説明

シリコン接合膜の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計

【課題】陽極接合時に希ガスの発生を防止できるシリコン接合膜の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供する。
【解決手段】ベース基板2の表面2bに、リッド基板3の額縁領域3cと陽極接合するための接合膜23を製造する方法であって、接合膜23は、希ガスを含まない導入ガスを用いたCVD法により成膜することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン接合膜の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
ここで、ベース基板とリッド基板とを直接接合させる方法として、陽極接合が提案されている。陽極接合は、一方の基板の内面に接合膜を固着した上で、その接合膜にプローブを接続して陽極とし、他方の基板の外面に陰極を配置して、真空中または不活性ガス中で電圧を印加しつつ加熱することにより、接合膜と他方の基板の内面とを接合するものである。この接合膜の材料には、例えばシリコン(Si)や、特許文献1に示されるようにクロム(Cr)とシリコン(Si)との積層膜を用いる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−283951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1には、積層膜の具体的な成膜方法について何ら開示されていない。一般的に、シリコンからなる接合膜は、スパッタリング法を用いて形成される。具体的には、成膜材料であるシリコンのターゲットが配置されたチャンバー内に一方の基板をセットし、チャンバー内を真空引きした後、チャンバー内にアルゴン等の希ガスからなるスパッタガスを導入する。そして、ターゲットに電圧を印加することで、プラズマを発生させる。するとスパッタガスのイオンがターゲットに衝突し、ターゲットから成膜材料の原子が飛び出して、一方の基板の内面に付着する。その後、成膜材料の原子が、一方の基板の内面上に堆積することで接合膜が形成される。
【0006】
しかしながら、上述したスパッタリング法では、成膜材料の原子が一方の基板上に堆積する際、チャンバー内のスパッタガスを巻き込んでしまうという問題がある。その結果、接合膜内にはスパッタガスが混入された状態となる。
この場合、上述した陽極接合工程において、接合膜が加熱されると、接合膜内に混入されたスパッタガスがアウトガスとなって放出される。圧電振動子では、陽極接合後のキャビティ内にアウトガスが存在すると、キャビティ内の真空度が低下し、等価抵抗値(実効抵抗値:Re)が高くなる。その結果、圧電振動子の駆動電圧が高くなり、エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、キャビティ内の真空度を高め、等価抵抗値を抑えるための方法として、例えばゲッタリングが知られている。ゲッタリングとは、キャビティ内に金属膜のゲッター材を配置し、このゲッター材を加熱して活性化させることで、ゲッター材とアウトガスとを反応させて、キャビティ内に存在するアウトガスを吸着させるものである。
しかしながら、アルゴン等のスパッタガスは、ゲッター材とは反応しないため、ゲッタリングで吸着することはできないという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、陽極接合時に希ガスの発生を防止できるシリコン接合膜の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のシリコン接合膜の製造方法は、第1基板の内面に、第2基板の内面と陽極接合するためのシリコン接合膜を製造する方法であって、前記シリコン接合膜は、希ガスを含まない導入ガスを用いたCVD法により成膜することを特徴としている。なお、希ガスとは、周期表第18族元素のヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)及びラドン(Rn)の6元素のうち、何れかの元素からなる気体をいう。
【0010】
この構成によれば、希ガスを含まない導入ガスを用いてCVD法を行うことで、膜内に希ガスを含まないシリコン接合膜を製造できる。これにより、シリコン接合膜形成後の陽極接合時において、希ガスがアウトガスとなって発生するのを防止できる。
【0011】
また、前記導入ガスは、原料ガスとしてシラン系ガスを含むことを特徴としている。
この構成によれば、シラン系ガスを含む原料ガスを用いることで、CVD装置のチャンバー内に導入ガスを導入するためのキャリアガスが必要な場合に、希ガス以外のキャリアガスを用いることができる。これにより、膜内に希ガスを含まないシリコン接合膜を製造できる。
【0012】
また、前記導入ガスは、キャリアガスとして水素ガスを含むことを特徴としている。
この構成によれば、希ガスを用いることなく、原料ガスをCVD装置のチャンバー内に導入できるので、膜内に希ガスを含まないシリコン接合膜を製造できる。
【0013】
また、前記第1基板は、ガラス材料からなり、前記CVD法はプラズマCVD法であることを特徴としている。
この構成によれば、プラズマCVD法を用いることで、比較的低温でシリコン接合膜を成膜できる。これにより、第1基板の融点以下での成膜が可能になり、シリコン接合膜の成膜時における第1基板の溶融を防止できる。
【0014】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された第1基板及び第2基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、上記本発明のシリコン接合膜の製造方法を使用して、前記第1基板の内面にシリコン接合膜を形成する接合膜形成工程と、前記シリコン接合膜と、前記第2基板の内面とを陽極接合する陽極接合工程とを有していることを特徴としている。
この構成によれば、シリコン接合膜が上記本発明のシリコン接合膜の製造方法を用いて製造されているため、陽極接合工程において、希ガスがアウトガスとなって発生することがない。その結果、キャビティ内の真空度の向上を図ることができる。
【0015】
また、前記陽極接合工程の前段で、前記キャビティ内にゲッター材を配置するゲッター材配置工程を有し、前記陽極接合工程の後段で、前記ゲッター材を活性化させるゲッタリング工程を有していることを特徴としている。
この構成によれば、陽極接合工程において、希ガス以外のガスがアウトガスとなって発生する場合に、キャビティ内に存在するアウトガスをゲッター材によって吸着できる。これにより、キャビティ内でのアウトガスの残存を抑制して、キャビティ内の真空度を確実に向上できる。
【0016】
また、本発明に係るパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造しているため、キャビティ内の真空度が高いパッケージを提供できる。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージのキャビティ内に圧電振動片が気密封止されているので、エネルギー効率が高く、かつ安定した振動特性を有する圧電振動子を提供することができる。
