説明

クロック発生回路

【課題】ロックアップタイムを短くすることのできるクロック発生回路を提供する。
【解決手段】クロック発生回路1は、基準クロックRCLKに基づいて、周波数を変調させた変調クロックSCLKを発生するスペクトラム拡散クロック発生回路10と、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相の一致を検出したときにHレベルのロック信号LOCKを出力する位相比較器20とを含む。また、クロック発生回路1は、Hレベルのロック信号LOCKが出力されるまでは基準クロックRCLKを出力クロックCLKとして選択し、Hレベルのロック信号の出力に応答して変調クロックSCLKを選択するセレクタ50を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック発生回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高速化、高集積化に伴い装置からの電磁波輻射が問題となっている。そこで、半導体装置の動作クロックを微小に変動させることにより、クロックのスペクトラム拡散を行い、電磁波輻射を低減することが行われている(例えば、特許文献1参照)。なお、このようなクロックを発生するクロック発生回路を、スペクトラム拡散クロック発生回路(Spread Spectrum Clock Generator:SSCG)と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−104655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、SSCGは周波数応答が遅いため、ロックアップタイムが長くなる。このため、SSCGを搭載した半導体装置では、動作クロックが安定するまで待機する必要があり、無駄な消費電流が増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、基準クロックに基づいて、周波数を変調させた変調クロックを発生するスペクトラム拡散クロック発生回路と、前記基準クロックの位相と前記変調クロックの位相とが一致したことを検出したときに検出信号を出力する位相比較器と、前記検出信号が出力されるまでは前記基準クロックを出力クロックとして選択し、前記検出信号の出力に応答して前記変調クロックを前記出力クロックとして選択する選択回路と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、ロックアップタイムを短くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態のクロック発生回路を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のSSCGの内部構成例を示すブロック図。
【図3】SSCGの変調度設定を説明するための波形図。
【図4】第1実施形態の位相比較器の内部構成例を示すブロック回路図。
【図5】位相比較器のスイッチ設定を説明するための説明図。
【図6】位相比較器の動作を説明するための波形図。
【図7】クロック発生回路の動作を説明するための波形図。
【図8】第2実施形態のクロック発生回路を示すブロック図。
【図9】第2実施形態のSSCGの内部構成例を示すブロック図。
【図10】変調度と検出感度との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、クロック発生回路1は、スペクトラム拡散クロック発生回路(SSCG)10と、位相比較器20と、D−フリップフロップ回路(D−FF回路)40と、セレクタ50とを含む。
【0009】
SSCG10は、周波数を変調させた変調クロックSCLKを発生する周波数変調機能付きクロック発生回路である。このSSCG10は、基準クロックRCLKに基づいて、その基準クロックRCLKの周波数に応じた周波数を中心として、周波数をわずかに変動させた変調クロックSCLKを生成する。
【0010】
位相比較器20は、基準クロックRCLKの位相と変調クロックSCLKの位相との比較結果に応じたロック信号LOCKをD−FF回路40に出力する。具体的には、位相比較器20は、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相(本例では、立ち下がりエッジ)が一致したときに所定パルス幅のロック信号LOCKを出力する。なお、ロック信号LOCKのパルス幅は、例えば基準クロックRCLKの半周期よりも長くなるように設定される。
【0011】
