シリンダの位置計測装置
【課題】
リセットセンサで検出される信号のピークを正確に求めるようにして、ストローク位置センサの原点位置へのリセットを高精度に行えるようにする。また、シリンダチューブ内部のピストン等の直動部材の移動速度如何にかかわらず、正確に原点位置(特定位置)を計測できるようにする。
【解決手段】
回転センサ100の検出回転量から得られるピストン201の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求め、この対応関係500に基づいて、ピストン201が原点位置I0に達したときの計測ストローク位置Ip(ピーク位置)を求め、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットする。
リセットセンサで検出される信号のピークを正確に求めるようにして、ストローク位置センサの原点位置へのリセットを高精度に行えるようにする。また、シリンダチューブ内部のピストン等の直動部材の移動速度如何にかかわらず、正確に原点位置(特定位置)を計測できるようにする。
【解決手段】
回転センサ100の検出回転量から得られるピストン201の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求め、この対応関係500に基づいて、ピストン201が原点位置I0に達したときの計測ストローク位置Ip(ピーク位置)を求め、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブ内部を直動するロッド、ピストンの位置を計測するシリンダの位置計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ等のシリンダチューブの内部をロッドとともに直動するピストンに永久磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に磁力センサを設け、磁力センサを通過する磁力(磁力線)を検出することによって、シリンダのピストン(ロッド)の位置を計測するという装置は、既に公知となっている。
【0003】
下記特許文献1には、シリンダヘッドに、ロッドの直動量を回転量として検出するロータリエンコーダを設けるとともに、シリンダチューブの途中にあってチューブ外周面にリセット用磁力センサを設け、このリセット用磁力センサで、チューブ内部を直動するピストンに固定された磁石で発生した磁力を検出して、その磁力がピーク値に達したときに、ロータリエンコーダの検出値から得られる計測位置を原点位置にリセットするという発明が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、エアシリンダのシリンダチューブ内部のピストンに、磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に磁力センサを設けて、磁力センサの検出信号レベルの変化に応じて、ピストンの各移動位置を計測するという発明が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、シリンダのシリンダチューブ内部のピストンに、磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に、所定距離離間させて2つの磁力センサを設けて、2つの磁力センサが所定の時間差をおいて所定の検出信号レベル以上になったときに、ピストンが特定の位置にあると判断し、そうでない場合はノイズであると判断するという発明が記載されている。
【特許文献1】実開平5−75603号公報
【特許文献2】特開平7−103707号公報
【特許文献3】特開平6−249605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1では、リセット用磁力センサで検出された磁力がピーク値に達したときに、ロータリエンコーダの検出値から得られる計測位置を原点位置にリセットしているが、これは、磁力のピーク値が正確に求められるということを前提としている。
【0007】
しかし、油圧シリンダのチューブ外部に磁力センサを設ける場合には、磁力のピーク値を正確に求めることは難しい。
【0008】
すなわち、油圧シリンダのチューブは、内部の高圧の圧油を密封して高圧の圧油によって容易に変形や損傷が生じないように設計する必要があり、強度が高く厚い磁性材料(鉄鋼材)で構成されている。
【0009】
このためシリンダチューブの壁は、内部の永久磁石で生成された磁力線が外部に漏れることを防止する磁気シールドとして機能する。磁力センサで検出される磁力の信号レベルは、ベースレベルに比して極めて低く、信号レベルの変化は、ロッドの移動量に対して極めて緩慢である。このためピーク値付近の信号レベルの変化は、なだらかで幅広いという特性をもっている。また、信号レベルは、他の磁界発生源(ノイズ)やピストンのガタや温度等の影響を受けやすく、たとえばノイズとピーク値との判別が困難な場合もある。このようにピーク値付近の信号レベル変化は小さくノイズ等の影響を受けやすいため、ピーク値を正確に求めることは難しい。
【0010】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、リセットセンサで検出される信号のピークを正確に求めるようにして、ストローク位置センサの原点位置へのリセットを高精度に行えるようにすることを第1の解決課題とするものである。
【0011】
また、油圧シリンダのチューブ外部に磁力センサを設ける場合には、内部のピストンの移動速度の影響を受け、磁力のピーク値から真のストローク位置(原点位置)を正確に求めることは難しい。
【0012】
すなわち、油圧シリンダのチューブは、磁性材料で構成されているため、チューブ内部で発生した磁気がチューブを介してチューブ外部の磁力センサに到達するまでに一定の時間遅れ(伝達遅れ)がある。一方、シリンダチューブ内部のピストンが移動する速度は、一定ではなく、磁力センサ付近を遅い速度で移動することもあれば、速い速度で磁力センサ付近を移動することもある。このため、磁力センサで検出される磁力がピーク値に達したときに演算処理によって得られるストローク位置は、ピストン移動速度如何によって、真のストローク位置(原点位置)からずれたものとなる。
【0013】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、シリンダチューブ内部のピストン等の直動部材の移動速度如何にかかわらず、正確に原点位置を計測できるようにすることを第2の解決課題とするものである。
【0014】
なお、上記各特許文献1、2、3には、磁力センサで磁力のピーク値を正確に求めることは難しいといった問題点の指摘や、磁力センサの検出値からストローク位置を求める際にはピストン等の直動部材の移動速度の影響に受けて、ストローク位置を正確に求めることは難しいといった問題点の指摘はなく、また、これら問題点に対応する技術的課題を示唆する記載もない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材のストローク位置を検出するストローク位置センサ(100)と、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の原点位置に対応して設けられ、前記検出媒体(350)からの距離に応じて変化する物理量を検出するリセットセンサ(301、302)と、
前記ストローク位置センサ(100)で検出されるストローク位置と、前記リセットセンサ(301、302)で検出される物理量との対応関係を求め、
前記対応関係に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットする演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とする。
【0016】
第2発明は、第1発明において、
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が少なくとも2回ストロークしたときの両対応関係を求め、両対応関係のずれ量に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットするものであることを特徴とする。
【0017】
第3発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する物理量を検出するセンサ(301、302)と、
前記直動部材(201、202)が前記特定位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記センサ(301、302)で検出される物理量を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
第4発明は、第1発明または第2発明において、
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が前記原点位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を補正することを特徴とする。
【0019】
第5発明は、第1発明または第2発明または第4発明において、
前記リセットセンサ(301、302)は、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の直動方向に沿って所定距離離間されて設けられた2つのリセットセンサ(301、302)であって、これら2つのリセットセンサ(301、302)は、極性が異なる検出信号を出力するものであり、
前記演算処理手段(400)は、
前記2つのリセットセンサ(301、302)の検出信号を合成した信号に基づいて演算処理を行うことを特徴とする。
【0020】
第6発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する磁力を検出するセンサ(301、302)と、
磁力が前記シリンダチューブ(250)内部を通過するときの遅れを補償して、前記センサ(301、302)で検出される位置を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とする。
【0021】
図9(a)は、第1発明の比較例であり、時間tと磁力センサ301で検出される検出信号Vnとの関係を示している。
【0022】
磁力センサ301で検出される信号の変化は緩やかであり、ノイズ等の影響を受けやすい。このため図9(a)に示すように、ノイズが発生した時点を、ピストン201が原点位置I0を通過したときであると誤ることがある。また、ピストン201は原点位置I0付近で一定速度で移動するという保証はない。よって図9(b)に示すように、カーブの頂点付近の形状は、ピストン201の移動速度の影響を受けて、変動する。このため、図9(a)に示す時間tと磁力(電圧値)Vnの対応関係から、カーブの真の頂点(ピーク)を、ノイズ等と区別して正確に求めることは難しい。
【0023】
そこで、第1発明では、図8(a)に示すように、回転センサ100の検出回転量から得られるロッド202の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求め、図8(b)に示すように、この対応関係500に基づいて、原点位置I0に達したときの計測ストローク位置Ip(ピーク位置)を求め、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットする。
【0024】
ストローク位置Inと磁力センサ検出信号Vnとの対応関係500は、ピストン201の移動速度の影響を受けずに安定した形状である。このため対応関係500から計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを正確に求めることができ、原点位置I0のリセットを極めて高精度に行うことができる。
【0025】
第2発明によれば、図11(a)、(b)に示すように、ピストン201(ロッド202)が少なくとも2回ストロークされて、各対応関係600(モデル)、500′が求められる。そして図11(c)に示すように、両対応関係600、500′のずれ量Sln、Srnに基づいて、ピストン201が原点位置I0に達したときの計測ストローク位置(ピーク位置)Ipが求められ、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットするようにしている。
【0026】
第4発明では、原点位置通過速度Vと、原点位置I0から位置ずれ量(ピーク位置補正量)ΔIとの対応関係が取得され、この対応関係に従い、回転センサ100の検出結果から得られるピーク位置Ipが補正される。
【0027】
すなわち、原点位置通過速度Vは、磁力センサ301、302の各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過した時間を計測することにより、求められる。
【0028】
また、ピーク位置補正量ΔIは、真の原点位置I0と、ピーク位置Ipa、Ipbの平均値であるピーク位置Ipとの偏差を算出することで、求められる。
【0029】
ピストン201の移動速度を変化させて、原点位置付近を通過させる運動を繰り返し行うことで、上記原点位置通過速度Vとピーク位置補正量ΔIのデータが取得される。取得されたデータは、ピストン201の移動速度の各大きさj毎に、原点位置通過速度Vと、ピーク位置補正量ΔIとの対応関係のデータ(Vj、ΔIj)として、データテーブルの形式で演算処理部400の記憶装置に記憶される。
【0030】
そして、このデータテーブル(Vj、ΔIj)にしたがい、第1発明または第2発明におけるストローク位置センサの検出ストローク位置(ピーク位置Ip)が、移動速度Vに応じて補正される。
【0031】
上述した第4発明は、ストローク位置センサ(回転センサ100)の検出ストローク位置(ピーク位置)を、移動速度に応じて補正して、この補正したストローク位置(補正ピーク位置)を、リセットするという発明であるが、ストローク位置センサ(回転センサ100)を設けない構成、ストローク位置センサ(回転センサ100)の原点位置へのリセット処理を前提としない実施にも、本発明を適用することができる。
【0032】
第3発明は、たとえば、ストローク位置センサ(回転センサ100)を設けずに、磁力センサ301(302)の検出信号からピストン201が特定の位置を通過したことを計測するような場合に適用され、第4発明と同様にして、その磁力センサの計測位置が移動速度Vに応じて補正される。
【0033】
第3発明、第4発明によれば、シリンダチューブ250内部のピストン201の移動速度如何にかかわらず、正確に原点位置あるいは特定位置を計測することができる。
【0034】
第5発明では、図15(a)に示すように、2つのリセットセンサ301、302からは、極性が異なる検出信号301a、302aが出力され、演算処理部400では、図15(b)に示すように、2つのリセットセンサ301、302の検出信号301a、302aが合成され、この合成された信号301cに基づいて演算処理(図17(a)〜(f))が行われる。
