説明

シリコーン系粒子を被膜に用いた被膜付き基材

【課題】 本発明は、低い屈折率を示し、溶剤への分散性に優れるシリコーン系粒子を含む被膜によって、反射率が低い被膜付き基材を提供することを目的とする。
【解決手段】 RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)から選ばれる1単位又は2単位からなる構造を有し、かつ水系で乳化剤を用いて合成された体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子を有機溶剤により処理したことを特徴とする、(A)シリコーン系粒子を含む被膜が単独または他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付き基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系粒子を含む被膜が表面に形成された被膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基材の最外層に基材より低屈折率の物質からなる低屈折率層(減反射層)を可視光波長の1/4の膜厚み(約100nm)で形成すると表面反射率が低減することが知られている。この原理を応用したフィルムやガラスの反射防止透明基材は電気製品、光学製品、建材等の分野で広く使用されている。
【0003】
減反射層の形成方法としては、フッ化マグネシウム等を蒸着またはスパッタリングするドライコーティング法と低屈折率材料の溶液を基材に塗布するウエットコーティング法が知られている。近年、適用できる基材の制約が少なく、連続生産性やコスト面でも優位なウエットコーティング法が注目されている。ウエットコーティング法の低屈折率材料としては、フッ素系樹脂や多孔質あるいは中空シリカと被膜形成用マトリクスとからなる材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
フッ素系樹脂は、様々な物質の中では低屈折率を示す。しかし、トリフルオロエチレン・フッ化ビニリデン重合体等の高分子主鎖中にフッ素原子が導入されている重合体は、加工性に問題があり、また有機溶剤への溶解性が不十分である等の問題がある。また、炭素鎖の短いフルオロカーボンを含むフッ素系樹脂は、環境への影響が懸念されている。
多孔質・中空シリカは様々な製法が開示されているが(例えば、特許文献2乃至5参照)、これらは内部を空洞にすることにより低屈折率化を実現しているため、加工時に壊れやすいことや製造工程が長い等の問題があった。一方、シリコーンやシルセスキオキサンはシリカよりも低屈折率であるが、一般的な凝固・乾燥法では溶剤への溶解性が悪いため、被膜形成時に十分に分散できないなどの問題があった。
【特許文献1】特開昭63−85701号公報
【特許文献2】特開平7−133105号公報
【特許文献3】特開2001−233611号公報
【特許文献4】特開平11−29318号公報
【特許文献5】特表2000−500113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低い屈折率を示し、溶剤への分散性に優れるシリコーン系粒子を含む被膜によって、反射率が低い被膜付き基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、水系で乳化剤を用いて合成された、特定の粒子径を持ち有機溶剤により処理したことを特徴とする(A)シリコーン系粒子を含む被膜により、低反射率を持つ被膜付き基材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)から選ばれる1単位又は2単位からなる構造を有し、かつ水系で乳化剤を用いて合成された体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子を有機溶剤により処理したことを特徴とする、(A)シリコーン系粒子を含む被膜が単独または他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付き基材に関する。
【0008】
好ましい実施態様は、(A)シリコーン系粒子が、まずRSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサンを水系で乳化剤を用いて合成し、その後RSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなる成分を縮合して、体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子状に合成されることを特徴とする、上記の被膜付き基材に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、(A)シリコーン系粒子が、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサンにビニル系単量体をグラフト重合した(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であることを特徴とする、上記いずれかの被膜付き基材に関する。
【0010】
好ましい実施態様は、(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、ポリオルガノシロキサン95〜60重量%、グラフト成分5〜40重量%からなることを特徴とする、上記いずれかの被膜付き基材に関する。
【0011】
好ましい実施態様は、(A)シリコーン系粒子が、水系で乳化剤を用いて合成された体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子を有機溶剤によりラテックス中から抽出し脱水したものであることを特徴とする、上記いずれかの被膜付き基材に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリコーン系粒子は、低い屈折率を示し、溶剤への分散性に優れ、しかも粒子径分布の狭い1μm以下の粒子径を有するため、そのシリコーン系粒子を含む被膜が表面に形成された基材は、安定的に反射率が低い被膜付き基材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)から選ばれる1単位又は2単位からなる構造を有し、かつ水系で乳化剤を用いて合成された体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子を有機溶剤により処理したことを特徴とする、(A)シリコーン系粒子を含む被膜が単独または他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付き基材を提供するものである。
【0014】