D−FF回路40の入力端子Dには、高電位側電源電圧VDDが供給される。また、D−FF回路40のイネーブル端子ENには、位相比較器20からロック信号LOCKが供給される。さらに、D−FF回路40のクロック端子CKには、基準クロックRCLKが供給される。このD−FF回路40は、Hレベルのロック信号LOCKが供給されているときに基準クロックRCLKが立ち上がると、その立ち上がりエッジに同期して入力端子Dに入力される電源電圧VDDをHレベルの選択信号SELとしてセレクタ50に出力する。なお、D−FF回路40は、電源電圧VDDがラッチされるまでは、Lレベルの選択信号SELをセレクタ50に出力する。
【0012】
セレクタ50は、選択信号SELに応じて、基準クロックRCLK又は変調クロックSCLKを出力クロックCLKとして内部回路(図示略)に出力する。具体的には、セレクタ50は、Lレベルの選択信号SELに応答して基準クロックRCLKを出力クロックCLKとして出力する一方、Hレベルの選択信号SELに応答して変調クロックSCLKを出力クロックCLKとして出力する。すなわち、セレクタ50は、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相が一致するまでは基準クロックRCLKを出力クロックCLKとして出力する。また、セレクタ50は、基準クロックRCLKの位相と変調クロックSCLKとの位相が一致したときに、出力クロックCLKを基準クロックRCLKから変調クロックSCLKに切り替える。その後、セレクタ50は、変調クロックSCLKを出力クロックCLKとして出力する。
【0013】
次に、SSCG10の内部構成例を図2に従って説明する。
図2に示すように、SSCG10は、1/N分周器11と、周波数位相比較器12と、チャージポンプ13と、ループフィルタ14と、電圧制御発振器(VCO)15と、1/M分周器16と、制御回路17とを含む。
【0014】
1/N分周器11は、基準クロックRCLKを1/N倍(Nは整数)分周した信号を周波数位相比較器12に供給する。また、1/M分周器16は、VCO15から出力される変調クロックSCLKを1/M倍(Mは整数)分周した信号を周波数位相比較器12に供給する。
【0015】
周波数位相比較器12は、1/N倍に分周された基準クロックRCLKと1/M倍に分周され変調クロックSCLKとの位相差に応じた位相差信号をチャージポンプ13に供給する。
【0016】
チャージポンプ13は、周波数位相比較器12からの位相差信号に基づく信号をループフィルタ14に出力する。ループフィルタ14は、チャージポンプ13の出力信号から高周波成分のノイズ等を除去して平滑化した電圧信号を生成するとともに、その電圧信号をVCO15に供給する。なお、このループフィルタ14は、抵抗R1とコンデンサC1とを含む。
【0017】
VCO15は、ループフィルタ14からの電圧信号に応じた周波数の変調クロックSCLKを生成する。このVCO15は、電圧電流変換器(V−I変換器)15aと、電流デジタルアナログコンバータ(IDAC)15bと、電流制御発振器(ICO)15cとを含む。
【0018】
V−I変換器15aは、ループフィルタ14からの電圧信号を電流信号に変換するとともに、その電流信号をIDAC15bに供給する。IDAC15bは、制御回路17からの変調信号に基づいて、V−I変換器15aから入力する電流信号の電流値を変化させて出力する。そして、ICO15cは、IDAC15bにおいて変化した電流信号の電流値に応じた周波数を持つ変調クロックSCLKを、1/M分周器16と図1に示す位相比較器20とに発振出力する。このように、VCO15では、発振周波数を制御する電流信号をIDAC15bにて周期的又はランダムに変動させることで、変調クロックSCLKの周波数を変調させる。例えば図3に示すように、制御回路17は、IDAC15bにて電流信号を周期的に±0.5%、±1.0%、±1.5%、±0%と変動させることにより、変調クロックSCLKの周波数(出力周波数)を±0.5%、±1.0%、±1.5%、±0%に変調させる。これにより、発生される変調クロックSCLKの周期は、基準クロックRCLKの周期のM/N倍の周期を中心として、所定のサイクルで変動することになる。
【0019】
次に、位相比較器20の内部構成例を図4に従って説明する。
図4に示すように、位相比較器20は、2入力NAND21〜23と、帰還回路24と、3入力AND27と、インバータ28と、2入力AND30とを含む。また、位相比較器20は、2入力NAND31〜33と、帰還回路34と、3入力AND37と、インバータ38と、スイッチ制御回路39とを含む。
【0020】
NAND21には、基準クロックRCLKが入力されるとともに、3入力AND27の出力信号がインバータ28を介して入力される。このNAND21の出力信号は、NAND22と、帰還回路24内の2入力NAND25と、3入力AND27とに出力される。
【0021】
