説明

サセプタ及びこれを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】 半導体基板外周部であって、サセプタの裏面側の上段座ぐり部に対応する位置の温度を下げ、基板裏面における外周部と内周部との熱的条件を一定にし、基板裏面における裏面デポの発生を抑制できるサセプタ及びそのサセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することで問題の解決を試みた。
【解決手段】 エピタキシャル層の気相成長を行う際に半導体基板を支持するサセプタであって、サセプタの上面には、内部に半導体基板が配置される座ぐりが形成され、該座ぐりは、半導体基板の外周縁部を支持する上段座ぐり部と、該上段座ぐり部よりも下段でかつ中心側に形成された下段座ぐり部とを有する二段構造を成し、下段座ぐり部には、前記サセプタの裏面まで貫通し、気相成長を行う際にも開放状態となる貫通孔が形成されており、サセプタの裏面側には、上段座ぐり部に対応する位置に溝が設けられたものであることを特徴とするサセプタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサセプタ及びエピタキシャルウェーハの製造方法に関し、具体的には、エピタキシャル気相成長時に、ウェーハ裏面外周に発生する析出物(デポジション)を低減することができるサセプタ及び該サセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板であるシリコンウェーハのエピタキシャル成長において、外周抵抗率分布の向上や裏面外観の改善を目的として、しばしば、サセプタ裏面まで貫通し、開放された貫通孔が設けられたサセプタが用いられる(特許文献1)。サセプタに設けられた貫通孔によって、種々の品質改善が達成されたが、それと同時に、ウェーハの裏面外周部への局所的なデポジション(以下、「裏面デポ」と呼ぶ)が発生するようになった。
【0003】
通常、原料ガスはウェーハ表面側に流されるが、エピタキシャル製造装置の機構上、サセプタの裏面にも原料ガスが回り込むことがある。サセプタの裏面に回りこんだ原料ガスは、サセプタの貫通孔から更にウェーハ裏面に回り込み、ウェーハ裏面で反応し、裏面デポが発生してしまう。
【0004】
このとき、ウェーハの裏面デポは、サセプタとウェーハとの接触部近傍、即ち、ウェーハ裏面の外周部分(直径300mmのウェーハであれば、ウェーハの中心から半径147〜149mm程度の部分)で局所的に発生し、その高さは反応時間に応じて変化するが、数百nmに至る。
【0005】
裏面デポが発生したエピタキシャルウェーハの平坦度を裏面基準で測定した場合、その厚み形状は、外周部分で急激に増大した形となり、平坦度悪化の要因となる。デバイスが微細化され、ウェーハ外周部分にまで高平坦度が求められる昨今において、裏面デポは最先端品の製造に対して大きな妨げとなる。
【0006】
従来、裏面デポはウェーハとサセプタとが接触または非常に近接して重なり合う部分、すなわちサセプタの載り代の部分に集中して発生し、裏面デポ高さはサセプタ側の加熱量に応じて変動することから、前記サセプタの載り代を可能な限り小さくする方法や、逆にサセプタの載り代を拡大し、裏面デポを連続的に発生させる方法、またはサセプタ下側のランプによるランプ加熱を低減するという方法などの対策が主として用いられ、対応されてきた。
【0007】
しかしながら、上記の対策方法は、裏面デポに対しては有効ながらも、スリップ転位が発生しやすい、表面のナノトポロジーや外周抵抗率分布を損ねるといった弊害もあった。
【0008】
また、CVDコールドウオール法で誘導加熱型サセプタにより基板を加熱する際に、サセプタ中心近傍に溝を形成することにより、該溝から高周波磁界をサセプタ内に侵入させ、サセプタ中心近傍を高温領域とすることによって、サセプタとウェーハとの接触面の温度分布を均一にすることができるサセプタ(特許文献2)や、サセプタ裏面に多数の凹凸を形成することによって、ヒーターからの熱の吸収面積を増大させることができるサセプタ(特許文献3)が従来から用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−229370
【特許文献2】特開平10−12364
