説明

ゴムロール

【課題】廃棄時にゴムと芯金を分別でき、安価でかつ研磨することなくコーティング可能なゴムロールを提供する。
【解決手段】無油展でムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜40、エチレン含量が45〜65重量%であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを主成分とし、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを添加量(X重量部)2〜10重量部、助剤としてステアリン酸亜鉛または酸化亜鉛を0.7X〜1.3X重量部とする配合構成のゴム組成物を混練し、そしてムーニー粘度が35〜55の範囲内の時点で該ゴム組成物を連続的に押出したのち、該ゴム組成物を熱風(HAV)および高周波加熱(UHF)を併用して加熱し、150〜200℃で発泡と加硫を同時に行い、発泡倍率2.5〜5倍でかつ単泡率70%以上の独立気泡で構成されているゴムスポンジチューブを形成し、そして得られたチューブの中空部に芯金を挿入するゴムロールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムスポンジチューブを用いたロールに関し、該ロールは、印刷機、複写機、ファックス、プリンターに用いられる給紙、排紙用途の紙送りロール、さらには、電子写真方式の複写機、ファックス、プリンターの帯電ロール、現像ロール、トナー供給ロール、転写ロール、クリーニングロール等の感光体回りに用いられるロール等の様々なゴムスポンジロール用途に適する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば印刷機、複写機、ファックス、プリンターに用いられる給紙、排紙用途の紙送りロール、または、電子写真方式の複写機、ファックス、プリンターの帯電ロール、現像ロール、トナー供給ロール、転写ロール、クリーニングロール等の感光体回りに用いられる各種ロールは、芯軸体の周囲にゴムスポンジ層を形成した後、所定の外径となるように外面を研摩し、必要に応じてその外周にチューブを被せたり、コーティングしたりして機能性を有する複層ロールに加工されている。
上記機能性を有する複層ロールの低コスト化への要望はますます高まっており、より簡素な工程で加工できる機能性ロールが要求されている。
【0003】
例えば、特開2006−264339号公報では、ベースロールの研磨工程が不要(研磨レス)で、寸法精度が良好な状態での脱型が可能である離型性に優れた低硬度ロールが報告されている。しかしながら、この方法では未加硫ゴムと芯金を金型で一体成形するため、ゴム部と芯金が加硫接着されており、廃棄時にゴム部と芯金を分別して廃棄すること、あるいは芯金だけを取り出して再利用することが不可能となっている。また、金型による製造は低コスト化への要望を十分満たしているとは言えない。
【0004】
金型成形でも、ゴムスポンジチューブをまず成形し、その後に芯金挿入により廃棄時の分別可能なロールを製造することは可能であるが、一体成形よりさらにコストが上がるために、このような方法は用いられていない。
【0005】
このような問題を解決するため、本発明等は、特開2004−323701号公報において開示しているように、連続加硫方式で製造し、非研磨の状態でロールとして使用できるスポンジチューブおよびそれを用いたゴムスポンジロールを発明した。この発明の製造方式は連続加硫方式であるためスポンジチューブを成形するのが安価であり、スポンジチューブに芯金を挿入してロールにするため、ゴム部と芯金の取り外しが可能なロールとなる。また、この発明で得られるゴムスポンジチューブは、充分な硬度と寸法安定性を有するため、芯金挿入後にゴム表面を研磨しなくても、機能性材料を有するチューブを更に表面に被覆あるいはコーティングにより、表面の平滑化を高めつつロール表面に機能性を持たせてOA用途の機能ロールとして使用することができる。
【0006】
しかしながら、この特開2004−323701号公報に記載された方法によりロールを製造した結果、ゴムスポンジチューブの表面に被覆チューブを被せる方法を用いる場合には問題はないが、同表面にコーティングする方法の場合には大きな問題があることが判明した。
すなわち、該スポンジチューブはスポンジセルが連続気泡であるために、ゴム表面層に無数の穴が開いており、コート剤がゴム内へ浸透してコート表面に無数のピンホールが生じてしまうことが判明した。
【0007】
