説明

サスペンション構造

【課題】優れた乗り心地のサスペンション構造を提供する。
【解決手段】前端部分のアイ24がフロントブラケット25に枢支され且つアクスル22上面に後端部分を締結したフロントリーフスプリング21と、後端部分のアイ26がリヤブラケット28に枢支され且つアクスル22下面に前端部分を締結したリヤリーフスプリング23と備え、エアスプリング29を、アクスル22後方側に位置するようにリヤリーフスプリング23とサイドレール3の間に介在させてエアスプリング29の高さHを伸ばし、その空気容量の増大を図る。
よって、エアスプリング29のばね定数が大幅に下がり、車両の乗り心地を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサスペンション構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクスルをシャシフレームに懸架するサスペンション装置には、種々の方式が提案されている。
【0003】
図6は従来のサスペンション装置の一例を示すもので、リーフスプリング1の前端部分のアイ2をサイドレール3に設けたフロントブラケット4に枢支し、リーフスプリング1の後端部分のアイ5をサイドレール3に設けたリヤブラケット6に枢支している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
リーフスプリング1の長手方向中央部分とサイドレール3の間には、エアスプリング7が介在しており、アクスル8上面にリーフスプリング1の長手方向中央部分を載せて締結し、アクスル8の両端部分にタイヤ9を装着したホィールを取り付けている。
【特許文献1】特開2003−237335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら図6に示すサスペンション構造では、車両設計で決定するサイドレール3の位置によりエアスプリング7の高さが制約されるため、空気容量を充分に確保できず、ばね定数を大幅に下げて車両の乗り心地を向上させることは困難であった。
【0006】
また、車両の乗り心地の向上を図るために、リーフスプリング1のアクスル8締結位置の後方側におけるばね定数を下げるようにしているが、何分、リーフスプリング1の板厚縮小には限界がある。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、優れた乗り心地のサスペンション構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、前端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル上面に後端部分を締結したフロントリーフスプリングと、後端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル下面に前端部分を締結したリヤリーフスプリングと、アクスル後方側に位置し且つリヤリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備えている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル上面に後端部分を締結したフロントリーフスプリングと、後端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル下面に長手方向中間部分を締結したリヤリーフスプリングと、アクスル後方側に位置し且つリヤリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備え、フロントリーフスプリング下面とリヤリーフスプリング前端寄り部分上面の間に空隙が形成されるように当該リヤリーフスプリング前端をフロントリーフスプリングに拘束している。
【0010】
請求項3に記載の発明は、両端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル上面に長手方向中間部分を締結したリーフスプリングと、アクスル後方側に位置し且つリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備え、当該エアスプリングの下端部分がアクスル下面に並ぶようにリーフスプリングを折り曲げている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、リーフスプリング後部枢支位置からアクスル中心までの間隔を、リーフスプリング前部枢支位置からアクスル中心までの間隔よりも大きくしている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、両端部分をシャシフレームに枢支したリーフスプリングと、該リーフスプリングの長手方向中間部分下面に当接し且つアクスル上面及びリーフスプリングに前端部分を締結したサブリーフスプリングと、該サブリーフスプリングの後端部分の上方に位置し且つリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備えている。
【0013】
