説明

コニュニケーションシステム

【課題】ペット型ロボットの動作を、単調で物足りなくならないような、しかも連帯感の持てる感情のこもった、動作とすることにより、良好なコミュニケーションが取れるコミュニケーションシステムを提供する。
【解決手段】一方のコミュニケーション装置で行われた操作者の動作を、他方のコミュニケーション装置に伝達するコミュニケーションシステムにおいて、一方のコミュニケーション装置1は、操作者の動作を検出する動作検出手段4と、動作検出手段4で検出された操作者の動作に応じて感情信号を生成し保持する感情生成手段5と、感情信号を他方のコミュニケーション装置3に送信する送信手段6と、他方のコミュニケーション装置3から送信された感情信号を受信する受信手段7と、感情信号を表示部に出力する情報出力手段8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔地間のデータ通信に係るものであり、特に非言語情報のコミュニケーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているようなペット型ロボットを、送信端末と受信端末に用いてコミュニケーションシステムを構築し、例えば、実家の家族と、実家の家族と離れて遠隔地で暮らしている単身赴任者と、のコミュニケーションを取っていた。
【0003】
図8に、この従来のコミュニケーションシステムの動作説明を行うための図を示す。
図8に示すように、このコミュニケーションシステム300は、頭部301aと尻尾301bを持つペット型ロボット301と、ネットワーク302と、頭部303aと尻尾303bを持つペット型ロボット303と、から構成される。
【0004】
ペット型ロボット301は、犬の形状をなしており、そばにいる人間が頭部301aをなでて前後に移動させると、尻尾301bを振るように動作が設定されており、この頭部301aをなでた情報を送受信する機能を有して伝送線を通じてネットワーク302に伝達する。そして、ネットワーク302から他のペット型ロボット303へペット型ロボット301の頭部をなでた情報を入力すると、他のペット型ロボット303の尻尾303bを振るように動作が設定されている。
【0005】
ネットワーク302は、ペット型ロボット301からペット型ロボット頭部301aをなでた情報が送信された時に、この情報を受信して稼動し、ペット型ロボット303に送信する。
【0006】
逆に、ペット型ロボット303からペット型ロボット頭部303aをなでた情報が送信された時に、この情報を受信して稼動し、ペット型ロボット301に送信する。
ペット型ロボット303は、ペット型ロボット301と同様の形状を有し同様の動作を行う。
【0007】
そして、ペット型ロボット301から頭部301aをなでた情報がネットワーク302を経由して送信されてきた時に、これを受信して、尻尾303bを振る。
次に動作について説明する。
【0008】
まず、図8に示すように、ペット型ロボット301の頭部301aを、そばにいる人間(例えば単身赴任者)がなでると、この頭部301aをなでた情報は、ネットワーク302を経由してペット型ロボット303に伝達されることにより、ペット型ロボット303は尻尾303bを振る。
【0009】
そして、ペット型ロボット303の観察者(例えば単身赴任者の家族)が、ペット型ロボット303の尻尾303bを振る動作を、視認することにより、ペット型ロボット301の、そばにいる人間の存在を確認する。
【0010】
次に、ペット型ロボット303の観察者が、ペット型ロボット303の頭部303aをなでると、この頭部303aをなでた情報を、ネットワーク302を経由してペット型ロボット301に伝達し、尻尾301bを振らせることにより、ペット型ロボット303の観察者の存在を、ペット型ロボット301のそばにいる人間に確認させる。
【0011】
このようにして、頭をなでると尻尾を振るペット型ロボット301とペット型ロボット303を用いてコミュニケーションシステムを構築し、それぞれの頭部をなでた情報を送受信することにより、単身赴任者と単身赴任者の家族がお互いに電話をかけるとか、メールのやり取りをしなくても、それぞれのペット型ロボットの頭をなでるという日常的な行動により、お互いの無事を知らせることができる。
【特許文献1】特開2004−70744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、コミュニケーションシステム300において、それぞれのペット型ロボットの頭をなでて相手側のペット型ロボットの尻尾を振る動作をさせても、単調動作であり感情を伝えることはできないため、物足りなくなり、やがては飽きてしまって、次第にペット型ロボットの頭をなでなくなったり、あるいは尻尾を振る動作を見ても見過ごしてしまったりして、お互いのコミュニケーションが取れなくなってしまうと言う問題点があった。
