説明

コークス炉の移動機の位置検出装置及び位置検出方法

【課題】コークス炉の移動機の現在位置を正確且つ安価に検出できる位置検出装置及び位置検出方法を提供する。
【解決手段】位置検出装置は、レール31〜35に接し移動機21〜25の移動に伴って回転するローラ42の絶対的な回転角度を測定するアブソリュート回転角度検出装置41を備え、移動機21〜25の現在位置を示す位置情報を出力する位置情報出力手段と、位置情報出力手段により出力された移動機21〜25の位置情報の誤差を修正する誤差修正手段と、を備える。誤差修正手段は、コークス炉10に設置された基準標識51と、移動機21〜25に搭載され基準標識51を検出する非接触式センサ52と、非接触式センサ52により基準標識51を検出した場合には、その時点において位置情報出力手段から出力された移動機21〜25の位置情報を、基準標識51に予め付与された基準位置情報に置換する位置情報置換手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に設置されている移動機(例えば、押出機,装炭車,ガイド車,バケット車,消火車)の現在位置を検出する位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料石炭を乾留してコークスを製造するコークス炉には、各種の移動機が設置されており、この移動機としては、コークス炉に原料石炭を装入する装炭車、コークス炉から高温の赤熱状態のコークス(以降においては赤熱コークスと記すこともある)を押し出す押出機、赤熱コークスを乾式消火設備に搬送するバケット車、赤熱コークスを湿式消火設備に搬送する消火車、コークス炉から押し出された赤熱コークスをバケット車又は消火車に案内するガイド車などがある。
【0003】
コークス炉の操業においては、これらの移動機をコークス炉の所定の位置に移動させて停止させた上、赤熱コークスの窯出し,消火等の各種作業が行われるが、近年においては、効率化のために各種移動機の無人自動運転が実施されている。このような移動機の無人自動運転を行なうためには、レール等の軌道上を移動する移動機を所定の位置に自動停止させることが要求されるので、停止中又は移動中の移動機の現在位置を正確に検出する必要がある。
【0004】
従来、移動機の位置検出には、誘導無線方式が用いられていた。すなわち、移動機の軌道に沿って敷設された誘導無線線路から発信される電波を、移動機に搭載されたアンテナで受信して、該移動機の現在位置を検出し、得られた現在位置に基づいて移動機を自動的に移動又は停止させるようになっていた。そして、移動機は、予め定められたスケジュールにより指定された目的位置まで移動して停止し、該位置で所定の作業を行なった後に次の目的位置へ移動するという動作を、繰り返し行うようになっていた。また、誘導無線方式による移動機の位置検出は、押出機を除いて絶対番地方式により行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−199665号公報
【特許文献2】特開2007−264735号公報
【特許文献3】特許第3603604号公報
【特許文献4】特開2008−174584号公報
【特許文献5】特許第3949086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、誘導無線方式による移動機の位置検出は、移動機の全軌道に沿って誘導無線線路を敷設する必要があるため、機器及び工事の費用が非常に高価となるという問題があった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、コークス炉の移動機の現在位置を正確且つ安価に検出できる位置検出装置及び位置検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は以下のような構成からなる。すなわち、本発明に係るコークス炉の移動機の位置検出装置は、コークス炉の操業に使用される移動機の現在位置を検出する位置検出装置において、前記移動機に搭載され前記移動機の基準位置からの変位量を測定するデコーダを備え、前記移動機の現在位置を示す位置情報を出力する位置情報出力手段と、前記位置情報出力手段により出力された前記移動機の位置情報の誤差を修正する誤差修正手段と、を備え、前記誤差修正手段は、前記移動機の軌道上又は軌道近傍の所定位置に設置された基準標識と、前記移動機に搭載され前記基準標識を検出する非接触式センサと、前記非接触式センサにより前記基準標識を検出した場合には、その時点において前記位置情報出力手段から出力された前記移動機の位置情報を、前記基準標識に予め付与された基準位置情報に置換する位置情報置換手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明に係るコークス炉の移動機の位置検出装置においては、前記デコーダは、前記移動機の移動に伴って回転するローラの回転数又は回転角度を測定する回転検出装置であることが好ましい。