請求項1または請求項2に記載の発明のいずれにおいても、リヤリーフスプリングをアクスル下面に締結したうえ、エアスプリングをアクセル後方側に位置させて、エアスプリングの高さを伸ばし、その空気容量の増大を図る。
【0014】
請求項2に記載の発明においては、シャシフレームのアクスル前方部位とアクスル上面の間にフロントリーフスプリングを介在させて、アクスル締結位置の前方側におけるばね定数を相対的に高める。
【0015】
請求項3に記載の発明においては、リーフスプリングをアクセル後方側で折り曲げて、エアスプリングの下端部分をアクセル下面に並べることによりエアスプリングの高さを伸ばし、その空気容量の増大を図る。
【0016】
請求項4に記載の発明においては、アクスル中心をリーフスプリングの後部枢支位置側よりも前部枢支位置側に偏倚させて、アクスル締結位置の前方側におけるばね定数を相対的に高める。
【0017】
請求項5に記載の発明においては、エアスプリングの反力を、該エアスプリングが載っているリーフスプリング、及びその下面に当接しているサブリーフスプリングにより受けてアクスル締結位置の前方側におけるばね定数を相対的に高める。
【発明の効果】
【0018】
本発明のサスペンション構造によれば、下記の優れた効果を奏し得る。
【0019】
(1)リーフスプリング、アクスル、エアスプリングの位置関係を特定化して当該エアスプリングの高さを伸ばし、その空気容量の増大を図るので、ばね定数を大幅に下げて車両の乗り心地を向上させることができる。
【0020】
(2)リーフスプリング後部枢支位置からアクスル中心までの間隔を、リーフスプリング前部枢支位置からアクスル中心までの間隔よりも大きくしたので、車両の乗り心地の向上に加えて、ロール剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0022】
図1及び図2は本発明のサスペンション構造の実施の形態の第1の例を示すもので、フロントリーフスプリング21の後端部分をアクスル22上面に当接させるとともに、リヤリーフスプリング23の前端部分をアクスル22下面に当接させて、両リーフスプリング21,23をアクスル22に締結してある。
【0023】
更に、フロントリーフスプリング21の前端部分のアイ24をサイドレール3に設けてあるフロントブラケット25に枢支し、リヤリーフスプリング23の後端部分のアイ26にシャックル27の一端部分を枢支し、当該シャックル27の他端部分をサイドレール3に設けてあるリヤブラケット28に枢支しており、アクスル22の両端部分にタイヤ9を装着したホィールを取り付けている。
【0024】
リヤリーフスプリング23とサイドレール3の間には、エアスプリング29がアクスル22の後方側に位置するように介在している。
【0025】
つまり、フロントリーフスプリング21、アクスル22、リヤリーフスプリング23、及びエアスプリング29の位置関係を特定化したので、従来のサスペンション構造と対比すると、エアスプリング29の高さHがアクスル22の厚みに応じた分だけ伸びてエアスプリング29の空気容量が増え、ばね定数が大幅に下がって車両の乗り心地を向上することになる。
【0026】
フロントリーフスプリング21がアクスル22の上側にある分だけフロントブラケット25の形状を小さくすることができ、軽量化が図られる。
【0027】
更に、リヤリーフスプリング23の後端寄り部分、具体的には、エアスプリング29の取付位置の後方側の板厚は前端寄り部分に比べて薄くしてある。
【0028】
リヤリーフスプリング23の後部枢支位置であるアイ26中心からアクスル22中心までの間隔Lrは、フロントリーフスプリング21の前部枢支位置であるアイ24からアクスル22中心までの間隔Lfよりも大きく設定してある。
【0029】
これにより、リヤリーフスプリング23のアクスル22締結位置の後方側におけるばね定数が下がって車両の乗り心地の向上に寄与し、また、フロントリーフスプリング21のアクスル22締結位置の前方側におけるばね定数が相対的に高くなってロール剛性を確保することができる。
【0030】
タイヤ9のステアリング機構は、各ホィールを枢支しているステアリングナックルから車両前方へ向けてナックルアーム18をそれぞれ突出させ、アクスル22に対して平行なタイロッド19により両ナックルアーム18の先端部分を連結している。
【0031】
両ナックルアーム18の先端部分の間隔W1は、各ステアリングナックルの転向中心となるキングピン20の間隔W0よりも広く設定してある。
【0032】
これにより、タイロッド19がエアスプリング29に干渉せずに、アッカーマン方式のリンクを成立させることができる。
【0033】
図3は本発明のサスペンション構造の実施の形態の第2の例を示すもので、フロントリーフスプリング30の後端部分をアクスル22上面に当接させるとともに、リヤリーフスプリング31の長手方向中間部分をアクスル22下面に当接させて、両リーフスプリング30,31をアクスル22に締結してある。
【0034】
リヤリーフスプリング31前端寄り部分は、フロントリーフスプリング30下面との間に空隙を形成するように弓なりに曲り、その先端部分がフロントリーフスプリング30に拘束されている。
【0035】
