説明

ガスバリアフィルムの製造方法

【課題】原料ガスとしてシランガス、アンモニアガス、水素ガスおよび/または窒素ガスを用い、容量結合型のプラズマCVDによって、可撓性に優れ、かつ、良好なガスバリア性を長期に渡って発現するガスバリアフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】シランガス流量Q、プラズマ生成PとしたP/Qが10[W/sccm]未満、成膜圧力が20〜200Paで、基板温度を70℃以下として、前記基板に−100V以下のバイアス電位を印加しつつ窒化珪素膜を成膜することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量結合型のプラズマCVDを利用するガスバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防湿性を要求される各種の装置や光学素子などに利用されるガス(水蒸気)バリアフィルム膜として、樹脂(プラスチック)フィルムの表面に窒化珪素膜を成膜してなるガスバリアフィルムが知られている。
【0003】
また、窒化珪素膜の成膜方法として、容量結合型プラズマCVD(CCP(Capacitively Coupled Plasma)−CVD)が知られている。
周知のように、CCP−CVDとは、1対の電極対を用い、両電極間に、原料ガスを供給し、かつ、電圧を印加することにより、プラズマを生成して原料ガスを解離・電離させてラジカルやイオンを生成し、電極間に配置した被処理物の表面にプラズマCVDによる成膜を行なうものである。
このCCP−CVD法は、構成が簡易である、電極から原料ガスを供給することにより、電極を大面積化しても成膜領域の全域に均一にガスを供給でき(ガスの均一化が容易である)、従って、大面積の基板に容易に対応可能である等の利点を有する。
【0004】
例えば、特許文献1には、窒化珪素膜の元素比がN/Si=0.8〜1.4で、膜密度が2.1〜3g/cm2である透明なガスバリアフィルムが開示されている。
この特許文献1の実施例においては、基板としてポリエーテルスルホンフィルムを、原料ガスとしてシランガス、アンモニアガス、および水素ガスを用い、CCP−CVD法によって、基板温度150℃、シランガス流量2〜20sccm、投入電力300W、成膜圧力10Paの条件で、窒化珪素膜を形成して、ガスバリアフィルムを作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−342975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるように、ガスバリアフィルムの基板としては、樹脂フィルムが利用されている。
ここで、特許文献1においては、基板としてポリエーテルスルホンフィルムを用いて、基板温度を150℃として窒化珪素膜を成膜しているが、基板温度が150℃では、安価なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなど、耐熱性が低い樹脂フィルムへの窒化珪素膜の成膜は困難である。
【0007】
また、成膜圧が10Paでは、高性能な成膜装置が必要であり、特に、生産性を向上したい場合、すなわち原料ガス流量を向上したい場合には、装置コストが非常に高くなってしまう。
さらに、シランガス流量が2〜20sccmで、投入電力が300Wでは、成膜された膜が緻密なものになるため、柔軟な膜にはならず、耐屈曲性に劣るものとなってしまう。そのため、曲げ等によって、膜が破壊されガスバリア性が低下してしまうおそれがある。
特に、長尺な基板をロール状に巻回してなる基板ロールから基板を送り出し、長手方向に搬送しつつ機能膜を成膜して、機能膜を成膜した基板をロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)のような方法で成膜を行なう場合には、基板の巻回しや屈曲を伴う搬送を行なうため、成膜された膜が柔軟性のない耐屈曲性に劣る膜であると、搬送や巻き取りの際の屈曲によって、膜が破壊されガスバリア性が低下してしまうおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、PETフィルム等の耐熱性が低い樹脂フィルム等を基板として用いて、優れたガスバリア性を発現し、かつ、可撓性に優れた、高品質なガスバリアフィルムを、安価な装置で高い生産性で製造することができる、ガスバリアフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のガスバリアフィルムの製造方法は、原料ガスとして、シランガスと、アンモニアガスと、窒素ガスおよび水素ガスの少なくとも一方とを用い、前記シランガスの流量をQ[sccm]、プラズマを生成するために投入する電力をP[W]とした際におけるP/Q[W/sccm]を10W/sccm未満、成膜圧力を20〜200Pa、基板温度を70℃以下として、かつ、前記基板に−100V以下のバイアス電位を印加しつつ、容量結合型プラズマCVDによって、前記基板の表面に窒化珪素膜を成膜することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法を提供する。
