説明

ガス処理装置

【課題】 非平衡プラズマによるガス処理を効率的かつ低コストで行うことができ、しかも、消費電力が少なく、装置の小型化が可能なガス処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明のガス処理装置1は、被処理ガスgを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部2と、このプラズマ反応部2から排出される未分解のガス及び非平衡プラズマにより生成される副生成物を含むガスg’を光触媒により分解処理する光触媒反応部3とにより構成され、プラズマ反応部2は、棒状の接地電極11及び誘電体12と、円筒状の表面電極13と、光触媒体15とにより構成され、光触媒反応部3は、透明ガラスからなる筒状の容器31と、この内部に充填された光触媒体32と、容器31の外側に設けられた光源33とにより構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非平衡プラズマによるガス処理を効率的かつ低コストで行うことが可能であり、しかも消費電力が少なく、装置の小型化が可能なガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物や産業廃棄物の焼却炉から排出される排気ガス中には、NOx、SOx、ダイオキシン等の種々の有害化学物質が含まれているが、これらの有害化学物質による環境汚染や人体への悪影響を防ぐためには、これらの有害化学物質を含む有害ガスを分解処理して無害化した後に、大気中へ排出しなければならない。
そこで、有害ガスを分解処理する方法として種々のガス処理方法が提案されている。
中でも、近年、放電を利用するガス処理方法が検討され、提案されている。このガス処理方法は、ガス処理に伴なう後処理が必要でないこと、処理装置を小型化することができること等の利点がある。
【0003】
この放電を利用するガス処理方法としては、熱プラズマを利用する方法と、非平衡プラズマ(低温プラズマ)を利用する方法とが挙げられる。特に、非平衡プラズマを利用する方法では、電子のエネルギー(電子温度)のみが高く(いわゆるホットエレクトロン)、イオンおよび分子のエネルギー(イオン温度および分子温度)は低い。したがって、非平衡プラズマを利用する方法では、処理されるガスの温度自体は常温であるにもかかわらず電子温度が高いので、高温に適さない材料や条件に適用できる上に、非平衡プラズマを発生する装置の設置が容易で、熱プラズマでは生成困難なラジカルを生成して、特異な化学反応を引き起こすことができる等の利点がある。
【0004】
このような非平衡プラズマを利用した反応装置としては、沿面放電(パルス放電)式プラズマ反応器、バリア放電式プラズマ反応器、パックトベッド放電式プラズマ反応器、これらを組み合わせた複合プラズマ反応器等が提案されている。
また、プラズマ反応器と光触媒ユニットとを組み合わせた空気清浄装置も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−329499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の種々のプラズマ反応器では、低電力の範囲では分解の対象となるガスの分解効率が低いために、このガスの分解効率を上げるためには、電力を大きくする必要がある。しかしながら、電力の値を高くしていくと、ある電力値を超えた場合に窒素酸化物(NO)が発生してしまうという問題点があった。
【0006】
従来のプラズマ反応器を用いた場合、プラズマ放電によりオゾン(O)が発生してしまうために、このオゾンを二酸化マンガン(MnO)や活性炭(C)等のオゾン分解触媒を用いて分解処理する必要があるが、これらの触媒は、使用とともに分解能力が低下するために、定期的に回収・交換する必要があった。また、活性炭(C)を用いた場合、オゾンは分解処理はできるが、窒素酸化物(NO)は分解処理できないという問題点があった。
また、プラズマ反応器と光触媒ユニットとを組み合わせた空気清浄装置では、対象となる分解処理可能なガス中の有害物質の濃度が数ppm程度と低く、これ以上の高濃度の有害物質を除去することは難しい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、非平衡プラズマによるガス処理を効率的かつ低コストで行うことができ、しかも、消費電力が少なく、装置の小型化が可能なガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次の様なガス処理装置を提供した。