また、前記コークス炉は、複数の窯を並設してなる炉団を備えており、前記基準標識は前記炉団の端部及び前記窯の少なくとも一方に配置されていることが好ましい。
【0009】
さらに、前記移動機が、前記コークス炉に原料石炭を装入する装炭車、前記コークス炉からコークスを押し出す押出機、前記コークスを乾式消火設備に搬送するバケット車、前記コークスを湿式消火設備に搬送する消火車、及び、前記コークス炉から押し出された前記コークスを前記バケット車又は前記消火車に案内するガイド車のうちの少なくとも一つであることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係るコークス炉の移動機の位置検出方法は、コークス炉の操業に使用する移動機の現在位置を示す位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づいて前記移動機を所定の位置に移動させて前記コークス炉の各種作業を行うに際して、前記移動機に搭載され前記移動機の基準位置からの変位量を測定するデコーダを備える位置情報出力手段により、前記位置情報を取得するとともに、前記移動機の軌道上又は軌道近傍の所定位置に基準標識を設置し、前記移動機に搭載された非接触式センサにより前記基準標識を検出したら、その時点において前記位置情報出力手段から出力された前記移動機の位置情報を、前記基準標識に予め付与された基準位置情報に置換して前記移動機の位置情報の誤差を修正することを特徴とする。
【0011】
このような本発明に係るコークス炉の移動機の位置検出方法においては、前記デコーダは、前記移動機の移動に伴って回転するローラの回転数又は回転角度を測定する回転検出装置であることが好ましい。
また、前記コークス炉は、複数の窯を並設してなる炉団を備えており、前記基準標識を前記炉団の端部及び前記窯の少なくとも一方に配置することが好ましい。
【0012】
さらに、前記移動機が、前記コークス炉に原料石炭を装入する装炭車、前記コークス炉からコークスを押し出す押出機、前記コークスを乾式消火設備に搬送するバケット車、前記コークスを湿式消火設備に搬送する消火車、及び、前記コークス炉から押し出された前記コークスを前記バケット車又は前記消火車に案内するガイド車のうちの少なくとも一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコークス炉の移動機の位置検出装置及び位置検出方法によれば、コークス炉の移動機の現在位置を正確且つ安価に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る移動機の位置検出装置及び位置検出方法を説明する図であり、本実施形態のコークス炉の構成を示す概念図である。
【図2】本発明に係る移動機の位置検出装置及び位置検出方法を説明する図であり、本実施形態のコークス炉と各種移動機を示す概略斜視図である。
【図3】押出機に設置された位置情報出力手段の構成を説明する図である。
【図4】誤差修正手段の構成を説明する図である。
【図5】別の誤差修正手段の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るコークス炉の移動機の位置検出装置及び位置検出方法の実施の形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。図1は、本実施形態のコークス炉の構成を説明する概念図であり、図2は、本実施形態のコークス炉と各種移動機を示す概略斜視図である。なお、これ以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0016】
コークス炉は、複数の窯を直線状に並設してなる炉団を備えており、通常は複数の炉団から構成されている。例えば、図1に示すコークス炉10は、直線状に並設された5つの炉団11〜15で構成されている。そして、各炉団11〜15は、それぞれ複数の窯が直線状に並設されてなるが、例えば第4炉団14は、図1に示すように25〜35程度の窯14A〜14Eを備えている。
【0017】
このようなコークス炉10には、コークス炉10の操業に使用する各種の移動機が設置されている。この移動機としては、コークス炉10に原料石炭(図示せず)を装入する装炭車21、コークス炉10から赤熱コークスCを押し出す押出機22、赤熱コークスCを乾式消火設備27に搬送するバケット車23、赤熱コークスCを湿式消火設備28に搬送する消火車24、コークス炉10から押し出された赤熱コークスCをバケット車23又は消火車24に案内するガイド車25がある。
【0018】
