説明

コネクタ機構

【課題】簡単な接続操作でプラグ側及びソケット側の双方を密閉することが可能なコネクタ機構を提供する。
【解決手段】雄型コネクタを雌型コネクタに挿入して流体の授受を行うコネクタ機構において、雌型コネクタと雄型コネクタのそれぞれが、他のコネクタ側との間で流体の授受が行われる流路と、光の授受を行う光伝播路とを備える構造とする。雄型コネクタを雌型コネクタに挿嵌することにより第1の流路と第2の流路とが連通し、第1の光伝播路の端面と第2の光伝播路の端面とが対向して接触あるいは近接させて、光による通信可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の授受を行うとともに連結部分に光通信手段を設けて光によって情報の伝達を行うコネクタ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーを生成する発電装置として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素と酸素とが反応して水が生成される際に発生するエネルギーを電気エネルギーとして取り出す装置である。燃料電池は、電気エネルギーを取り出す際に有害な副次生成物が発生しないことから、地球環境に優しいクリーンな発電装置である。
【0003】
ところで、燃料電池の燃料である水素は、例えば、液体又は気体の状態で貯蔵する貯蔵タンクや、水素吸蔵合金を備える水素カートリッジなどを備える水素貯蔵カートリッジから燃料電池に供給される。ここで、燃料電池と水素貯蔵体の連結部に形成された流体流路を通して、燃料電池に水素ガスが供給される。最適な条件で水素ガスの供給を行うためには、水素貯蔵体と、燃料電池を含む発電体の間に形成された情報伝達経路を通して情報の伝達が行われる。具体的には、水素ガスを供給するための流体流路とは別に配設された信号線を通して電気信号などが送受信される場合がある。また、流体流路内に信号線を設けることにより、電気信号の送受信を行うことも考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気信号の送受信を行う場合、水素貯蔵体に設けられた水素吸蔵体の種類やガス残量、及び水素ガス供給中の水素ガス供給圧、流量等の水素ガスの供給をスムーズに行うための情報が水素吸蔵体と発電体の間で送受信され、適切な条件で水素ガスの供給が行われる。このとき、水素ガスを供給する流路と別にこれらの情報を伝達するための信号線を配設した場合、信号線の引き回しや吸蔵体や発電体を接続したときの信号線の接続操作が煩雑になる場合がある。
【0005】
また、水素吸蔵体と発電体を連結する際に、それぞれに配設された信号線を接続すると接触不良が発生し易いといった問題があった。更に、流体流路内に信号線を配設した場合には、水素ガス等の流体流路内を流れる流体により信号線が劣化する場合がある。流体を授受するために連結される連結部間で信号の送受信を安定して行うことが難しい場合もある。
【0006】
また、水素ガスを用いる燃料電池に限定されず、燃料である流体を燃料貯蔵体からその他の貯蔵体若しくは発電体に供給する場合においても、最適な条件で燃料を供給するためにこれら機器間における情報の伝達は重要なものとなっている。
【0007】
更に、近年の情報通信技術の進歩に伴い、電子デバイスの小型化および高機能化が急速に進展しており、燃料電池の如き発電装置を携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの小型の携帯用情報端末の駆動用電源に利用することも検討されている。それとともに、携帯用情報端末の小型化のみならず、駆動用電源の小型化及びこれら機器間の接続機構も小型化、高性能化、接続操作の簡易化が求められている。
【0008】
よって、本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、電気信号を送受信するための配線を新たに配設することなく、連結部間で光を利用することにより安定した情報伝達を行うことができ、且つ、簡単な接続操作でプラグ側及びソケット側の双方を密閉することが可能な、コネクタ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のコネクタ機構は、雄型コネクタを雌型コネクタに挿入して流体の授受を行うコネクタ機構であって、前記雌型コネクタが、前記雄型コネクタ側との間で燃料流体の授受が行われる第1の流路と、光の授受を行う第1の光伝播路とを備え、前記雄型コネクタが、前記雌型コネクタとの間で燃料流体の授受が行われる第2の流路と光の授受を行う第2の光伝播路とを備え、前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿嵌することにより前記第1の流路と前記第2の流路とが連通し、前記第1の光伝播路の端面と前記第2の光伝播路の端面とが対向して接触あるいは近接することを特徴とする。
【0010】
雄型コネクタを雌型コネクタに挿嵌した際に、雄型コネクタと雌型コネクタの流路が連通するとともに光の伝播路の端面同士が対向して接触あるいは近接することにより、両コネクタ間での流体の授受および情報の交換が可能になる。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明のコネクタ機構は、前記雌型コネクタが、前記雄型コネクタ側に付勢されるとともに前記第1の流路の主流方向に移動自在に前記第1の流路上に設けられ前記第1の流路を前記雄型コネクタ側から遮断する第1の可動部材を備え、前記雄型コネクタが、前記雌型コネクタ側に付勢されるとともに前記第2の流路の主流方向に移動自在に前記第2の流路上に設けられ前記第2の流路を前記雌型コネクタ側から遮断する第2の可動部材を備え、前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿嵌すると前記第1の可動部材が前記雄型コネクタ側に付勢される力に抗して後端側に移動することにより開蓋動作され、且つ前記第2の可動部材が前記雌型コネクタ側に付勢される力に抗して移動することにより開蓋動作されることで前記第1の流路と前記第2の流路とが連通することを特徴とする。
【0012】
雄型コネクタを雌型コネクタに挿嵌すると第1の可動部材が雄型コネクタ側に付勢される力に抗して後端側に移動し、第2の可動部材が雌型コネクタ側に付勢される力に抗して移動することにより開蓋動作されることで第1の流路と第2の流路とが連通するため、雄型コネクタと雌型コネクタを挿嵌する動作のみで、両コネクタ間での流体の授受と情報の交換を行うことが可能となる。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明のコネクタ機構は、前記雌型コネクタ及び前記雄型コネクタは、前記雌型コネクタと前記雄型コネクタとを固定する固定機構を備え、前記固定機構により前記雌型コネクタと前記雄型コネクタとの接続が保持されることを特徴とし、さらに、前記固定機構は、前記雌型コネクタまたは前記雄型コネクタの一方に形成された突起と、前記突起に対向する位置に形成された溝によって構成され、前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿嵌して前記第1の流路と前記第2の流路とが連通し、前記突起が前記溝に嵌合することで、前記雌型コネクタと前記雄型コネクタとの接続を保持することを特徴とする。
【0014】
第1の流路と第2の流路とが連通し、突起が溝に嵌合することで、雌型コネクタと雄型コネクタとの接続を保持するため、雄型コネクタを雌型コネクタに挿嵌するだけの動作で、両コネクタ間での流体の授受を行う接続を保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
燃料電池などで水素ガスを使用する場合、本発明のコネクタ機構を用いて燃料電池発電装置と水素貯蔵カートリッジとの接続を行い、燃料電池を有する発電体と水素ガスを供給する水素ガス供給体間で情報の伝達を行うことにより、適切な条件で水素ガスの供給を行うことができる。このとき、光により情報の伝達を行うことができるので、複雑な信号線を連結部に設けることもなく、更に信号線の煩雑な接続操作を行うこともなくなる。また、煩雑な信号線を配設することがないので、連結部を含む機器自体のサイズを小型化することもできる。特に、携帯情報端末の如き小型化が進む機器に本発明のコネクタ機構を用いることにより、更なる機器の小型化が期待できる。また、簡単な構造の光通信手段を用いることができるので部品点数を減らすことができ、本発明のコネクタ機構を含む機器のコストダウンにも繋がる。
【0016】
本発明のコネクタ機構には、ソケット及びプラグの双方に可動部材及びストッパーが備えられ、可動部材を弾性体の斥力でストッパーに押し付ける構造の遮断弁が備えられ、機械的に開蓋動作するようになされているため、ソケットとプラグとの連結を解除した際に、ソケット側とプラグ側とを密閉状態に保持して、確実に且つ安定して流体の授受を行うことができる。また、ボールプランジャーのように球状の部品(鋼球)がソケットの内部からバネで押されて突起が溝に嵌合することで、ソケットとプラグの接続保持を行うので、許容できる範囲以上の力が加わった場合には、球状の部品(鋼球)はバネの反発力に打ち勝って突起が引っ込み、ロックが外れることになる。このため、単にソケットとプラグを反対方向へ引っ張るだけの簡単な操作で、プラグをソケットから引き抜くことができ、簡単な操作でソケットとプラグとを抜き差しすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
【0018】
以下、本発明に係るコネクタ機構について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。図1に本発明を適用したコネクタ機構1の一構成例を示す。また、図2に本発明を適用したコネクタ機構1に用いるソケットの概略断面図を、図3にプラグの概略断面図を示す。
【0019】
図1は、本実施例のコネクタ機構1を構成するソケット2とプラグ4とが接続された状態を示す外観斜視図である。本発明を適用したコネクタ機構1は、図2に示される雌型コネクタであるソケット2と図3に示される雄型コネクタであるプラグ4とで構成されており、プラグ4を図1に示すようにソケット2に挿嵌することによりプラグ4とソケット2とが連結される。なお、図1はプラグ4をソケット2に挿入して後述するロック機構が働き、ソケット2とプラグ4の接続が保持され、ソケット2とプラグ4の間での燃料の流路が連通された状態を示す。また、このときソケット2とプラグ4の内部に配置されている光ファイバー同士が接触して、ソケット2とプラグ4との間での光による情報伝達が可能になっている。
【0020】
このようなコネクタ機構1は、例えば燃料電池システム等に用いて好適であり、燃料電池システムに用いる場合には、例えば燃料電池側にソケット2を搭載し、水素を貯蔵した水素貯蔵カートリッジ側にプラグ4を搭載する。そして、プラグ4をソケット2に挿嵌することにより、水素貯蔵カートリッジに貯蔵された水素を取り出すことができる。以下、コネクタ機構1の各構成について説明する。本例では、ソケット2は水素貯蔵装置側に設けられ、プラグ4は燃料電池発電装置側に設けられているが、ソケット2が水素貯蔵装置側に設けられ、プラグ4が燃料電池発電装置側に設けられていても良く、更に、燃料電池発電装置と水素貯蔵装置間の接続に用いられることに限定されず、流体の受渡しを行う機器間を接続するためにソケット2とプラグ4が連結されるコネクタ機構1として用いることができる。なお、以下においては、ソケット2はプラグ4を挿嵌する側を先端、反対側を後端ということとし、また、プラグ4においては、ソケット2を挿嵌する側を先端、反対側を後端ということとする。
【0021】
図2を参照するとソケット2はベース21と側壁部材22とが結合されて外形が形成されている。ベース21は円筒状の筒部分21aと円盤状の平板部分21bとが同一の中心軸となるように接続されたフランジ状の部材であり、中心軸には空洞である流体流路21cが形成されている。側壁部材22は略円筒形状の部材であり、筒部外径はベース21の平板部分21b外周と略同一径であり、側壁部材22の円筒中心軸はベース21の中心軸とほぼ一致するように配されている。ベース21と側壁部材22との接合部分の気密性を高めるために、ベース21と側壁部材22の接合面間には各種Oリング等により構成されるシール部材23が配設されている。側壁部材22の内部には、保持部材24と可動部材25とストッパー26と弾性体27と光ファイバー28とが配置されている。
【0022】
保持部材24は、円盤状部分24bの中心に円筒状部分24aが結合した形状である。円盤状部分24bの後端面はベース21に密着して固定され、側面は側壁部材22に密着して固定され、円筒状部分24aは側壁部材22の内部の略中心を通ってソケット2の先端方向に伸びている。ベース21および側壁部材22と保持部材24との接触部分の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また、保持部材24の円盤状部分24bと円筒状部分24aの中心軸を貫通して光ファイバー28が固定されて保持されており、光ファイバー28の一方の端面は円筒状部分24aの先端に露出した状態となっている。この光ファイバー28の他方の端面は、ベース21の流体流路21c内を介して燃料電池側の光通信手段まで到達するように配置される。このとき保持部材24と光ファイバー28との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また保持部材24には、流体の流れを確保するための管である流体流路24cが光ファイバー28を中心とした円形上に形成されており、ベース21の流体流路21cと連通して連続した流体の流路を成している。
【0023】
可動部材25は円環形状の部材であり、外径は側壁部材22の内壁面と略同一径に成形され、内縁部直径は保持部材24の円筒状部分24aの外径より大きく成形されている。また、外縁部は側壁部材22の内壁面に沿い、内縁部は保持部材24の円筒状部分24aに沿って摺動可能に配置されている。このとき、保持部材24の円筒状部分24aの外径と可動部材25内縁部直径との差によって生じる間隙が、流体の流れを確保するための空間である流体流路25cを形成する。可動部材25の外縁部側面と側壁部材22の内壁面の間には、可動部材25が摺動可能となるような隙間が存在して気密性が保たれないため、側壁部材22の内壁には気密性を高めるためのシール部材29が配設されている。シール部材29は燃料の密閉性が高いこと及び可動部材25が摺動する際の摺動抵抗が小さいことを特徴とする。形状としては、一般的なOリング形状あるいはオイルシール形状など、高い密閉性と低い摺動抵抗という条件を満たすものであれば良い。また、可動部材25がストッパー26と接する面にも同様のシール部材30が配されており、可動部材25がストッパー26に押し当てられている状態での気密性が保持される。さらに、可動部材25が後述するプラグ4と接する面にも同様のシール部材31が配されている。
【0024】