すなわち、本発明のガス処理装置は、被処理ガスを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部と、このプラズマ反応部から排出される未分解の被処理ガス及び前記非平衡プラズマにより生成される副生成物を光触媒により分解処理する光触媒反応部とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
このガス処理装置では、プラズマ反応部の非平衡プラズマ内に被処理ガスを導入すると、非平衡プラズマにより被処理ガスを高い分解効率(高いエネルギー効率)で分解する。その結果、被処理ガスの分解効率が向上する。
また、プラズマ反応部から排出される未分解の被処理ガス及び非平衡プラズマにより生成される副生成物は、光触媒反応部の光触媒により分解処理する。
このように、分解効率(エネルギー効率)の高いプラズマ反応部と、プラズマ反応部よりは分解効率(エネルギー効率)が低いが有害な分解副生成物を発生させない光触媒反応部を組み合わせることにより、被処理ガスの分解効率をさらに向上させるとともに、分解処理に費やす消費電力が小さくなり、装置の小型化も可能になる。
【0010】
前記プラズマ反応部は、中心電極と該中心電極に誘電体を介して設けられた表面電極とを備えた放電電極と、この放電電極の非平衡プラズマを発生する領域に配置され光触媒を含有する光触媒体とを備えた構成とすることが好ましい。
【0011】
このプラズマ反応部では、中心電極と表面電極との間に電圧を印加して非平衡プラズマ内に被処理ガスを導入すると、非平衡プラズマ及び該非平衡プラズマにより励起される光触媒の双方により被処理ガスを分解する。その結果、被処理ガスの分解効率が向上する。
また、非平衡プラズマを発生する領域に、光触媒を含有する光触媒体を配置することで、誘電体でもある光触媒体の存在が放電を容易にし、高圧パルス電源等の高価な設備を要せず、分解処理コストの低減が可能になる。
【0012】
このプラズマ反応部では、前記中心電極を、線状、棒状または筒状の電極とし、前記表面電極を前記線状、棒状または筒状の電極に同軸的に設けられたスパイラル状のコイルとし、これら中心電極と表面電極との間の非平衡プラズマを発生する領域に前記光触媒体を配置した構成としてもよい。
この様な構成とすることにより、被処理ガスが非平衡プラズマにより直接分解されるとともに、非平衡プラズマにより励起された光触媒によっても分解され、よって、被処理ガスの分解効率が向上する。
また、プラズマ反応部の構造が簡単化され、製造コストが低減される。
【0013】
このプラズマ反応部では、前記中心電極を棒状電極とし、前記表面電極を前記棒状電極に同軸的に設けられた筒状電極とし、これら中心電極と表面電極との間の非平衡プラズマを発生する領域に前記光触媒体を配置した構成としてもよい。
この様な構成とすることにより、被処理ガスが非平衡プラズマにより直接分解されるとともに、非平衡プラズマにより励起された光触媒によっても分解され、よって、被処理ガスの分解効率が向上する。
また、プラズマ反応部の構造が簡単化され、製造コストが低減される。
【0014】
このプラズマ反応部では、前記誘電体を、前記中心電極に同軸的に設けられた筒状の誘電体としてもよい。
この様な構成とすることにより、プラズマ反応部の構造が簡単化され、製造コストが低減される。
【0015】
前記光触媒反応部は、前記光触媒を活性化する光を照射する光照射手段を備えた構成とすることが好ましい。
この光触媒反応部では、光照射手段が照射する光により前記光触媒を活性化するので、プラズマ反応部から排出される未分解の被処理ガス及び低温プラズマにより生成される副生成物を、活性の高い光触媒により、より効率的に分解処理する。よって、被処理ガスの分解効率がさらに向上するとともに、分解処理に費やす消費電力もさらに小さくなり、装置のさらなる小型化も可能になる。
【0016】
前記プラズマ反応部、前記光触媒反応部のいずれか一方または双方を多段に配置してもよい。
このように、分解効率(エネルギー効率)の高いプラズマ反応部、プラズマ反応部よりは分解効率(エネルギー効率)が低いが有害な分解副生成物を発生させない光触媒反応部のいずれか一方または双方を多段に配置することで、被処理ガスの分解効率がさらに高まるとともに、分解処理に費やす消費電力もさらに小さくなり、装置のさらなる小型化も可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガス処理装置によれば、被処理ガスを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部と、このプラズマ反応部から排出される未分解の被処理ガス及び前記低温プラズマにより生成される副生成物を光触媒により分解処理する光触媒反応部とを備えたので、分解効率(エネルギー効率)の高いプラズマ反応部と、プラズマ反応部よりは分解効率(エネルギー効率)が低いが有害な分解副生成物を発生させない光触媒反応部を組み合わせることにより、被処理ガスの分解効率をさらに向上させることができ、分解処理に費やす消費電力を小さくすることができる。
