説明

キャパシタ構造の形成方法及びこれに用いられるシリコンエッチング液

【課題】半導体基板に凹凸形状をなすよう、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを的確かつ効率よく除去することができ、しかもそのエッチングが行われる条件下において長時間活性が維持されるシリコンエッチング液及びこれを用いたキャパシタ構造の形成方法を提供する。
【解決手段】アンモニアと、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性有機化合物、及び金属含有塩基性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの特定塩基性化合物とを組み合わせて含むシリコンエッチング液を、多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜6に適用して、該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状を形成するキャパシタ構造10の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ構造の形成方法及びこれに用いられるシリコンエッチング液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DRAMのキャパシタ構造としてコンケーブ型が採用されてきた。この構造では、シリンダ孔内に下部電極膜を形成し、その内側面のみを電極として機能させる。これによれば、確かにキャパシタの占める面積を小さくすることができるが、シリンダ孔の径も必然的に縮小する。一方でDRAMのデバイス動作に必要な容量は確保しなければならない。この両者を満たすため、シリンダ孔の深さは益々深くなり、その微細加工技術面での対応が難しくなってきている。かかる状況に対応して、シリンダ構造の下部電極の内側のみならず外側も使用し、キャパシタのアスペクト比を低減することができるクラウン型キャパシタも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記のようにキャパシタ構造のアスペクト比を抑える努力はされているものの、微細なシリンダ構造やその孔を精度良く加工して形成することは、それ自体容易ではない。通常、この加工はウエットエッチングによって行われている。すなわち、エッチング液により、ナノメートル〜サブマイクロメートルサイズで深さのあるシリンダ壁をもつ筒状構造を半導体基板に残すよう、その内外の部材を除去しなければならない。特にシリンダ孔内の除去は、包囲された空間から材料をえぐり取るように除去しなければならず、ウエットエッチングにより行う加工として困難を伴う。また、シリンダ構造が密集した部分では、その孔外でも同様の事情でエッチングが困難となる。その加工性を重視してエッチング力の高い溶剤を適用することも考えられるが、その作用により電極やその他の部位を腐食させてしまう懸念がある。また、よりアスペクト比を大きくするために、充填材の材料がSiOから多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンに変更される傾向であり、これに対応した良好なエッチングを可能にしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−199136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャパシタ構造の形成はバッチ式洗浄処理置による場合と枚葉式洗浄処理装置による場合がある。いずれの方式においても所定の温度条件で一定時間エッチング処理が行われるため、その間、エッチング液の活性が保持されていることが望ましい。特に枚葉式で行う場合、循環された状態でエッチング液が洗浄に使用されることになるため、この所定の温度における循環保持によっても処理能力が落ちない、すなわち、高寿命であることが要求される。
【0006】
そこで、本発明は、半導体基板に凹凸形状をなすよう、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを的確かつ効率よく除去することができ、しかもそのエッチングが行われる条件下において長時間活性が維持されるシリコンエッチング液及びこれを用いたキャパシタ構造の形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)アンモニアと、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性有機化合物、及び金属含有塩基性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの特定塩基性化合物とを組み合わせて含むシリコンエッチング液を、多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜に適用して、該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状を形成するキャパシタ構造の形成方法。
(2)前記特定塩基性化合物が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、ヒドロキシルアミン化合物及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の形成方法。
(3)前記アンモニアの質量(M)と特定塩基性化合物の質量(MSB)との含有比(M/MSB)が0.1〜1.0である(1)又は(2)に記載の形成方法。
(4)前記アンモニアの濃度が5〜25質量%である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の形成方法。
(5)前記特定塩基性化合物の濃度が1〜25質量%である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の形成方法。
(6)枚葉式処理装置により前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部の除去を行う(1)〜(5)のいずれか1項に記載の形成方法。