NAND22は、NAND21の出力信号とNAND23の出力信号とを否定論理積演算した結果を、NAND23と、NAND25と、3入力AND27とに出力する。NAND23は、NAND22の出力信号と帰還回路24の出力信号とを否定論理積演算した結果を、NAND22に出力する。
【0022】
帰還回路24は、上記2入力NAND25と、バッファ26a〜26cを有する遅延回路26と、スイッチS1a〜S4aとを含む。
NAND25は、NAND21,22の出力信号を否定論積演算した結果を、バッファ26aに出力するとともに、スイッチS1aを介して3入力AND27に出力する。
【0023】
バッファ26aは、NAND25の出力信号を所定時間だけ遅延させた遅延信号を、次段のバッファ26bに出力するとともに、スイッチS2aを介して3入力AND27に出力する。バッファ26bは、前段のバッファ26aからの遅延信号を更に所定時間だけ遅延させた遅延信号を、次段のバッファ26cに出力するとともに、スイッチS3aを介して3入力AND27に出力する。バッファ26cは、前段のバッファ26bからの遅延信号を更に所定時間だけ遅延させた遅延信号を、スイッチS4aを介して3入力AND27に出力する。
【0024】
スイッチS1a〜S4aの制御端子には、スイッチ制御回路39からスイッチ制御信号SCが供給される。そして、スイッチS1a〜S4aは、スイッチ制御信号SCに応じてオンオフ制御される。
【0025】
3入力AND27は、NAND21,22の出力信号と帰還回路24の出力信号とを論理積演算する。この3入力AND27の出力信号は、インバータ28を介してNAND21に帰還されるとともに、2入力AND30に出力される。
【0026】
NAND31には、変調クロックSCLKが入力されるとともに、3入力AND37の出力信号がインバータ38を介して入力される。このNAND31の出力信号は、NAND32と、帰還回路34内の2入力NAND35と、3入力AND37とに出力される。
【0027】
NAND32は、NAND31の出力信号とNAND33の出力信号とを否定論理積演算した結果を、NAND33と、NAND35と、3入力AND37とに出力する。NAND33は、NAND32の出力信号と帰還回路34の出力信号とを否定論理積演算した結果を、NAND32に出力する。
【0028】
帰還回路34は、上記2入力NAND35と、バッファ36a〜36cを有する遅延回路36と、スイッチS1b〜S4bとを含む。
NAND35は、NAND31,32の出力信号を否定論積演算した結果を、バッファ36aに出力するとともに、スイッチS1bを介して3入力AND37に出力する。
【0029】
バッファ36aは、NAND35の出力信号を所定時間だけ遅延させた遅延信号を、次段のバッファ36bに出力するとともに、スイッチS2bを介して3入力AND37に出力する。バッファ36bは、前段のバッファ36aからの遅延信号を更に所定時間だけ遅延させた遅延信号を、次段のバッファ36cに出力するとともに、スイッチS3bを介してAND37に出力する。バッファ36cは、前段のバッファ36bからの遅延信号を更に所定時間だけ遅延させた遅延信号を、スイッチS4bを介して3入力AND37に出力する。
【0030】
スイッチS1b〜S4bの制御端子には、スイッチ制御回路39からスイッチ制御信号SCが供給される。そして、スイッチS1b〜S4bは、スイッチ制御信号SCに応じてオンオフ制御される。ここで、スイッチ制御回路39は、外部から供給されるスイッチ設定信号に基づいて、スイッチS1a〜S4aのうち1つのスイッチ、及びスイッチS1b〜S4bのうち1つのスイッチをオンするようにスイッチ制御信号SCを生成する(図5参照)。具体的には、スイッチ制御回路39は、図5に示すように、2ビット信号であるスイッチ設定信号が「00」である場合には、スイッチS4a及びスイッチS4bのみをオンさせるようにスイッチ制御信号SCを生成する。また、スイッチ制御回路39は、スイッチ設定信号が「01」である場合にはスイッチS3a,S3bのみをオンさせるように、スイッチ設定信号が「10」である場合にはスイッチS2a,S2bのみをオンさせるようにスイッチ制御信号SCを生成する。そして、スイッチ制御回路39は、スイッチ設定信号が「11」である場合には、スイッチS1a,S1bのみをオンさせるようにスイッチ制御信号SCを生成する。このようなスイッチS1a〜S4a及びスイッチS1b〜S4bのオンオフ設定により、遅延回路26,36の遅延時間が設定され、位相比較器20の検出感度が設定されることになる。そして、この位相比較器20の検出感度、すなわちスイッチS1a〜S4a,S1b〜S4bのオンオフ設定は、SSCG10の変調度に応じて設定される。
【0031】
図4に示すように、3入力AND37は、NAND31,32の出力信号と帰還回路34の出力信号とを論理積演算する。この3入力AND37の出力信号は、インバータ38を介してNAND31に帰還されるとともに、2入力AND30に出力される。