【0010】
このような本発明のガスバリアフィルムの製造方法において、前記基板に印加するバイアス電位が、100kHz以上の周波数を有するのが好ましい。
さらに、前記基板に印加するバイアス電位が、400kHz以上の周波数を有することが好ましい。
【0011】
また、長尺な前記基板を巻回してなる基板ロールから、前記基板を送り出し、前記基板を長手方向に搬送しつつ前記窒化珪素膜の成膜を行い、前記窒化珪素膜を成膜した基板をロール状に巻回するのが好ましい。
また、前記基板の搬送経路中に、前記基板が、曲率半径50mm以下で屈曲される経路を有することが好ましい。
また、前記基板を円筒状のドラムの周面の所定領域に巻き掛けて搬送するものであり、前記ドラムを成膜の際の電極として用いることが好ましい。
また、前記ドラムの温度調整手段を有することが好ましい。
【0012】
また、前記シランガスの流量Q[sccm]と、前記プラズマを生成するために投入する電力P[W]とが、1≦P/Q<10[W/sccm]を満たすことが好ましい。
また、前記基板の材質が、ガラス転移温度が70℃以下の樹脂であることが好ましい。
また、前記基板に印加するバイアス電位が、−700V以上、−100V以下であることが好ましい。
また、成膜圧力が40〜100Paであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明によれば、PETフィルムなど、耐熱性が低い樹脂フィルム等を基板として用いて、パーティクルの混入に起因するガスバリア性の低下を大幅に抑制し、優れたガスバリア性を発現し、かつ、可撓性に優れた、高品質なガスバリアフィルムを、安価な製造装置で、かつ、ロール・ツー・ロールなどの方法を用いて高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のガスバリアフィルムの製造方法を実施するプラズマCVD装置の一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のガスバリアフィルムの製造方法について、添付の図面を基に詳細に説明する。
【0016】
図1に、本発明のガスバリアフィルムの製造方法を実施するプラズマCVD装置の一例を概念的に示す。
【0017】
図1に示すプラズマCVD装置10(以下、CVD装置10とする)は、容量結合型プラズマCVD(CCP(Capacitively Coupled Plasma)−CVD)によって、基板Z(被処理物/基材)の表面に、ガスバリア膜として窒化珪素膜(窒化シリコン膜)を成膜(膜を形成)して、ガスバリアフィルムを製造する装置である。
図示例のプラズマCVD装置10は、長尺な基板Z(フィルム原反)を長手方向に搬送しつつ、この基板Zの表面にプラズマCVDによって各種の機能膜を成膜(製造/形成)して、機能性フィルムを製造するものである。
また、このCVD装置10は、長尺な基板Zをロール状に巻回してなる基板ロール20から基板Zを送り出し、長手方向に搬送しつつ機能膜を成膜して、機能膜を成膜した基板Z(すなわち、機能性フィルム)をロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)による成膜を行なう装置である。
【0018】
前述のように、図1に示すCVD装置10は、CCP−CVD(CCP−CVD法)によって、基板Zの表面に成膜を行なうものであり、長尺な基板Zを巻回してなる基板ロール20から基板Zを送り出し、基板Zを長手方向に搬送しつつ機能膜を成膜して、再度、ロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロールによる成膜を行なう装置である。このCVD装置10は、供給室12と、成膜室14と、巻取り室16とを有する。
なお、CVD装置10は、図示した部材以外にも、各種のセンサ、搬送ローラ対や基板Zの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基板Zを所定の経路で搬送するための各種の部材(搬送手段)等、ロール・ツー・ロールによってプラズマCVDによる成膜を行なう装置が有する各種の部材を有してもよい。加えて、プラズマCVDによる成膜室が複数あってもよいし、プラズマCVD以外の蒸着やフラッシュ蒸着、スパッタ等の何らかの成膜を行う成膜室やプラズマ処理等の表面処理室が1つ以上連結されていてもよい。
【0019】
本発明は、後に詳述する、シランガス流量とプラズマ生成のために印加する主たる電力との関係、成膜圧力、基板Zの温度、および、基板Zに印加するバイアス電位以外には、このような通常のCVD装置10を用いて、基本的に、シランガスと、アンモニアガスと、水素ガスおよび/または窒素ガスを原料ガスとして用いる、一般的なCCP−CVDによって、基板Zの表面に窒化珪素膜を成膜する。
【0020】
本発明において、基板Z(被処理物)には特に限定はなく、原料ガスとしてシランガスと、アンモニアガスと、水素ガスおよび/または窒素ガスとを用いた、CCP−CVDによる窒化珪素膜の成膜が可能なものであれば、全ての物(物品)が利用可能である。