【0018】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、エネルギー効率が高く、高品質な製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシリコン接合膜の製造方法によれば、シリコン接合膜形成後の陽極接合時において、希ガスがアウトガスとなって発生するのを防止できる。
また、本発明に係るパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、陽極接合工程において、希ガスがアウトガスとなって発生することがないので、キャビティ内の真空度の向上を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージのキャビティ内に圧電振動片が気密封止されているので、エネルギー効率が高く、かつ安定した振動特性を有する圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、エネルギー効率が高く、高品質な製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図9】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板(第2基板)3が接合膜(シリコン接合膜)23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0025】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合膜23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0026】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0027】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0028】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0029】
貫通電極8,9は、焼成によってスルーホール21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、スルーホール21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0030】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、スルーホール21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0031】
ベース基板2の表面2b側(リッド基板3が接合される接合面側)には、シリコン(Si)からなる陽極接合用の接合膜23が形成されている。この接合膜23は、膜厚が例えば2000Å程度に形成され、リッド基板3の額縁領域3cに対向するようにベース基板2の外周部分に沿って形成されている。そして、接合膜23とリッド基板3の額縁領域3cとが陽極接合されることで、キャビティCが真空封止されている。
【0032】
また、ベース基板2の表面2b上には、キャビティC内に収容されるようにゲッター材34が形成されている。ゲッター材34は、レーザー照射により活性化して周囲のガスを吸着するものであり、例えばアルミニウム(Al)やチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)等の金属、またはそれらの合金等で形成することが可能である。ゲッター材34は、圧電振動子1の外部からレーザー照射しうる位置に配置されている。本実施形態において、ゲッター材34は、ベース基板2の厚さ方向から見て圧電振動片5における一対の振動腕部24,25の両外側に配置されている。なお、ゲッター材34には、後述するゲッタリング工程時に、レーザー光が照射されて除去されることで、レーザー照射痕30が形成されている。
【0033】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0034】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0035】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0036】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0037】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハに一対の貫通電極8,9を配置するためのスルーホール21,22を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面40bから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール21,22を形成することができる。
【0038】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40b(図6における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。
【0039】
ここで、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合膜23を形成する接合膜形成工程を行う(S34)。本実施形態の接合膜23は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて表面40a上にシリコン膜を形成した後、リッド基板用ウエハ50の裏面50aとの接合領域(凹部3a以外の領域)にシリコン膜が残存するようにパターニングする。
【0040】
具体的に、まずCVD装置のチャンバー内にベース基板用ウエハ40を搬送した後、チャンバー内を減圧するとともに、ベース基板用ウエハ40を例えば200℃〜300℃程度まで加熱する。この状態でチャンバー内に導入ガスを所定の流量で供給する。チャンバー内に導入する導入ガスとしては、希ガスを含まないガスが用いられており、本実施形態では原料ガスであるモノシランガス(SiH4)のみを導入する。導入ガスにモノシランを用いることで、成膜材料となる原料ガスのみでCVD法を行うことができる。すなわち、キャリアガスとなる希ガスを用いることなく、原料ガスをチャンバー内に導入できる。なお、希ガスとは、周期表第18族元素のヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)及びラドン(Rn)の6元素のうち、何れかの元素からなる気体をいう。また、反応ガスは、原料ガスであるモノシランガスに、原料ガスの移動相となるキャリアガスを必要に応じて混合しても構わない。このキャリアガスとしては、水素を含むガスを用いることが好ましい。本実施形態のように、シラン系ガスを含む原料ガスを用いることで、キャリアガスが必要な場合に希ガス以外のキャリアガスを用いることができる。