【0032】
2入力AND30は、3入力AND27,37の出力信号を論理積演算した結果を検出信号DSとして出力する。そして、そのHレベルの検出信号DSに基づいて所定パルス幅のロック信号LOCKが生成される。
【0033】
このように構成された位相比較器20において、2入力NAND21〜23、3入力AND27及びインバータ28が第1のフリップフロップ回路に含まれ、2入力NAND31〜33、3入力AND37及びインバータ38が第2のフリップフロップ回路に含まれる。また、帰還回路24,34の出力信号は、位相比較器20(第1及び第2のフリップフロップ回路)の内部状態をリセットする信号として機能する。
【0034】
次に、このように構成されたクロック発生回路1の動作について図6及び図7に従って説明する。なお、これら図6及び図7において、縦軸及び横軸は、説明を簡潔にするため、適宜拡大、縮小して示している。
【0035】
まず、位相比較器20の動作を図6に従って説明する。
実際の位相比較動作を説明する前に、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの双方がLレベルの場合について説明する。
【0036】
基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの双方がLレベルである場合には(時刻t1)、NAND21とNAND31の出力信号は共にHレベルになる。このとき、NAND22,32の出力信号がLレベルである場合には、3入力AND27,37の出力信号が共にLレベルになる。このため、2入力AND30は、Lレベルの検出信号DSを出力する。一方、NAND22,32の出力信号がHレベルである場合には、NAND25,35の出力信号がLレベルとなり、帰還回路24,34の出力信号がLレベルとなる。このため、3入力AND27,37の出力信号がLレベルとなり、2入力AND30の出力信号がLレベルとなる。また、帰還回路24,34からLレベルの出力信号がそれぞれ入力されるNAND23,33の出力信号はHレベルとなる。このため、NAND22,32の出力信号はLレベルになる。
【0037】
このように、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKの双方がLレベルである場合には、NAND22,32からLレベルの出力信号が出力されるとともに、2入力AND30からLレベルの検出信号DSが出力される。
【0038】
その後、基準クロックRCLKがHレベルになると(時刻t2)、NAND21の出力信号がLレベルになり、NAND22の出力信号がHレベルになる。また、変調クロックSCLKがHレベルになると(時刻t3)、NAND31の出力信号がLレベルになり、NAND32の出力信号がHレベルになる。
【0039】
次に、実際の位相比較動作について説明する。まず、図6に示すように、先に基準クロックRCLKが立ち下がり、その後所定時間T1だけ遅れて変調クロックSCLKが立ち下がる場合について説明する。
【0040】
まず、基準クロックRCLKが立ち下がると、その立ち下がりに応答してNAND21の出力信号がHレベルになる。このとき、NAND22の出力信号と帰還回路24の出力信号もHレベルであるため、3入力ANDの出力信号がHレベルになる。
【0041】
また、NAND21の出力信号がHレベルになると、帰還回路24内のNAND25の出力信号がHレベルからLレベルに遷移する。その後、遅延回路26(バッファ26a〜26c)による遅延時間T2が経過すると、帰還回路24の出力信号がHレベルからLレベルに遷移する。すると、3入力AND27の出力信号がHレベルからLレベルに遷移する。なお、帰還回路24からLレベルの出力信号が出力されると、NAND23の出力信号がHレベルとなり、NAND22の出力信号がLレベルになり、NAND25の出力信号がLレベルからHレベルに遷移する。このように、NAND25は、遅延回路26による遅延時間T2を反映したLレベルの出力信号を出力する。
【0042】
一方、NAND25の出力信号がLレベルに遷移してから遅延時間T2が経過する前に、変調クロックSCLKが立ち下がる場合には(時刻t5)、その立ち下がりに応答してNAND31の出力信号がHレベルになる。このとき、NAND32の出力信号と帰還回路34の出力信号がHレベルであるため、3入力AND37の出力信号がHレベルになる。これにより、3入力AND27,37の出力信号が共にHレベルになるため、2入力AND30からHレベルの検出信号DSが出力される。そして、このHレベルの検出信号DSに応答して所定のパルス幅のロック信号LOCKが生成される。すなわち、この場合の位相比較器20は、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相が一致していると検出する。