ストッパー26は、保持部材24の円筒状部分24aの先端に固定される円盤状の部材であり、保持部材24とストッパー26との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。ストッパー26が円筒状部分24aの先端に固定されていることにより、可動部材25は保持部材24の円盤状部分24bからストッパー26の間に可動範囲が制限される。前述した可動部材25がストッパー26と接する面に配されたシール部材30は、ストッパー26側に配されていることで、可動部材25がストッパー26に押し当てられている状態での気密性が保持されるとしてもよい。
【0025】
弾性体27は、斥力を発生させるバネなどの部材であり、保持部材24と可動部材25との間に圧縮した状態で配置されている。弾性体27が圧縮された状態で保持部材24と可動部材25との間に配置されていることにより、弾性体27から生じる力によって保持部材24と可動部材25との間には斥力が作用して、可動部材25はソケット2の先端方向に移動しストッパー26に押し付けられる。可動部材25がストッパー26に押し付けられた状態では、可動部材25とストッパー26との間にシール部材30が配されていることにより、可動部材25とストッパー26との間での気密性が保持され、可動部材25とストッパー26と弾性体27との組み合わせで遮断弁が構成される。ここで、弾性体27としてはバネ部材に限定されるものではなく、可動部材25に対して先端方向へ付勢するように弾力を与えられるものであれば種々のものを用いることが可能である。また、可動部材25を先端方向へ付勢する手段は、上述した弾性体27に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良く、可動部材25とストッパー26との組み合わせに遮断弁としての機能を付加できるものであればいずれの手段も用いることが可能である。
【0026】
側壁部材22の内壁部分には、継手が接続された際に、その状態を保持するためのロック機構の一端を担う突起32が設けてある。この突起32は、例えばボールプランジャーのように、球状の部品(鋼球)がソケット2の内部からバネで押されており、それをソケット2の内面に設けたストッパーで受け止めて、常に球状の部品(鋼球)が一定の突出量を保つ機能を備えたものである。ただしここに示したロック機構は一例であり、他の構造であっても本発明の継手の基本機能は成立する。
【0027】
図3を参照するとプラグ4はベース41と側壁部材42とが結合されて外形が形成されている。ベース41は円筒状の筒部分41aと円盤状の平板部分41bとが同一の中心軸となるように接続されたフランジ状の部材であり、中心軸には空洞である流体流路41cが形成されている。側壁部材42は外径の異なる2つの略円筒形状が接合した形状の部材であり、外径が大きい部分を円筒部分42aとし、外径が小さい部分を差込部分42bとする。円筒部分42a外径はベース41の平板部分41b外周と略同一径であり、差込部分42b外径はソケット2の側壁部材22内径と略同一径で側壁部材22内部への挿入が可能な形状となっている。側壁部材42の円筒中心軸はベース41の中心軸とほぼ一致するように配されている。円筒部分42aの後端面はベース41の平板部分41bに密着して固定され、ベース41と側壁部材42との接合部分の気密性を高めるために、ベース41と側壁部材42の接合面間には各種Oリング等により構成されるシール部材43が配設されている。側壁部材42の内部には、保持部材44と、可動部材45と、ストッパー46と、弾性体47と、光ファイバー48とが配置されている。
【0028】
保持部材44は、円盤状部分44bの中心に円筒状部分44aが結合した形状である。円盤状部分44bの後端面はベース41に密着して固定され、側面は側壁部材42に密着して固定され、円筒状部分44aは側壁部材42の内部の略中心を通ってプラグ4の先端方向に伸びている。ベース41および側壁部材42と保持部材44との接触部分の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また、保持部材44の円盤状部分44bと円筒状部分44aの中心軸を貫通して光ファイバー48が固定されて保持されており、光ファイバー48の一方の端面は円筒状部分44aの先端に露出した状態となっている。この光ファイバー48の他方の端面は、ベース41の流体流路41c内を介して燃料電池側の光通信手段まで到達するように配置される。このとき保持部材44と光ファイバー48との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また保持部材44には、流体の流れを確保するための管である流体流路44cが光ファイバー48を中心とした円形上に形成されており、ベース41の流体流路41cと連通して連続した流体の流路を成している。
【0029】
可動部材45は円環形状の部材であり、外径は側壁部材42の内壁面と略同一径に成形され、内縁部直径は保持部材44の円筒状部分44aの外径より大きく成形されている。また、外縁部は側壁部材42の内壁面に沿い、内縁部は保持部材44の円筒状部分44aに沿って摺動可能に配置されている。このとき、保持部材44の円筒状部分44aの外径と可動部材45内縁部直径との差によって生じる間隙が、流体の流れを確保するための空間である流体流路45cを形成する。可動部材45の外縁部側面と側壁部材42の内壁面の間には、可動部材45が摺動可能となるような隙間が存在して気密性が保たれないため、側壁部材42の内壁には気密性を高めるためのシール部材49が配設されている。シール部材49は燃料の密閉性が高いこと及び可動部材45が摺動する際の摺動抵抗が小さいことを特徴とする。形状としては、一般的なOリング形状あるいはオイルシール形状など、高い密閉性と低い摺動抵抗という条件を満たすものであれば良い。また、可動部材45がストッパー46と接する面にも同様のシール部材50が配されており、可動部材45がストッパー46に押し当てられている状態での気密性が保持される。
【0030】
また可動部材45の外径の先端部分は円筒形状の外縁部先端45aを形成しており、外縁部先端45aの外径は側壁部材42の内壁面と略同一径で、内径はストッパー46の外径よりも大きく、可動部材45がストッパー46に押し当てられた状態では、ストッパー46の先端面よりもプラグ4の先端側に外縁部先端45aが突出した位置まで到達する。ストッパー46よりも先端側に突出した可動部材45の外縁部先端45aは、ソケット2のストッパー26と略同一形状であり、かつストッパー26の先端面が可動部材45の外縁部先端45aの内側に入り込まないで外縁部先端45aの先端面と当接する程度の大きさである。また外縁部先端45aの先端面には、溝である流路溝45bが形成されており、ソケット2のストッパー26と外縁部先端45aとが当接した際にも、流路溝45bを介した燃料の授受が可能となっている。
【0031】
ストッパー46は、保持部材44の円筒状部分44aの先端に固定される円盤状の部材であり、保持部材44とストッパー46との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。ストッパー46が円筒状部分44aの先端に固定されていることにより、可動部材45は保持部材44の円盤状部分44bからストッパー46の間に可動範囲が制限される。前述した可動部材45がストッパー46と接する面に配されたシール部材50は、ストッパー46側に配されていることで、可動部材45がストッパー46に押し当てられている状態での気密性が保持されるとしてもよい。ストッパー46の外径は、可動部材45の外縁部先端45aの内径よりもやや小さく、可動部材45がストッパー46に押し当てられた状態では、ストッパー46は外縁部先端45aの内側に入り込み、ストッパー46の後端面と可動部材45の円盤状の面とが当接する。また、前述した可動部材45がストッパー46と接する面に配されたシール部材50は、ストッパー46側に配されていることで、可動部材45がストッパー46に押し当てられている状態での気密性が保持されるとしてもよい。
【0032】
弾性体47は、斥力を発生させるバネなどの部材であり、保持部材44と可動部材45との間に圧縮した状態で配置されている。弾性体47が圧縮された状態で保持部材44と可動部材45との間に配置されていることにより、弾性体47から生じる力によって保持部材44と可動部材45との間には斥力が作用して、可動部材45はプラグ4の先端方向に移動しストッパー46に押し付けられる。可動部材45がストッパー46に押し付けられた状態では、可動部材45とストッパー46との間にシール部材50が配されていることにより、可動部材45とストッパー46との間での気密性が保持され、可動部材45とストッパー46と弾性体47との組み合わせで遮断弁が構成される。ここで、弾性体47としてはバネ部材に限定されるものではなく、可動部材45に対して先端方向へ付勢するように弾力を与えられるものであれば種々のものを用いることが可能である。また、可動部材45を先端方向へ付勢する手段は、上述した弾性体47に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良く、可動部材45およびストッパー46に遮断弁としての機能を付加できるものであればいずれの手段も用いることが可能である。
【0033】
ソケット2に嵌合される側壁部材42の差込部分42bの外壁部分には、ソケット2とプラグ4が嵌合された状態で前述したソケット2の側壁部材22に設けられた突起32が到達する位置に、継手が接続された際にその状態を保持するためのロック機構の一端を担う溝51が設けてある。ソケット2の側壁部材22に設けられた突起32が、溝51に入り込むことで、ソケット2とプラグ4の接続状態が保持される。ただしソケット2の説明においても述べたがここに示したロック機構は一例であり、他の構造であっても本発明の継手の機能は成立するため、プラグ4は図3に示した形状に限らない。
【0034】
図4は、プラグ4の可動部材45を図3の矢印A方向から見た平面図である。外縁部先端45aには燃料が流れることが可能な大きさの溝である流路溝45bが形成されている。図4では流路溝45bを外縁部先端45aの円周上に90度間隔で4つ形成した場合を示しているが、燃料の流路として機能する大きさと個数を適宜選択することができ、その配置方法も図4に示したものに限定しない。
【0035】
次に、図5を用いて、コネクタ機構1の動作および遮断弁としての機能について説明する。プラグ4をソケット2に装着するときには、プラグ4の中心軸とソケット2の中心軸とが同一軸上にのるように双方を配し、プラグ4をソケット2の側壁部材22の内側に押し込む。
【0036】
図5において、説明の便宜上第1接触面と第2接触面を定める。ソケット2とプラグ4とが接続する際に、最初にソケット2の可動部材25先端面とプラグ4の差込部分42b先端面が接触するが、この時に接触する面を第1接触面61とする。第1接触面61が結合した後さらに接続動作が進むと、ソケット2のストッパー26とプラグ4の可動部材45の外縁部先端45aの先端面が接触するが、このときに接触する面を第2接触面62とする。図5に示したようなソケット2とプラグ4とが分離した状態から、ソケット2とプラグ4との接続が完了した状態に至るまでの各部の動作を、段階ごとに説明すると以下のようになる。
【0037】
図5は、ソケット2とプラグ4とが分離した状態である。このときのソケット2では、可動部材25が弾性体27の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー26に当接しているため、可動部材25とストッパー26との間に配されているシール部材30によって気密が保持されている。また、側壁部材22の内壁と可動部材25の外壁との間に配されているシール部材29によっても気密が保持されているため、可動部材25とストッパー26とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。同様にプラグ4では、可動部材45が弾性体47の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー46に当接しているため、可動部材45とストッパー46との間に配されているシール部材50によって気密が保持されている。また、側壁部材42の内壁と可動部材45の外壁との間に配されているシール部材49によっても気密が保持されているため、可動部材45とストッパー46とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。
【0038】
次に、図6のように、プラグ4の差込部分42bをソケット2の側壁部材22内に挿入するように接続を開始すると、ソケット2の可動部材25の先端面とプラグ4の差込部分42bの先端面、すなわち第1接触面61が接触する。この状態では未だソケット2では、可動部材25が弾性体27の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー26に当接しているため、可動部材25とストッパー26との間に配されているシール部材30によって気密が保持されている。また、側壁部材22の内壁と可動部材25の外壁との間に配されているシール部材29によっても気密が保持されているため、可動部材25とストッパー26とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。同様にプラグ4では、可動部材45が弾性体47の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー46に当接しているため、可動部材45とストッパー46との間に配されているシール部材50によって気密が保持されている。また、側壁部材42の内壁と可動部材45の外壁との間に配されているシール部材49によっても気密が保持されているため、可動部材45とストッパー46とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。従って継手内部の空間と継手外部の空間が遮断され、継手内部に密閉した空間が形成されている状態であり、ソケット2およびプラグ4の遮断弁は閉じたままである。
【0039】
さらに継手の接続動作が進むと、図7に示すように、プラグ4の差込部分42bがソケット2の側壁部材22内に挿入され、弾性体27の斥力に抗してソケット2の可動部材25をソケット2の後端方向に移動させる。これによりソケット2においては、可動部材25に取り付けたシール部材30とストッパー26の間に隙間が生じる。このとき相対的にソケット2のストッパー26は、プラグ4の差込部分42bの後端方向に入りこみ、ソケット2のストッパー26先端面とプラグ4の外縁部先端45aの先端面、すなわち第2接触面62が接触する。
【0040】
その後、更に挿入が継続されプラグ4がソケット2に挿入されて接続動作が進むと、図8に示すように、プラグ4の差込部分42bがソケット2の側壁部材22内にさらに挿入され、弾性体47の斥力に抗してプラグ4の可動部材45をプラグ4の後端方向に移動させる。これによりプラグ4においては、可動部材45に取り付けたシール部材50とストッパー46との間に隙間が生じ、その後はソケット2の可動部材25およびプラグ4の可動部材45が摺動して、それぞれ側壁部材22および側壁部材42の後端方向へ移動する。ソケット2のストッパー26とプラグ4のストッパー46とが近接あるいは接触した時点で、継手のロック機構の一端を担う突起32が溝51に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了する。またこのとき、ソケット2の保持部材24に保持された光ファイバー28の端面と、プラグ4の保持部材44に保持された光ファイバー48の端面が近接あるいは接触し、ソケット2とプラグ4との間で光ファイバー28と光ファイバー48とを介して光を触媒とした通信が可能となる。
