説明

ガス排出構造及び車両

【課題】内装品との干渉を容易に回避することができるガス排出構造及びガス排出構造を備えた車両を提供することを目的とする。
【解決手段】蓄電装置1から発生したガスを排出するための第1のガス排出管41と、内部空間を有する車両フレーム51とを有し、第1のガス排出管41を車両フレーム51に接続し、内部空間を介してガスを車外に排出することを特徴とする蓄電装置のガス排出構造。ここで、第1のガス排出管41を介して内部空間に排出されたガスを、車外に排出するための第2のガス排出管46を更に設けるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置から発生したガスを車室外に排出するためのガス排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電動車両の開発が活発に行われている。この電動車両の駆動用又は補助電源として、性能、信頼性、安全性に優れた蓄電装置の要望が高まっている。
【0003】
蓄電装置は、過充電などの電池異常の際に発生したガスにより内圧上昇する場合があるため、発生したガスを速やかに蓄電装置の外部に排出させる必要がある。この種のガス排出手段として、蓄電装置と車室外位置(例えば、車両のクォータトリム)とをガス排出チューブで接続し、このガス排出チューブを介して蓄電装置から発生したガスを車室外に排出する方法が提案されている(以下、従来技術Aという)。
【0004】
特許文献1には、バッテリフレームのフロントサイドフレームとリヤサイドフレームとを接続するジョイントフレームの前、後壁に、リヤサイドフレームの中空部に冷却風を導入する冷却風導入口を形成し、リヤサイドフレームの内側壁に冷却風をバッテリフレームの内方へ吹き出させる冷却風導出口を形成した電気自動車のバッテリフレーム構造が開示されている。
【0005】
特許文献1の構成によれば、冷却風の通風性を向上させ、バッテリから発生するガスの排出性を一層高めることができる。
【0006】
特許文献2には、サイドメンバーをバッテリフレームの冷却空気の排出を行う排気ダクトとして利用する電気自動車のバッテリフレーム構造が開示されている。
【0007】
特許文献2の構成によれば、専用の排気ダクトを用いることなくバッテリフレーム内の冷却空気を排出することができる。
【特許文献1】特開平07−228153号公報
【特許文献2】特開平09−267645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術Aの構成では、内装品との干渉回避及びシートアレンジ・足元スペース等の商品性確保、衝突安全性の確保の観点から二次電池の設置位置が制限されている。また、車両において車室外位置と扱われる場所も制限されている。
【0009】
さらに、二次電池の設置位置と車室外位置との間には、種々の内装品(例えば、座席シートの脚、電池ECUなどの電池部品)が設置されている。
【0010】
そのため、二次電池の設置位置と車室外位置との間に配置される内装品との干渉を避けるようにガス排出チューブを配策する必要があり、ガス排出チューブが長大化するとともに配策作業が煩雑化する。
【0011】
そこで、本願発明は、車両の内装品との干渉を容易に回避することができる蓄電装置のガス排出構造及びガス排出構造を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願発明の蓄電装置のガス排出構造は、第1の構成として、蓄電装置から発生したガスを排出するための第1のガス排出管と、内部空間を有する車両フレームとを有し、前記第1のガス排出管を前記車両フレームに接続し、前記内部空間を介して車外に前記ガスを排出することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記第1のガス排出管を介して前記内部空間に排出されたガスを、車外に排出するための第2のガス排出管を設けるとよい。
【0014】
また、前記第2のガス排出管を、車両のクォータトリムに接続することにより、ガスを車外に排出するとよい。
【0015】
前記車両フレームを車両のサイドメンバーにより構成し、サイドメンバーの内部空間を介して車外にガスを排出することができる。
【0016】
前記車両フレームを、互いに内部空間が連通する車両のクロスメンバーとサイドメンバーとから構成するとともに、前記第1及び第2のガス排出管をそれぞれ、前記クロスメンバー及び前記サイドメンバーに接続し、第1のガス排出管、クロスメンバー、サイドメンバー、第2のガス排出管を介して車外にガスを排出することができる。
