説明

ケイ素含有ポリマーおよびそのポリマーから形成される光導波路

【課題】ケイ素含有ポリマーおよびそのポリマーから形成される光導波路の提供。
【解決手段】式Si(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物を含むケイ素含有反応物質の縮合生成物を含むポリマーが提供される。また、光導波路の形成において使用するのに好適な当該ポリマーを含む組成物、並びに当該ポリマーから形成される光導波路も提供される。これらのポリマー、組成物および光導波路は、電気的および光学的機能性を有するプリント配線基板の形成における特定の用途を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にはケイ素含有ポリマーの分野に関係し、より具体的にはシルセスキオキサンポリマーに関係する。本発明のポリマーは、光学層および光学素子、例えば光導波路などの形成において格別の適用可能性を提供する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み型光導波路の形態におけるポリマー光学層をプリント配線基板に組み入れることは既に知られている。例えば、Shelnutらへの米国出願公開第20050111808A1号および第20050141839A1号は、電子基体、例えばプリント配線基体または半導体ウエハーなどの上にシルセスキオキサン化学を用いて形成された埋め込み型光導波路を開示している。これらの光導波路はコアとそのコアを取り巻くクラッドとを含んでおり、そこでは、光学的放射線は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも高いため、コア内を伝播する。埋め込み型光導波路は、典型的には、基体上に下部クラッド層をコーティングし、下部クラッド層の上にコア層をコーティングし、コア層をパターン化してコア構造を形成し、下部クラッド層およびコア構造の上に上部クラッド層をコーティングすることにより形成される。これらの下部クラッド層、コア層および上部クラッド層は、溶媒およびポリマー成分を含む液状形態の組成物から形成することができる。
【特許文献1】米国特許出願公開第20050111808A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20050141839A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
導波路がプリント配線基板、例えばサーバー装置において使用される回路バックプレーンなどに組み込まれるときには、それらの導波路は、様々な温熱条件に晒されることによりもたらされる熱応力を受ける。これらの条件は、コア及び/又はクラッド材料の亀裂不良およびリフティング欠陥(lifting defect)をもたらし、光学損失を増大させ、これらの導波路を使用不可能に成す可能性がある。これは、典型的に脆い特定のシルセスキオキサンをベースとしたポリマー導波路システムのケースで観測されている。Telcordia GR−1221−CORE 6.2.7(1999年1月)は、光導波路の信頼度特性評価のための標準的な熱サイクル試験である。ケイ素をベースとした導波路システムが提案されており、そこでは、導波路組成物にフレキシブル化添加剤を使用することにより及び/又はポリマー自体にフレキシブル化モノマーの重合単位を組み入れることにより、ポリマーを柔軟にしている。かかるシステムは、例えばShelnutらへの上述の公開特許出願に開示されている。これらの文献は、コーティングの柔軟性に関する問題を解決しようとするものであるが、コーティングされた導波路層の熱サイクル要件に関しては認識していない。かかる熱的変動に晒されたときにおいても改善された信頼度を呈する光導波路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の態様は、反応物質の縮合生成物を含むポリマーを提供し、前述の反応物質は、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRは置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rは加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxは2以上である。
【0005】
本発明の第二の態様は、光導波路の形成において使用するのに好適な組成物を提供する。この組成物は:反応物質の縮合生成物を含むポリマーであって、前述の反応物質が、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rが加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxが2以上のある、ポリマー;並びに活性化の際にこの組成物の溶解性を変えるための成分;を含む。
【0006】
本発明の第三の態様は光導波路を提供する。この光導波路はコアおよびクラッドを含む。これらのコア及び/又はクラッドは、反応物質の縮合生成物を含むポリマーを含む組成物から形成され、前述の反応物質は、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRは置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rは加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxは2以上である。
【0007】
本発明の第四の態様は、上記の組成物から形成されるドライフィルムを提供する。このドライフィルムは:前面および裏面を有する剥離可能な担体基体;および前述の担体基体の前面上のポリマー層;を含み、そのポリマー層は:反応物質の縮合生成物であって、前述の反応物質が、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rが加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxが2以上である、反応物質の縮合生成物;並びに活性化の際にこの組成物の溶解性を変えるための成分;を含む。
【0008】
本発明の第五の態様は、上述の如き導波路を含む電子装置を提供する。この電子装置は、例えば電気的および光学的機能性を有するプリント配線基板であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の添付図面を参照しながら本発明が検討される。
【0010】