これらの各種移動機21〜25は、1つのコークス炉にそれぞれ複数台ずつ備えられている。例えば、図1に示すコークス炉10においては、装炭車21が3台、押出機22が4台、バケット車23が2台、消火車24が2台、ガイド車25が3台備えられている。また、コークス炉10の周辺には(装炭車21についてはコークス炉10の上部)、各種移動機専用のレールがコークス炉10に沿って直線状に敷設されている。すなわち、図2に示すように(図1には図示せず)、各種移動機21〜25の軌道である装炭車用レール31、押出機用レール32、バケット車消火車兼用レール33、ガイド車用レール35が敷設されている。
【0019】
各移動機21〜25は、移動機21〜25にそれぞれ搭載された専用の駆動装置によってそれぞれ駆動されて専用のレール31〜35上を移動可能となっているので、後述するコンピューターシステム(図示せず)の命令に従ってそれぞれレール31〜35上を移動して所定の位置に配置され、連携をなして一連の操業(例えば、赤熱コークスCの窯出し,消火)を行うようになっている。なお、バケット車23と消火車24は、いずれか一方のみを設置してもよいし、両方を設置してもよい。一方のみを設置した場合は、乾式消火設備27と湿式消火設備28も、対応する方のみを設置すればよい。
【0020】
次に、上記のようなコークス炉10の操業内容及び操業手順について説明する。コークス炉10には、コークス炉10の無人自動操業を行うためのコンピューターシステムが備えられている。このコンピューターシステムは、各移動機21〜25及び消火設備27,28に搭載された機上システム(図示せず)と、全ての移動機21〜25及び消火設備27,28の管理及び制御を行う地上システム(図示せず)と、で構成される。
【0021】
地上システムと各移動機21〜25の機上システムとは無線(又は誘導無線)によって接続されているので、この無線によって機上システムから送られた該移動機21〜25の位置情報により、地上システムが各移動機21〜25の現在位置を把握できるようになっている。そして、地上システムは、無線によって各移動機21〜25を所定の位置に配置できるようになっている。また、押出機22の押出しや乾式消火設備27の消火などのような各種作業も、該地上システムからの命令により実行されるようになっている。
【0022】
地上システムからの命令を無線により受けた装炭車21の機上システムは、装炭車21に搭載された駆動装置を駆動させて、原料石炭を積載している装炭車21をレール31に沿って移動させるとともに、コークス炉10が備える各窯内に原料石炭を装入させる。そして、各窯内においては、装入された原料石炭が高温で乾留され、赤熱コークスCが製造される。
【0023】
また、地上システムからの命令を無線により受けた押出機22,バケット車23(又は消火車24),及びガイド車25の各機上システムが、押出機22,バケット車23(又は消火車24),及びガイド車25にそれぞれ搭載された各駆動装置を駆動させて、押出機22,バケット車23(又は消火車24),及びガイド車25をレール32,33,35に沿って移動させる。
【0024】
装炭車21,押出機22,バケット車23(又は消火車24),及びガイド車25には、それぞれ専用の位置検出装置が備えられており、これら各移動機21〜25の現在位置が各位置検出装置により測定され、各位置検出装置から出力された各移動機21〜25の現在位置を示す位置情報が、各機上システムから無線で地上システムに送られるようになっている。そして、送られた位置情報に基づいて、地上システムが各移動機21〜25に命令を送り、目的の位置、すなわち特定の窯(例えば窯14A)の側面に各移動機21〜25を移動させるようになっている。
【0025】
全移動機22〜25が所定の位置に停止したことを地上システムが確認したら、地上システムは窯出し作業を開始する命令を出す。すなわち、地上システムの命令を受けた押出機22の機上システムが、押出機22に搭載された駆動装置を駆動させて、窯の押出機側の炉蓋とコークス出口側の炉蓋とを開けた後に、押出機22の押出ラム37(押出ラム37は、赤熱コークスCに直接接触するラムヘッド38とラムヘッド38を押すラムビーム39とからなる)を水平移動させる。すると、製造された赤熱コークスCは窯内から押し出され、窯のコークス出口側の開口部で待機しているガイド車25を介してバケット車23(詳細にはバケット車23のバケット23a)又は消火車24に排出される。
【0026】
赤熱コークスCの押出しが完了したら、地上システムの命令を受けた押出機22の機上システムが、押出ラム31を押出機22内に引き戻し、さらに前記両炉蓋を閉める。そして、地上システムの命令を受けた装炭車21の機上システムが、装炭車21から同窯内に原料石炭を再度装入し、再度乾留が行われる。