【0017】
前記内部空間を、前記車両フレームの外側に形成される車室内空間に対して密閉された密閉空間として、車室内にガスが流入するのを防止するとよい。
【0018】
上記課題を解決するために、本願発明の蓄電装置のガス排出構造の第2の構成は、蓄電装置から発生したガスを車外に排出するための第3のガス排出管と、内部空間を有する車両フレームとを有し、前記第3のガス排出管の一部を、前記内部空間に配置したことを特徴とする。
【0019】
前記第3のガス排出管を、車両のクォータトリムに接続することにより、ガスを車外に排出するとよい。
【0020】
上記蓄電装置のガス排出構造は車両に適用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の第1の構成によれば、車両の内装品および第1の排出チューブの干渉を容易に回避することができる。
本願発明の第2の構成によれば、車両の内装品及び第3の排出チューブの干渉を容易に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は蓄電装置から発生したガスを排出するためのガス排出構造の断面図であり、図2はガス排出構造の平面図である。なお、これらの図において、X軸は車両の前後方向を示しており、Y軸は車両の車幅方向を示しており、Z軸は車両の高さ方向を示している。
【0024】
本実施例の蓄電装置のガス排出構造は、蓄電装置1に接続される第1のガス排出チューブ(第1のガス排出管)41と、この第1のガス排出チューブ41に接続される左側サイドメンバー(車両フレーム)51と、第1のガス排出チューブ41を介して左側サイドメンバー51の内部空間に排出されたガスを車外に排出するための第2のガス排出チューブ(第2のガス排出管)46とからなる。
【0025】
このように、蓄電装置1のガスを排出する排出経路の一部を左側サイドメンバー51の内部空間に形成することにより、蓄電装置1の周辺に設置される内装品(例えば、座席シートの脚、コンソール、電池ECUなどの電子部品)とガス排出チューブとの干渉を容易に回避することができる。これにより、ガス排出チューブの全長を短くするとともに、ガス排出チューブの配策作業を容易化することができる。
【0026】
次に、図1及び図3を参照しながら、蓄電装置1の構成を詳細に説明する。ここで、図3は蓄電装置1の分解斜視図である。
【0027】
蓄電装置1は、組電池12、組電池12及び冷却液23を収容する電池収容ケース13、電池収容ケース13の上蓋となるケースカバー14から構成されており、ハイブリッド自動車、電気自動車の駆動用又は補助電源として使用される。
【0028】
ケースカバー14の中央には、ガス排出口14aが形成されており、このガス排出口14aには、電池異常の際に蓄電装置1から発生したガスを蓄電装置1の外部に排出するための第1のガス排出チューブ41が接続されている。
【0029】
ここで、「電池異常」とは、過充電などの際に電解液が電気分解して円筒型電池122からガスが発生する現象を意味する。
【0030】
電池異常の際に発生したガスは、電池収容ケース13内を上側に移動するため、第1のガス排出チューブ41をケースカバー14に接続することにより、ガスの排出を早めることができる。
【0031】
第1のガス排出チューブ41及びガス排出口14aの接続部分には、ガスリリーフ弁21が設けられており、このガスリリーフ弁21は、電池収容ケース13の内圧が所定値以上になると開き方向に作動し、第1のガス排出チューブ41からのガスの排出を許容する。
【0032】
電池収容ケース13の外周面には多数の放熱フィン31が形成されている。これにより、外気との接触面積を増加させ、組電池12の放熱を促進することができる。
【0033】
電池収容ケース13に適用される資材としては、熱伝導性の高いステンレスなどの金属材料を例示することができる。
【0034】
蓄電装置1は、後部座席下部のフロアパネル2に設置されており、電池収容ケース13の外周面に形成されたフランジ部をフロアパネル2に締結することにより固定されている。
【0035】
組電池12は、複数の円筒型電池122を並設した電池集合体であり、一対の電池フォルダ123間に支持されている。各円筒型電池122の各電極ネジ軸部131、132は、一対の電池フォルダ123から突出しており、バスバー124を介して電気的に接続されている。電極ネジ軸部131、132には、バスバー124を固定するための締結ナット125が締結されている。