【0041】
図9乃至図12は、接続動作の図5乃至図8の各段階でのソケット2とプラグ4内部において、燃料が存在する空間(燃料の流れ)を図示したものである。図9乃至図12の各図において、ハッチングを施した部分が燃料である流体が存在する空間となる。ここでは、ソケット2のハッチングが施された領域を、燃料が流れる流路である第1の流路63と呼び、プラグ4のハッチングが施された領域を、燃料が流れる流路である第2の流路64と呼ぶことにする。また、第1の流路63および第2の流路64での、燃料が流れる方向を主流方向と呼ぶことにする。
【0042】
図9は、ソケット2とプラグ4が分離した状態を示している。このときのソケット2では、可動部材25とストッパー26との間に配されているシール部材30によって気密が保持され、側壁部材22の内壁と可動部材25の外壁との間に配されているシール部材29によっても気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である第1の流路63は、流体流路21c,流体流路24c,流体流路25cと側壁部材22内部とが連通することで形成され、ソケット2内部と外部の空間は遮断されている。同様にプラグ4では、可動部材45とストッパー46との間に配されているシール部材50によって気密が保持され、側壁部材42の内壁と可動部材45の外壁との間に配されているシール部材49によっても気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である第2の流路64は、流体流路41c,流体流路44c,流体流路45cと側壁部材42内部とが連通することで形成され、プラグ4内部と外部の空間は遮断されている。
【0043】
図10は、ソケット2の可動部材25の先端面とプラグ4の差込部分42bの先端面、すなわち第1接触面61が接触した状態である。この状態になるまでは未だ可動部材25がストッパー26に当接し、可動部材25とストッパー26との間に配されているシール部材30によって気密が保持されている。また、側壁部材22の内壁と可動部材25の外壁との間に配されているシール部材29によっても気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である第1の流路63は、流体流路21c,流体流路24c,流体流路25cと側壁部材22内部とが連通することで形成され、ソケット2内部と外部の空間は遮断されている。同様にプラグ4では、可動部材45がストッパー46に当接しているため、可動部材45とストッパー46との間に配されているシール部材50によって気密が保持されている。また、側壁部材42の内壁と可動部材45の外壁との間に配されているシール部材49によっても気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である第2の流路64は、流体流路41c,流体流路44c,流体流路45cと側壁部材42内部とが連通することで形成され、プラグ4内部と外部の空間は遮断されている。つまり、第1の流路63と第2の流路64の間での燃料の授受は行われない。
【0044】
図11は、ソケット2の可動部材25の先端面とプラグ4の差込部分42bの先端面、すなわち第1接触面61が接触した後にさらにコネクタの接続動作が行なわれて、ソケット2のストッパー26先端面とプラグ4の可動部材45の外縁部先端45a先端面、すなわち第2接触面62が接触するまでの状態を示している。可動部材25に取り付けたシール部材30とストッパー26の間に隙間が生じているため、図中に斜線で示した領域である第1の流路63は、流体流路21c,流体流路24c,流体流路25cと側壁部材22内部に加えて、ストッパー26の周辺領域と連通する。ここでのストッパー26の周辺領域とは、可動部材25の先端面と側壁部材42の内壁面と可動部材45で区切られた空間であり、ストッパー26と可動部材25との間隙、ストッパー26と側壁部材42内壁との間隙、流路溝45b、および可動部材45の外縁部先端45a内部である。
【0045】
このとき可動部材25と側壁部材42の差込部分42bとの間には、シール部材31が配されており、可動部材25は弾性体27の斥力によって先端方向に付勢されているため、ソケット2内部は外部から遮断されて気密が保持された状態である。また、可動部材45と側壁部材42の内壁との間には、シール部材49が配されて気密が保持されており、可動部材45とストッパー46との間にはシール部材50が配されて気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である、流体流路41c,流体流路44c,流体流路45cと側壁部材42内部とが連通することで形成される第2の流路64は、前述した第1の流路63とは遮断された状態であり、第1の流路63と第2の流路64とは連通していない。
【0046】
さらに接続動作が進み、ソケット2のストッパー26とプラグ4の可動部材45の外縁部先端45aの先端面、つまり第2接触面62が接触した後は、プラグ4の差込部分42bがソケット2の側壁部材22内にさらに挿入され、弾性体47の斥力に抗してプラグ4の可動部材45をプラグ4の後端方向に移動させる。これによりプラグ4においては、可動部材45に取り付けたシール部材50とストッパー46との間に隙間が生じる。その後はソケット2の可動部材25およびプラグ4の可動部材45が摺動して、それぞれ側壁部材22および側壁部材42の後端方向へ移動する。これにより、ストッパー46と可動部材45との間に間隙が生じ、第1の流路63と第2の流路64とが連通する。ソケット2のストッパー26とプラグ4のストッパー46とが近接あるいは接触した時点で、図12に示すように、継手のロック機構の一端を担う突起32が溝51に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了する。
【0047】
図12に示したように、ソケット2とプラグ4の接続が完了した状態では、ソケット2のストッパー26とプラグ4のストッパー46とが近接あるいは接触し、同時に継手のロック機構の一端を担う突起32が溝51に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了して流体流路21c,流体流路24c,流体流路25c,流体流路41c,流体流路44c,流体流路45cが連通した状態で保持され、ソケット2とプラグ4との間での燃料である流体の授受が可能になる。
【0048】
ソケット2からプラグ4を抜くときには、ソケット2とプラグ4とを反対方向へ引っ張る。コネクタ機構1では、ソケット2及びプラグ4にロック機構が設けられているが、ボールプランジャーのように球状の部品(鋼球)がソケット2の内部からバネで押されて突起32が溝51に嵌合した状態がロックした状態であるので、そのロック機構が許容できる範囲以上の力が加わった場合には、球状の部品(鋼球)はバネの反発力に打ち勝って突起32が引っ込み、ロックが外れることになる。このため、単にソケット2とプラグ4を反対方向へ引っ張るだけの簡単な操作で、プラグ4をソケット2から引き抜くことができる。
【0049】
プラグ4をソケット2から引き抜き、プラグ4とソケット2とが別々に分離されると、プラグ4及びソケット2の遮断弁が閉じる。すなわち、可動部材25及び可動部材45が、それぞれ弾性体27及び弾性体47の弾力により先端側に戻され、それぞれシール部材31及びシール部材50に押しつけられる。これにより、可動部材25及び可動部材45により遮断弁が閉じることになり、燃料である流体の流路は、それぞれ可動部材25及び可動部材45の先端面とシール部材31およびシール部材50の位置で再び遮断され、気密性が保持されることとなる。したがって、プラグ4をソケット2から引き抜いた後に、プラグ4及びソケット2が接続された器機内にある流体が外部に漏れることがない。これにより、単にソケット2とプラグ4を反対方向へ引っ張るだけの簡単な操作で、ロック機構を解除してプラグ4をソケット2から取り外して、燃料である流体を遮断することが可能となる。
【0050】
以上のように構成されたコネクタ機構1は、ソケット2とプラグ4との双方に流体の流通を遮断して密閉状態を保持する遮断弁、すなわち可動部材25とストッパー26及び可動部材45とストッパー46を備える。これにより、このコネクタ機構1においては、ソケット2とプラグ4との連結を解除した状態において、ソケット2が接続された連通する器機内が密閉状態に保持される。また、ソケット2とプラグ4との連結を解除した状態において、プラグ4が接続された連通する器機内が密閉状態に保持される。したがって、ソケット2とプラグ4との連結を解除した状態においても、プラグ4が接続される器機内が密閉状態に保持されるため、当該器機内に残存する流体が外部に放出されてしまうことがなく、また、当該器機内に空気などの所定の流体以外の混入ガス等が流入することを防止することができる。したがって、次回にこの器機を作動させる際に混入ガスに起因する当該器機の稼働効率の低下や、流体の劣化が生じることを防止することができる。そして、当該器機内に空気などの所定の流体以外の混入ガス等の処理機構を設ける必要がなく、器機側の構造を簡略化、且つ小型化することが可能となる。
【0051】
また、このコネクタ機構1では、可動部材25及び可動部材45がともに機械的に開蓋動作するようになされている。これにより、このコネクタ機構1では、常に確実に遮断弁の開蓋動作が行われ、確実に且つ安定して流体の授受を行うことができる。しかしながら、可動部材25または可動部材45の開蓋動作は、機械的な動作に限定されるものではなく、例えば、流体を流す方向が一方向のみとされている場合等には、流体の流入側の遮断弁は流体の圧力により開蓋動作が行われるような構成としても良い。
【0052】
なお、以上のような本発明に係るコネクタ機構は、燃料の流体として気体を用いる場合のみならず、燃料の流体として液体を用いる場合にも適用することができる。
【0053】
次に、本発明に係るコネクタ機構の具体的な使用例について説明する。図13に本発明に係るコネクタ機構を適用して構成した燃料電池システムを搭載したポータブル電子機器の一構成例のブロック図を示す。ポータブル電子機器71に搭載される本発明を適用した燃料電池システム72は、水素をその内部に貯蔵する、または内部に貯蔵した水素を燃料電池発電装置74に対して供給する水素貯蔵カートリッジ73と、当該水素貯蔵カートリッジ73から供給された水素を燃料として発電する燃料電池発電装置74とを備えて構成されている。
【0054】
そして、燃料電池システム72のうち燃料電池発電装置74はポータブル電子機器71に常設されるが、水素貯蔵カートリッジ73はポータブル電子機器71に着脱自在に構成されており、必要に応じてポータブル電子機器71に装填され、または取り外される。すなわち、水素貯蔵カートリッジ73は、ポータブル電子機器71を駆動させる際にはポータブル電子機器71に装填され、燃料電池発電装置74に対して水素を供給する。一方、ポータブル電子機器71を駆動しないとき、例えばポータブル電子機器71を長時間にわたって休止させる場合や、水素貯蔵カートリッジ73に水素を貯蔵する場合にはポータブル電子機器71から取り外される。
【0055】
このような水素貯蔵カートリッジ73は、水素吸蔵体75と、圧力調整機構76と、センサー77と、情報処理部78と、光通信手段79と、水素貯蔵カートリッジ73を燃料電池発電装置74と接続するコネクタ機構1の一部であるソケット2とを備えて構成されている。水素吸蔵体75と圧力調整機構76とソケット2とは、燃料である流体が流れる流路が連通しており、燃料の授受が可能となっている。また、センサー77と情報処理部78と光通信手段79とは信号線を介して接続されており、情報の伝達が可能となっている。
【0056】
水素吸蔵体75内には、LaNi5 等の水素吸蔵合金やカーボンナノチューブに代表される水素吸蔵炭素材料などが内蔵されており、これらに水素を吸蔵させることにより大量の水素を貯蔵できるようになされている。
【0057】
圧力調整機構76は、水素吸蔵体75から燃料電池発電装置74へ供給される水素の圧力を所定の圧力に調圧するものである。燃料電池発電装置74において安定した発電を行い、安定した電気エネルギーをポータブル電子機器71に供給するためには、燃料となる水素を所定の圧力で安定して燃料電池発電装置74に供給する必要がある。そこで、圧力調整機構76により水素吸蔵体75から供給される水素の圧力を所定の圧力に調圧して燃料電池発電装置74に供給する。
【0058】
センサー77は、水素吸蔵体75に接続されて温度やセル内の圧力などをモニターしている。またモニターした結果は信号線を介して情報処理部84に送られる。
【0059】
情報処理部78は、センサー77と圧力調整機構76と光通信手段79とに信号線を介して接続され、情報の交換が行われる。また、情報を処理して圧力調整機構76の制御を行うことで水素吸蔵体75からの水素の供給を円滑に行う。
【0060】
光通信手段79は、信号線により情報処理部78と接続されて電気信号と光信号との相互変換を行う受発光素子であり、その受発光を行う部分はソケット2に設けられた光ファイバー28との間で光伝播路を介しての光通信を行う。水素貯蔵カートリッジ73と燃料電池発電装置74の両方に設けられた光通信手段79、83を用いることにより光の授受で情報の伝達が行われ、情報処理部78による圧力調整機構76の制御によって水素ガスの供給と発電が円滑に行われる。ここで受発光素子としては発光ダイオードまたはレーザー素子またはフォトダイオードなどが用いられる。
【0061】
次に、燃料電池発電装置74について説明する。燃料電池発電装置74は、流量調整機構80と、水素供給制御機構81と、電気エネルギー発生素子82と、光通信手段83と、情報処理部84と、センサー85と、水素貯蔵カートリッジ73と燃料電池発電装置74とを接続するコネクタ機構の一部であるプラグ4とを備えて構成されている。流量調整機構80と水素供給制御機構81と電気エネルギー発生素子82とプラグ4とは、燃料である流体が流れる流路が連通しており、燃料の授受が可能となっている。また、光通信手段83と情報処理部84とセンサー85とは信号線を介して接続されており、情報の伝達が可能となっている。
【0062】
流量調整機構80は、水素吸蔵体75から電気エネルギー発生素子82へ供給される水素の流量を所定の流量に調整するものである。電気エネルギー発生素子82において安定した発電を行い、安定した電気エネルギーをポータブル電子機器71に供給するためには、燃料となる水素を所定の流量で安定して電気エネルギー発生素子82に供給する必要がある。そこで、センサー85の得た情報および水素貯蔵カートリッジ73側からの情報通信結果に基づいて、情報処理部84の制御下で流量調整機構80により水素吸蔵体75から電気エネルギー発生素子82へと供給される水素の流量を所定の流量に調整して電気エネルギー発生素子82に供給する。