本発明は、ケイ素含有ポリマーおよびかかるポリマーを含む組成物を提供する。これらのポリマーおよび組成物は、光導波路および光導波路から製作される装置の形成において用いるのに好適である。他に指定されていない限り、本組成物の成分に対する量は、溶媒を除外した本組成物に基づく重量%で与えられる。本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語はオリゴマー、ダイマー、トリマー、テトラマーなどを含み、ホモポリマーおよびそれより高次のポリマー、即ち、2以上の異なるモノマー単位から形成されるポリマーおよびヘテロポリマーを包含する。「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基およびシクロアルキル基を表し、これらの基は置換されていてもよいし、置換されていなくてもよく、且つその連鎖内または連鎖上にヘテロ原子を含んでいてもよい。「芳香族」という用語は、置換または非置換の芳香族基を表し、ヘテロ環を含んでいてもよい。「アラルキル」という用語は、構成要素としてアルキルおよびアリールの両方を含む基を表し、これらのアルキルおよびアリールは置換されていてもよいし、置換されていなくてもよく、且つそれぞれがヘテロ原子またはヘテロ環を含んでいてもよい。「乾燥した状態で」という用語は、組成物が、その組成物全体を基準として、10重量%以下の溶媒を含んでいることを意味する。「ここで、乾燥状態における本組成物の溶解性は変えることができる」という用語は、10重量%以下の範囲にある、任意の溶媒(必ずしもあらゆるものではない)の含有量に関し、本組成物の溶解性を変えることができることを意味する。
【0011】
本ポリマーは反応物質の縮合生成物を含み、前述の反応物質は、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRは置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rは加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxは2上である。この縮合反応で1以上の追加の反応物質を用いることができる。例えば、これらの反応物質は、式RSi(ORの第三反応物質を更に含んでいてよく、ここで、式中のRおよびRは置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、RとRは異なる基である。
【0012】
本発明に有用なポリマーは、例えばはしご形シルセスキオキサン、ランダム構造のシルセスキオキサンおよびかご形シルセスキオキサン、更には直鎖シロキサンオリゴマー、ならびにそれらの組合せを含む。R、R、R、R、R、RおよびRに対する例示的な有機基は、置換および非置換のアルキル基、アリール基およびヘテロ環式基を含む。前述のアルキル基は、例えば1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状のアルキル基であってよく、典型的には1〜20個の炭素原子を有し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、t−アミル、オクチル、デシル、ドデシル、セチル、ステアリル、シクロヘキシルおよび2−エチルヘキシルである。これらのアルキル基は置換されていてよい。「置換された」とは、その側鎖基における1以上の水素原子が別の置換基で置き換えられていることを意味し、これらの置換基としては、例えば重水素、ハロゲン(例えばフッ素、臭素および塩素)、(C−C)アルキル、(C−C)ハロアルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルカルボニル、(C−C10)アルコキシカルボニル、(C−C10)アルキルカルボニルオキシ、アルキルアミン、アルキルイオウ含有材料などが挙げられる。これらのアルキル基は、そのアルキル鎖内及び/又はアルキル鎖上においてヘテロ原子で置換されていてよく、または例えば非芳香族の環式基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基、ピペリジニル基、テトラヒドロフラニル基およびテトラヒドロチオフェニル基であってもよい。例示的なアリール基は6〜20個の炭素原子を有するアリール基、例えば6〜15個の炭素原子を有するアリール基を含み、例えばフェニル、トリル、ベンジル、1−ナフチル、2−ナフチルおよび2−フェナントリルを含み、及びこれらのアリール基はヘテロ原子で置換されていてもよい。ヘテロ環式基は芳香族基であってよく、例えばチオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ホスホール、アルソール(arsole)およびフランであってよい。
【0013】
ポリマーの合成中にゲル化が生じる可能性を低減するため、Rは、加水分解可能な基、例えば−Si(OR)などを含んでおらず、ここで、式中のRはRからRまでに関して上で述べられている通りのものである。かかるゲル化は、ポリマーおよび組成物の特性、例えばコーティング及び展開溶媒中の溶解性、及び被覆性などにとって不利益であるものと考えられる。Rを基礎とする式RSi(ORの一より多くの反応物質が存在する場合、例えば上で述べられている任意の第三の反応物質が存在する場合、それぞれのかかる反応物質に対するR(例えばR)は、加水分解可能な基を含んでいなくてよい。
【0014】
R、RおよびRの典型は、置換または非置換のメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、フェネチル基、アダマンチル基およびそれらの組合せである。R、RおよびRの典型は、置換または非置換のメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびそれらの組合せである。Rの典型は、置換または非置換のメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基であり、並びにxは典型的には2〜10である。
【0015】
形成されるポリマーは、例えば、アルキルケイ素ポリマー、例えばメチルシルセスキオキサン単位およびテトラメチルジシロキサン単位を包含したコポリマー;アリールケイ素ポリマー、例えばフェニルシルセスキオキサン単位およびヘキサメチルトリシロキサン単位を包含したコポリマー、またはアラルキルケイ素コポリマー、例えばメチルおよびフェニルシルセスキオキサン単位、更にはテトラメチルジシロキサン単位を包含したコポリマー;を含むことができる。
【0016】
