説明

シェル形ころ軸受

【課題】 低コストおよび長寿命化を図り、高いシール性を有するシェル形ころ軸受を提供する。
【解決手段】 シェル形ころ軸受21は、両端の鍔部を径方向内側に縁曲げ加工されたシェル形外輪22と、シェル形外輪の内径面に沿うように配置されるころ23と、シェル形外輪の内径側に組み込まれる芯金無しシール11とを含む。ころ23を組み込んだ状態でシェル形外輪22を熱処理した後、芯金無しシール11を弾性変形させ、鍔部26を乗り越えてシェル形外輪22の内側に組み込む。ここで、ころ23は、その表層部に窒素富化層を有し、窒素富化層の残留オーステナイト量は、20容量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シェル形ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスミッションやカーエアコン用コンプレッサ、スタータ等に使用される軸受として、軸受投影面積が小さいにもかかわらず、高荷重の負荷を受けることができ、かつ、コストが安いシェル形ころ軸受が使用されていた。このようなシェル形ころ軸受は、シェル形外輪と、シェル形外輪の転走面である内径面に沿うように配置された複数のころと、複数のころを保持する保持器とからなる。
【0003】
ここで、従来のシェル形ころ軸受の製造方法について簡単に説明する。図6は、従来のシェル形ころ軸受の製造方法の一例を示す概略図である。図6を参照して、まず、シェル形外輪の素材である平板状の鋼板101を、深絞り加工してカップ状に成型した後、カップの底部分を打ち抜いて一方のフランジ102を形成する。その後、転走面103の加工を行い、全体を浸炭焼入れ等の焼入れ処理を行う。ここで、カップの底部分を打ち抜いた状態で一旦焼入れ処理を行うため、カップの入口側のフランジ107の縁曲げ加工を行う前に、縁曲げ部104を防浸炭処理や焼きなまし処理をして、縁曲げ加工を行っても割れが発生しないようにする。次に、ころ105と保持器106とを入れ、カップの入口側の縁曲げ部104を縁曲げ加工して他方のフランジ107を形成する。その後、洗浄等の工程を経て、シェル形ころ軸受が製造される。
【0004】
組み入れられるころの材料としては、SUJ軸受鋼が一般的に用いられ、表層部から内部にかけ、漸減するように残留オーステナイトを有し、その量は、最大でも15容量%程度であるのが一般的である。その結果、ころの表面硬さは、ビッカーズ硬度(Hv)で700〜750程度である。また、シェル形外輪の素材としては、SCM415等の肌焼鋼が用いられ、組み入れられる保持器の素材としては、通常の冷延鋼板(例えばSPCC)が用いられ、軟窒化処理をして強度を向上させている。
【0005】
このようにして製造されたシェル形ころ軸受は、縁曲げ部104において、防浸炭処理や焼きなまし処理が行われているため、縁曲げ部104の硬度が低くなり、シェル形外輪において、不均一な硬度を有することになる。また、熱履歴が異なるため、縁曲げ加工されたそれぞれの両端の鍔部および中央部の外径がばらつき、真円度が良好とならない。その結果、長寿命を図ることができなかった。
【0006】
このような問題に対し、ころおよび保持器を入れた後、縁曲げ部104を縁曲げ加工し、その後、ころおよび保持器を含むシェル形ころ軸受全体を熱処理する製造する方法が、特開平10−46318号公報(特許文献1)に開示されている。
【0007】
特許文献1によると、ころおよび保持器を組み込んで縁曲げ加工を行った後、シェル形ころ軸受全体の熱処理を行うため、焼きなまし工程等が不要となる。したがって、真円度は良好となり、また、シェル形外輪において、部分的に硬度が低くなることはない。したがって、長寿命を実現することができる。また、熱処理工程を簡略化することもできるため、安価に製造することができる。
【特許文献1】特開平10−46318号公報(段落番号0014〜0016)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような製造方法で製造されたシェル形ころ軸受は、低コストおよび長寿命が実現できるため、種々の用途で使用される。たとえば、小さな軸受投影面積と安いコストが要求されるスロットルバルブ装置におけるスロットルシャフトを支持する軸受として、使用される。ここで、スロットルシャフトを支持する軸受として使用されるには、シール性、すなわち、流体漏れ防止性能が優れていることが要求される。
【0009】
軸受に組み込まれ、流体の漏れを防止するシールには、芯金を備えるシールがある。しかし、芯金は剛性を有しているため、その形状を変更することが困難であり、特許文献1に開示された製造工程において、縁曲げ加工を施した後に、シェル形外輪の内径側に組み入れることはできない。したがって、予め縁曲げ加工を施す前に、シェル形外輪の内径側に組み込んでおく必要がある。しかし、熱処理工程において、シール部分は高温での耐久性に欠け、シェル形外輪等と同条件で熱処理すると、シールが大きく破損することになる。したがって、低コスト、長寿命および高いシール性を満足させることができなかった。
