を浸漬した後に、キャビテーションバブルを発生できる周波数で、この溶液内に超音波を発生する。
【0070】
この結果、圧力が数大気圧の大きさの値に達し、温度が数千度に接近するような反応性キャビテーションバブルが発生し、これらバブルが溶液内において特に処理すべき固体表面の近くで選択された化学種を発生させ、この化学種は第1材料と選択的に反応し、第2材料をエッチングすることなく可溶性化合物または沈殿物を生じさせる。
【0071】
適当な化学種および適当な可溶性化合物を選択するために、第1材料と反応し易く、可溶性化合物、すなわち容易に粉々になる化合物または沈殿物を発生する化学種を決定するのに、当業者であれば、例えば欧州SGTEデータベースを含む「FactSage」ソフトウェアの使用法を知っているであろう。この場合、この化学種は第2材料とは反応しない。
【0072】
このSGTEデータベースは、当業者が利用できる唯一の熱力学的データベースではない。例えば「Thermo−Calc」ソフトウェアのような他のデータベースも存在する。この「Thermo−Calc」または「FactSage」ソフトウェアにアクセスするには次のウェブサイトhttp://222.thermocalc.com;www.factsage.com;www.gtt-technologies.comに接続するだけでよい。
【0073】
これらデータベースは、ギブスのエネルギーを最小にすることにより、所定のスタート混合物からの化学的反応によって形成される熱力学的に安定な化合物を示すことができるソフトウェアプログラムをサポートするのに役立つ。「熱力学的に安定」なる用語は、無限反応時間後に得られる生成物を意味するものと解される。例えば次のようなことを観察できる。
【0074】
・シリカ+固体の銅+1リットル当たり1モルに希釈されたHClのスタート混合物は変化しない(安定した状態のままである)。もし、溶液内にCl°ラジカルまたはラジカル種が存在する計算式にこの混合物を加えると、固体の銅はCuClおよびCu2+に完全に変換されるが、シリカは変化しない。
【0075】
・シリコン+水酸化シリカおよび1リットル当たり1モルの水酸化ナトリウムのスタート混合物は、熱力学的に安定な混合物である(変化なし)。もし、溶液内にラジカル化学種OH°またはNa°が形成されるべき計算式にこのスタート混合物を加えると、シリカは固体化合物NaSiOに変換されるが、シリコンは安定状態のままであることを熱力学的ソフトウェアは示す。
【0076】
当業者であれば、上記ソフトウェアを使用することにより、所定の溶液内でどんな化学種が形成され、どのようにテストするのか、溶液内ではどの相(化合物または純粋物)が安定となるか、化学反応によって何が変化するかを判断することができよう。
【0077】
ウェーハの第2材料をエッチングすることなく、第1材料をエッチングすることを目的とした化学種を選択するための次の例について注目できよう。
【0078】
SiGeをエッチングすることなくSiをエッチングするのに、化学種OH°を活性化してもよい。
【0079】
SiOをエッチングすることなくInSnOをエッチングするのに、化学種H°を活性化してもよい。
【0080】
SiOをエッチングすることなくCuをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0081】
ポリマーをエッチングすることなくSiをエッチングするのに、化学種F°を活性化してもよい。
【0082】
AINセラミックをエッチングすることなくAuをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0083】
AlをエッチングすることなくAlをエッチングするのに、化学種OH°または化学種Cl°を活性化してもよい。
【0084】
AlをエッチングすることなくWをエッチングするのに、化学種OH°を活性化してもよい。
【0085】
SiOまたはTiNセラミックをエッチングすることなくCuをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0086】
ポリマーまたはガラスをエッチングすることなくInSnOをエッチングするのに、化学種H°またはCl°を活性化してもよい。
【0087】
AlをエッチングすることなくSiOをエッチングするのに、化学種Na°またはF°を活性化してもよい。
【0088】
WをエッチングすることなくAlエッチングするのに、化学種H°またはF°を活性化してもよい。
【0089】
SiOをエッチングすることなくTiNをエッチングするのに、化学種Br°を活性化してもよい。
【0090】
SiOまたはポリマーをエッチングすることなくSiをエッチングするのに、化学種K°を活性化してもよい。
【0091】
SiOをエッチングすることなくTaNセラミックをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0092】
また、発生するキャビテーションバブルの作用によって所望するエッチングをもたらすように、特定の各ケースにおいて選択される溶液の濃度、超音波の最適周波数および最適パワーをどのように決定するかだけでなく、エッチングすべき第1材料に施される処理時間長さも当業者であれば簡単なテストで知ることができよう。
【0093】
実施方法が大幅に簡潔になることだけでなく、同じ溶液内で複数の構造体1のバッチを同時に処理できるということについても注目できよう。
【0094】
図4に示された別の実施例では、除去すべき粒子4の堆積によって汚染された電気接点2の端部をクリーニングすること、特に電子チップを検査するために使用されるタングステンプローブに堆積または付着したアルミ粒子を化学的にエッチングすること、すなわち接点2の汚染された端部を図2のエッチング装置の溶液11内に挿入することが推奨される。この場合、アルミもタングステンもエッチングしないが、Cl°の化学種を放出して、タングステンをエッチングすることなくアルミをエッチングできるようなNaCl溶液を使用できる。