開述されているこれらのポリマーは、容易に入手可能な開始材料を用いて既知の方法により調製することができる。かかる既知の方法は、例えば望ましい縮合反応物質を水の存在下において触媒量の酸と縮合することを含む。本ポリマーに縮合されることとなる単位は様々な比で存在していてよい。例えば、RSi(OR反応物質は、任意のRSi(OR反応物質を加えて、70重量%〜99重量%の量で存在していてよく、一方、RO(RSi−O)OR反応物質は1重量%〜30重量%の量で存在していてよい。追加の縮合反応物質、例えばRSi(ORは、典型的には10重量%〜90重量%の量で存在する。
【0017】
本発明のポリマーは、光導波路の形成に有用な組成物を形成するために使用することができる。かかる組成物は好都合に感光性にすることができる。これらの組成物は本ポリマーから調製され、活性化の際にこの組成物の溶解性を変えるための成分を更に含む。乾燥した状態における本組成物の溶解性は、成分の活性化の際にこの組成物が現像剤溶液中において現像可能になるように変えることができる。
【0018】
本ポリマーは、典型的には、その組成物中に1重量%〜99.5重量%の量で存在し、例えば60重量%〜98.5重量%の量で存在する。これらのポリマーは、ランダム形態またはブロック形態の広範囲にわたる反復単位を含んでいてもよい。本発明において有用なポリマー単位は、例えば5〜150個の反復単位、典型的には約10〜35個の反復単位を有していてよく;及び本発明において有用なシロキサン単位は、例えば5〜150個の反復単位、典型的には約7〜25個の反復単位を有していてよい。従って、本ポリマーは広範囲にわたる様々な分子量を持ち得る。典型的には、本ポリマーは、約500〜15,000の重量平均分子量(M)を有し、より典型的には約1000〜10,000、更に一層典型的には約1000〜5000の重量平均分子量を有する。分子量Mおよび数平均分子量Mが増大すると、水性現像剤中での本発明による組成物の溶出速度が低下することが判明している。
【0019】
活性化の際に本組成物の溶解性を変えるための成分が本組成物中に存在する。この成分により、本組成物は現像剤中におけるその溶解性を変えられ得る。ネガ型材料の場合、この活性成分は、本ポリマー組成物の露光された部分のカップリングを触媒し、それらのカップリングされた部分を現像剤溶液に不溶性とするものと考えられる。本活性成分は、典型的には、活性化の際に酸または塩基を発生する。広範囲にわたる様々な活性成分を本発明において使用することができ、そのような活性成分としては、これらに限定するものではないが、フォト酸発生剤、フォト塩基発生剤、熱酸発生剤および熱塩基発生剤が挙げられる。これらのうち、活性化の際に酸を発生する成分であるフォト酸発生剤および熱酸発生剤が典型的である。
【0020】
本発明に有用なフォト酸発生剤は、光に暴露されたときに酸を発生する任意の一つまたは複数の化合物であり得る。好適なフォト酸発生剤は既に知られており、これらに限定するものではないが、ハロゲン化トリアジン、オニウム塩、スルホン化エステル、置換ヒドロキシイミド、置換ヒドロキシルイミン、アジド、ナフトキノン、例えばジアゾナフトキノンなど、ジアゾ化合物およびそれらの組合せが挙げられる。
【0021】
特に有用なハロゲン化トリアジンとしては、例えばハロゲン化アルキルトリアジン、例えばトリハロメチル−s−トリアジンが挙げられる。該s−トリアジン化合物は、特定のメチル−トリハロメチル−s−トリアジンと特定のアルデヒドもしくはアルデヒド誘導体との縮合反応生成物である。かかるs−トリアジン化合物は、米国特許第3,954,475号およびWakabayashiらによるBulletin of the Chemical Society of Japan、42、2924−30(1969)に開示されている手順により調製することができる。本発明に有用な他のトリアジン型フォト酸発生剤は、例えば米国特許第5,366,846号に開示されている。
【0022】
弱求核性のアニオンを伴うオニウム塩は、本発明におけるフォト酸発生剤として使用するのに特に好適である。かかるアニオンの例は、二価から七価までの金属または非金属、例えばアンチモン、スズ、鉄、ビスマス、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スカンジウム、クロム、ハフニウム、銅、ホウ素、リンおよびヒ素などのハロゲン錯体アニオンである。好適なオニウム塩の例としては、これらに限定するものではないが、ジアゾニウム塩、例えばジアリール−ジアゾニウム塩、ならびに周期表のVA族、VIA族およびVIIA族のオニウム塩、例えばハロニウム塩、例えばヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびアルソニウム塩、スルホニウム塩、例えば芳香族スルホニウム塩、スルホキソニウム塩またはセレニウム塩が挙げられる。好適なオニウム塩の例は、例えば米国特許第4,442,197号;第4,603,101号;および第4,624,912号に開示されている。スルホニウム塩、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなど、およびそれらの混合物が好適である。
【0023】
本発明におけるフォト酸発生剤として有用なスルホン化エステルは、例えばスルホニルオキシケトンを含む。好適なスルホン化エステルは、これらに限定するものではないが、ベンゾイントシレート、t−ブチルフェニルアルファ−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテート、2,6−ジニトロベンジルトシレートおよびt−ブチルアルファ−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテートを含む。かかるスルホン化エステルは、例えばJournal of Photopolymer Science and Technology、vol.4、No.3、337−340(1991)に開示されている。
【0024】
使用され得る置換ヒドロキシイミドとしては、例えばn−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−2,3−ジフェニルマレイミドおよび2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ−2,3−ジフェニルマレイミドが挙げられる。好適な置換ヒドロキシルイミンとしては、例えば2−(−ニトリロ−2−メチルベンジリデン)−(5−ヒドロキシイミノブチルスルホニル)−チオフェンが挙げられる。本発明に有用なアジドとしては、例えば2,6−(4−アジドベンジリデン)シクロヘキサノンが挙げられる。ナフトキノンには、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの2,1−ジアゾナフトキノン−4−スルホネートエステルが含まれ得る。数あるジアゾ化合物の中でもとりわけ、1,7−ビス(4−クロロスロニルフェニル)−4−ジアゾ−3,5−ヘプタンジオンを使用することができる。