(7)前記エッチング液がアンモニアを含むA剤と特定塩基性化合物を含むB剤とからなり、使用時にA剤とB剤とを混合する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の形成方法。
(8)前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなる(1)〜(7)のいずれか1項に記載の形成方法。
(9)前記シリコンエッチング液により該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去して、アスペクト比(深さ/開口幅)10以上のトレンチ構造を形成する(1)〜(8)のいずれか1項に記載の形成方法。
(10)TiN、Ti、又はWからなる電極膜を少なくとも前記凹凸構造の壁面に残しつつ、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜についてエッチングを行うことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の形成方法。
(11)前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を有する実質的に平らな面をもつ半導体基板を準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された凸部をキャパシタとする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の形成方法。
(12)前記凹部の壁面には、TiN膜が残存している(11)に記載の形成方法。
(13)多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状をなしキャパシタ構造を形成するためのエッチング液であって、アンモニアと、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性有機化合物、及び金属含有塩基性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの特定塩基性化合物とを組み合わせて含むことを特徴とするシリコンエッチング液。
(14)前記特定塩基性化合物が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、ヒドロキシルアミン化合物及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である(13)に記載のエッチング液。
(15)前記アンモニアと前記特定塩基性化合物の含有質量比が0.1〜1.0である(13)又は(14)に記載のエッチング液。
(16)前記アンモニアの濃度が5〜25質量%である(13)〜(15)のいずれか1項に記載のエッチング液。
(17)前記特定塩基性化合物の濃度が1〜25質量%である(13)〜(16)のいずれか1項に記載のエッチング液。
(18)枚葉式処理装置で用いる(13)〜(17)のいずれか1項に記載のエッチング液。
(19)アンモニアを含有するA剤と特定塩基性化合物を含有するB剤とからなり、使用時に両剤を混合して使用するキットとしたことを特徴とする(13)〜(18)のいずれか1項に記載のエッチング液。
(20)前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなる(13)〜(19)のいずれか1項に記載のエッチング液。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリコンエッチング液及びこれを用いたキャパシタ構造の形成方法によれば、半導体基板に凹凸形状をなすよう、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを的確かつ効率よく除去することができ、しかもそのエッチングが行われる条件下において長時間活性が維持されるという優れた効果を奏する。また、本発明によれば、必要によりエッチング残渣の除去も同時に達成し、工程の効率化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図1のつづき)。
【図3】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図2のつづき)。
【図4】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図3のつづき)。
【図5】本発明に適用されるキャパシタ構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明に適用されるキャパシタ構造の別の作製工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】図6に示したVII−VII線矢視断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[キャパシタ構造の形成]
まず、本発明に係るエッチング液について説明する前に、本発明において好適に採用することができるキャパシタ構造の製造例について図1〜5に基づき説明する。なお、下記詳細な説明ではキャパシタ構造の形成について主に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
【0011】
(工程a)
本実施形態の製造例においては、シリコンウエハ3の上に第1の成形膜1と第2の成形膜2が形成されている。第1の成形膜1はシリンダ孔の開孔時のエッチングストッパー膜であり、第2の成形膜2と異方性ドライエッチングプロセスでエッチングレート比を有する膜である。第1の成形膜1としては、例えばLP−CVDプロセスで形成した窒化膜等が挙げられる。一方、第2の成形膜2には多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンの膜が挙げられる。さらに図示していないが保護膜を設けてもよい。