【特許文献3】実開平6−23240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体基板の外周縁部を支持する部分(以下、上段座ぐり部と呼ぶ)と、該上段座ぐり部よりも下段でかつサセプタ中心側に形成され、前記貫通孔を有する部分(以下、下段座ぐり部と呼ぶ)との二段構造で形成される座ぐりを有するサセプタにおいては、基板外周部の、特に上段座ぐり部では基板とサセプタとが接触し、かつ接触部以外も基板とサセプタとが近接しているため、裏面デポがあまり発生しない内周部よりも温度が高くなっていると考えられる。
【0011】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、裏面デポは基板とサセプタとの間の温度環境に密接な関係が有ると推察し、基板外周部であって、サセプタの裏面側の上段座ぐり部に対応する位置の温度を下げ、基板裏面における外周部と内周部との熱的条件を一定にし、基板裏面における裏面デポの発生を抑制できるサセプタ及びそのサセプタを用いてエピタキシャル層の気相成長を行うエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明では、エピタキシャル層の気相成長を行う際に半導体基板を支持するサセプタであって、該サセプタの上面には、内部に前記半導体基板が配置される座ぐりが形成され、該座ぐりは、前記半導体基板の外周縁部を支持する上段座ぐり部と、該上段座ぐり部よりも下段でかつ中心側に形成された下段座ぐり部とを有する二段構造を成し、前記下段座ぐり部には、前記サセプタの裏面まで貫通し、前記気相成長を行う際にも開放状態となる貫通孔が形成されており、前記サセプタの裏面側には、前記上段座ぐり部に対応する位置に溝が設けられたものであることを特徴とするサセプタを提供する。
【0013】
このような溝が形成されたサセプタであれば、該形成された溝の側面積の分、サセプタ裏面の表面積が増大するため、サセプタ裏面からの放熱が増える。さらに、前記溝が形成されることによって段差が生まれ、ランプ等の加熱手段からの加熱光に対して影となる部分が生じるため、基板外周部の温度が下がり、基板外周部と内周部との熱的条件を一定にすることができる。これによって裏面デポの発生を抑制し、基板表面のナノトポロジーや外周抵抗率分布を向上して高品質にすることができる。
【0014】
またこのとき、前記溝は、複数の溝が放射状に配列されたものであることが好ましい。
【0015】
このように配列された溝であれば、より効率的かつ均一に基板外周部の温度を下げ、基板外周部と内周部との熱的条件をより確実に一定にすることができる。
【0016】
またこのとき、前記放射状の複数の溝は、それぞれ前記サセプタ上に載置される基板の半径方向の長さが、該基板半径の1/4以下であり、幅が5mm以下であって、深さが前記上段座ぐり部に対応する位置のサセプタの厚みの75%以下であることが好ましい。
【0017】
このように形成された溝であれば、本発明の十分な効果を得ることができるとともに、サセプタの強度も維持することができる。
【0018】
また、本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法であって、本発明のサセプタを用いて、該サセプタの座ぐりに基板を載置し、原料ガスを流しながら前記基板上にエピタキシャル層の気相成長を行うことを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0019】
このように気相成長を行うことによって、基板外周部の温度を下げ、基板裏面における外周部と内周部との熱的条件を一定にさせることができ、裏面デポの発生を抑制することによって基板表面のナノトポロジーや外周抵抗率分布を損ねることなく、高品質のエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、半導体基板の表面上にエピタキシャル層を気相成長させる際に、基板外周部と内周部との熱的条件を一定にすることができ、これによって裏面デポの発生を抑制し、基板表面のナノトポロジーや外周抵抗率分布を高品質にすることができるサセプタが提供される。また、こういったサセプタを用いて基板表面上にエピタキシャル層の気相成長を行うことにより、裏面デポの発生が抑制された高品質のエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明において用いられるエピタキシャル成長装置の概略断面図の一例を示した図である。
【図2】本発明のサセプタの概略底面図及び上段座ぐり部周辺の概略断面図の一例を示した図である。
【図3】サセプタ裏面の上段座ぐり部に対応する位置における表面積比(溝無しを1とする)と、製造されたエピタキシャルウェーハの外周部におけるエピタキシャル層の厚みの高低差との相関を示した図である。