【0043】
次に、先に基準クロックRCLKが立ち下がり、その後、上記遅延時間T2よりも長い所定時間T3(>T2)だけ遅れて変調クロックSCLKが立ち下がる場合について説明する。なお、基準クロックRCLKの立ち下がりに起因する動作は、上述した動作と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
まず、基準クロックRCLKが立ち下がると(時刻t6)、その立ち下がりに応答して3入力AND27の出力信号がLレベルからHレベルに遷移し、NAND25の出力信号がHレベルからLレベルに遷移する。その後、遅延回路26による遅延時間T2が経過すると、帰還回路24の出力信号がHレベルからLレベルに遷移し、これに伴って3入力AND27の出力信号がHレベルからLレベルに遷移する。
【0045】
続いて、変調クロックSCLKが立ち下がると(時刻t7)、その立ち下がりに応答して3入力AND27の出力信号がLレベルからHレベルに遷移する。しかし、このときには、既に3入力AND27の出力信号がLレベルに遷移しているため、2入力AND30から出力される検出信号DSはLレベルのままとなる。このため、ロック信号LOCKは生成されない。すなわち、この場合の位相比較器20は、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相が一致していないと検出する。
【0046】
このように、位相比較器20は、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相差に応じた時間(上記例では、所定時間T1)が、遅延回路26による遅延時間T2よりも短かい場合に、両クロックRCLK,SCLKの位相が一致していると検出する。なお、ここでは説明を省略するが、変調クロックSCLKが先に立ち下がり、その後、基準クロックRCLKが立ち下がる場合についても同様である。すなわち、この場合には、上記説明における遅延回路26における遅延時間T2が遅延回路36における遅延時間に変わるだけである。
【0047】
ここで、スイッチS1a〜S4aのオンオフを切り替えると、上記遅延時間T2の長さが変わり、位相比較器20の検出感度が変わる。詳述すると、スイッチS4a,S4bのみがオンされると、遅延回路26,36の遅延時間T2が最も長くなる。このため、遅延時間T2が長い分だけ、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相差が大きくても両クロックRCLK,SCLKの位相が一致していると検出されることになる。換言すると、この場合には、両クロックRCLK,SCLKの位相の一致を検出する際の検出精度が最も低くなるため、位相比較器20の検出感度は「最小」となる(図5参照)。反対に、スイッチS1a,S1bのみがオンされると、遅延回路26,36の遅延時間T2が最も短くなる。このため、この場合には、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相差が小さくなければ両クロックRCLK,SCLKの位相が一致していると検出されない。換言すると、この場合には、両クロックRCLK,SCLKの位相の一致を検出する際の検出精度が最も高くなるため、位相比較器20の検出精度は「最大」となる(図5参照)。なお、上述したように、この位相比較器20の検出精度は、SSCG10の変調度に応じて設定される。
【0048】
次に、クロック発生回路1全体の動作について図7に従って説明する。
図7に示すように、クロック発生回路1の起動時には(時刻t11)、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相が一致していないため、位相比較器20からLレベルの検出信号DSが出力される。これにより、Lレベルの選択信号SELがセレクタ50に供給されるため、そのセレクタ50では基準クロックRCLKを出力クロックCLKとして出力する。
【0049】
その後、暫くすると、変調クロックSCLKが安定して出力されるようになる(時刻t12)。続いて、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKの立ち下がりエッジが一致すると(時刻t13)、位相比較器20は、その位相の一致を検出し、Hレベルのロック信号LOCKを所定時間出力する。その後、D−FF回路40は、Hレベルのロック信号LOCKが入力されている間に基準クロックRCLKが立ち上がると、その立ち上がりエッジに同期してHレベルの選択信号SELを出力する。このHレベルの選択信号SELに応答して、セレクタ50は、出力クロックCLKを基準クロックRCLKから変調クロックSCLKに切り替える。そして、この後は変調クロックSCLKが出力クロックCLKとして出力され続ける。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)クロック発生回路1の起動時には、基準クロックRCLKを出力クロックCLKとして選択するようにした。これにより、クロック発生回路1の起動後、直ちに安定した出力クロックCLKを出力することができる。すなわち、クロック発生回路1のロックアップタイムを大幅に短縮することができ、変調クロックSCLKが安定するまでの待機時間が必要なくなる。したがって、その待機時間における無駄な消費電流の発生を抑制することができる。