【0025】
本発明に有用なフォト塩基発生剤は、光に暴露された際に塩基を遊離させる任意の一つまたは複数の化合物であり得る。好適なフォト塩基発生剤としては、これらに限定するものではないが、ベンジルカルバメート、ベンゾインカルバメート、O−カルバモイルヒドロキシアミン、O−カルバモイルオキシム、芳香族スルホンアミド、アルファ−ラクタム、N−(2−アリルエテニル)アミド、アリールアジド化合物、N−アリールホルムアミド、4−(オルト−ニトロフェニル)ジヒドロピリジンおよびそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
本発明に有用な熱酸発生剤は、熱活性化の際に酸を発生する任意の一つまたは複数の化合物であり得る。熱は、間接的な方法、例えば対流加熱により加えることができ、または直接的な加熱法、例えばレーザー加熱法により加えられてもよい。好適な熱酸発生剤は既知であり、これらに限定するものではないが、ハロゲン化トリアジン、酸のアンモニウム塩、オニウム塩、スルホン化エステル、置換ヒドロキシイミド、置換ヒドロキシルイミン、アジド、ナフトキノン、例えばジアゾナフトキノン、ジアゾ化合物およびそれらの組合せが挙げられる。
【0027】
本発明に有用な溶解性を変えるための成分の量は、ネガ型材料の場合、化学線または熱に暴露された際にケイ素含有ポリマーのカップリングを触媒し、そのカップリングされた部分を水性現像剤に不溶性にするのに充分な任意の量である。この活性成分は、本組成物中に0.1重量%〜25重量%の量で存在し、例えば0.1%〜12%の量で存在する。
【0028】
場合によって、他の添加剤も本発明の組成物中に存在していてよく、そのような添加剤には、これらに限定するものではないが、軟化剤、表面平滑化剤、湿潤剤、消泡剤、接着促進剤、チキソトロープ剤などが含まれる。かかる添加剤は、コーティング組成物に関する技術分野において広く知られている。本発明の組成物において表面平滑化剤を使用する場合、例えばシリコーンベースオイル、例えばDow Chemical Companyから入手可能なSILWET L−7604シリコーンベースオイルを使用することができる。一より多くの添加剤が本発明の組成物に混ぜ合わされてよいことが認識される。例えば、湿潤剤がチキソトロープ剤と共に混ぜ合わされてよい。かかる任意の添加剤は様々な供給源から商業的に入手することができる。本組成物において使用されることとなるそのような任意の添加剤の量は、個々の添加剤および所望の効果に依存し、当業者の能力の範囲内である。このような他の添加剤は、典型的には5重量%未満の量で本組成物中に存在し、例えば2.5重量%未満の量で存在する。
【0029】
本発明の組成物は、場合によって一以上の有機架橋剤を含むことができる。架橋剤としては、例えば本組成物の成分を三次元的な方法で結び付ける材料が挙げられる。ケイ素含有ポリマーと反応する芳香族または脂肪族の架橋剤が本発明において使用するのに好適である。かかる有機架橋剤は、硬化してケイ素含有ポリマーとの重合ネットワークを形成し、現像剤溶液中における溶解性を低減させる。かかる有機架橋剤はモノマーであってよく、またはポリマーであってもよい。当業者であれば、架橋剤の組合せが本発明に使用され得ることを認識する。
【0030】
本発明に有用で好適な有機架橋剤としては、これらに限定するものではないが、アミン含有化合物、エポキシ含有材料、少なくとも二つのビニルエーテル基を含有する化合物、アリル置換芳香族化合物、およびそれらの組合せが挙げられる。典型的な架橋剤はアミン含有化合物およびエポキシ含有材料を含む。
【0031】
本発明における架橋剤として有用なアミン含有化合物としては、これらに限定するものではないが、メラミンモノマー、メラミンポリマー、アルキロールメチルメラミン、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0032】
好適な有機架橋剤の濃度は、様々要因によって変化し、例えば架橋剤の反応性および本組成物の具体的な用途などによって変化することは、当業者に理解される。使用される場合、一つまたは複数の架橋剤は、典型的には0.1重量%〜50重量%の量で本組成物中に存在し、例えば0.5重量%〜25重量%、または1重量%〜20重量%の量で存在する。
【0033】
本組成物は、場合により、また、典型的には、一以上の溶媒を含んでいてよい。かかる溶媒は、本組成物を調合するのに役立ち、及び本組成物を基体上にコーティングするのに役立つ。広範囲にわたる様々な溶媒を使用することができる。好適な溶媒としては、これらに限定するものではないが、グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;エステル、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、二塩基エステル、カルボネート、例えばプロピレンカルボネート、γ−ブチロラクトン、エステル、例えばエチルラクテート、n−アミルアセテートおよびn−ブチルアセテート、アルコール、例えばn−プロパノール、イソ−プロパノール、ケトン、例えばシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンおよび2−ヘプタノン、ラクトン、例えばγ−ブチロラクトンおよびγ−カプロラクトン、エーテル、例えばジフェニルエーテルおよびアニソール、炭化水素、例えばメシチレン、トルエンおよびキシレン、ならびにヘテロ環式化合物、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素など、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0034】
本発明の組成物は、ケイ素含有ポリマー、溶解性を変えるための成分、および他の任意成分を任意の順番で混合により組み合わせることによって調製することができる。
【0035】
本発明の更なる態様によれば、本発明の感光性組成物は、例えば光学層またはフォトレジストとしての使用を提供するドライフィルムを形成するために使用することができる。従って、これらのドライフィルムは、以下で述べられている導波路構造物またはフォトレジストパターンの形成において使用するのに好適である。これらのドライフィルムは、剥離可能な担体基体、およびその担体基体上の感光性または非感光性ポリマー層を含む。このポリマー層は、上で開述されているような組成物から形成される。本ドライフィルムは、典型的には、ポリマー層上のドライフィルムの前面上の保護カバー層を含む。