【0013】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、ペット型ロボットを含むコミュニケーション装置を介したコミュニケーションを、単調で物足りなくならないような、しかも連帯感の持てる感情のこもったものとすることにより、良好なコミュニケーションが取れるコミュニケーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明における第1の発明は、一方のコミュニケーション装置で行われた操作者の動作を、他方のコミュニケーション装置に伝達するコミュニケーションシステムにおいて、前記一方のコミュニケーション装置は、前記操作者の動作を検出する動作検出手段と、前記動作検出手段で検出された前記操作者の動作に応じて感情信号を生成し保持する感情生成手段と、前記感情信号を前記他方のコミュニケーション装置に送信する送信手段と、前記他方のコミュニケーション装置から送信された前記感情信号を受信する受信手段と、前記感情信号を表示部に出力する情報出力手段と、を備えたことを特徴とするコミュニケーションシステムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一方のコミュニケーション装置で行われた操作者の動作を、他方のコミュニケーション装置に伝達するコミュニケーションシステムにおいて、一方のコミュニケーション装置は、操作者の動作を検出する動作検出手段と、動作検出手段で検出された操作者の動作に応じて感情信号を生成し保持する感情生成手段と、感情信号を他方のコミュニケーション装置に送信する送信手段と、他方のコミュニケーション装置から送信された感情信号を受信する受信手段と、感情信号を表示部に出力する情報出力手段と、を備えることにより、単調で物足りなくならないような、しかも連帯感の持てる感情のこもった、コミュニケーションを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムについて図1〜図7を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムの概要を示すブロック図である。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係り、コミュニケーション装置に人型ロボットを用いた場合の説明をするための図であり、(A)は正面を示す図であり、(B)は背面を示す図である。
【0018】
図3は、コミュニケーション装置の構成を説明するための図である。
図4は、メインCPUで実行されるプログラムのモジュール構成をデータフローチャートで示す図である。
【0019】
図5は、コミュニケーション装置の感情生成モジュールで用いられる確率オートマトンを説明するための図である。
図6は、感情生成モジュールにおいて遷移確率を生成する処理をフローチャートにして示す図である。
【0020】
図7は、コミュニケーション装置の表現生成モジュールにおける入出力の動作例を示す図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムは、コミュニケーション装置1と、ネットワーク2と、コミュニケーション装置3と、から構成される。
【0021】
そして、コミュニケーション装置1及びコミュニケーション装置3は、動作検出手段4と、感情生成手段5と、送信手段6と、受信手段7と、情報出力手段8と、を有する。
コミュニケーション装置1は、操作者の動作を動作検出手段4に入力し、動作検出手段ではこの入力から動作信号を生成して感情生成手段5へ送る。感情生成手段5では、過去及び現在の動作信号に基づいた感情信号を生成し、この感情信号を送信手段6によって伝送信号に変換し、コミュニケーション装置1に接続されているネットワーク2経由でコミュニケーション装置3へ送る。
【0022】
このコミュニケーション装置3から送られてきた他の操作者の動作による感情信号を変換した伝送信号を受信手段7で受信し、感情信号に再変換する。情報出力手段8では、感情生成手段5と受信手段7が出力した感情信号に基づいて、情報を出力する。
【0023】
ネットワーク2は、コミュニケーション装置1とコミュニケーション装置3に接続され、コミュニケーション装置1の伝送信号をコミュニケーション装置3へ送り、コミュニケーション装置3の伝送信号をコミュニケーション装置1へ送る。
【0024】
コミュニケーション装置3は、コミュニケーション装置1と同様に、ネットワーク2に接続され、送信手段6が生成した伝送信号をネットワーク2経由でコミュニケーション装置1へ送る。
【0025】
このコミュニケーション装置1からネットワーク2を経由して送られてきた伝送信号を、受信手段7で受信する。
図2に、コミュニケーション装置1及びコミュニケーション装置3(以下、本装置とする)の外観を示す。
【0026】
本実施例では本装置の外観は人型ロボットである。
図2(A)に示すように、本装置は、正面に押しボタン11、12と、マイク13と、スピーカ14と、を有し、図2(B)に示すように、背面にUSB端子C1と、ネットワーク接続端子C2と、電源端子C3と、を有する。
