説明

ガス調整器

【課題】構成要素を少なくし、設置場所の省スペース化が可能な、ガス漏れ検知機能付きのガス調整器を提供する。
【解決手段】ガス調整器1は、ガスを流出するノズル11と、ノズル11のガス流出口(ノズル11の先端部)を所定圧力のガスが流出可能なように押圧する押圧機構とを有し、押圧機構で押圧することで、ノズル11から流出するガスの圧力(又はガス流量)を調整する。この押圧機構は、例えばノズル11のガス流出口に対向して配設された弁ゴム14a等の弁座を、ノズル11側に備えたバルブ14で構成する。そして、ガス調整器1は、ノズル11の先端近傍(すなわち圧力調整部のノズル近傍)に、ノズル11から流出するガスの流量又は圧力を検出する流量センサや圧力センサ等の検出素子15を備える。検出素子15は、ガスが漏れているとき、ノズル11の先端と弁ゴム14aとの間にできた隙間12から流出するガスを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス調整器に関し、より詳細には、ガス漏れを検知することが可能なガス調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロパンボンベ等から供給するガスの圧力を調整するガス調整器が、配管に設けられている。ガス調整器には、ガス漏れを検知する手段が具備され、集合住宅におけるLPG供給設備などの各戸までの配管でのガス圧調整及びガス漏れ検知に適用されたり、天然ガス、石油などのプラント設備におけるガス圧調整及びガス漏れ検知に適用されている。
【0003】
このようなガス調整器は、基本的にはガス圧力調整器と集合住宅のメータ間のガス漏れを検出(検知)するために子調整器を使い、その流れを計測、計量表示又は計量警告するための漏洩検知部(マイコンガスメータ)と、親子式差圧調整器とで構成されているものが主流である(例えば、特許文献1−5を参照)。
【0004】
図4は、特許文献5に記載のガス微少漏洩監視システムを示す図で、図中、51はガス送給管、52は主圧力調整器(弁手段)、53は一次側のガス送給管、54は二次側のガス送給管、55は副圧力調整器、56はバイパス、57は微少流量ガスメータ(流量検知手段)、58は自記流量計(記録手段)である。特許文献5に記載のガス微少漏洩監視システムでは、LPガスボンベからの高圧のガスを供給圧力に調整して供給するためガス送給管に設けられた主圧力調整器52と、主圧力調整器52の一次側と二次側を結ぶバイパス56と、バイパス56に設けられ主圧力調整器52より閉弁圧を高く設定した副圧力調整器55と、バイパス56に設けられバイパス56の流量を検知する微少流量ガスメータ(流量検知手段)57を備え、微少流量ガスメータ57によって検知した流量によりガス微少漏洩を監視している。監視は、徴少流量ガスメータ57に自記流量計58を接続することで行っている。
【0005】
主圧力調整器52に比べて副圧力調整器55の弁閉塞圧を高く設定しているため、主圧力調整器52にガスが流れているときには副圧力調整器55を通じてバイパス56にも必ずガスが流れ、このガスの流量が微少流量ガスメータ57により検知されて自記流量計58に記録される。従って、ガスが使用されている間は、ガスメータ57は、ガス流量を検知しており、ガスの使用がなくなると、ガス送給管51のガス圧が徐々に上昇し、そのガス圧が主圧力調整器52の設定圧力より高くなると、弁手段として働く主圧力調整器52はガスを流さなくなって弁閉状態となる。これに対し、副圧力調整器55はその弁閉塞圧が主圧力調整器52より高く設定されているので、主圧力調整器52にガスが流れなくなってもガスを流し続け、ガス送給管51のガス圧がその弁閉塞圧よりも高くなったときに初めてガスを流さなくなり、バイパス56のガス流量も0になる。
【特許文献1】特許第1798245号公報
【特許文献2】実用新案登録第2502840号公報
【特許文献3】特許第2587108号公報
【特許文献4】特許第2132326号公報
【特許文献5】特許第2817875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のごとき構成においては、通常、親調整器のみでガス供給は可能であるにも拘わらず、漏れ検出を可能にするために、さらに子調整器と漏洩検知部(マイコンガスメータ)を配管で接続構成させている。
【0007】
従って、親調整器に追加する構成要素が増えるため、設置面積が多くなりそのスペースを確保する必要がある。また、その追加する構成要素としての機器・配管部材、例えば配管、子調整器、漏洩検知部、コック、及びガス栓などが、付加的に必要とされるため、機器コストアップ、また追加工事による工事費のコストアップとなるだけでなく、そのメンテナンスも複雑化してしまう。