【0018】
また、高濃度や大量の被処理ガスであっても、プラズマ反応部と光触媒反応部を組み合わせることにより、光触媒反応だけでは処理しきれない被処理ガスを処理することができる。
また、プラズマ反応部及び光触媒反応部の構成が簡単であり、しかも高圧パルス電源等の高価な設備を必要としないので、装置の低価格化を図ることができ、分解処理コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のガス処理装置の各実施の形態について図面に基づき説明する。
「第1の実施形態」
図1は本発明の第1の実施形態のガス処理装置を示す概略構成図である。
このガス処理装置1は、被処理ガスgを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部2と、このプラズマ反応部2から排出される未分解のガス及び前記非平衡プラズマにより生成される副生成物を含むガスg’を光触媒により分解処理する光触媒反応部3とにより概略構成されている。
【0020】
プラズマ反応部2は、図1及び図2に示すように、外径が5mm程度の棒状の導電性及び耐熱性を有する材料、例えば、ステンレススチール、タングステン、銀、銅、チタン等からなる中心電極11の外周部には、この外周部の主要部を覆う様に誘電性を有する材料、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム等からなる厚みが0.5〜5mm程度の誘電体12が一体に形成され、これら中心電極11及び誘電体12と同軸的かつこれらを囲む様に導電性及び耐熱性を有する材料、例えば、ステンレススチール、タングステン、銀、銅、チタン等からなる円筒状の筐体の表面電極13が設けられ、これら中心電極11、誘電体12及び表面電極13の両端部には、絶縁体からなる蓋14が設けられ、これら中心電極11、誘電体12、表面電極13および蓋14により放電電極15が構成されている。
【0021】
この放電電極15の非平衡プラズマを発生する非平衡プラズマ発生領域R、すなわち中心電極11及び誘電体12と表面電極13との間の円筒状の領域には、光触媒体16が充填されている。
また、この中心電極11は配線17を介して、表面電極13は配線18を介して、電源19に接続されている。
また、一方の蓋14(図1中左側)には、処理すべきガスgを非平衡プラズマ発生領域Rに導入するための配管21が設けられ、他方の蓋14(図1中右側)には、非平衡プラズマ領域Rから排出されるガスg’を光触媒反応部3に送るための配管22が設けられている。
【0022】
光触媒反応部3は、少なくとも主要部が光透過性を有する材料、例えば、石英ガラス等の透明ガラスからなる筒状の容器31の内部には、光触媒体32が充填され、この容器31の外側には、この容器31を挟むように、光触媒体32を紫外線または可視光により活性化させるための光を照射する一対の光源(光照射手段)33が設けられている。光源33としては、紫外線により活性化させる場合には紫外線ランプが、可視光により活性化させる場合には白色ランプが好適に用いられる。
【0023】
この容器31の一方の端部には、プラズマ反応部2から排出される未分解のガス及び非平衡プラズマにより生成される副生成物を含むガスg’を導入するための配管22が設けられ、この容器31の他方の端部には、未分解のガス及び非平衡プラズマにより生成される副生成物を含むガスg’を光触媒体32により分解処理したガスg”を排出する配管34が設けられている。
【0024】
光触媒体16、32は、酸化チタン等の光触媒を含有するもので、光触媒単体の他、この光触媒を除く固体物質、あるいは光触媒を除く固体物質と光触媒を除く触媒等を含んでいてもよい。また、その形状は、特に限定されないが、光触媒とその他の成分とを混合し造粒して得られる顆粒、または光触媒とその他の成分とを混合した混合粉を造粒・成形して得られるペレット(成形体)が好ましい。
【0025】
光触媒は、光触媒反応を行うことができるものであれば特に限定されないが、例えば、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化カドミウム(CdSe)、ガリウムヒ素(GaAs)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等であり、特に、二酸化チタン(TiO)は、紫外線反応または可視光反応を行うので好ましい。
【0026】
この二酸化チタン(TiO)は、平均粒径が5〜300nm、粒度分布の範囲が3〜500nmの微粒子が好ましい。
