説明

ゴムロールの製造装置及び製造方法

【課題】ゴムロールを金型から取り出すときの取出性を向上させる。
【解決手段】芯金20を同軸状に包囲するとともに、円筒状の被膜部材13を円筒状の内壁12Aに装着する第1金型12と、第1金型12の軸方向両端部に設けられ、芯金20及び被膜部材13を挟持する一対の第2金型14と、を備えたゴムロールの製造装置10であって、一対の第2金型14の少なくとも一方に、芯金20と被膜部材13との間に未加硫ゴムを注入するための注入口18を形成し、第1金型12の軸方向両端部の内壁12Aに、周方向に凹溝26を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムロールの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチューブ被覆ロール(ゴムロール)の製造は、円筒金型の内部にチューブと芯金を入れ、チューブ及び芯金の両端を保持するように、円筒金型の両端に上金型及び下金型をセットし、芯金とチューブとの間にシリコーンゴムを注入して加熱していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−96658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ゴムロールを金型から取り出すときの取出性を向上できるゴムロールの製造装置及び製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のゴムロールの製造装置は、芯金を同軸状に包囲するとともに、円筒状の被膜部材を円筒状の内壁に装着する第1金型と、前記第1金型の軸方向両端部に設けられ、前記芯金及び前記被膜部材を挟持する一対の第2金型と、を備え、前記一対の第2金型の少なくとも一方には、前記芯金と前記被膜部材との間に未加硫ゴムを注入するための注入口が形成され、前記第1金型の前記軸方向両端部の前記内壁には、周方向に凹溝が形成されたことを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る請求項2に記載のゴムロールの製造装置は、円柱状の本体部と、該本体部の両端部から突出するように設けられ、前記本体部よりも直径の小さい軸部と、を有する芯金を、同軸状に包囲するとともに、円筒状の被膜部材を円筒状の内壁に装着する第1金型と、前記第1金型の軸方向両端部に設けられ、前記芯金及び前記被膜部材を挟持する一対の第2金型と、を備え、前記一対の第2金型の少なくとも一方には、前記芯金と前記被膜部材との間に未加硫ゴムを注入するための注入口が形成され、前記軸部と径方向に対向する前記第1金型の前記内壁には、周方向に凹溝が形成されたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る請求項3に記載のゴムロールの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載したゴムロールの製造装置を準備する工程と、円筒状の被膜部材を第1金型の円筒状の内壁に装着する工程と、芯金を前記被膜部材の内側に挿入し、前記芯金が挿入された前記第1金型の軸方向両端部に装着された一対の第2金型により、前記芯金及び前記被膜部材を前記第1金型と同軸状に挟持する工程と、前記注入口から未加硫ゴムを注入し、前記芯金と前記被膜部材との間に、前記未加硫ゴムを充填する工程と、前記未加硫ゴムを硬化して加硫ゴムとする工程と、前記第1金型から前記第2金型を外す工程と、前記第1金型から加硫ゴムが被覆された前記芯金を取り出す工程と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、第1金型の軸方向両端部の内壁の周方向に凹溝が形成されていない構成に比べて、ゴムロールを金型から取り出すときの取出性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、軸部と径方向に対向する第1金型の内壁の周方向に凹溝が形成されていない構成に比べて、ゴムロールを金型から取り出すときの取出性を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、第1金型の内壁の周方向に形成された凹溝に未加硫ゴムを充填しない場合に比べて、ゴムロールを金型から取り出すときの取出性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ゴムロールを製造する金型を示す斜視図
【図2】ゴムロールを製造する金型を示す分解斜視図
【図3】注入口が形成されている上金型の正面図