【0051】
(2)ここで、単に基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとを切り替えると、すなわち任意のタイミングで基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとを切り替えると、Cycle to Cycle(C−to−C)ジッタが増加するという問題が新たに発生する。これに対し、本実施形態では、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相が一致したときに、基準クロックRCLKから変調クロックSCLKに切り替えるようにした。これにより、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKの位相差が小さい時にクロック切り替えが行われるため、クロック切り替えによるハザードの発生を好適に抑制することができる。したがって、クロック切り替えによるC−to−Cジッタを少なく抑えることができる。
【0052】
(3)位相比較器20の検出感度を、SSCG10の変調度に応じて設定するようにした。これにより、SSCG10の変調度に応じてクロック切り替えによるC−to−Cジッタを抑制することができる。
【0053】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態を図8〜図10に従って説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、先の図1〜図7に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0054】
図8に示すように、クロック発生回路1aは、SSCG10aと、位相比較器20aと、D−FF回路40と、セレクタ50とを含む。このクロック発生回路1aでは、SSCG10a及び位相比較器20aに設定信号Seが共通して供給される点が上記第1実施形態と異なる。なお、この設定信号Seは、例えば外部から供給される信号である。
【0055】
図9に示すように、SSCG10aでは、設定信号Seが制御回路17aに供給される。この制御回路17aは、設定信号Seに応じた変調信号をIDAC15bに出力する。すなわち、制御回路17aは、設定信号Seで指定される変調度となるようにIDAC15bにおける電流値を変動させる。また、位相比較器20aでは、図4に示すスイッチ設定信号の代わりに上記設定信号Seがスイッチ制御回路39に供給される。このため、位相比較器20aでは、設定信号Seに基づいてスイッチS1a〜S4a及びスイッチS1b〜S4bがオンオフ設定、すなわち当該位相比較器20aの検出感度が設定される。
【0056】
このように、本実施形態のクロック発生回路1aでは、SSCG10aの変調度と位相比較器20aの検出感度とが共通の設定信号Seによって設定される。具体的には、図10に示すように、複数ビット信号(本例では、2ビット信号)である設定信号Seが「00」である場合には、SSCG10aの変調度を3%(最大)に設定する。また、設定信号Seが「00」である場合には、位相比較器20aの検出感度が「最小」となるようにスイッチS4a,S4bのみをオンするように設定する。この場合の位相比較器20aは、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相差が「500ps」より小さい場合には、両クロックRCLK,SCLKの位相が一致していると検出する。
【0057】
同様に、設定信号Seが「01」である場合には、SSCG10aの変調度を2%に設定するとともに、位相比較器20aの検出感度が「小」となるようにスイッチS3a,S3bのみをオンするように設定する。また、設定信号Seが「10」である場合には、SSCG10aの変調度を1%に設定するとともに、位相比較器20aの検出感度が「中」となるようにスイッチS2a,S2bのみをオンするように設定する。
【0058】