平均粒径が5nm未満であると、嵩密度が小さいために、加圧成形した際の嵩減りが大きく、形状保持が難しくなるからであり、平均粒径が300nmを超えると、粒子の表面積が小さくなり、光活性が低下するからである。
【0027】
この二酸化チタン(TiO)微粒子は、分解性能を向上させるために、Ag、Au、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Li、Ni、Mn、Mo、Pd、Pt、Rh、V、W、Znの群から選択される1種または2種以上の元素を担持することが好ましい。
この光触媒は、前記光触媒を除く触媒に担持されているか、もしくは前記光触媒自体であることが好ましい。
【0028】
光触媒を除く固体物質としては、補強材としての機能を有するもので、吸着性多孔質物質、誘電性物質、粘土性物質、合成樹脂の群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
この吸着性多孔質物質は、比表面積が200m/g以上であり、かつ、HY型ゼオライト、HX型ゼオライト、H型モルデナイト、シリカアルミナ、金属シリケートの群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
また、この吸着性多孔質物質は、比表面積が10m/g以上かつ750m/g以下であり、かつ、シリカアルミナ、ゼオライト、シリカゲル、ジルコニア、チタニアの群から選択された1種または2種以上であってもよい。
【0029】
誘電性物質としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等の強誘電体が好ましく、粘土性物質としては、タルク等の珪酸マグネシウム系またはモンモリロナイトに代表されるスクメタイト系の粘土物質が好ましく、合成樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性樹脂が好ましい。
【0030】
光触媒を除く触媒としては、Ag、Au、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Li、Ni、Mn、Mo、Pd、Pt、Rh、V、W、Znの群から選択される1種または2種以上の元素を含有することが好ましい。
この光触媒を除く触媒は、比表面積が10m/g以上の触媒担体、例えば、アルミナ、コージェライト等に、Ag、Au、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Li、Ni、Mn、Mo、Pd、Pt、Rh、V、W、Znの群から選択される1種または2種以上の元素を5重量%以下担持したものであってもよい。
【0031】
この光触媒体16、32における光触媒(L)、この光触媒を除く固体物質(S)、光触媒を除く触媒(C)それぞれの重量比は、特に制限は無いが、通常、光触媒(L)は10〜80w/w%が好ましく、より好ましくは40〜80w/w%である。
その理由は、10w/w%未満では光触媒の機能が低く、また、80w/w%を超えると成型品の強度が低下するからである。
【0032】
この光触媒体16(32)は、次の様にして作製される。
(a)顆粒状の光触媒体
まず、所定の平均粒径の光触媒微粒子及び固体物質微粒子を、所定の組成となるようにそれぞれ秤量し、これらを乾式あるいは湿式ボールミル等を用いて混合する。
【0033】
(b)ペレット状の光触媒体
上記にて得られた混合粉を所定量、成型用金型に充填し、その後、この金型に所定の圧力を加え、上記粉体を圧縮成形する。
この圧縮成形は、大気中、真空中または不活性雰囲気中にて行われ、圧力は500〜6000kg/cm程度、加圧時間は0.01〜60秒程度である。
以上により、光触媒と、この光触媒を除く固体物質とを含有してなるペレット(成形体)が得られる。
【0034】
このペレットのプラズマ反応部2の非平衡プラズマ領域R内への配置や、光触媒反応部3の容器31内への配置については、形状と同様、特に限定されない。
なお、プラズマ反応部2の放電電極15の外形および大きさ、光触媒反応部3の容器31の外形および大きさは、特に限定されるものではなく、処理するガスの種類、流量、流速等から、必要に応じて適宜決定される。
【0035】
次に、このガス処理装置1を用いて、NOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質を含む排気ガス、有害ガス等の被処理ガスgを分解処理する方法について説明する。
まず、プラズマ反応部2により被処理ガスgをプラズマ処理する。
ここでは、中心電極11を配線17を介して電源19に接続し、表面電極13を配線18を介して電源19に接続し、この電源19を作動させて中心電極11と表面電極13との間に電圧を印加することにより、表面電極13と中心電極11との間の非平衡プラズマ発生領域Rに非平衡プラズマが発生する。