【図4】未加硫ゴムが充填される前の金型を示す軸方向の断面図
【図5】未加硫ゴムが充填されて硬化された後の金型を示す軸方向の断面図
【図6】未加硫ゴムが充填されて硬化された後の円筒金型を示す径方向の断面図
【図7】未加硫ゴムが充填されて硬化された後の円筒金型から上下金型を取り外した状態を示す断面図
【図8】未加硫ゴムが充填される前の金型を示す軸方向の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図4、図5、図7において示す矢印UPを上方向とする。
【0013】
(ゴムロールの製造装置)
図1、図2で示すように、本実施形態に係るゴムロール製造装置の一例としての金型10は、後述する芯金20を同軸状に包囲する円筒状の第1金型の一例としての円筒金型12と、円筒金型12の両端部に軸方向外側から装着され、芯金20をその軸方向外側から挟持する一対の第2金型の一例としての上下金型14と、を有している。
【0014】
図2〜図4で示すように、上下金型14は、円筒金型12の両端部(外周面)を外側から被覆するように嵌められる外筒部15と、円筒金型12内に挿入された芯金20の後述する軸部24を被覆するように嵌められる内筒部16と、を内面側(円筒金型12を向く面側)に有している。そして、上下金型14の外面側には、円形の凹部17が同軸状に形成されている。
【0015】
更に、一方の上下金型14、例えば上金型14Aの凹部17内における外周縁部には、図3で示すように、未加硫ゴムを注入するための円形の注入口18が周方向に複数(図示のものは8個)等間隔に形成されている。詳細には、この注入口18は、内筒部16の外周側、即ち上下金型14が円筒金型12に装着されたときに、内筒部16(本体部22)と円筒金型12の内壁12A(後述する樹脂チューブ13)との間の空間S(図4参照)内に通じるように形成されている。
【0016】
図2で示すように、芯金20は、円柱状で、かつ中空(図6参照)の本体部22と、本体部22の両端面の中心から軸方向外側へ向けて同軸に突出するように設けられた円柱状の軸部24と、を有し、その軸部24の直径は、本体部22の直径よりも小さくされている(本体部22の直径は、軸部24の直径よりも大きくされている)。そして、図4で示すように、本体部22の直径(外径)は、内筒部16の外径と略同一に形成されている。
【0017】
また、図2、図4で示すように、円筒金型12の両端部、詳細には円筒金型12内に芯金20を挿入した状態で、その芯金20の軸部24と径方向に対向する内壁12Aには、周方向に沿って断面略半円弧状の凹溝26が環状に形成されている。したがって、図5で示すように、注入口18から注入された未加硫ゴムは、上記空間S内だけではなく、その凹溝26内にも充填される構成である。
【0018】
(ゴムロールの製造方法)
以上のような構成の金型10において、次にその作用(ゴムロールの製造方法)について説明する。図4で示すように、まず、円筒金型12の内壁12Aに、被膜部材の一例としての円筒状の樹脂チューブ13を装着する。なお、樹脂チューブ13の長さは、その両端部13Aが、円筒金型12から軸方向外側へ少しはみ出る長さとされる。
【0019】
そして、円筒金型12の下端部に下金型14Bを装着し、その後、円筒金型12の上端部側から、芯金20を樹脂チューブ13の内側に挿入する。すなわち、円筒金型12内に芯金20を挿入し、下金型14Bの内筒部16に、下側の軸部24を嵌める。そして、円筒金型12の上端部に上金型14Aを装着しつつ、上金型14Aの内筒部16に、上側の軸部24を嵌める。
【0020】
これにより、上下金型14における内筒部16の端面16Aが、上下軸部24回りの本体部22の端面22Aに当たるので、芯金20の本体部22が、円筒金型12に同軸状に包囲されつつ、その軸方向外側から内側に向けて、上下金型14によって狭持される。なお、このとき、樹脂チューブ13の両端部13Aも、円筒金型12と上下金型14との間でそれぞれ押さえられる。
【0021】
こうして、円筒金型12の両端部に上下金型14が装着されたら、上金型14Aに形成されている注入口18から未加硫ゴムを予め決められた圧力で注入する。すると、未加硫ゴムは、その圧力と重力の作用によって、内筒部16の外周面及び芯金20の本体部22の外周面と、円筒金型12の内壁12Aに装着された樹脂チューブ13との間の空間S内に充填される。そして、その内壁12Aに形成されている凹溝26内にも、未加硫ゴムが樹脂チューブ13を押し込みつつ充填される(図5参照)。
【0022】
未加硫ゴムが注入口18から注入され、空間S内(凹溝26内を含む)を埋め尽くすように充填されたら、金型10を加熱して未加硫ゴムを硬化させる。そして、図5、図6で示すように、未加硫ゴムが硬化され、加硫ゴム(弾性ゴム)28となったら、図7で示すように、上下金型14を円筒金型12から取り外す。
