説明

ゴムストリップの製造装置、及びこれを用いた製造方法

【課題】断続的に形成されるゴムストリップの形状を安定させる。
【解決手段】ゴムストリップGSを断続的に形成するゴムストリップの製造装置1である。投入されたゴムGを混練りして予成形口Yから間欠的に押し出させる押出しヘッド7を取り付けたゴム押出機2、上下のカレンダロール8a、8b間で最終厚さのゴムストリップGSに圧延成形するカレンダロール手段10と、前記上下のカレンダロール8a、8b間を接近・離間させる状態を選択的に切り替えるロール間隔切換手段9とを具えるカレンダ機3、及び、ギヤポンプ6の回転及びカレンダロール8Aの回転のオン、オフをそれぞれ制御しうる制御手段4を具える。前記制御手段4は、前記カレンダロール8Aの回転のオフに先駆けて、前記ロール間隔切換手段9を作動し、前記上下のカレンダロール8a、8bを離間状態にさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断続的に形成されるゴムストリップの形状を安定させたゴムストリップの製造装置及びこれを用いた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばトレッドゴム、サイドウォールゴム、クリンチゴムなどのタイヤ用ゴム部材を長尺なテープ状のゴムストリップとして、円筒状の成形フォーマ上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより、所望の断面形状に近いストリップ巻付け体を形成する所謂ストリップワインド方式が提案されている。
【0003】
このようなストリップワインド方式に使用されるゴムストリップの製造装置は、図5に示されるように、ゴムgを予成形して押出すゴム押出機bと、前記予成形されたゴムg1を上下のカレンダロールc1、c2間で最終厚さのゴムストリップgsに圧延成形するカレンダロール手段dとからなる。そして、該カレンダロール手段dから吐出されたゴムストリップgsは、コンベアeを含むアプリケータfによって成形フォーマhまで搬送されて巻き付けられることによりタイヤ用ゴム部材tが製造される。この装置では、形成されたタイヤ用ゴム部材を成形フォーマhから取外し、次の形成を開始するまでの間、ゴムストリップの供給を停止する必要がある。即ち、前記製造装置では、ゴムストリップを断続的に形成する必要がある。
【0004】
しかしながら、前記圧延成形時の加圧状態でカレンダロールc1、c2を停止させると、該カレンダロールc1、c2間のゴムストリップgsには、クリープが生じてゴム厚さが次第に薄くなり、運転を再開する際にゴムが切断し易くなるという問題があった。また、ゴム押出機bとカレンダロール手段dとの起動、停止のタイミングによっても、ゴムストリップgsに大きな引張り応力が作用して、ゴムストリップgsが切断するおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−103199号公報
【特許文献2】特開2004−237715号公報
【特許文献3】特開2004−202750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ゴムを押し出す押出しヘッドを取り付けたゴム押出機、上下のカレンダロール間が接近して前記圧延成形を行う接近状態と、前記上下のカレンダロール間が離間して圧延成形を停止させる離間状態とを選択的に切り替えるロール間隔切換手段を具えるカレンダ機、ギヤポンプの回転のオン、オフ、カレンダロールの回転のオン、オフをそれぞれ制御しうる制御手段を具えることを基本として、断続的に形成されるゴムストリップの形状を安定させたゴムストリップの製造装置及びこれを用いた製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ゴムストリップを断続的に形成するゴムストリップの製造装置であって、投入されたゴムを前端の吐出口に向かって混練りしながら押進するスクリュ軸を有するゴム押出機本体の前端部に、ゴムを予成形する予成形口を開口させた口金、及び前記吐出口と予成形口との間に配されるギヤポンプを具え、かつ該ギヤポンプの回転のオン、オフに応じて前記吐出口からのゴムを前記予成形口から断続的に押し出させる押出しヘッドを取り付けたゴム押出機、前記押出しヘッドの前方に配され、かつ少なくとも一方が回転駆動される上下のカレンダロールを有するとともにこの上下のカレンダロール間で前記予成形口から予成形されて押し出されるゴムを最終厚さのゴムストリップに圧延成形するカレンダロール手段、及び前記上下のカレンダロールの一方を昇降移動させることにより上下のカレンダロール間が接近して前記圧延成形を行う接近状態と、前記上下のカレンダロール間が離間して圧延成形を停止させる離間状態とを選択的に切り替えるロール間隔切換手段を具えるカレンダ機、並びに前記ギヤポンプの回転のオン、オフ、カレンダロールの回転のオン、オフをそれぞれ制御しうる制御手段を具えるとともに、前記制御手段は、前記カレンダロールの回転のオフに先駆けて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを離間状態にさせることを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記制御手段は、前記カレンダロールの回転のオンよりも遅らせて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを接近状態にさせることを特徴とする請求項1記載のゴムストリップの製造装置である。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記カレンダロールは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有し、かつギヤポンプは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有するとともに、前記制御手段は、前記カレンダロールの減速領域の時間t2cを、ギヤポンプの減速領域の時間t2gよりも短くすることを特徴とする請求項1又は2記載のゴムストリップの製造装置である。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記制御手段は、起動時、前記カレンダロールの回転をギヤポンプの回転のオンよりも遅らせてオンさせるとともに、停止時、前記カレンダロールの減速領域の開始を、ギヤポンプの減速領域の開始よりも遅らせることを特徴とする請求項3記載のゴムストリップの製造装置である。
【0011】
また請求項5記載の発明は、ゴムストリップを断続的に形成するゴムストリップの製造方法であって、投入されたゴムを前端の吐出口に向かって混練りしながら押進するスクリュ軸を有するゴム押出機本体の前端部に、ゴムを予成形する予成形口を開口させた口金、及び前記吐出口と予成形口との間に配されかつ前記吐出口からのゴムをキヤ回転に応じて前記予成形口から断続的に押し出させるギヤポンプを具えた押出しヘッドを取り付けたゴム押出機、前記押出しヘッドの前方に配され、かつ少なくとも一方が回転駆動される上下のカレンダロールを有するとともにこの上下のカレンダロール間で前記成形口から予成形されて押し出されるゴムを最終厚さのゴムストリップに圧延成形するカレンダロール手段、及び前記上下のカレンダロールの一方を昇降移動させることにより上下のカレンダロール間が接近して前記圧延成形を行う接近状態と、前記上下のカレンダロール間が離間して圧延成形を停止させる離間状態とを選択的に切り替えるロール間隔切換手段を具えるカレンダ機、並びに前記ギヤポンプの回転開始、回転停止、カレンダロールの回転開始、回転停止をそれぞれ制御しうる制御手段を具える製造装置を用いるとともに、前記カレンダロールの回転停止に先駆けて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを離間状態にさせることを特徴とするゴムストリップの製造方法である。
【0012】
また請求項6記載の発明は、前記カレンダロールの回転開始に遅らせて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを接近状態にさせることを特徴とする請求項5記載のゴムストリップの製造方法である。
【0013】
また請求項7記載の発明は、前記カレンダロールは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有し、かつギヤポンプは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有するとともに、かつ前記カレンダロールの減速領域の時間t2cは、ギヤポンプの減速領域の時間t2gよりも短くすることを特徴とする請求項5又は6記載のゴムストリップの製造方法である。
【0014】