【0008】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、構成要素を少なくし、設置場所の省スペース化が可能な、ガス漏れ検知機能付きのガス調整器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述のごとき課題を解決するために、以下の各技術手段でそれぞれ構成される。
第1の技術手段は、ガスを流出するノズルと、該ノズルのガス流出口を所定圧力のガスが流出可能なように押圧する押圧機構とを有し、該押圧機構で押圧することで、前記ノズルから流出するガスの圧力を調整するガス調整器であって、前記ノズルの先端近傍に、前記ノズルから流出するガスの流量又は圧力を検出する検出素子を配置したことを特徴としたものである。
【0010】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記検出素子は、前記ノズルのガス流出口から流出するガスの流量を検出する流量センサであることを特徴としたものである。
【0011】
第3の技術手段は、第1の技術手段において、前記検出素子は、前記ノズルのガス流出口から流出するガスの圧力を検出する圧力センサであることを特徴としたものである。
【0012】
第4の技術手段は、第1乃至第3のいずれかの技術手段において、前記検出素子で検出した値を表示する表示手段を備えたことを特徴としたものである。
【0013】
第5の技術手段は、第1乃至第4のいずれかの技術手段において、前記検出素子で検出した値が、所定の期間以上、所定値を越えたときに報知する報知手段を備えたことを特徴としたものである。
【0014】
第6の技術手段は、第5の技術手段において、前記報知手段として、当該ガス調整器の外部に報知内容を出力する手段を備えたことを特徴としたものである。
【0015】
第7の技術手段は、第1乃至第6のいずれかの技術手段において、前記検出素子を当該ガス調整器に着脱可能に具備したことを特徴としたものである。
【0016】
第8の技術手段は、第1乃至第7のいずれかの技術手段において、前記検出素子で検出した値を、当該ガス調整器の外部に無線で通知する無線送信手段を備えたことを特徴としたものである。
【0017】
第9の技術手段は、第1乃至第7のいずれかの技術手段において、前記検出素子で検出した値を、記憶する記憶手段を備えたことを特徴ととしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガス漏れ検知機能付きのガス調整器において、構成要素を少なくし、設置場所の省スペース化が可能となり、その結果、機器のコストダウンやメンテナンスの省力化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス調整器の一構成例を示す図で、図中、1はガス調整器、11はノズル、11aはガス流入側のノズル孔、11bはノズル先端側のノズル孔、12は隙間、13はガス流出孔、13aはノズル11側のガス流出孔、13bはガス流出口側のガス流出孔、14はバルブ、14aは弁ゴム、15は検出素子、16は表示部、17は回路部、17aは制御回路、17bは伝送回路、17cは電源である。
【0020】
本実施形態に係るガス調整器1は、ガスを流出するノズル11と、ノズル11のガス流出口(ノズル11の先端部)を所定圧力のガスが流出可能なように押圧する押圧機構とを有し、押圧機構で押圧することで、ノズル11から流出するガスの圧力(又はガス流量)を調整する。この押圧機構は、図1では、ノズル11のガス流出口に対向して配設された弁ゴム14a等の弁座を、ノズル11側に備えたバルブ14で構成された例を示しており、図2及び図3を参照してその機構の詳細例は後述する。
【0021】
そして、本発明に係るガス調整器1は、ノズル11の先端近傍(すなわち圧力調整部のノズル近傍)に、ノズル11から流出するガスの流量又は圧力を検出する検出素子15を備えたことを特徴とする。検出素子15は、ガスが流れているとき、或いはガス供給が停止しているはずのときであってもガスが漏れているとき、ノズル11の先端と弁ゴム14aとの間にできた隙間12から流出するガスを検出する。
【0022】
検出素子としては、ノズル11のガス流出口(ノズル孔11bの先端)から流出するガスの流量を検出する流量センサや、ノズル11のガス流出口(ノズル孔11bの先端)から流出するガスの圧力を検出する圧力センサ等の素子が挙げられ、これがガス漏れの発生を検出することが可能な位置であって、且つノズル11の先端近傍に、固着或いは着脱可能に設置され、ガスの流れを検出する。流量センサは、所定の流量を1又は多段階で検出するセンサで、また、圧力センサも、所定の圧力を検出するだけでなく、ガスの流れに伴う圧力変化を検出するようにしてもよい。
【0023】