好ましくは、本発明の効果が、より好適に発現できる等の点で、耐熱性が低い各種のフィルム状物が好ましく例示され、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の、ガラス転移温度が70℃以下である耐熱性の低い樹脂フィルム(プラスチックフィルム)が好適に例示される。
【0021】
また、本発明において、基板Zは、上記各種のフィルムを本体(基材)として、その表面(少なくとも成膜面)に、保護層、接着層、光反射層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層等の、各種の機能を得るための有機物や無機物からなる層(膜)が形成されているものであってもよい。
【0022】
供給室12は、回転軸24と、ガイドローラ26と、真空排気手段28とを有する。
長尺な基板Zを巻回した基板ロール20は、供給室12の回転軸24に装填される。
回転軸24に基板ロール20が装填されると、基板Zは、供給室12から、成膜室14を通り、巻取り室16の巻取り軸30に至る所定の搬送経路を通される(送通される)。
製造装置10においては、基板ロール20からの基板Zの送り出しと、巻取り室16の巻取り軸30における基板Zの巻き取りとを同期して行なって、長尺な基板Zを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、成膜室14において、基板Zに、プラズマCVDによる機能膜の成膜を連続的に行なう。
【0023】
供給室12は、図示しない駆動源によって回転軸24を図中時計方向に回転して、基板ロール20から基板Zを送り出し、ガイドローラ26によって所定の経路を案内して、基板Zを、隔壁32に設けられたスリット32aから、成膜室14に送る。
【0024】
図示例の製造装置10においては、好ましい態様として、供給室12に真空排気手段28を、巻取り室16に真空排気手段60を、それぞれ設けている。これらの室に真空排気手段を設け、成膜中は、後述する成膜室14と同じ真空度(圧力)とすることにより、隣接する室の圧力が、成膜室14の真空度(機能膜の成膜)に影響を与えることを防止している。
真空排気手段28には、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ドライポンプ、ロータリーポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。この点に関しては、後述する他の真空排気手段50および60も同様である。
【0025】
なお、本発明においては、全ての室に真空排気手段を設けるのに限定はされず、処理として真空排気が不要な供給室12および巻取り室16には、真空排気手段は設けなくてもよい。但し、これらの室の圧力が成膜室14の真空度に与える影響を小さくするために、スリット32a等の基板Zが通過する部分を可能な限り小さくし、あるいは、室と室との間にサブチャンバを設け、このサブチャンバ内を減圧してもよい。
また、全室に真空排気手段を有する図示例の製造装置10においても、スリット32a等の基板Zが通過する部分を可能な限り小さくするのが好ましい。
【0026】
前述のように、基板Zは、ガイドローラ26によって案内され、成膜室14に搬送される。
成膜室14は、基板Zの表面に、CCP(Capacitively Coupled Plasma 容量結合プラズマ)−CVDによって、機能膜を成膜(形成)するものである。
【0027】
図示例において、成膜室14は、ドラム36と、シャワー電極38と、ガイドローラ40および42と、バイアス電源44と、ガス供給手段46と、高周波電源48と、真空排気手段50とを有する。
【0028】
成膜室14のドラム36は、中心線を中心に図中反時計方向に回転する円筒状の部材で、ガイドローラ40によって所定の経路に案内された基板Zを、周面の所定領域に掛け回して、基板Zを後述するシャワー電極38に対面する所定位置に保持しつつ、長手方向に搬送する。
【0029】
また、図示は省略するが、図示例のCVD装置10のドラム36は、窒化珪素膜の成膜中に、基板Zの温度を70℃以下に保つための、温度調節手段を内蔵する。
温度調節手段には、特に限定は無く、温度調節用の液体をドラム36内(ドラム36内の所定流路)に流す温度調節手段、ピエゾ素子を用いる冷却手段等、成膜中に基板Zの温度を70℃以下に維持できるものであれば、公知のものが全て利用可能である。
【0030】
ここで、図示例においては、ドラム36は、CCP−CVDによる成膜における電極対の一方の電極(プラズマ生成のための主たる電力を供給される電極の対向電極)としても作用するものであり、バイアス電源44に接続される。すなわち、図示例においては、ドラム36は、プラズマ生成のための主たる電力を供給されるシャワー電極38の対向電極としても作用する。
バイアス電源44は、このドラム36に、−100V以下の電圧を印加(成膜圧力等に応じて、ドラム36の電位が−100Vとなる電力を供給)する高周波電源(RF電源)である。図示例においては、このバイアス電源44によって、ドラム36に−100V以下の電圧を印加することにより、基板Zに−100V以下のバイアス電位を印加する。なお、このバイアス電源44は、周波数が100kHz以上の高周波電位を、基板Zに印加するものであるのが好ましい。この点に関しては、後に詳述する。