したがって、特開2004−323701号公報に記載の方法では、非研磨の状態でコーティングしてロールを製造することは実質的に不可能である。一方、スポンジチューブの上に更に樹脂チューブを被せてロールにする方法は可能であるが、この方法の場合には、長時間の使用でゴムスポンジチューブがへたり、ゴムスポンジ外層と樹脂チューブ層の間に隙間が出来て機能性が損なわれる問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2004−323701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特開2004−323701号公報に記載の発明の問題点を解決したものであり、廃棄時にゴムと芯金を分別でき、安価でかつ研磨することなくコーティング可能なゴムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、外側表面に70μm以上の径の穴が実質的に存在しないゴムスポンジチューブに芯金が挿入されており、ゴム部と芯金が実質的に接着されていないゴムロールにより達成される。そして、この発明において、好ましくは、芯金両端に300gfの荷重をかけて金属板の上に置き、芯金と金属板の間に10Vの電圧をかけた時に抵抗値が10Ω以下となる場合である。さらに、本発明のゴムスポンジチューブの表面にコーティングがなされている場合である。また、より好ましくは、半導電性のコーティング剤によりゴムロールの表面がコーティングされている場合である。さらに、好ましくは、ゴムスポンジチューブを構成するゴムが、エチレン含量が45〜65重量%であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムであり、かつジエン化合物がエチリデンノルボルネンである場合である。
【0011】
さらに本発明は、無油展でムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜40、エチレン含量が45〜65重量%であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを主成分とし、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを添加量(X重量部)2〜10重量部、助剤としてステアリン酸亜鉛または酸化亜鉛を0.7X〜1.3X重量部含有するゴム組成物を混練し、そしてムーニー粘度が35〜55の範囲内の時点で該ゴム組成物を連続的に押出したのち、該ゴム組成物を熱風(HAV)および高周波(UHF)を併用して加熱し、150〜200℃で発泡と加硫を同時に行い、発泡倍率2.5〜5倍でかつ単泡率70%以上の独立気泡で構成されているゴムスポンジチューブを形成し、そして得られたチューブの中空部に芯金を挿入するゴムロールの製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において使用するゴムスポンジに使用するゴムについては特に規定するものではない。しかし、老化防止剤を添加しなくてもポリマー耐候性、耐オゾン性が高く、ハロゲンを含まず、価格も比較的安価であることから、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)を使用することが望ましい。さらには、本発明のロールは、押出時の表面肌が平滑であること、圧縮永久ひずみなどの物性が良いことが望まれるため、無油展でムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜40、エチレン含量が45〜65重量%であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを主成分とすることが好適である。ムーニー粘度が5未満の材料では押出時に押出形状を保つことが出来ず、圧縮永久歪みが悪くて長期間の使用でへたってしまう。ムーニー粘度が40を超えると押出肌が平滑にならないため、非研磨の状態で使用できるロールにならない。なお、ムーニー粘度は、JIS K 6395に基づいて測定される値である。
【0013】
EPDMのエチレン含量は45〜65重量%であることが好ましく、エチレン含量が45重量%未満であると、グリーン強度が低いために、加工性が非常に悪くなる。エチレン含量を高くすればグリーン強度は上がるが、65重量%を超えるとポリマー中の結晶化度が高まり、圧縮永久歪が悪くなる。好適なエチレン含量は50〜60重量%の範囲である。
【0014】