【0035】
本第5発明によれば、図17(a)〜(f)に示すように、振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kがベースレベルの変動の影響を受けずに変動しない特性を有した合成信号301cに基づいて、リセットが行われるので、ノイズとの判別が正確に行われ、モデル600との対比を正確に行うことができる。この結果、回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置Ipを、真の原点位置I0にリセットする処理を極めて高精度を行うことができる。
【0036】
第6発明は、第3発明を上位概念で記述した請求項であり、磁力がシリンダチューブ250内部を通過するときの遅れが補償されて、リセットセンサ301、302で検出される位置が補正される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明に係るシリンダの位置計測装置の実施の形態について説明する。
【0038】
図1(a)は、シリンダ200と、ストローク位置センサとしての回転センサ100と、リセットセンサとしての磁力センサ300の位置関係を、シリンダ200の縦断面図で示している。
【0039】
図1(a)に示すように、シリンダ200の壁であるシリンダチューブ250には、ピストン201が摺動自在に設けられている。ピストン201には、ロッド202が取り付けられている。ロッド202は、シリンダヘッド203に摺動自在に設けられている。シリンダヘッド203とピストン201とシリンダ内壁とによって画成された室が、シリンダヘッド側油室204Hを構成する。ピストン201を介してシリンダヘッド側油室204Hとは反対側の油室がシリンダボトム側油室204Bを構成している。
【0040】
シリンダヘッド203には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミがシリンダヘッド側油室204Hに入り込まないようにするロッドシール205a、ダストシール205bが設けられている。
【0041】
シリンダチューブ250には、油圧ポート206H、206Bが形成されている。油圧ポート206Hを介して、シリンダヘッド側油室204Hに圧油が供給され、若しくは同油室204Hから油圧ポート206Hを介して圧油が排出される。油圧ポート206Bを介して、シリンダボトム側油室204Bに圧油が供給され、若しくは同油室204Bから油圧ポート206Bを介して圧油が排出される。
【0042】
シリンダヘッド側油室204Hに圧油が供給され、シリンダボトム側油室204Bから圧油が排出されることによって、ロッド202が縮退し、あるいは、シリンダヘッド側油室204Hから圧油が排出され、シリンダボトム側油室204Bに圧油が供給されることによって、ロッド202が伸張する。すなわち、ロッド202は図中左右方向に直動する。
【0043】
シリンダヘッド側油室204Hの外部にあって、シリンダヘッド203に密接した場所には、回転センサ100を覆い、内部に収容するケース207が形成されている。ケース207は、シリンダヘッド203にボルト等によって締結等されて、シリンダヘッド203に固定されている。すなわち、ケース207(回転センサ100)は、シリンダチューブ250に簡易に取り付けたり、取り外すことができる。
【0044】
回転センサ100を構成する後述する回転ローラ110は、その表面がロッド202の表面に接触し、ロッド202の直動に応じて回転自在に設けられている。すなわち、回転ローラ110によって、ロッド202の直線運動が回転運動に変換される。
【0045】
回転ローラ110は、その回転中心軸110cが、ロッド202の直動方向に対して、直交(紙面の背後方向、看者方向)するように配置されている。ケース207には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミが回転ローラ110とロッド202との間に入り込まないようにするダストシール208が設けられている。これにより回転ローラ110とロッド202との間に塵埃等が入り込んで、回転ローラ110が動作不良となるような事態を回避することができる。つまり、回転センサ100は、ケース207に設けられたダストシール208と、シリンダヘッド203に設けられたダストシール205bとによって防塵構造となっている。
【0046】
回転センサ100は、上述した回転ローラ110と、回転ローラ110の回転量を検出する図示しない回転センサ部とを少なくとも備えている。回転センサ部で検出された回転ローラ110の回転量を示す信号は、演算処理部400に送られ、シリンダ200のロッド202の位置(ストローク)に変換される。
【0047】
回転センサ100の回転ローラ110とロッド202と間では、滑り(スリップ)が発生することは避けられず、この滑りによって回転センサ100の検出結果から得られるロッド202の計測位置と、ロッド202の実際の位置との間には、誤差(滑りによる累積誤差)が生じる。そこで、この回転センサ100の検出結果から得られる計測位置を、原点位置(基準位置)にリセットするために、シリンダチューブ250の外部には、リセットセンサとしての磁力センサ300が設けられている。
【0048】
すなわち、ピストン201には、磁力線を生成する磁石350が設けられている。磁石350は、ピストン201、ロッド202の直動方向に対して垂直な図中鉛直方向に、N極、S極が配置されるように、ピストン201に設けられている。なお、磁石350を、ピストン201、ロッド202の直動方向と平行な方向に沿って、N極、S極が配置されるように、ピストン201に設けてもよい。
【0049】
磁力センサ300は、ピストン201の直動方向に沿って所定距離離間されて配置された2個の磁力センサ301、302からなる。磁力センサ301、302は、磁石350で生成された磁力線を透過して、磁力(磁束密度)を検出し、磁力(磁束密度)に応じた電気信号(電圧)を出力する。磁力センサ301、302は、既知の原点位置に設けられている。磁力センサ301、302の検出結果に基づいて、回転センサ100の検出結果から得られる計測位置が、原点位置(基準位置)にリセットされる。
【0050】
また、2個の磁力センサ301、302の検出位置に基づいて、ピストン201、ロッド202の絶対移動距離を計測することができる。たとえば、回転センサ100の回転ローラ110が経年変化によって消耗すると、回転センサ100の検出回転量から得られるロッド202の移動距離は、実際のロッド202の移動距離よりも小さくなるが、ピストン201が2個の磁力センサ301、302間を移動したときに回転センサ100の検出回転量から得られる移動距離L′と、実際の2個の磁力センサ301、302間の距離Lとの比率L/L′に基づいて、回転センサ100の検出回転量から得られる移動距離を補正することができる。
【0051】
磁力センサ301、302としては、たとえばホールICが使用される。
【0052】
磁力センサ301、302は、ひさし310に装着されている。ひさし310は、バンド320に装着されている。バンド320は、シリンダチューブ250の外周に固定されている。バンド320は、磁性材料によって構成されている。バンド320の材料としては、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0053】
図1(b)は、図1(a)のA−A断面図、つまりシリンダチューブ250の横断面図を示している。
【0054】
バンド320は、シリンダチューブ250の外周に圧接されて固定される。バンド320は、シリンダチューブ250の外径に応じた断面半円弧状のバンド部材320Aと、同じく断面半円弧状のバンド部材320Bとからなり、バンド部材320Aと、バンド部材320Bとは、ボルト321によって締結され、締結されることによりシリンダチューブ250の外周に圧接される。一方のバンド部材320Aには、ひさし310が装着されている。このためシリンダチューブ250にネジ穴を形成したり、シリンダチューブ250の外周を溶接するなどの加工、処理を施すことなくして、シリンダチューブ250の外周に磁力センサ301、302を固定することができる。また、シリンダチューブ250に加工、処理を施す必要がないため、シリンダチューブ250の厚さを、最低限の厚さに維持することができる。すなわち、シリンダチューブ250に加工、処理を施すことにすると、強度を保つために、チューブ自体を厚くしなければならないが、その必要はない。
【0055】
また、バンド320のシリンダチューブ250への固定位置の変更が容易かつ簡単に行え、磁力センサ301、302を、シリンダチューブ250の長手方向(ピストン201、ロッド202の直動方向)の任意の位置に、容易にかつ簡単に装着することができる。
【0056】
(第1実施例)
図2は、磁力センサ301、302と、ひさし310と、バンド320の構成の詳細を示している。
【0057】
図2(a)は、図1(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図を拡大して示している。図2(b)は、図1(b)に対応するシリンダチューブ250の横断面図(図2(a)のA視)を拡大して示している。図2(c)は、図2(a)をZ視方向(図中下方から上方に向かう方向)からみた図である。
【0058】
図2(d)は、磁力センサ301、302の各面を定義する図である。
【0059】
磁力センサ300(301、302)は、直方体形状の部材であり、底面300B、上面300T、前面300F、左右側面300L、300R、後面300Gを有している。
同図2に示すように、磁石350は、ピストン201のシリンダヘッド側油室204Hに臨む面に、ホルダリング351によって固定されている。
【0060】
ホルダリング351と磁石350をピストン201に共締めすることで、磁石350がピストン201に固定される。
【0061】
ひさし310は、磁性材料で構成されており、磁力センサ301、302の上面300T、後面300Gを覆うように配置されている。ひさし310は、炭素鋼、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0062】
ひさし310と磁力センサ301、302の配置は、図2(a)中左右対称であり同様な位置関係にあるので、一方の磁力センサ301を代表させて説明する。
【0063】
ひさし310のバンド固定面310Aは、バンド部材320Aに固定される。ひさし310のチューブ密着面310Bは、シリンダチューブ250の外周面に密着される。
【0064】
磁力センサ301は、モールド材303に囲まれるようにモールド材303と一体形成されている。磁力センサ301を含むモールド材303は、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側が、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300B側がシリンダチューブ250の外周面に密着されている。
【0065】
磁力センサ301の前面300F、左右側面300L、300R側には、真ちゅう製の板材311が設けられる。
【0066】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301、302の底面300Bを配置して、磁力センサ301、302を、ひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構成となっている。
【0067】
一方の磁力センサ301について説明したが、他方の磁力センサ302についても同様にして、ひさし310に装着される。
【0068】
ひさし310には、端子312を備えた端子台313が内蔵されている。また、ひさし310には、図示しないハーネスが挿通される穴であって、端子312に連通する挿通穴314が形成されている。磁力センサ301、302と、端子312とは、図示しない電気信号線によって接続される。端子312には、ひさし310の外部から、挿通穴314を介して、ハーネスが接続される。このハーネスは、演算処理部400に接続される。この演算処理部400では、磁力センサ301、302の検出信号と、回転センサ100の検出信号とが演算処理されて、ロッド202(ピストン201)の直動位置が計測される。すなわち、回転センサ100の検出結果からロッド202の位置が計測されるとともに、磁力線センサ301、302の検出結果に基づいて、回転センサ100の検出結果から得られるロッド202の計測位置が原点位置(基準位置)にリセットされる。
【0069】
図3(a)は、図2(a)に対応する図であり、磁石350の磁極Nを起点とし磁極Sを終点とする磁力線の経路を概念的に示している。
【0070】
図3(b)は、比較例であり、本第1実施例のひさし310が仮にないとした場合の磁力線の経路を概念的に示している。
【0071】
同図3(a)と図3(b)とを対比してわかるように、ひさし310があることによって、磁石350のN極を起点として磁力線は、シリンダチューブ250、磁力センサ301、ひさし310を透過し、磁石350のS極に戻る経路を生成するが、ひさし310がない場合には、磁石350で生成された磁力は、シリンダチューブ250によって遮られてしまいチューブ250外部の磁力センサ301まで磁力線が到達しないか、僅かにしか到達しない。図3では、一方の磁力センサ301について磁力線を示したが、他方の磁力線センサ302についても同様である。
【0072】
また、バンド320は、磁性材料で構成されているため、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となり、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301、302に集中的に集められる。このようにひさし310とバンド320の相乗的な効果により、磁石350で生成された磁力は、磁力センサ301、302に集中的に集められる。
【0073】
以上のように本第1実施例によれば、磁力センサ301、302を覆うひさし310を設け、磁石350を起点とする磁力線がシリンダチューブ250、磁力センサ301、302、ひさし310を通過して磁石350に戻る経路を形成するようにしたので、たとえシリンダチューブ250が強度を確保するために厚い磁性材料で構成されていたとしても、チューブの250外部に設けられた磁力センサ301、302で磁力線を確実に検出することができるようになる。この結果、磁力センサ301、302の検出結果に基づくロッド202の位置計測精度が飛躍的に向上する。
【0074】
つぎに、上記第1実施例の変形例について説明する。
【0075】
(第2実施例)
上述した第1実施例では、バンド320によって、磁力センサ301、302をシリンダチューブ250の外周に固定するようにしているが、磁力センサ301、302の固定方法は任意である。また、第1実施例では、磁力センサ300を2個設けるようにしているが、磁力センサ300は、1個の磁力センサ301だけであってもよい。
【0076】