【0031】
なお、本発明において、基板Zにバイアス電位を印加するための電源は、図示例の高周波電源に限定はされず、DCパルス電源等、CCP−CVDにおいて、基板Zへのバイアス電位の印加に利用されている各種の電源が、各種、利用可能である。すなわち、本発明において、基板Zに印加するバイアス電位は、−100V以下であれば、高周波電位でもパルス電位でもよい。また、DCパルス電源を用いる場合にも、100kHz以上のパルス電位をバイアス電位として基板Zに印加するのが好ましい。
また、バイアス電源44として、図示例のような高周波電源を用いる場合には、必要に応じて、電力のインピーダンスを整合する公知の整合器を介して、ドラム36にバイアス電位を印加してもよい。
【0032】
図示例において、シャワー電極38は、一例として中空の直方体であって、最大面を、基板Zを保持する、電極を兼ねるドラム36と対面して配置される。
このシャワー電極38は、プラズマ生成のための主たる電力(メインの電力)を供給される電極であり、前記ドラム36と共に、CCP−CVDを行なうための電極対を形成する。シャワー電極38は、後述する高周波電源48に接続される。
【0033】
シャワー電極38のドラム36との対向面には、多数の貫通穴が全面的に形成されている。さらに、シャワー電極38は、ガス供給手段46と接続されており、シャワー電極38内に原料ガスが供給される。
すなわち、シャワー電極38は、電極のみならず、原料ガスの導入手段としても作用するものであり、ガス供給手段46からシャワー電極38内に供給された原料ガスは、ドラム36との対向面に形成された貫通穴から、電極としても作用するドラム36と、シャワー電極38との間に供給される。
【0034】
ガス供給手段46は、プラズマCVD装置やスパッタリング装置等に利用されている公知のガス供給手段である。
本発明において、ガス供給手段46は、シランガスおよびアンモニアガスに加え、水素ガスおよび窒素ガスの少なくとも一方を、シャワー電極38に供給する。なお、ガス供給手段46は、必要に応じて、これらのガスに加え、アルゴンガス等の不活性ガスを、補助的なガスとしてシャワー電極46に供給してもよい。
【0035】
なお、本発明は、原料ガスの導入手段として、シャワー電極を利用する構成に限定はされず、プラズマ生成のための主たる電力を供給される電極には、電極としての作用のみを持たせ、例えば、電極とドラム36との間に、ガスを供給するためのノズルやシャワーノズル等を設けて、此処から原料ガスを供給する方法等、プラズマCVD装置において利用されているガス導入手段が、各種、利用可能である。
【0036】
前述のように、シャワー電極38には、高周波電源48が接続される。
高周波電源48は、シャワー電極38に、CCP−CVDにおけるプラズマを生成するためのメイン電力を供給するための電源で、プラズマCVD装置に利用されている公知の高周波電源(RF電源)が、各種利用可能である。
また、高周波電源48は、必要に応じて、電力のインピーダンスを整合する公知の整合器を介して、シャワー電極38にプラズマ励起電力を供給してもよい。
【0037】
真空排気手段50は、プラズマCVDによる機能膜の成膜のために、成膜室14内を排気して、所定の成膜圧力に保つものであり、前述のように、真空成膜装置に利用されている、公知の真空排気手段である。
【0038】
本発明は、原料ガスとして、シランガス(SiH4)と、アンモニアガス(NH3)と、水素ガス(H2)および窒素ガス(N2)の少なくとも一方とを原料ガスとして用い、シランガスの流量をQ[sccm]、プラズマを生成するための主たる投入電力をP[W]とした際におけるP/Q[W/sccm]を10W/sccm未満、成膜圧力を20〜200Paとし、基板温度を70℃以下に維持して、基板に−100V以下のバイアス電位を印加して、基板Zの表面にCCP−CVDによって窒化珪素膜を成膜する。
すなわち、図示例のCVD装置10においては、ガス供給手段46からシランガスと、アンモニアガスと、水素ガスおよび/または窒素ガスとを供給して、ガス供給手段46から供給するシランガスの流量Qおよび高周波電源48からシャワー電極38への投入電力PをP/Q<10W/sccm、成膜圧力を20〜200Paとし、ドラム36が内蔵する温度調整手段によって基板Zの温度を70℃以下に維持し、かつ、バイアス電源44からドラム36に−100V以下のバイアス電位を印加しつつ、基板Zの表面にCCP−CVDによって窒化珪素膜を成膜する。
【0039】
ここで、本発明者らの検討によれば、シランガスの流量Qに対して、CCP−CVDにおけるプラズマ生成のために投入する主たる電力P、すなわち、図1に示すCVD装置10であれば、シャワー電極38に投入する電力Pを大きくすると、基板上に成膜される窒化珪素膜は緻密なものとなり、ガスバリア性は向上する。しかしながら、窒化珪素膜が緻密なものとなるほど、窒化珪素膜の柔軟性がなくなり耐屈曲性が低下する。そのため、曲げ等によって、膜が破壊されガスバリア性が低下してしまうおそれがある。
【0040】