EPDMを構成するジエン成分としては、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンなどがあげられるが、発泡成形にはエチリデンノルボルネンが好ましい。ジエン成分の含量については、通常用いられている範囲、すなわち4〜12重量%の範囲が本発明で好適に用いられる。
【0015】
このようなEPDMを例示すると、三井化学社製EPT#4021、#4010、JSR社製EP11、EP21、住友化学製エスプレン524、5724があげられる。また、ムーニー粘度、エチレン含量が異なるゴムを複数ブレンドした場合についても、ブレンドしたゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜40、エチレン含量が45〜65重量%であり、ブレンド物の主たるジエン成分がエチリデンノルボルネンであり、ジエン含量が4〜12重量%であるようなものも好適例として挙げられる。
【0016】
本発明で求められる平滑でかつピンホールのないスポンジチューブを製造するには、セル壁となるゴムの張力と発泡する力とのバランス、すなわち、加硫速度と発泡速度のバランスが適切であることが挙げられる。加硫速度が発泡速度より速すぎると、粘度が高くなった状態で膨らむために表面が平滑にならない。逆に、発泡速度が加硫速度より速すぎると、分解ガスがセル壁を破った状態で加硫する。スキン層でこの現象が起きるとピンホールとなる。
【0017】
スポンジチューブを製造する際に配合される発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好ましい。一般的な発泡剤として、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が挙げられるが、このものは感光体を汚染する問題があるため本発明において好ましいものとは言えない。また、4,4'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)も一般的な発泡剤として用いられているが、このものは汚染の問題はないものの、その他ゴム配合薬品の助剤効果により分解温度が120〜140℃まで下がってしまうため、加硫速度より発泡速度の方が速くなり、本発明のスポンジチューブに使用すると、外面に80μm〜2mmサイズのピンホールが多数開き、均一なコーティング処理ができなくなる。よって、ADCA以外の発泡剤、すなわちDPT,OBSH、または炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等の無機発泡剤は好ましくなく、本発明において、これらをADCAと組み合わせて使用することは可能であるが、組み合わせて使用する場合には、加硫と発泡のバランスをとるための目的でADCAよりはるかに微量の使用に留めるのが好ましい。好ましくは、ADCA以外の発泡剤を実質的に併用しない場合である。ADCAの添加量としては、EPDM100重量部に対して2〜10重量部が好ましく、より好ましくは4〜8重量部である。
【0018】
ADCA単体の分解温度は210℃である。しかし、ゴム配合中の鉛、亜鉛、カドミウムの化合物、尿素、硼砂、エタノールアミン、アルカリ性化合物や、加硫促進剤などによってADCAの分解温度が低下することが知られている。特に、汎用のゴム配合で加硫促進助剤として用いられる酸化亜鉛やステアリン酸亜鉛は分解温度を下げる効果が大きく、それらを発泡剤添加量と等量添加すると160℃程度まで分解温度が下がる。表面が平滑でかつピンホールのないスポンジチューブを製造するには、加硫とのバランスにより、150〜200℃、特に160℃前後で発泡することが好ましく、助剤としてステアリン酸亜鉛または酸化亜鉛をADCA添加重量の0.7〜1.3倍添加することが好ましい。もちろんステアリン酸亜鉛と酸化亜鉛を併用使用しても良く、その場合には、その合計添加重量を上記範囲内にするのが好ましい。
【0019】
OA機器に使用される機能性ゴムスポンジロール用のゴムの発泡倍率としては2.5〜5倍が好ましく、ゴムスポンジロールの表面(外層)にコーティングし、しかもコーティング液がゴムスポンジロールの内部に浸透しないためには、ゴムスポンズロールの表面層に存在する気泡は独立気泡で構成されていることが重要である。より好ましくは 2.5〜4倍の発泡倍率である。
上記の発泡倍率は、JIS K 7112に基いて発泡前のゴム比重、発泡体のゴム比重を求め、発泡倍率=発泡前のゴム比重/発泡体のゴム比重の式により算出される値である。本発明において、ゴムの発泡倍率は発泡剤添加量により制御できる。すなわち、発泡倍率を高めるためには発泡剤添加量を多くすればよく、逆に発泡倍率を低くするためには発泡剤添加量を少なくすれば良い。