【図4】サセプタ裏面の上段座ぐり部に対応する位置における表面積比(溝無しを1とする)と、半導体基板におけるエピタキシャル層気相成長後の最大裏面デポ高さとの相関を示した図である。
【図5】実施例及び比較例における結果を、WaferSightを用いて測定した結果を示した図である。
【図6】実施例及び比較例における結果を、UA3Pを用いて測定した結果を示した図である。
【図7】本発明が適用されるエピタキシャルウェーハの製造方法の処理の流れを示したフロー図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板としてシリコンウェーハを用いた場合を例に挙げて図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されず、シリコンカーバイドウェーハや、GaPウェーハ、GaAsウェーハなどの化合物半導体ウェーハ等にも用いることができる。
【0023】
本発明のサセプタが用いられるエピタキシャル成長装置の一例の概略図を図1に示した。
エピタキシャル成長装置51は、チャンバー52と、チャンバー52内部に配置されたサセプタ71、サセプタを下方から支持し、回転上下動自在なサセプタ支持手段53、チャンバー52内にウェーハを搬入したり、逆に外へと搬出したりするためのウェーハ搬送口54、チャンバー52内に各種ガスを供給するガス導入管55、ガス導入管55に接続され、チャンバー52内に水素ガスを供給する図示しない水素ガス供給手段及びシラン等の原料ガスを供給する図示しない原料ガス供給手段、チャンバー52内から各種ガスを排出するガス排出管57、チャンバー52の外部に備えられた加熱手段58、チャンバー52内にシリコンウェーハを移送し、また、チャンバー52内からシリコンウェーハを移送する図示しないウェーハ移送手段等から構成される。
【0024】
尚、サセプタ71には、リフトピン用貫通孔73が形成されているものであってもよい。リフトピン用貫通孔73には、リフトピン75が挿通される。
また、チャンバー52の内部にはリフトピン75をサセプタ71に対して相対的に上下させることができるリフトピン昇降手段を設けてもよい。
【0025】
さらに、本発明であるサセプタ71の拡大概略図を図2に示した。サセプタ71には、載置するシリコンウェーハを位置決めする座ぐり72が形成され、該座ぐり72はウェーハWの外周縁部を支持する上段座ぐり部72aと、該上段座ぐり部よりも下段でかつ中心側に形成された下段座ぐり部72bとを有する二段構造を成している。また、下段座ぐり部72bの略全面に多数の貫通孔74が形成されている。
【0026】
また、サセプタ71裏面の上段座ぐり部72aに対応する位置には溝76が設けられている。
上記溝76を設けたことにより、図2(b)のSで示される、サセプタ71の裏面の前記上段座ぐり部72aに対応する位置の表面積が増大され、ウェーハW裏面からの放熱が増える。さらに、ランプ等の加熱手段58からの加熱光に対して影となる部分も生じるため、ウェーハW外周部の温度が下がり、ウェーハW外周部と内周部との熱的条件を一定にすることができる。これによって裏面デポの発生を抑制し、ウェーハW主表面のナノトポロジーや外周抵抗率分布の劣化を抑制することができる。
【0027】
このような溝76は、図2(a)に示したように径方向に放射状に複数設けることによって、ウェーハW裏面外周部の表面積をさらに均一かつ効果的に増大させることができるため好ましい。また、放射状に複数設けられた溝76それぞれのサイズを、ウェーハWの半径方向の長さを該ウェーハ半径の1/4以下、幅を5mm以下、深さを上段座ぐり部72aに対応する位置のサセプタ71の厚みの75%以下とすれば、より効果的である。
尚、溝76の形状としては、図2(a)に示したような角柱状に限定されず、例えば円柱状や半球状としても良い。また、例えばサセプタ71の前記上段座ぐり部72aに対応する位置の全ての範囲を含むようにひとつのリング状の大きな溝を設けても良いが、前述のように溝を複数設けた方がより効果的であり、サセプタの強度上も問題が生じにくい。
【0028】
このようなサセプタ71を具備したエピタキシャル成長装置51を用いて、以下のようにして、シリコンウェーハ表面上にエピタキシャル層を気相成長させる。
【0029】
本発明が適用されるエピタキシャルウェーハの製造方法の手順のフロー図を図7に示す。
まず、工程(a)では、エピタキシャル層を成長させる半導体基板(シリコンウェーハ)を準備する。
次に、工程(b)において、シリコンウェーハに対し、適宜RCA洗浄等の洗浄を行う。
この洗浄工程における洗浄法は、典型的なRCA洗浄の他、薬液の濃度や種類を通常行われる範囲で変更したものを用いることもできる。