そして、設定信号Seが「11」である場合には、SSCG10aを変調無し(最小)に設定するとともに、位相比較器20aの検出感度が「最大」となるようにスイッチS1a,S1bのみをオンするように設定する。なお、この場合の位相比較器20aは、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相差が「200ps」までは両クロックの位相が一致していると検出する。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3)の効果に加えて以下の効果を奏する。
(4)SSCG10aの変調度が高くなるほど(基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相差が大きくなるほど)、位相比較器20aの検出感度が低くなるようにした。これにより、SSCG10aの変調度に適した位相比較器20aの検出感度を設定することができるため、クロック切り替えによるC−to−Cジッタをより好適に抑制することができる。
【0060】
(5)SSCG10aの変調度と位相比較器20aの検出感度とを、共通の設定信号Seによって設定するようにした。これにより、SSCG10aの変調度の設定変更に連動して位相比較器20aの検出感度を設定変更することができる。
【0061】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記第2実施形態の設定信号Seは、例えば外部端子設定レジスタから供給される信号であってもよい。また、設定信号Seを、プログラマブルに調整可能としてもよい。
【0062】
・上記各実施形態における位相比較器20,20aの内部構成は、基準クロックRCLKと変調クロックSCLKとの位相が一致したことを検出可能な回路構成であれば、図4に示す回路構成に特に制限されない。
【0063】
・上記各実施形態におけるSSCG10,10aの内部構成は、基準クロックRCLKを入力とし、変調信号に応じて変調クロックSCLKのスペクトラム拡散を行うクロック発生回路であれば、図2及び図9に示す回路構成に特に制限されない。
【0064】
・上記各実施形態におけるD−FF回路40のイネーブル端子ENを省略し、位相比較器20,20aから出力されるロック信号LOCKをD−FF回路40のクロック端子に供給するようにしてもよい。
【0065】
・上記各実施形態では、所定レベルの信号として高電位側電源電圧VDDをD−FF回路40の入力端子Dに供給するようにしたが、これに制限されない。
【符号の説明】
【0066】
1,1a クロック発生回路
10,10a スペクトラム拡散クロック発生回路
20,20a 位相比較器
24,34 帰還回路
26,36 遅延回路
40 D−フリップフロップ回路
50 セレクタ(選択回路)
RCLK 基準クロック
SCLK 変調クロック
CLK 出力クロック(動作クロック)
DS 検出信号
LOCK ロック信号(検出信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックに基づいて、周波数を変調させた変調クロックを発生するスペクトラム拡散クロック発生回路と、
前記基準クロックの位相と前記変調クロックの位相とが一致したことを検出したときに検出信号を出力する位相比較器と、
前記検出信号が出力されるまでは前記基準クロックを出力クロックとして選択し、前記検出信号の出力に応答して前記変調クロックを前記出力クロックとして選択する選択回路と、
を含むことを特徴とするクロック発生回路。
【請求項2】
前記位相比較器の検出感度は、前記スペクトラム拡散クロック発生回路の変調度が大きいほど低くなるように設定されることを特徴とする請求項1に記載のクロック発生回路。
【請求項3】
前記スペクトラム拡散クロック発生回路の変調度を設定するための設定信号に基づいて、前記位相比較器の検出感度を設定することを特徴とする請求項2に記載のクロック発生回路。
【請求項4】
前記位相比較器は、当該位相比較器の内部状態をリセットする信号を生成する帰還回路を含み、前記帰還回路内の遅延回路の遅延量を制御することにより、当該位相比較器の検出感度を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のクロック発生回路。
【請求項5】
前記検出信号がイネーブル端子に供給され、前記基準クロックがクロック端子に供給され、所定レベルの信号が入力端子に固定的に供給されるフリップフロップ回路を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のクロック発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−244128(P2011−244128A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113123(P2010−113123)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】