【0020】
本発明において、導電剤をゴムに配合して、導電性スポンジチューブとすることは好適な態様である。導電剤を使用する場合の導電剤の配合量は、ゴムポリマー100重量部に対して5〜100重量部が好適であり、更に好適には30〜80重量部である。本発明で用いられる導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性亜鉛華などがあげられる。上記発泡剤、助剤および導電剤の他に、ゴム配合薬品として、オイル、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、その他の各種機能薬剤を加えることもできる。そして、導電性の程度としては、芯金両端に300gfの荷重をかけて金属板の上に置き、芯金と金属板の間に10Vの電圧をかけた時に抵抗値が10Ω以下となる程度の導電性が特に好ましい。導電性能を高めるためには、添加する導電剤の量を増加させれば良い。
【0021】
このような組成物を、一般的な混練方法、たとえば密閉式混練機(バンバリー、インターミックス、ニーダー)、オープンロール等の装置を用いて混練することにより、まずEPDM系組成物を得ることができる。
【0022】
混練した後のEPDM系組成物のムーニー粘度は35〜55であることが好ましく、40〜50であることが特に好適である。ムーニー粘度が35より低いと押出後の連続加硫工程でチューブが切れたり、伸びて細くなったりしてしまう場合がある。ムーニー粘度が55を超えると、押出肌が悪くなり、研磨レスで使用できなくなってしまう場合がある。混練後のムーニー粘度はカーボンブラック等充填材の添加量、可塑剤の添加量などにより制御することが出来る。すなわち、ムーニー粘度を高めるためには充填材の添加量を多くするか可塑剤の量を減らせばよく、また逆に下げるためには充填材の量を減らすか可塑剤の量を増やせばよい。
【0023】
このようなゴム組成物を使用して、本発明の上記要件を満足するゴムスポンジチューブを製造する方法として、本発明では、ゴムスポンジと芯金が分別廃棄できること、かつ安価なロールが得られることから連続加硫方式が用いられる。
連続加硫方式とは、押出機でゴム組成物を連続的に押出し、大気圧下で熱風(HAV)、高周波加熱(UHF)、遠赤外線ヒータ等によりゴム組成物を加熱し、発泡と加硫を同時に行う方式である。
【0024】
本発明において、好適な連続加硫方式としては、上記ゴム組成物を押出機に投入し、チューブ状に連続的に押出し、押出し直後のチューブを、好適には5秒以内、更に好適には3秒以内に加熱炉内へ導入し、加熱炉内では、好適には熱風(HAV)および高周波加熱(UHF)を併用して、熱風(HAV)を130℃〜250℃、好適には150℃〜230℃に設定しながら、高周波加熱(UHF)出力を1kW〜10kW、好適には0.2kW〜3.0kWに設定する方法が挙げられる。
【0025】
単泡率70%以上のゴムスポンジとなるようにHAVおよびUHFを併用して調節することにより、表面が平滑でかつピンホールが実質的に存在しないスキン層を有するゴムスポンジを得ることができる。加熱炉を通過する時間は、好適には1〜10分、更に好適には1.5〜7分である。このように押出し直後のチューブをHAVとUHFの併用により、目的とする発泡倍率で表面に実質的に穴が存在しないゴムスポンジチューブを連続的に容易に得ることが出来る。
【0026】
連続加硫成形したゴムスポンジチューブの発泡セルの構造は、完全なる独立気泡(単泡)や完全なる連泡になることはあり得ず、単泡と連泡が任意の割合で存在する。単泡率は、発泡セル内中の独立泡の割合を表したものであり、発泡、加硫前のEPDM系混合組成物の比重(生地比重)と、発泡、加硫後のゴム比重、吸水率から算出される。
単泡率=100−(ゴムスポンジ比重×吸水率/100)/(1−ゴムスポンジ比重/発泡前のゴム生地比重)×100
吸水率は、試料を水道水中に完全に沈めた状態で535mmHg減圧下で3分間放置した後に、吸水率(%)=吸水重量/吸水前のゴムスポンジ試料の重量×100にて求めた値である
単泡とは上記式にて単泡率70%以上の場合であり、連泡とは50%以下の場合である。
【0027】
また、連続加硫により生産したスポンジチューブは、筒状金型によりバッチ式で生産したスポンジロールのゴム部と比較して、スキン層、発泡倍率のチューブ長手方向のばらつきがほとんどない、すなわち非研磨で使用しても長手方向の硬度ムラがほとんどないゴムスポンジチューブを得ることができる。もちろん、筒型金型により生産したスポンジロールの場合には、芯金とゴム部が接着しており、この点も本発明のゴムロールとの大きな相違点である。