【0036】
上述の担体基体は、製造中、保管中およびその後に続くプロセス中における、ポリマー層および任意の他のドライフィルムの層に対する機械的な支持体として機能する。好適な担体基体材料としては、例えば:ポリエチレンテレフタレート(PET)(このPETは、様々な方法で処理されていてよく、例えば樹脂コーティング、火炎処理もしくは静電放電処理、またはスリップ処理されていてよい);紙、例えばポリビニルアルコールコーティング紙、架橋ポリエステルコーティング紙、ポリエチレンコーティング紙、セルロース紙、または厚紙、例えば石版紙;ナイロン;ガラス;セルロースアセテート;合成有機樹脂;ポリオレフィン、例えばポリプロピレン;ポリイミド;ポリウレタン;ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA);ファイバーボード;金属、例えば銅、アルミニウム、スズ、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、またはそれらの合金;およびこれらの材料または他の材料のうちの2以上の多層化構造物、例えば銅コーティングファイバーボードまたはエポキシラミネートなど;が挙げられる。この担体基体は、典型的には厚みを有し、例えば約25μm〜250μmまでの厚みを有している。
【0037】
保護カバー層はポリマー層に保護をもたらし、典型的には、取り外し可能なフィルムまたはシートの形態を成しており、ドライフィルムの残りの部分から剥がし取ることができる。ポリマー層に対する保護カバー層の粘着力は、ポリマー層に対する担体基体の粘着力よりも弱い。このため、担体基体からポリマー層も分離させることなく、ポリマー層から保護カバー層を分離することができる。保護カバー層のための好適な材料としては、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ならびにPETが挙げられる。保護カバー層は典型的には約10μm〜100μmの厚みを有している。場合によって、剥離層でコーティングされた第一層を含んでいてよく、この剥離層がポリマー層と接触する。好適な剥離層材料としては、例えば熱的または光化学的に硬化されるシリコーン、ポリビニルステアレート、ポリビニルカルバメート、ポリN−エチルペルフルオロオクチルスルファンアミドエチルメタクリレート、ポリ(テトラフルオロチレン)、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリシロキサン、ポリアミド、および他の剥離材料、例えばSatasによるHandbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology、第二版、Van Nostrand/Reinhold(1989)に記載されている剥離材料、が挙げられる。
【0038】
これらのドライフィルムは、例えば上で開述されているような組成物を担体基体上に典型的には5ミクロン〜150ミクロンの乾燥時厚みに、例えばメニスカスコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ワイヤーロールコーティング、ドクターブレードコーティング、カーテンコーティングなどによりコーティングすることにより調製され得る。コーティングされた担体基体は、本ポリマー層を基準として、典型的には0重量%〜10重量%の溶媒含有量になるまで、典型的には5重量%未満または2重量%〜5重量%の溶媒含有量になるまで、例えば対流乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥などにより乾燥され得る。担体基体は、典型的には幅が2cm〜150cmで長さが2cm〜150cmの個別的なシートの形態であってよく、シートの状態でコーティングされ、乾燥され、積み重ねられてよい。この担体シートは、更に、典型的には幅が2cm〜150cmで長さが0.5メートル〜1000メートルのロールの形態であってもよく、ウェブコーティングプロセスとして一般的に知られている、オープンリール(reel−to−reel)様式でコーティングされ、乾燥されてよい。保護カバー層は、例えば加熱及び/又は加圧を伴う積層化または加熱及び/又は加圧を伴わない積層化により適用され得る。この保護カバーシートはドライフィルムから剥がされ、そのドライフィルムが、例えば積層化により、基体(例えば電子基板)へ貼り付けられる。この後、ポリマー層は、感光性組成物の場合には画像化およびパターン化されてよく、また、非感光性材料の場合には熱的に硬化されてよい。その構成材料に依存して、ドライフィルムの担体基体は曝露前または曝露後にポリマー層から取り除かれる。
【0039】
本発明の更なる態様によれば、上述のポリマーおよび組成物から光導波路を形成することができる。この導波路はコアおよびクラッドを含む。これらのコア及び/又はクラッドは、上で開述されている如き組成物から形成される。本発明の一つの態様においては、導波路が、コアおよびクラッド層を堆積させることにより、本発明の組成物から形成され、ここで、このクラッド層はコアよりも低い屈折率を有している。
【0040】
本発明の導波路は、個別的な導波路として製造されてよく、または一連の導波路として製造されてもよい。例示することのみを目的として、本発明の組成物から形成されるクラッドおよびコア構造を有する光導波路の形成方法を開述する。導波路は、コア、ならびに第一および第二のクラッド層を堆積させることにより形成される。最終的なこの構造物のクラッドはコアよりも低い屈折率を有している。特に有用な導波路は、1.4〜1.7の屈折率を有するコアおよび1.3〜1.69の屈折率を有するクラッド層を含む。本発明の導波路は、レーザー切断、鋳型技術、押し込み法などの広く知られている方法により、またはリソグラフィー法により、上で開述されている組成物から製造することができる。
【0041】
導波路を支持するのに好適な任意の基体を本発明のこの態様において使用することができる。好適な基体には、これらに限定するものではないが、電子装置、例えばプリント配線基板および集積回路などの製造において使用される基体が含まれる。特に好適な基体には、銅クラッドボードの積層表面および銅表面、銅箔、プリント配線基板の内層および外層、集積回路の製造において使用されるウエハー、例えばシリコンウエハー、ガリウムヒ素ウエハーおよびリン化インジウムウエハー、ガラス基体(これらに限定するものではないが、液晶ディスプレー(「LCD」)のガラス基体が挙げられる)、ならびに誘電体コーティング、クラッド層を含む基体などが包含される。
【0042】