窯出しされた赤熱コークスCを積載したバケット車23(又は消火車24)は、地上システムの命令により、コークス炉10に沿って敷設されたレール33上を移動し、乾式消火設備27(又は湿式消火設備28)の配設位置にて停止する。この際も前述と同様に、バケット車23(又は消火車24)の現在位置は前記位置検出装置により測定され、該位置検出装置から出力されたバケット車23(又は消火車24)の現在位置を示す位置情報が、無線により地上システムに送られるようになっている。
【0027】
このようにして赤熱コークスCが乾式消火設備27(又は湿式消火設備28)に搬送されたら、地上システムの命令により、赤熱コークスCの乾式消火作業(又は湿式消火作業)が行われる。乾式消火設備27(又は湿式消火設備28)に赤熱コークスCを搬送し終えたバケット車23(又は消火車24)は、地上システムの命令により、別の窯(例えば窯14B)から再度赤熱コークスCを受けるためにレール33上を移動して、その窯の側面にて停止する。
【0028】
さらに、押出機22及びガイド車25も、地上システムの命令によりレール32及びレール35上を移動し、バケット車23(又は消火車24)が位置する前述の窯の側面にて停止する。全移動機22〜25が所定の位置に停止したことを地上システムが確認したら、地上システムは窯出し作業を開始する命令を出す。このような作業を繰り返して、コークス炉10の操業が行われる。
【0029】
上記のように、コークス炉10の操業においては、上記の各種移動機21〜25をコークス炉10の所定の位置に移動させて停止させた上で、赤熱コークスCの窯出し,消火等の各種作業が行われる。例えば、赤熱コークスCの窯出し作業を行う際には、炉団を構成する複数の窯のうちの特定の窯に、押出機22,バケット車23(又は消火車24),ガイド車25が全て配置されている必要がある。そして、各種移動機21〜25の無人自動運転を行なうためには、レール31〜35上を移動する各種移動機21〜25を所定の位置に自動停止させることが要求されるので、前述したように、停止中又は移動中の各種移動機21〜25の現在位置を正確に検出する位置検出装置が、各種移動機21〜25にそれぞれ備えられている。
【0030】
この位置検出装置は、移動機21〜25の現在位置を検出するものであり、移動機21〜25の現在位置を示す位置情報を出力する位置情報出力手段と、位置情報出力手段により出力された該移動機21〜25の位置情報の誤差を修正する誤差修正手段と、を備えている。位置情報出力手段は、移動機21〜25に搭載され該移動機21〜25の基準位置からの変位量を測定するデコーダを備えているので、移動機21〜25の絶対位置を示す位置情報を出力することができる。よって、移動機21〜25の位置検出を絶対番地方式により行うことができる。
【0031】
また、誤差修正手段は、移動機21〜25のレール31〜35上又はレール31〜35近傍の所定位置に設置された基準標識と、移動機21〜25に搭載され基準標識を検出する非接触式センサと、非接触式センサにより基準標識を検出した場合には、その時点において位置情報出力手段から出力された移動機21〜25の位置情報を、基準標識に予め付与された基準位置情報に置換する位置情報置換手段と、を備えている。
【0032】
上記のような位置検出装置の位置情報出力手段の具体例を、移動機が押出機22である場合を例にして、図1のA部を拡大して示した図3を参照しながら説明する。押出機22には、回転角度を測定し回転角度の絶対値を出力するアブソリュート回転角度検出装置41(例えばアブソコーダ(登録商標))と、押出機22の軌道である押出機用レール32に接し押出機22の移動に伴って回転するローラ42(例えばメジャーリングロール)と、アブソリュート回転角度検出装置41とローラ42とを接続する自在継手43と、が設置されている。なお、アブソリュート回転角度検出装置41が、本発明の構成要件であるデコーダに相当する。また、デコーダとして、ローラ42の回転数を測定する回転検出装置を用いてもよい。
【0033】
押出機22が移動すると、それに伴ってローラ42が回転し、ローラ42の回転が自在継手43によってアブソリュート回転角度検出装置41に伝達されて、アブソリュート回転角度検出装置41によりローラ42の絶対的な回転角度(ローラ42の基準角度位置からの変位角度)、すなわちアブソリュート信号が出力される。位置情報出力手段は、演算処理部を備えており、該演算処理部には所定回転角度当たりの移動距離が設定されているので、アブソリュート回転角度検出装置41から出力された回転角度の値を受けた演算処理部が、押出機22の基準位置からの変位量(移動距離)を算出し、押出機22の現在位置を求める。押出機22が未だ移動していない場合は、押出機22の現在位置は基準位置(原点)であるという結果が出る。
【0034】