【0063】
水素供給制御機構81は、電気エネルギー発生素子82に対する水素の供給を制御するものであり、電気エネルギー発生素子82を作動させるときに水素ガスの供給、停止を制御する機能を有するものである。このような水素供給制御機構81は、例えばバルブを用いる、もしくは組み合わせることにより構成することができる。
【0064】
電気エネルギー発生素子82は、水素吸蔵体75から供給された水素を燃料として発電する燃料電池本体である。すなわち、水素吸蔵体75から電気エネルギー発生素子82に水素が供給されると、当該水素を燃料として電気エネルギー発生素子82において発電が行われ、この発電によって得られた電気エネルギーがポータブル電子機器71に供給される。
【0065】
光通信手段83は、信号線により情報処理部84と接続されて電気信号と光信号との相互変換を行う受発光素子であり、その受発光を行う部分はプラグ4に設けられた光ファイバー48との間で光伝播路を介しての光通信を行う。水素貯蔵カートリッジ73と燃料電池発電装置74の両方に設けられた光通信手段79、83を用いることにより光の授受で情報の伝達が行われ、情報処理部84による流量調整機構80の制御によって水素ガスの供給と発電が円滑に行われる。ここで受発光素子としては発光ダイオードまたはレーザー素子またはフォトダイオードなどが用いられる。
【0066】
情報処理部84は、流量調整機構80と水素供給制御機構81と光通信手段83とセンサー85に信号線を介して接続され、情報の交換が行われる。また、情報を処理して流量調整機構80および水素供給制御機構81の制御を行うことで燃料電池発電装置74の運転を円滑に行う。
【0067】
センサー85は、電気エネルギー発生素子82に接続されて温度やセル内の圧力などをモニターしている。また、モニターした結果は信号線を介して情報処理部84に送られる。
【0068】
ソケット2とプラグ4は、コネクタ機構1を構成し、燃料電池発電装置74を水素貯蔵カートリッジ73と接続するものである。ここでコネクタ機構としては、上述したコネクタ機構1を用いているので、ソケット2とプラグ4の接続を行うと、ソケット2の突起32がプラグ4の溝51に入り込むことでロック機構が作動し、ソケット2とプラグ4の接続が確実に保持される。その際、ソケット2の光ファイバー28とプラグ4の光ファイバー48の端面が接触することで、ソケット2とプラグ4との間での光による情報の伝達が可能になる。また、接続が保持された状態では、前述したようにソケット2とプラグ4との間で燃料である流体の授受が安定、且つ確実に行われる。また、光ファイバー28と光ファイバー48を介した情報伝達が行われている。これにより燃料電池発電装置74に対して、燃料となる水素を安定して供給することができる。その結果、燃料電池発電装置74において安定した発電を行うことができ、安定した電気エネルギーをポータブル電子機器71に供給することが可能となる。
【0069】
以上のように構成された燃料電池システム72では、ソケット2とプラグ4にそれぞれ設けられた光ファイバー28および光ファイバー48を介して、光通信手段79と光通信手段83により光の授受による情報伝達が行われ、水素貯蔵カートリッジ73に備えられた水素吸蔵体75から圧力調整機構76により所定の圧力に調圧された状態で燃料電池発電装置74に供給される。そして、燃料電池発電装置74に供給された水素は、流量調整機構80においてポータブル電子機器71に供給する電力を発電するために最適な流量に調整されて水素供給制御機構81、電気エネルギー発生素子82に送られる。電気エネルギー発生素子82ではこの水素を燃料として発電を行い、発電した電気エネルギーをポータブル電子機器71に供給してポータブル電子機器71を駆動させる。
【0070】
以上のようなポータブル電子機器71では、コネクタ機構1を備えているため、ソケット2とプラグ4との連結を解除した状態において、水素貯蔵カートリッジ73内が密閉状態に保持され、また、ソケット2とプラグ4との連結を解除した状態において、燃料電池発電装置74内が密閉状態に保持される。
【0071】
したがって、ソケット2とプラグ4との連結を解除した状態においても、ソケット2内及びプラグ4内に残存する水素が外部に放出されることがなく、また、ソケット2内及びプラグ4内に空気などの水素以外の混入ガス等が流入することを防止することができ、混入ガスに起因する燃料電池発電装置74の稼働効率の低下や、水素の劣化が生じることを防止されている。これにより、燃料電池システム72内に、空気などの混入ガス等の処理機構を設ける必要がないため、燃料電池発電装置74の構造を簡略化、且つ小型化が可能とされており、ポータブル電子機器71の小型化が可能とされている。
【0072】
また、圧力調整機構76、流量調整機構80、水素供給制御機構81の配置位置は、図13に示した構成に限定されるものでなく、例えば図14に示すように圧力調整機構76を燃料電池発電装置74内において流量調整機構80と水素供給制御機構81との間に配した構成としても良く、さらに図15に示すように流量調整機構80と水素供給制御機構81との位置を入れ替えた構成としても良い。以上の構成とした場合においても、上述した本発明に係る効果を得ることができる。これらの場合には、図13で水素貯蔵カートリッジ73に設けられていた情報処理部78が提供していた機能を、燃料電池発電装置74に設けられた情報処理部84によって実行させることにより、情報処理部78は不要になる。
【0073】
また、上述した燃料電池システム72においては、電気エネルギー発生素子82に水素を供給する際に必要となる種々の情報を伝達することが可能とされる。これにより水素貯蔵カートリッジ73内に貯蔵されている水素の貯蔵量や圧力、その他水素に関する種々の情報を常時把握することができるため、水素貯蔵カートリッジ73の管理を簡単に且つ確実に行うことができる。
【0074】
そして、以上のような燃料電池システムは、小型化が可能であり、また簡単な操作で水素の供給を行えるため、例えば水素を燃料とする電気エネルギー発生素子を内蔵するカムコーダー、パソコン、パソコン用周辺機器、ポータブルなプリンターやファクシミリ、電話機、テレビジョン受像器、通信機器、携帯端末、カメラ、オーディオビデオ機器、扇風機、冷蔵庫、アイロン、ポット、掃除機、炊飯器、電磁調理器、ゲーム機やラジコンカーなどの玩具、電動工具、医療機器、測定機器、車両搭載用機器、事務機器、健康美容器具、電子制御型ロボット、衣類型電子機器、レジャー用品、スポーツ用品、その他種々の用途に適用することが可能である。
【0075】
また、上記においては、燃料として主として水素ガスを使用する例について説明したが、いわゆるダイレクトメタノール方式に対応してメタノール(液体)を燃料とする構成としても良い。また、本発明を燃料電池システムに適用した場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、流体を使用する種々の分野に適用可能である。
【0076】
また、本実施形態のコネクタ機構1は、水素貯蔵カートリッジ73と燃料電池発電装置74との間での情報伝達に限定されず、流体の受渡を行う機器間における情報の伝達に広く用いることができ、連結される機器間で信号線を接続することなく情報の伝達を行うことができる。よって、機器間を接続する際の接続不良や受渡される流体による信号線の劣化を招くことがなく、長時間に亘って流体の供給を行ったとしても、流体の供給を安定して行うことができる。
【0077】
[第二の実施の形態]
【0078】
次に、本発明に係るコネクタ機構の他の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図16に本発明を適用したコネクタ機構91の一構成例を示す。また、図17に本発明を適用したコネクタ機構91に用いるソケットの概略断面図を、図18にプラグの概略断面図を示す。
【0079】
図16は、本実施例のコネクタ機構91を構成するソケット92とプラグ94とが接続された状態を示す外観斜視図である。本発明を適用したコネクタ機構91は、図17に示される雌型コネクタであるソケット92と図18に示される雄型コネクタであるプラグ94とで構成されており、プラグ94を図16に示すようにソケット92に挿嵌することによりプラグ94とソケット92とが連結される。なお、図16はプラグ94をソケット92に挿入して後述するロック機構が働き、ソケット92とプラグ94の接続が保持され、ソケット92とプラグ94の間での燃料の流路が連通された状態を示す。また、このときソケット92とプラグ94の内部に配置されている光ファイバー同士が接触して、ソケット92とプラグ94との間での光による情報伝達が可能になっている。
【0080】
このようなコネクタ機構91は、例えば燃料電池システム等に用いて好適であり、燃料電池システムに用いる場合には、例えば燃料電池側にソケット92を搭載し、水素を貯蔵した水素貯蔵カートリッジ側にプラグ94を搭載する。そして、プラグ94をソケット92に挿嵌することにより、水素貯蔵カートリッジに貯蔵された水素を取り出すことができる。以下、コネクタ機構91の各構成について説明する。本例では、ソケット92は水素貯蔵装置側に設けられ、プラグ94は燃料電池発電装置側に設けられているが、ソケット92が水素貯蔵装置側に設けられ、プラグ94が燃料電池発電装置側に設けられていても良く、更に、燃料電池発電装置と水素貯蔵装置間の接続に用いられることに限定されず、流体の受渡しを行う機器間を接続するためにソケット92とプラグ94が連結されるコネクタ機構91として用いることができる。なお、以下においては、ソケット92はプラグ94を挿嵌する側を先端、反対側を後端ということとし、また、プラグ94においては、ソケット92を挿嵌する側を先端、反対側を後端ということとする。
【0081】
図17を参照するとソケット92はベース921と側壁部材922とが結合されて外形が形成されている。ベース921は円筒状の筒部分921aと円盤状の平板部分921bとが同一の中心軸となるように接続されたフランジ状の部材であり、中心軸には空洞である流体流路921cが形成されている。側壁部材922は略円筒形状の部材であり、筒部外径はベース921の平板部分921b外周と略同一径であり、側壁部材922の円筒中心軸はベース921の中心軸とほぼ一致するように配されている。
【0082】
側壁部材922の内部は、後述する光ファイバーを固定保持する保持部分924と、後述する可動部材の摺動方向を決定するガイド部分924aと、可動部材の可動範囲を制限するストッパー926とが形成されている。また、側壁部材922の内部には、可動部材925と弾性体927と光ファイバー928と可動シール部材930と弾性体931とが配置されている。
【0083】
保持部分924は、ベース921と接触するように形成された側壁部材922の一部である平板状の部分であり、後端面はベース921に密着して固定され、側壁部材922の中心軸近傍において光ファイバー928を固定保持する。このとき保持部分924と光ファイバー928との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとし、側壁部材922および保持部分924とベース921との接触部分の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また保持部分924には、流体の流れを確保するための管である流体流路924cが光ファイバー928を中心とした円形上に形成されており、ベース921の流体流路921cと連通して連続した流体の流路を成している。光ファイバー928の一方の端面はベース921の流体流路921c内を介して燃料電池側の光通信手段まで到達するように配置される。
【0084】
ガイド部分924aは、側壁部材922の一部である円筒状の部分であり、その内径は可動部材925の外径と略同一であって可動部材925が円筒長手方向に摺動可能となるようにガイドとして機能する。また、ガイド部分924aの先端部分は側壁部材922の外形を成す円筒とは分離されて二重の円筒構造をなしており、後端は保持部分924と接続されて一体となっている。
【0085】
ストッパー926は、ガイド部分924aの先端に形成された円環状の部分であり、その内径はガイド部分924aの内径よりも小であり、その外径はガイド部分924aの外形よりも大である。ストッパー926の内径がガイド部分924aの内径よりも小であることによって、可動部材925がガイド部分924aに沿って摺動する領域をストッパー926が限定する。また、ストッパー926の外径がガイド部分924aの外形よりも大であることによって、可動シール部材930がガイド部分924aに沿って摺動する領域をストッパー926が限定する。また、ストッパー926の可動部材925側であるガイド部分924aの内壁には、気密性を高めるためのシール部材929が配設されている。シール部材929は燃料の密閉性が高いことを特徴とする。形状としては、一般的なOリング形状あるいはオイルシール形状など、高い密閉性という条件を満たすものであれば良い。
【0086】
可動部材925は略球形状の部材であり、外径はガイド部分924aの内壁面と略同一径に成形されて、ガイド部分924aの長手方向内壁面に沿って摺動可能に配置されている。また可動部材925には、側壁部材922の円筒中心軸に沿って貫通した孔である中心孔925aが形成され、中心孔925aの先端方向には可動部材925内部にレンズ925bが配されて埋め込まれている。中心孔925aの直径は光ファイバー928の直径よりも大とされており、光ファイバー928が摺動可能に挿入されている。ここで光ファイバー928が中心孔925a内で摺動可能とされていることにより、可動部材925が摺動した場合にも光ファイバー928が移動せず、光ファイバー928が折れ曲がったり引っ張られたりするような負荷が加わりにくいため、光ファイバー928の破損の可能性を低減することが可能である。また可動部材925の外周には、ガイド部分924aの長手方向に沿って溝である流体流路925cが形成されている。流体流路925cの溝の深さは流体の流れを確保する程度であるが、可動部材925がシール部材929に当接した際には、シール部材929によって溝が遮蔽されて燃料の漏洩が起こらない程度とする。
【0087】
図中A−Aで示した位置での可動部材925の断面を図18に示す。円形状の断面中心には中心孔925aがあり、外周部分に流体流路925cがある。図18(a)は流体流路925cを90度間隔で4箇所に形成した場合の断面であり、図18(b)は流体流路925cを60度間隔で6箇所に形成した場合の断面であるが、燃料の流路として機能する大きさと個数を適宜選択することができ、その配置方法も図18に示したものに限定しない。さらに可動部材925は球体の後端部を一部削り取って座924dを形成しており、弾性体927を安定して取り付けることができる。座924dが形成されていることにより、弾性体927が中心に安定して可動部材925に作用する力の均一性が保たれる。また、可動部材925が回転して光ファイバー928に負荷が加わることを防止することも可能である。
【0088】