また請求項8記載の発明は、前記カレンダロールの回転は、ギヤポンプの回転のオンよりも遅らせてオンさせて起動するとともに、前記カレンダロールの減速領域の開始は、ギヤポンプの減速領域の開始よりも遅らせて停止することを特徴とする請求項7記載のゴムストリップの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴムストリップの製造装置は、叙上の如く、カレンダロールの回転のオフに先駆けて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを離間状態にさせる制御手段を具える。これにより、カレンダロールの回転のオフ状態において、上下のカレンダロール間の予成形されたゴムは、上下のカレンダロールの加圧から解放されて、クリープによるゴム厚さの減少が抑えられる。従って、本発明のゴムストリップの製造装置は、停止時のゴムストリップの切断を抑制でき、安定して断続的にゴムストリップを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示すゴムストリップの製造装置の側面図である。
【図2】本発明で成形するタイヤの左半分断面図である。
【図3】(a)は、図3のA−A視拡大断面図、(b)は、同B−B視拡大断面図である。
【図4】(a)は、ギヤポンプの回転状態、(b)は、カレンダロールの回転状態、(c)は、カレンダロールの接離状態を示すグラフである。
【図5】タイヤ用ゴム部材の製造装置の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明される。
図1に示されるように、ゴムストリップの製造装置1は、例えば、円筒状の成形フォーマ(図4に示す)h上で螺旋状に巻回してタイヤ用ゴム部材t(図4に示す)を製造するためのゴムストリップGSを形成する製造装置1である。本実施形態では、このゴムストリップの製造装置1は、タイヤT(図2に示す)を製造する生産ラインの一部を構成する。
【0018】
図2に示されるように、前記タイヤTは、カーカスA1やブレーカA2などのコード層の他に、主にインナーライナゴムGa、サイドウォールゴムGb、チェーファゴムGc、ブレーカクッションGd及びトレッドゴムGeなどの複数種のゴム部材によって構成されている。そして、前記ゴムストリップの製造装置1は、前記インナーライナゴムGa、サイドウォールゴムGb及びチェーファゴムGcなどの異なるゴム配合のゴムストリッブ(総称してGSという)を形成するために用いられる。そして、これらゴムストリップGSは、順次成形フォーマh上に巻回して形成され、シェーピング前の円筒状生タイヤを形成する。
【0019】
図1に示されるように、ゴムストリップの製造装置1は、投入されたゴムGを予成形して断続的に押出すゴム押出機2、このゴム押出機2の吐出側に配されかつ予成形されたゴムG2を最終厚さのゴムストリップGSに圧延成形するカレンダ機3、及びゴム押出機2とカレンダ機3とをそれぞれ制御する制御手段4を具える。
【0020】
また、本実施形態のゴムストリップの製造装置1は、タイヤ用ゴム部材tの形成サイクルに合わせて断続的に作動し必要時のみゴムストリップGSを形成する。
【0021】
前記ゴム押出機2は、投入されたゴムGを前端の吐出口Hに向かって混練りしながら押すゴム押出機本体5と、前記ゴム押出機本体5の前側に配され、かつ定量的にゴムを押出しうるギヤポンプ6と、該ギヤポンプ6から押出されたゴムG1を予成形する押出しヘッド7とを具える。
【0022】
前記ゴム押出機本体5は、ゴムGの投入口5cが設けられたシリンダ5a内にスクリュ軸5bを収納した周知構造をなし、電動機(図示せず)により前記スクリュ軸5bを回転駆動させることによって、投入されたゴムGを混練しながらシリンダ5a前端の吐出口Hから吐出させる。
【0023】
前記ギヤポンプ6は、ケーシング6a内に押出しギア6bが設けられた周知な構造の定容積押出し機であって、電動機M1により前記押出しギア6bを回転駆動させることによって、混練りされたゴムG1をケーシング6aの前端から押出しヘッド7に吐出する。
【0024】
前記押出しヘッド7は、前記ギヤポンプ6の後端側に交換可能に連結されたブロック状のヘッド本体7aと、このヘッド本体7aに交換自在に取り付けられるとともに前端に予成形口Yを開口させた口金7bとを具える。従って、混練りされた前記ゴムG1は、押出しヘッド7によって、予成形されたゴムG2に成形される。
【0025】