このようにして得られた押出機22の現在位置を示す位置情報が、位置情報出力手段から押出機22の機上システムに出力され、この機上システムから無線により地上システムに送られる。そして、地上システムは、送られたその位置情報に基づいて命令を出し、押出機22に搭載された押出機用駆動装置を駆動して、押出機22を移動させる。押出機22の移動中においても、位置検出装置による押出機22の現在位置の検出は逐次行われるので、押出機22が目的の位置まで移動したら、地上システムは押出機22を停止させる。なお、装炭車21,バケット車23(又は消火車24),及びガイド車25にも、同様の位置情報出力手段が設置されていて、同様の操作が行われるようになっている。
【0035】
このように、位置検出装置による位置情報に基づいて、押出機22等の各種移動機の位置が管理されている。このような移動機21〜25の位置検出によれば、アブソリュート回転角度検出装置41のようなデコーダが安価であることから、必要な機器の費用が安価である。また、誘導無線方式のように、移動機21〜25の全軌道に沿って機器を設置する必要がないので、工事の費用が安価である。
【0036】
ただし、位置情報出力手段から出力される位置情報、すなわちデコーダによる測定値には、誤差が生じるおそれがある。例えば、図3のような位置情報出力手段の場合には、押出機用レール32とローラ42との間に生じる滑り等により、アブソリュート回転角度検出装置41による測定値に誤差が生じるおそれがある。コークス炉10の操業を続けるうちに、誤差が蓄積され大きくなると、コークス炉10の操業に不都合が生じるおそれがあるので、この誤差を修正する必要がある。本発明の位置検出装置は誤差修正手段を備えているので、誤差を随時修正して、コークス炉10の操業に不都合が生じることを防ぐことができる。
【0037】
ここで、位置情報出力手段により出力された移動機の位置情報の誤差を修正する誤差修正手段の具体例を、移動機が押出機22である場合を例にして、図4を参照しながら説明する。図4の(a)は、誤差修正手段を構成する基準標識と非接触式センサが対向している状態を、レールに沿う方向から見た図であり、(b)は押出機に搭載された非接触式センサの正面図(窯側から見た図)である。
【0038】
誤差修正手段は、押出機用レール32上又は押出機用レール32近傍の所定位置に設置された基準標識51と、押出機22に搭載され基準標識51を検出する非接触式センサ52と、図示しない演算処理部からなる位置情報置換手段と、を備えている。1箇所に設置される基準標識51及び非接触式センサ52の個数は、図4ではそれぞれ4個となっているが、1個でもよいし、4個以外の複数でもよい。
【0039】
基準標識51は、押出機22に搭載された非接触式センサ52によって検出が可能であれば、押出機用レール32上に設置しても差し支えないし、押出機用レール32近傍のどこに設置しても差し支えない。例えば、図4のように、コークス炉10(窯)の炉壁のうち、押出機22に対向する壁面に設置してもよい。
そして、非接触式センサ52は押出機22に搭載され、押出機22が押出機用レール32上を移動し、基準標識51と非接触式センサ52とが対向した際に、非接触式センサ52が基準標識51を検出できるようになっている。非接触式センサ52としては近接スイッチが好ましく、基準標識51としては、近接スイッチ用の標準検出物体が好ましい。近接スイッチは、標準検出物体に接近したことを非接触で検出するセンサである。
【0040】
近接スイッチ及び標準検出物体の種類は特に限定されるものではないが、JIS C 8201−5−2に規定された近接スイッチ、すなわち、金属の存在を検出する誘導形近接スイッチ、金属及び非金属物体の存在を検出する静電容量形近接スイッチ、音響反射物体を検出する超音波形近接スイッチ、物体の存在を検出する光電形近接スイッチ、及び磁気形近接スイッチを用いることが好ましい。
【0041】
押出機22が押出機用レール32上を移動している際には、押出機22の位置情報が位置情報出力手段から随時出力され、押出機22の機上システムから地上システムに無線により送られるが、押出機22に搭載された非接触式センサ52が基準標識51を検出した際には、誤差修正手段の位置情報置換手段が作動する。すなわち、基準標識51には、基準標識51が設置されている絶対位置を示す位置情報が基準位置情報として予め付与されているので、非接触式センサ52が基準標識51を検出した際には、その時点において位置情報出力手段から出力され機上システムに届いた押出機22の位置情報(誤差が生じているおそれのある位置情報)が、位置情報置換手段により前記基準位置情報に置換され、地上システムに無線により送られる。
【0042】