さらに本発明は、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサンを水系で乳化剤を用いて合成し、その後RSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなる成分を縮合して、体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子状に合成されることを特徴とする、(A)シリコーン系粒子を含む被膜が単独または他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付き基材及び、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサンにビニル系単量体をグラフト重合することを特徴とする、ポリオルガノシロキサングラフト共重合体を含む被膜が単独または他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付き基材を提供するものである。
【0015】
(A)シリコーン系粒子
本発明のRSiO3/2単位中のRは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基から少なくとも1種が選択される。基材によっては、Rに少量のビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基と、多量のアルキル基または芳香族基を選択する場合もありうる。RSiO3/2単位の原料としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等などを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0016】
本発明のRSiO2/2単位(Rは、RSiO3/2単位中のRと同様の群から選択されうる)の原料としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシランなど、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンや、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0017】
本発明におけるRSiO3/2単位及びRSiO2/2単位の使用比率は特に制限がなく、より屈折率を低下させたい場合はRSiO2/2単位を、膜強度や透明性を向上させたい場合にはRSiO3/2単位の使用比率を上げることが好ましい。なお、本発明において、RSiO3/2単位及びRSiO2/2単位のモル比率の下限については、当該モル比が0、すなわち全てがRSiO3/2単位又はRSiO2/2単位から形成される場合も含まれうる。
【0018】
本発明の(A)シリコーン系粒子は、水系で乳化剤を用いることにより合成される。(A)シリコーン系粒子は、体積平均粒子径が0.001〜1μmの範囲であることが好ましく、更には0.002〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。0.001μm以下、又は1μm以上の粒子を合成することは可能であるが、安定的に合成することが難しい傾向にある。また、被膜付き基材に塗布するための分散液中で0.001μm以下の粒子径は凝集しやすく、1μm以上の粒子径では沈殿しやすいため、被膜付き基材の透明性を低下させる場合がある。
【0019】
本発明では、例えば、酸触媒を含む40〜120℃の水に、乳化剤、RSiO3/2単位とRSiO2/2単位の原料の一方またはその両方と水の混合物をラインミキサーやホモジナイザーで乳化した乳化液を連続的または一括で加えることにより、粒子状に合成された(A)シリコーン系粒子を得ることができる。乳化液の追加は、連続でも一括でも構わない。あるいは、まず酸触媒を含む40〜120℃の水に、乳化剤、RSiO2/2単位の原料と水の混合物をラインミキサーやホモジナイザーで乳化した乳化液を連続的に加えてRSiO2/2単位のポリオルガノシロキサンを得た後、乳化剤、RSiO3/2単位の原料と水の混合物をラインミキサーやホモジナイザーで乳化した乳化液を連続的に加えることにより、粒子状に合成された(A)シリコーン系粒子を得ることができる。
【0020】
なお、上記の(A)シリコーン系粒子の製造においては、(A)シリコーン系粒子の安定性や粒子径コントロールのために、非常に小粒子径のシードポリマーを酸触媒含有の水に少量加えて実施してもよい。
【0021】
本発明における乳化剤としては、アニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤が好適に使用されうる。アニオン系乳化剤の具体例としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどが挙げられるが、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがよく用いられる。ノニオン系乳化剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。
【0022】
本発明におけるラジカル重合開始剤の具体例としては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。この重合を硫酸第一鉄−ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ−エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩、硫酸第一鉄−グルコース−ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄−ピロリン酸ナトリウム−リン酸ナトリウムなどのレドックス系で行うと低い重合温度でも重合を完了することができる。
【0023】
本発明に用いることのできる酸触媒は、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの中では、オルガノシロキサンの乳化安定性に優れる観点から、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。
【0024】
ポリオルガノシロキサンの合成のための加熱は、適度な重合速度が得られるという点で5〜120℃が好ましく、更には20〜80℃がより好ましい。
【0025】
本発明における粒子状のシリコーン系粒子の合成においてはシードポリマーを使用することができる。酸触媒を含有する水に加えることのできる当該シードポリマーは、例えば、通常の乳化重合法によっても得ることができるが、合成法は特に限定されるものではない。当該シードポリマーは、例えば、アクリル酸ブチルゴムやブタジエン系ゴム等のゴム成分であっても良く、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等の硬質重合体であっても問題ない。中でも、(A)ポリオルガノシロキサン化合物粒子の粒子径分布を狭くすると言う観点から、上記シードポリマーの分子量は低く、粒子径が小さいことが好ましい。上記シードポリマーの粒子径については、最終粒子径に応じて適宜設定することができるが、通常は体積平均粒子径で概ね0.01〜0.1μmの範囲に設定することが好ましい。