基体の表面上に第一クラッド層を形成することができる。この第一クラッド層は(後述の他の導波路層と同様に)任意の技術により本発明の組成物から形成されてよく、そのような技術としては、これらに限定するものではないが、スクリーン印刷、カーテンコーティング、ローラーコーティング、スロットコーティング、スピンコーティング、フラッドコーティング(flood coating)、静電スプレー、スプレーコーティングまたは浸漬コーティングが挙げられる。本発明の組成物がスプレーコーティングされるときには、場合によって、加熱スプレーガンが使用されてもよい。本組成物の粘度は、それぞれの適用方法での要件を満たすべく、粘度調節剤、チキソトロープ剤、充填剤などにより調節されてよい。この第一クラッド層は、典型的には、乾燥した状態で約1μm〜100μmの厚みに堆積され、例えば約10μm〜50μmの厚みに堆積される。
【0043】
上述の第一クラッド層は、その第一クラッド層組成物における活性成分の種類に依存して、例えば熱的または光分解的に硬化させることができる。熱硬化温度は典型的には90℃〜300℃であり、例えば90℃〜220℃である。かかる硬化は、典型的には5秒間〜1時間の時間にわたって行われる。かかる硬化は、オーブン内またはホットプレート上で基体を加熱することによる作用を受け得る。代替的に、この導波路のクラッドを例えば1ジュール/cm〜2ジュール/cmの化学線を用いてフラッド照射し、続いて、90℃〜300℃の温度、例えば90℃〜220℃の温度で熱硬化させてもよい。
【0044】
本発明による組成物から形成されるコア層がこの第一クラッド層の上に形成される。このコア層は、典型的には光画像化が可能であり、従って、本組成物は、光活性成分、例えばフォト酸発生剤またはフォト塩基発生剤などを含むのがよい。このコア層は、典型的には、乾燥した状態で約1μm〜100μmの厚みにコーティングされ、例えば約8μm〜60μmの厚みにコーティングされる。そのコーティングされた基体は、この後、その被膜中の溶媒を除去すべく、例えばベーキングなどにより軟硬化される。かかる硬化は、選択された個々の溶媒に依存して、様々な温度で行われ得る。好適な温度は、存在する任意の溶媒を実質的に除去するのに充分な任意の温度である。この軟硬化は、例えば基体および熱量に依存して、室温(25℃)から300℃までの任意の温度で行われ得る。かかる硬化は、例えばオーブン内またはホットプレート上において、5秒間〜60分間の時間にわたって行われ得る。
【0045】
硬化後、コア層を化学線に暴露することにより画像化することができる。かかる方法は、例えばコンタクトイメージング法、投射画像化法およびレーザー直接描画法を含み、前述のレーザー直接描画法は多光子吸収によるレーザー直接描画法を含む。多光子吸収は、望む場合に、層内に三次元構造物を形成するために使用することができる。例えばフォトマスクにより定められる露光パターンが、コア導波路の幾何学的形状を定め、この幾何学的形状は、必ずしもそうではないが、典型的には、長さが数センチメートルから数メートルのオーダーであり、幅は数ミクロンから数百ミクロンのオーダーである。露光後、本組成物を典型的には40℃〜170℃の温度で露光後硬化させることができる。硬化時間は様々であり得るが、通常は約30秒間〜1時間である。理論により拘束されることを意図するものではないが、ネガ型材料の場合、化学線に暴露することにより、ケイ素含有ポリマーがカップリングし、露光されていない領域に比べ、露光された領域の現像剤溶液中における溶解性を低減させるものと考えられる。
【0046】
露光されていない領域は、例えば好適な現像剤と接触させることにより、基体上に残存する露光された領域のみを残して取り除くことができ、従って、定められたコア構造物を形成することができる。本組成物は、水性現像剤溶液中において好都合に現像可能である。好適な水性現像剤としては、例えば水中におけるアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、並びに水中における水酸化テトラアルキルアンモニウム、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。かかる現像剤は典型的には0.1N〜2Nの濃度で使用され、例えば0.15N〜1N、または0.26N〜0.7Nの濃度で使用される。あるいは、露光されていない領域を非水性現像剤と接触させることにより取り除くこともできる。好適な現像剤としては、例えばアルコール、例えばC−C10アルコールおよびそれらの異性体、C−C10ケトン、C−C10エステル、C−C10置換または非置換炭化水素、ならびにそれらの組合せが挙げられる。これらの現像剤溶液は、場合によって1以上の既知の界面活性剤を含んでいてよく、例えばポリエチレングリコール、アルキルスルホネート、および当技術分野において広く知られている他の界面活性剤などを含んでいてよい。この界面活性剤は、典型的には0.01重量%〜3重量%の量で現像剤中に存在する。消泡剤も現像剤中に好都合に含められてよい。
【0047】
現像は様々な温度で行われてよく、例えば室温から約65℃までの温度、例えば21℃〜49℃の温度などで行われてよい。穏やかな攪拌または激しい攪拌を伴う現像時間は10分以内であってよく、例えば5分以内、2分以内、1分以内、または30秒以内であってよい。現像は、例えば静的な現像チャンバー内で行われてよく、またはそこに現像剤が噴霧されるコンベヤー化されたプラットホーム上で行われてもよい。噴霧圧は5psi〜40psiの範囲であってよく、例えば10psi〜25psiであってよい。
【0048】
現像後、本導波路は最終的な硬化工程を受けてもよい。この硬化は、例えば1ジュール/cm〜2ジュール/cmの化学線を用いるフラッド照射を含むことができる。更に、または代替的に、これらの導波路を、空気中または不活性な雰囲気中において、例えば窒素またはアルゴン雰囲気中において、約130℃〜300℃の温度で加熱してもよい。
【0049】
次に、第一クラッド層およびコア構造物の上に、第二クラッド層を上述の如くにして形成することができる。この第二クラッド層は、第一クラッド層と同じものであってよく、または異なるものであってもよい。第二クラッド層は、第一クラッド層に関して上で述べられている如く、導波路構造物をもたらすべく、熱的に活性化することができ及び/又は光で活性化することができる。第二クラッド層は典型的に約1μm〜100μmの乾燥時厚みに堆積され、例えば約10μm〜50μmの厚みに堆積される。
【0050】
本発明の光導波路は、様々な波長において優れた透明性を有している。従って、本光導波路は、例えば600nm〜1700nmにおいて使用することができる。本光導波路は他の波長においても有利に使用され得ることが認識される。従って、本光導波路は、データ通信の用途および電気通信の用途において使用するのに特に適している。
