説明

シリコン層の製造方法

本発明は、一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種のヒドリドシランから製造可能な少なくとも1種の高級シランを基板上に塗布し、引き続き熱的に、主にシリコンからなる層に変換し、その際、この高級シランの熱的変換は500〜900℃の温度でかつ≦5分の変換時間で行う、基板上にシリコン層を熱的に製造する液相法、前記方法により製造可能なシリコン層及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非環式シランから製造することができる高級シランからシリコン層を製造するための液相法に関する。
【0002】
シリコン層のこの合成は、半導体工業のため、特に電子的又は光電子的なデバイス層の製造のため、例えば太陽電池、フォトダイオード及びトランジスタにおける使用のために極めて重要である。
【0003】
この場合、シリコン層は原則として多様な方法を介して製造することができる。しかしながら、これらの方法の中でスパッタ技術は、高真空中で実施しなければならないという欠点がある。気相析出プロセスは、更に、i)熱的に反応を実施する場合に極めて高い温度の使用が必要であるか、又はii)この前駆体の分解のために電磁線の形で必要なエネルギーを導入する場合に高いエネルギー密度が必要であるという欠点を有する。両方の場合に、この前駆体の分解のために必要なエネルギーを適切かつ均一に導入することは、最も高い装置的コストを用いる場合にだけ可能である。シリコン層を製造する他の方法も欠点を有するため、従って、シリコン層は液相からの析出によって形成させるのが有利である。
【0004】
シリコン層を製造するためのこの種の液相法の場合、被覆されるべき基板上に(場合により、他の添加物及び/又はドーパント用の溶剤として機能する)液状出発材料又は(それ自体液状の又は固体の)出発材料(及び場合により他の添加物及び/又はドーパント)を含む液状の溶液を塗布し、引き続き熱によるか及び/又は電磁線を用いてシリコン層に変換する。
【0005】
有利に使用可能な出発材料は、この場合、ヒドリドシランである。この種の化合物は、主にケイ素原子と水素原子とからなり、かつこれらの化合物は変換の際に析出されるべきケイ素(場合により、電子的特性のために有益な残留水素割合を有する)とガス状の水素とに反応するという利点を有する。
【0006】
この場合、特に、環状シラン(スピロ化合物を含める)から、又は環状シラン(スピロ化合物を含める)から製造可能である高級シラン(オリゴマー)から、シリコン層を製造するための液相法は先行技術に属する。
【0007】
例えば、EP1134224A2は、シクロペンタシラン及びシリルシクロペンタシラン又はスピロ[4.4]ノナシランを含む溶液を、基板表面上に被覆膜を形成させながら塗布し、引き続きこの被覆膜を加熱によりシリコン皮膜に変換する、基板の表面上にシリコン皮膜を製造する方法を記載している。この場合、シリルシクロペンタシラン及びスピロ[4.4]ノナシランは、シクロペンタシランのためのラジカル重合開始剤として機能し、かつそれ自体開環して重合する特性を有するため、シリルシクロペンタシラン及びスピロ[4.4]ノナシラン又はこれらの混合物は、シクロペンタシランと一緒に、場合によりUV光による事前の照射の後に、熱的プロセス(熱変換)によりシリコン層を製造するために使用することができる。この記載された熱変換時間は、300℃より高い、有利に400〜500℃の温度で、30秒〜30分である。
【0008】
使用された環式化合物の開環重合により、ほぼ線状のオリゴマーが生じる。しかしながら、このほぼ線状のオリゴマーは、シリコン層製造のためには欠点である、それというのもこのオリゴマーは極めて狭い分子量範囲でだけ使用できるためである。小さすぎる分子量は、悪い濡れ又は僅かな濡れを引き起こす。大きすぎる分子量は、安定でない組成物を生じさせ、この安定でない組成物から大きすぎるオリゴマーが生じ、このオリゴマーを用いて良好な濡れ性及び均一な層を得ることはできない。
【0009】
先行技術の場合に、環状シラン又は前記環状シランから製造可能な高級シラン(オリゴマー)からシリコン層を製造するための上記の液相法の他に、線状シランから(場合により環状シランとの組合せで)又は前記線状シランからそれぞれ製造可能な高級シラン(オリゴマー)からシリコン層を製造するための液相法も記載されている。
【0010】
JP07−267621Aは、式Sim2m+2(m≧5)又はSin2n(n≧4)の液状シランを使用する、基板上のシリコン層の熱的な製造方法が記載されている。ここに記載された方法により製造可能なシリコン層は、アモルファス又は多結晶であることができる。上記文献には、変換温度として、200〜550℃の温度でアモルファスシリコン層が得られることが記載されている。550℃を上回ると、多結晶シリコンが得られるとされている。200℃を下回ると、シリコンへの変換が完全には行われない。この実施例では、30分(300℃;350℃;450℃)及び60分(700℃)の変換時間が記載されている。
【0011】