なお、シリコンウエハ3は大幅に簡略化して単層のものとして示しているが、通常はここに所定の回路構造が形成されている。たとえば、分離絶縁膜、ゲート酸化膜、ゲート電極、拡散層領域、ポリシリコンプラグ、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、ビット線、金属プラグ、窒化膜、プラズマ酸化膜、BPSG膜などを用いたものが挙げられる(例えば前記特許文献1参照)。また、図1〜5においては、特にハッチングを付して示していないが、各部材の断面を示している(図3(f)の下図は平面図である)。
【0012】
(工程b)
次に、フォトリソグラフィー工程を用いてフォトレジスト4をパターンニングした後、異方性ドライエッチングにて開孔する(凹部Ka)。このときのフォトレジスト4及びドライエッチングの手法については、この種の製品に適用される通常の物あるいは方法を適用すればよい。
【0013】
(工程c)、(工程d)
さらに、開孔後に凹部Kaの壁面Waと成形膜(シリコン膜)2の上面Wbに沿って、TiNからなる導電膜5を形成する。そして、さらに導電膜5を保護するための埋設膜6(例えば多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンの膜)を凹部に充填するように順次成膜する。このとき中間的に(導電膜5形成後に)形成される凹部をKbとして示している。
【0014】
(工程e)
埋設膜6の成膜後はCMPにてウエハ表面の埋設膜6及び導電膜5(図2,3)の一部を除去し、エッチバックラインEまで露出させる。ここで、第2の絶縁膜2及び埋設膜6をウエットエッチングにより除去する。本発明においてはこの工程が重要であり、後述する本発明に係るエッチング液が高い効果を発揮する。この工程を経て、シリンダ孔Kcを有するキャパシタの下部電極(シリンダ壁)50(図3)が形成される。シリンダ孔壁の深さhは特に限定されないが、この種のデバイスの通常の構造を考慮すると、500〜2000nmであることが実際的である。なお、本発明のエッチング液は上記のようにエッチバック等により平滑にされた面に適用することが好ましく、そこから埋設膜を除去して、トレンチ構造を形成することが好ましい。
【0015】
(工程f)
上記のようにして形成したキャパシタの下部電極50形成後に、容量絶縁膜9を形成し、次いでプレート電極(上部電極)(図示せず)の形成を順次行うことでキャパシタ構造10が形成できる。なお、本明細書においてキャパシタ構造とは、キャパシタそのものであっても、キャパシタの一部を構成する構造部であってもよく、図4に示した例では、下部電極50と容量絶縁膜9とから構成されるものとしてキャパシタ構造10を示している。なお、図示したものでは下部電極50とウエハ3とを成形膜1で隔てた構成として示しているが、必要により同図の断面もしくは別の位置で両者が電気的に接続された構成であるものとして解してよい。例えば、成形膜1の部分にプラグ構造やダマシン構造を形成して導通を確保する構造であったり、下部電極50を成形膜1を貫通する形で形成したものであったりしてもよい。また、容量絶縁膜は下部電極50のみではなく、その他の基板表面に形成されていてもよい。
【0016】
図5は上記実施形態のキャパシタ構造の変形例を示している。この例では下部電極(シリンダ構造)の底部81と主要部82とは別の材料で構成されている。例えば、底部81をSiで構成し、主要部82をTiNで構成する例が挙げられる。なお、図4、図5では構造を端面図として示している。
【0017】
次に、図6、図7に基づいて、上記実施形態の変形例(保護部7のある形態)について説明する。本実施形態では、電極保護膜7を形成する。電極保護膜はキャパシタ構造形成時のシリコン材料の除去に用いるウエットエッチング液に対して充分な耐性を持つ絶縁膜であることが望ましい。更にシリンダ孔Kaの全体に均一に成膜できることが望ましい。例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた窒化膜や五酸化タンタル(Ta)膜等が挙げられる。これを形成する手順は特に限定されないが、等方性エッチングにより、電極保護膜の成長後、電極保護膜を除去する。具体的には、まず成形膜2を、成形層21を含む3層のものに構成しておく(図6(a))。これをエッチングするが、成形膜21は等方性エッチングにおいてエッチングされやすいものが採用されている。そのため、等方性エッチングによりこの部分に窪みVaが形成される(図6(b))。その後、保護膜(図示せず)を形成すると、凹部Kaの壁面に形成されたこの窪み部を含め表面が保護膜に覆われる。つまり、この窪み部内に電極保護膜が充填される。その後、等方性エッチングを施すと、保護部7のみが残された状態となる。これ以降は、上記実施形態と同様に導電膜5を適用し、下部電極50を形成することができる。次いで、本実施形態のエッチング液でシリコン膜及び埋設膜を除去すると、後記下部電極50をなしたとき、そこに、突出した電極保護部(図示せず)を形成することができる(図6(c))。この電極保護用突出部の構造や利点については、特開2010−199136号公報に詳細に開示されている。
本変形例においては、シリンダ孔Kcからの埋設膜の除去が困難なことはもとより、保護部7があるため、電極50間の間隙(凹状部)Kdからの成形膜2の除去も難しくなる。むしろ、外方に突出する保護部7が堰のように機能し、その下方にある成形膜の除去放出を著しく困難にすることがある。本発明のエッチング液は、このような除去が困難な態様において特に高い効果を発揮するため、その適用が好ましい。
【0018】
[シリコンエッチング液]
次に、上記工程eにおいて説明したウエットエッチングに極めて効果的に用いることができる本願発明のシリコンエッチング液の好ましい実施形態について説明する。本実施形態のエッチング液においては、アンモニアおよび特定の塩基性化合物を組み合わせて適用することにより、電極等の部材を傷めずに、上述のような凹凸形状のあるキャパシタ構造の形成に係る多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の除去を的確に行うことを可能にした。その詳細な理由は未解明の点を含むが、以下のように推定される。すなわち、アンモニアは低分子かつ低pKbであるが故に系中に多くの水酸基を含ませることができる。そのため高いシリコンエッチング速度が実現できる。しかしながら、アンモニアは揮発しやすく、その効果の発現期間が非常に短くなりやすい。詳細は不明であるが、特定の塩基性化合物を組み合わせることにより、長い間系中に水酸基を保持すること可能になり、高いエッチング速度を長い時間保持できると考えている。