図4は、シリンダチューブ250の外周に、1個の磁力センサ301が装着されたひさし310を、バンドなしで固定する斜視図にて示している。
【0077】
同図4に示すように、第1実施例と同様に、磁力センサ301は、上面300T、後面300Gが、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300Bがシリンダチューブ250の外周面側に配置されている。
【0078】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301の底面300Bを配置し、磁力センサ301の上面300T、後面300Gをひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構造となっている。
【0079】
図5は、バンド320以外の装着部材で、ひさし310を、シリンダチューブ250の外周に固定する装着例を示している。
【0080】
すなわち、シリンダの種類によっては、シリンダチューブ250の外周の長手方向に沿って、複数のタイロッド260が架け渡された構造のものがある。
【0081】
そこで、ひさし310に、複数(2本)のタイロッド260、260が挿通される挿通穴260Aを形成し、この挿通穴260Aに、タイロッド260を挿通させることで、ひさし310をシリンダチューブ250の外周に固定してもよい。
【0082】
(第3実施例)
上述した第1実施例、第2実施例では、ひさし310を、磁力センサ301の上面300Tの全体を覆う形状、大きさとしているが、必ずしも上面300Tの全体を覆う必要はない。
【0083】
また、上述した第1実施例、第2実施例では、ひさし310を、磁力センサ301の後面300Gの全体を覆う形状、大きさとしているが、必ずしも後面300Gの全体を覆う必要はない。
【0084】
図6は、磁力センサ301の一部を覆う形状、大きさに形成されたひさし310の第1例を例示している。
【0085】
図6(a)は、図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)を上面からみた図である。
【0086】
同図6(a)、(b)に示すように、ひさし310は、磁力センサ301の後面300Gについては全体を覆うが、上面300Tについては一部を覆う形状、大きさに形成されている。
【0087】
図6(c)は、図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図であり、図6(d)は、図6(c)を上面からみた図である。
【0088】
同図6(c)、(d)に示すように、ひさし310は、磁力センサ301の上面300T、後面300Gについて一部を覆う形状、大きさに形成されている。
【0089】
いずれにせよ、ひさし310としては、磁力センサ301(302)をどの程度覆うのかが問題なのではなく、図3(a)で概念的に示したように、磁石350を起点とする磁力線が磁力センサ301を通り磁石350に戻る経路を形成するような形状、大きさに形成されていればよい。
【0090】
(第4実施例)
上述した第1実施例〜第3実施例では、磁力センサ301(302)をひさし310を介してシリンダチューブ250の外周に固定する構造としているが、ひさし310を介することなく、バンド320に磁力センサ301(302)を直接、装着することで、シリンダチューブ250の外周に固定してもよい。
【0091】
図7(a)は図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面を示し、図7(b)は図7(a)のA−A断面を示し、図7(c)は図7(a)を上面からみた図である。
【0092】
同図7に示すように、磁力センサ301は、モールド材303に囲まれるようにモールド材303と一体形成されている。磁力センサ301を含むモールド材303は、カバー304によって覆われ、カバー304は、バンド320に接続されている。カバー304は、真ちゅう等の非磁性材料で構成されている。
【0093】
磁力センサ301は、後面300Gがバンド320の側面320Sに配置される態様で、バンド320に装着されている。
【0094】
このため、磁力センサ301の前面300F側、上面300T側、左右側面300L、300R側には、磁性材料が配置されておらず(磁性材料から開放されている)、磁力センサ301の後面300G側については、磁性材料(バンド320)が配置された構造となっている。
【0095】
このように構成した場合にも、バンド320は、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となって、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301に集中的に集められるため、チューブ250内部の磁石350で生成された磁力を磁力センサ301で確実に検出することが可能となる。
【0096】
(第5実施例)
つぎに、演算処理部400で行われる演算処理について説明する。
【0097】
図8(a)、(b)は、第5実施例を説明する図であり、演算処理部400で行われる処理を説明する図である。なお、磁力センサ301、302のうち、一方の磁力センサ301を代表させて説明する。まず、本実施例の比較例について説明する。図9は、本第5実施例の比較例を説明する図である。
【0098】
図9(a)は、時間tと磁力センサ301で検出される検出信号Vnとの関係を示している。なお、磁力センサ301では、磁力に対応する電圧値Vnが検出される。なお、また、nはデータのサンプリング順序(n=1、2…)であり、データのサンプリングは一定間隔で行われるものとする。
【0099】
磁力センサ301では、磁石350からの距離が近づくほど検出レベル(磁力;電圧値)Vnが大きくなる信号が検出される。磁力センサ301は、原点位置I0に設けられているため、磁石350が原点位置I0に達したときに、磁石350と磁力センサ301との距離が最小となり、磁力センサ301で、最大レベルの信号Vm(磁力;電圧値)が検出されるはずである。
【0100】
しかしながら、実際には、磁力センサ301で検出される信号が最大レベルVmになったときに、ピストン201が必ずしも原点位置I0に位置しているとは限らない。前述したように磁力センサ301で検出される信号の変化は緩やかであり、ノイズ等の影響を受けやすい。このため図9(a)に示すように、ノイズが発生した時点を、ピストン201が原点位置I0を通過したときであると誤ることがある。また、ピストン201は原点位置I0付近で一定速度で移動するという保証はない。よって図9(b)に示すように、カーブの頂点付近の形状は、ピストン201の移動速度の影響を受けて、変動する。このため、図9(a)に示
す時間tと磁力(電圧値)Vnの対応関係から、カーブの真の頂点(ピーク)を、ノイズ等と区別して正確に求めることは難しい。
【0101】
そこで、本実施例では、図8(a)に示すように、回転センサ100の検出回転量から得られるピストン201の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求め、図8(b)に示すように、この対応関係500に基づいて、ピストン201が原点位置I0に達したときの計測ストローク位置Ip(以下、ピーク位置という)を求め、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットするようにしている。
【0102】
ストローク位置Inと磁力センサ検出信号Vnとの対応関係500は、ピストン201の移動速度の影響を受けずに安定した形状である(図9(b)と図8(b)参照)。このため対応関係500から計測ストローク位置Ipを正確に求めることができ、原点位置I0のリセットを極めて高精度に行うことができる。
【0103】
具体的には、まず、回転センサ100の検出値から逐次得られる回転量を、ピストン201(ロッド202)のストローク位置In(n=1、2…)に逐次変換する。
【0104】
ピストン201のストローク位置Inが計測される毎に、そのときのリセットセンサ301の検出信号Vnを読み出し、両者のデータInとVnとを対応づける。
【0105】
つぎに、図8(a)に示すように、回転センサ100の検出信号から得られる計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を、横軸をストローク位置Inとし縦軸を磁力(電圧値)Vnとして求める。
【0106】
つぎに、図8(b)に示すように、対応関係500に、モデル600を適用して、対応関係500の頂点500P(ストローク位置Ip、磁力Vp)を求める。
【0107】
つぎに頂点500Pの座標位置(ストローク位置Ip、磁力Vp)から、ピストン201が原点位置に達したときの計測ストローク位置Ip、つまりピーク位置Ipを読み取る。
【0108】
つぎに、この読み取った計測ストローク位置Ipを、真のストローク位置である原点位置I0にリセットする。
【0109】
モデル600は、理想的なストローク位置Iと磁力(電圧値)Vとの対応関係を示すものとして予め用意したものでもよく、1ストロークしたときのデータから作成されたものであってもよい。
【0110】
図10は、前回1ストロークしたときのデータからモデル600を求めてリセットを行う本実施例のアルゴリズムを示している。
【0111】
たとえば、ピストン201が図1(a)中で左の位置から原点位置を通過し右の位置に達するまでを1回目のストロークとし、ピストン201が右の位置に達しから原点位置を通過し左の位置に達するまでを2回目のストロークとして、データを取得する。
【0112】
図11(a)は、1回目のストロークによって得られる対応関係(モデル)600を破線で示すとともに、2回目のストロークによって得られる対応関係500を実線で示している。
【0113】
2回目のストロークによって、ストローク位置Inと電圧値Vn(n=1、2…)の対応関係500が得られたとすると、この対応関係500のデータから、電圧最大値(磁力最大値)に対応するストローク位置Imを求める。このストローク位置Imを仮のピーク位置とする(ステップ1001)。
【0114】
つぎに、図11(b)に示すように、ストローク位置Inと電圧値Vnとの対応関係500を、ストローク位置Imがモデル600の原点位置I0に一致するようにシフトさせる。
【0115】
シフトさせた対応関係500′のストローク位置In′と、シフト前の対応関係500′のストローク位置Inとの関係は、下記(1)式で表される。
【0116】
In′=In−Im+I0 …(1) (ステップ1002)。
【0117】
つぎに、図11(c)に示すように、各電圧値Vn′毎に、対応関係500′とモデル600とのストローク差Sln、Srnを求める(ステップ1003)。
【0118】
求められたストローク差Sln、Srnのうち絶対距離が小さい方のストローク差を、モデル600と対応関係500′の位置ずれSn(=Σmin(Sln,Srn))とする。下記(2)式に示すように、すべての電圧値Vn′(n=1、2…)について位置ずれSnを求め、それらの平均位置ずれSを算出する。
【0119】
S=Σmin(Sln,Srn)/n …(2) (ステップ1004)
つぎに、平均位置ずれSと、仮のピーク位置Imとを用いて、下記(3)式のごとく、ピストン201が原点位置Ipに達したときの計測ストローク位置Ip、つまり対応関係500のピーク位置Ipを算出する。
【0120】
Ip=Im−S …(3) (ステップ1005)
つぎに、このようにして求められたピーク位置Ip(回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置)を、真の原点位置I0にリセットする(ステップ1006)。
【0121】
なお、本実施例では、モデル600は、ピストン201を原点位置付近を1ストロークさせたときのデータから求めるようにしているが、原点位置付近を2回以上ストロークさせたデータからモデル600を求める実施も可能である。
【0122】
(第6実施例)
上述した第5実施例では、前回の1ストロークのデータのモデル600を用いて、対応関係500のピーク位置Ipを求めるようにしているが、対応関係500に近似する連続曲線510を求め、この連続曲線510から、対応関係500のピーク位置Ipを求めてもよい。
【0123】
すなわち、図12(a)に示すように、対応関係500の各点(In、Vn)のデータを用いて最小自乗法によって、連続曲線510を求め、この連続曲線510上で電圧値が最大となるストローク位置を、対応関係500のピーク位置Ipと定めてもよい。また、図12(b)に示すように、対応関係500に近似する相関関数として、たとえば4次関数(V=f(I))を求め、この4次関数の連続曲線520上で電圧値が最大となるストローク位置を、対応関係500のピーク位置Ipと定めてもよい。
【0124】
(第7実施例)
特許文献3では、2つの磁力センサが所定の時間差をおいて所定の検出信号レベル(しきい値)以上になったときに、ピストンが特定の位置にあると判断し、そうでない場合はノイズであると判断している。この発明は、図13(a)に示すように、一方の磁力センサがオンとなった時刻から他方の磁力センサがオンとなる時刻までの時間幅が一定であることを前提としている。
【0125】
しかし、磁力センサで検出される磁力のベースレベルは、一定ではなく、変動し得るものである。たとえばシリンダチューブ250とピストン201との間には隙間ガタが存在し、これにより磁石350と磁力センサとの距離は、変動し、ベースレベルは、図13(b)、(c)、(d)に示すように高くなったり低くなったりする。その他、外来磁気などの設置環境の影響を受けてベースレベルが変化することもある。このため、一定のしきい値をもって、磁力センサがオンであるか否かを判断することにすると、一方の磁力センサがオンとなってから他方の磁石がオンとなるまでの時間幅が変化したり(図13(b)、(c))、あるいは場合によって全くオンとならないこともある(図13(d))。
【0126】
また、図14(a)に示す磁力センサで検出される波形を、図14(b)に示すノイズと判別しようとしても、ノイズと判別することが困難である。
【0127】
また、モデル600と対比するためには、磁力センサの検出波形のベースレベルを確定させて、モデル600と一致するように振幅を拡大したり、縮小したり、シフトさせる必要があるが、図14(c)に矢印で示すように検出波形の裾野の各ポイントのレベルが異なるため、真のベースレベルがどこにあるのか判別することが困難である。このためモデル600との対比が困難になる。
【0128】
そこで、本実施例では、シリンダチューブ250の外側に、ピストン201、ロッド202の直動方向に沿って所定距離離間されて設けられた2つ磁力センサ301、302を設け、図15(a)に示すように、これら2つの磁力センサ301、302から、極性が異なる検出信号301a、302aを出力させ、更に両検出信号301a、302aの電圧レベルを、固定抵抗を用いた平均化回路によって、平均化して、平均化された電圧レベルの信号301cに基づいて、ストローク位置を求めるなどの演算処理を行うようにしている。