【0026】
本発明の(A)シリコーン系粒子の体積平均粒子径は、安定的な合成・溶剤への分散性の観点から、0.001〜1μmの範囲であることが好ましく、更には0.002〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。なお体積平均粒子径は、例えば日機装株式会社社製のMICROTRAC UPA150を用いることにより測定することができる。
【0027】
(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体
本発明においては、(A)シリコーン系粒子として、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサン化合物にビニル系単量体をグラフト重合した(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を用いることができる。本発明の(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体に用いられるビニル系単量体は、(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が被膜形成用マトリクス及び、基材との相溶性を助ける働きを有する成分である。
【0028】
本発明における(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、ポリオルガノシロキサン化合物95〜60重量%、好ましくは85〜70重量%に対し、グラフト成分が5〜40重量%、好ましくは15〜30重量%からなるものが好ましい。(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体におけるグラフト成分量が5重量%より少ないとグラフト成分導入による十分な効果が得られにくく、逆に40重量%より多いと屈折率が高くなり十分な低反射効果が得られなくなる場合がある。
【0029】
(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を得るために、前記ポリオルガノシロキサン化合物の重合にはグラフト交叉剤を用いることができる。ここでグラフト交叉剤とは、ポリオルガノシロキサン化合物と後述するグラフト成分に化学結合を導入するための成分である。
【0030】
グラフト交叉剤としては、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等があげられる。このグラフト交叉剤の使用割合は、ポリオルガノシロキサン化合物、すなわちオルガノシロキサンとグラフト交叉剤の合計を100重量%として、0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜5重量%である。グラフト交叉剤の使用量が10重量%より多いとオルガノシロキサンの特性が失われる場合があり、逆にグラフト交叉剤の使用量が0.01重量%より少ないと十分にグラフトされず、グラフトによる相溶性の効果が得られない場合がある。
【0031】
前記ビニル系単量体の具体的な例としては、(i)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ブチルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、(ii)アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、(iii)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(iv)イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体が挙げられる。さらに必要に応じて、(v)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミドなどのマレイミド系単量体を使用しても良い。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
<溶剤による処理>
本発明の溶剤による処理は、被膜形成時の分散液への分散を向上させるために行う。溶剤による処理は、乳化重合により得られたラテックスから、(A)シリコーン系粒子及び(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を抽出する操作及び、それらの脱水操作の2つから成り立っている。ラテックスから抽出した後に、脱水操作を行わない場合は、被膜形成時の分散液に用いる溶剤により、分散性が不十分な場合がある。
【0033】
本発明におけるラテックスから抽出する操作は、乳化重合により得られたラテックスに1〜5倍の弱親水性溶剤を加え、30分間撹拌する。静置した後、ろ紙等を用いてろ過を行う。弱親水性溶剤は特に規定がなく、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)等を用いることができる。特に、分離のし易さ等の観点からアセトンが望ましい。
【0034】
本発明における脱水操作は、前記ろ過で得られた粒子を完全に乾燥する前に、親水性溶剤及び弱親水性溶剤を加え15分間撹拌した後、静置する。その後、ろ紙等を用いて濾過した後、完全に乾燥する前に分散液の溶剤に分散する。親水性溶剤及び弱親水性溶剤は特に規定がなく、これらは単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<被膜及び基材>
本発明における(A)シリコーン系粒子及び(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、溶剤に微分散させて、コート法、スピナー法、ディップ法、スプレー法等を用いて一定厚みの被膜を形成する。また、被膜を形成するために、この分散液を被膜形成用マトリクスと混合して、同様の方法により被膜を形成することもできる。
【0036】
分散液の溶剤は、(A)シリコーン系粒子及び(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が微分散しやすく、かつ被膜形成用マトリクスと相溶する溶剤を用いることができる。溶剤の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、一般的に広く使用されている溶剤を用いることができる。
【0037】