なお、本明細書において、特定の剤を組み合わせた液とは、当該剤を含有する液組成物を意味するほか、使用前にそれぞれの剤ないしそれを含有する液を混合して用いるキットとしての意味を包含するものである。
【0019】
(アンモニア)
本実施形態のエッチング液はアンモニアを必須成分として含有する。アンモニアの濃度が5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。上記下限値以上とすることで高いエッチング速度を実現することができる。また上記上限値以下とすることでエッチング速度の経時減衰を緩やかにすることができる。
【0020】
(特定塩基性化合物)
本実施形態のエッチング液は、アンモニアとともにアンモニア以外の特定塩基性化合物を含む。特定塩基性化合物は、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性有機化合物、及び金属含有塩基性化合物からなる群から選ばれる。
【0021】
・塩基性有機化合物
塩基性有機化合物の構成元素として炭素及び窒素を有することが好ましく、アミノ基を有することがより好ましい。具体的には、塩基性有機化合物は、有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることが好ましい。なお、有機アミンとは、構成元素として炭素を含むアミンを意味する。
【0022】
本実施形態のエッチング液の有機アルカリ化合物として使用される有機アミンには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、N−ヒドロキシルエチルピペラジンなどのアルカノールアミン、及び/又はエチルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、o−キシレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1−メチルブチルアミン、エチレンジアミン(EDA)、1,3−プロパンジアミン、2−アミノベンジルアミン、N−ベンジルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの水酸基を有しない有機アミンが含まれる。上記作用が効果的に発揮される観点からアルカノールアミンが好ましく、なかでもモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、エチレンジアミン(EDA)、1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが好ましい。なお、本明細書における化合物・基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0023】
アルカリ化合物として使われる第四級アンモニウム水酸化物としては、テトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましく、低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されたテトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましく、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)などが挙げられる。さらに第四級アンモニウム水酸化物としてトリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)なども挙げられる。それに加え、アンモニウム水酸化物と1つあるいはそれ以上の第四級アンモニウム水酸化物の組み合せも使用することができる。これらの中でも、TMAH、TEAH、TPAH、TBAH、コリンがより好ましく、TMAH、TBAHが特に好ましい。
これら有機アミン及び第四級アンモニウム水酸化物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
なお、本明細書において「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは特定の名称ないし化学式で示すときには、当該化合物そのものに加え、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0025】
・ヒドロキシルアミン化合物
本発明においては、特定塩基性化合物としてヒドロキシルアミン化合物を用いることができる。ヒドロキシルアミン化合物としては、ヒドロキシルアミンのほか、ヒドロキシルアミンの塩が挙げられる。ヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミン硝酸塩(HANとも称される)、ヒドロキシルアミン硫酸塩(HASとも称される)、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などが例示できる。エッチング液に、ヒドロキシルアミンの有機酸塩も使用することができ、ヒドロキシルアミンクエン酸塩、ヒドロキシルアミンシュウ酸塩などが例示できる。これらヒドロキシルアミンの塩のうち、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などの無機酸塩が、アルミニウムや銅、チタンなどの金属に対して不活性なので好ましい。特に、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩が好ましい。これらヒドロキシルアミン化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
・金属含有塩基性化合物
金属含有塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウムが挙げられ、なかでも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。
【0027】