JP09−045922Aは、照射プロセスのために式Sim2m+2(m≧5)又はSin2n(n≧4)のシランを使用する、基板上に多結晶シリコン層の製造方法が記載されている。この変換温度として、上記文献には200〜550℃の温度が記載されている。200℃を下回ると、ケイ素への変換が完全には行われない。実施例において、水素プラズマ(350℃;480℃)中で30分の変換時間が記載されている。
【0012】
US5,866,477Aは、特に、熱により半導体薄膜に分解することができる線状又は環状ヒドリドシラン及びシリル基で置換された線状又は環状ヒドリドシランの使用が記載されている。上記の物質は、室温で固体であり、有機溶剤中に可溶であり、有利に3〜10000、殊に5〜30の重合度を有する。上記の物質は、更に有利に、200〜700℃の温度で熱分解され、その際、この硬化時間は10分〜10時間の間にある。
【0013】
US5,700,400において、ヒドロシランモノマーを脱水素縮合し、この中間生成物を引き続き熱分解する半導体材料の製造方法が記載されている。このヒドロシランモノマーは、モノシラン誘導体、ジシラン誘導体又はトリシラン誘導体であることができる。この熱分解は、200〜1000℃、有利に200〜700℃の温度で行う。この場合、実施例に記載された変換時間は1時間(700℃)〜24時間(200℃)である。
【0014】
EP1085560A1は、式Sinm(式中、n≧5及びm=n、2n−2、又は2n)の環状シラン化合物及び/又は式Siabc(式中、a≧3、b=a〜2a+c+2、c=1〜a)の変性されたシランを、熱及び/又は光の使用下でのシリコン薄膜の製造のために使用することを教示している。この場合、アモルファス層も、多結晶層も作成することができる。この場合、アモルファス層は、乾燥後に550℃までの変換温度で作成することができ、多結晶層は、乾燥後に550℃より高い変換温度により作成することができる。実施例中では、30分(300℃)の変換時間が記載されている。
【0015】
EP1085579A1は、シランを含有する液体組成物を使用して、熱、光及び/又はレーザー処理を用いて変換する太陽電池の製造方法を記載している。この液体被覆組成物は、溶剤と、式Sinm(式中、X=H、Hal、n≧5、m=n、2n−n、2n)の環状ケイ素化合物又は式Siabc(式中、X=H、Hal、Y=B、P、a≧3、c=1〜a、及びb=a〜2a+c+2)の変性されたシラン化合物とを含有することができる。被覆組成物からシランへの変換は、乾燥工程に引き続く変換工程によって行うことができる。典型的な乾燥温度として、100〜200℃の範囲が記載される。ここでも、300℃から初めてシリコン層への明らかな変換が生じ、300℃〜550℃ではアモルファス層が生じ、550℃からは多結晶層が生じることが記載されている。変換時間は記載されていない。
【0016】
EP1087428A1は、加圧法によってシリコン薄膜を製造することができるシリコン前駆体を含有するインキ組成物を記載している。ここに記載されたシリコン前駆体は、式(I)Sinm(式中、n≧3、m=n、2n−2、2n又は2n+2及びX=H及び/又はHal)の化合物又は式(II)Siabc(式中、X=H及び/又はHal、Y=B、P、a≧3、b=a〜2a+c+2、c=1〜a)の化合物であり、これらの化合物は個別に又は混合して使用することができる。式(I)の環状化合物が有利である。シリコン薄膜の製造は、熱及び/又は光を使用することにより行うことができる。熱を使用する場合に、この変換は典型的には100〜800℃の温度で実施される。この場合、アモルファス層も、多結晶層も作成することができる。アモルファス層は550℃までの変換温度により達成することができ、多結晶層は550℃より高い変換温度により達成することができる。300℃未満では変換は行われない。変換時間として、実施例中では30分の時間が記載されている。
【0017】
EP1357154A1は、光重合可能なシランにUV線を照射することによって製造可能なポリシランを有する「高級シラン」の組成物が記載されている。光重合可能なシランは、一般式Sinm(式中、n≧3、m≧4、X=H、Hal)のシランであることができ、例えば前記化合物は、光に対して極端に高い反応性を示しかつ有効に光重合する式Sin2nの環状シラン、式Sin2n-2の二環式又は多環式構造及び分子中に環状構造を有する他のシランであることができる。この「高級シラン」の組成物を、基板上で熱分解又は光分解によってシリコン薄膜に変換することができる。このために、未乾燥塗膜を熱(一般に100〜200℃)により乾燥し、次いで熱及び/又は光により変換させる。アモルファス皮膜は、550℃より低い温度での熱処理により作成することができ、より高い温度では多結晶皮膜が生じる。実施例中では、10分(350℃、400℃、500℃)の変換時間が記載されている。
【0018】