押出機22の軌道上の所定の位置に基準標識51を設置しておけば、誤差修正手段による誤差修正が随時行われるため、押出機22の現在位置を正確に検出することができ、信頼性の高い位置検出が可能である。基準標識51の設置箇所数は特に限定されるものではないが、軌道上の複数の位置に設置することが好ましい。設置箇所数が多い方が誤差修正が多く行われるため、位置検出の信頼性がより高くなる。なお、装炭車21,バケット車23(又は消火車24),及びガイド車25にも、同様の誤差修正手段が設置されていて、同様の操作が行われるようになっている。
【0043】
基準標識51の設置位置(軌道上の位置)は特に限定されるものではないが、例えば各炉団の端部(入口又は出口)が好ましい。コークス炉10の操業形態にもよるが、通常は炉団毎に窯出し作業を行っていくため、各炉団間に設置されている石炭塔の横を押出機22等の移動機が通過するので、石炭塔の壁面のうち炉団に近接する部分に基準標識51を設置すれば、各炉団の端部に基準標識51を設置したことになる(図1,5を参照)。
【0044】
また、窯の壁面に基準標識51を設置することが好ましい。そうすれば、移動機21〜25が窯の横に停止し窯出し作業を行う際にも、誤差修正手段による誤差修正を行うことができる。基準標識51は、1つの窯に設置してもよいし、複数の窯に設置してもよいし、全ての窯に設置してもよい。また、各炉団の端部と窯の壁面の両方に、基準標識51を設置してもよい。
【0045】
基準標識51を軌道上の複数の位置に設置した場合には、非接触式センサ52が基準標識51を検出した際に、軌道上のどの位置に設置された基準標識51であるのかを識別できることが好ましい。識別方法は特に限定されるものではないが、1箇所に設置する基準標識51の個数やその配置パターンによって識別する方法が好ましい。この識別方法について以下に説明する。
【0046】
例えば、図4のように、4個の非接触式センサ52を用いた場合は、基準標識51を設置する箇所によって基準標識51の個数を変化させれば、非接触式センサ52により検出された基準標識51の個数によって、軌道上のどの設置箇所であるかを識別することができる。また、同数の基準標識51を設置した場合でも、配置パターンの違いによって識別することができる。例えば、1個の基準標識51を設置した場合であれば、図4(b)の左上の非接触式センサ52により検出された場合と、右下の非接触式センサ52により検出された場合とで、軌道上のどの設置箇所であるかを識別することができる。例えば4個の非接触式センサ52を用いた場合は、基準標識51の個数と配置パターンを組み合わせれば、15の設置箇所を識別することができる。
【0047】
さらに、5個の非接触式センサ52を用いた場合の例を、図5を参照しながら説明する。図5の例においては、基準標識51は各炉団の両端部(入口及び出口)に設置されており、設置箇所によって基準標識51の個数と配置パターンが異なっているので(図5の上側に示す配置パターン図を参照)、これにより設置箇所を識別することができるようになっている。5個の非接触式センサ52は縦一列に並べられており、上方の3個で炉団を識別し、下方の2個で入口か出口か(図5における右側か左側か)を識別するようになっている。
【0048】
すなわち、上方の3個の非接触式センサ52が全て基準標識51を検出すれば、第1炉団であると識別され、全て基準標識51を検出しなければ、第5炉団であると識別される。また、上方の3個の非接触式センサ52のうち下方の2個が基準標識51を検出すれば、第2炉団であると識別され、上方の3個の非接触式センサ52のうち最上方と最下方の2個が基準標識51を検出すれば、第3炉団であると識別される。
【0049】
さらに、下方の2個の非接触式センサ52が全て基準標識51を検出すれば、各炉団の右側の端部であると識別され、下方の2個の非接触式センサ52のうち上方の1個のみが基準標識51を検出すれば、各炉団の左側の端部であると識別される。
このようにして、基準標識51の個数と配置パターンの組み合わせにより、基準標識51の設置箇所を識別できる。各設置箇所により異なる基準位置情報が付与されているので、非接触式センサ52が基準標識51を検出した際には、その際に位置検出装置から出力された位置情報が、識別された設置箇所に応じた基準位置情報、すなわち窯毎に決められた位置情報に置換される。
【0050】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、移動機21〜25の軌道近傍に基準標識51を設置し、移動機21〜25に非接触式センサ52を搭載したが、その逆でも差し支えない。すなわち、移動機21〜25の軌道近傍に非接触式センサ52を設置し、移動機21〜25に基準標識51を搭載しても差し支えない。
【0051】
また、本実施形態においては、移動機21〜25の全てにデコーダ(すなわち位置情報出力手段)を搭載したが、一部の移動機のみ(例えば押出機22のみ)にデコーダ(すなわち位置情報出力手段)を搭載し、他の移動機については誘導無線を用いて位置情報を得てもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 コークス炉