本発明者らは、このような問題点を解決するために、検討を重ねた結果、シランガスの流量Qに対して、プラズマ生成のための主たる投入電力Pを、P/Q=10W/sccm未満とすることにより、基板上に成膜した窒化珪素膜を柔軟で耐屈曲性に優れた、すなわち、可撓性のある膜とすることができることを見出した。
【0041】
また、CCP−CVDによる成膜においては、パーティクルが発生しやすい。このパーティクルが窒化珪素膜中に混入すると、ガスバリア性が大幅に低下して、目的とする性能のガスバリアフィルムを製造することができない。
ここで、上記原料ガスを用いて上記成膜条件で生成されるパーティクルは、一般的に、マイナスに帯電している。本発明においては、これを利用して、基板Zに−100V以下のバイアス電位を印加しつつ、窒化珪素膜を成膜する。これにより、基板Zに対して、パーティクルを浮遊させたような状態とすることができ、成膜中に窒化珪素膜にパーティクルが混入することを防止できる。
【0042】
すなわち、本発明は、上記条件で基板Zに窒化珪素膜を成膜することにより、PETフィルム等の耐熱性が低い基板Zを用いて、可撓性に優れ、窒化珪素膜中へのパーティクルの混入に起因するガスバリア性の低下を抑制した、優れたガスバリア性を発現する高品位なガスバリアフィルムを、安価な装置を用い、かつ良好な生産効率で、安定して製造することを可能にしたものである。
【0043】
本発明において、シランガスの流量Q[sccm]と、プラズマ生成のために電極に供給する主たる電力P[W]との関係P/Q[W/sccm]は、10W/sccm未満である。
P/Qが10W/sccm以上では、基板上に成膜される窒化珪素膜が緻密なものとなりすぎて、柔軟性がなくなり、耐屈曲性が低下してしまい、曲げ等によって、膜が破壊されガスバリア性が低下してしまうおそれがある。例えば、ロール・ツー・ロールのような方法を利用して成膜を行なう場合には、基板の搬送方向を変更するために、ガイドローラ等により基板を屈曲させる必要がある場合が多い。また、成膜された基板は、巻取り軸にロール状に巻回される。そのため、成膜された膜が柔軟性のない耐屈曲性に劣る膜であると、搬送や巻き取りの際の屈曲によって、膜が破壊されガスバリア性が低下してしまうおそれがある。
【0044】
なお、P/Qの下限には、特に限定はないが、より好適なガスバリア性を発現できる点で、P/Qは、1W/sccm以上とするのが好ましい。
【0045】
なお、シランガスおよびアンモニアガスの流量には、特に限定はなく、要求される成膜レート、成膜面積等に応じて、上記条件を満たすように、適宜、決定すればよい。
【0046】
水素ガスおよび窒素ガスは、いずれも、主に希釈ガスとして作用するものである。水素ガスおよび窒素ガスは、いずれか一方のみを用いてもよく、両者を用いてもよい。
水素ガスを用いることにより、窒化珪素膜内への水素の混入を抑制できる点で有利である。また、窒素ガスを用いることにより、窒化珪素膜の窒素源としての作用も発現するので、成膜レートの点で有利である。
なお、水素ガスおよび窒素ガスの流量にも、特に限定はなく、要求される成膜レート等に応じて、適宜、決定すればよいが、水素ガスおよび窒素ガス共に、シランガス流量の5〜10倍の流量とするのが好ましい。また、水素ガスと窒素ガスとを併用する場合には、両ガスの流量は、合計で、シランガス流量の5〜10倍の流量とするのが好ましい。
【0047】
また、プラズマ生成のための主となる電力P、すなわち、図示例においては、シャワー電極38に供給する電力Pの強さにも特に限定はなく、要求される成膜レート等に応じて、適宜、設定すればよく、従って、シランガスの流量に応じて、本発明の範囲となる電力を、適宜、設定すればよい。
さらに、この電力の周波数にも、特に限定はなく、CCP−CVDによる窒化珪素膜の成膜で利用されている各種の周波数の電力が、各種、利用可能である。
【0048】
また、本発明において、成膜圧力は20〜200Paである。
成膜圧力が200Paを超えると、成膜中に気相反応によって、大きなパーティクルが多量に生成してしまい、基板Zへのバイアス電位の印加では膜中へのパーティクルの混入を防ぐことができず、膜中にパーティクルが混入することに起因するガスバリア性および膜質の低下が生じてしまう。
逆に、成膜圧力を20Pa未満とするためには、高性能な真空排気手段や真空チャンバを備える必要があるため、装置のコストが高くなってしまう。特に、成膜レートを向上して、高い生産性でガスバリアフィルムを製造したい場合には、成膜圧力を20Pa未満では、装置コストが非常に高くなってしまう。言い換えれば、本発明によれば、長期に渡って良好なガスバリア性を発現する、高品位なガスバリアフィルムを、安価な装置で、かつ、高い生産性で製造することが可能である。
【0049】
なお、窒化珪素膜へのパーティクルの混入を、より好適に抑制できる、装置コストを、好適により低減できる等の点で、成膜圧力は40〜100Paが、より好ましい。
【0050】
本発明の製造方法においては、基板Zの温度を70℃以下に維持して、窒化珪素膜の成膜を行なう。
基板Zの温度が70℃を超えると、PETフィルム等の耐熱性の低い基板Zを用いたガスバリアフィルムの製造が出来ない。
なお、基板温度の下限には、特に限定はなく、成膜条件等に応じて、窒化珪素膜が成膜できる温度であればよい。
【0051】