本実施形態の予成形口Yは、図1及び3(a)に示されるように、横長矩形をなす比較的小さな開口である。また、前記ゴムG2は、この予成形口Yとほぼ同じ矩形状の断面形状に成形されて外部に押し出しされる。このようなゴム押出機2は、比較的小出力のもので足りる。
【0026】
予成形されたゴムG2の厚さt1及び幅w1は特に限定されないが、小さすぎると成形精度が悪化しやすく、大きすぎるとゴム部材に所定の断面形状を与えるのが困難になる傾向がある。このような観点より、前記ゴムG2の厚さt1は、好ましくは0.4mm以上が望ましく、また好ましくは6mm以下が望ましい。また、幅w1は、好ましくは4mm以上が望ましく、また好ましくは40mm以下が望ましい。ただし、予成形されたゴムG2の断面形状は、上述のような矩形状に限定されるものではない。
【0027】
また、図1に示されるように、前記カレンダ機3は、上下のカレンダロール8a、8b(総称するときカレンダロール8Aという)間で前記予成形されたゴムG2をゴムストリップGSに成形するカレンダロール手段10と、上下のカレンダロール8a、8b間を接近状態又は離間状態に切り替えるロール間隔切換手段9とを具える。
【0028】
前記カレンダロール手段10は、実質的に回転軸が平行に配置された上下のカレンダロール8a、8bと、前記押出しヘッド7の前端に配されかつ内部にカレンダロール8Aを回動及び昇降自在に支持するフレーム本体8cと、カレンダロール8Aを回転させる、例えば電動機M2とを含む。
【0029】
前記ロール間隔切換手段9は、本実施形態では、前記フレーム本体8cに固着される例えばシリンダ等の直線動作用のアクチュエータを含み、そのロッド9a端に上のカレンダロール8aを軸支する軸受け箱8dが取付けられる。そして、該ロッド9aを伸縮させることにより、上のカレンダロール8aを上下に昇降移動させることができる。これにより、上下のカレンダロール8a、8b間が接近して圧延成形を行う接近状態と、上下のカレンダロール8a、8b間が離間して圧延成形を停止させる離間状態とを選択的に切り替え得る。本実施形態のアクチュエータは、例えば、図示しない電磁弁や電空比例弁等の少なくとも1つからなるレギュレータを使用して流体圧により制御される。
【0030】
前記ゴムストリップGSの厚さt2及び幅w2(図3(b)に示される)は、特に限定されないが、小さすぎるとゴムストリップGSの強度が低下して成形フォーマhへの巻付け中に破断するおそれがあり、逆に大きすぎると、ゴム部材の断面形状を自由度が損なわれる傾向がある。このような観点より、前記ゴムストリップGSの厚さt2は、好ましくは0.3mm以上が望ましく、また好ましくは5mm以下が望ましい。また、ゴムストリップGSの幅w2は、好ましくは5mm以上、が望ましく、また好ましくは50mm以下が望ましい。
【0031】
前記制御手段4として、例えばプログラマブルシーケンサ、マイコン、パーソナルコンピュータ、その他の制御デバイスを用いることができる。制御手段4によって、前記ギヤポンプ6の回転のオン、オフ、カレンダロール8Aの回転のオン、オフ、及びロール間隔切換手段9の切換え等を制御する。
【0032】
以上のように構成されるゴムストリップの製造装置1による製造方法を下記に説明する。
ゴムストリップの製造装置1の停止状態では、ゴム押出機2及びカレンダ機3が、停止し、かつ上下のカレンダロール8a、8bは離間状態にある。
【0033】
この離間状態では、上下のカレンダロール8a、8b間の距離tAは、前記接近状態にある上下のカレンダロール8a、8b間の距離tBの150%以上、かつ予成形されたゴムG2の厚さt1よりも小に設定されるのが望ましい。これにより、カレンダロール8A間に挟まれた部分のゴムストリップGSは、停止状態において加圧が緩和されるため、クリープによる厚さ減少が抑制され、長時間停止した場合にも、十分なゴム厚さを維持でき、始動時におけるゴムの切断を防止することができる。また、離間状態でも、ゴムストリップGSが、カレンダロール8A間に小さな加圧状態で挟まれているため、カレンダロール8Aを回転させた時に、ゴムストリップGSをスムーズに前方へ移動させることができる。なお、本明細書において、前記「離間状態」とは、全てこの状態を指すものとする。なお、本実施形態では、離間状態におけるカレンダロール8A間は、0.04〜0.06MPaに設定され上記距離tAが確保される。また、接近状態におけるカレンダロール8A間は、0.7〜0.9MPaの加圧状態に設定される。
【0034】