11〜15 炉団
14A〜14E 窯
21 装炭車
22 押出機
23 バケット車
24 消火車
25 ガイド車
27 乾式消火設備
28 湿式消火設備
31〜35 レール
41 アブソリュート回転角度検出装置
42 ローラ
51 基準標識
52 非接触式センサ
C 赤熱コークス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の操業に使用される移動機の現在位置を検出する位置検出装置において、
前記移動機に搭載され前記移動機の基準位置からの変位量を測定するデコーダを備え、前記移動機の現在位置を示す位置情報を出力する位置情報出力手段と、
前記位置情報出力手段により出力された前記移動機の位置情報の誤差を修正する誤差修正手段と、
を備え、
前記誤差修正手段は、
前記移動機の軌道上又は軌道近傍の所定位置に設置された基準標識と、
前記移動機に搭載され前記基準標識を検出する非接触式センサと、
前記非接触式センサにより前記基準標識を検出した場合には、その時点において前記位置情報出力手段から出力された前記移動機の位置情報を、前記基準標識に予め付与された基準位置情報に置換する位置情報置換手段と、
を備えることを特徴とするコークス炉の移動機の位置検出装置。
【請求項2】
前記デコーダは、前記移動機の移動に伴って回転するローラの回転数又は回転角度を測定する回転検出装置であることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉の移動機の位置検出装置。
【請求項3】
前記コークス炉は、複数の窯を並設してなる炉団を備えており、前記基準標識は前記炉団の端部及び前記窯の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコークス炉の移動機の位置検出装置。
【請求項4】
前記移動機が、前記コークス炉に原料石炭を装入する装炭車、前記コークス炉からコークスを押し出す押出機、前記コークスを乾式消火設備に搬送するバケット車、前記コークスを湿式消火設備に搬送する消火車、及び、前記コークス炉から押し出された前記コークスを前記バケット車又は前記消火車に案内するガイド車のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコークス炉の移動機の位置検出装置。
【請求項5】
コークス炉の操業に使用する移動機の現在位置を示す位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づいて前記移動機を所定の位置に移動させて前記コークス炉の各種作業を行うに際して、
前記移動機に搭載され前記移動機の基準位置からの変位量を測定するデコーダを備える位置情報出力手段により、前記位置情報を取得するとともに、
前記移動機の軌道上又は軌道近傍の所定位置に基準標識を設置し、前記移動機に搭載された非接触式センサにより前記基準標識を検出したら、その時点において前記位置情報出力手段から出力された前記移動機の位置情報を、前記基準標識に予め付与された基準位置情報に置換して前記移動機の位置情報の誤差を修正することを特徴とするコークス炉の移動機の位置検出方法。
【請求項6】
前記デコーダは、前記移動機の移動に伴って回転するローラの回転数又は回転角度を測定する回転検出装置であることを特徴とする請求項5に記載のコークス炉の移動機の位置検出方法。
【請求項7】
前記コークス炉は、複数の窯を並設してなる炉団を備えており、前記基準標識を前記炉団の端部及び前記窯の少なくとも一方に配置することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のコークス炉の移動機の位置検出方法。
【請求項8】
前記移動機が、前記コークス炉に原料石炭を装入する装炭車、前記コークス炉からコークスを押し出す押出機、前記コークスを乾式消火設備に搬送するバケット車、前記コークスを湿式消火設備に搬送する消火車、及び、前記コークス炉から押し出された前記コークスを前記バケット車又は前記消火車に案内するガイド車のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のコークス炉の移動機の位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38052(P2011−38052A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189247(P2009−189247)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】