また、本発明の製造方法においては、成膜中、基板Zに−100V以下のバイアス電位を印加する。すなわち、図示例のCVD装置10においては、成膜圧力等に応じて、電極としても作用するドラム36の電位が−100V以下となるように、バイアス電源44からドラム36に供給する電力(バイアス電力)を調整しつつ、基板Zに窒化珪素膜を成膜する。
なお、基板Zに印加するバイアス電位は、高周波電位である場合には、直流成分(Vdc)を−100V以下とし、DCパルス電位である場合には、最低電位を−100V以下とすればよい。
【0052】
CCP−CVDによる成膜において、成膜中に基板Zにかけるバイアス電位は、膜の緻密化等を目的とするのが一般的である。これに対し、本発明においては、膜中へのパーティクルの混入防止という、通常とは、全く異なる効果を目的として、成膜中に、基板Zにバイアス電位を印加する。
前述のように、前記本発明の成膜条件で、気相反応によって生成するパーティクルは、マイナスの電荷を帯びている。従って、基板Zに−100V以下のバイアス電位を印加することにより、基板Z(成膜中の窒化珪素膜)に侵入しようとするパーティクルを、基板Zに対して浮いた状態にでき、成膜中にパーティクルが窒化珪素膜に混入することを防止できる。本発明においては、これにより、窒化珪素膜に混入するパーティクルに起因するガスバリア性の劣化を、大幅に低減している。
【0053】
基板Zに印加するバイアス電位が−100V超では、窒化珪素膜へのパーティクル混入防止効果を十分に得ることができず、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下して、目的とするガスバリア性を有するガスバリアフィルムを、安定して製造できない。
【0054】
他方、基板Zに印加するバイアス電位の下限には、特に限定はなく、プラズマ生成のために供給する主な電力(図示例においては、シャワー電極38に供給する電力)等に応じて、適宜、設定すればよいが、−700V以上とするのが好ましい。
基板Zに印加するバイアス電位の下限を−700V以上とすることにより、バイアス電位の作用が強くなり過ぎる(バイアス電位の絶対値が大きくなり過ぎる)ことに起因する、基板Zへのイオン衝撃によるガスバリア性の低減を確実に防止できる等の点で、より好ましい結果を得ることができる。
【0055】
ここで、基板Zに印加するバイアス電位すなわちドラム36に供給する高周波電位(電力)の周波数には、特に限定は無いが、100kHz以上の高周波電位であるのが好ましい。また、基板Zに印加するバイアス電位として、パルス電位を印加する場合には、周波数が100kHz以上のパルス電位を印加するのが好ましい。
このような構成とすることにより、基板Zに有効なバイアスが印加されていない時間を短くして、窒化珪素膜へのパーティクル混入防止効果を、より好適に得ることができる。
なお、上記効果をより好適に得られる等の点で、基板Zに印加するバイアス電位の周波数は、より好ましくは400kHz以上である。
【0056】
また、基板Zにバイアス電位を印加するための電力(すなわちバイアス電源44からの供給電力)にも、特に限定は無く、プラズマ生成のための主たる電力等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0057】
機能膜を成膜された基板Z(すなわち、機能性フィルム)は、ドラム36からガイドローラ42に搬送され、ガイドローラ42によって案内されて、成膜室14と巻取り室16とを隔離する隔壁56に形成されたスリット56aから、巻取り室16に搬送される。
【0058】
図示例において、巻取り室16は、ガイドローラ58と、巻取り軸30と、真空排気手段60とを有する。
巻取り室16に搬送された基板Z(機能性フィルム)は、ガイドローラ58に案内されて巻取り軸30に搬送され、巻取り軸30によってロール状に巻回され機能性フィルムロールとして、次の工程に供される。
また、先の供給室12と同様、巻取り室16にも真空排気手段60が配置され、成膜中は、巻取り室16も、成膜室14における成膜圧力に応じた真空度に減圧される。
【0059】
図1に示すCVD装置10は、長尺な基板を、基板の長手方向に搬送しつつ、ドラムに巻き掛けて成膜を行なう、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)の装置である。しかしながら、本発明のガスバリアフィルムの製造方法は、これに限定はされず、ロール・ツー・ロールの装置であって、成膜室に、対面して配置される1対の板状の電極対を設け、この電極対の間を、長尺な基板を長手方向に搬送すると共に、基板と電極との間に原料ガスを供給してCCP−CVDによる成膜を行なう装置も好適である。あるいは、単体の基板Zに窒化珪素膜を成膜して、ガスバリアフィルムを製造する、いわゆるバッチ式の装置にも、好適に利用可能である。
【0060】
なお、前述のとおり、ロール・ツー・ロールの装置では、基板Zの搬送途中にガイドローラ等により基板Zを屈曲させて搬送方向を変更する必要が生じる場合が多い。また、成膜を終了した基板Zは、順次、成膜室(成膜室)から排出されて、巻取り軸にロール状に巻回される。このように、ロール・ツー・ロールの装置では、成膜された基板Zが搬送や巻き取りの際に屈曲されることが多く、成膜された膜が屈曲性に劣ると、屈曲により膜が破壊され、ガスバリア性が低下してしまうおそれがある。従って、可撓性を有する膜を成膜することができる本発明が好適に利用可能である。