本発明においては、エッチング液に、アンモニアと、特定塩基性化合物2種以上とを含有させることが好ましい。2種以上の特定塩基性化合物の組合せとしては、少なくともヒドロキシルアミンと塩基性有機化合物及び/又は塩基性無機化合物との組合せであることが好ましく、なかでも、少なくともヒドロキシルアミンと第四級アンモニウム水酸化物との組合せがより好ましく、少なくともヒドロキシルアミンとTMAH及び/又はMEAとの組合せが特に好ましい。
【0028】
特定塩基性化合物の含有量は、本実施形態のエッチング液の全質量に対して、1〜25質量%の範囲内で含有させることが好ましく、1〜15質量%含有させることがより好ましい。上記上限値以下及び下限値以上とすることで、高いエッチング速度を保持することができるため好ましい。なお、性能が飽和するため、その観点からも上記上限以下で対応すればよい。
また、アンモニアの質量(M)と特定塩基性化合物の質量(MSB)との含有比(M/MSB)が0.1〜10であることが好ましく、0.3〜5であることがより好ましい。上記上限値以下とすることでエッチング速度を保持することができるため好ましい。上記下限値以上とすることで高いエッチング速度を得ることができるため好ましい。なお、特定塩基性化合物は、1種を用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述のようにヒドロキシルアミン塩など、特定塩基性化合物はアニオンからなる塩を用いてもよいが、本発明においては、強酸由来のアニオンの塩を用いる場合等、系内のpHを塩基性化合物の添加等によりアルカリ性に保つことが好ましい。
【0029】
(pH)
本発明のシリコンエッチング液はアルカリ性であり、pH11以上に調整されている。この調整は上記アルカリ化合物とヒドロキシルアミン化合物の添加量を調整することで行うことができる。ただし、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他のpH調整剤を用いて上記範囲のpHとしてもよい。シリコンエッチング液のpHは、さらに9以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましい。このpHが上記下限値以上であることで、十分なエッチング速度を得るとすることができる。上記pHに特に上限はないが、14以下であることが実際的である。
【0030】
(その他の成分)
・有機溶剤の添加
本発明のシリコンエッチング液においては、さらに水溶性有機溶剤を添加してもよい。これにより、ウエハの面内における均一なエッチング性を更に向上しうる点で有効である。水溶性有機溶剤は、アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、フルフリルアルコール、2−メチルー2,4-ペンタンジオール)、グリコール類(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピレングリコール)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル)が好ましい。添加量はエッチング液全量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。この量が上記下限値以上であることで、上記のエッチングの均一性の向上を効果的に実現することができる。一方、上記上限値以下であることで、多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜、その他金属膜に対しての濡れ性を確保するとすることができる。
【0031】
・界面活性剤の添加
本発明のシリコンエッチング液には、さらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤を用いることができる。酸化防止液中の界面活性剤の含有量は、酸化防止液の全質量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%であり、より好ましくは0.0001〜1質量%である。界面活性剤を酸化防止液に添加することでその粘度を調整し、エッチングの面内均一性の更なる向上を改良することができるため好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、およびそれらの塩が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、またはアルキルピリジウム系界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤が挙げられる。
【0033】
エッチング液中の界面活性剤の含有量は、エッチング液の全質量に対して、好ましくは0.0001〜5重量%であり、より好ましくは0.0001〜1質量%である。界面活性剤を洗浄組成物に添加することで洗浄組成物の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができるため好ましく、加えて基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点からも好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(水性媒体)
本実施形態のエッチング液は、水性媒体を媒体とする水系の液組成物であることが好ましい。水性媒体とは、水及び水に可溶な溶質を溶解した水溶液を言う。溶質としては、例えば、アルコールや無機化合物の塩が挙げられる。ただし、溶質を適用する場合でもその量は所望の効果が奏する範囲に抑えられていることが好ましい。また、上記水系の組成物とは、水性媒体が主たる媒体となっていることをいい、固形分以外の媒体の過半が水性媒体であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0035】
なお、本明細書において、半導体基板とは、ウエハのみではなくそこに回路構造が施された基板構造体全体を含む意味で用いる。半導体基板部材とは、上記で定義される半導体基板を構成する部材を指し1つの材料からなっていても複数の材料からなっていてもよい。なお、加工済みの半導体基板を半導体基板製品として区別して呼ぶことがあり、これに必要によりさらに加工を加えダイシングして取り出したチップ及びその加工製品を半導体素子という。