【0036】
その後、この非平衡プラズマ内にNOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質を含む排気ガス、有害ガス等の被処理ガスgを導入すると、この被処理ガスgは非平衡プラズマのエネルギーにより直接分解されるとともに、光触媒体16に吸着される。この光触媒体16に吸着された被処理ガスgは、非平衡プラズマのエネルギー、及び非平衡プラズマの発光により生じる紫外線や可視光により励起された光触媒体16中の光触媒により分解される。また、非平衡プラズマにより発生するオゾンが光触媒の分解効率を向上させる。
【0037】
このプラズマ反応部2から排出されるガスg’には、被処理ガスg中の未分解のガス、例えば、NOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質を含む排気ガス、有害ガス等、及び非平衡プラズマにより生成される副生成物が含まれているので、これら未分解のガスや副生成物を取り除く必要がある。
そこで、光触媒反応部3により、未分解のガスや副生成物が含まれているガスg’を分解処理する。
【0038】
光触媒反応部3では、光源33からの光により光触媒体32が活性化されているので、ガスg’中のNOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質は、活性化された光触媒体32に吸着するとともに、光触媒体32により分解され、無害化される。したがって、光触媒反応部3から排出されるガスg”には、NOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質や非平衡プラズマにより生成される副生成物は含まれていない。
【0039】
また、光触媒体32は、光が照射されている限り、光触媒が活性化されて復元されるので、光触媒を回収・交換する必要がない。
また、光触媒体32の光触媒によりオゾンが分解される際に発生する酸素ラジカル等の活性種は、高酸化力を有するので、この活性種が被処理ガスg’の分解にさらに寄与する。したがって、ガスg’の分解処理効率をさらに向上させることができる。
【0040】
このように、本実施形態のガス処理装置1を用いて被処理ガスgを処理すれば、この被処理ガスgがプラズマ反応部2の非平衡プラズマ中に生成される高エネルギー電子およびラジカルにより被処理ガスg中に含まれるNOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質が分解され、さらに、光触媒反応部3により被処理ガスg中の未分解のガスや非平衡プラズマにより生成された副生成物が吸着・分解されるので、NOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質を含む被処理ガスgの分解効率をさらに向上させることができる。その結果、分解処理に費やす消費電力を小さく抑えることができ、その装置の小型化を図ることができる。
【0041】
「第2の実施形態」
図3は本発明の第2の実施形態のガス処理装置41を示す概略構成図であり、この実施形態のガス処理装置41において、上記の第1の実施形態のガス処理装置1と同一の構成要素については、同一の符号を付してある。
このガス処理装置41は、被処理ガスgを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部42と、このプラズマ反応部2から排出される未分解のガス及び前記非平衡プラズマにより生成される副生成物を含むガスg’を光触媒により分解処理する光触媒反応部3とにより概略構成されている。
【0042】
プラズマ反応部42は、図3及び図4に示すように、中心電極11及び誘電体12と、これらを同軸的かつこれらを囲む様に設けられた絶縁性を有する材料、例えば、ガラスからなる円筒状の筐体43および蓋14と、この筐体43の内周面に沿ってスパイラル状に配置された導電性及び耐熱性を有する材料、例えば、ステンレススチール、タングステン、銀、銅、チタン等からなるコイル状電極44とにより構成され、コイル状電極44は配線18を介して電源19に接続されている。
これら中心電極11、誘電体12及びコイル状電極44により放電電極45が構成されている。
このガス処理装置41においても、上記の第1の実施形態のガス処理装置1と同様の効果を奏することができる。
【0043】
「第3の実施形態」
図5は本発明の第3の実施形態のガス処理装置51を示す概略構成図であり、この実施形態のガス処理装置51において、上記の第2の実施形態のガス処理装置41と同一の構成要素については、同一の符号を付してある。