【0010】
この発明は、低コストおよび長寿命化を図り、高いシール性を有するシェル形ころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るシェル形ころ軸受は、両端の鍔部を径方向内側に縁曲げ加工されたシェル形外輪と、シェル形外輪の内径面に沿うように配置されるころと、シェル形外輪の内径側に組み込まれる芯金無しシールとを含む。ここで、ころは、その表層部に窒素富化層を有し、窒素富化層の残留オーステナイト量は、20容量%以上である。
【0012】
このように構成することにより、ころの表面の硬度を確保することができるため、混入した異物による圧痕の発生等を減少させ、長寿命を図ることができる。
【0013】
なお、このような構成のシェル形ころ軸受は、ころおよび保持器を組み入れてから全体を熱処理して製造するため、真円度は良好であり、また、部分的に硬度が低くなることはない。また、焼きなまし工程等の熱処理工程が簡略化できるため、安価に製造することができる。
【0014】
さらに、芯金無しシールについても、芯金付きシールと比較してコストが安く、また、大きく弾性変形することができるので、シェル形外輪の両端が縁曲げ加工された後においても、シェル形外輪の内側に組み入れることができる。したがって、ころが組み込まれ、シェル形外輪の両端が縁曲げ加工された状態で熱処理された後に、芯金無しシールをシェル形ころ軸受に組み込むことができ、シェル形ころ軸受のシール性を向上させることができる。
【0015】
好ましくは、芯金無しシールの外径は、熱収縮量を加味した締め代を有する。こうすることにより、低温時において芯金無しシールが熱収縮し、外径が小さくなっても、芯金無しシールの外径寸法は、熱収縮量を加味した締め代を有するため、芯金無しシールの外径面とシェル形外輪の内径面との間にすき間が生じることはない。したがって、低温時においても、芯金無しシールの外径面とシェル形外輪の内径面とが適度な圧力でニップすることができ、シール性を向上することができる。
【0016】
より好ましくは、芯金無しシールの外径面は、相対的に径の小さい小径部分と、この小径部分よりも径方向に膨出して相対的に径が大きくなっている大径部分とを有する。このように構成することにより、シェル形ころ軸受に組み込んだ際に、内径側への芯金無しシールの収縮量を低減することができる。そうすると、リップ部と回転軸との食いつき量を適当にすることができ、回転時における芯金無しシールと回転軸との共回りを防ぎ、シール性を向上することができる。
【0017】
さらに好ましくは、ころの窒素富化層の厚みは、0.1mm以上であってもよいし、ころの表面硬さが、ビッカーズ硬度(Hv)で750以上であってもよい。このように規定することによっても、ころの表面硬度を確保でき、長寿命を図ることができる。
【0018】
さらに好ましくは、シェル形外輪は、その外周面に窒素富化層を有し、シェル形外輪の窒素富化層の残留オーステナイト量は、25容量%以上である。こうすることにより、シェル形ころ軸受の構成部材であるシェル形外輪についても、硬度を確保することができ、長寿命を図ることができる。ここで、シェル形外輪は、ころに比べて、その厚みが薄いため、外周面の残留オーステナイト量は、ころの表層部よりも多く形成させることが必要である。
【0019】
さらに好ましくは、シェル形外輪の窒素富化層の厚みは、0.05mm以上であってもよい。
【0020】
また、シェル形外輪の両端の鍔部の硬度は、均一である。こうすることにより、部分的に硬度が低い部分を有することがなくなるため、長寿命を図ることができる。
【0021】
さらに好ましくは、シェル形ころ軸受は、ころを保持する保持器を含む。ここで、保持器は、その表面に窒素富化層を有し、保持器の表面硬さは、ビッカーズ硬度(Hv)で750以上である。こうすることにより、シェル形ころ軸受に含まれる保持器についても、硬度を確保することができるため、長寿命を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、ころの表面の硬度を確保することができるため、混入した異物による圧痕の発生等を減少させ、長寿命を図ることができる。なお、このような構成のシェル形ころ軸受は、ころおよび保持器を組み入れてから全体を熱処理して製造するため、真円度は良好であり、また、部分的に硬度が低くなることはない。また、焼きなまし工程等の熱処理工程が簡略化できるため、安価に製造することができる。さらに、芯金無しシールについても、芯金付きシールと比較してコストが安く、また、大きく弾性変形することができるので、シェル形外輪の両端が縁曲げ加工された後においても、シェル形外輪の内側に組み入れることができる。したがって、ころが組み込まれ、シェル形外輪の両端が縁曲げ加工された状態で熱処理された後に、芯金無しシールをシェル形ころ軸受に組み込むことができ、シェル形ころ軸受のシール性を向上させることができる。
【0023】
その結果、低コストおよび長寿命化を図り、高いシール性を有するシェル形ころ軸受を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施形態に係るシェル形ころ軸受に含まれる芯金無しシール11の一部を示す断面図である。図2において、芯金無しシール11の外径側に位置する、後述するシェル形外輪(図示せず)の内径面を一点鎖線で示す。図2を参照して、芯金無しシール11は、弾性を有する環状部材12のみから構成されている。したがって、大きく弾性変形をすることができる。
【0025】
ここで、芯金無しシール11の外径寸法Bは、シェル形外輪の内径寸法Cに、熱収縮量を加味した締め代2Aが加えられた寸法である。ここで、熱収縮量を加味した締め代とは、低温時における芯金無しシール11の収縮量を考慮した締め代をいう。また、芯金無しシール11の内径側には、組み込み時に内径側に位置する回転軸とニップするリップ部14が設けられている。
【0026】
次に、この発明の一実施形態に係るシェル形ころ軸受について説明する。図1は、上記した芯金無しシール11を含むシェル形ころ軸受の一部を示す断面図である。なお、組み込む前のフリーな状態の芯金無しシール11を、点線で表す。図1を参照して、シェル形ころ軸受21は、シェル形外輪22と、複数のころ23と、複数のころ23を保持する保持器24と、芯金無しシール11とを有する。ころ23および保持器24は、後述する工程において、シェル形外輪22とともに熱処理されている。ころ23および保持器24は、シェル形外輪22の内径面25に沿うように配置される。また、シェル形外輪22は、その両端に縁曲げ加工された鍔部26を有する。芯金無しシール11は、シェル形外輪22の内径側に組み込まれる。芯金無しシール11が組み込まれる軸方向の位置は、鍔部26と、ころ23を保持する保持器24との間である。
【0027】
次に、シェル形ころ軸受の製造方法について説明する。まず、ころについては、線材(SUJ2鋼)を切断し、落下式端面成型を行い、タンブラー処理を施す。その後、焼入れ、焼戻しを行い、外径研削を施した後、外形スーパー処理を行う。なお、ころの熱処理条件については、840℃で30分の油焼入れを行い、次いで180℃で90分の焼戻しを行う。最後に、寸法を選別し、ころを得る。
【0028】
保持器については、帯鋼(SPC)の断面形状の成型を行い、ポケット抜き工程を行う。その後、切断し、円筒状に曲げ、溶接等を施し、保持器を得る。
【0029】
シェル形外輪については、帯鋼(SCM415)を、深絞り加工してカップ状に成型した後、カップの底部分を打ち抜いて一方のフランジを形成する。その後、転走面の加工を行い、上記した製造方法で得られたころと保持器とを入れ、カップの入口側の縁曲げ部を縁曲げ加工して他方のフランジを形成する。その後、浸炭窒化処理を行い、焼入れ、焼戻しを行う。ここで、浸炭窒化処理の条件については、浸炭窒化雰囲気(RXガスに容積比で1〜3%のアンモニア添加)において、840〜850℃で30分間保持して浸炭窒化させた後、直ちに油急冷を行う。
【0030】
焼入れ、焼戻しを行った後、上記した芯金無しシール11を、シェル形外輪22の内径側に組み込む。まず、芯金無しシール11を、図1中の矢印Uで示す径方向内側に押し縮める。この場合、芯金無しシール11の形状を、楕円等に変形させてもよい。その後、鍔部26を乗り越えてシェル形外輪22の内側に組み込み、所定の位置に配置させる。
【0031】
組み込まれた後、押し縮められた芯金無しシール11は、元の径に戻ろうとし、芯金無しシール11の外径面13とシェル形外輪22の内径面25とが、適度な圧力でニップする。また、内径側についても、弾性を有するリップ部14が、回転軸の外径面と適度な圧力でニップする。このようにして、芯金無しシール11は、シェル形外輪22に組み込まれ、シェル形ころ軸受21が製造される。
【0032】
ここで、従来の製造方法で製造されたシェル形ころ軸受との寿命の比較を行った。従来の製造方法としては、以下の手順で製造されたものを示す。
【0033】
まず、ころについては、線材(SUJ2鋼)を切断し、落下式端面成型を行い、タンブラー処理を施す。その後、焼入れ、焼戻しを行い、外径研削を施した後、外形スーパー処理を行う。なお、ころの熱処理条件については、840℃で30分の油焼入れを行い、次いで180℃で90分の焼戻しを行う。最後に、寸法を選別し、ころを得る。
【0034】