更に、フロントリーフスプリング30の前端部分のアイ32をサイドレール3に設けてあるフロントブラケット25に枢支し、リヤリーフスプリング31の後端部分のアイ33にシャックル27の一端部分を枢支し、当該シャックル27の他端部分をサイドレール3に設けてあるリヤブラケット28に枢支しており、アクスル22の両端部分にタイヤ9を装着したホィールを取り付けている。
【0036】
リヤリーフスプリング31とサイドレール3の間には、エアスプリング29がアクスル22の後方側に位置するように介在している。
【0037】
つまり、フロントリーフスプリング30、アクスル22、リヤリーフスプリング31、及びエアスプリング29の位置関係を特定化したので、従来のサスペンション構造と対比すると、エアスプリング29の高さHがアクスル22の厚みに応じた分だけ伸びてエアスプリング29の空気容量が増え、ばね定数が大幅に下がって車両の乗り心地を向上することになる。
【0038】
フロントリーフスプリング30がアクスル22の上側にある分だけフロントブラケット25の形状を小さくすることができ、軽量化が図られる。
【0039】
更に、リヤリーフスプリング23の後端寄り部分、具体的には、エアスプリング29の取付位置の後方側の板厚は前端寄り部分に比べて薄くしてある。
【0040】
また、リヤリーフスプリング23の前端寄り部分、具体的には、アクスル22締結位置の前方側の板厚は、その上側にあるフロントリーフスプリング30に比べて薄くしてある。
【0041】
リヤリーフスプリング31の後部枢支位置であるアイ33中心からアクスル22中心までの間隔Lrは、フロントリーフスプリング30の前部枢支位置であるアイ32からアクスル22中心までの間隔Lfよりも大きく設定してある。
【0042】
これにより、リヤリーフスプリング31のアクスル22締結位置の後方側におけるばね定数が下がって車両の乗り心地の向上に寄与し、また、フロントリーフスプリング30のアクスル22締結位置の前方側におけるばね定数が相対的に高くなってロール剛性を確保することができる。
【0043】
タイヤ9のステアリング機構は、図2に示すものと同様に、タイロッド19をアクスル22の前方側に配置してある。
【0044】
図4は本発明のサスペンション構造の実施の形態の第3の例を示すもので、リーフスプリング34の長手方向中間部分をアクスル22上面に締結してある。
【0045】
車両側方から見たリーフスプリング34の形状は、後方側からアクスル22側に向けて踏み段状に屈曲している。
【0046】
更に、リーフスプリング34の前端部分のアイ35をサイドレール3に設けてあるフロントブラケット25に枢支し、リーフスプリング34の後端部分のアイ36にシャックル27の一端部分を枢支し、当該シャックル27の他端部分をサイドレール3に設けてあるリヤブラケット28に枢支しており、アクスル22の両端部分にタイヤ9を装着したホィールを取り付けている。
【0047】
リーフスプリング34とサイドレール3の間には、エアスプリング29がアクスル22の後方側(踏み段状部位の下側)に位置するように介在している。
【0048】
つまり、リーフスプリング34、アクスル22、及びエアスプリング29の位置関係を特定化したので、従来のサスペンション構造と対比すると、エアスプリング29の高さHがアクスル22の厚みに応じた分だけ伸びてエアスプリング29の空気容量が増え、ばね定数が大幅に下がって車両の乗り心地を向上することになる。
【0049】
リーフスプリング34の前端寄り部分がアクスル22の上側にある分だけフロントブラケット25の形状を小さくすることができ、軽量化が図られる。
【0050】
更に、リーフスプリング34の後端寄り部分、具体的には、エアスプリング29の取付位置の後方側の板厚は前端寄り部分に比べて薄くしてある。
【0051】
リーフスプリング34の後部枢支位置であるアイ36中心からアクスル22中心までの間隔Lrは、リーフスプリング34の前部枢支位置であるアイ35からアクスル22中心までの間隔Lfよりも大きく設定してある。
【0052】
これにより、リーフスプリング34のアクスル22締結位置の後方側におけるばね定数が下がって車両の乗り心地の向上に寄与し、また、リーフスプリング34のアクスル22締結位置の前方側におけるばね定数が相対的に高くなってロール剛性を確保することができる。
【0053】
タイヤ9のステアリング機構は、図2に示すものと同様に、タイロッド19をアクスル22の前方側に配置してある。
【0054】
図5は本発明のサスペンション構造の実施の形態の第4の例を示すもので、リーフスプリング37の長手方向中間部分下面に短尺のサブリーフスプリング38の前端部分を当接させ、当該サブリーフスプリング38の前端部分をアクスル39上面に載せて、両リーフスプリング37,38をアクスル39に締結してある。
【0055】
更に、リーフスプリング37の前端部分のアイ40をサイドレール3に設けてあるフロントブラケット41に枢支し、リーフスプリング37の後端部分のアイ42にシャックル27の一端部分を枢支し、当該シャックル27の他端部分をサイドレール3に設けてあるリヤブラケット28に枢支しており、アクスル39の両端部分にタイヤ9を装着したホィールを取り付けている。