また、本発明のゴムスポンジチューブのエージングとして、70〜180℃の温度で1時間〜7日間の熱処理をすることも可能である。
【0028】
このようにして得られたゴムスポンジチューブは平滑でかつピンホールがないため、芯軸体(芯金)を挿入することで、本発明のロールが得られる。筒状金型による加硫発泡方式によるゴムスポンジロールは、一体成形であるがゆえにゴムと芯金の分別廃棄が不可能であるが、本発明のゴムロールは、連続加硫でスポンジチューブを成形して成形後に芯金を挿入したものであることから、ロールはゴムと金属との分別廃棄が容易である。スポンジチューブの内径は芯金外径より5〜20%小さい径にすることで、ゴムが芯金に十分な力で密着固定されることとなる。
【0029】
本発明において、ゴムロールの直径(外径)としては、4〜30mmが適切であり、また芯金の直径としては、5〜16mmが適当である。さらにゴムロールのゴム層の厚みとしては2〜10mmが適切である。そして、ゴムロールの長さとしては、用途にもよるが、一般的には210〜340mmが一般的である。芯金としては、鉄、ステンレス、アルミ、銅、等が挙げられ、もちろん表面がメッキされていても良い。更に、金属以外のプラスチックス製や材木製の場合でも良い。ロールを作製する際には、ゴムスポンジチューブの内径部にエアーを流して内径を大きくした状態で芯金挿入するのがゴムの残留ひずみを小さく出来るために望ましい。
【0030】
上記のようにして得られたゴムスポンジチューブの表面(外層)に、例えば半導電性といった機能性のコーティング剤でコーティング処理をすることで、本発明の機能性ロールを得ることが出来る。
コーティング剤としては、付与する機能により相違するが、半導電性能を付与する場合には、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系ポリマーを主成分とし、ケッチェンブラック等の高導電性カーボンをビーズ型分散機にて分散させた液状のものが知られている。コーティングする方法としては、チューブ表面に直接塗付する方法、表面にスプレーでコーティング液を付与する方法、ディッピングする方法等が挙げられるが、ディッピングする方法がもっとも好ましい。コーティングにより付与する表面層(コーティング層)厚みとしては50〜300μmが一般的である。コーティング層に含まれる導電性カーボンの量としてはカーボンの導電性にもよるが2〜10重量%が好ましい。
【0031】
こうして得られたロールは、平滑性が優れ、半導電性領域においてロール1本の局所領域での抵抗値の均一性が優れているため、帯電ロール、現像ロール用途等の用途に好適に使用される。
【0032】
非研磨のスポンジチューブを用いて安価な機能性ロールを製造する方法としては、その他に、スポンジ外層にゴムより平滑な機能性樹脂チューブを被せ、その後に芯軸体をスポンジチューブに挿入する方法が知られている。しかしながら、この方法の場合には、前記したように、長期間の使用でゴムスポンジがへたり、スポンジ外層と機能性樹脂チューブ層の間に隙間が出来て半導電性などの機能性が損なわれる問題がある。それに対して、本発明のゴムロールの場合には、外側をチューブで被うというものではないことから、へたりにより隙間が形成されるという問題が発生しない。
【実施例】
【0033】
次に、実施例と比較例を挙げて本発明のゴムスポンジチューブおよびそれを用いたゴムスポンジロールを説明する。
本発明でいう「外側表面に70μm以上の径の穴が実質的に存在しない」ということは、ゴムスポンジチューブの表面から、任意に1cm×1cmの広さの個所を100箇所選び、顕微鏡により拡大して観察した場合に、70μm以上の径を有する穴の数の合計が平均1個以下であるということを意味する(1本のゴムスポンジロールから100箇所も取ることが出来ない場合には、複数本のゴムロールから100箇所を選ぶ)。そして、70μm以上の径とは、表面に露出する穴の露出面積を円に換算した場合の直径が70μm以上であることを意味している。
【0034】
また、本発明でいう「ゴム部と芯金が実質的に接着されていない」とは、芯金とゴムの間に1〜4kgf/cmのエアーを注入することで、芯金にキズつけることなく容易にゴムスポンジチューブから芯金が抜ける状態であることを意味している。
【0035】
実施例1