保持器については、帯鋼(SPC)の断面形状の成型を行い、ポケット抜き工程を行う。その後、切断し、円筒状に曲げ、溶接等を施し、保持器を得る。なお、保持器については、570〜580℃で35分間の軟窒化処理を行っている。
【0035】
シェル形外輪については、帯鋼(SCM415)を、深絞り加工してカップ状に成型した後、カップの底部分を打ち抜いて一方のフランジを形成する。その後、840〜890℃で60分保持して浸炭し(RXガス雰囲気中)、油中に焼入れ、ついで、165℃で60分の焼戻しを行った。また、一方の鍔部の焼きなまし処理は、高周波加熱により行った。
【0036】
その後、得られたシェル形外輪に、上記した製造方法で得られたころおよび保持器を入れ、鍔部を径方向内側に縁曲げ加工し、シェル形ころ軸受が製造される。
【0037】
得られた発明品と従来品との性状を、真円度や寿命とともに、表1に示す。なお、真円度や寿命との評価基準は、下記の通りである。また、試験に供した軸受は、オープンエンドシェル形針状ころ軸受であり、内径:15mm、外径23mm、幅16mmのサイズのものを使用した。なお、本発明品と従来品とは、同一寸法である。
【0038】
(真円度)シェル形外輪の外径について、最後に縁曲げ加工により形成させた鍔側外周面(最初にプレス成型した鍔の端面を基準にして12.7mmの位置を測定)の真円度を、タリロンドを用いて測定し、従来品を1としたときの比率を求めた。
【0039】
(寿命)下記の条件で、疲労寿命試験を行い、従来品との比較を行った。
【0040】
回転速度 :5000rpm
ラジアル荷重 :572kgf
【0041】
【表1】

【0042】
表1より、本発明品は、従来品と比較して真円度が向上している。また、寿命も長くなっている。
【0043】
以上より、上記した方法で製造されたシェル形ころ軸受21は、長寿命を実現している。製造方法においても、熱処理工程において焼きなまし工程を含まず、また、弾性を有する環状部材のみで構成される芯金無しシール11を使用することにより、安価に製造することができる。さらに、芯金無しシール11をシェル形外輪の内側に有するため、高いシール性を有する。
【0044】
なお、上記したように、芯金無しシール11の外径は、熱収縮量を加味した締め代を有するため、低温時においても、芯金無しシール11の外径面13と、シェル形外輪22の内径面25との間にすき間が生じることはない。したがって、低温時においても、シェル形ころ軸受21は、高いシール性を有する。
【0045】
ここで、シェル形ころ軸受は、シェル形外輪の一方の鍔部側に芯金無しシールを組み込んでもよいし、両方の鍔部側に組み込んでもよい。図3は、一方の鍔部側に芯金無しシールが組み込まれた場合のシェル形ころ軸受の断面図である。図3を参照して、シェル形ころ軸受31は、シェル形外輪32の一方の鍔部33側に芯金無しシール34が組み込まれている。こうすることにより、一方の鍔部33側の漏れを防止することができる。また、図4は、両方の鍔部側に芯金無しシールが組み込まれた場合のシェル形ころ軸受の断面図である。図4を参照して、シェル形ころ軸受36は、シェル形外輪37の両方の鍔部38a、38b側に芯金無しシール39a、39bが組み込まれている。こうすることにより、両方の鍔部38a、38b側の漏れを防止することができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態においては、芯金無しシールの外径面は、シェル形外輪の内径面に沿う形状であったが、これに限らず、たとえば、相対的に径の小さい小径部分と、この小径部分よりも径方向に膨出して相対的に径が大きくなっている大径部分とを有することにしてもよい。図5(A)は、この場合の芯金無しシール41の一部を示す断面図である。図5(A)を参照して、芯金無しシール41の外径面42は、相対的に径の小さい小径部分44と、この小径部分44よりも径方向に膨出して相対的に径が大きくなっている大径部分43とを有するように、段差形状をもって形成されている。こうすることにより、シェル形ころ軸受に組み込んだ際に、芯金無しシール41の内径側への収縮量を低減することができるので、リップ部と回転軸との食いつき量を適当にすることができる。したがって、回転時において、芯金無しシール41と回転軸とが共回りするおそれがなくなり、高いシール性を有することになる。
【0047】
また、外径面に含まれる大径部分と小径部分は、シェル形外輪の内径面に沿った形状で、段差により連なっていたが、これに限らず、芯金無しシールの外径面は、他の形状であってもよい。たとえば、図5(B)に示すように、芯金無しシール45の大径部分46が内径面に沿った形状を有さず、滑らかな凸状部を有していてもよい。また、図5(C)で示すように、芯金無しシール47が、小径部分からテーパ48で連なる形状であり、大径部分が、内径面に沿う面をほとんどもたない形状であってもよい。さらに、大径部分および小径部分は、外径面のうち、軸方向に複数に分かれて設けられていてもよく、外径面に大径部分または小径部分以外の部分を含んでいてもよい。