【0056】
リーフスプリング37とサイドレール3の間には、エアスプリング29がアクスル39の後方側(踏み段状部位の下側)に位置するように介在している。
【0057】
サブリーフスプリング38の後端部分は、リーフスプリング37とエアスプリング29に締結してある。
【0058】
これにより、エアスプリング29の反力を、該エアスプリング29が載っているリーフスプリング37、及びその下面に当接しているサブリーフスプリング38により受けるので、アクスル39締結位置の前方側におけるばね定数を相対的に高くなってロール剛性を確保することができる。
【0059】
なお、本発明のサスペンション構造は、上述した実施の形態だけに限定されるものではなく、シャックルを用いずにリーフスプリング後部枢支位置であるアイをリアブラケットに連結する構成を採ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のサスペンション構造は、様々な車種に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のサスペンション構造の実施の形態の第1の例を示す概念図である。
【図2】図1に関連するステアリング機構を示す概念図である。
【図3】本発明のサスペンション構造の実施の形態の第2の例を示す概念図である。
【図4】本発明のサスペンション構造の実施の形態の第3の例を示す概念図である。
【図5】本発明のサスペンション構造の実施の形態の第4の例を示す概念図である。
【図6】従来のサスペンション構造の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0062】
3 サイドレール(シャシフレーム)
21 フロントリーフスプリング
23 リヤリーフスプリング
22 アクスル
24 アイ(前部枢支位置)
26 アイ(後部枢支位置)
29 エアスプリング
30 フロントリーフスプリング
31 リヤリーフスプリング
32 アイ(前部枢支位置)
33 アイ(後部枢支位置)
34 リーフスプリング
35 アイ(前部枢支位置)
36 アイ(後部枢支位置)
37 リーフスプリング
38 サブリーフスプリング
39 アクスル
Lf 間隔
Lr 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル上面に後端部分を締結したフロントリーフスプリングと、後端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル下面に前端部分を締結したリヤリーフスプリングと、アクスル後方側に位置し且つリヤリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備えてなることを特徴とするサスペンション構造。
【請求項2】
前端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル上面に後端部分を締結したフロントリーフスプリングと、後端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル下面に長手方向中間部分を締結したリヤリーフスプリングと、アクスル後方側に位置し且つリヤリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備え、フロントリーフスプリング下面とリヤリーフスプリング前端寄り部分上面の間に空隙が形成されるように当該リヤリーフスプリング前端をフロントリーフスプリングに拘束したことを特徴とするサスペンション構造。
【請求項3】
両端部分がシャシフレームに枢支され且つアクスル上面に長手方向中間部分を締結したリーフスプリングと、アクスル後方側に位置し且つリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備え、当該エアスプリングの下端部分がアクスル下面に並ぶようにリーフスプリングを折り曲げたことを特徴とするサスペンション構造。
【請求項4】
リーフスプリング後部枢支位置からアクスル中心までの間隔を、リーフスプリング前部枢支位置からアクスル中心までの間隔よりも大きくした請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のサスペンション構造。
【請求項5】
両端部分をシャシフレームに枢支したリーフスプリングと、該リーフスプリングの長手方向中間部分下面に当接し且つアクスル上面及びリーフスプリングに前端部分を締結したサブリーフスプリングと、該サブリーフスプリングの後端部分の上方に位置し且つリーフスプリングとシャシフレームの間に介在するエアスプリングとを備えてなることを特徴とするサスペンション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−44345(P2006−44345A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225197(P2004−225197)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】