弾性体927は、斥力を発生させるバネなどの部材であり、保持部分924と可動部材925との間に圧縮した状態で配置されている。弾性体927が圧縮された状態で保持部分924と可動部材925との間に配置されていることにより、弾性体927から生じる力によって保持部分924と可動部材925との間には斥力が作用して、可動部材925はソケット92の先端方向に移動しストッパー926に押し付けられる。可動部材925がストッパー926に押し付けられた状態では、可動部材925とストッパー926との間にシール部材930が配されて、可動部材925に形成された流体流路925cがシール部材930によって遮蔽されていることにより、可動部材925とストッパー926との間での気密性が保持され、可動部材925とストッパー926と弾性体927との組み合わせで遮断弁が構成される。このとき、中心孔925aはレンズ925bによって気密性が保持されている。ここで、弾性体927としてはバネ部材に限定されるものではなく、可動部材925に対して先端方向へ付勢するように弾力を与えられるものであれば種々のものを用いることが可能である。また、可動部材925を先端方向へ付勢する手段は、上述した弾性体927に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良く、可動部材925とストッパー926との組み合わせに遮断弁としての機能を付加できるものであればいずれの手段も用いることが可能である。
【0089】
可動シール部材930は円環形状のシール部材であり、外径は側壁部材922の内壁面と略同一径に成形され、内縁部直径はガイド部分924aの外径より大きく成形され、外縁部は側壁部材924の内壁面に沿い、内縁部はガイド部分924aに沿って摺動可能に配置されている。可動シール部材930を形成する材料は燃料の密閉性が高いこと及び摺動する際の摺動抵抗が小さい、これにより可動シール部材930と接触する他の部材との間での気密性が保持される。可動シール部材930の後端部分はストッパー926の外径よりも小さい円環状部分930aとなって側壁部材922内壁とガイド部分924a外壁との間に入り込んでおり、円環状部分930aとストッパー926とが干渉するために可動シール部材930がストッパー926に押し付けられて摺動可能範囲が限定される。ストッパー926に押し付けられた状態での可動シール部材930の先端は、可動部材925の先端よりもソケット92の先端方向に突出した位置にまで到達し、プラグ94がソケット92に挿入された際にはプラグ94は可動部材925よりも先に可動シール部材930と接触することになる。
【0090】
弾性体931は、斥力を発生させるバネなどの部材であり、側壁部材922とガイド部分924aとの間に圧縮した状態で配置されている。弾性体931が圧縮された状態で側壁部材922とガイド部分924aとの間に配置されていることにより、弾性体931から生じる斥力によって可動シール部材930は先端方向に付勢されてストッパー926に押し付けられる。ここで、弾性体931としてはバネ部材に限定されるものではなく、可動シール部材930に対して先端方向へ付勢するように弾力を与えられるものであれば種々のものを用いることが可能である。また、可動シール部材930を先端方向へ付勢する手段は、上述した弾性体931に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良い。
【0091】
側壁部材922の内壁部分には、継手が接続された際に、その状態を保持するためのロック機構の一端を担う突起932が設けてある。この突起932は、例えばボールプランジャーのように、球状の部品(鋼球)がソケット92の内部からバネで押されており、それをソケット92の内面に設けたストッパーで受け止めて、常に球状の部品(鋼球)が一定の突出量を保つ機能を備えたものである。ただしここに示したロック機構は一例であり、他の構造であっても本発明の継手の基本機能は成立する。
【0092】
図19を参照するとプラグ94はベース941と側壁部材942とが結合されて外形が形成されている。ベース941は円筒状の筒部分941aと円盤状の平板部分941bとが同一の中心軸となるように接続されたフランジ状の部材であり、中心軸には空洞である流体流路941cが形成されている。側壁部材942は略円筒形状の部材であり、筒部外径はベース941の平板部分941b外周と略同一径であり、側壁部材942の円筒中心軸はベース941の中心軸とほぼ一致するように配されている。
【0093】
側壁部材942は円筒形状の部材であり、後述する光ファイバーを固定保持する保持部分944と、後述する可動部材の可動範囲を制限するストッパー946とが形成されている。また、側壁部材942の内部には、可動部材945と弾性体947と光ファイバー948とシール部材949とが配置されている。側壁部材942の内径は可動部材945の外径と略同一であって可動部材945が円筒長手方向に摺動可能となるようにガイドとして機能する。側壁部材942の外壁部分には、ソケット92とプラグ94が嵌合された状態で前述したソケット92の側壁部材922に設けられた突起932が到達する位置に、継手が接続された際にその状態を保持するためのロック機構の一端を担う溝951が設けてある。ソケット92の側壁部材922に設けられた突起932が、溝951に入り込むことで、ソケット92とプラグ94の接続状態が保持される。ただしソケット92の説明においても述べたがここに示したロック機構は一例であり、他の構造であっても本発明の継手の機能は成立するため、プラグ94は図19に示した形状に限らない。
【0094】
保持部分944は、ベース941と接触するように形成された側壁部材942の一部である平板状の部分であり、後端面はベース941に密着して固定され、側壁部材942の中心軸近傍において光ファイバー948を固定保持する。このとき保持部分944と光ファイバー948との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとし、側壁部材942および保持部分944とベース941との接触部分の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また保持部分944には、流体の流れを確保するための管である流体流路944cが光ファイバー948を中心とした円形上に形成されており、ベース941の流体流路941cと連通して連続した流体の流路を成している。光ファイバー948の一方の端面はベース941の流体流路941c内を介して燃料電池側の光通信手段まで到達するように配置される。
【0095】
ストッパー946は、側壁部材942の先端に形成された円環状の部分であり、その内径は側壁部材942の内径よりも小である。ストッパー946の内径が側壁部材942の内径よりも小であることによって、可動部材945が側壁部材942に沿って摺動する領域をストッパー946が限定する。また、ストッパー946の可動部材945側である側壁部材942の内壁には、気密性を高めるためのシール部材949が配設されている。シール部材949は燃料の密閉性が高いことを特徴とする。形状としては、一般的なOリング形状あるいはオイルシール形状など、高い密閉性という条件を満たすものであれば良い。
【0096】
可動部材945は略球形状の部材であり、外径は側壁部材942の内壁面と略同一径に成形されて、側壁部材942の長手方向内壁面に沿って摺動可能に配置されている。また可動部材945には、側壁部材942の円筒中心軸に沿って貫通した孔である中心孔945aが形成され、中心孔945aの先端方向には可動部材945内部にレンズ945bが配されて埋め込まれている。中心孔945aの直径は光ファイバー948の直径よりも大とされており、光ファイバー948が摺動可能に挿入されている。ここで光ファイバー948が中心孔945a内で摺動可能とされていることにより、可動部材945が摺動した場合にも光ファイバー948が移動せず、光ファイバー948が折れ曲がったり引っ張られたりするような負荷が加わりにくいため、光ファイバー948の破損の可能性を低減することが可能である。また可動部材945の外周には、側壁部材942の長手方向に沿って溝である流体流路945cが形成されている。流体流路945cの溝の深さは流体の流れを確保する程度であるが、可動部材945がシール部材949に当接した際には、シール部材949によって溝が遮蔽されて燃料の漏洩が起こらない程度とする。可動部材945の断面は図18に示したものと同様である。さらに可動部材945は球体の後端部を一部削り取って座944dを形成しており、弾性体947を安定して取り付けることができる。座944dが形成されていることにより、弾性体947が中心に安定して可動部材945に作用する力の均一性が保たれる。また、可動部材945が回転して光ファイバー948に負荷が加わることを防止することも可能である。
【0097】
弾性体947は、斥力を発生させるバネなどの部材であり、保持部分944と可動部材945との間に圧縮した状態で配置されている。弾性体947が圧縮された状態で保持部分944と可動部材945との間に配置されていることにより、弾性体947から生じる力によって保持部分944と可動部材945との間には斥力が作用して、可動部材945はプラグ94の先端方向に移動しストッパー946に押し付けられる。可動部材945がストッパー946に押し付けられた状態では、可動部材945とストッパー946との間にシール部材949が配されて、可動部材945に形成された流体流路945cがシール部材949によって遮蔽されていることにより、可動部材945とストッパー946との間での気密性が保持され、可動部材945とストッパー946と弾性体947との組み合わせで遮断弁が構成される。このとき、中心孔945aはレンズ945bによって気密性が保持されている。ここで、弾性体947としてはバネ部材に限定されるものではなく、可動部材945に対して先端方向へ付勢するように弾力を与えられるものであれば種々のものを用いることが可能である。また、可動部材945を先端方向へ付勢する手段は、上述した弾性体947に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良く、可動部材945とストッパー946との組み合わせに遮断弁としての機能を付加できるものであればいずれの手段も用いることが可能である。
【0098】
次に、図20乃至図22を用いて、コネクタ機構91の動作および遮断弁としての機能について説明する。プラグ94をソケット92に装着するときには、プラグ94の中心軸とソケット92の中心軸とが同一軸上にのるように双方を配し、プラグ94をソケット92の側壁部材922の内側に押し込む。
【0099】
図20において、説明の便宜上第1接触面と第2接触面を定める。ソケット92とプラグ94とが接続する際に、最初にソケット92の可動シール部材930先端面とプラグ94の側壁部材942先端面が接触するが、この時に接触する面を第1接触面961とする。第1接触面961が接触した後さらに接続動作が進むと、ソケット92の可動部材925の先端と可動部材945の先端が接触するが、このときに接触する面を第2接触面962とする。図20に示したようなソケット92とプラグ94とが分離した状態から、ソケット92とプラグ94との接続が完了した状態に至るまでの各部の動作を、段階ごとに説明すると以下のようになる。
【0100】
図20は、ソケット92とプラグ94とが分離した状態である。このときのソケット92では、可動部材925が弾性体927の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー926およびシール部材929に当接して、流体流路925cがシール部材929によって遮蔽されて気密が保持されているため、可動部材925とストッパー926とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。同様にプラグ94では、可動部材945が弾性体947の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー946およびシール部材949に当接して、流体流路945cがシール部材949によって遮蔽されて気密が保持されているため、可動部材945とストッパー946とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。また、可動シール部材930は弾性体931の斥力によって先端方向に付勢されて、ストッパー926に当接し、可動シール部材930の先端は、可動部材925の先端よりもソケット92の先端方向に突出した位置にまで到達している。
【0101】
次に、図21のように、プラグ94をソケット92の側壁部材922内に挿入するように接続を開始すると、可動シール部材930先端面と側壁部材942先端面すなわち第1接触面961が接触する。この状態では未だソケット92では、可動部材925が弾性体927の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー926に当接しているため、可動部材925とストッパー926との間に配されているシール部材929によって気密が保持されて、可動部材925とストッパー926とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。同様にプラグ94では、可動部材945が弾性体947の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー946に当接しているため、可動部材945とストッパー946との間に配されているシール部材949によって気密が保持されて、可動部材945とストッパー946とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。従って継手内部の空間と継手外部の空間が遮断され、継手内部に密閉した空間が形成されている状態であり、ソケット92およびプラグ94の遮断弁は閉じたままである。このとき、可動シール部材930先端面とプラグ94の先端面が当接したことによって、ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とによって挟まれた空間も密閉される。
【0102】
さらに継手の接続動作が進むと、図22に示すように、プラグ94がソケット92の側壁部材922内に挿入され、可動部材925の先端と可動部材945の先端すなわち第2接触面962が接触する。さらに接続操作が進むと、ソケット92では弾性体927の斥力に抗して可動部材925が後端方向に移動し、プラグ94では弾性体947の斥力に抗して可動部材945が後端方向に移動する。これによりソケット92においては、可動部材925に形成された流体流路925cがシール部材929から離れ、プラグ94においては可動部材945に形成された流体流路945cがシール部材と離れる。また、可動シール部材930もプラグ94の先端に押されて、弾性体931の斥力に抗して後端方向に移動する。
【0103】
ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とが近接あるいは接触した時点で、継手のロック機構の一端を担う突起932が溝951に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了する。またこのとき、可動部材925が後端方向に移動すると、相対的に光ファイバー928が中心孔925a内に挿入された形となり、光ファイバー928の端面がレンズ925bに接近する。同様に、可動部材945が後端方向に移動すると、相対的に光ファイバー948が中心孔945a内に挿入された形となり、光ファイバー948の端面がレンズ945bに接近する。光ファイバー928の端面とレンズ925bが接近し、光ファイバー948の端面とレンズ945bが接近した状態となることで、ソケット92とプラグ94との間で光を触媒とした通信が可能となる。