【0036】
なお、半導体基板の上下は特に定めなくてもよいが、本明細書において、図示したものに基づいて言えば、ウエハ3の側を下部(底部)の方向とし、導電膜5の側を上部(天部)の方向とする。
【0037】
(キット)
本発明のエッチング液はA剤とB剤からなり、使用直前にA剤とB剤を混合するキットであってもよい。この場合、例えばA剤にはアンモニアが含まれ、B剤には水酸化テトラメチルアンモニウムなどの特定塩基性化合物が含まれる構成などが挙げられる。このように2つのキットに分けることは、製造コストの観点から好ましい。
また、このような実施形態では、枚葉式処理装置の薬液循環中に片方の剤のみを追添してもよい。このようにすることで高いエッチング速度は更に長く発現する。
【0038】
[エッチング条件]
本実施形態においてエッチングを行う条件は特に限定されないが、スプレー式もしくはウエハスピン式(枚葉式)のエッチングであってもバッチ式(浸漬式)のエッチングであってもよい。スプレー式(ウエハスピン式)のエッチングにおいては、半導体基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間にエッチング液を噴射して前記半導体基板に前記エッチング液を接触させる。他方、バッチ式のエッチングにおいては、エッチング液からなる液浴に半導体基板を浸漬させ、前記液浴内で半導体基板とエッチング液とを接触させる。これらのエッチング方式は素子の構造や材料等により適宜使い分けられればよい。
【0039】
エッチングを行う環境温度は、ウエハスピン式の場合、噴射空間を15〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。エッチング液の方は20〜100℃とすることが好ましく、30〜95℃とすることがより好ましく、50〜90℃とすることが特に好ましい。上記下限値以上とすることにより、金属層に対する十分なエッチング速度を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、エッチングの選択性を確保することができ好ましい。エッチング液の供給速度は特に限定されないが、0.05〜2L/minとすることが好ましく、0.1〜1L/minとすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチングの面内の均一性を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、連続処理時に安定した選択性を確保でき好ましい。半導体基板を回転させるときには、その大きさ等にもよるが、上記と同様の観点から、0〜500rpmで回転させることが好ましく、10〜400rpmで回転させることが好ましい。
【0040】
バッチ式の場合、液浴を15〜90℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチング速度を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、エッチングの選択性を確保することができ好ましい。半導体基板の浸漬時間は特に限定されないが、0.5〜30分とすることが好ましい、1〜10分とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチングの面内の均一性を確保することができ好ましい。上記上限値以下とすることにより、連続処理時に安定した選択性を確保でき好ましい。
【0041】
本発明においては、枚葉式処理装置でエッチングすることが好ましく、そこではエッチングが1枚ずつ行われ、循環しているエッチング液が順次吐出されて使用される。本発明ではエッチング液の寿命が長く、循環している間にエッチング性能が落ちることが少ないことから、枚葉式が好適である。処理温度は上記条件が好ましい。また、処理回転数は上記条件が好ましい。処理はスピン洗浄でもパドル洗浄でもどちらでもよい。リンスは水、IPA(イソプロピルアルコール)、パーフルオロエーテルなどが挙げられ、適切なプロセスを選択できる。
【0042】
(被加工物)
本実施形態のエッチング液を適用することによりエッチングされる材料はどのようなものでもよいが、一般的なキャパシタの製造に用いられる基板材料として多結晶シリコン又はアモルファスシリコンが挙げられる。一方、キャパシタ構造の中核をなす電極材料は窒化チタン(TiN)が挙げられる。すなわち、本実施形態のエッチング液は、上記基板材料のエッチングレート(ERs)と電極材料のエッチングレート(ERe)との比率(ERs/ERe)が大きいことが好ましい。具体的な比率の値は材料の種類や構造にもよるので特に限定されないが、ERs/EReが100以上であることが好ましく、200以上 であることが好ましい。なお、本明細書においては、半導体基板をエッチングするようエッチング液を用いることを「適用」と称するが、その実施態様は特に限定されない。例えば、バッチ式のもので浸漬してエッチングしても、枚葉式のもので吐出によりエッチングしてもよい。
【0043】
加工されるキャパシタ構造の形状や寸法は特に限定されないが、上述したようなシリンダ構造を有するものとしていうと、そのシリンダ孔のアスペクト比が5以上である場合に特に本実施形態のエッチング液の高い効果が活かされ好ましい。同様の観点でアスペクト比が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。上限は特にないが、アスペクト比1000以下であることが実際的である。シリンダ孔の開口径dは特に限定されないが、本実施形態において効果が発揮され、近時のキャパシタ構造の微細化を考慮すると、20〜80nmであるものが好ましい。なお、本明細書においてトレンチないしその構造とは、特定の断面において凹状の形態を呈する構造であれば特に限定されず、溝状の形状のみならず、孔状の形状、逆に針状の構造部多数突出したその周囲などであってもよい。図3を例に言うと、凹状部Kdが針状の構造部多数突出したその周囲からなるトレンチ構造にあたり、シリンダ孔Kcが孔状のトレンチ構造にあたる。アスペクト比は、シリンダ孔Kcについては、その凹状部の深さhを幅dで除した値である。針状の構造部多数突出したその周囲をなす凹状部Kdのアスペクト比は、例えば、凹状部の深さhを幅dで除した値である。