【0036】
このように複数の円筒型電池122を並設した電池集合体を車両の駆動用又は補助電源として使用する場合には、充放電に伴う発熱温度が高くなるため、冷却風を用いた気体冷却のみでは冷却不足となるおそれがある。そこで、本実施例では、気体よりも熱伝導率の高い冷却液23内に組電池12を浸漬させることにより、組電池12を冷却している。
【0037】
ここで、冷却液23としては、比熱、熱伝導性と沸点が高く、電池収容ケース13、組電池12を腐食させず、熱分解、空気酸化、電気分解などを受けにくい物質が適している。さらに、電極端子間の短絡を防止するために、電気的絶縁性の液体が望ましい。
【0038】
例えば、フッ素系不活性液体を使用することができる。フッ素系不活性液体としては、スリーエム社製フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230を用いることができる。また、フッ素系不活性液体以外の液体(例えば、シリコンオイル)を用いることもできる。
【0039】
円筒型電池122は、二次電池であり、二次電池を構成する正活物質として、リチウム
−遷移元素複合酸化物であるLiCoO2 、LiNiO2 、LiFeO2 、LiCuO2
LiMnO2 、LiMO2 (MはCo、Ni、Fe、Cu及びMnよりなる群から選ばれた少なくとも2種の遷移元素)、LiMn24 を例示できる。
【0040】
負活物質としては、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵及び排出することが可能な
ものであれば特に限定されない。具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、有機
物焼成体、金属カルコゲン化物を例示することができる。
【0041】
電解液の溶質として使用するリチウム塩としては、LiClO4 、LiCF3 SO3
LiPF6 、LiN(CF3 SO22 、LiN(C25 SO22 、LiBF4 、L
iSbF6 及びLiAsF6 を例示でき、リチウム塩を溶かすために使用する有機溶媒と
しては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチ
レンカーボネート等の環状炭酸エステルと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネー
ト、メチルエチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルとの混合溶媒を例示することができ
る。
【0042】
円筒型電池122の不図示の集電板には、不図示の破壊弁が形成されており、この破壊弁は、電池異常の際に発生したガスにより、円筒型電池122の内圧が限界圧力値(例えば、2気圧)以上に昇圧すると破壊され、そこから冷却液23内にガスが排出される。
【0043】
ケースカバー14は、電池収容ケース13のカバー取付面13eに対して、不図示の締
結ボルトにより固定されている。
【0044】
次に、図1及び図2を参照しながら、一対のサイドメンバー51、52について説明する。一対のサイドメンバー51、52は、蓄電装置1を挟んだ車幅方向両側の位置に配置されており、車両の前後方向に延びている。
【0045】
左側サイドメンバー51には、第1のガス排出チューブ41を接続するためのチューブ接続口51bが形成されており、蓄電装置1から第1のガス排出チューブ41に排出されたガスは、チューブ接続口51bを介して左側サイドメンバー51の内部空間に流入する。
【0046】
左側サイドメンバー51の車幅方向の断面(ZY断面)はハット状に形成されており、左側サイドメンバー51のフランジ部51aはフロアパネル2に固定されており、左側サイドメンバー51の車両前後方向(X軸方向)の端部は閉じている。
【0047】
これにより、左側サイドメンバー51の内部空間を、左側サイドメンバー51の外側に形成される車室内空間に対して密閉(隔離)された密閉空間とすることができる。
【0048】
このように、左側サイドメンバー51の内部空間を密閉空間にすることにより、第1のガス排出チューブ41を介して左側サイドメンバー51の内部空間に排出されたガスが車室内に流入するのを阻止できる。
【0049】
左側サイドメンバー51の車幅方向には、車室外位置となるクォータトリムが隣接配置されており、左側サイドメンバー51に形成されたガス排出口51cには、クォータトリムに連通する第2のガス排出チューブ46が接続されている。
【0050】