【0104】
突起932が溝951に嵌合してロック機構が働き継手の接続が完了した際の、第2接触面962周辺の状態を部分的に拡大して図23に示す。中心孔925a,945aの径は光ファイバー928,948の直径よりも大となっているが、レンズ925b,945bが可動部材925,945に埋め込まれているため、レンズ925b,945bがシール材として機能して中心孔925a,945aの気密性が保持されている。レンズ925b,945bは、互いに接触して表面に傷がつかないように可動部材925,945の最先端部ではなく、若干内側に埋め込まれているとする。可動部材925と可動部材945とが第2接触面962で接触し、光ファイバー928の端面はレンズ925bに接近しており、光ファイバー948の端面はレンズ945bに接近している。光ファイバー928,948の端面とレンズ925b,945bとの位置関係は、図中矢印で示した光が、光ファイバー928,948から出射して、レンズ925b,945bを通って屈折して平行光となる位置である。従って、平行光がレンズ925b,945bに入射した場合には、レンズ925b,945bによって光が屈折して光ファイバー928,948の端面で焦点を結ぶことになる。これにより、ソケット92とプラグ94との間での光ファイバー928,948とレンズ925b,945bを介した光を触媒とした通信が可能となる。
【0105】
図24乃至図26は、接続動作の図20乃至図22の各段階でのソケット92とプラグ94内部において、燃料が存在する空間(燃料の流れ)を図示したものである。図24乃至図26の各図において、ハッチングを施した部分が燃料である流体が存在する空間となる。ここでは、ソケット92のハッチングが施された領域を、燃料が流れる流路である第1の流路963と呼び、プラグ94のハッチングが施された領域を、燃料が流れる流路である第2の流路964と呼ぶことにする。また、第1の流路963および第2の流路964での、燃料が流れる方向を主流方向と呼ぶことにする。
【0106】
図24は、ソケット92とプラグ94が分離した状態を示している。このときのソケット92では、流体流路925cがシール部材929によって遮蔽されて気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である第1の流路963は、流体流路921c,流体流路925cとガイド部分924a内部とが連通することで形成され、ソケット92内部と外部の空間は遮断されている。同様にプラグ94では、流体流路945cがシール部材949によって遮蔽されて気密が保持されている。このため図中に斜線で示した領域である第2の流路964は、流体流路941c,流体流路945cと側壁部材942内部とが連通することで形成され、プラグ94内部と外部の空間は遮断されている。
【0107】
図25は、可動シール部材930先端面と側壁部材942先端面すなわち第1接触面961が接触した状態である。この状態においても、流体流路925cがシール部材929によって遮蔽されて気密が保持され、流体流路945cがシール部材949によって遮蔽されて気密が保持されている。しかしこのとき、可動シール部材930先端面とプラグ94の先端面が接触したことによって、ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とによって挟まれた空間も密閉される。
【0108】
図26はさらにコネクタの接続動作が行なわると、可動部材925の先端と可動部材945の先端すなわち第2接触面962が接触し、ソケット92では弾性体927の斥力に抗して可動部材925が後端方向に移動し、プラグ94では弾性体947の斥力に抗して可動部材945が後端方向に移動する。これによりソケット92においては、可動部材925に形成された流体流路925cがシール部材929から離れ、プラグ94においては可動部材945に形成された流体流路945cがシール部材と離れる。これにより第1の流路963と第2の流路964とが連通する。ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とが近接あるいは接触した時点で、継手のロック機構の一端を担う突起932が溝951に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了する。このとき、可動シール部材930もプラグ94の先端に押されて、弾性体931の斥力に抗して後端方向に移動するが、可動シール部材930先端面とプラグ94の先端面が接触した状態であるため、ソケット92およびプラグ94内部の気密は保持され、外部との流体の授受は行われない。
【0109】
図26に示したように、ソケット92とプラグ94の接続が完了した状態では、ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とが近接あるいは接触し、同時に継手のロック機構の一端を担う突起932が溝951に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了して流体流路921c,流体流路925c,流体流路941c,流体流路945cが連通した状態で保持され、ソケット92とプラグ94との間での燃料である流体の授受が可能になる。
【0110】
ソケット92からプラグ94を抜くときには、ソケット92とプラグ94とを反対方向へ引っ張る。コネクタ機構91では、ソケット92及びプラグ94にロック機構が設けられているが、ボールプランジャーのように球状の部品(鋼球)がソケット92の内部からバネで押されて突起932が溝951に嵌合した状態がロックした状態であるので、そのロック機構が許容できる範囲以上の力が加わった場合には、球状の部品(鋼球)はバネの反発力に打ち勝って突起932が引っ込み、ロックが外れることになる。このため、単にソケット92とプラグ94を反対方向へ引っ張るだけの簡単な操作で、プラグ94をソケット92から引き抜くことができる。
【0111】
プラグ94をソケット92から引き抜き、プラグ94とソケット92とが別々に分離されると、プラグ94及びソケット92の遮断弁が閉じる。すなわち、可動部材925及び可動部材945が、それぞれ弾性体927及び弾性体947の弾力により先端側に戻され、それぞれシール部材929及びシール部材949に押しつけられる。これにより、可動部材925及び可動部材945により遮断弁が閉じることになり、燃料である流体の流路は再び遮断され気密性が保持されることとなる。したがって、プラグ94をソケット92から引き抜いた後に、プラグ94及びソケット92が接続された器機内にある流体が外部に漏れることがない。これにより、単にソケット92とプラグ94を反対方向へ引っ張るだけの簡単な操作で、ロック機構を解除してプラグ94をソケット92から取り外して、燃料である流体を遮断することが可能となる。
【0112】
以上のように構成されたコネクタ機構91は、ソケット92とプラグ94との双方に流体の流通を遮断して密閉状態を保持する遮断弁、すなわち可動部材925とストッパー926及び可動部材945とストッパー946を備える。これにより、このコネクタ機構91においては、ソケット92とプラグ94との連結を解除した状態において、ソケット92が接続された連通する器機内が密閉状態に保持される。また、ソケット92とプラグ94との連結を解除した状態において、プラグ94が接続された連通する器機内が密閉状態に保持される。したがって、ソケット92とプラグ94との連結を解除した状態においても、プラグ94が接続される器機内が密閉状態に保持されるため、当該器機内に残存する流体が外部に放出されてしまうことがなく、また、当該器機内に空気などの所定の流体以外の混入ガス等が流入することを防止することができる。したがって、次回にこの器機を作動させる際に混入ガスに起因する当該器機の稼働効率の低下や、流体の劣化が生じることを防止することができる。そして、当該器機内に空気などの所定の流体以外の混入ガス等の処理機構を設ける必要がなく、器機側の構造を簡略化、且つ小型化することが可能となる。
【0113】
また、このコネクタ機構91では、可動部材925及び可動部材945がともに機械的に開蓋動作するようになされている。これにより、このコネクタ機構91では、常に確実に遮断弁の開蓋動作が行われ、確実に且つ安定して流体の授受を行うことができる。しかしながら、可動部材925または可動部材945の開蓋動作は、機械的な動作に限定されるものではなく、例えば、流体を流す方向が一方向のみとされている場合等には、流体の流入側の遮断弁は流体の圧力により開蓋動作が行われるような構成としても良い。
【0114】
なお、以上のような本発明に係るコネクタ機構は、燃料の流体として気体を用いる場合のみならず、燃料の流体として液体を用いる場合にも適用することができる。
【0115】
[第3の実施の形態]
【0116】
本発明の他の実施の形態として、第2の実施の形態の変形例を以下に図面を用いて説明する。本実施の形態が第2の実施の形態と相違する点は、ソケット92とプラグ94の可動部材925,945を先端方向に付勢するための弾性体927,947が圧縮コイルバネではなく板バネであり、その他の構成および動作は第2の実施の形態と同様である。本実施例のコネクタ機構91を構成するソケット92とプラグ94とが接続された状態を示す外観斜視図は、図16で示したものと同様である。以下、第2の実施の形態と同じ構成の部材には同じ符号を付して説明をする。
【0117】
本発明を適用したコネクタ機構91は、図27に示される雌型コネクタであるソケット92と図29に示される雄型コネクタであるプラグ94とで構成されており、プラグ94を図16に示すようにソケット92に挿嵌することによりプラグ94とソケット92とが連結される。なお、図16はプラグ94をソケット92に挿入して後述するロック機構が働き、ソケット92とプラグ94の接続が保持され、ソケット92とプラグ94の間での燃料の流路が連通された状態を示す。また、このときソケット92とプラグ94の内部に配置されている光ファイバー同士が接触して、ソケット92とプラグ94との間での光による情報伝達が可能になっている。
【0118】
このようなコネクタ機構91は、例えば燃料電池システム等に用いて好適であり、燃料電池システムに用いる場合には、例えば燃料電池側にソケット92を搭載し、水素を貯蔵した水素貯蔵カートリッジ側にプラグ94を搭載する。そして、プラグ94をソケット92に挿嵌することにより、水素貯蔵カートリッジに貯蔵された水素を取り出すことができる。以下、コネクタ機構91の各構成について説明する。本例では、ソケット92は水素貯蔵装置側に設けられ、プラグ94は燃料電池発電装置側に設けられているが、ソケット92が水素貯蔵装置側に設けられ、プラグ94が燃料電池発電装置側に設けられていても良く、更に、燃料電池発電装置と水素貯蔵装置間の接続に用いられることに限定されず、流体の受渡しを行う機器間を接続するためにソケット92とプラグ94が連結されるコネクタ機構91として用いることができる。なお、以下においては、ソケット92はプラグ94を挿嵌する側を先端、反対側を後端ということとし、また、プラグ94においては、ソケット92を挿嵌する側を先端、反対側を後端ということとする。
【0119】
図27を参照するとソケット92はベース921と側壁部材922とが結合されて外形が形成されている。ベース921は円筒状の筒部分921aと円盤状の平板部分921bとが同一の中心軸となるように接続されたフランジ状の部材であり、中心軸には空洞である流体流路921cが形成されている。側壁部材922は略円筒形状の部材であり、筒部外径はベース921の平板部分921b外周と略同一径であり、側壁部材922の円筒中心軸はベース921の中心軸とほぼ一致するように配されている。
【0120】
側壁部材922の内部は、後述する光ファイバーを固定保持する保持部分924と、後述する可動部材の摺動方向を決定するガイド部分924aと、可動部材の可動範囲を制限するストッパー926とが形成されている。また、側壁部材922の内部には、可動部材925と板バネ970と光ファイバー928と可動シール部材930と弾性体931とが配置されている。
【0121】
保持部分924は、ベース921と接触するように形成された側壁部材922の一部である平板状の部分であり、後端面はベース921に密着して固定され、側壁部材922の中心軸近傍において光ファイバー928を固定保持する。このとき保持部分924と光ファイバー928との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとし、側壁部材922および保持部分924とベース921との接触部分の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また保持部分924には、流体の流れを確保するための管である流体流路924cが光ファイバー928を中心とした円形上に形成されており、ベース921の流体流路921cと連通して連続した流体の流路を成している。光ファイバー928の一方の端面はベース921の流体流路921c内を介して燃料電池側の光通信手段まで到達するように配置される。
【0122】
ガイド部分924aは、側壁部材922の一部である円筒状の部分であり、その内径は可動部材925の外径と略同一であって可動部材925が円筒長手方向に摺動可能となるようにガイドとして機能する。また、ガイド部分924aの先端部分は側壁部材922の外形を成す円筒とは分離されて二重の円筒構造をなしており、後端は保持部分924と接続されて一体となっている。
【0123】
ストッパー926は、ガイド部分924aの先端に形成された円環状の部分であり、その内径はガイド部分924aの内径よりも小であり、その外径はガイド部分924aの外形よりも大である。ストッパー926の内径がガイド部分924aの内径よりも小であることによって、可動部材925がガイド部分924aに沿って摺動する領域をストッパー926が限定する。また、ストッパー926の外径がガイド部分924aの外形よりも大であることによって、可動シール部材930がガイド部分924aに沿って摺動する領域をストッパー926が限定する。また、ストッパー926の可動部材925側であるガイド部分924aの内壁には、気密性を高めるためのシール部材929が配設されている。シール部材929は燃料の密閉性が高いことを特徴とする。形状としては、一般的なOリング形状あるいはオイルシール形状など、高い密閉性という条件を満たすものであれば良い。
【0124】