このガス処理装置51は、被処理ガスgを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部52と、このプラズマ反応部2から排出される未分解のガス及び前記非平衡プラズマにより生成される副生成物を含むガスg’を光触媒により分解処理する光触媒反応部3とにより概略構成されている。
【0044】
プラズマ反応部52は、誘電性を有する材料、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム等からなる厚みが1〜5mm程度の円筒状の筐体43と、この筐体43の内周面に沿ってスパイラル状に配置されたコイル状電極(中心電極)44と、この筐体43の外周面に一体に設けられた導電性及び耐熱性を有する材料、例えば、ステンレススチール、タングステン、銀、銅、チタン等からなる円筒状電極(表面電極)53とにより構成され、コイル状電極44及び円筒状電極53により放電電極54が構成されている。
また、このコイル状電極44と円筒状電極53とは、配線17、18を介して電源19に接続されている。
このガス処理装置51においても、上記の第2の実施形態のガス処理装置41と同様の効果を奏することができる。
【0045】
「第4の実施形態」
図6は本発明の第4の実施形態のガス処理装置61を示す概略構成図、図7は同概略平面図であり、この実施形態のガス処理装置61において、上記の第1の実施形態のガス処理装置1と同一の構成要素については、同一の符号を付してある。
【0046】
このガス処理装置61は、上記の第1の実施形態のプラズマ反応部2を4段に直列接続して多段プラズマ反応部62とし、光触媒反応部3の光触媒体32が充填された筒状の容器31を18段に直列接続したものを2組、互いに並行に配置し、これらの容器31の外側に、これらの容器31を囲むように、光触媒体32を紫外線または可視光により活性化させるための光を照射する光源33を、例えば、3行4列のマトリックス状に計12本設けて多段光触媒反応部63とした構成である。なお、図中、64はプラズマ反応部2同士を直列接続する配管、65は容器31同士を直列接続する配管、66は高圧電源、67は光源33用の電源である。
【0047】
このガス処理装置61は、上記の第1の実施形態のガス処理装置1のプラズマ反応部2および光触媒反応部3を多段としたものであるが、多段としたことで、個々の構成要素の材質や大きさが異なったものになっている。
例えば、中心電極11は、径が5mm、長さが600mmのステンレスロッドであり、誘電体12は、外径が10mm、内径が6mm、長さが600mmのアルミナからなる誘電体パイプであり、表面電極13は、外径が20mm、内径が19mm、長さが500mmのステンレスパイプである。
また、筒状の容器31は、外径が12mm、内径が10mm、長さが700mmのガラス管であり、光源33は、ガラス管とほぼ同じ長さの紫外線ランプである。
【0048】
このガス処理装置61においては、プラズマ反応部2を4段に直列接続して多段プラズマ反応部62とし、光触媒体32が充填された筒状の容器31を18段に直列接続したものを2組、互いに並行に配置して多段光触媒反応部63としたので、被処理ガスの分解効率をさらに高めることができ、分解処理に費やす消費電力もさらに小さくすることができ、装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0049】
次に、このガス処理装置61の特性評価結果について説明する。
このガス処理装置61の処理条件は下記の通りである。
被処理ガスg:酸化エチレンを6000ppm含有
被処理ガスgの流量:8L/分
消費電力:多段プラズマ反応部62 200W
多段光触媒反応部63 360W
【0050】
この被処理ガスgを多段プラズマ反応部62を通過させた後の酸化エチレンの濃度、および多段プラズマ反応部62により生成した中間生成物の濃度は次の通りであった。
酸化エチレンの濃度:1500ppm
(酸化エチレンの除去率:75%)
中間生成物:オゾン(O):200ppm
:一酸化窒素(NO):50ppm
:二酸化窒素(NO):200ppm
【0051】
次に、多段プラズマ反応部62を通過させた被処理ガスを、さらに多段光触媒反応部63を通過させたところ、酸化エチレンおよび中間生成物の濃度は次の通りであった。
酸化エチレンの濃度:0ppm
(酸化エチレンの除去率:100%)
中間生成物:オゾン(O):0ppm
:一酸化窒素(NO):0ppm
:二酸化窒素(NO):0ppm
(中間生成物の除去率:100%)
【0052】