【0041】
そして、チャンバー内に電界をかけて、導入ガスに電子を衝突させる。すると、導入ガスがプラズマ状態となり、導入ガスの原子や分子の化学反応(ラジカル反応)が促進される。この際、シランは以下のような化学反応(分解反応)を起こす。
SiH4→Si+2H2
【0042】
すなわち、モノシランから分解したシリコンがベース基板用ウエハ40の表面40a上に堆積していくことで、ベース基板用ウエハ40の表面40a上に厚さが例えば2000Å程度のシリコン膜が形成される。
その後、形成されたシリコン膜をパターニングすることで、接合膜23が形成される。この時、接合膜23は、ベース基板用ウエハ40におけるキャビティCの形成領域以外の領域、すなわちリッド基板用ウエハ50の裏面50aとの接合領域の全域に亘って形成される。
【0043】
次に、ベース基板用ウエハ40の表面40aに導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S35)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0044】
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0045】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0046】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成する(S70)。
【0047】
ところで、上述した接合工程(S60)の終了後には、陽極接合時に発生したアウトガス(例えば、酸素や水素)がキャビティC内に存在する。特に、本実施形態では、接合膜形成工程(S34)において、導入ガスにシランを用いてCVD法を行ったため、成膜時の化学反応により生成される水素が接合膜23内に僅かながら混入している場合がある。水素は上述したアルゴン等の希ガスに比べて十分軽いため、シリコン成膜時に巻き込んでしまう可能性は少ないが、仮に接合膜23内に水素が混入されている場合には、陽極接合時にキャビティC内に放出される可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態では、キャビティC内の真空度の向上を図るため、ウエハ接合体60の各キャビティC内に収容されたゲッター材34を活性化させてキャビティC内の真空度を調整するゲッタリング工程を行う(S80)。
ゲッタリング工程(S80)では、ベース基板用ウエハ40側からレーザー光Lを照射してゲッター材34を加熱することで、ゲッター材34が蒸発して活性化し、キャビティC内を飛散する。その際、キャビティC内に放出されたアウトガスのうち、水素は、ゲッター材34の表面で物理吸着される。一方、キャビティC内に放出されたアウトガスのうち、酸素は、活性化したゲッター材34と反応して化学吸着される。酸素を化学吸着したゲッター材34は、酸化して金属酸化物となる。
【0049】
これにより、キャビティC内のアウトガスが消費されるので、真空度を一定レベル以上に向上させることができる。ここで、一定レベルとは、それ以上真空度を向上させても、実効抵抗値に大きな変動がない状態を意味する。なお、ゲッタリングは、圧電振動子1の等価抵抗値をモニタリングしながら行う。
また、上述したように水素は希ガスに比べて十分軽いため、ゲッタリング工程(S80)後にキャビティC内に水素が残存した場合であっても、圧電振動子1の振動特性への影響が少ない。なお、ゲッター材34にレーザー光を照射すると、ゲッター材34の表面が蒸発し、その蒸発した部分にはレーザー照射痕30(図1参照)が残る。
【0050】
その後、圧電振動子1の周波数を微調整した後(S90)、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S100)を行う。
【0051】
そして、電気特性検査工程(S110)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0052】
このように、本実施形態では、接合膜形成工程(S34)において、アルゴン等の希ガスを含まない導入ガスを用いてCVD法を行うことで、膜内に希ガスを含まない接合膜23を製造できる。これにより、その後の接合工程(S60)において、接合膜23が加熱された際に希ガスがアウトガスとなって発生するのを防止できるので、キャビティC内の真空度の高い圧電振動子1を提供できる。よって、圧電振動子1の等価抵抗値を低下させることができるため、駆動電圧が低く、エネルギー効率の高い圧電振動子1を提供することができる。また、安定した振動特性を得ることができ、圧電振動子1の高品質化を図ることができる。
【0053】
また、上述したように陽極接合時に希ガス以外のガス(水素や酸素)がキャビティC内に放出される可能性があるが、本実施形態では接合工程(S60)の後段でゲッタリング工程(S80)を行うことで、キャビティC内に残存するアウトガスを吸着することができる。したがって、キャビティC内でのアウトガスの残存を抑制して、キャビティC内の真空度を確実に向上できる。
【0054】
また、本実施形態の接合膜形成工程(S34)において、プラズマCVD法を用いることで、比較的低温で接合膜23を形成できる。これにより、ベース基板用ウエハ40の融点以下での成膜が可能になり、ベース基板用ウエハ40の溶融を防止できる。
【0055】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図7を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図7に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片5が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0056】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0057】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0058】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図8を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0059】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図8に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0060】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0061】