被膜形成用マトリクスとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などの塗料用樹脂やアルコキシシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0038】
本発明に使用される基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリル等のプラスチックフィルムやガラス等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。なお、以下の実施例および比較例における測定および試験はつぎのように行った。
【0040】
[体積平均粒子径]
シードポリマー、シリコーン系粒子及びポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の体積平均粒子径をラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社社製のMICROTRAC UPA150を用いて、光散乱法により体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0041】
[反射率の測定]
塗布面と反対側の基材に黒色ビニールテープを貼ったものを分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計V−560型、積分球装置ISV−469型)により反射率を測定し、可視光域での極小値を読み取った。
【0042】
[溶剤への分散性]
シリコーン系粒子を溶剤に加え、10分間撹拌した後、30分間静置した後の状態を以下基準により評価した。
【0043】
良(○)・・・・全く沈殿が見られず、均一に分散している。
【0044】
普通(△)・・・一部の粒子が沈殿しているが、均一に分散している。
【0045】
不良(×)・・・全ての粒子が沈殿しており、上澄み部分と沈殿部分の2層に分かれている。
【0046】
(製造例1)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水400重量部及び10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を12重量部(固形分)を混合したのち50℃に昇温し、液温が50℃に達した後、窒素置換を行った。その後、ブチルアクリレート10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部を加えた。30分後、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部(固形分)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.3重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.01重量部、硫酸第一鉄0.0025重量部を添加し、1時間撹拌した。ブチルアクリレート90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.09重量部(固形分)の混合液を3時間かけて連続追加した。その後、2時間の後重合を行い、シードポリマー(P−1)を含むラテックスを得た。
【0047】
次に、撹拌機、還流冷却水、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)および、上述のシードポリマー(P−1)を2重量部(固形分)仕込んだ。その後、別途純水98重量部、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液2重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)95.15重量部、およびメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(DSMA)2.85重量部の成分からなる混合物をホモミキサーにて7000rpmで5分間撹拌してポリオルガノシロキサン形成成分のエマルジョンを調製し、一括で添加した。
【0048】
次に、10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液1.5重量部(固形分)を添加した後、系を撹拌しながら窒素気流下で80℃まで昇温させた。80℃到達後、80℃で7時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して18時間放置した。重合転化率は、85%であった。得られたポリオルガノシロキサン粒子(S−1)を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.18μmであった。
【0049】
つづいて撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、および上記ポリオルガノシロキサン粒子(S−1)80重量部(固形分)を仕込み、系を撹拌しながら窒素気流下で40℃まで昇温させた。40℃到達後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.008重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を添加した後、メタクリル酸メチル(MMA)18重量部、アクリル酸ブチル(BA)2重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部(固形分)の混合物を1時間かけて滴下追加し、追加終了後さらに1時間撹拌を続けることによってポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のラテックスを得た。得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.18μmであった。
【0050】
このラテックス100重量部に、アセトン200重量部を加え撹拌・濾過を行った。濾過して得られた粒子にメタノール/n−ヘキサン=7/3の混合溶液を300重量部加え、撹拌・濾過を行った。濾過した粒子をイソプロパノールに分散させ、粒子濃度5%の分散液を得た。
【0051】
(製造例2)
撹拌機、還流冷却水、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)および、製造例1で得られたシードポリマー(P−1)を2重量部(固形分)仕込んだ。その後、別途純水98重量部、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液1.75重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)95.15重量部、およびメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(DSMA)2.85重量部の成分からなる混合物をホモミキサーにて7000rpmで5分間撹拌してポリオルガノシロキサン形成成分のエマルジョンを調製し、一定速度で3時間かけて滴下追加した。