特に、基板Zの搬送経路中に、基板Zが曲率半径50mm以下に屈曲される経路を有する場合に、本発明が好適に利用可能である。
【0061】
また、バッチ式の装置では、成膜が終了した後、基板Zに印加するバイアス電位を切った後に、真空チャンバから基板Zを取り出す必要がある。
ここで、基板Zに印加するバイアス電位を切ると、その時点で、基板Zへのパーティクル侵入防止効果が無くなるので、成膜した窒化珪素膜の表面にパーティクルが付着してしまい、基板Zの表面が汚れてしまう。特に、成膜面を上に向けて成膜を行なう場合には、バイアス電位によって基板の上に浮遊していたパーティクルが、一斉に基板に落下してしまい、基板表面を汚してしまう。
【0062】
これに対し、ロール・トゥ・ロールの装置であれば、成膜を終了した基板は、順次、成膜室(成膜が行なわれる空間)から排出されて、ロール状に巻回される。
従って、成膜(ガスバリアフィルムの製造)を終了して、成膜室において、基板Zに印加するバイアス電位を切っても、窒化珪素膜の表面にパーティクルが付着することを防止できる。また、仮に付着しても、長尺な基板の終端部などの極一部である。
【0063】
以上、本発明のガスバリアフィルムの製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。
【0065】
[実施例1]
図1に示すCVD装置10を用いて、基板Zの表面に厚さ100nmの窒化珪素膜を成膜して、ガスバリアフィルムを製造した。
【0066】
基板Zは、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績社製 コスモシャインA4300)を用いた。なお、膜を形成する長さは、1000mとした。
また、原料ガスとして、シランガス(SiH)(流量50sccm)、アンモニアガス(NH)(流量50sccm)、窒素ガス(N)(流量400sccm)を用いた。
また、ドラムとして、母材をSUS304とし、ハードクロムメッキを施したもので、直径1000mmのドラムを用いた。また、ドラムは内部に温度調整手段を有している。
【0067】
また、成膜室(真空チャンバ)の圧力は40Paとした。
さらに、成膜中は、ドラムが内蔵する温度調節手段によって、基板温度が70℃となるように調節した。
また、成膜する機能膜の膜厚は100nmとした。
【0068】
さらに、ドラムに接続されるバイアス電源として、周波数100kHzの電源を用い、ドラムの電位が−100Vとなるように出力を調整した。
また、シャワー電極に接続される高周波電源として、周波数13.56MHzの高周波電源を用い、シャワー電極に300Wの電力を供給した。
すなわち、本例においては、シャワー電極38に供給する電力/シランガス流量=P/Q=300W/50sccm=6W/sccmである。
【0069】
[実施例2〜5]
高周波電源からシャワー電極に供給する電力を475Wに変更、すなわち、P/Qを9.5W/sccmに変更した以外(実施例2);
成膜圧力を200Paに変更した以外(実施例3);
成膜圧力を20Paに変更した以外(実施例4);
および、バイアス電源からドラムに印可するバイアス電位の周波数、すなわち基板Zに印加するバイアス電位の周波数を50kHzに変更した以外(実施例5); は全て、前記実施例1と同様にして、基板Zの表面に窒化珪素膜を成膜して、ガスバリアフィルムを製造した。
【0070】
[比較例1〜4]
高周波電源からシャワー電極に供給する電力を550Wに変更、すなわち、P/Qを11W/sccmに変更した以外(比較例1);
基板温度を100℃に変更した以外(比較例2);
バイアス電源からドラムに印可するバイアス電位を−80Vに変更した以外(比較例3);
および、成膜圧力を210Paに変更した以外(比較例4); は全て、前記実施例1と同様にして、基板Zの表面に窒化珪素膜を成膜して、ガスバリアフィルムを製造した。
【0071】
得られた各ガスバリアフィルムについて、ガスバリア性および耐屈曲性を調べ、その結果に応じて、総合評価を行なった。
[ガスバリア性]
MOCON社製の水蒸気透過率測定装置「AQUATRAN」を用いて、水蒸気透過率(WVTR)[g/m2/day]を測定した。
【0072】
[耐屈曲性]
製造したガスバリアフィルムのサンプルの水蒸気透過率を測定し、その後、一旦、φ10mmの丸棒に一周巻き付けて、再度、水蒸気透過率を測定した。丸棒に巻き付ける前後で、水蒸気透過率に変化がないものを○、悪化したものを×とした。
【0073】
[総合評価]
ガスバリア性が0.005g/m2/day以下で、かつ、耐屈曲性が「○」のものを「◎」、
ガスバリア性が0.005g/m2/day超かつ0.02g/m2/day未満で、さらに、耐屈曲性が「○」のものを「○」、
ガスバリア性が0.02g/m2/day以上、および、耐屈曲性が「×」の何れか一方でも当てはまるものを「×」、と評価した。