【0051】
本発明の光導波路は光電気デバイスの形成に使用することができ、そのような光電気デバイスは、これらに限定するものではないが、スプリッタ、カプラー、スペクトルフィルター、偏光子、アイソレータ、マルチプレクサ、例えば波長分割多重化構造物、増幅器、減衰器、スイッチなどを含み、または、もっと大きなスケールでは、本発明の光導波路は電子装置に使用することができ、そのような電子装置としては、例えばプリント配線基板、集積回路、相互接続装置などが挙げられる。図1は、本発明の更なる態様による例示的な電子装置を示している。この電子装置は、第一導波路クラッド層4上に形成された導波路コア6’を含む光学スプリッタである。第二クラッド層は、典型的には上述の第一クラッド層およびコアの上に形成される。波長λの入力信号がY字形接合部12において、波長は等しいがパワー振幅が低減されている二つの光信号λ’に分割される。
【0052】
また、本組成物は、レンズ、並びに光学素子、例えばミラー、プリズムおよびコネクターなどを含む、ディスプレー装置の製造にも特に有用である。本明細書で使用する場合、電子装置という用語は、光電子デバイス、例えば上述の様々な光電子デバイス、並びに光電子デバイスを含む前述のもっと大きなスケールの装置を包含することを意味する。
【0053】
本発明のポリマーおよび組成物を用いて形成される光導波路は、亀裂、リフティング、層間剥離もしくは表面欠陥、または光学損失の増大を伴うことなく、使用中に遭遇する熱応力、並びに例えばTelcordia GR−1221−CORE 6.2.7(1999年1月)(CO)をはじめとする標準的な熱サイクル試験中に受ける熱応力に耐えることができる。Telcorda熱標準試験は、試料(導波路または導波路層)を、−40℃(±2℃)で15分間および70℃(±2℃)で15分間もしくはそれ以上の極端な温度からなる100回の温度サイクルに晒すことを含む。これらの両極端の温度間の推移の過程における室温(20〜25℃)での休止は、随意的である。
【0054】
以下の実施例は、本発明の更なる様々な態様を例証することを意図したものであるが、如何なる態様においても本発明の範囲を制限することを意図したものではない。これらの実施例の目的上、様々な成分に対する量は、溶媒を含めた本組成物全体を基準とした重量%で与えられている。
【実施例】
【0055】
1.ポリマーの合成
比較例1
以下に記載されている成分を、機械式攪拌器、温度計および凝縮器を備えた三つ口丸底フラスコに加えた。この混合物を約78℃に維持し、還流を起こしながら、上述のフラスコを90℃に加熱された油浴に3時間入れた。凝縮器を取り除き、ディーン・スターク・トラップと取り替えた。油浴を120℃に加熱すると、その後、蒸留が始まった。混合物の温度が88℃に達したときに、その混合物に300mlのエタノールを加えた。油浴を取り除き、混合物を室温にまで冷ました。その混合物を、GR−150樹脂(ローム アンド ハース カンパニー、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)を含有するイオン交換カラム(直径〜5cm×長さ50cm)に約45分間通した。その混合物を丸底フラスコに入れ、約40分〜50分間、ウォーターポンプ吸引の下で、40℃のロータリーエバポレーターに設置され、除去が視覚的に完了するまで溶媒を取り除いた。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1
丸底フラスコに加えた成分が、以下の成分を含んでいた点を除き、比較例1の手順を繰り返した。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例2−4
丸底フラスコに加える成分が以下の通りである点を除き、比較例1の手順を繰り返す。
実施例2
【0060】
【表3】

【0061】
実施例3
【0062】
【表4】

【0063】
実施例4
【0064】
【表5】

【0065】
2.光導波路組成物
比較例2
40.75重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、比較例1の53.76重量%のポリマー、5.38重量%のポリテトラヒドロフラン、0.11重量%のジフェニルナフチルスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート、および0.01重量%のDOW SILWET L−7604シリコーンベースオイルを混合により組み合わせた。この組成物を軽石で磨いた銅クラッド積層板上にコーティングした。このコーティングされた積層板を、90℃のオーブンに30分間入れ、125μmの乾燥時厚みにまで乾燥させた。そのコーティングされた積層板を500mJ/cmで露光し、次いで、対流オーブン内において空気中で最初に90℃の温度で15分間加熱し、その後、200℃で60分間加熱した。このコーティングされた積層板を2インチ×6インチのパネルに切断し、そのパネルをThermotron ATS−195−V−5−5、2ゾーン(空気−空気)熱衝撃チャンバー(Thermotron Industries、ミシガン州ホランド)に入れた。上部チャンバーは75℃に加熱され、下部チャンバーは−40℃に冷却された。このパネルは、これらのチャンバー間での2分間の移動時間を伴い、それぞれの極端な温度に15分間晒された。50回のサイクル後、このパネルは、パネルの全長に沿って走る多数の亀裂を有していることが観測された。
【0066】
実施例5
丸底フラスコに加えた成分が50重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、実施例1の44.88重量%のポリマー、5重量%のポリテトラヒドロフラン、0.11重量%のジフェニルナフチルスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート、および0.01重量%のDOW SILWET L−7604シリコーンベースオイルであった点を除き、比較例2の手順を繰り返した。熱衝撃チャンバー内における100回のサイクル後、亀裂、層間剥離または表面欠陥は観測されなかった。
【0067】
実施例6−8
実施例1のポリマーの代わりに、それぞれ、実施例2−4のポリマーを使用する点を除き、実施例5の手順を繰り返す。熱衝撃チャンバー内における100回のサイクル後、亀裂、層間剥離または表面欠陥は観測されないものと期待される。
【0068】
3.光導波路の形成
実施例9−12