【0030】
次に、工程(c)において、図示しないウェーハ移送手段を用いてチャンバー52内にシリコンウェーハWを移送し、本発明のサセプタ71の座ぐり部72に載置する。シリコンウェーハのサセプタ71への載置方法は、リフトピン75を用いる方法の他、通常用いられる載置方法を適用できる。
【0031】
次に、工程(d)では、チャンバー52内に、水素ガス供給手段からガス導入管55を通して、チャンバー52内に水素ガスを導入し、加熱手段58によって加熱して水素処理を行い、シリコンウェーハ表面に生じた自然酸化膜を除去する。
【0032】
次に、工程(e)において、シリコンウェーハの表面に、エピタキシャル層の気相成長を行う。このエピタキシャル層の気相成長は、モノシランやトリクロロシラン、四塩化珪素などの原料ガスと、キャリアガスとなる水素ガスとをチャンバー52内に導入し、加熱することによって行う。
このようにして、シリコンウェーハの表面上にエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハを製造することができる。
このとき本発明では、裏面の、上段座ぐり部に対応する位置に溝を有するサセプタを用いているので、ウェーハ外周部の裏面デポを抑制し、高品質なエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、以下の実験例、実施例及び比較例において、エピタキシャルウェーハの膜厚及びシリコンウェーハの裏面デポを評価する装置として用いたWaferSight(KLA−Tencor Corporation製)及びUA3P(パナソニック(株)製)について説明する。
【0034】
WaferSightとは、ウェーハに光を入射し、ウェーハからの反射光と基準面からの反射光との光学干渉によって生じる干渉縞の数と幅から、ウェーハ表面の変位量を計測することを原理とする測定器である。実際の測定においては、ウェーハ両面に前述の計測を行い、予め測定しておいた、ある特定の1点の厚みから全体の厚み変化を算出する。
また、UA3Pは触針式表面変位量によって測定を行う測定機である。探針を微弱な一定荷重で対象に押し当て、対象の凹凸に応じて動く針の変位量をレーザーで計測することを原理とする。
【0035】
(実験例)
まずサセプタとして、サセプタ裏面に何も設けられていないもの、サセプタ裏面の上段座ぐり部に対応する位置に溝を複数設けることによって、何も設けなかったものに対して裏面外周部の表面積が3倍に増大されたもの、また同様にして裏面外周部の表面積が5倍に増大されたものを用意した。
これら、サセプタを具備するエピタキシャルウェーハ製造装置を用いて、サセプタの座ぐりに半導体基板としてシリコンウェーハを載置し、ランプで加熱して原料ガスを流しながら直径300mmのシリコンウェーハ表面上に厚さ5μmのエピタキシャル層の気相成長を行った。
このとき前記溝は、ウェーハ半径方向の長さが10mm、幅が2mm、深さが2mmである直方体状のものとして、放射状に設けた。また、反応圧力を常圧、反応温度を1100℃、成長速度を2.5μm/minとした。
【0036】
このとき、本発明の溝が設けられているサセプタの裏面部分に対応する位置であるシリコンウェーハの中心から半径147mmおよび149mmの2点において、前記サセプタを具備する各エピタキシャルウェーハ製造装置によって製造されたエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層形成前後でのウェーハ厚さ変化量をWaferSightで測定し、前記2点間のこの値(エピタキシャル層形成前後でのウェーハ厚さ変化量)の差を求めた。このときの結果を図3に示す。
また、上記範囲におけるシリコンウェーハ裏面のデポ高さを、UA3Pを用いて測定した。このときの結果を図4に示す。
【0037】
図3及び図4から、サセプタ裏面の上段座ぐり部に対応する位置の表面積と、そのとき発生する裏面デポの高さには相関があることがわかる。これは、サセプタ裏面の表面積が増大することによって放熱量が増加し、さらに溝が設けられたことによってランプからの加熱光に対する影が生じたためであると考えられる。
【0038】
(実施例)
裏面の上段座ぐり部に対応する位置に溝が設けられたサセプタを具備するエピタキシャルウェーハ製造装置を用いて、サセプタの座ぐりに半導体基板としてシリコンウェーハを載置し、原料ガスを流しながら直径300mmのシリコンウェーハ表面上に厚さ5μmのエピタキシャル層の気相成長を行った。