【0129】
図15(a)は、磁力センサ301、302で検出される信号波形301a、302aをそれぞれ示している。一方の磁力センサ302の極性が他方の磁力センサ301とは逆極性となるように、両磁力センサ301、302が配置されている。
【0130】
図15(b)は、上記平均化回路で磁力センサ301、302の出力信号を平均化して得られる合成信号301cを示している。合成信号301cは、磁力センサ301、302の出力信号301a、302aを加算して、平均する演算処理を行うことで取得される。
【0131】
このようにして得られた合成信号301cは、図14(d)、(e)に示すように、ベースレベルが小さくなったり、大きくなったりしても、一方の磁力センサ301の最小振幅値(マイナス極性)から、他方の磁力センサ302の最大振幅値(プラス極性)までの距離(以下、振幅値間距離J)変化は、ごく小さい(両磁力センサ301、302の振幅の合計値)。また、一方の磁力センサ301のピーク位置から他方の磁力センサ302のピーク位置までの距離(以下、ピーク位置間距離K)は、ベースレベルの変化にかかわらず、既知の磁力センサ301、302間の距離に応じた一定値となる。
【0132】
このように合成信号301cは、上記振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kが、ベースレベルの変動の影響を受けずに変動しない特性を有している。
【0133】
図16は、合成信号301cに基づき行われる演算処理のアルゴリズムを示している。
【0134】
まず、回転センサ100の検出信号と、合成信号301cとに基づいて、ストローク位置Inと電圧値Vn(n=1、2…)の対応関係500を、図17(a)に示すように取得し、これらストローク位置Inと電圧値Vnとの対応関係500のデータ(In、Vn)を記憶する(ステップ1101)。
【0135】
つぎに、対応関係500のデータ(In、Vn)に基づいて、振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kを演算によって求める。そして、この演算された振幅値間距離Jが所定の幅J1(下限値)〜J2(上限値)内に収まっており、かつ、演算されたピーク位置間距離Kが所定の幅K1(下限値)〜K2(上限値)内に収まっているいるか否かが判断される(ステップ1102)。
【0136】
上記ステップ1102の判断がYESである場合には、この対応関係500で示される信号波形は、ノイズではなくて、磁石350が磁力センサ301、302間の原点位置を通過したときに同センサから出力される信号波形であるとして、つぎのステップ1103に移行し、そうでない場合(ステップ1102の判断NO)には、ノイズであると判断する(ステップ1104)。
【0137】
ステップ1103では、モデル600の振幅値間距離J0に一致するように、対応関係500を拡大、縮小させる。たとえば図17(b)、(c)、(d)に示すように、対応関係500の振幅値間距離Jが、モデル600の振幅値間距離J0よりも小さい場合には、対応関係500の振幅値間距離Jがモデル600の振幅値間距離J0に一致するように、対応関係500の振幅値間距離Jを拡大させて、対応関係500′にする。対応関係500の拡大、縮小処理は、次式(4)に示される演算式にしたがい行われる。なお、変換後の対応関係500′の電圧値データをVn′とする。
【0138】
Vn′=(Vn−対応関係500の最小振幅値)(モデル600の最大振幅値− モデル600の最小振幅値)/(対応関係500の最大振幅値−対応 関係500の最小振幅値)+モデル600の最小振幅値 …(4)
(ステップ1103)
つぎに、図17(e)、(f)に示すように、拡大された対応関係500′を、しきい値Q1、Q2によって、2つの部分500a′、500b′に分割する。一方の部分500a′は、一方の磁力センサ301の検出波形301aに対応する部分であり、他方の部分500b′は、他方の磁力センサ302の検出波形302aに対応する部分である(ステップ1105)。
【0139】
つぎに、分割した各部分500a′、500b′それぞれに対して、第5実施例、第6実施例で説明したのと同様の手法でモデル600と対比させて、それぞれのピーク位置Ipa、Ipbを求める(ステップ1106)。
【0140】
つぎに、演算された各ピーク位置Ipa、Ipbを平均してピーク位置Ipを求める。なお、本実施例では、磁力センサ301、302の中間位置を原点位置I0に定めているものとする(ステップ1107)。
【0141】
つぎに、このようにして求められたピーク位置Ip(回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置)を、真の原点位置I0にリセットする(ステップ1108)。
【0142】
以上のように本実施例によれば、振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kがベースレベルの変動の影響を受けずに変動しない特性を有した合成信号301cに基づいてリセットを行うようにしているので、ノイズとの判別を正確に行え、モデル600との対比を正確に行うことができる。この結果、回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置Ipを、真の原点位置I0にリセットする処理を極めて高精度に行うことができる。
【0143】
(第8実施例)
ところで、シリンダチューブ250内部の磁石350で発生した磁気がシリンダチューブ250を伝達するときに磁気伝達遅れが発生する。この磁気伝達の遅れの時間は、シリンダチューブ250の比透磁率と比誘電率により定まり一定となる。したがって磁石350とともに直動するピストン201、ロッド202が高速で移動している場合と低速で移動している場合とでは、同じストローク位置における磁力センサ301、302の検出電圧レベルが異なることになる。
【0144】
このためピストン201が原点位置I0を通過するときの移動速度V(以下、原点位置通過速度という)如何によって、回転センサ100の検出結果から得られるピーク位置Ipが、変動することになる。
【0145】
そこで、本実施例では、原点位置通過速度Vと、原点位置I0から位置ずれ量(ピーク位置補正量)ΔIとの対応関係を取得しデータテーブル形式で記憶装置に格納し、このデータテーブルに従い、回転センサ100の検出結果から得られる位置Inを補正するようにしている。
【0146】
すなわち、原点位置通過速度Vは、磁力センサ301、302の各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過した時間を計測することにより、求められる。
【0147】
また、ピーク位置補正量ΔIは、真の原点位置I0と、ピーク位置Ipa、Ipbの平均値であるピーク位置Ipとの偏差を算出することで、求められる。
【0148】
ピストン201の移動速度を変化させて、原点位置付近を通過させる運動を繰り返し行うことで、上記原点位置通過速度Vとピーク位置補正量ΔIのデータが取得される。取得されたデータは、ピストン201の移動速度の各大きさj毎に、原点位置通過速度Vと、ピーク位置補正量ΔIとの対応関係のデータ(Vj、ΔIj)として、データテーブルの形式で演算処理部400の記憶装置に記憶される。
【0149】
そして、このデータテーブル(Vj、ΔIj)にしたがい、計測されたピーク位置Ipが、原点位置通過速度Vに応じて補正される。
【0150】
たとえば、第7実施例では、図16のステップ1106で説明したように、各ピーク位置Ipa、Ipbが演算されるが、これら各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過する時間とに基づいて、実際の原点位置通過速度Vが求められる。そして、この原点位置通過速度Vに対応するピーク位置補正量ΔIが、データテーブル(Vj、ΔIj)から読み出される。
【0151】
第7実施例では、各ピーク位置Ipa、Ipbの平均値をピーク位置Ipとしているが(図16のステップ1107)、このピーク位置Ipは上記ピーク位置補正量ΔI分の誤差を含んでいるため、下記(5)式にしたがい、ピーク位置Ipを補正し、補正ピーク位置Ip′を算出する。
【0152】
Ip′=Ip+ΔI …(5)
このようにして、シリンダチューブ250内部のピストン201の移動速度如何にかかわらず、正確に補正ピーク位置Ip′が求められ、この補正ピーク位置Ip′に基づいて、原点位置へのリセットが高精度に行われる。
【0153】
本第8実施例では、第7実施例と組み合わせて実施する場合について説明したが、第5実施例、第6実施例と組み合わせて実施してもよい。また、磁力センサが2個もうけられた場合のみならず磁力センサが1個設けられた場合にも適用することができる。磁力センサが1個の場合には、各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離に基づきピストン201の移動速度を求めることはできないが、ピストン201の移動速度を計測すればよい。
【0154】
上述した説明では、データテーブル(Vj、ΔIj)を用いて、計測されたピーク位置Ipを、原点位置通過速度Vに応じて補正するようにしているが、下記の演算式を用いて、補正量ΔIを求めてもよい。
【0155】
ΔI=V×Td …(6)
上記(6)式において、Tdは、シリンダチューブ250内部の磁石350で発生した磁気がシリンダチューブ250を伝達するときに磁気伝達遅れの時間であり、シリンダチューブ250の材質等によって一義的に定まる既知の値である。
【0156】
また本実施例では、ピストン201の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求めた後に、データテーブルまたは演算式を用いて、計測ピーク位置Ipを補正しているが、補正は、対応関係500を求める過程で行うようにしてもよい。
【0157】
すなわち、ピストン201の逐次の計測ストローク位置In毎に、移動速度によって補正した補正ストローク位置In′を求め、この補正ストローク位置In′と、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500に基づいて、ピーク位置Ipを求めてもよい。この場合には、ピストン201の各計測ストローク位置In毎に、ピストン201の移動速度を計測し、この移動速度に応じて補正ストローク位置In′を算出すればよい。
【0158】
また、上述の実施例では、実際の原点位置通過速度Vを、各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過する時間とに基づいて、算出するようにしているが、回転センサ100で逐次計測されるストローク位置に基づいて、実際の原点位置通過速度Vを算出してもよい。たとえば、前回計測されたストローク位置と、今回計測されたストローク位置と、前回から今回までの時間差とに基づいて、実際の原点位置通過速度Vを算出することができる。
【0159】
また、上述した本第8実施例では、回転センサ100の検出結果から得られるストローク位置Ip(ピーク位置)を、ピストン201の移動速度Vに応じて補正して、この補正したストローク位置Ip′(補正ピーク位置)を、原点位置I0にリセットする場合を想定して説明したが、回転センサ100を設けない構成、回転センサ100の原点位置へのリセット処理を前提としない実施にも、本発明を適用することができる。たとえば、回転センサ100を設けずに、磁力センサ301(302)の検出信号に基づいてピストン201が特定の位置を通過したことを計測するような場合にも、その計測位置の補正に本発明を適用することができる。
【0160】
すなわち、本発明としては、磁力がシリンダチューブ250内部を通過するときの遅れを補償して、リセットセンサ301、302で検出される位置を補正することができるものであればよい。
【0161】
なお、第5実施例〜第8実施例では、検出媒体は磁石(磁力)であることを前提に説明したが、検出媒体は必ずしも磁石(磁力)である必要はなく、たとえば図8(a)に示すごとく、原点位置でピークとなるように物理量が変化する検出媒体であればよい。たとえば検出媒体を音波とし、超音波センサで音波を検出する場合にも第5実施例〜第8実施例に係る本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1(a)、(b)は、シリンダと回転センサとリセットセンサの関係を説明するために用いたシリンダチューブの断面図である。
【図2】図2(a)、(b)、(c)、(d)は、第1実施例のリセットセンサの構成を示す図である。
【図3】図3(a)、(b)は、磁力線の経路を概念的に本実施例と比較例とを対比して示す図である。
【図4】図4は、第2実施例を例示する図で、バンドなしで、ひさしを、シリンダチューブの外周に固定する装着例を示す図である。
【図5】図5は、第2実施例を例示する図で、バンド以外の装着部材で、ひさしを、シリンダチューブの外周に固定する装着例を示す図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は、第3実施例を例示する図で、磁力センサの一部を覆うひさしを構成を示した図である。
【図7】図7(a)、(b)(c)は第4実施例の構成図である。
【図8】図8(a)、(b)は第5実施例を説明する図である。
【図9】図9(a)、(b)は第5実施例の比較例を示した図である。
【図10】図10は第5実施例のアルゴリズムを例示する図である。
【図11】図11(a)、(b)、(c)は図10の処理内容を説明する図である。
【図12】図12(a)、(b)は第6実施例を説明する図である。
【図13】図13(a)、(b)、(c)、(d)は第7実施例の比較例を説明する図である。
【図14】図14(a)、(b)、(c)は第7実施例の比較例を説明する図で、図14(d)、(e)は第7実施例の合成信号の特徴を説明する図である。
【図15】図15(a)、(b)は第7実施例における信号処理を説明する図である。
【図16】図16は第7実施例のアルゴリズムを例示する図である。
【図17】図17(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は図16の処理内容を説明する図である。
【符号の説明】
【0163】
100 回転センサ 201 ピストン 202 ロッド 250 シリンダチューブ 300 301、302 磁力センサ(リセットセンサ) 310 ひさし 320 バンド 350 磁石 400 演算処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブ内部を直動するロッド、ピストンの位置を計測するシリンダの位置計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ等のシリンダチューブの内部をロッドとともに直動するピストンに永久磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に磁力センサを設け、磁力センサを通過する磁力(磁力線)を検出することによって、シリンダのピストン(ロッド)の位置を計測するという装置は、既に公知となっている。