第一クラッド層組成物が、50重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、実施例1−4から得られた44.88重量%のポリマー(それぞれ、実施例9−12に対応)、5重量%のポリテトラヒドロフラン、0.11重量%のジフェニルナフチルスルホニウムペルフルオロブタンスルホネート、および0.01重量%のDOW SILWET L−7604シリコーンベースオイルを混合により組み合わせることにより形成される。この組成物を2000rpmで6インチのケイ素ジオキシド被覆シリコンウエハー上にスピンコーティングし、ホットプレート上において空気中で2分間90℃でソフトベークし、7μmの厚みにする。この組成物を、ホットプレート上において空気中で10分間200℃でハードベークする。
【0069】
その第一クラッド層が、50重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、実施例1−4から得られた42重量%のポリマー(それぞれ、実施例9−12に対応)、10重量%のポリジフェニルシロキサン、2.99重量%のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、および0.01重量%のDOW SILWET L−7604シリコーンベースオイルを混合により組み合わされることにより形成されるコア層組成物でコーティングされる。この組成物は2000rpmでスピンコーティングされ、ホットプレート上において空気中で2分間90℃でソフトベークされ、8μmの厚みに成される。必要な導波路を定めるアートワークをこの組成物上に直接載せる。このアートワークは、様々な寸法および形状の導波路を形成するためのパターンを含んでおり、例えば全長が2cm〜14cmの間及び5μm〜15μmの長さの線形の導波路、分岐した形状の導波路および湾曲した形状の導波路などを形成するためのパターンを含んでいる。800mJ/cmの化学線がこの構造物に適用され、続いて、露光後ベーキングが空気中において90℃で2分間行われる。この後、その露光されたウエハーは、37.8℃(100°F)に維持された0.7Nの水酸化ナトリウム現像剤溶液中に30秒間浸漬される。そのウエハーが脱イオン水ですすがれ、乾燥させられる。
【0070】
ソフトベークした後の第二クラッド層の厚みが10μmである点を除き、第一クラッド層を形成する場合と同じ組成物および手順を用いて、第二クラッド層組成物が、パターン化されたコアおよび第一クラッド層の上に形成される。その結果、光導波路が形成される。
【0071】
比較例2で述べられている条件の下での熱衝撃チャンバー内における100回のサイクル後、これらの導波路では亀裂、層間剥離または表面欠陥が観測されないものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の一つの態様による例示的な光導波路を示している。
【符号の説明】
【0073】
4 第一導波路クラッド層
6’ 導波路コア
12 Y字型接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物質の縮合生成物を含むポリマーであって、該反応物質が、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rが加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxが2以上である、ポリマー。
【請求項2】
反応物質が更に式RSi(ORの第三反応物質を含み、ここで、式中のRおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、且つRとRが異なる、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
がメチルであり、及びxが2である、請求項1記載のポリマー。
【請求項4】
光導波路の形成において使用するのに好適な組成物であって、該組成物が:
反応物質の縮合生成物を含み、該反応物質が、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rが加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxが2以上である;並びに、
活性化の際に該組成物の溶解性を変えるための成分;
を含む、組成物。
【請求項5】
組成物が感光性であり、溶解性を変えるための成分が光活性成分であり、及び乾燥した状態における該組成物が現像剤溶液中において現像可能である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
がメチルであり、及びxが2である、請求項4記載のポリマー。
【請求項7】
前面および裏面を有する剥離可能な担体基体;
該担体基体の前面上のポリマー層;
を含む、請求項4記載の組成物から形成されるドライフィルムであって、
該ポリマー層が:
反応物質の縮合生成物であって、該反応物質が、式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rが加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxが2以上である、反応物質の縮合生成物;並びに、
活性化の際に該組成物の溶解性を変えるための成分;
を含む、ドライフィルム。
【請求項8】
コアおよびクラッドを含む光導波路であって、コア及び/又はクラッドが、反応物質の縮合生成物を含むポリマーを含む組成物から形成され、該反応物質が式RSi(ORの第一反応物質および式RO(RSi−O)ORの第二反応物質を含み、ここで、式中のR、R、R、RおよびRが置換および非置換の脂肪族基、芳香族基およびアラルキル基から選択され、Rが加水分解可能なSi−Oを含んでおらず、及びxが2以上である、光導波路。
【請求項9】
がメチルであり、及びxが2である、請求項8記載の光導波路。
【請求項10】
光導波路が、−40℃±2℃で15分間および70℃±2℃で15分間もしくはそれ以上の極端な温度の100回の温度サイクル(場合によって、該両極端の温度間の推移の過程において20℃から25℃での休止を伴う)を受けた後に、該光導波路が有する光学損失が増大しない、請求項8記載の光導波路。

【図1】
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【公開番号】特開2007−177219(P2007−177219A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−306411(P2006−306411)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】