【0023】
このとき、内筒部16の外周面側、即ち内筒部16と樹脂チューブ13との間には加硫ゴム28が存在するが、その加硫ゴム28の外周面側は、樹脂チューブ13と共に凹溝26内に入り込んでいる(食い込んでいる)。したがって、上下金型14を円筒金型12から取り外すときに、ゴムロールの一例としてのチューブ被覆ロール30が上下金型14と共に引き出されるおそれがない。
【0024】
すなわち、円筒金型12から上下金型14を取り外す際、その上金型14A又は下金型14Bと共にチューブ被覆ロール30が円筒金型12から引き出されると、そのチューブ被覆ロール30が誤って床に落下してしまうことがあり、その場合には、チューブ被覆ロール30の表面に傷が付くなどの不具合が発生するおそれがあった。
【0025】
しかしながら、本実施形態に係る金型10では、未加硫ゴムの一部が、樹脂チューブ13と共に円筒金型12の凹溝26に流れ込み、そこで硬化するため、軸方向外側へ引き出す力に対する抜け止めとなる。したがって、円筒金型12から上下金型14を取り外すときに、円筒金型12内のチューブ被覆ロール30を引き出して床に落下させることがない。このため、チューブ被覆ロール30の表面に傷が付くことはなく、チューブ被覆ロール30を金型10内から取り出すときの取出性の向上が図れる。
【0026】
また、このようなチューブ被覆ロール30の場合、その表面に被装されている(加硫ゴム28の外周面を覆っている)樹脂チューブ13に皺が発生するという問題もあった。しかし、本実施形態に係る金型10では、未加硫ゴムの一部が、樹脂チューブ13と共に円筒金型12の凹溝26に流れ込むため、その樹脂チューブ13は、円筒金型12の軸方向両端部に向かって引っ張られる。このため、チューブ被覆ロール30の表面に被装されている樹脂チューブ13に皺が発生し難い。
【0027】
なお、円筒金型12からチューブ被覆ロール30を取り出す際には、本体部22の端面22Aから軸方向にはみ出している加硫ゴム28及び樹脂チューブ13(軸部24と径方向で対向している加硫ゴム28及び樹脂チューブ13)を径方向内側に撓ませ、凹溝26内から加硫ゴム28及び樹脂チューブ13を取り外せばよい。これにより、凹溝26によって形成された断面略半円弧状に隆起した部位を備えたチューブ被覆ロール(ゴムロール)が製造される。
【0028】
また、その本体部22の端面22Aから軸方向にはみ出している加硫ゴム28及び樹脂チューブ13は、チューブ被覆ロールとして機能しない不要なものである。このため、円筒金型12からチューブ被覆ロール30を取り出した後、切断して除去することもできる。これにより、凹溝26によって形成された断面略半円弧状に隆起した部位が除去され、製品となるチューブ被覆ロール30が製造される。
【0029】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る他の実施形態について、図8を用いて説明する。なお、説明を分かり易くするため、第1実施形態との相違点を主に説明し、第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
本第2実施形態と第1実施形態の主な相違点は、第1実施形態における芯金20が、長手方向(軸方向)に断面積が均一である点と、第1実施形態における下金型14Bが上金型14Aと同一である点である。
【0031】
かかる相違点をより詳細に説明すると、芯金200は、中実の円柱状の金属シャフトであって、軸部24の直径が長手方向において均一となるように形成されている。また、図8で示すように、一対の上下金型140が、2個の上金型14Aにより構成され、図8の紙面下方にある上金型14Aの凹部17内における外周縁部にも、未加硫ゴムを注入するための円形の注入口18が周方向に複数(図示のものは8個)等間隔に形成されている。つまり、一対の上下金型140の両方には、芯金200と樹脂チューブ13との間に未加硫ゴムを注入するための注入口18が形成されている。
【0032】
本第2実施形態のゴムロールの製造装置(金型100)は、第1実施形態と比較して、芯金200と樹脂チューブ13との間に注入する未加硫ゴムの量が多くなるが、未加硫ゴムを上下金型140の両方から注入できるので、チューブ被覆ロール30を短時間で生産できる。
【0033】