上述の構成において、第1のガス排出チューブ41を介して左側サイドメンバー51の内部空間に排出されたガスは、第2のガス排出チューブ46を介してクォータトリムに排出される。
【0051】
このように、本実施例によれば、蓄電装置1のガス排出路を、第1のガス排出チューブ41、左側サイドメンバー51及び第2のガス排出チューブ46で構成することができる。これにより、車両の内装品とガス排出チューブとの干渉を容易に回避できるため、ガス排出チューブチューブの長さを短くしてコストを削減することができる。
【0052】
さらに、車両の内装品とガス排出チューブとの干渉を回避するために、ガス排出チューブを曲げるなどの配策作業を削減できるため、作業を効率化することができる。
【0053】
右側サイドメンバー52は、左側サイドメンバー51と同様に、車幅方向の断面(ZY断面)がハット状であり、フロアパネル2に固定されている。ただし、右側サイドメンバー52の車両前後方向の端部は開口している。これは、右側サイドメンバー52の内部空間は、蓄電装置1から発生したガスを排出するガス排出路として使用しないため、密閉空間とする必要がないからである。
【0054】
次に、図1及び図2を参照しながら、蓄電装置1のガス排出動作について説明する。なお、図1及び図2の矢印は、ガスの流れる向きを示している。
【0055】
組電池12が過充電されると、円筒型電池122の電解液が電気分解してガスが発生し、
円筒型電池122の内圧が上昇する。円筒型電池122の内圧が所定値(例えば、2気圧)
に上昇すると、電池破壊弁が破壊され、そこから冷却液23内にガスが排出され、電池収
容ケース13の内圧が直ちに2気圧に上昇する。
【0056】
電池収容ケース13の内圧が2気圧に上昇すると、ガスリリーフ弁21が開き、ガス排出口14aから第1のガス排出チューブ41にガスが排出される。この第1のガス排出チューブ41に排出されたガスは、チューブ接続口51bを介して左側サイドメンバー51に流入し、左側サイドメンバー51の内部空間を車両後方に向かって移動する。
【0057】
左側サイドメンバー51のガス排出口51cに到達したガスは、第2のガス排出チューブ46を介してクォータトリムに排出される。これにより、蓄電装置1の内圧が低下し、ガスによる圧力上昇を抑制することができる。
【実施例2】
【0058】
次に、図4を参照しながら、実施例2を説明する。ここで、図4は、実施例2の蓄電装置のガス排出構造の平面図である。実施例1の構成と同一の機能を有する部分は、同一符号を付すことにより説明を省略する。なお、矢印は排出されるガスの移動方向を示している。
【0059】
本実施例の蓄電装置1は、実施例1の蓄電装置を水平面内で90°回転させた方向に配置されており、第1のガス排出チューブ41は車両の前後方向に延びている。
【0060】
クロスメンバー53の車両前後方向の断面(XZ断面)は、ハット状に形成されており、フロアパネル2に固定されている。
【0061】
クロスメンバー53は、一対のサイドメンバー51、52間に配設され、車幅方向に延びている。クロスメンバー53の左側端部は開口し、左側サイドメンバー51とクロスメンバー53との内部空間は連通している。
【0062】
クロスメンバー53の車幅方向中央には、第1のガス排出チューブ41を接続するためのチューブ接続口53aが形成されている。
【0063】
上述の構成によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、クロスメンバー53が、左側サイドメンバー51よりもケースカバー14のガス排出口14aに近い位置に配置されている場合には、左側サイドメンバー51に第1のガス排出チューブ41を接続するよりも第1のガス排出チューブ41の長さを短くすることができる。
【0064】
上述の構成において、蓄電装置1から第1のガス排出チューブ41に排出されたガスは、クロスメンバー53に流入し、クロスメンバー53の内部空間を車幅方向に向かって移動し、左側サイドメンバー51に流入する。
【0065】
左側サイドメンバー51に流入したガスは、左側サイドメンバー51の内部空間を車両後方に向かって移動する。
【0066】
左側サイドメンバー51のガス排出口51cに達したガスは、第2のガス排出チューブ46を介してクォータトリムに排出される。これにより、蓄電装置1の内圧が低下し、ガスによる圧力上昇を抑制することができる。
【実施例3】
【0067】