【0003】
下記特許文献1には、シリンダヘッドに、ロッドの直動量を回転量として検出するロータリエンコーダを設けるとともに、シリンダチューブの途中にあってチューブ外周面にリセット用磁力センサを設け、このリセット用磁力センサで、チューブ内部を直動するピストンに固定された磁石で発生した磁力を検出して、その磁力がピーク値に達したときに、ロータリエンコーダの検出値から得られる計測位置を原点位置にリセットするという発明が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、エアシリンダのシリンダチューブ内部のピストンに、磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に磁力センサを設けて、磁力センサの検出信号レベルの変化に応じて、ピストンの各移動位置を計測するという発明が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、シリンダのシリンダチューブ内部のピストンに、磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に、所定距離離間させて2つの磁力センサを設けて、2つの磁力センサが所定の時間差をおいて所定の検出信号レベル以上になったときに、ピストンが特定の位置にあると判断し、そうでない場合はノイズであると判断するという発明が記載されている。
【特許文献1】実開平5−75603号公報
【特許文献2】特開平7−103707号公報
【特許文献3】特開平6−249605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1では、リセット用磁力センサで検出された磁力がピーク値に達したときに、ロータリエンコーダの検出値から得られる計測位置を原点位置にリセットしているが、これは、磁力のピーク値が正確に求められるということを前提としている。
【0007】
しかし、油圧シリンダのチューブ外部に磁力センサを設ける場合には、磁力のピーク値を正確に求めることは難しい。
【0008】
すなわち、油圧シリンダのチューブは、内部の高圧の圧油を密封して高圧の圧油によって容易に変形や損傷が生じないように設計する必要があり、強度が高く厚い磁性材料(鉄鋼材)で構成されている。
【0009】
このためシリンダチューブの壁は、内部の永久磁石で生成された磁力線が外部に漏れることを防止する磁気シールドとして機能する。磁力センサで検出される磁力の信号レベルは、ベースレベルに比して極めて低く、信号レベルの変化は、ロッドの移動量に対して極めて緩慢である。このためピーク値付近の信号レベルの変化は、なだらかで幅広いという特性をもっている。また、信号レベルは、他の磁界発生源(ノイズ)やピストンのガタや温度等の影響を受けやすく、たとえばノイズとピーク値との判別が困難な場合もある。このようにピーク値付近の信号レベル変化は小さくノイズ等の影響を受けやすいため、ピーク値を正確に求めることは難しい。
【0010】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、リセットセンサで検出される信号のピークを正確に求めるようにして、ストローク位置センサの原点位置へのリセットを高精度に行えるようにすることを第1の解決課題とするものである。
【0011】
また、油圧シリンダのチューブ外部に磁力センサを設ける場合には、内部のピストンの移動速度の影響を受け、磁力のピーク値から真のストローク位置(原点位置)を正確に求めることは難しい。
【0012】
すなわち、油圧シリンダのチューブは、磁性材料で構成されているため、チューブ内部で発生した磁気がチューブを介してチューブ外部の磁力センサに到達するまでに一定の時間遅れ(伝達遅れ)がある。一方、シリンダチューブ内部のピストンが移動する速度は、一定ではなく、磁力センサ付近を遅い速度で移動することもあれば、速い速度で磁力センサ付近を移動することもある。このため、磁力センサで検出される磁力がピーク値に達したときに演算処理によって得られるストローク位置は、ピストン移動速度如何によって、真のストローク位置(原点位置)からずれたものとなる。
【0013】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、シリンダチューブ内部のピストン等の直動部材の移動速度如何にかかわらず、正確に原点位置を計測できるようにすることを第2の解決課題とするものである。
【0014】
なお、上記各特許文献1、2、3には、磁力センサで磁力のピーク値を正確に求めることは難しいといった問題点の指摘や、磁力センサの検出値からストローク位置を求める際にはピストン等の直動部材の移動速度の影響に受けて、ストローク位置を正確に求めることは難しいといった問題点の指摘はなく、また、これら問題点に対応する技術的課題を示唆する記載もない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材のストローク位置を検出するストローク位置センサ(100)と、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の原点位置に対応して設けられ、前記検出媒体(350)からの距離に応じて変化する物理量を検出するリセットセンサ(301、302)と、
前記ストローク位置センサ(100)で検出されるストローク位置と、前記リセットセンサ(301、302)で検出される物理量との対応関係を求め、
前記対応関係に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットする演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とする。
【0016】
第2発明は、第1発明において、
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が少なくとも2回ストロークしたときの両対応関係を求め、両対応関係のずれ量に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットするものであることを特徴とする。
【0017】
第3発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する物理量を検出するセンサ(301、302)と、
前記直動部材(201、202)が前記特定位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記センサ(301、302)で検出される物理量を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
第4発明は、第1発明または第2発明において、
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が前記原点位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を補正することを特徴とする。
【0019】
第5発明は、第1発明または第2発明または第4発明において、
前記リセットセンサ(301、302)は、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の直動方向に沿って所定距離離間されて設けられた2つのリセットセンサ(301、302)であって、これら2つのリセットセンサ(301、302)は、極性が異なる検出信号を出力するものであり、
前記演算処理手段(400)は、
前記2つのリセットセンサ(301、302)の検出信号を合成した信号に基づいて演算処理を行うことを特徴とする。
【0020】
第6発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する磁力を検出するセンサ(301、302)と、
磁力が前記シリンダチューブ(250)内部を通過するときの遅れを補償して、前記センサ(301、302)で検出される位置を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とする。
【0021】
図9(a)は、第1発明の比較例であり、時間tと磁力センサ301で検出される検出信号Vnとの関係を示している。
【0022】
磁力センサ301で検出される信号の変化は緩やかであり、ノイズ等の影響を受けやすい。このため図9(a)に示すように、ノイズが発生した時点を、ピストン201が原点位置I0を通過したときであると誤ることがある。また、ピストン201は原点位置I0付近で一定速度で移動するという保証はない。よって図9(b)に示すように、カーブの頂点付近の形状は、ピストン201の移動速度の影響を受けて、変動する。このため、図9(a)に示す時間tと磁力(電圧値)Vnの対応関係から、カーブの真の頂点(ピーク)を、ノイズ等と区別して正確に求めることは難しい。
【0023】
そこで、第1発明では、図8(a)に示すように、回転センサ100の検出回転量から得られるロッド202の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求め、図8(b)に示すように、この対応関係500に基づいて、原点位置I0に達したときの計測ストローク位置Ip(ピーク位置)を求め、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットする。
【0024】
ストローク位置Inと磁力センサ検出信号Vnとの対応関係500は、ピストン201の移動速度の影響を受けずに安定した形状である。このため対応関係500から計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを正確に求めることができ、原点位置I0のリセットを極めて高精度に行うことができる。
【0025】
第2発明によれば、図11(a)、(b)に示すように、ピストン201(ロッド202)が少なくとも2回ストロークされて、各対応関係600(モデル)、500′が求められる。そして図11(c)に示すように、両対応関係600、500′のずれ量Sln、Srnに基づいて、ピストン201が原点位置I0に達したときの計測ストローク位置(ピーク位置)Ipが求められ、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットするようにしている。
【0026】
第4発明では、原点位置通過速度Vと、原点位置I0から位置ずれ量(ピーク位置補正量)ΔIとの対応関係が取得され、この対応関係に従い、回転センサ100の検出結果から得られるピーク位置Ipが補正される。
【0027】
すなわち、原点位置通過速度Vは、磁力センサ301、302の各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過した時間を計測することにより、求められる。
【0028】
また、ピーク位置補正量ΔIは、真の原点位置I0と、ピーク位置Ipa、Ipbの平均値であるピーク位置Ipとの偏差を算出することで、求められる。
【0029】
ピストン201の移動速度を変化させて、原点位置付近を通過させる運動を繰り返し行うことで、上記原点位置通過速度Vとピーク位置補正量ΔIのデータが取得される。取得されたデータは、ピストン201の移動速度の各大きさj毎に、原点位置通過速度Vと、ピーク位置補正量ΔIとの対応関係のデータ(Vj、ΔIj)として、データテーブルの形式で演算処理部400の記憶装置に記憶される。
【0030】
そして、このデータテーブル(Vj、ΔIj)にしたがい、第1発明または第2発明におけるストローク位置センサの検出ストローク位置(ピーク位置Ip)が、移動速度Vに応じて補正される。
【0031】
上述した第4発明は、ストローク位置センサ(回転センサ100)の検出ストローク位置(ピーク位置)を、移動速度に応じて補正して、この補正したストローク位置(補正ピーク位置)を、リセットするという発明であるが、ストローク位置センサ(回転センサ100)を設けない構成、ストローク位置センサ(回転センサ100)の原点位置へのリセット処理を前提としない実施にも、本発明を適用することができる。
【0032】
第3発明は、たとえば、ストローク位置センサ(回転センサ100)を設けずに、磁力センサ301(302)の検出信号からピストン201が特定の位置を通過したことを計測するような場合に適用され、第4発明と同様にして、その磁力センサの計測位置が移動速度Vに応じて補正される。
【0033】
第3発明、第4発明によれば、シリンダチューブ250内部のピストン201の移動速度如何にかかわらず、正確に原点位置あるいは特定位置を計測することができる。
【0034】
第5発明では、図15(a)に示すように、2つのリセットセンサ301、302からは、極性が異なる検出信号301a、302aが出力され、演算処理部400では、図15(b)に示すように、2つのリセットセンサ301、302の検出信号301a、302aが合成され、この合成された信号301cに基づいて演算処理(図17(a)〜(f))が行われる。
【0035】
本第5発明によれば、図17(a)〜(f)に示すように、振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kがベースレベルの変動の影響を受けずに変動しない特性を有した合成信号301cに基づいて、リセットが行われるので、ノイズとの判別が正確に行われ、モデル600との対比を正確に行うことができる。この結果、回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置Ipを、真の原点位置I0にリセットする処理を極めて高精度を行うことができる。
【0036】
第6発明は、第3発明を上位概念で記述した請求項であり、磁力がシリンダチューブ250内部を通過するときの遅れが補償されて、リセットセンサ301、302で検出される位置が補正される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明に係るシリンダの位置計測装置の実施の形態について説明する。
【0038】
図1(a)は、シリンダ200と、ストローク位置センサとしての回転センサ100と、リセットセンサとしての磁力センサ300の位置関係を、シリンダ200の縦断面図で示している。
【0039】
図1(a)に示すように、シリンダ200の壁であるシリンダチューブ250には、ピストン201が摺動自在に設けられている。ピストン201には、ロッド202が取り付けられている。ロッド202は、シリンダヘッド203に摺動自在に設けられている。シリンダヘッド203とピストン201とシリンダ内壁とによって画成された室が、シリンダヘッド側油室204Hを構成する。ピストン201を介してシリンダヘッド側油室204Hとは反対側の油室がシリンダボトム側油室204Bを構成している。
【0040】
シリンダヘッド203には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミがシリンダヘッド側油室204Hに入り込まないようにするロッドシール205a、ダストシール205bが設けられている。