【0027】
図3に本装置の構成を示す。
本装置は、メインCPU10と、押しボタン11、12と、マイク13と、スピーカ14と、「LAN IF」15と、「USB IF」16と、「AMP+AD(アナログ・ディジタル変換器)」17と、「DA(ディジタル・アナログ変換器)+ドライバ」18と、複数のモータ制御ユニット19(「モータ制御CPU+モータ制御回路」及び複数の駆動モータと複数の角度センサーからなる)と、メモリ20と、を備える。
【0028】
メインCPU10には、入力として「AMP+AD」17を介してマイク13と、押しボタン11、及び押しボタン12とが接続されており、出力として、「DA+ドライバ」18を介してスピーカ14が接続されている。
【0029】
また入出力として、複数のモータ制御ユニット19と、「LAN IF」15と、「USB IF」16と、メモリ20と、が接続されており、メモリ20に格納されているプログラムとデータを用いて演算処理を行う。
【0030】
図4の太枠に示すように、メインCPU10で実行されるプログラムは、感情生成モジュール100と、表現生成モジュール101と、音声認識モジュール102と、音声合成モジュール103と、動作生成モジュール104と、受信モジュール105と、送信モジュール106と、から構成される。モジュール100からモジュール106までの各モジュールはメモリ20に格納され、メインCPU10で実行される。
【0031】
動作検出手段4は、操作者の動作(音声や接触の有無、又はその内容)を検出し、動作信号を生成する。本装置では、動作検出手段4は、押しボタン11、及び押しボタン12と、マイク13+「AMP+AD」17と、音声認識モジュール102とから構成される。
【0032】
音声認識モジュール102は、マイク13+「AMP+AD」17からの音声信号202が特定の単語、または文章であるかどうかを判定し、そうであれば該当する単語、または文章に対応する動作信号203を出力する。
【0033】
また、音声信号202から周囲の音量を算出し、該音量のレベルを示す動作信号203を出力する。
感情生成手段5は、動作検出手段4が生成した動作信号を入力とし、過去及び現在の動作信号に基づいた感情信号を生成する。感情生成手段5はメインCPU10上で動作するプログラムとして実現され、感情生成モジュール100によって構成される。
【0034】
感情生成モジュール100は、確率オートマトン(Probabilistic Automaton)と呼ばれるアルゴリズムを用いて実現される。図5に示されるように、感情生成モジュール100は常に状態(ノード)N0〜N5の何れかの状態にある。
【0035】
これらの状態を以後「擬似感情状態」と呼ぶ。
擬似感情状態は、各状態N0〜N5間をつなぐアークに対してそれぞれ設定された遷移確率Pmn(m,n:0〜5)に基づいて確率的に遷移する。遷移確率は動作検出手段4が生成した動作信号200、203に応じて変化する。
【0036】
感情生成モジュール100が動作信号200、203に基づいて出力する感情信号207は、その時点での擬似感情状態であり、遷移が起こったタイミングで出力される。
図6に遷移確率の更新処理をフローチャートにして示す。
【0037】
遷移確率は動作検出手段4からの入力があった場合、及び、所定の一定時間何も入力がなかった場合に更新される。
まず、S11で押しボタン11、12、及び音声認識モジュール102からの入力の有無を調べる。入力があった場合はS12からS15に分岐する。
【0038】
ここで、例えば、状態がN0(平常)で、音声認識モジュール102からの「名前を呼ばれる」という入力があったとすると、S15では図5に示すアークN0→N1の遷移確率P01が増加しアークN0→N0の遷移確率P00、及び、同様にP05が減少する。
【0039】
次いで、S16で設定された遷移確率を用いて次の状態を決定する。
この例の場合、状態N1(楽しい)に遷移しやすくなる。S16で状態が遷移した場合は、S19で遷移確率を初期値にリセットする。
【0040】
一方、S11で入力がなかった場合、S12から13へ分岐する。S13ではタイマをチェックする。タイマが一定時間経過していた場合はS14からS15に分岐する。
ここで、例えば、状態N0(平常)で、所定の一定時間何も入力がなくS14からS15に分岐したとすると、S15では遷移確率P04とP05が増加し、遷移確率P00が減少する。従ってS16でN4(眠い)やN5(寂しい)に遷移しやすくなる。
【0041】
送信手段6は、感情生成手段5から感情信号を入力して伝送信号に変換しネットワーク2へ送る。送信手段6は、メインCPU10上で動作する送信モジュール106と「LAN IF」15によって構成される。「LAN IF」15はネットワーク接続端子C2に電気的に接続されている。
【0042】
送信モジュール106は、感情生成モジュール100から出力される感情信号212を伝送信号213に変換し、「LAN IF」15を介してネットワーク2へこの変換した伝送信号213を伝送する。