次に、図5を参照しながら、実施例3を説明する。ここで、図5は蓄電装置のガスを排出するガス排出構造の断面図である。ただし、実施例1と同一の機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略する。なお、矢印は排出されるガスの移動方向を示している。
【0068】
左側サイドメンバー51は、車室外位置となるフロアパネル2の裏側に取付けられており、左側サイドメンバー51の車両の高さ方向(Z軸方向)に延びる壁部には、複数のガス排出口51fが形成されている。なお、左側サイドメンバー51の車両前後方向の端部は、閉じている。
【0069】
フロアパネル2には、第1のガス排出チューブ41と左側サイドメンバー51の内部空間とを連通させるためのパネル開口部2aが形成されている。
【0070】
上述の構成において、蓄電装置1から第1のガス排出チューブ41に排出されたガスは、パネル開口部2aを介して左側サイドメンバー51に流入し、ガス排出口51fから排出される。
【0071】
これにより、蓄電装置1の内圧が低下し、ガスによる圧力上昇を抑制することができる。
【0072】
また、電池異常の際に、ガスとともに冷却液23が第1のガス排出チューブ41に流入する場合があり、この排出された冷却液23は第1のガス排出チューブ41を介して左側サイドメンバー51の底部に貯留される。したがって、左側サイドメンバー51の外部に冷却液23が漏れ出すのを防止できる。
【実施例4】
【0073】
図6を参照しながら、実施例4を説明する。ここで、図6は実施例4のガス排出構造の平面図である。実施例2の構成と同一の機能を有する部分には、同一符号を付している。なお、矢印は排出されるガスの移動方向を示している。
【0074】
ケースカバー14のガス排出口14aには、第3のガス排出チューブ(第3のガス排出管)49が接続されており、この第3のガス排出チューブ49は、クロスメンバー53及び左側サイドメンバー51の内部空間を通って、クォータトリムに接続されている。
【0075】
クロスメンバー53の車幅方向中央には、クロスメンバー53の内部空間に第3のガス排出チューブ49を導通させるためのチューブ挿入口53bが形成されている。
【0076】
左側サイドメンバー51の車幅方向には、クォータトリムが隣接配置されており、左側サイドメンバー51にはチューブ引き出し口51dが形成されている。
【0077】
第3のガス排出チューブ49は、チューブ挿入口53bを介してクロスメンバー53の内部空間に挿入され、左側サイドメンバー51の内部空間を通って、チューブ引き出し口51dから引き出され、クォータトリムに接続されている。
【0078】
上述の構成において、蓄電装置1から発生したガスは、第3のガス排出チューブ49を通って、クォータトリムに排出される。これにより、蓄電装置1の内圧が低下し、ガスによる圧力上昇を抑制することができる。
【0079】
このように、クォータトリムに向かって延びる第3のガス排出チューブ49の一部を、クロスメンバー53及び左側サイドメンバー51の内部空間に配置することにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0080】
さらに、本実施例では、第3のガス排出チューブ49のみを用いてガスの排出を行うため、左側サイドメンバー51の内部空間を車室内の空間に対して密閉する必要がなくなる。これにより、コストの削減及び製造工程の簡素化をはかることができる。さらに、実施例1で説明した他の効果も得ることができる。
【0081】
(他の実施例)
上述の実施例1乃至4では、フロアパネル2及びメンバー(51、52、53)を接続して一体化したいわゆるモノコック構造を例にして説明したが、本願発明は、車体構造がいわゆるフレーム構造である車両にも適用することができる。この場合、蓄電装置1及びフレームをガス排出チューブで接続することにより、ガスの排出を行うことができる。
【0082】
実施例4の構成において、第3のガス排出チューブ49をクロスメンバー53の内部空間を通さずに、左側サイドメンバー51に直接接続してもよい。
【0083】
第1のガス排出チューブ41、第3のガス排出チューブ49のチューブ内に、蓄電装置1からガスとともに排出される冷却液を捕捉するための捕捉部(例えば、フィルタ)を配置してもよい。これにより、車外に冷却液が排出されるのを確実に防止することができる。
【0084】
上述の実施例では、円筒型電池を複数並設した組電池を使用したが、角型電池(蓄電装置)、電気二重層キャパシタ(蓄電装置)にも本願発明は適用することができる。ここで、電気二重層キャパシタは、複数の正極及び負極を、セパレータを介在させて交互に重ね合わせたものである。