また、ガス調整器1は、検出素子15で検出した値を表示する表示手段を備えることが好ましい。図1の例では、検出素子15からの検出値を表示部16に表示する制御を行う制御回路17aと、表示部16とによってこの表示手段を構成し、流量検出値や圧力変化検出値などをガス管理者又はユーザに対して表示している。
【0024】
また、ガス調整器1は、検出素子15で検出した値が、所定の期間以上、所定値を越えたときに、すなわち所定値を越える値が所定の期間以上継続したときに、報知する報知手段を備えることが好ましい。この報知手段は制御回路17a及び表示部16或いは図示しない音声出力部によって構成され、微流量・微圧力などが所定の値以上継続したときに、ガス管理者又はユーザに対して警告を表示したり、警報を鳴らしたりする。また、報知手段としては、ガス調整器1の外部に報知内容を出力する手段を備えてもよい。この手段は、制御回路17a、及び外部出力端子を有する伝送回路17bによって構成できる。なお、検出素子15、制御回路17a、伝送回路17b、及び表示部16は、電池17cによって電源供給される。
【0025】
さらに、この伝送回路17bは、無線通信手段であってもよく、その場合、報知を無線通信を介して外部に行ってもよいし、表示手段で説明したように、検出素子15で検出した値をガス調整器1の外部に無線で通知するよう構成したものであってもよい。また、無線通信手段は、検出素子15に無線発信部を設け、遠隔地の受信部に伝送する手段としてもよい。この無線通信手段と併せて、或いはその代わりに、後でガス漏れデータを閲覧可能なように、検出素子15で検出した流量検出値や圧力変化検出値を内部に記憶する記憶手段を備えてもよい。この記憶手段も無線通信手段と同様に報知内容を記憶するよう構成してもよい。
【0026】
このように、ガス調整器1は、その圧力調整部の近傍に流量検出取り付け部を設けそれに流量(圧力)検出部を固定する。この検出部には、流量検出センサ又は圧力検出センサが一部構成されており、このセンサ出力を検知し定められた条件で表示、警告、出力する。
【0027】
図2及び図3は、図1のガス調整器におけるガス調整部の詳細例を示す図で、図2はその上面図、図3はその流れ方向断面図である。図2及び図3において、21は上蓋、22は調整ネジ、23は調整バネ、24はバネ座止めピン、25はバネ座、26は安全弁バネ、27は受圧板、28はダイヤフラム、29は吊金具、30はレバー、31はカシメピン、32はレバーピンであり、その他、図1と同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0028】
上述した押圧機構は、ノズル11のガス流出口に対向して配設された弁座(弁ゴム14a等)と、その弁座をノズル11のガス流出口に対して移動調整可能なレバー30と、レバー30を回動可能に支持するレバー止め金具とで構成される。さらに、このレバー止め金具は、カシメピン31及びレバーピン32によってレバーピン32を中心として回動可能に支持されており、その回動は、レバー30の流出側に設けられた吊金具29によってダイヤフラム28に吊られている。ダイヤフラム28は、ガス流出孔13と上側とを隔離する隔膜であり、その中心に吊金具29が設けられ、調整ネジ22によって調整圧力が設定可能なよう調整バネ23でガス流出孔13側に押圧された受圧板27、バネ座25にバネ座止めピン24で係止された安全弁バネ26によって、その圧力が調整可能となっている。
【0029】
押圧機構は、この例に限ったものではなく、ガス調整器1が、ノズル11近傍に流量センサ等の検出素子15を設けてあればよく、このことにより、配管部や後段のメータ部を流れる流速より数十倍早い流れを検出素子15で検出することを可能としている。
【0030】
ノズル部を流れる流速と配管やメータ部を流れる流速はそれらの通過面積に反比例して流れている(Q〔流量〕=a〔断面積〕・v〔流速〕)すなわちノズルの通過面積が1で配管部の面積が50であればノズル部の流速は配管部の流速より50倍のスピードで流れている。
【0031】
例として、家庭用調整機器の実際の通過断面積の比率を、ガス漏れ時の実際の隙間は0.1〜2.0mmが想定されるが、それを0.1mmとして求める。ノズル11側の微流時の開口断面積Aは、隙間の幅D(0.1mm)×π×ノズル孔の直径D(2mm)=0.628mmとなる。一方、配管側の微流時の開口断面積Bは、π×直径(15mm)/4=176.6mmとなる。従って、断面積比=流速比=B/A=176.6/0.628=281倍となる。また、ノズル孔の直径を2mmとした場合には、A=π×半径(1mm)=3.14mm、B=176.6mmとなるので、断面積比=176.6/3.14=56.2倍となる。
【0032】