【0095】
これまで述べたすべてのエッチング例と同じように、以下、上記ガスGの付加的バブルの効果について説明する。
【0096】
キャビテーションバブル内には、ガスGの付加的バブルが存在する。キャビテーションバブルはガスGの付加的バブルと接触した状態で存在し、キャビテーションバブルはガスGの付加的バブルと混合し得る。ガスGの付加的バブルはアクティブなキャビテーションバブルの寿命よりも著しく長い寿命を有する。
【0097】
ガスGの付加的バブルの主な効果は、特に次の理由から、エッチングすべき材料のエッチングレートを著しく高めることである。
【0098】
主な効果は、ガスバブルと溶液との間の接触表面積を広くすることである。知られているように、このような境界領域において、付加的ガスGと溶液との間の化学種の交換または移動が高まり、エッチングすべき材料をエッチングするためのキャビテーションバブル内で生じる化学種がより多数となる。
【0099】
付加的ガスは、化学的および/または化学反応パラメータを変えることにより反応に関与する。
【0100】
適当な化学的化合物を導入することによって、選択されたガスはエッチングに関与し得る。例えばガスGとして選択された空気のうちの酸素は、シリコン(Si)、アルミ(Al)またはタングステン(W)のエッチングに大幅に寄与し得る。他の例では、ガスGとして選択される塩化水素(HCl)が銅(Cu)またはアルミ(Al)のエッチングに大幅に寄与し得る。
【0101】
選択されたガスGが化学的反応パラメータを変えることができるアルゴン(Ar)を含む場合、アクティブなキャビテーションバブルはよりエネルギーが高くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングすべき少なくとも1つの材料(4)を含む構造体(1)をエッチングするための方法であって、
エッチングすべき前記材料(4)と反応できる少なくとも1つの化学種を選択するステップと、
前記材料とは反応しないが、前記化学種を放出できる少なくとも1つの可溶性化合物を選択するステップと、
前記化合物を含む溶液(11)を製造するステップと、
エッチングすべき前記材料の表面が前記溶液内およびガス(G)の付加的バブル内に存在するような位置に前記構造体(1)を置くステップと、
可溶性化合物または沈殿物を生成しながら前記化学種を発生し、これらの化学種がエッチングすべき前記材料と反応するように、前記付加的バブルの存在下で反応性キャビテーションバブルを発生できる少なくとも1つの周波数で高周波超音波を溶液内で発生させるステップとを備える、構造体をエッチングするための方法。
【請求項2】
上部にガスが存在するような前記溶液の物理的表面により、前記溶液と前記ガスとの間に境界が少なくとも部分的に形成し、エッチングすべき前記材料のエッチングすべき表面を前記溶液の物理的表面に接触させ、エッチングすべき前記表面を前記溶液の方向に向ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶液の物理的表面がかき乱され、または撹拌される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エッチングすべき材料のエッチングすべき前記表面を前記溶液内に浸漬する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液内に前記付加的ガスバブルを含ませ、分散させ、または生成される、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液内に前記ガスを注入することにより、前記ガスバブルを生じさせる、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
低周波超音波発生器の作用により、前記付加的ガスバブルを発生する、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記低周波超音波は50kHz未満の周波数を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高周波超音波の前記周波数は、前記低周波超音波の周波数よりも少なくとも10倍高い、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記高周波超音波の周波数は100kHz〜3MHzの間にある、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記高周波超音波の周波数は200kHz〜600kHzの間にある、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の方法であって、エッチングすべき少なくとも1つの第1材料(4)および少なくとも1つの第2材料(2)を含む構造体(1)を選択するための前記選択された化学種および可溶性化合物は、前記第2材料とは反応しない方法。
【請求項13】
エッチングすべき前記材料を完全にまたは部分的に除去するよう、またはエッチングすべき前記材料の表面の凹凸を低減するよう、またはエッチングすべき前記材料の厚さを薄くするように、前記高周波超音波を発生する時間長さを決定する、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527757(P2012−527757A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511319(P2012−511319)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050927
【国際公開番号】WO2010/133786
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511243934)
【出願人】(511280009)
【Fターム(参考)】