【0041】
シリンダチューブ250には、油圧ポート206H、206Bが形成されている。油圧ポート206Hを介して、シリンダヘッド側油室204Hに圧油が供給され、若しくは同油室204Hから油圧ポート206Hを介して圧油が排出される。油圧ポート206Bを介して、シリンダボトム側油室204Bに圧油が供給され、若しくは同油室204Bから油圧ポート206Bを介して圧油が排出される。
【0042】
シリンダヘッド側油室204Hに圧油が供給され、シリンダボトム側油室204Bから圧油が排出されることによって、ロッド202が縮退し、あるいは、シリンダヘッド側油室204Hから圧油が排出され、シリンダボトム側油室204Bに圧油が供給されることによって、ロッド202が伸張する。すなわち、ロッド202は図中左右方向に直動する。
【0043】
シリンダヘッド側油室204Hの外部にあって、シリンダヘッド203に密接した場所には、回転センサ100を覆い、内部に収容するケース207が形成されている。ケース207は、シリンダヘッド203にボルト等によって締結等されて、シリンダヘッド203に固定されている。すなわち、ケース207(回転センサ100)は、シリンダチューブ250に簡易に取り付けたり、取り外すことができる。
【0044】
回転センサ100を構成する後述する回転ローラ110は、その表面がロッド202の表面に接触し、ロッド202の直動に応じて回転自在に設けられている。すなわち、回転ローラ110によって、ロッド202の直線運動が回転運動に変換される。
【0045】
回転ローラ110は、その回転中心軸110cが、ロッド202の直動方向に対して、直交(紙面の背後方向、看者方向)するように配置されている。ケース207には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミが回転ローラ110とロッド202との間に入り込まないようにするダストシール208が設けられている。これにより回転ローラ110とロッド202との間に塵埃等が入り込んで、回転ローラ110が動作不良となるような事態を回避することができる。つまり、回転センサ100は、ケース207に設けられたダストシール208と、シリンダヘッド203に設けられたダストシール205bとによって防塵構造となっている。
【0046】
回転センサ100は、上述した回転ローラ110と、回転ローラ110の回転量を検出する図示しない回転センサ部とを少なくとも備えている。回転センサ部で検出された回転ローラ110の回転量を示す信号は、演算処理部400に送られ、シリンダ200のロッド202の位置(ストローク)に変換される。
【0047】
回転センサ100の回転ローラ110とロッド202と間では、滑り(スリップ)が発生することは避けられず、この滑りによって回転センサ100の検出結果から得られるロッド202の計測位置と、ロッド202の実際の位置との間には、誤差(滑りによる累積誤差)が生じる。そこで、この回転センサ100の検出結果から得られる計測位置を、原点位置(基準位置)にリセットするために、シリンダチューブ250の外部には、リセットセンサとしての磁力センサ300が設けられている。
【0048】
すなわち、ピストン201には、磁力線を生成する磁石350が設けられている。磁石350は、ピストン201、ロッド202の直動方向に対して垂直な図中鉛直方向に、N極、S極が配置されるように、ピストン201に設けられている。なお、磁石350を、ピストン201、ロッド202の直動方向と平行な方向に沿って、N極、S極が配置されるように、ピストン201に設けてもよい。
【0049】
磁力センサ300は、ピストン201の直動方向に沿って所定距離離間されて配置された2個の磁力センサ301、302からなる。磁力センサ301、302は、磁石350で生成された磁力線を透過して、磁力(磁束密度)を検出し、磁力(磁束密度)に応じた電気信号(電圧)を出力する。磁力センサ301、302は、既知の原点位置に設けられている。磁力センサ301、302の検出結果に基づいて、回転センサ100の検出結果から得られる計測位置が、原点位置(基準位置)にリセットされる。
【0050】
また、2個の磁力センサ301、302の検出位置に基づいて、ピストン201、ロッド202の絶対移動距離を計測することができる。たとえば、回転センサ100の回転ローラ110が経年変化によって消耗すると、回転センサ100の検出回転量から得られるロッド202の移動距離は、実際のロッド202の移動距離よりも小さくなるが、ピストン201が2個の磁力センサ301、302間を移動したときに回転センサ100の検出回転量から得られる移動距離L′と、実際の2個の磁力センサ301、302間の距離Lとの比率L/L′に基づいて、回転センサ100の検出回転量から得られる移動距離を補正することができる。
【0051】
磁力センサ301、302としては、たとえばホールICが使用される。
【0052】
磁力センサ301、302は、ひさし310に装着されている。ひさし310は、バンド320に装着されている。バンド320は、シリンダチューブ250の外周に固定されている。バンド320は、磁性材料によって構成されている。バンド320の材料としては、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0053】
図1(b)は、図1(a)のA−A断面図、つまりシリンダチューブ250の横断面図を示している。
【0054】
バンド320は、シリンダチューブ250の外周に圧接されて固定される。バンド320は、シリンダチューブ250の外径に応じた断面半円弧状のバンド部材320Aと、同じく断面半円弧状のバンド部材320Bとからなり、バンド部材320Aと、バンド部材320Bとは、ボルト321によって締結され、締結されることによりシリンダチューブ250の外周に圧接される。一方のバンド部材320Aには、ひさし310が装着されている。このためシリンダチューブ250にネジ穴を形成したり、シリンダチューブ250の外周を溶接するなどの加工、処理を施すことなくして、シリンダチューブ250の外周に磁力センサ301、302を固定することができる。また、シリンダチューブ250に加工、処理を施す必要がないため、シリンダチューブ250の厚さを、最低限の厚さに維持することができる。すなわち、シリンダチューブ250に加工、処理を施すことにすると、強度を保つために、チューブ自体を厚くしなければならないが、その必要はない。
【0055】
また、バンド320のシリンダチューブ250への固定位置の変更が容易かつ簡単に行え、磁力センサ301、302を、シリンダチューブ250の長手方向(ピストン201、ロッド202の直動方向)の任意の位置に、容易にかつ簡単に装着することができる。
【0056】
(第1実施例)
図2は、磁力センサ301、302と、ひさし310と、バンド320の構成の詳細を示している。
【0057】
図2(a)は、図1(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図を拡大して示している。図2(b)は、図1(b)に対応するシリンダチューブ250の横断面図(図2(a)のA視)を拡大して示している。図2(c)は、図2(a)をZ視方向(図中下方から上方に向かう方向)からみた図である。
【0058】
図2(d)は、磁力センサ301、302の各面を定義する図である。
【0059】
磁力センサ300(301、302)は、直方体形状の部材であり、底面300B、上面300T、前面300F、左右側面300L、300R、後面300Gを有している。
同図2に示すように、磁石350は、ピストン201のシリンダヘッド側油室204Hに臨む面に、ホルダリング351によって固定されている。
【0060】
ホルダリング351と磁石350をピストン201に共締めすることで、磁石350がピストン201に固定される。
【0061】
ひさし310は、磁性材料で構成されており、磁力センサ301、302の上面300T、後面300Gを覆うように配置されている。ひさし310は、炭素鋼、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0062】
ひさし310と磁力センサ301、302の配置は、図2(a)中左右対称であり同様な位置関係にあるので、一方の磁力センサ301を代表させて説明する。
【0063】
ひさし310のバンド固定面310Aは、バンド部材320Aに固定される。ひさし310のチューブ密着面310Bは、シリンダチューブ250の外周面に密着される。
【0064】
磁力センサ301は、モールド材303に囲まれるようにモールド材303と一体形成されている。磁力センサ301を含むモールド材303は、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側が、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300B側がシリンダチューブ250の外周面に密着されている。
【0065】
磁力センサ301の前面300F、左右側面300L、300R側には、真ちゅう製の板材311が設けられる。
【0066】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301、302の底面300Bを配置して、磁力センサ301、302を、ひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構成となっている。
【0067】
一方の磁力センサ301について説明したが、他方の磁力センサ302についても同様にして、ひさし310に装着される。
【0068】
ひさし310には、端子312を備えた端子台313が内蔵されている。また、ひさし310には、図示しないハーネスが挿通される穴であって、端子312に連通する挿通穴314が形成されている。磁力センサ301、302と、端子312とは、図示しない電気信号線によって接続される。端子312には、ひさし310の外部から、挿通穴314を介して、ハーネスが接続される。このハーネスは、演算処理部400に接続される。この演算処理部400では、磁力センサ301、302の検出信号と、回転センサ100の検出信号とが演算処理されて、ロッド202(ピストン201)の直動位置が計測される。すなわち、回転センサ100の検出結果からロッド202の位置が計測されるとともに、磁力線センサ301、302の検出結果に基づいて、回転センサ100の検出結果から得られるロッド202の計測位置が原点位置(基準位置)にリセットされる。
【0069】
図3(a)は、図2(a)に対応する図であり、磁石350の磁極Nを起点とし磁極Sを終点とする磁力線の経路を概念的に示している。
【0070】
図3(b)は、比較例であり、本第1実施例のひさし310が仮にないとした場合の磁力線の経路を概念的に示している。
【0071】
同図3(a)と図3(b)とを対比してわかるように、ひさし310があることによって、磁石350のN極を起点として磁力線は、シリンダチューブ250、磁力センサ301、ひさし310を透過し、磁石350のS極に戻る経路を生成するが、ひさし310がない場合には、磁石350で生成された磁力は、シリンダチューブ250によって遮られてしまいチューブ250外部の磁力センサ301まで磁力線が到達しないか、僅かにしか到達しない。図3では、一方の磁力センサ301について磁力線を示したが、他方の磁力線センサ302についても同様である。
【0072】
また、バンド320は、磁性材料で構成されているため、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となり、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301、302に集中的に集められる。このようにひさし310とバンド320の相乗的な効果により、磁石350で生成された磁力は、磁力センサ301、302に集中的に集められる。
【0073】
以上のように本第1実施例によれば、磁力センサ301、302を覆うひさし310を設け、磁石350を起点とする磁力線がシリンダチューブ250、磁力センサ301、302、ひさし310を通過して磁石350に戻る経路を形成するようにしたので、たとえシリンダチューブ250が強度を確保するために厚い磁性材料で構成されていたとしても、チューブの250外部に設けられた磁力センサ301、302で磁力線を確実に検出することができるようになる。この結果、磁力センサ301、302の検出結果に基づくロッド202の位置計測精度が飛躍的に向上する。
【0074】
つぎに、上記第1実施例の変形例について説明する。
【0075】
(第2実施例)
上述した第1実施例では、バンド320によって、磁力センサ301、302をシリンダチューブ250の外周に固定するようにしているが、磁力センサ301、302の固定方法は任意である。また、第1実施例では、磁力センサ300を2個設けるようにしているが、磁力センサ300は、1個の磁力センサ301だけであってもよい。
【0076】
図4は、シリンダチューブ250の外周に、1個の磁力センサ301が装着されたひさし310を、バンドなしで固定する斜視図にて示している。
【0077】
同図4に示すように、第1実施例と同様に、磁力センサ301は、上面300T、後面300Gが、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300Bがシリンダチューブ250の外周面側に配置されている。
【0078】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301の底面300Bを配置し、磁力センサ301の上面300T、後面300Gをひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構造となっている。
【0079】
図5は、バンド320以外の装着部材で、ひさし310を、シリンダチューブ250の外周に固定する装着例を示している。
【0080】
すなわち、シリンダの種類によっては、シリンダチューブ250の外周の長手方向に沿って、複数のタイロッド260が架け渡された構造のものがある。
【0081】
そこで、ひさし310に、複数(2本)のタイロッド260、260が挿通される挿通穴260Aを形成し、この挿通穴260Aに、タイロッド260を挿通させることで、ひさし310をシリンダチューブ250の外周に固定してもよい。
【0082】
(第3実施例)
上述した第1実施例、第2実施例では、ひさし310を、磁力センサ301の上面300Tの全体を覆う形状、大きさとしているが、必ずしも上面300Tの全体を覆う必要はない。
【0083】
また、上述した第1実施例、第2実施例では、ひさし310を、磁力センサ301の後面300Gの全体を覆う形状、大きさとしているが、必ずしも後面300Gの全体を覆う必要はない。
【0084】
図6は、磁力センサ301の一部を覆う形状、大きさに形成されたひさし310の第1例を例示している。
【0085】