そして、この停止状態から、ゴムストリップの製造装置1の運転が開始される。本実施形態では、ギヤポンプ6と、カレンダロール手段10と、ロール間隔切換手段9とを制御手段4によって制御運転させてゴムストリップGSを製造する。なお、前記ゴム押出機本体5の運転・停止等についても、前記制御手段4によって制御させてよいのはいうまでも無い。
【0035】
図4(a)乃至(c)には、縦軸には、各機器(ギヤポンプ6、カレンダロール8A)の各動作状態、横軸には、ギヤポンプ6の回転オンからの経過時間を表したグラフが示される。なお、縦軸は、各動作状態の変化を表し、状態の変化量を表すものではない。図4(a)に示されるように、ギヤポンプ6は、ギヤポンプ6の押出しギア6bの回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までのギヤポンプ加速領域p1と、定回転状態から回転がオフする停止時までのギヤポンプ減速領域p3と、前記定回転状態におけるギヤポンプ定速領域p2とを有する。
【0036】
また、図4(b)に示されるように、カレンダロール8Aは、カレンダロール8Aの回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までのカレンダ加速領域r1と、定回転状態から回転がオフする停止時までのカレンダ減速領域r3と、前記定回転状態におけるカレンダ定速領域r2とを有する。また、図4(c)に示されるように、カレンダロール8Aは、ロール間隔切換手段9を作動させて、接近状態と離間状態とに切り替えられる。
【0037】
図4(a)、(b)に示されるように、本実施形態では、ギヤポンプ加速領域p1が、カレンダ加速領域r1の開始よりも前に開始される。これにより、口金7bから吐出されたゴムG2は、先ず、ギヤポンプ6による押圧力を受けるためその厚さが確保されて、ゴムG2の切断が防止される。しかしながら、ギヤポンプ加速領域p1とカレンダロール加速領域r1との開始時間の差K1を大きくとると、ゴムG2をスムーズに前方に搬送できないおそれがある。このため、ギヤポンプ加速領域p1とカレンダロール加速領域r1との開始時間の差K1は、好ましくは0.01〜0.1秒であるのが望ましい。
【0038】
また、サイドウォールゴムGbなどの天然ゴム系のゴムストリップGSでは、シュリンクが大きくなるため、カレンダロール8Aの前記加速領域の時間t1cを、ギヤポンプ6の前記加速領域の時間t1gよりも長くするのが望ましい。これにより、起動時において、口金7bからカレンダロール8AまでのゴムG2に作用する引張り応力を小さくでき、さらにゴムG2の切断が防止される。なお、前記加速領域の時間t1cは、口金7bからカレンダロール8AまでのゴムG2に張力や弛みがなくなる程度に経験則的に設定されるが、具体的には、加速領域の時間t1cは、好ましくは加速領域の時間t1gの1.2〜2.5倍が望ましい。なお、トレッドゴムGe等の合成ゴム系のゴムストリップGSでは、押出ヘッド7の圧力から解放されかつ放冷されてゴム容積が大きくなるのを抑制するため、カレンダロール8Aの前記加速領域の時間t1cを、ギヤポンプ6の前記加速領域の時間t1gよりも短くするのが望ましく、具体的には、加速領域の時間t1cは、好ましくは前記時間t1gの0.8倍よりも大かつ1.0倍よりも小が望ましい。
【0039】
また、図(b)、(c)に示されるように、カレンダロール加速領域r1において、カレンダロール8Aを接近状態にするのが望ましい。これにより、カレンダロール8Aの停止時に該カレンダロール8A間に挟まれていた部分のゴムストリップGSが移動済みとなり、該挟まれていた部分のゴムが再度、カレンダロール8Aに挟まれて、圧延状態になることがないため、ゴムストリップGSの切断が防止される。しかしながら、カレンダロール8Aの回転のオンと接近状態の開始との時間の差K2が大きくなると、ゴムストリップGSの厚さが所望の厚さより過度に大きくなり易い。このため、カレンダロール8Aの回転のオンと接近状態の開始との時間の差K2は、好ましくは0.01〜0.1秒であるのが望ましい。
【0040】