【0043】
本装置では伝送信号213の伝送は、「LAN IF」15、ネットワーク端子C2を介して有線でおこなわれるが、無線LANを用いても良いし、モデムやPHS等を介して公衆回線を用いても良い。
【0044】
受信手段7は、ネットワーク2から他のコミュニケーション装置の伝送信号を入力し感情信号に変換する。受信手段7は、メインCPU10上で動作する受信モジュール105と、「LAN IF」15によって構成される。
【0045】
受信モジュール105は、ネットワーク2から「LAN IF」15を介して伝送信号205を受け取る。また、受け取った伝送信号205から感情信号206を取り出し、出力する。
【0046】
情報出力手段8は、感情生成手段5及び受信手段7から入力した感情信号を表示する。情報出力手段8は、メインCPU10上で動作する表現生成モジュール101、音声合成モジュール103、動作生成モジュール104と、スピーカ14+「DA+ドライバ」18、及び各モータ制御ユニット19によって構成される。
【0047】
表現生成モジュール101は、感情信号206、207とから表現信号208、209を生成する。表現信号209は本装置の姿勢情報、表現信号208はスピーカ14から発せられる音声情報である。
【0048】
例えば、感情信号207が「楽しい」である場合は、表現信号209で両手を挙げて喜ぶ仕草を出力する。あるいは、感情信号207が「寂しい」である場合は、表現信号209でうなだれる仕草を出力する。
【0049】
また、感情信号206が「寂しい」である場合は、表現信号208で、伝送信号205を送信した側の装置が「寂しい」状態であることを本装置の操作者に音声で知らせるように出力する。
【0050】
音声合成モジュール103は、表現生成モジュール101から出力される表現信号208に基づいて指定された音声合成信号を生成し、「DA+ドライバ」18を介してスピーカ14から音声を出力する。
【0051】
動作生成モジュール104は、表現生成モジュール101から出力される表現信号209に基づいて指定された表現に対応する姿勢を決定し、各関節の角度データを各モータ制御ユニット19に出力する。各モータ制御ユニット19はモータを駆動して各関節を所定の角度に設定する。
【0052】
次に本発明の実施形態に係るコミュニケーションの形態について説明する。
まず、コミュニケーション装置1は、押しボタン11、12と、マイク13とから、操作者の動作(音声や接触の有無、又はその内容)を入力として受け取り、動作信号を生成して感情生成手段5へ送る。感情生成手段5では、過去及び現在の動作信号に基づいた感情信号を生成する。
【0053】
この感情信号を送信手段6へ送り伝送信号に変換してネットワーク2へ送る。
ネットワーク2はコミュニケーション装置1の伝送信号をコミュニケーション装置3へ伝送する。コミュニケーション装置3は受信手段7で伝送信号を再び感情信号に変換して情報出力手段8へ送る。
【0054】
コミュニケーション装置3の情報出力手段8は、感情信号に基づいて、コミュニケーション装置1の操作者の動作を、音声、首の振り、手足のしぐさ等の情報出力によって表現する。
【0055】
このようにして、例えば、コミュニケーション装置3の操作者は、コミュニケーション装置1における操作者の動作を、コミュニケーション装置3の情報出力によって把握する。
【0056】
また、同様にしてコミュニケーション装置1の操作者は、コミュニケーション装置3の操作者の動作をコミュニケーション装置1の情報出力により把握する。
従って、コミュニケーション装置1、3の操作者は、お互いのコミュニケーションを、直接ではなくコミュニケーション装置1、3により、それとなくとることができる。
【0057】
さらに本発明の実施形態に係るコミュニケーションの形態について詳細に説明する。
コミュニケーション装置1が設置されている部屋に操作者の友人が遊びに来たため、部屋がにぎやかになったとする。
【0058】
コミュニケーション装置1は、マイク13+「AMP+AD」17によって部屋の音声を取得し、音声信号202として音声認識モジュール102に出力する。
音声認識モジュール102は、音声信号202から周囲の音量を算出し、該音量のレベルを示す動作信号203を感情生成モジュール100に出力する。
【0059】
感情生成モジュールは、周囲の音量が大きくなったことによって、モジュール内の遷移確率が変化し、擬似感情状態N1(楽しい)に遷移しやすくなる。
擬似感情状態がN1(楽しい)に遷移すると、感情信号212が送信モジュール106に出力され、送信モジュール106内で伝送信号213に変換され、ネットワーク2に送信される。
【0060】
ネットワーク2はコミュニケーション装置1が送信した伝送信号を、コミュニケーション装置3に伝送する。
コミュニケーション装置3は、ネットワーク2から「LAN IF」15を介して伝送信号205を受信する。コミュニケーション装置3で受信された伝送信号205を受信モジュール105において感情信号206に変換する。