表1に実施例1で使用したゴム組成物の配合内容を示した。ゴム材料は三井化学社製のEPT#4021を使用した。これは、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が24で、エチレン含量は53重量%、ジエン化合物としてエチリデンノルボルネンが用いられているEPDMである。カーボンブラックは東海カーボン社製のトーカブラック#5500を使用した。発泡剤は、ADCAとして永和化成工業社製のビニホールAC#3を用い、EPDM100重量部に対して5重量部添加した。助剤としては酸化亜鉛を5部、ステアリン酸亜鉛を1部で合計6重量部を添加した。加硫促進剤は大内新興化学社製の2−メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛を使用した。
【0036】
(ゴム組成物の作製)
表1に示した実施例1の配合薬品中、EPDM、トーカブラック#5500(カーボンブラック)、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛を密閉式混練機のニーダーに投入して8分間混練、ニーダーから取り出した後、オープンロールにてシート状に連続的に成形しながら冷却し、A練り生地を作製した。次いで再度、密閉式混練機のニーダーにA練り生地を投入、これに残りの配合薬品である発泡剤、硫黄、加硫促進剤を添加し5分間混練、密閉式混練機のニーダーから取り出した後、オープンロールにてリボン状に連続的に成形しながら冷却し、リボン状のB練り生地を作製した。なお、このB練り生地のムーニー粘度は表1に記載の通りである。
【0037】
(ゴムスポンジチューブの作製)
次いで、上記のリボン状B練り生地を押出機に投入し、チューブ形状で連続的に押出した2秒後に200℃の熱風(HAV)と1kWの高周波加熱(UHF)を併用した加熱炉に3分間導入し、1分通過後のチューブの温度を160℃に高めて加硫を行った。成形直後の内径、外径をテーパーゲージ、ノギスを用いて測定し、目標とする寸法に調整することにより、内径φ5mm×外径φ11.5mm、発泡倍率3倍、単泡率88%のゴムスポンジチューブ体を連続成形した。これを長さ340mmにカットし、寸法安定化等の目的でオーブンにて120℃、5時間の2次加硫を行ない、25℃に冷却して、実施例1のゴムスポンジチューブを作製した。
このゴムスポンジロールの抵抗値を、芯金両端に300gfの荷重をかけて金属板の上に置き、芯金と金属板の間に10Vの電圧をかけて確認したところ、2.5×10Ωであった。
【0038】
(ゴムスポンジロールの作製)
次いで、金属製のφ6mm×長さ310mmの芯軸体を上記ゴムスポンジチューブにエアーを用いて挿入、ゴムスポンジ部分の面長が305mmとなるようにゴムスポンジチューブ両端をカットして、ゴムスポンジ層部のサイズがφ6mm(芯軸体径)×φ12mm×長さ305mm のゴムスポンジロールを作製した。
このゴムスポンジチューブ表面の穴の有無を観察するために、上記したような方法で10箇所を顕微鏡観察したところ、そのいずれの箇所においても直径70μm以上の穴は観察されなかった。
【0039】
(ゴムスポンジロール表面のコーティング)
抵抗調整層形成材料:エピクロルヒドリンゴム(ダイソー(株)製「エピクロマーC」)100重量部、ハードクレー40重量部、鉛丹5重量部、加工助剤1重量部、エチレンチオウレア1.5重量部を2本ロールで混練した後、メチルエチルケトンとトルエンの混合溶液に溶解した。
【0040】
保護層形成材料:N−メトキシメチル化ナイロン:100重量部をメタノールと水の混合溶液に溶解した後、ケッチェンブラック:5重量部を加え、ビーズ型分散機にて分散した。
前記抵抗調整層形成材料を乾燥、熱処理した後の厚みが80μmとなるようにコーティングし、さらに前記保護層成形材料を乾燥後の厚みで5μmとなるようにコーティングし、乾燥、熱処理した。
得られたゴムスポンジロールのゴム部と芯金との接着状況を前記した方法により観察したところ、ゴム部と芯金は自然と剥離し、実質的に両者は接着されていないことが確認できた。
【0041】
(ゴムスポンジロールの評価)
実施例1において作製したロールについて、コーティング表面の外観を検査した。
【0042】
比較例1
比較例1では、三井化学社製のEPT#4021を用い、発泡剤としてビニホールAC#3とネオセルボンN#1000Sを5重両部づつ、合計10重量部を添加した。成形加工では実施例1と同じ比重にするためにUHF出力を0.6kWとし、それ以外は実施例1と同様にして同寸法、同比重の発泡体を得た。単泡率は45%となった。スポンジ表面には、1cmの広さの任意の100箇所を測定した結果、80μm以上の穴が合計282個見られた。この発泡体に実施例1と同様のロール加工とコーティング処理を行い、機能性ロールを得た。
この発泡体に実施例1と同様のロール加工を行い、実施例1と同様な方法で抵抗値を確認したところ、2.7×10Ωであった。次いで、コーティング処理を行い、機能性ロールを得た。