成膜条件、および、評価結果を、下記表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記表1に示されるように、本発明の製造方法で製造したガスバリアフィルムは、ガスバリア性(WVTR)および耐屈曲性に優れた、高品位なガスバリアフィルムである。なお、基板Zに印加するバイアス電位の周波数が50kHzである実施例5は、他の実施例よりも窒化珪素膜へのパーティクルの混入が多いと考えられ、他の実施例に比して、若干、ガスバリア性に劣るが、多くの用途では、実用上、問題は無い。
【0076】
これに対し、P/Qが大きすぎる、すなわち、プラズマ生成のための電力が大きすぎる比較例1は、丸棒に巻き付ける前の水蒸気透過率は良好であるものの、丸棒に巻き付けた後の水蒸気透過率が悪化してしまった。これは、成膜した窒化珪素膜が緻密すぎる膜となり、耐屈曲性に劣る脆い膜になったものと考えられる。
また、基板温度が高すぎる比較例2は、基板が熱により変形したため、正常な膜を形成することができず、ガスバリア性および耐屈曲性ともに測定できなかった。
【0077】
また、基板に印加するバイアス電位が高すぎる(絶対値が小さい)比較例3は、窒化珪素膜中へのパーティクルの混入を十分に抑制できず、ガスバリア性が低くなってしまった。
さらに、成膜圧力が高すぎる比較例4は、大きなパーティクルが大量に生成されてしまい、基板Zにバイアス電位を印加しても、窒化珪素膜中へのパーティクルの混入を十分に抑制できず、ガスバリア性が低くなってしまった。
以上の結果より、本発明の効果は、明らかである。
【符号の説明】
【0078】
10 (プラズマ)CVD装置
12 供給室
14 成膜室
16 巻取り室
20 基板ロール
24 回転軸
26、40、42、58 ガイドローラ
28、50、60 真空排気手段
30 巻取り軸
32、56 隔壁
32a、56a スリット
36 ドラム
38 シャワー電極
44 バイアス電源
46 ガス供給手段
48 高周波電源
Z 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスとして、シランガスと、アンモニアガスと、窒素ガスおよび水素ガスの少なくとも一方とを用い、
前記シランガスの流量をQ[sccm]、プラズマを生成するために投入する電力をP[W]とした際におけるP/Q[W/sccm]を10W/sccm未満、成膜圧力を20〜200Pa、基板温度を70℃以下として、かつ、前記基板に−100V以下のバイアス電位を印加しつつ、容量結合型プラズマCVDによって、前記基板の表面に窒化珪素膜を成膜することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記基板に印加するバイアス電位が、100kHz以上の周波数を有する請求項1に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記基板に印加するバイアス電位が、400kHz以上の周波数を有する請求項2に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項4】
長尺な前記基板を巻回してなる基板ロールから、前記基板を送り出し、前記基板を長手方向に搬送しつつ前記窒化珪素膜の成膜を行い、前記窒化珪素膜を成膜した基板をロール状に巻回する請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記基板の搬送経路中に、前記基板が、曲率半径50mm以下で屈曲される経路を有する請求項4に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記基板を円筒状のドラムの周面の所定領域に巻き掛けて搬送するものであり、前記ドラムを成膜の際の電極として用いる請求項4または5に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ドラムの温度調整手段を有する請求項4〜6のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記シランガスの流量Q[sccm]と、前記プラズマを生成するために投入する電力P[W]とが、1≦P/Q<10[W/sccm]を満たす請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記基板の材質が、ガラス転移温度が70℃以下の樹脂である請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記基板に印加するバイアス電位が、−700V以上、−100V以下である請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項11】
成膜圧力が40〜100Paである請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−162851(P2011−162851A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27629(P2010−27629)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】