JP2004−134440A1は、シリコン層製造の文脈で、シラン組成物の照射に取り組んでいる。使用されるべきシラン組成物は、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン及びシリルクロロペンタシランからなる群から選択される少なくとも1種のシランとそれぞれ組み合わせた、(i)式Sinm(式中、n≧11及びm=n〜(2n+2)、その際、R=Hであることができる)のシランであることができるか、又は(ii)式Sii2i+2(式中、i=2〜10)、Sij2j(式中、j=3〜10)又はSikk(式中、k=6、8又は10)のシランであることができる。これらの記載されたシランは、それぞれ、鎖状、環状又はかご状であることができる。この照射時間は約0.1〜30分であり、この照射の際の温度は室温〜300℃の間であることができる。このプロセスにより、シリコン薄膜形成剤が形成され、このシリコン薄膜形成剤は100〜1000℃、有利に200〜850℃、特に有利に300〜500℃の温度によりシリコン薄膜に変換することができる。ここでも、550℃より高い変換温度を選択する場合には、多結晶シリコン層が生じる。300℃未満では完全に薄膜形成は行われない。実施例中では、30分(400℃)、60分(300℃、250℃)の変換時間が記載されている。
【0019】
しかしながら、記載されたこれらの全ての方法は、悪すぎる光学的特性及び電気的特性が生じることが考えられる。ミッドギャップ範囲で(aSiについては1.2eVで)PDS測定によって測定することができる吸収係数αは、シリコン層の光学的特性及び電気的特性の尺度と、特にこの光導電性についての尺度とみなすことができる。この場合、一般に、低いα値は、良好な電気的特性及び光学的特性と相関し、高いα値は悪い電気的特性及び光学的特性と相関することが当てはまる。このα値は、生じた層内でのバンドギャップ内の状態(ミッドギャップ状態)の頻度についての尺度としてみなすことができる。このバンドギャップ内の状態(ミッドギャップ状態)は、バンドギャップ内の電子的状態、半導体材料の電気的特性、例えば光導電性及び電荷キャリアの寿命を悪化させる、それというのもこの状態は電子についてのトラップとして作用し、従って、例えば光電流に寄与する電荷キャリアの歩留まりを低下させるためである。この状態は、しばしば飽和されていないケイ素結合(ダングリングボンド)である。
【0020】
従って、本発明の課題は、先行技術の記載された欠点を回避する、シリコン層を製造するための液相法を提供することである。特に、使用された調製物が安定であり、基板を良好に濡らし、かつ改善された電気的特性及び光学的特性を有する均質なシリコン層を生じさせる、シリコン層を製造するための液相法を提供することである。この場合、更に、低い吸収係数α(PDS測定によってaSi:Hについて1.2eVで測定可能)を有するaSi:H層を製造できることが特に有利である。
【0021】
前記課題は、この場合、一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種のヒドリドシランから製造可能な少なくとも1種の高級シランを基板上に塗布し、引き続き熱的に、主にシリコンからなる層に変換し、その際、この高級シランの熱的変換は500〜900℃の温度で、≦5分の変換時間で行う、基板上にシリコン層を熱的に製造する本発明による液相法によって解決される。
【0022】
意外にも、この場合に、更に特に良好な純度を有するシリコン層が得られる。
【0023】
シリコン層を熱的に製造する液相法とは、この場合、(場合により他の添加物及び/又はドーパントのための溶剤として機能する)液状の出発物質又は(それ自体液状又は固体の)出発物質(及び場合により他の添加剤及び/又はドーパント;後者のドーパントは特に第III主族及び第V主族の元素化合物の形で)を含有する溶液を、被覆されるべき基板上に塗布し、引き続き熱的に(場合により電磁線によりアシストして)主にシリコンからなる層に変換する方法であると解釈される。この場合に使用される出発物質は、一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種のヒドリドシランから製造可能な少なくとも1種の高級シランである。一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)のヒドリドシランは、非環式の、つまり線状又は分枝状のヒドリドシランである。高級シランを製造するための相応する方法は、当業者に公知である。例えば、光化学重合プロセス、アニオン重合プロセス、カチオン重合プロセス及び触媒重合プロセスが挙げられる。この中で、有利に、UV放射線を照射することによるラジカル重合プロセスが導入かつ実施され、その際、この照射時間は相応する平均分子量と相関する。挙げられた全ての重合プロセスは、環式シランについて記載された開環重合とは異なり解離的に進行すること、つまりこれらの重合プロセスは、解離的な反応進行及び一時的に生じる解離された中間生成物又は中間状態に基づいて、平均して、高い分枝割合又は架橋割合を有する高級シランを生じることが共通している。経験的には、一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種のヒドリドシランから重合プロセスを介して製造可能な高級シランは、均一な分子量を有していない。本発明の範囲内で「1種の」高級シランとは、一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種の定義されたシランから解離的な重合プロセスを介して製造された、選択された重合プロセスに起因して、使用された出発物質と比較して高められた平均分子量を有するシランであると解釈される。