図6(a)は、図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)を上面からみた図である。
【0086】
同図6(a)、(b)に示すように、ひさし310は、磁力センサ301の後面300Gについては全体を覆うが、上面300Tについては一部を覆う形状、大きさに形成されている。
【0087】
図6(c)は、図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図であり、図6(d)は、図6(c)を上面からみた図である。
【0088】
同図6(c)、(d)に示すように、ひさし310は、磁力センサ301の上面300T、後面300Gについて一部を覆う形状、大きさに形成されている。
【0089】
いずれにせよ、ひさし310としては、磁力センサ301(302)をどの程度覆うのかが問題なのではなく、図3(a)で概念的に示したように、磁石350を起点とする磁力線が磁力センサ301を通り磁石350に戻る経路を形成するような形状、大きさに形成されていればよい。
【0090】
(第4実施例)
上述した第1実施例〜第3実施例では、磁力センサ301(302)をひさし310を介してシリンダチューブ250の外周に固定する構造としているが、ひさし310を介することなく、バンド320に磁力センサ301(302)を直接、装着することで、シリンダチューブ250の外周に固定してもよい。
【0091】
図7(a)は図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面を示し、図7(b)は図7(a)のA−A断面を示し、図7(c)は図7(a)を上面からみた図である。
【0092】
同図7に示すように、磁力センサ301は、モールド材303に囲まれるようにモールド材303と一体形成されている。磁力センサ301を含むモールド材303は、カバー304によって覆われ、カバー304は、バンド320に接続されている。カバー304は、真ちゅう等の非磁性材料で構成されている。
【0093】
磁力センサ301は、後面300Gがバンド320の側面320Sに配置される態様で、バンド320に装着されている。
【0094】
このため、磁力センサ301の前面300F側、上面300T側、左右側面300L、300R側には、磁性材料が配置されておらず(磁性材料から開放されている)、磁力センサ301の後面300G側については、磁性材料(バンド320)が配置された構造となっている。
【0095】
このように構成した場合にも、バンド320は、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となって、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301に集中的に集められるため、チューブ250内部の磁石350で生成された磁力を磁力センサ301で確実に検出することが可能となる。
【0096】
(第5実施例)
つぎに、演算処理部400で行われる演算処理について説明する。
【0097】
図8(a)、(b)は、第5実施例を説明する図であり、演算処理部400で行われる処理を説明する図である。なお、磁力センサ301、302のうち、一方の磁力センサ301を代表させて説明する。まず、本実施例の比較例について説明する。図9は、本第5実施例の比較例を説明する図である。
【0098】
図9(a)は、時間tと磁力センサ301で検出される検出信号Vnとの関係を示している。なお、磁力センサ301では、磁力に対応する電圧値Vnが検出される。なお、また、nはデータのサンプリング順序(n=1、2…)であり、データのサンプリングは一定間隔で行われるものとする。
【0099】
磁力センサ301では、磁石350からの距離が近づくほど検出レベル(磁力;電圧値)Vnが大きくなる信号が検出される。磁力センサ301は、原点位置I0に設けられているため、磁石350が原点位置I0に達したときに、磁石350と磁力センサ301との距離が最小となり、磁力センサ301で、最大レベルの信号Vm(磁力;電圧値)が検出されるはずである。
【0100】
しかしながら、実際には、磁力センサ301で検出される信号が最大レベルVmになったときに、ピストン201が必ずしも原点位置I0に位置しているとは限らない。前述したように磁力センサ301で検出される信号の変化は緩やかであり、ノイズ等の影響を受けやすい。このため図9(a)に示すように、ノイズが発生した時点を、ピストン201が原点位置I0を通過したときであると誤ることがある。また、ピストン201は原点位置I0付近で一定速度で移動するという保証はない。よって図9(b)に示すように、カーブの頂点付近の形状は、ピストン201の移動速度の影響を受けて、変動する。このため、図9(a)に示
す時間tと磁力(電圧値)Vnの対応関係から、カーブの真の頂点(ピーク)を、ノイズ等と区別して正確に求めることは難しい。
【0101】
そこで、本実施例では、図8(a)に示すように、回転センサ100の検出回転量から得られるピストン201の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求め、図8(b)に示すように、この対応関係500に基づいて、ピストン201が原点位置I0に達したときの計測ストローク位置Ip(以下、ピーク位置という)を求め、この計測ストローク位置(ピーク位置)Ipを、原点位置I0にリセットするようにしている。
【0102】
ストローク位置Inと磁力センサ検出信号Vnとの対応関係500は、ピストン201の移動速度の影響を受けずに安定した形状である(図9(b)と図8(b)参照)。このため対応関係500から計測ストローク位置Ipを正確に求めることができ、原点位置I0のリセットを極めて高精度に行うことができる。
【0103】
具体的には、まず、回転センサ100の検出値から逐次得られる回転量を、ピストン201(ロッド202)のストローク位置In(n=1、2…)に逐次変換する。
【0104】
ピストン201のストローク位置Inが計測される毎に、そのときのリセットセンサ301の検出信号Vnを読み出し、両者のデータInとVnとを対応づける。
【0105】
つぎに、図8(a)に示すように、回転センサ100の検出信号から得られる計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を、横軸をストローク位置Inとし縦軸を磁力(電圧値)Vnとして求める。
【0106】
つぎに、図8(b)に示すように、対応関係500に、モデル600を適用して、対応関係500の頂点500P(ストローク位置Ip、磁力Vp)を求める。
【0107】
つぎに頂点500Pの座標位置(ストローク位置Ip、磁力Vp)から、ピストン201が原点位置に達したときの計測ストローク位置Ip、つまりピーク位置Ipを読み取る。
【0108】
つぎに、この読み取った計測ストローク位置Ipを、真のストローク位置である原点位置I0にリセットする。
【0109】
モデル600は、理想的なストローク位置Iと磁力(電圧値)Vとの対応関係を示すものとして予め用意したものでもよく、1ストロークしたときのデータから作成されたものであってもよい。
【0110】
図10は、前回1ストロークしたときのデータからモデル600を求めてリセットを行う本実施例のアルゴリズムを示している。
【0111】
たとえば、ピストン201が図1(a)中で左の位置から原点位置を通過し右の位置に達するまでを1回目のストロークとし、ピストン201が右の位置に達しから原点位置を通過し左の位置に達するまでを2回目のストロークとして、データを取得する。
【0112】
図11(a)は、1回目のストロークによって得られる対応関係(モデル)600を破線で示すとともに、2回目のストロークによって得られる対応関係500を実線で示している。
【0113】
2回目のストロークによって、ストローク位置Inと電圧値Vn(n=1、2…)の対応関係500が得られたとすると、この対応関係500のデータから、電圧最大値(磁力最大値)に対応するストローク位置Imを求める。このストローク位置Imを仮のピーク位置とする(ステップ1001)。
【0114】
つぎに、図11(b)に示すように、ストローク位置Inと電圧値Vnとの対応関係500を、ストローク位置Imがモデル600の原点位置I0に一致するようにシフトさせる。
【0115】
シフトさせた対応関係500′のストローク位置In′と、シフト前の対応関係500′のストローク位置Inとの関係は、下記(1)式で表される。
【0116】
In′=In−Im+I0 …(1) (ステップ1002)。
【0117】
つぎに、図11(c)に示すように、各電圧値Vn′毎に、対応関係500′とモデル600とのストローク差Sln、Srnを求める(ステップ1003)。
【0118】
求められたストローク差Sln、Srnのうち絶対距離が小さい方のストローク差を、モデル600と対応関係500′の位置ずれSn(=Σmin(Sln,Srn))とする。下記(2)式に示すように、すべての電圧値Vn′(n=1、2…)について位置ずれSnを求め、それらの平均位置ずれSを算出する。
【0119】
S=Σmin(Sln,Srn)/n …(2) (ステップ1004)
つぎに、平均位置ずれSと、仮のピーク位置Imとを用いて、下記(3)式のごとく、ピストン201が原点位置Ipに達したときの計測ストローク位置Ip、つまり対応関係500のピーク位置Ipを算出する。
【0120】
Ip=Im−S …(3) (ステップ1005)
つぎに、このようにして求められたピーク位置Ip(回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置)を、真の原点位置I0にリセットする(ステップ1006)。
【0121】
なお、本実施例では、モデル600は、ピストン201を原点位置付近を1ストロークさせたときのデータから求めるようにしているが、原点位置付近を2回以上ストロークさせたデータからモデル600を求める実施も可能である。
【0122】
(第6実施例)
上述した第5実施例では、前回の1ストロークのデータのモデル600を用いて、対応関係500のピーク位置Ipを求めるようにしているが、対応関係500に近似する連続曲線510を求め、この連続曲線510から、対応関係500のピーク位置Ipを求めてもよい。
【0123】
すなわち、図12(a)に示すように、対応関係500の各点(In、Vn)のデータを用いて最小自乗法によって、連続曲線510を求め、この連続曲線510上で電圧値が最大となるストローク位置を、対応関係500のピーク位置Ipと定めてもよい。また、図12(b)に示すように、対応関係500に近似する相関関数として、たとえば4次関数(V=f(I))を求め、この4次関数の連続曲線520上で電圧値が最大となるストローク位置を、対応関係500のピーク位置Ipと定めてもよい。
【0124】
(第7実施例)
特許文献3では、2つの磁力センサが所定の時間差をおいて所定の検出信号レベル(しきい値)以上になったときに、ピストンが特定の位置にあると判断し、そうでない場合はノイズであると判断している。この発明は、図13(a)に示すように、一方の磁力センサがオンとなった時刻から他方の磁力センサがオンとなる時刻までの時間幅が一定であることを前提としている。
【0125】
しかし、磁力センサで検出される磁力のベースレベルは、一定ではなく、変動し得るものである。たとえばシリンダチューブ250とピストン201との間には隙間ガタが存在し、これにより磁石350と磁力センサとの距離は、変動し、ベースレベルは、図13(b)、(c)、(d)に示すように高くなったり低くなったりする。その他、外来磁気などの設置環境の影響を受けてベースレベルが変化することもある。このため、一定のしきい値をもって、磁力センサがオンであるか否かを判断することにすると、一方の磁力センサがオンとなってから他方の磁石がオンとなるまでの時間幅が変化したり(図13(b)、(c))、あるいは場合によって全くオンとならないこともある(図13(d))。
【0126】
また、図14(a)に示す磁力センサで検出される波形を、図14(b)に示すノイズと判別しようとしても、ノイズと判別することが困難である。
【0127】
また、モデル600と対比するためには、磁力センサの検出波形のベースレベルを確定させて、モデル600と一致するように振幅を拡大したり、縮小したり、シフトさせる必要があるが、図14(c)に矢印で示すように検出波形の裾野の各ポイントのレベルが異なるため、真のベースレベルがどこにあるのか判別することが困難である。このためモデル600との対比が困難になる。
【0128】
そこで、本実施例では、シリンダチューブ250の外側に、ピストン201、ロッド202の直動方向に沿って所定距離離間されて設けられた2つ磁力センサ301、302を設け、図15(a)に示すように、これら2つの磁力センサ301、302から、極性が異なる検出信号301a、302aを出力させ、更に両検出信号301a、302aの電圧レベルを、固定抵抗を用いた平均化回路によって、平均化して、平均化された電圧レベルの信号301cに基づいて、ストローク位置を求めるなどの演算処理を行うようにしている。
【0129】
図15(a)は、磁力センサ301、302で検出される信号波形301a、302aをそれぞれ示している。一方の磁力センサ302の極性が他方の磁力センサ301とは逆極性となるように、両磁力センサ301、302が配置されている。
【0130】
図15(b)は、上記平均化回路で磁力センサ301、302の出力信号を平均化して得られる合成信号301cを示している。合成信号301cは、磁力センサ301、302の出力信号301a、302aを加算して、平均する演算処理を行うことで取得される。
【0131】
このようにして得られた合成信号301cは、図14(d)、(e)に示すように、ベースレベルが小さくなったり、大きくなったりしても、一方の磁力センサ301の最小振幅値(マイナス極性)から、他方の磁力センサ302の最大振幅値(プラス極性)までの距離(以下、振幅値間距離J)変化は、ごく小さい(両磁力センサ301、302の振幅の合計値)。また、一方の磁力センサ301のピーク位置から他方の磁力センサ302のピーク位置までの距離(以下、ピーク位置間距離K)は、ベースレベルの変化にかかわらず、既知の磁力センサ301、302間の距離に応じた一定値となる。
【0132】
このように合成信号301cは、上記振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kが、ベースレベルの変動の影響を受けずに変動しない特性を有している。
【0133】
図16は、合成信号301cに基づき行われる演算処理のアルゴリズムを示している。
【0134】
まず、回転センサ100の検出信号と、合成信号301cとに基づいて、ストローク位置Inと電圧値Vn(n=1、2…)の対応関係500を、図17(a)に示すように取得し、これらストローク位置Inと電圧値Vnとの対応関係500のデータ(In、Vn)を記憶する(ステップ1101)。
【0135】