このとき前記溝は、ウェーハ半径方向の長さが10mm、幅が2mm、深さが2mmである直方体状のものとして、放射状に240箇所設けた。また、反応圧力を常圧、反応温度を1100℃、成長速度を2.5μm/minとした。
このとき、シリコンウェーハの中心から半径147mm〜149mm程度の範囲、すなわち、本発明である溝が設けられているサセプタの裏面部分に対応する範囲において、前記サセプタを具備する各エピタキシャルウェーハ製造装置によって製造されたエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層形成前後でのウェーハ厚さ変化量をWaferSightで測定し、各測定点の値から平均の変化量を差し引いた値を求めた。このときの結果を図5に示す。
また、上記範囲におけるシリコンウェーハ裏面のデポ高さを、UA3Pを用いて測定した。このときの結果を図6に示す。
【0039】
(比較例)
サセプタ裏面の上段座ぐり部に対応する位置に溝を設けなかったこと以外は実施例と同様に、直径300mmのシリコンウェーハ表面上に厚さ5μmのエピタキシャル層の気相成長を行った。
このとき、シリコンウェーハの中心から半径147mm〜149mm程度の範囲において、前記サセプタを具備する各エピタキシャルウェーハ製造装置によって製造されたエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層形成前後でのウェーハ厚さ変化量をWaferSightで測定し、各測定点の値から平均の変化量を差し引いた値を求めた。このときの結果を図5に示す。
また、上記範囲におけるシリコンウェーハ裏面のデポ高さを、UA3Pを用いて測定した。このときの結果を図6に示す。
【0040】
実施例及び比較例からわかるように、サセプタ裏面の上段座ぐり部に対応する位置に溝を設けることによって、サセプタ裏面の表面積を増大させるとともにランプからの加熱光に対する影を生じさせることで、ウェーハ外周部の温度を下げ、ウェーハ外周部と内周部との熱的条件を一定にすることができる。またこれによって裏面デポの発生を効果的に抑制し、ウェーハ表面のナノトポロジーや外周抵抗率分布を損ねることなく高品質のエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0042】
51…エピタキシャル成長装置、 52…チャンバー、 53…サセプタ支持手段、
54…ウェーハ搬送口、 55…ガス導入管、 57…ガス排出管、
58…加熱手段、 71…サセプタ、 72…座ぐり、 72a…上段座ぐり部、
72b…下段座ぐり部、 73…リフトピン用貫通孔、 74…貫通孔、
75…リフトピン、 76…溝、 W…ウェーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル層の気相成長を行う際に半導体基板を支持するサセプタであって、該サセプタの上面には、内部に前記半導体基板が配置される座ぐりが形成され、該座ぐりは、前記半導体基板の外周縁部を支持する上段座ぐり部と、該上段座ぐり部よりも下段でかつ中心側に形成された下段座ぐり部とを有する二段構造を成し、前記下段座ぐり部には、前記サセプタの裏面まで貫通し、前記気相成長を行う際にも開放状態となる貫通孔が形成されており、前記サセプタの裏面側には、前記上段座ぐり部に対応する位置に溝が設けられたものであることを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
前記溝は、複数の溝が放射状に配列されたものであることを特徴とする請求項1に記載のサセプタ。
【請求項3】
前記放射状の複数の溝は、それぞれ前記サセプタ上に載置される基板の半径方向の長さが、該基板半径の1/4以下であり、幅が5mm以下であって、深さが前記上段座ぐり部に対応する位置のサセプタの厚みの75%以下であることを特徴とする請求項2に記載のサセプタ。
【請求項4】
エピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のサセプタを用いて、該サセプタの座ぐりに半導体基板を載置し、原料ガスを流しながら前記基板上にエピタキシャル層の気相成長を行うことを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186306(P2012−186306A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48159(P2011−48159)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】