以上、被処理ガスgを多段プラズマ反応部62および多段光触媒反応部63を順次通過させたことにより、酸化エチレンの除去率、中間生成物の除去率共に100%となり、NOx、SOx、ダイオキシン、VOC等の有害化学物質を含む被処理ガスgの分解効率が極めて優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のガス処理装置は、分解効率(エネルギー効率)の高いプラズマ反応部と、プラズマ反応部よりは分解効率(エネルギー効率)が低いが有害な分解副生成物を発生させない光触媒反応部を組み合わせたものであるから、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却炉から排出される排気ガス、自動車等から排出される排気ガス等、有害化学物質を含む有害ガスを分解処理して無害化することが求められる工業分野に容易に適用することができ、その効果は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態のガス処理装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のガス処理装置のプラズマ反応部を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のガス処理装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のガス処理装置のプラズマ反応部を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態のガス処理装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第4の実施形態のガス処理装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第4の実施形態のガス処理装置を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1、41、51、61…ガス処理装置、2、42、52…プラズマ反応部、3…光触媒反応部、11…中心電極、12…誘電体、13…表面電極、14…蓋、15、45、54…放電電極、16…光触媒体、17、18…配線、19…電源、21、22、34、64、65…配管、31…容器、32…光触媒体、33…光源、43…筐体、44…コイル状電極、53…円筒状電極、62…多段プラズマ反応部、63…多段光触媒反応部、66…高圧電源、67…電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスを非平衡プラズマ内にてプラズマ分解処理するプラズマ反応部と、
このプラズマ反応部から排出される未分解の被処理ガス及び前記非平衡プラズマにより生成される副生成物を光触媒により分解処理する光触媒反応部とを備えてなることを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
前記プラズマ反応部は、中心電極と該中心電極に誘電体を介して設けられた表面電極とを備えた放電電極と、この放電電極の非平衡プラズマを発生する領域に配置され光触媒を含有する光触媒体とを備えてなることを特徴とする請求項1記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記中心電極は、線状、棒状または筒状の電極であり、前記表面電極は前記線状、棒状または筒状の電極に同軸的に設けられたスパイラル状のコイルであり、これら中心電極と表面電極との間の非平衡プラズマを発生する領域に前記光触媒体を配置してなることを特徴とする請求項2記載のガス処理装置。
【請求項4】
前記中心電極は棒状電極であり、前記表面電極は前記棒状電極に同軸的に設けられた筒状電極であり、これら中心電極と表面電極との間の非平衡プラズマを発生する領域に前記光触媒体を配置してなることを特徴とする請求項2記載のガス処理装置。
【請求項5】
前記誘電体は、前記中心電極に同軸的に設けられた筒状の誘電体であることを特徴とする請求項3または4記載のガス処理装置。
【請求項6】
前記光触媒反応部は、前記光触媒を活性化する光を照射する光照射手段を備えてなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のガス処理装置。
【請求項7】
前記プラズマ反応部、前記光触媒反応部のいずれか一方または双方を多段に配置してなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載のガス処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−320827(P2006−320827A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145609(P2005−145609)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】