また、円筒金型12の両端部、つまり、円筒金型12内に芯金200を挿入した状態で、その芯金200を上下金型140で挟持する軸部24と径方向に対向する内壁12Aには、周方向に沿って断面略半円弧状の凹溝26が環状に形成されている。このため、図5で示したように、注入口18から注入された未加硫ゴムは、上記空間S内だけではなく、その凹溝26内にも充填されるので、本第2実施形態においても、第1実施形態と同じ作用効果を得ることができる。
【0034】
以上、本実施形態に係るゴムロールの製造装置(金型10、100)及び製造方法について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るゴムロールの製造装置(金型10、100)及び製造方法は、図示のものに限定されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【0035】
例えば、凹溝26の形状は、断面略半円弧状に限定されるものではなく、断面略三角形状等に形成されていてもよい。特に、樹脂チューブ13を軸方向外側へ引っ張ることが可能になるとともに、円筒金型12から上下金型14を取り外すときのチューブ被覆ロール30の抜け止めとなるように、軸方向外側が断面略直角となる三角形状(断面略直角三角形状)に形成されていてもよい。
【0036】
また、凹溝26は、一端部だけ(例えば、図4〜図7、図8において紙面上方のみ)であってもよい。なぜなら、未加硫ゴムの一部が、樹脂チューブ13と共に円筒金型12の一端部の凹溝26に流れ込み、そこで硬化するため、円筒金型12から上下金型14を軸方向外側へ引き出す力に対するチューブ被覆ロール30の抜け止めとなるからである。この場合であっても、樹脂チューブ13は、円筒金型12の軸方向一端部に向かって引っ張られるので、チューブ被覆ロール30の表面に被装されている樹脂チューブ13に皺が発生し難いという作用効果も得られる。
【符号の説明】
【0037】
10 金型(ゴムロールの製造装置の一例)
12 円筒金型(第1金型の一例)
12A 内壁
13 樹脂チューブ(被膜部材の一例)
14 上下金型(第2金型の一例)
18 注入口
20 芯金
22 本体部
24 軸部
26 凹溝
28 加硫ゴム
30 チューブ被覆ロール(ゴムロールの一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金を同軸状に包囲するとともに、円筒状の被膜部材を円筒状の内壁に装着する第1金型と、
前記第1金型の軸方向両端部に設けられ、前記芯金及び前記被膜部材を挟持する一対の第2金型と、を備え、
前記一対の第2金型の少なくとも一方には、前記芯金と前記被膜部材との間に未加硫ゴムを注入するための注入口が形成され、
前記第1金型の前記軸方向両端部の前記内壁には、周方向に凹溝が形成されたことを特徴とするゴムロールの製造装置。
【請求項2】
円柱状の本体部と、該本体部の両端部から突出するように設けられ、前記本体部よりも直径の小さい軸部と、を有する芯金を、同軸状に包囲するとともに、円筒状の被膜部材を円筒状の内壁に装着する第1金型と、
前記第1金型の軸方向両端部に設けられ、前記芯金及び前記被膜部材を挟持する一対の第2金型と、を備え、
前記一対の第2金型の少なくとも一方には、前記芯金と前記被膜部材との間に未加硫ゴムを注入するための注入口が形成され、
前記軸部と径方向に対向する前記第1金型の前記内壁には、周方向に凹溝が形成されたことを特徴とするゴムロールの製造装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したゴムロールの製造装置を準備する工程と、
円筒状の被膜部材を第1金型の円筒状の内壁に装着する工程と、
芯金を前記被膜部材の内側に挿入し、前記芯金が挿入された前記第1金型の軸方向両端部に装着された一対の第2金型により、前記芯金及び前記被膜部材を前記第1金型と同軸状に挟持する工程と、
前記注入口から未加硫ゴムを注入し、前記芯金と前記被膜部材との間に、前記未加硫ゴムを充填する工程と、
前記未加硫ゴムを硬化して加硫ゴムとする工程と、
前記第1金型から前記第2金型を外す工程と、
前記第1金型から加硫ゴムが被覆された前記芯金を取り出す工程と、
を含むことを特徴とするゴムロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96446(P2012−96446A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245563(P2010−245563)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【特許番号】特許第4775503号(P4775503)
【特許公報発行日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】