【0024】
本発明による方法の場合に、GPCによって測定して、330〜10000g/molの重量平均分子量を有する高級シランを使用するのが有利である。更に、この高級シランの重量平均分子量は、GPCによって測定して、330〜5000g/molであるのが有利であり、600〜4000g/molであるのが更に有利である。
【0025】
この少なくとも1種の高級シランは、それ自体液状である場合には、溶剤中の更なる溶液ではなく、基板上に塗布することができる。しかしながら、この高級シランを溶剤中に溶かして基板に塗布することも有利である。
【0026】
1〜12個の炭素原子を有する線状、分枝状又は環状の、飽和、不飽和又は芳香族の炭化水素(場合により部分的に又は完全にハロゲン化されている)、アルコール、エーテル、カルボン酸、エステル、ニトリル、アミン、アミド、スルホキシド及び水からなる群からなる溶剤が、有利に使用可能である。n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、インダン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン及びクロロホルムが特に有利である。特に有利に使用可能な溶剤は、炭化水素のn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、インダン及びインデンである。
【0027】
この少なくとも1種の高級シランを溶剤中で使用する場合に、この質量割合は、この組成物の全質量に対して有利に少なくとも5質量%である。この少なくとも1種の高級シランを溶剤中の更なる溶液なしで基板に適用する場合に、この質量割合は、それ自体が他の添加剤及び/又はドーパントのための溶剤として用いるかどうかに応じて、この組成物の全質量に対して有利に70〜100質量%である。従って、この少なくとも1種の高級シランは、この高級シランを含む組成物の全質量に対して5〜100質量%の割合で使用されるのが有利である。10〜50質量%の少なくとも1種の高級シランの割合を有する組成物を使用する場合に、特に薄い層を達成することができる。
【0028】
有利な層の特性を達成するために、一般式Sia2a+2のヒドリドシランから製造可能な少なくとも1種の高級シランと一緒に、更に第III主族又は第V主族の元素の化合物の群から選択される少なくとも1種のドーパントを基板上に塗布することができる。相応する化合物は当業者に公知である。有利に使用可能なドーパントは、BHx3-x(式中、x=1〜3及びR=C1〜C10−アルキル基、飽和の環式の、場合によりエーテル−若しくはアミン複合化された(ether- oder aminkomplexiert)C2〜C10−アルキル基)のタイプのホウ素化合物、式Si59BR2(式中、R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)及びSi49BR2(R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)の化合物、赤リン、白リン(P4)、式PHx3-x(式中、x=0〜3及びR=Ph、SiMe3、C1〜C10−アルキル基)の化合物、及び式P7(SiR33(式中、R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)、Si59PR2(式中、R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)及びSi49PR2(式中、R=H、Ph、C1〜C10−アルキル基)の化合物である。
【0029】
本発明による方法にとって、多数の基板を使用することができる。ガラス、石英ガラス、黒鉛又は金属からある基板が有利である。更に有利な金属は、アルミニウム、特殊鋼、Cr鋼、チタン、クロム又はモリブデンである。更に、例えばPEN、PET又はポリイミドからなるプラスチックシートが使用できる。同様に、場合により、金属用の拡散バリアとして利用される層(例えば炭素、Si34)及びこの拡散バリア層上に導電性層(例えばTCO、ZnO、SnO2、ITO又は金属)を備えた、耐熱性の金属シートが更に有利である。拡散バリアとして、Al、SiOx、Alxy並びにPt、Pd、Rh及びNiを使用することができる。Ti、Al及びZrの酸化物並びにTi及びSiの窒化物が特に適している。
【0030】
同様に有利に、基板として、シリコン基板又は耐熱性の支持体上に存在するシリコン層、酸化インジウムスズ層(ITO層)、ZnO:F層又はSnO2:F層(FTO層)を使用することができる。
【0031】
高級シランの適用は、有利に、印刷法(特にフレキソ/グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、デジタルオフセット印刷及びスクリーン印刷)、吹き付け法、回転塗布法(スピンコーティング)、浸漬法(ディップコーティング)並びにメニスカスコーティング、スリットコーティング、スロットダイコーティング及びカーテンコーティングから選択される方法により行われる。