【0048】
なお、上記の実施の形態において、シェル形ころ軸受は、保持器を有することとしたが、これに限らず、シェル形ころ軸受は保持器を有しない、いわゆる総ころタイプのシェル形ころ軸受であってもよい。
【0049】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明に係るシェル形ころ軸受は、長寿命であり、安価に製造でき、かつ、高いシール性を有するため、スロットルバルブ装置に備えられたスロットルシャフトを支持する軸受等、低コスト、長寿命および高いシール性が要求されるシェル形ころ軸受に有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】芯金無しシールをシェル形ころ軸受に組み込む状態の一部を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係るシェル形ころ軸受に含まれる芯金無しシールの一部を示す断面図である。
【図3】一方の鍔部側に芯金無しシールを組み込んだシェル形ころ軸受の断面図である。
【図4】両方の鍔部側に芯金無しシールを組み込んだシェル形ころ軸受の断面図である。
【図5】芯金無しシールの他の形態の一部を表す断面図であり、(A)大径部分と小径部分とを有する場合、(B)大径部分が凸状部である場合、(C)外径面がテーパを有する場合を示す。
【図6】従来におけるシェル形ころ軸受を製造する場合の工程概略図である。
【符号の説明】
【0052】
11,34,39a,39b,41,45,47 芯金無しシール、12 環状部材、13,42 外径面、14 リップ部、21,31,36 シェル形ころ軸受、22,32,37 シェル形外輪、23 ころ、24 保持器、25 内径面、26,33,38a,38b 鍔部、43,46 大径部分、44 小径部分、48 テーパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端の鍔部を径方向内側に縁曲げ加工されたシェル形外輪と、
前記シェル形外輪の内径面に沿うように配置されるころと、
前記シェル形外輪の内径側に組み込まれる芯金無しシールとを含むシェル形ころ軸受であって、
前記ころは、その表層部に窒素富化層を有し、
前記ころの窒素富化層の残留オーステナイト量は、20容量%以上である、シェル形ころ軸受。
【請求項2】
前記芯金無しシールの外径は、熱収縮量を加味した締め代を有する、請求項1に記載のシェル形ころ軸受。
【請求項3】
前記芯金無しシールの外径面は、相対的に径の小さい小径部分と、この小径部分よりも径方向に膨出して相対的に径が大きくなっている大径部分とを有する、請求項1または2に記載のシェル形ころ軸受。
【請求項4】
前記ころの窒素富化層の厚みは、0.1mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のシェル形ころ軸受。
【請求項5】
前記ころの表面硬さが、ビッカーズ硬度(Hv)で750以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のシェル形ころ軸受。
【請求項6】
前記シェル形外輪は、その外周面に窒素富化層を有し、
前記シェル形外輪の窒素富化層の残留オーステナイト量は、25容量%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のシェル形ころ軸受。
【請求項7】
前記シェル形外輪の窒素富化層の厚みは、0.05mm以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のシェル形ころ軸受。
【請求項8】
前記シェル形外輪の両端の鍔部の硬度は、均一である、請求項1〜7のいずれかに記載のシェル形ころ軸受。
【請求項9】
前記シェル形ころ軸受は、前記ころを保持する保持器を含み、
前記保持器は、その表面に窒素富化層を有し、
前記保持器の表面硬さは、ビッカーズ硬度(Hv)で750以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のシェル形ころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−64309(P2007−64309A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249723(P2005−249723)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】