【0044】
上記の観点から、本願発明のエッチング液により、TiN、Ti、又はWからなる電極膜を少なくとも前記凹凸構造の壁面に残しつつ、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜についてエッチングを行うことが好ましい。また、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を有する実質的に平らな面をもつ半導体基板を準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された凸部をキャパシタとする加工を施すことが好ましい。このとき、前記凹部の壁面には、TiN膜が残存していることがより好ましい。
【0045】
本発明において好ましい半導体基板製品の製造方法に係る工程要件を以下に記載しておく。
(1)多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜からなるシリコン膜を有する半導体基板を準備する工程、及び前記半導体基板に特定のエッチング液を適用し、前記シリコン膜の少なくとも一部をエッチングする工程を有する。
(2)前記半導体基板を準備する工程において、前記シリコン膜を含む多層膜構造を形成し、かつ前記半導体基板に凹凸を形成しておき、その後、
前記凹凸表面の少なくとも上面と凹部壁面とに導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上に埋設膜を付与して前記凹部を該埋設膜で充填する工程と、
前記上面に付与された導電膜部分および前記埋設膜の一部を除去して、前記半導体基板のシリコン膜を露出させる工程とを有し、次いで、
前記シリコン膜のエッチング工程において、前記半導体基板に前記エッチング液を付与して、前記凹部壁面の導電膜は残しつつ、前記露出したシリコン膜と前記埋設膜とを除去する。
(3)半導体基板として実質的に平らな面をもつものを準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記シリコン膜と前記埋設膜とを除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された前記導電膜を含む凸部をキャパシタの電極とする。
【0046】
上記本発明の好ましいエッチング方法によれば、その前に実施されたドライエッチングやアッシングの残渣を効果的に除去することができ好ましい。これにより、シリコンのウエットエッチングと残渣の洗浄とを一度に行うことができ、製造効率の大幅な改善に資するものである。
半導体素子の製造プロセスにおいては、レジストパターン等をマスクとして用いたプラズマエッチングにより半導体基板上の金属層等をエッチングする工程がある。具体的には、金属層、半導体層、絶縁層などをエッチングし、金属層や半導体層をパターニングしたり、絶縁層にビアホールや配線溝等の開口部を形成したりすることが行われる。上記プラズマエッチングにおいては、マスクとして用いたレジストや、エッチングされる金属層、半導体層、絶縁層に由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにプラズマエッチングにより生じた残渣を「プラズマエッチング残渣」と称する。
また、マスクとして用いたレジストパターンは、エッチング後に除去される。レジストパターンの除去には、上述のように、ストリッパー溶液を使用する湿式の方法、又は例えばプラズマ、オゾンなどを用いたアッシングによる乾式の方法が用いられる。上記アッシングにおいては、プラズマエッチングにより生じたプラズマエッチング残渣が変質した残渣や、除去されるレジストに由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにアッシングにより生じた残渣を「アッシング残渣」と称する。また、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣等の処理を介して半導体基板上に生じた洗浄除去されるべきものの総称として、単に「残渣」ということがある。
このようなエッチング後の残渣(Post Etch Residue)であるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣は、洗浄組成物を用いて洗浄除去されることが好ましい。本実施形態のエッチング液は、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去するための洗浄液としても適用することができる。なかでも、プラズマエッチングに引き続いて行われるプラズマアッシング後において、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去するために使用することが好ましい。
【実施例】
【0047】
<実施例1、比較例1>
以下の表1に示す成分及び下記処方に示した組成(質量%)で含有させてエッチング液を調液した。
【0048】
<エッチング試験>
試験ウエハ:キャパシタ高さ(図3のhに相当)が6000Åのアモルファスシリコンクラウン型DRAM構造を形成するためのテストパターンウエハを準備した。これに対して、枚葉式装置(SPS-Europe B.V.社製、POLOS(商品名)))にて下記の条件でエッチングを行い、エッチング開始0分と60分経過後のエッチング速度を対比して評価した。この装置ではエッチング液が装置内で循環されており、液温が上記の時間下記の温度に保持されたことを意味する。
・薬液温度:80℃
・タンク容量:40L
・吐出量:1L/min.
・ウエハ回転数500rpm
【0049】
【表1】

【0050】
c17:特開2006−351813号公報 実施例1に相当
c18:特許第3,994,992号明細書 実施例1に相当
TMAH:Tetramethylammonium hydroxide(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)
HA:Hydroxylamine(ヒドロキシルアミン)
MEA:Monoethanolamine(モノエタノールアミン)
初期: 処理開示時のシリコンエッチング速度(Å/min.)