【0052】
次に、10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液1.5重量部(固形分)を添加した後、系を撹拌しながら窒素気流下で80℃まで昇温させた。80℃到達後、80℃で4時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して18時間放置した。重合転化率は、85%であった。得られたポリオルガノシロキサン粒子(S−2)を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.10μmであった。
【0053】
つづいて撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、および上記ポリオルガノシロキサン粒子(S−2)80重量部(固形分)を仕込み、系を撹拌しながら窒素気流下で40℃まで昇温させた。40℃到達後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.008重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を添加した後、メタクリル酸メチル(MMA)18重量部、アクリル酸ブチル(BA)2重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部(固形分)の混合物を1時間かけて滴下追加し、追加終了後さらに1時間撹拌を続けることによってポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のラテックスを得た。得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.10μmであった。
【0054】
このラテックス100重量部に、アセトン200重量部を加え撹拌・濾過を行った。濾過して得られた粒子にメタノール/n−ヘキサン=7/3の混合溶液を300重量部加え、撹拌・濾過を行った。濾過した粒子をイソプロパノールに分散させ、粒子濃度5%の分散液を得た。
【0055】
(製造例3)
撹拌機、還流冷却水、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)および、製造例1で得られたシードポリマー(P−1)を2重量部(固形分)仕込んだ。その後、別途純水98重量部、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)95.15重量部、およびメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(DSMA)2.85重量部の成分からなる混合物をホモミキサーにて7000rpmで5分間撹拌してポリオルガノシロキサン形成成分のエマルジョンを調製し、一定速度で3時間かけて滴下追加した。
【0056】
次に、10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液1.5重量部(固形分)を添加した後、系を撹拌しながら窒素気流下で80℃まで昇温させた。80℃到達後、80℃で4時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して18時間放置した。重合転化率は、85%であった。得られたポリオルガノシロキサン粒子(S−3)を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.01μmであった。
【0057】
つづいて撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、および上記ポリオルガノシロキサン粒子(S−3)80重量部(固形分)を仕込み、系を撹拌しながら窒素気流下で40℃まで昇温させた。40℃到達後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.008重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を添加した後、メタクリル酸メチル(MMA)18重量部、アクリル酸ブチル(BA)2重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部(固形分)の混合物を1時間かけて滴下追加し、追加終了後さらに1時間撹拌を続けることによってポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のラテックスを得た。得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.01μmであった。
【0058】
このラテックス100重量部に、アセトン200重量部を加え撹拌・濾過を行った。濾過して得られた粒子にメタノール/n−ヘキサン=7/3の混合溶液を300重量部加え、撹拌・濾過を行った。濾過した粒子をイソプロパノールに分散させ、粒子濃度5%の分散液を得た。
【0059】
(製造例4)
撹拌機、還流冷却水、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2重量部(固形分)および、製造例1で得られたポリオルガノシロキサン粒子(S−1)を50重量部(固形分)仕込んだ。その後、別途純水100重量部、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5重量部(固形分)、トリメトキシメチルシラン(MTMS)100重量部の成分からなる混合物をホモミキサーにて7000rpmで10分間撹拌してポリオルガノシルセスキオキサン形成成分のエマルジョンを調製し、一括で添加した後、系を撹拌しながら窒素気流下で80℃まで昇温させた。80℃到達後、80℃で5時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して18時間放置した。得られたシリコーン系粒子(S−4)を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.20μmであった。
このラテックス100重量部に、アセトン200重量部を加え撹拌・濾過を行った。濾過して得られた粒子にメタノール/n−ヘキサン=7/3の混合溶液を300重量部加え、撹拌・濾過を行った。濾過した粒子をイソプロパノールに分散させ、粒子濃度5%の分散液を得た。
【0060】
(製造例5)