【0043】
比較例2
比較例2では、発泡剤としてビニホールAC#3とネオセルボンN#1000Sを2.5重量部づつ添加した。成形加工では実施例1と同じ比重にするためにUHF出力を0.6kWとし、それ以外は実施例1と同様にして同寸法、同比重の発泡体を得た。単泡率は65%となった。スポンジ表面には、1cmの任意の100箇所を測定して80μm以上の穴が合計125個見られた。この発泡体に実施例1と同様のロール加工とコーティング処理を行い、機能性ロールを得た。この発泡体に実施例1と同様のロール加工を行い、実施例1と同様な方法で抵抗値を確認したところ、2.7×10Ωであった。次いで、コーティング処理を行い、機能性ロールを得た。
【0044】
比較例3
比較例3では、助剤として酸化亜鉛を2重量部添加した。成形加工では実施例1と同じ比重にするためにUHF出力を0.6kWとし、それ以外は実施例1と同様にして同寸法、同比重の発泡体を得た。単泡率は35%となった。スポンジ表面には、任意の1cmの100箇所を測定して80μm以上の穴が合計323個見られた。この発泡体に実施例1と同様のロール加工とコーティング処理を行い、機能性ロールを得た。この発泡体に実施例1と同様のロール加工を行い、実施例1と同様な方法で抵抗値を確認したところ、2.8×10Ωであった。次いで、コーティング処理を行い、機能性ロールを得た。
【0045】
(ゴムスポンジロールの評価)
比較例1〜比較例3において、実施例1と同様な評価を行なった。比較例1は連泡のスポンジチューブとなり、コーティング工程でコーティング剤が染み込み、コーティング表面上にピンホールがロール1本当り102個発生した。比較例2は比較例1同様に連泡のスポンジチューブとなり、コーティング工程でコーティング剤が染み込み、コーティング表面上にピンホールがロール1本当り38個発生した。比較例3は、発泡より加硫が速いためにゴムスポンジ表面に細かい穴が多数開いた状態になり、コーティング工程で表面に無数のピンホールが生じた。
【0046】
これら実施例1及び比較例1〜3のゴムスポンジロールをレーザープリンターの転写ロールに用いて画像出しを行ったところ、実施例は良好な画像が得られたが、比較例1〜3についてはピンホール部分が白抜けとなり、良好な画像が得られなかった。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面に70μm以上の径の穴が実質的に存在しないゴムスポンジチューブに芯金が挿入されており、ゴム部と芯金が実質的に接着されていないゴムロール。
【請求項2】
芯金両端に300gfの荷重をかけて金属板の上に置き、芯金と金属板の間に10Vの電圧をかけた時に抵抗値が10Ω以下となる請求項1に記載のゴムロール。
【請求項3】
半導電性のコーティング剤によりコーティングされている請求項1または2に記載のゴムロール。
【請求項4】
ゴムスポンジチューブを構成するゴムが、エチレン含量が45〜65重量%であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムであり、かつジエン化合物がエチリデンノルボルネンである請求項1〜3のいずれかに記載のゴムロール。
【請求項5】
無油展でムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜40、エチレン含量が45〜65重量%であるエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムを主成分とし、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを添加量(X重量部)2〜10重量部、助剤としてステアリン酸亜鉛または酸化亜鉛を0.7X〜1.3X重量部含有するゴム組成物を混練し、そしてムーニー粘度が35〜55の範囲内の時点で該ゴム組成物を連続的に押出したのち、該ゴム組成物を熱風および高周波を併用して加熱し、150〜200℃で発泡と加硫を同時に行い、発泡倍率2.5〜5倍でかつ単泡率70%以上の独立気泡で構成されているゴムスポンジチューブを形成し、そして得られたチューブの中空部に芯金を挿入するゴムロールの製造方法。

【公開番号】特開2009−8725(P2009−8725A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167451(P2007−167451)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】