可動部材925は略球形状の部材であり、外径はガイド部分924aの内壁面と略同一径に成形されて、ガイド部分924aの長手方向内壁面に沿って摺動可能に配置されている。また可動部材925には、側壁部材922の円筒中心軸に沿って貫通した孔である中心孔925aが形成され、中心孔925aの先端方向には可動部材925内部にレンズ925bが配されて埋め込まれている。中心孔925aの直径は光ファイバー928の直径よりも大とされており、光ファイバー928が摺動可能に挿入されている。ここで光ファイバー928が中心孔925a内で摺動可能とされていることにより、可動部材925が摺動した場合にも光ファイバー928が移動せず、光ファイバー928が折れ曲がったり引っ張られたりするような負荷が加わりにくいため、光ファイバー928の破損の可能性を低減することが可能である。また可動部材925の外周には、ガイド部分924aの長手方向に沿って溝である流体流路925cが形成されている。流体流路925cの溝の深さは流体の流れを確保する程度であるが、可動部材925がシール部材929に当接した際には、シール部材929によって溝が遮蔽されて燃料の漏洩が起こらない程度とする。
【0125】
図中A−Aで示した位置での可動部材925の断面は図18に示したものと同様である。円形状の断面中心には中心孔925aがあり、外周部分に流体流路925cがある。図18(a)は流体流路925cを90度間隔で4箇所に形成した場合の断面であり、図18(b)は流体流路925cを60度間隔で6箇所に形成した場合の断面であるが、燃料の流路として機能する大きさと個数を適宜選択することができ、その配置方法も図18に示したものに限定しない。さらに可動部材925は球体の後端部を一部削り取って座924dを形成しており、板バネ970を安定して取り付けることができる。座924dが形成されていることにより、板バネ970が中心に安定して可動部材925に作用する力の均一性が保たれる。また、可動部材925が回転して光ファイバー928に負荷が加わることを防止することも可能である。
【0126】
図28に板バネ970の外観を平面図で示す。板バネ970は、弾力を持った円環形状の平板な部材であり、その外周直径はガイド部分924aの内壁よりも大である。板バネ970の中心には座924dを嵌め込むための座孔970aが形成されいる。座孔970aの直径は可動部材925の座925dが嵌合する程度の大きさである。また、燃料流路孔970bが複数設けられており、流体が燃料流路溝970bを通過可能となっている。図28では燃料流路孔970bを4箇所形成した例を示しているが、燃料の通過量に適した個数、形状、大きさとして構わない。
【0127】
板バネ970の外周はガイド部分924aの内壁に埋め込まれている。板バネ970が埋め込まれている位置は、板バネ970から生じる力によって可動部材925がソケット92の先端方向に移動しストッパー926に押し付けられる位置である。また、可動部材925の座925dは板バネ970の中心に形成された座孔970aに嵌合されている。可動部材925がストッパー926に押し付けられた状態では、可動部材925とストッパー926との間にシール部材930が配されて、可動部材925に形成された流体流路925cがシール部材930によって遮蔽されていることにより、可動部材925とストッパー926との間での気密性が保持され、可動部材925とストッパー926と板バネ970との組み合わせで遮断弁が構成される。このとき、中心孔925aはレンズ925bによって気密性が保持されている。ここで、可動部材925を先端方向へ付勢する手段は、上述した板バネ970に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良く、可動部材925とストッパー926との組み合わせに遮断弁としての機能を付加できるものであればいずれの手段も用いることが可能である。
【0128】
可動シール部材930は円環形状のシール部材であり、外径は側壁部材922の内壁面と略同一径に成形され、内縁部直径はガイド部分924aの外径より大きく成形され、外縁部は側壁部材942の内壁面に沿い、内縁部はガイド部分924aに沿って摺動可能に配置されている。可動シール部材930を形成する材料は燃料の密閉性が高いこと及び摺動する際の摺動抵抗が小さい、これにより可動シール部材930と接触する他の部材との間での気密性が保持される。可動シール部材930の後端部分はストッパー926の外径よりも小さい円環状部分930aとなって側壁部材922内壁とガイド部分924a外壁との間に入り込んでおり、円環状部分930aとストッパー926とが干渉するために可動シール部材930がストッパー926に押し付けられて摺動可能範囲が限定される。ストッパー926に押し付けられた状態での可動シール部材930の先端は、可動部材925の先端よりもソケット92の先端方向に突出した位置にまで到達し、プラグ94がソケット92に挿入された際にはプラグ94は可動部材925よりも先に可動シール部材930と接触することになる。
【0129】
弾性体931は、斥力を発生させるバネなどの部材であり、側壁部材922とガイド部分924aとの間に圧縮した状態で配置されている。弾性体931が圧縮された状態で側壁部材922とガイド部分924aとの間に配置されていることにより、弾性体931から生じる斥力によって可動シール部材930は先端方向に付勢されてストッパー926に押し付けられる。にここで、弾性体931としてはバネ部材に限定されるものではなく、可動シール部材930に対して先端方向へ付勢するように弾力を与えられるものであれば種々のものを用いることが可能である。また、可動シール部材930を先端方向へ付勢する手段は、上述した弾性体931に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良い。
【0130】
側壁部材922の内壁部分には、継手が接続された際に、その状態を保持するためのロック機構の一端を担う突起932が設けてある。この突起932は、例えばボールプランジャーのように、球状の部品(鋼球)がソケット92の内部からバネで押されており、それをソケット92の内面に設けたストッパーで受け止めて、常に球状の部品(鋼球)が一定の突出量を保つ機能を備えたものである。ただしここに示したロック機構は一例であり、他の構造であっても本発明の継手の基本機能は成立する。
【0131】
図29を参照するとプラグ94はベース941と側壁部材942とが結合されて外形が形成されている。ベース941は円筒状の筒部分941aと円盤状の平板部分941bとが同一の中心軸となるように接続されたフランジ状の部材であり、中心軸には空洞である流体流路941cが形成されている。側壁部材942は略円筒形状の部材であり、筒部外径はベース941の平板部分941b外周と略同一径であり、側壁部材942の円筒中心軸はベース941の中心軸とほぼ一致するように配されている。
【0132】
側壁部材942は円筒形状の部材であり、後述する光ファイバーを固定保持する保持部分944と、後述する可動部材の可動範囲を制限するストッパー946とが形成されている。また、側壁部材942の内部には、可動部材945と板バネ971と光ファイバー948とシール部材949とが配置されている。側壁部材942の内径は可動部材925の外径と略同一であって可動部材925が円筒長手方向に摺動可能となるようにガイドとして機能する。側壁部材942の外壁部分には、ソケット92とプラグ94が嵌合された状態で前述したソケット92の側壁部材922に設けられた突起932が到達する位置に、継手が接続された際にその状態を保持するためのロック機構の一端を担う溝951が設けてある。ソケット92の側壁部材922に設けられた突起932が、溝951に入り込むことで、ソケット92とプラグ94の接続状態が保持される。ただしソケット92の説明においても述べたがここに示したロック機構は一例であり、他の構造であっても本発明の継手の機能は成立するため、プラグ94は図29に示した形状に限らない。
【0133】
保持部分944は、ベース941と接触するように形成された側壁部材942の一部である平板状の部分であり、後端面はベース941に密着して固定され、側壁部材942の中心軸近傍において光ファイバー948を固定保持する。このとき保持部分944と光ファイバー948との間の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとし、側壁部材942および保持部分944とベース921との接触部分の気密を保持するために、シール材を配するなどの気密性保持の対策を施すものとする。また保持部分944には、流体の流れを確保するための管である流体流路944cが光ファイバー948を中心とした円形上に形成されており、ベース941の流体流路941cと連通して連続した流体の流路を成している。光ファイバー948の一方の端面はベース941の流体流路941c内を介して燃料電池側の光通信手段まで到達するように配置される。
【0134】
ストッパー946は、側壁部材942の先端に形成された円環状の部分であり、その内径は側壁部材942の内径よりも小である。ストッパー946の内径が側壁部材942の内径よりも小であることによって、可動部材945が側壁部材942に沿って摺動する領域をストッパー946が限定する。また、ストッパー946の可動部材945側である側壁部材942の内壁には、気密性を高めるためのシール部材949が配設されている。シール部材949は燃料の密閉性が高いことを特徴とする。形状としては、一般的なOリング形状あるいはオイルシール形状など、高い密閉性という条件を満たすものであれば良い。
【0135】
可動部材945は略球形状の部材であり、外径は側壁部材942の内壁面と略同一径に成形されて、側壁部材942の長手方向内壁面に沿って摺動可能に配置されている。また可動部材945には、側壁部材942の円筒中心軸に沿って貫通した孔である中心孔945aが形成され、中心孔945aの先端方向には可動部材945内部にレンズ945bが配されて埋め込まれている。中心孔945aの直径は光ファイバー948の直径よりも大とされており、光ファイバー948が摺動可能に挿入されている。ここで光ファイバー928が中心孔925a内で摺動可能とされていることにより、可動部材925が摺動した場合にも光ファイバー928が移動せず、光ファイバー928が折れ曲がったり引っ張られたりするような負荷が加わりにくいため、光ファイバー928の破損の可能性を低減することが可能である。また可動部材945の外周には、側壁部材942の長手方向に沿って溝である流体流路945cが形成されている。流体流路945cの溝の深さは流体の流れを確保する程度であるが、可動部材945がシール部材949に当接した際には、シール部材949によって溝が遮蔽されて燃料の漏洩が起こらない程度とする。可動部材945の断面は図18に示したものと同様である。さらに可動部材945は球体の後端部を一部削り取って座944dを形成しており、板バネ971を安定して取り付けることができる。座944dが形成されていることにより、板バネ971が中心に安定して可動部材945に作用する力の均一性が保たれる。また、可動部材945が回転して光ファイバー948に負荷が加わることを防止することも可能である。
【0136】
板バネ971の外観は図28に示したものと同様である。板バネ971の外周はガイド部分944aの内壁に埋め込まれている。板バネ971が埋め込まれている位置は、板バネ971から生じる力によって可動部材945がプラグ94の先端方向に移動しストッパー946に押し付けられる位置である。また、可動部材945の座945dは板バネ971の中心に形成された座孔970aに嵌合されている。可動部材945がストッパー946に押し付けられた状態では、可動部材945とストッパー946との間にシール部材949が配されて、可動部材945に形成された流体流路945cがシール部材949によって遮蔽されていることにより、可動部材945とストッパー946との間での気密性が保持され、可動部材945とストッパー946と板バネ971との組み合わせで遮断弁が構成される。このとき、中心孔945aはレンズ945bによって気密性が保持されている。ここで、可動部材945を先端方向へ付勢する手段は、上述した板バネ971に限定されるものではなく、材料の弾力を利用した構成としても良く、材料の熱膨張率の違いを利用した構成としても良く、また、電磁気力を利用した構成としても良く、可動部材945とストッパー946との組み合わせに遮断弁としての機能を付加できるものであればいずれの手段も用いることが可能である。
【0137】
次に、図30乃至図32を用いて、コネクタ機構91の動作および遮断弁としての機能について説明する。プラグ94をソケット92に装着するときには、プラグ94の中心軸とソケット92の中心軸とが同一軸上にのるように双方を配し、プラグ94をソケット92の側壁部材922の内側に押し込む。
【0138】
図30において、説明の便宜上第1接触面と第2接触面を定める。ソケット92とプラグ94とが接続する際に、最初にソケット92の可動シール部材930先端面とプラグ94の側壁部材942先端面が接触するが、この時に接触する面を第1接触面961とする。第1接触面961が接触した後さらに接続動作が進むと、ソケット92の可動部材925の先端と可動部材945の先端が接触するが、このときに接触する面を第2接触面962とする。図30に示したようなソケット92とプラグ94とが分離した状態から、ソケット92とプラグ94との接続が完了した状態に至るまでの各部の動作を、段階ごとに説明すると以下のようになる。
【0139】
図30は、ソケット92とプラグ94とが分離した状態である。このときのソケット92では、可動部材925が板バネ970の反発力によって先端方向に付勢されてストッパー926およびシール部材929に当接して、流体流路925cがシール部材929によって遮蔽されて気密が保持されているため、可動部材925とストッパー926とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。同様にプラグ94では、可動部材945が板バネ971の反発力によって先端方向に付勢されてストッパー946およびシール部材949に当接して、流体流路945cがシール部材949によって遮蔽されて気密が保持されているため、可動部材945とストッパー946とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。また、可動シール部材930は弾性体931の斥力によって先端方向に付勢されて、ストッパー926に当接し、可動シール部材930の先端は、可動部材925の先端よりもソケット92の先端方向に突出した位置にまで到達している。
【0140】
次に、図31のように、プラグ94をソケット92の側壁部材922内に挿入するように接続を開始すると、可動シール部材930先端面と側壁部材942先端面すなわち第1接触面961が接触する。この状態では未だソケット92では、可動部材925が板バネ970の斥力によって先端方向に付勢されてストッパー926に当接しているため、可動部材925とストッパー926との間に配されているシール部材929によって気密が保持されて、可動部材925とストッパー926とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。同様にプラグ94では、可動部材945が板バネ971の反発力によって先端方向に付勢されてストッパー946に当接しているため、可動部材945とストッパー946との間に配されているシール部材949によって気密が保持されて、可動部材945とストッパー946とによって構成された遮断弁が閉じた状態である。従って継手内部の空間と継手外部の空間が遮断され、継手内部に密閉した空間が形成されている状態であり、ソケット92およびプラグ94の遮断弁は閉じたままである。このとき、可動シール部材930先端面とプラグ94の先端面が当接したことによって、ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とによって挟まれた空間も密閉される。