また、図4(a)、(b)に示されるように、停止時、カレンダロール8Aの減速領域r3の開始は、ギヤポンプ6の減速領域p3の開始よりも遅らせるのが望ましい。即ち、ゴムG2の粘性作用により、ギヤポンプ6の減速領域p3の開始直後から一定時間は、口金7bから定回転状態におけるゴム量を吐出する。このため、カレンダロール8Aの減速領域r3の開始とギヤポンプ6の減速領域p3の開始を同時にすると、ゴムG2をカレンダロール8Aから前方にスムーズに搬送できず、ゴムストリップGSの厚さが所望の厚さより過度に大きくなるおそれがある。また、ギヤポンプ6とカレンダロール8Aとは、離間距離を有するため、ゴム容積の減少したゴムG2がギヤポンプ6からカレンダロール8Aに達するには、減速領域p3の開始直後から一定時間経過した後になる。従って、カレンダロール8Aの減速領域r3の開始は、ギヤポンプ6の減速領域p3の開始から吐出されるゴム量が減少し始める時間分と、そのゴムがカレンダロール8Aに到着する時間分とを合算した時間分を遅らせることにより、ゴムストリップGSをスムーズに搬送してその厚さを所望の厚さにすることができる。なお、カレンダロール8Aの減速領域r3の開始をギヤポンプ6の減速領域p3の開始よりも遅らせすぎると、ゴムG2には、大きな引張り力が作用するため、ゴムG2が切断される。このため、カレンダロール8Aの減速領域r3の開始と、ギヤポンプ6の減速領域p3の開始との時間の差K3は、ゴムの材質やゴムG2の形状などによって、経験則的に適宜設定されるが、大よそ0.2〜0.4秒程度が望ましい。
【0041】
また、図4(b)、(c)に示されるように、カレンダロール8Aの回転のオフに先駆けて、カレンダロール8Aを離間状態にする必要がある。即ち、カレンダロール8Aの減速領域r3において、カレンダロール8Aを離間状態にさせる。これにより、クリープが抑制されてゴムストリップGSのゴム厚さが確保されるとともに、前記製造装置1の停止時に、口金7bからカレンダロール8AまでのゴムG2に、適度な引張り応力が作用して、シュリンクが低減される。なお、ロール間隔切換手段9による離間状態への切り替えは、カレンダロール8Aの表面速度voが、50〜150mm/秒まで減速されたときに行われるのが望ましい。
【0042】
また、図4(a)、(b)に示されるように、カレンダロール8Aの前記減速領域の時間t2cを、ギヤポンプ6の前記減速領域の時間t2gよりも短くするのが望ましい。具体的には、カレンダロール8Aの減速領域の時間t2cは、好ましくはギヤポンプの減速領域の時間t2gの0.6倍以上、かつ1.0倍よりも小が望ましい。これにより、口金7bからカレンダロール8AまでのゴムG2に作用する引っ張り応力が小さくなり、さらにゴムの切断が防止される。なお、ギヤポンプ6の回転のオフよりも、カレンダロール8Aの回転のオフを先に行うのが、より一層ゴムの切断を防止するのに役立つ。
【0043】
以上のように、前記制御手段4によって、その各工程運転や減速の開始がプログラム制御されているため、ゴムストリップGSに生じ易い、過度の引張り応力を抑制して、ゴム切断を防止することができる。従って、本実施形態のゴムストリップの製造装置1では、安定した形状のゴムストリップを断続的に製造できる。なお、カレンダロール8Aの加速領域及び減速領域の時間t1c、t2c及びギヤポンプ6の加速領域及び減速領域の時間t1g、t2gは、例えばインバータ等の周波数制御機によって制御するのが望ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0045】
1 ゴムストリップの製造装置
2 ゴム押出機
3 カレンダ機
4 制御手段
6 ギヤポンプ
7 押出しヘッド
8A カレンダロール
8a 上のカレンダロール
8b 下のカレンダロール
9 ロール間隔切換手段
10 カレンダロール手段
GS ゴムストリップ
G ゴム
Y 予成形口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムストリップを断続的に形成するゴムストリップの製造装置であって、
投入されたゴムを前端の吐出口に向かって混練りしながら押進するスクリュ軸を有するゴム押出機本体の前端部に、ゴムを予成形する予成形口を開口させた口金、及び前記吐出口と予成形口との間に配されるギヤポンプを具え、かつ該ギヤポンプの回転のオン、オフに応じて前記吐出口からのゴムを前記予成形口から断続的に押し出させる押出しヘッドを取り付けたゴム押出機、
前記押出しヘッドの前方に配され、かつ少なくとも一方が回転駆動される上下のカレンダロールを有するとともにこの上下のカレンダロール間で前記予成形口から予成形されて押し出されるゴムを最終厚さのゴムストリップに圧延成形するカレンダロール手段、及び前記上下のカレンダロールの一方を昇降移動させることにより上下のカレンダロール間が接近して前記圧延成形を行う接近状態と、前記上下のカレンダロール間が離間して圧延成形を停止させる離間状態とを選択的に切り替えるロール間隔切換手段を具えるカレンダ機、