従って、圧力を調整するためには小さい穴から噴出するようにして圧力調整を容易にするとよい。また、配管系は圧力損失を小さくするために、ノズル部に比べ断面積がはるかに大きい。このノズル部に検出素子を近傍に配置し、高い分解能をもった出力を捕まえることができるので、高性能なセンサを使うことなく低価格な装置でガス漏れを検出することができる。
【0033】
以上、本発明によれば、ガス漏れ検知機能付きのガス調整器において、配管、子調整器、漏洩検知部、コック、及びガス栓などの排除によって構成要素を少なくし、設置場所の省スペース化が可能となり、その結果、機器のコストダウンや工事時間大幅短縮、さらにはメンテナンスの省力化も可能となる。メンテナンス性は、検出素子を取り外し自在(着脱可能)とし、その取りつけ個所をコック付きなどに構成することで、より向上する。いずれにせよ、本発明によれば、圧力や流れをノズルの近傍で捉えることができるため、その圧力や流れが減衰しないうちに感知し、S/Nの高いところで信号を処理することができるので、信頼性のある情報を表示や報知などによって出力することができる。例えば、異常音を検出した場合には、バルブに異常振動があり、砂噛みによる異常圧が生じたときには、2次側の圧力が異常に上昇するので、本発明を適用することで、調整器の異常・故障診断が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス調整器の一構成例を示す図である。
【図2】図1のガス調整器におけるガス調整部の詳細例を示す上面図である。
【図3】図1のガス調整器におけるガス調整部の詳細例を示すの流れ方向断面図である。
【図4】特許文献5に記載のガス微少漏洩監視システムを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1…ガス調整器、11…ノズル、11a…ガス流入側のノズル孔、11b…ノズル先端側のノズル孔、12…隙間、13…ガス流出孔、13a…ノズル側のガス流出孔、13b…ガス流出口側のガス流出孔、14…バルブ、14a…弁ゴム、15…検出素子、16…表示部、17…回路部、17a…制御回路、17b…伝送回路、17c…電源、21…上蓋、22…調整ネジ、23…調整バネ、24…バネ座止めピン、25…バネ座、26…安全弁バネ、27…受圧板、28…ダイヤフラム、29…吊金具、30…レバー、31…カシメピン、32…レバーピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを流出するノズルと、該ノズルのガス流出口を所定圧力のガスが流出可能なように押圧する押圧機構とを有し、該押圧機構で押圧することで、前記ノズルから流出するガスの圧力を調整するガス調整器であって、前記ノズルの先端近傍に、前記ノズルから流出するガスの流量又は圧力を検出する検出素子を配置したことを特徴とするガス調整器。
【請求項2】
前記検出素子は、前記ノズルのガス流出口から流出するガスの流量を検出する流量センサであることを特徴とする請求項1に記載のガス調整器。
【請求項3】
前記検出素子は、前記ノズルのガス流出口から流出するガスの圧力を検出する圧力センサであることを特徴とする請求項1に記載のガス調整器。
【請求項4】
前記検出素子で検出した値を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス調整器。
【請求項5】
前記検出素子で検出した値が、所定の期間以上、所定値を越えたときに報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス調整器。
【請求項6】
前記報知手段として、当該ガス調整器の外部に報知内容を出力する手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のガス調整器。
【請求項7】
前記検出素子を当該ガス調整器に着脱可能に具備したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス調整器。
【請求項8】
前記検出素子で検出した値を、当該ガス調整器の外部に無線で通知する無線送信手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガス調整器。
【請求項9】
前記検出素子で検出した値を、記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガス調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−183880(P2006−183880A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374704(P2004−374704)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】