撹拌機、還流冷却水、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2.125重量部(固形分)および、製造例1で得られたポリオルガノシロキサン粒子(S−2)を50重量部(固形分)仕込んだ。その後、別途純水100重量部、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5重量部(固形分)、トリメトキシメチルシラン(MTMS)100重量部の成分からなる混合物をホモミキサーにて7000rpmで10分間撹拌してポリオルガノシルセスキオキサン形成成分のエマルジョンを調製し、一括で添加した後、系を撹拌しながら窒素気流下で80℃まで昇温させた。80℃到達後、80℃で5時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して18時間放置した。得られたシリコーン系粒子(S−5)を含むラテックスの体積平均粒子径は、0.10μmであった。
このラテックス100重量部に、アセトン200重量部を加え撹拌・濾過を行った。濾過して得られた粒子にメタノール/n−ヘキサン=7/3の混合溶液を300重量部加え、撹拌・濾過を行った。濾過した粒子をイソプロパノールに分散させ、粒子濃度5%の分散液を得た。
【0061】
(実施例1、2)
製造例2または製造例3で得られた分散液と被膜形成用マトリクスである5%アクリル樹脂溶液をそれぞれ混合し、塗膜中の粒子量がそれぞれ33%になるように塗膜液を調整した。
【0062】
この塗膜液をそれぞれPETフィルムにバーコーター法で塗布し、その後110℃で20分間乾燥して、膜厚が0.1〜0.2μmの被膜付き基材を得た。この被膜付き基材の反射率を測定して、可視光領域での最低反射率を求めた。評価結果を、表1にまとめる。
【0063】
(実施例3〜8)
製造例1〜3で得られた分散液と被膜形成用マトリクスである5%アクリル樹脂溶液をそれぞれ混合し、塗膜中の粒子量がそれぞれ表1に示す量になるように塗膜液を調整した。
【0064】
この塗膜液をそれぞれガラスにバーコーター法で塗布し、その後110℃で20分間乾燥して、膜厚が0.1〜0.2μmの被膜付き基材を得た。この被膜付き基材の反射率を測定して、可視光領域での最低反射率を求めた。評価結果を、表1にまとめる。
【0065】
(実施例9、10)
製造例4または製造例5で得られた分散液と被膜形成用マトリクスである5%アクリル樹脂溶液をそれぞれ混合し、塗膜中の粒子量がそれぞれ10%になるように塗膜液を調整した。
【0066】
この塗膜液をそれぞれガラスにバーコーター法で塗布し、その後110℃で20分間乾燥して、膜厚が0.1〜0.2μmの被膜付き基材を得た。この被膜付き基材の反射率を測定して、可視光領域での最低反射率を求めた。評価結果を、表1にまとめる。
【0067】
(実施例11、12)
製造例1または2で得られた分散液をPMMAフィルムにバーコーター法で塗布し、その後110℃で20分間乾燥して、膜厚が0.1〜0.2μmの被膜付き基材を得た。この被膜付き基材の反射率を測定して、可視光領域での最低反射率を求めた。評価結果を、表2にまとめる。
【0068】
(実施例13)
製造例3で得られた分散液と被膜形成用マトリクスである5%アクリル樹脂溶液をそれぞれ混合し、塗膜中の粒子量が75%になるように塗膜液を調整した。
【0069】
この塗膜液をPMMAフィルムにバーコーター法で塗布し、その後110℃で20分間乾燥して、膜厚が0.1〜0.2μmの被膜付き基材を得た。この被膜付き基材の反射率を測定して、可視光領域での最低反射率を求めた。評価結果を、表2にまとめる。
【0070】
(比較例1〜3)
なにも塗布しないPETフィルム、ガラスおよびPMMAフィルムの反射率を測定して、可視光領域での最低反射率を求めた。評価結果を、表2にまとめる。
【0071】
(比較例4〜6)
製造例1、2および5で得られたシリコーン系粒子を含むラテックスを、溶剤による処理を行わず、ラテックスを純水で希釈し、固形分濃度を15重量%にしたのち、25重量%塩化カルシウム水溶液4重量部(固形分)を添加して、凝固スラリーを得た。凝固スラリーを95℃まで加熱した後、50℃まで冷却して脱水後、乾燥させてシリコーン系粒子の粉体を得た。この粉体をイソプロパノールに分散させたが、分散せず沈殿したため被膜付き基材を得ることができなかった。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

表1、表2から明らかなように、有機溶剤により処理したシリコーン系粒子は溶剤への分散性に優れ、このシリコーン系粒子を被膜に用いた被膜付き基材は、低い反射率を示す。また、有機溶剤により処理せず溶剤に分散させた系は、沈殿が生じ分散しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)から選ばれる1単位又は2単位からなる構造を有し、かつ水系で乳化剤を用いて合成された体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子を有機溶剤により処理したことを特徴とする、(A)シリコーン系粒子を含む被膜が単独または他の被膜とともに基材表面上に形成された被膜付き基材。
【請求項2】
(A)シリコーン系粒子が、まずRSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサンを水系で乳化剤を用いて合成し、その後RSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなる成分を縮合して、体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子状に合成されることを特徴とする、請求項1記載の被膜付き基材。
【請求項3】
(A)シリコーン系粒子が、RSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなるポリオルガノシロキサンにビニル系単量体をグラフト重合して得られる(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であることを特徴とする、請求項1記載の被膜付き基材。
【請求項4】
(B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、ポリオルガノシロキサン95〜60重量%、グラフト成分5〜40重量%からなることを特徴とする、請求項3に記載の被膜付き基材。
【請求項5】
(A)シリコーン系粒子が、水系で乳化剤を用いて合成された体積平均粒子径が0.001〜1μmの粒子を有機溶剤によりラテックス中から抽出し脱水したものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被膜付き基材。

【公開番号】特開2008−200869(P2008−200869A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36033(P2007−36033)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】