並びに前記ギヤポンプの回転のオン、オフ、カレンダロールの回転のオン、オフをそれぞれ制御しうる制御手段を具えるとともに、
前記制御手段は、前記カレンダロールの回転のオフに先駆けて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを離間状態にさせることを特徴とするゴムストリップの製造装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記カレンダロールの回転のオンよりも遅らせて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを接近状態にさせることを特徴とする請求項1記載のゴムストリップの製造装置。
【請求項3】
前記カレンダロールは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有し、
かつギヤポンプは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有するとともに、
前記制御手段は、前記カレンダロールの減速領域の時間t2cを、ギヤポンプの減速領域の時間t2gよりも短くすることを特徴とする請求項1又は2記載のゴムストリップの製造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、起動時、前記カレンダロールの回転をギヤポンプの回転のオンよりも遅らせてオンさせるとともに、停止時、前記カレンダロールの減速領域の開始を、ギヤポンプの減速領域の開始よりも遅らせることを特徴とする請求項3記載のゴムストリップの製造装置。
【請求項5】
ゴムストリップを断続的に形成するゴムストリップの製造方法であって、
投入されたゴムを前端の吐出口に向かって混練りしながら押進するスクリュ軸を有するゴム押出機本体の前端部に、ゴムを予成形する予成形口を開口させた口金、及び前記吐出口と予成形口との間に配されかつ前記吐出口からのゴムをキヤ回転に応じて前記予成形口から断続的に押し出させるギヤポンプを具えた押出しヘッドを取り付けたゴム押出機、
前記押出しヘッドの前方に配され、かつ少なくとも一方が回転駆動される上下のカレンダロールを有するとともにこの上下のカレンダロール間で前記成形口から予成形されて押し出されるゴムを最終厚さのゴムストリップに圧延成形するカレンダロール手段、及び前記上下のカレンダロールの一方を昇降移動させることにより上下のカレンダロール間が接近して前記圧延成形を行う接近状態と、前記上下のカレンダロール間が離間して圧延成形を停止させる離間状態とを選択的に切り替えるロール間隔切換手段を具えるカレンダ機、
並びに前記ギヤポンプの回転開始、回転停止、カレンダロールの回転開始、回転停止をそれぞれ制御しうる制御手段を具える製造装置を用いるとともに、
前記カレンダロールの回転停止に先駆けて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを離間状態にさせることを特徴とするゴムストリップの製造方法。
【請求項6】
前記カレンダロールの回転開始に遅らせて、前記ロール間隔切換手段を作動し、前記上下のカレンダロールを接近状態にさせることを特徴とする請求項5記載のゴムストリップの製造方法。
【請求項7】
前記カレンダロールは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有し、
かつギヤポンプは、回転がオンする起動時から回転数が一定となる定回転状態までの加速領域と、定回転状態から回転がオフする停止時までの減速領域とを有するとともに、
前記カレンダロールの減速領域の時間t2cは、ギヤポンプの減速領域の時間t2gよりも短くすることを特徴とする請求項5又は6記載のゴムストリップの製造方法。
【請求項8】
前記カレンダロールの回転は、ギヤポンプの回転のオンよりも遅らせてオンさせて起動するとともに、
前記カレンダロールの減速領域の開始は、ギヤポンプの減速領域の開始よりも遅らせて停止することを特徴とする請求項7記載のゴムストリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254535(P2012−254535A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127573(P2011−127573)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】