【0032】
被覆後でかつ変換前に、場合により適用される溶剤を除去するために、被覆された基板を更に乾燥させることができる。このための相応する措置及び条件は当業者に公知である。溶剤だけを除去するために、熱的な乾燥の場合に、この加熱温度は250℃を超えないのが好ましい。
【0033】
本発明による方法の変換は、500〜900℃の温度でかつ≦5分の変換時間で行われる。この比較的急速な熱的なプロセス実施は、例えば、IRランプ、ホットプレート、炉、フラッシュランプ、RTP装置又はマイクロ波装置(必要な場合に、それぞれ予熱状態又はウォームアップ状態で)を使用することにより行うことができる。特に良好な光学的及び電気的な層の特性は、変換温度が500〜650℃である場合に達成することができる。
【0034】
この変換時間は、有利に0.1ms〜120sである。特に良好な光学的及び電気的な層の特性を達成するために、0.1〜60sの変換時間を選択するのが好ましい。
【0035】
この熱的な変換が唯一の熱的プロセス工程内で行われる場合に、つまり基板は有利に最初の変換の後に熱源から取り出されかつ引き続き再び加熱されない場合に、生じる層の品質に有利に作用する。
【0036】
熱的処理の前、その間に又はその後にUV線を照射する場合に、生じる層の品質に更に有利に作用することができる。この場合、この有利な影響は、高級シランの塗布後でかつその変換の前にUV線を照射する場合が最大である。典型的な照射時間は、この場合1〜20分である。
【0037】
良好な層は、高級シランの塗布後でかつその変換の前に(真空までの)減圧を印加する場合でも得ることができる。有利な減圧は、1×10-3mbar〜0.5barである。この場合、被覆された基板を1〜20分の期間内で減圧で処理するのが特に有利である。
【0038】
例えばタンデム型太陽電池の場合のように多層を製造する場合に、全体として同じ時間/温度限界(サーマルバジェット)を維持しなければならない。つまり、>500℃の全ての温度工程の合計が、有利に<5分に維持しなければならない。
【0039】
本発明による方法は、アモルファスシリコン層を製造するために特に良好に適している。このアモルファスシリコン層を相応して作成する手段及び方法は、当業者に公知である。アモルファスシリコン層とは、この場合、この層のラマンスペクトルが450cm-1〜500cm-1の範囲内で50〜100cm-1のFWHM(Full Width Half Maximum)で、1つのピーク極大を有する1つのピークだけを有する層であると解釈される。従って、本発明の主題は、一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種のヒドリドシランから製造可能な少なくとも1種の高級シランを基板上に塗布し、引き続き熱的に、シリコン含有層に変換し、その際、この高級シランの熱的変換は500〜900℃の温度でかつ≦5分の変換時間で行う、基板上にアモルファスシリコン層を熱的に製造する液相法でもある。
【0040】
更に、本発明の主題は、本発明による方法により製造可能なシリコン層である。
【0041】
同様に、本発明の主題は、本発明による方法により製造可能なシリコン層の、電子的又は光電子的なデバイス層の製造のための使用、特に光起電力に適用するため又はトランジスタ中での使用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ネオペンタシランから製造された高級シランからなる層を示す図。
【図2】シクロペンタシランから製造された高級シランからなる層を示す図。
【0043】
次の実施例は、本発明の主題を更に詳細に説明する。
【0044】
実施例:
全ての作業は、O2遮断下でN2グローブボックス中で実施される。
【0045】
A.高級シランの合成
例1−本発明による使用のための材料:
秤量ガラス中のネオペンタシラン3mLにUVランプを、ほぼMw=900g/molの重量平均分子量に達するまで照射する。
【0046】
例2−比較例のための材料:
秤量ガラス中のシクロペンタシラン3mLにUVランプを、ほぼMw=2200g/molの重量平均分子量に達するまで照射する。
【0047】
B.層の製造
実施例1:
上記の試験された例1で得られたオリゴマー化されたシランのシクロオクタン中の37.5質量%の調製物50μLを、2.5×2.5cm2のサイズのガラス基板上に滴下し、スピンコーターを用いて2000rpmで回転塗布する。得られた皮膜を600℃で20秒間ホットプレート上で硬化させる。約130nmの厚さの褐色のSi層が得られる(図1参照)。PDSデータは、1.2eVで103cm-1のアルファ値を示し、ラマンデータは、100%アモルファスaSi:Hを示す。
【0048】
比較例1:
上記の試験された例1から得られたオリゴマー化されたシランのシクロオクタン中の37質量%の調製物50μLを、2.5×2.5cm2のサイズのガラス基板上に滴下し、スピンコーターを用いて2000rpmで回転塗布する。得られた皮膜を400℃で10分間ホットプレート上で硬化させる。約140nmの厚さの褐色のSi層が得られる。PDSデータは、1.2eVで120cm-1のアルファ値を示し、ラマンデータは、100%アモルファスaSi:Hを示す。