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0062】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0063】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0064】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0065】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0066】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0067】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図9を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図9に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0068】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0069】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0070】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0071】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合膜23を形成したが、これとは逆にリッド基板用ウエハ50の裏面50aに接合膜23を形成しても構わない。この場合、成膜後にパターニングすることで、リッド基板用ウエハ50の裏面50aにおけるベース基板用ウエハ40との接合面のみに形成する構成でも構わないが、接合膜23を凹部3aの内面を含む裏面50a全体に形成することで、接合膜23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
さらに、ゲッター材34の配置位置は適宜設計変更が可能である。また、ゲッター材34は、発生するアウトガスの種類によって複数種類の材料を採用しても構わない。例えば、上述した実施形態の場合には、酸素吸着用のゲッター材と、水素吸着用のゲッター材とを別々に設けても構わない。
【0073】
また上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【0074】
また、本発明は上述したガラスパッケージタイプの圧電振動子1に限られず、基板同士を陽極接合する際に用いる接合膜23であれば、適宜採用することができる。
また、上述した実施形態では、プラズマCVD法を用いて接合膜23を形成する構成について説明したが、これに限らず、例えば熱CVD法等、希ガスを用いる必要がなければ、種々のCVD法を採用することが可能である。
【0075】
さらに、上述した実施形態では、希ガスを含まない導入ガスとしてモノシランガスを用いる構成について説明したが、これに限らず、導入ガスに希ガスを含んでいなければ、種々のシラン系ガスを採用することが可能である。
例えば、四塩化珪素(SiCl4)やトリクロロシラン(SiHCl3)からなる原料ガスを、それぞれ水素からなるキャリアガスを用いてチャンバー内に導入しても構わない。四塩化珪素(SiCl4)やトリクロロシランを原料ガスに用いた場合には、チャンバー内ではそれぞれ以下のような化学反応を起こす。
SiCl4+2H2→Si+4HCl
SiHCl3+H2→Si+3HCl
これらの場合であっても、接合膜23内にアルゴン等の希ガスが混入しないため、その後の接合工程(S60)において、希ガスがアウトガスとなって発生するのを防止できる。
【0076】
また、水素の他に窒素等、希ガス以外の不活性ガスをキャリアガスに用いても構わない。窒素を用いた場合、陽極接合時にキャビティC内に窒素が放出される可能性があるが、接合工程(S60)の後段で上述したゲッタリング工程(S70)を行うことで、キャビティC内に残存する窒素を吸着することができる。そのため、上述した実施形態と同様に、真空度の高い圧電振動子1を提供できる。
【符号の説明】
【0077】
2…ベース基板(第1基板) 3…リッド基板(第2基板) 23…接合膜(シリコン接合膜) 34…ゲッター材 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の内面に、第2基板の内面と陽極接合するためのシリコン接合膜を製造する方法であって、
前記シリコン接合膜は、希ガスを含まない導入ガスを用いたCVD法により成膜することを特徴とするシリコン接合膜の製造方法。
【請求項2】
前記導入ガスは、原料ガスとしてシラン系ガスを含むことを特徴とする請求項1記載のシリコン接合膜の製造方法。
【請求項3】
前記導入ガスは、キャリアガスとして水素ガスを含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載のシリコン接合膜の製造方法。
【請求項4】
前記第1基板は、ガラス材料からなり、
前記CVD法はプラズマCVD法であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のシリコン接合膜の製造方法。
【請求項5】
互いに接合された第1基板及び第2基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のシリコン接合膜の製造方法を使用して、前記第1基板の内面にシリコン接合膜を形成する接合膜形成工程と、
前記シリコン接合膜と、前記第2基板の内面とを陽極接合する陽極接合工程とを有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記陽極接合工程の前段で、前記キャビティ内にゲッター材を配置するゲッター材配置工程を有し、
前記陽極接合工程の後段で、前記ゲッター材を活性化させるゲッタリング工程を有していることを特徴とする請求項5記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項8】
請求項7記載のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項8記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項8記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項8記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−211439(P2011−211439A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76345(P2010−76345)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】