【0141】
さらに継手の接続動作が進むと、図32に示すように、プラグ94がソケット92の側壁部材922内に挿入され、可動部材925の先端と可動部材945の先端すなわち第2接触面962が接触する。さらに接続操作が進むと、ソケット92では板バネ970の反発力に抗して可動部材925が後端方向に移動し、プラグ94では板バネ971の反発力に抗して可動部材945が後端方向に移動する。これによりソケット92においては、可動部材925に形成された流体流路925cがシール部材929から離れ、プラグ94においては可動部材945に形成された流体流路945cがシール部材と離れる。また、可動シール部材930もプラグ94の先端に押されて、弾性体931の斥力に抗して後端方向に移動する。
【0142】
ソケット92のストッパー926とプラグ94のストッパー946とが近接あるいは接触した時点で、継手のロック機構の一端を担う突起932が溝951に嵌合して、ロック機構が働き継手の接続が完了する。またこのとき、可動部材925が後端方向に移動すると、相対的に光ファイバー928が中心孔925a内に挿入された形となり、光ファイバー928の端面がレンズ925bに接近する。同様に、可動部材945が後端方向に移動すると、相対的に光ファイバー948が中心孔945a内に挿入された形となり、光ファイバー948の端面がレンズ945bに接近する。光ファイバー928の端面とレンズ925bが接近し、光ファイバー948の端面とレンズ945bが接近した状態となることで、ソケット92とプラグ94との間で光を触媒とした通信が可能となる。
【0143】
突起932が溝951に嵌合してロック機構が働き継手の接続が完了した際の、第2接触面962周辺の状態を部分的に拡大して図32に示す。中心孔925a,945aの径は光ファイバー928,948の直径よりも大となっているが、レンズ925b,945bが可動部材925,945に埋め込まれているため、レンズ925b,945bがシール材として機能して中心孔925a,945aの気密性が保持されている。レンズ925b,945bは、互いに接触して表面に傷がつかないように可動部材925,945の最先端部ではなく、若干内側に埋め込まれているとする。可動部材925と可動部材945とが第2接触面962で接触し、光ファイバー928の端面はレンズ925bに接近しており、光ファイバー948の端面はレンズ945bに接近している。光ファイバー928,948の端面とレンズ925b,945bとの位置関係は、図中矢印で示した光が、光ファイバー928,948から出射して、レンズ925b,945bを通って屈折して平行光となる位置である。従って、平行光がレンズ925b,945bに入射した場合には、レンズ925b,945bによって光が屈折して光ファイバー928,948の端面で焦点を結ぶことになる。これにより、ソケット92とプラグ94との間での光ファイバー928,948とレンズ925b,945bを介した光を触媒とした通信が可能となる。
【0144】
本実施の形態における、図30乃至図32に示した接続動作の各段階でのソケット92とプラグ94内部において、燃料が存在する空間(燃料の流れ)は図24乃至図26に図示したものと同様である。図24乃至図26の各図において、ハッチングを施した部分が燃料である流体が存在する空間となる。
【0145】
なお、以上のような本発明に係るコネクタ機構は、燃料の流体として気体を用いる場合のみならず、燃料の流体として液体を用いる場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】第1の実施の形態のコネクタ機構を構成するソケットとプラグとが接続された状態を示す外観斜視図である。
【図2】本発明を適用した第1の実施の形態におけるコネクタ機構に用いるソケットの概略断面図である。
【図3】本発明を適用した第1の実施の形態におけるコネクタ機構に用いるプラグの概略断面図である。
【図4】第1の実施の形態におけるプラグの可動部材を図3の矢印A方向から見た平面図である。
【図5】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4とが分離した状態を示した概略断面図である。
【図6】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4の第1接触面が接触した状態を示した概略断面図である。
【図7】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4の第2接触面が接触した状態を示した概略断面図である。
【図8】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4との接続が完了して接続が保持された状態を示した概略断面図である。
【図9】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4とが分離した状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図10】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4の第1接触面が接触した状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図11】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4の第2接触面が接触した状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図12】第1の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット2とプラグ4との接続が完了して接続が保持された状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図13】本発明に係るコネクタ機構を適用して構成した燃料電池システムを搭載したポータブル電子機器の構成例のブロック図である。
【図14】本発明に係るコネクタ機構を適用して構成した燃料電池システムを搭載したポータブル電子機器の他の構成例のブロック図である。
【図15】本発明に係るコネクタ機構を適用して構成した燃料電池システムを搭載したポータブル電子機器の他の構成例のブロック図である。
【図16】第2の実施の形態のコネクタ機構を構成するソケットとプラグとが接続された状態を示す外観斜視図である。
【図17】本発明を適用した第2の実施の形態におけるコネクタ機構に用いるソケットの概略断面図である。
【図18】可動部材のA−A断面図である。
【図19】本発明を適用した第2の実施の形態におけるコネクタ機構に用いるプラグの概略断面図である。
【図20】第2の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94とが分離した状態を示した概略断面図である。
【図21】第2の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94の第1接触面が接触した状態を示した概略断面図である。
【図22】第2の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94との接続が完了して接続が保持された状態を示した概略断面図である。
【図23】第2の実施の形態において接続が保持された状態での第2接触面周辺を部分的に拡大した模式図である。
【図24】第2の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94とが分離した状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図25】第2の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94の第1接触面が接触した状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図26】第2の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94との接続が完了して接続が保持された状態での流体の存在領域を示した概略断面図である。
【図27】本発明を適用した第3の実施の形態におけるコネクタ機構に用いるソケットの概略断面図である。
【図28】板バネの構造を示す平面図である。
【図29】本発明を適用した第3の実施の形態におけるコネクタ機構に用いるプラグの概略断面図である。
【図30】第3の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94とが分離した状態を示した概略断面図である。
【図31】第3の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94の第1接触面が接触した状態を示した概略断面図である。
【図32】第3の実施の形態におけるコネクタ機構の接続過程でソケット92とプラグ94との接続が完了して接続が保持された状態を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0147】
1,91 コネクタ機構
2,92 ソケット
4,94 プラグ
21,41,921,941 ベース
21a,921a 筒部分
21b,921b 平板部分
21c,24c,25c,41c,44c,45c,921c,924c,925c,941c,944c,945c 流体流路
22,42,922,942 側壁部材
23,29,30,31,43,49,50,52,929,930,949 シール部材
24,44 保持部材
24a,44a 円筒状部分
24b,44b 円盤状部分
25,45 可動部材
26,46,926,946 ストッパー
27,47,927,931,947 弾性体
28,48,928,948 光ファイバー
32,932 突起
41a,941a 筒部分
41b,941b 平板部分
42a 円筒部分
42b 差込部分
45a 外縁部先端
45b 流路溝
51,951 溝
61,961 第1接触面
62,962 第2接触面
63,963 第1の流路
64,964 第2の流路
71 ポータブル電子機器
72 燃料電池システム
73 水素貯蔵カートリッジ
74 燃料電池発電装置
75 水素吸蔵体
76 圧力調整機構
77 センサー
78 情報処理部
79 光通信手段
80 流量調整機構
81 水素供給制御機構
82 電気エネルギー発生素子
83 光通信手段
84 情報処理部
85 センサー
924a ガイド部分
924,944 保持部分
924d,944d 座
925,945 可動部材
925a,945a 中心孔
925b,945b レンズ
930a 円環状部分
930 可動シール部材
970,971 板バネ
970a 座孔
970b 燃料流路孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料カートリッジ側又は燃料電池発電装置側に配置される雌型コネクタと、燃料電池発電装置側又は燃料カートリッジ側に配置される雄型コネクタとを有し、前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿入して燃料流体の授受を行うコネクタ機構であって、
前記雌型コネクタが、前記雄型コネクタ側との間で燃料流体の授受が行われる第1の流路と遮断弁とを備え、
前記雄型コネクタが、前記雌型コネクタとの間で燃料流体の授受が行われる第2の流路と遮断弁とを備え、
前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿嵌することにより前記第1の流路と前記第2の流路とが連通すると共に、
前記雌型コネクタと前記雄型コネクタとの連結を解除した際に、前記遮断弁が、前記雌型コネクタと、前記雄型コネクタとを密閉状態に保持すること
を特徴とするコネクタ機構。
【請求項2】
前記雌型コネクタが、前記雄型コネクタ側に付勢されるとともに前記第1の流路の主流方向に移動自在に前記第1の流路上に設けられて前記第1の流路を前記雄型コネクタ側から遮断する第1の可動部材を備え、
前記雄型コネクタが、前記雌型コネクタ側に付勢されるとともに前記第2の流路の主流方向に移動自在に前記第2の流路上に設けられ前記第2の流路を前記雌型コネクタ側から遮断する第2の可動部材を備え、
前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿嵌すると前記第1の可動部材が前記雄型コネクタ側に付勢される力に抗して後端側に移動することにより開蓋動作され、且つ前記第2の可動部材が前記雌型コネクタ側に付勢される力に抗して移動することにより開蓋動作されることで前記第1の流路と前記第2の流路とが連通すること
を特徴とする請求項1記載のコネクタ機構。
【請求項3】
前記第1の可動部材が、第1の弾性体によって前記雄型コネクタ側に付勢されるように前記第1の流路上に設けられること
を特徴とする請求項2記載のコネクタ機構。
【請求項4】
前記第2の可動部材が、第2の弾性体によって前記雌型コネクタ側に付勢されるように前記第2の流路上に設けられること
を特徴とする請求項2記載のコネクタ機構。
【請求項5】
前記第1の可動部材が、第1の弾性体によって前記雄型コネクタ側に付勢されるように前記第1の流路上に設けられ、且つ前記第2の可動部材が、第2の弾性体によって前記雌型コネクタ側に付勢されるように前記第2の流路上に設けられ、
前記雄型コネクタを前記雌型コネクタに挿嵌すると前記第1の可動部材が前記第1の弾性体の弾力に抗して後端側に移動することにより開蓋動作され、且つ前記第2の可動部材が前記第2の弾性体の弾力に抗して後端側に移動することにより開蓋動作されることで前記第1の流路と前記第2の流路とが連通すること
を特徴とする請求項2記載のコネクタ機構。
【請求項6】
前記雄型コネクタの先端が前記第1の可動部材と当接して、前記第1の流路および前記第2の流路の気密を確保した後に、
前記第1の可動部材が前記雄型コネクタ側に付勢される力に抗して後端側に移動することにより開蓋動作され、且つ前記第2の可動部材が前記雌型コネクタ側に付勢される力に抗して後端側に移動することにより開蓋動作されることで前記第1の流路と前記第2の流路とが連通すること
を特徴とする請求項2記載のコネクタ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2008−133953(P2008−133953A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280524(P2007−280524)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【分割の表示】特願2002−170478(P2002−170478)の分割
【原出願日】平成14年6月11日(2002.6.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】