【0049】
比較例2:
上記の試験された例2から得られたオリゴマー化されたシランのシクロオクタン中の28.5質量%の調製物50μLを、2.5×2.5cm2のサイズのガラス基板上に滴下し、スピンコーターを用いて6000rpmで回転塗布する。得られた皮膜を400℃で10分間ホットプレート上で硬化させる。約142nmの厚さの褐色のSi層が得られる。PDSデータは、1.2eVで172cm-1のアルファ値を示し、ラマンデータは、100%アモルファスaSi:Hを示す。
【0050】
比較例3:
秤量ガラス中のシクロペンタシラン3mLにUVランプをほぼMw=3100g/molの重量平均分子量に達するまで照射する。得られたオリゴマー化されたシランのシクロオクタン中の37.5質量%の調製物50μLを、2.5×2.5cm2のサイズのガラス基板上に滴下し、スピンコーターを用いて2500rpmで回転塗布する。得られた皮膜を500℃で60秒間ホットプレート上で硬化させた(図2参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Sia2a+2(式中、a=3〜10)の少なくとも1種のヒドリドシランから製造される少なくとも1種の高級シランを基板上に塗布し、引き続き熱的に、主にシリコンからなる層に変換する、基板上にシリコン層を熱的に製造する液相法において、前記高級シランの熱的変換を
500〜900℃の温度で、
かつ≦5分の変換時間で行う
ことを特徴とする、基板上にシリコン層を熱的に製造する液相法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の高級シランは、330〜10000g/molの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の高級シランを溶剤中に溶解させて、前記基板上に塗布することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の高級シランを、前記高級シランを含む組成物の全質量に対して5〜100質量%の割合で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の高級シランを、第III主族又は第V主族の元素の化合物の群から選択される少なくとも1種のドーパントと一緒に前記基板上に塗布することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記基板は、ガラス、石英ガラス、黒鉛、金属、プラスチック又はシリコンからなるか、又は耐熱性の支持体上に存在するシリコン層、酸化インジウムスズ層、ZnO:F層又はSnO2:F層からなることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の高級シランの塗布を、印刷法、吹き付け法、回転塗布法、浸漬法、メニスカスコーティング、スリットコーティング、スロットダイコーティング、及びカーテンコーティングから選択される1つの方法によって行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記熱的変換を500℃〜650℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記変換時間は、0.1ms〜120s、特に有利に0.1〜60sであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記熱的変換を唯一の熱的プロセス工程内で行うことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理の前、その間又はその後に、UV線を照射することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記高級シランの塗布後で、かつ前記高級シランの変換前に減圧を印加することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により製造される、シリコン層。
【請求項14】
電子的又は光電子的デバイス層を製造するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により製造される少なくとも1つのシリコン層の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511829(P2013−511829A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539271(P2012−539271)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067207
【国際公開番号】WO2011/061106
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】