経時: 60分経過後のシリコンエッチング速度(Å/min.)
【0051】
上表に示したとおり、本発明のシリコンエッチング液によれば、アモルファスシリコンに対応して、十分なエッチング速度を実現し、しかも60分経過後もエッチング速度の低下が非常に少ないことが分かる。さらに、本発明のシリコンエッチング液は、素子の電極材料であるTiN,SiN、SiO等の各膜へのダメージが非常に小さいことを確認した。
なお、比較例1の試験No.c11では速度低下が著しく大きく、c12〜c16は速度低下はないもののエッチング速度が十分でないという結果であった。
また、シリコンの残渣も評価したところ、各実施例は比較例に比べて残渣が少ない結果となった。
【0052】
<実施例2>
ウエハを多結晶シリコンを用いたテストパターンウエハに変えて実施例1と同様の評価を行ったところ、本発明のシリコンエッチング液ではいずれも十分なエッチング速度を実現し、しかも60分経過後のエッチング速度の低下が非常に少なかった。
【0053】
<実施例4>
下記のA剤とB剤からなるエッチング液を調製し、使用直前にA剤とB剤を混合して実施例1と同様の評価を行ったところ、十分なエッチング速度を実現し、しかも60分経過後のエッチング速度の低下が非常に少なかった。
(A剤)
アンモニア 15質量%
水 残部
(B剤)
水酸化テトラメチルアンモニウム 10質量%
水 残部
【符号の説明】
【0054】
1 第1の絶縁膜
2 第2の絶縁膜
3 シリコンウエハ
4 フォトレジスト
5 導電膜
6 埋設膜
7 保護部
9 容量絶縁膜
10 キャパシタ構造
50 下部電極(シリンダ壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性有機化合物、及び金属含有塩基性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの特定塩基性化合物とを組み合わせて含むシリコンエッチング液を、多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜に適用して、該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状を形成するキャパシタ構造の形成方法。
【請求項2】
前記特定塩基性化合物が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、ヒドロキシルアミン化合物及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
前記アンモニアの質量(M)と特定塩基性化合物の質量(MSB)との含有比(M/MSB)が0.1〜1.0である請求項1又は2に記載の形成方法。
【請求項4】
前記アンモニアの濃度が5〜25質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項5】
前記特定塩基性化合物の濃度が1〜25質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項6】
枚葉式処理装置により前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部の除去を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項7】
前記エッチング液がアンモニアを含むA剤と特定塩基性化合物を含むB剤とからなり、使用時にA剤とB剤とを混合する請求項1〜6のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項8】
前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項9】
前記シリコンエッチング液により該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去して、アスペクト比(深さ/開口幅)10以上のトレンチ構造を形成する請求項1〜8のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項10】
TiN、Ti、又はWからなる電極膜を少なくとも前記凹凸構造の壁面に残しつつ、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜についてエッチングを行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項11】
前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を有する実質的に平らな面をもつ半導体基板を準備し、該半導体基板の表面に前記エッチング液を適用し、前記多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を除去して、その除去された部分を凹部とし、基板内に残された凸部をキャパシタとする請求項1〜10のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項12】
前記凹部の壁面には、TiN膜が残存している請求項11に記載の形成方法。
【請求項13】
多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の少なくとも一部を除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状をなしキャパシタ構造を形成するためのエッチング液であって、アンモニアと、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性有機化合物、及び金属含有塩基性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの特定塩基性化合物とを組み合わせて含むことを特徴とするシリコンエッチング液。
【請求項14】
前記特定塩基性化合物が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、ヒドロキシルアミン化合物及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項13に記載のエッチング液。
【請求項15】
前記アンモニアと前記特定塩基性化合物の含有質量比が0.1〜1.0である請求項13又は14に記載のエッチング液。
【請求項16】
前記アンモニアの濃度が5〜25質量%である請求項13〜15のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項17】
前記特定塩基性化合物の濃度が1〜25質量%である請求項13〜16のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項18】
枚葉式処理装置で用いる請求項13〜17のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項19】
アンモニアを含有するA剤と特定塩基性化合物を含有するB剤とからなり、使用時に両剤を混合して使用するキットとしたことを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項20】
前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなる請求項13〜19のいずれか1項に記載のエッチング液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−8900(P2013−8900A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141618(P2011−141618)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】