【0061】
感情信号206は、コミュニケーション装置1の擬似感情状態N1(楽しい)を表している。この感情信号206を表現生成モジュール101は受信モジュール105から受け取り、これを動作信号208に変換して音声合成モジュール103に出力する。
【0062】
音声合成モジュール103はこれを音声信号に変換し、「DA+ドライバ」18を介してスピーカ14を駆動し、音声を出力する。
この例では、出力する音声は、「A君のところは楽しそうだね」等とする。ここでAはコミュニケーション装置1の愛称とする。
【0063】
このようにして、本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムにおいては、コミュニケーション装置の受信モジュール105でネットワークから受信した他のコミュニケーション装置から伝送された感情信号206を、コミュニケーション装置の表現生成モジュール101で表現信号208、209に変換することにより、一方のコミュニケーション装置が他方のコミュニケーション装置の擬似感情状態に対する反応を表現することができる。
【0064】
このことは、コミュニケーション装置が友達同士であることのメタファである(メタファ:何かに例えた表現をすること。例えば、サイトを家やビルに見立てて、1階はギャラリー、2階は掲示板といったようにするようなこと)。
【0065】
従って、コミュニケーションは本装置の操作者同士が、装置の擬似感情状態という具体性の乏しい情報を介して行うことになる。
このように、擬似感情状態という具体性の乏しい情報を介してコミュニケーションを行うことにより、監視されているという圧迫感の少ないコミュニケーションを常時行うことが可能となる。
【0066】
また、本装置が擬似感情を持った装置であるため、操作することに必然性が生まれ、より自然な生活状況や感情を伝えることができる。
さらに、コミュニケーション装置1の操作者は、コミュニケーション装置1の情報出力が、自分がコミュニケーションをとりたい人物であるコミュニケーション装置3の操作者の生活と連動していることを意識することで、コミュニケーション装置1を頻繁に利用することが期待できる。
【0067】
尚,図4に点線で示すように、動作信号201、204を、表現生成モジュール101に入力するように構成しても良い。すなわち、動作検出手段4の出力を情報出力手段8に直接入力するように構成しても良い。
【0068】
こうすることにより、表現生成モジュール101は、感情信号207によって入力される擬似感情状態と、動作信号201、204によって入力される操作者の動作、の両方に応じて表現を生成することができる。
【0069】
さらに,図4に一点鎖線で示すように、受信モジュール105から出力される感情信号214を感情生成モジュール100に入力するように構成しても良い。
こうすることにより、コミュニケーション装置1の擬似感情状態はコミュニケーション装置3の擬似感情状態によっても変化するようになる。
【0070】
同様に、コミュニケーション装置3の擬似感情状態は、コミュニケーション装置1の擬似感情状態によっても変化するようになる。
このことは、例えば親友の機嫌が悪いと自分の機嫌も悪くなる、といった人間感情のメタファとなり、本装置が友達同士であることをよりリアルに表現できるようになる。
【0071】
図7に、動作信号201、204、及び感情信号207から表現信号208と209を生成した場合の、表現生成モジュール101の入出力の例を示す。
図7に示すように、例えば同じように名前を呼ばれた場合でも、感情信号207による擬似感情状態によって出力する表現信号を変化させることにより、操作者の動作に対して多彩な応答を行なうことができるようになる。
【0072】
本発明のコミュニケーションシステムに用いるコミュニケーション装置の実施形態の1つとして、人型ロボットを取り上げて説明したが、必ずしも人型ロボットではなく他の形状の実施形態でも良いのはもちろんである。
【0073】
人型ロボット以外の実施形態としては、犬型や猫型、またそれ以外の様々な態様をしたペットロボットが考えられる。本発明をこれらのペットロボットとして実施する場合は、人型ロボットの場合とほぼ同様の構成で実施することができる。
【0074】
さらに、コミュニケーション装置自体は,表示画面を備えた、持ち運び可能な小型端末機として実施することも可能である。
この場合、動作検出手段4は、マイク等からなる音声入力手段、押しボタンスイッチ、の他に、表示画面に表示されるGUI(グラフィカルユーザインターフェース)に従って入力されたコマンド等が考えられる。
【0075】
小型端末機の情報出力手段8としては、スピーカ等からなる音声出力手段の他に、表示画面に表示されるキャラクターの動作やテロップ等が考えられる。
この小型端末機における実施形態と同様の形態は、汎用ゲーム機やPC(パーソナルコンピュータ)上で動作するアプリケーションソフトウェアとしてとして実施することも可能である。
【0076】