【0085】
そして、この電気二重層キャパシタにおいては、例えば、集電体としてアルミ箔、正極活物質及び負極活物質として活性炭、セパレータとしてポリエチレンからなる多孔質膜を用いることができる。
【0086】
また、冷風により組電池12を冷却する冷却手段を備えた蓄電装置にも本願発明は適用することができる。
【0087】
また、組電池12を複数配列して、組電池集合体として使用してもよい。
【0088】
さらに、組電池12の設置位置を、後部座席後方のトランクルーム、助手席の下部、助手席と運転席との間にすることもできる。この場合も、蓄電装置1の近傍に配置される車両フレーム(サイドメンバー、クロスメンバー)を用いて、ガスの排出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】蓄電装置から発生したガスを排出するためのガス排出構造の断面図である。
【図2】ガス排出構造の平面図である。
【図3】蓄電装置の分解斜視図である。
【図4】実施例2の蓄電装置のガス排出構造の平面図である。
【図5】実施例3のガス排出構造の断面図である。
【図6】実施例4の蓄電装置のガス排出構造の平面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 蓄電装置
2 フロアパネル
12 組電池
13 電池収容ケース
13a ガス排出口
13e カバー取付面
14 ケースカバー
41 第1のガス排出チューブ
46 第2のガス排出チューブ
49 第3のガス排出チューブ
51 左側サイドメンバー
52 右側サイドメンバー
53 クロスメンバー
122 円筒型電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置から発生したガスを排出するための第1のガス排出管と、
内部空間を有する車両フレームとを有し、
前記第1のガス排出管を前記車両フレームに接続し、前記内部空間を介して前記ガスを車外に排出することを特徴とする蓄電装置のガス排出構造。
【請求項2】
前記第1のガス排出管を介して前記内部空間に排出されたガスを、車外に排出するための第2のガス排出管を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置のガス排出構造。
【請求項3】
前記第2のガス排出管を、車両のクォータトリムに接続したことを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置のガス排出構造。
【請求項4】
前記車両フレームは、車両のサイドメンバーであることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の蓄電装置のガス排出構造。
【請求項5】
前記車両フレームは、互いに内部空間が連通する車両のクロスメンバーとサイドメンバーとからなり、
前記第1及び第2のガス排出管をそれぞれ、前記クロスメンバー及び前記サイドメンバーに接続したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の蓄電装置のガス排出構造。
【請求項6】
前記内部空間は、前記車両フレームの外側に形成される車室内空間に対して密閉された密閉空間であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の蓄電装置のガス排出構造。
【請求項7】
蓄電装置から発生したガスを車外に排出するための第3のガス排出管と、
内部空間を有する車両フレームとを有し、
前記第3のガス排出管の一部を、前記内部空間に配置したことを特徴とする蓄電装置のガス排出構造。
【請求項8】
前記第3のガス排出管を、車両のクォータトリムに接続したことを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置のガス排出構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか一つに記載の蓄電装置のガス排出構造を備えた車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−287939(P2008−287939A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129856(P2007−129856)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】