いままで説明してきたように,本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムは、2台のコミュニケーション装置、すなわちコミュニケーション装置1とコミュニケーション装置3とが、ネットワーク2を介して互いの伝送信号を送受信することによって、コミュニケーションを行うものである。
【0077】
一方、本発明の他の実施形態としては、3台以上のコミュニケーション装置と、それらを相互に接続するネットワークからなるコミュニケーションシステムも実施可能である。
また、図4中の伝送信号205、213、及び感情信号206に該伝送信号の送信元であるコミュニケーション装置を特定するデータを加えることにより、コミュニケーション装置1にネットワークを介して接続している任意のコミュニケーション装置の擬似感情状態を、コミュニケーション装置1の操作者に表示することができる。
【0078】
このように送信元であるコミュニケーション装置を特定するデータを加えることにより、複数のコミュニケーション装置の識別が可能となるので、コミュニケーション装置1とコミュニケーション装置3とを用いて2人の操作者の間でコミュニケーションを行う場合と同様の効果を、ネットワーク2に他のコミュニケーション装置を接続し3人以上の複数のグループとしても、十分上げることが可能となる。
【0079】
以上述べてきたように、本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムは、それぞれのコミュニケーション装置における操作者の動作に対する反応を擬似感情状態として表現し、該擬似感情状態を、ネットワークを経由して他のコミュニケーション装置へ伝送することにより、単調で物足りなくならないような、しかも連帯感の持てる感情のこもった、コミュニケーションを行うことが出来る。
【0080】
また、独居老人等の見守りの分野においては、コミュニケーション装置の擬似感情状態という具体性の少ない情報を伝送するため、監視されているという圧迫感の少ない見守りを実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係り、コミュニケーション装置に人型ロボットを用いた場合の説明をするための図であり、(A)は正面を示す図であり、(B)は背面を示す図である。
【図3】コミュニケーション装置の構成を説明するための図である。
【図4】メインCPUで実行されるプログラムのモジュール構成をデータフローチャートで示す図である。
【図5】コミュニケーション装置の感情生成モジュールで用いられる確率オートマトンを説明するための図である。
【図6】感情生成モジュールにおいて遷移確率を生成する処理をフローチャートにして示す図である。
【図7】コミュニケーション装置の表現生成モジュールにおける入出力の動作例を示す図である。
【図8】従来のコミュニケーションシステムの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1・・・コミュニケーション装置、2・・・ネットワーク、3・・・コミュニケーション装置、4・・・動作検出手段、5・・・感情生成手段、6・・・送信手段、7・・・受信手段、8・・・情報出力手段、10・・・メインCPU、11・・・押しボタンスイッチ、12・・・押しボタンスイッチ、13・・・マイク(マイクロフォン)、14・・・スピーカ、15・・・「LAN IF」、16・・・「USB IF」、17・・・「AMP+AD」、18・・・「DA+ドライバ」、19・・・モータ制御ユニット、20・・・メモリ、100・・・感情生成モジュール、101・・・表現生成モジュール、102・・・音声認識モジュール、103・・・音声合成モジュール、104・・・動作生成モジュール、105・・・受信モジュール、106・・・送信モジュール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のコミュニケーション装置で行われた操作者の動作を、他方のコミュニケーション装置に伝達するコミュニケーションシステムにおいて、
前記一方のコミュニケーション装置は、前記操作者の動作を検出する動作検出手段と、
前記動作検出手段で検出された前記操作者の動作に応じて感情信号を生成し保持する感情生成手段と、
前記感情信号を前記他方のコミュニケーション装置に送信する送信手段と、
前記他方のコミュニケーション装置から送信された前記感情信号を受信する受信手段と、
前記感情信号を表示部に出力する情報出力手段と、
を備えたことを特徴とするコミュニケーションシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−136037(P2007−136037A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336832(P2005−336832)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】