つぎに、対応関係500のデータ(In、Vn)に基づいて、振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kを演算によって求める。そして、この演算された振幅値間距離Jが所定の幅J1(下限値)〜J2(上限値)内に収まっており、かつ、演算されたピーク位置間距離Kが所定の幅K1(下限値)〜K2(上限値)内に収まっているいるか否かが判断される(ステップ1102)。
【0136】
上記ステップ1102の判断がYESである場合には、この対応関係500で示される信号波形は、ノイズではなくて、磁石350が磁力センサ301、302間の原点位置を通過したときに同センサから出力される信号波形であるとして、つぎのステップ1103に移行し、そうでない場合(ステップ1102の判断NO)には、ノイズであると判断する(ステップ1104)。
【0137】
ステップ1103では、モデル600の振幅値間距離J0に一致するように、対応関係500を拡大、縮小させる。たとえば図17(b)、(c)、(d)に示すように、対応関係500の振幅値間距離Jが、モデル600の振幅値間距離J0よりも小さい場合には、対応関係500の振幅値間距離Jがモデル600の振幅値間距離J0に一致するように、対応関係500の振幅値間距離Jを拡大させて、対応関係500′にする。対応関係500の拡大、縮小処理は、次式(4)に示される演算式にしたがい行われる。なお、変換後の対応関係500′の電圧値データをVn′とする。
【0138】
Vn′=(Vn−対応関係500の最小振幅値)(モデル600の最大振幅値− モデル600の最小振幅値)/(対応関係500の最大振幅値−対応 関係500の最小振幅値)+モデル600の最小振幅値 …(4)
(ステップ1103)
つぎに、図17(e)、(f)に示すように、拡大された対応関係500′を、しきい値Q1、Q2によって、2つの部分500a′、500b′に分割する。一方の部分500a′は、一方の磁力センサ301の検出波形301aに対応する部分であり、他方の部分500b′は、他方の磁力センサ302の検出波形302aに対応する部分である(ステップ1105)。
【0139】
つぎに、分割した各部分500a′、500b′それぞれに対して、第5実施例、第6実施例で説明したのと同様の手法でモデル600と対比させて、それぞれのピーク位置Ipa、Ipbを求める(ステップ1106)。
【0140】
つぎに、演算された各ピーク位置Ipa、Ipbを平均してピーク位置Ipを求める。なお、本実施例では、磁力センサ301、302の中間位置を原点位置I0に定めているものとする(ステップ1107)。
【0141】
つぎに、このようにして求められたピーク位置Ip(回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置)を、真の原点位置I0にリセットする(ステップ1108)。
【0142】
以上のように本実施例によれば、振幅値間距離J、ピーク位置間距離Kがベースレベルの変動の影響を受けずに変動しない特性を有した合成信号301cに基づいてリセットを行うようにしているので、ノイズとの判別を正確に行え、モデル600との対比を正確に行うことができる。この結果、回転センサ100の検出結果から得られる計算上の原点位置Ipを、真の原点位置I0にリセットする処理を極めて高精度に行うことができる。
【0143】
(第8実施例)
ところで、シリンダチューブ250内部の磁石350で発生した磁気がシリンダチューブ250を伝達するときに磁気伝達遅れが発生する。この磁気伝達の遅れの時間は、シリンダチューブ250の比透磁率と比誘電率により定まり一定となる。したがって磁石350とともに直動するピストン201、ロッド202が高速で移動している場合と低速で移動している場合とでは、同じストローク位置における磁力センサ301、302の検出電圧レベルが異なることになる。
【0144】
このためピストン201が原点位置I0を通過するときの移動速度V(以下、原点位置通過速度という)如何によって、回転センサ100の検出結果から得られるピーク位置Ipが、変動することになる。
【0145】
そこで、本実施例では、原点位置通過速度Vと、原点位置I0から位置ずれ量(ピーク位置補正量)ΔIとの対応関係を取得しデータテーブル形式で記憶装置に格納し、このデータテーブルに従い、回転センサ100の検出結果から得られる位置Inを補正するようにしている。
【0146】
すなわち、原点位置通過速度Vは、磁力センサ301、302の各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過した時間を計測することにより、求められる。
【0147】
また、ピーク位置補正量ΔIは、真の原点位置I0と、ピーク位置Ipa、Ipbの平均値であるピーク位置Ipとの偏差を算出することで、求められる。
【0148】
ピストン201の移動速度を変化させて、原点位置付近を通過させる運動を繰り返し行うことで、上記原点位置通過速度Vとピーク位置補正量ΔIのデータが取得される。取得されたデータは、ピストン201の移動速度の各大きさj毎に、原点位置通過速度Vと、ピーク位置補正量ΔIとの対応関係のデータ(Vj、ΔIj)として、データテーブルの形式で演算処理部400の記憶装置に記憶される。
【0149】
そして、このデータテーブル(Vj、ΔIj)にしたがい、計測されたピーク位置Ipが、原点位置通過速度Vに応じて補正される。
【0150】
たとえば、第7実施例では、図16のステップ1106で説明したように、各ピーク位置Ipa、Ipbが演算されるが、これら各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過する時間とに基づいて、実際の原点位置通過速度Vが求められる。そして、この原点位置通過速度Vに対応するピーク位置補正量ΔIが、データテーブル(Vj、ΔIj)から読み出される。
【0151】
第7実施例では、各ピーク位置Ipa、Ipbの平均値をピーク位置Ipとしているが(図16のステップ1107)、このピーク位置Ipは上記ピーク位置補正量ΔI分の誤差を含んでいるため、下記(5)式にしたがい、ピーク位置Ipを補正し、補正ピーク位置Ip′を算出する。
【0152】
Ip′=Ip+ΔI …(5)
このようにして、シリンダチューブ250内部のピストン201の移動速度如何にかかわらず、正確に補正ピーク位置Ip′が求められ、この補正ピーク位置Ip′に基づいて、原点位置へのリセットが高精度に行われる。
【0153】
本第8実施例では、第7実施例と組み合わせて実施する場合について説明したが、第5実施例、第6実施例と組み合わせて実施してもよい。また、磁力センサが2個もうけられた場合のみならず磁力センサが1個設けられた場合にも適用することができる。磁力センサが1個の場合には、各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離に基づきピストン201の移動速度を求めることはできないが、ピストン201の移動速度を計測すればよい。
【0154】
上述した説明では、データテーブル(Vj、ΔIj)を用いて、計測されたピーク位置Ipを、原点位置通過速度Vに応じて補正するようにしているが、下記の演算式を用いて、補正量ΔIを求めてもよい。
【0155】
ΔI=V×Td …(6)
上記(6)式において、Tdは、シリンダチューブ250内部の磁石350で発生した磁気がシリンダチューブ250を伝達するときに磁気伝達遅れの時間であり、シリンダチューブ250の材質等によって一義的に定まる既知の値である。
【0156】
また本実施例では、ピストン201の計測ストローク位置Inと、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500を求めた後に、データテーブルまたは演算式を用いて、計測ピーク位置Ipを補正しているが、補正は、対応関係500を求める過程で行うようにしてもよい。
【0157】
すなわち、ピストン201の逐次の計測ストローク位置In毎に、移動速度によって補正した補正ストローク位置In′を求め、この補正ストローク位置In′と、磁力センサ301の検出信号(磁力;電圧値)Vnとの対応関係500に基づいて、ピーク位置Ipを求めてもよい。この場合には、ピストン201の各計測ストローク位置In毎に、ピストン201の移動速度を計測し、この移動速度に応じて補正ストローク位置In′を算出すればよい。
【0158】
また、上述の実施例では、実際の原点位置通過速度Vを、各ピーク位置Ipa、Ipb間の距離と、これらピーク位置Ipa、Ipb間をピストン201が通過する時間とに基づいて、算出するようにしているが、回転センサ100で逐次計測されるストローク位置に基づいて、実際の原点位置通過速度Vを算出してもよい。たとえば、前回計測されたストローク位置と、今回計測されたストローク位置と、前回から今回までの時間差とに基づいて、実際の原点位置通過速度Vを算出することができる。
【0159】
また、上述した本第8実施例では、回転センサ100の検出結果から得られるストローク位置Ip(ピーク位置)を、ピストン201の移動速度Vに応じて補正して、この補正したストローク位置Ip′(補正ピーク位置)を、原点位置I0にリセットする場合を想定して説明したが、回転センサ100を設けない構成、回転センサ100の原点位置へのリセット処理を前提としない実施にも、本発明を適用することができる。たとえば、回転センサ100を設けずに、磁力センサ301(302)の検出信号に基づいてピストン201が特定の位置を通過したことを計測するような場合にも、その計測位置の補正に本発明を適用することができる。
【0160】
すなわち、本発明としては、磁力がシリンダチューブ250内部を通過するときの遅れを補償して、リセットセンサ301、302で検出される位置を補正することができるものであればよい。
【0161】
なお、第5実施例〜第8実施例では、検出媒体は磁石(磁力)であることを前提に説明したが、検出媒体は必ずしも磁石(磁力)である必要はなく、たとえば図8(a)に示すごとく、原点位置でピークとなるように物理量が変化する検出媒体であればよい。たとえば検出媒体を音波とし、超音波センサで音波を検出する場合にも第5実施例〜第8実施例に係る本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1(a)、(b)は、シリンダと回転センサとリセットセンサの関係を説明するために用いたシリンダチューブの断面図である。
【図2】図2(a)、(b)、(c)、(d)は、第1実施例のリセットセンサの構成を示す図である。
【図3】図3(a)、(b)は、磁力線の経路を概念的に本実施例と比較例とを対比して示す図である。
【図4】図4は、第2実施例を例示する図で、バンドなしで、ひさしを、シリンダチューブの外周に固定する装着例を示す図である。
【図5】図5は、第2実施例を例示する図で、バンド以外の装着部材で、ひさしを、シリンダチューブの外周に固定する装着例を示す図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は、第3実施例を例示する図で、磁力センサの一部を覆うひさしを構成を示した図である。
【図7】図7(a)、(b)(c)は第4実施例の構成図である。
【図8】図8(a)、(b)は第5実施例を説明する図である。
【図9】図9(a)、(b)は第5実施例の比較例を示した図である。
【図10】図10は第5実施例のアルゴリズムを例示する図である。
【図11】図11(a)、(b)、(c)は図10の処理内容を説明する図である。
【図12】図12(a)、(b)は第6実施例を説明する図である。
【図13】図13(a)、(b)、(c)、(d)は第7実施例の比較例を説明する図である。
【図14】図14(a)、(b)、(c)は第7実施例の比較例を説明する図で、図14(d)、(e)は第7実施例の合成信号の特徴を説明する図である。
【図15】図15(a)、(b)は第7実施例における信号処理を説明する図である。
【図16】図16は第7実施例のアルゴリズムを例示する図である。
【図17】図17(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は図16の処理内容を説明する図である。
【符号の説明】
【0163】
100 回転センサ 201 ピストン 202 ロッド 250 シリンダチューブ 300 301、302 磁力センサ(リセットセンサ) 310 ひさし 320 バンド 350 磁石 400 演算処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材のストローク位置を検出するストローク位置センサ(100)と、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の原点位置に対応して設けられ、前記検出媒体(350)からの距離に応じて変化する物理量を検出するリセットセンサ(301、302)と、
前記ストローク位置センサ(100)で検出されるストローク位置と、前記リセットセンサ(301、302)で検出される物理量との対応関係を求め、
前記対応関係に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットする演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項2】
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が少なくとも2回ストロークしたときの両対応関係を求め、両対応関係のずれ量に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットするものであることを特徴とする請求項1記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項3】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する物理量を検出するセンサ(301、302)と、
前記直動部材(201、202)が前記特定位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記センサ(301、302)で検出される位置を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項4】
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が前記原点位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を補正することを特徴とする請求項1または2記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項5】
前記リセットセンサ(301、302)は、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の直動方向に沿って所定距離離間されて設けられた2つのリセットセンサ(301、302)であって、これら2つのリセットセンサ(301、302)は、極性が異なる検出信号を出力するものであり、
前記演算処理手段(400)は、
前記2つのリセットセンサ(301、302)の検出信号を合成した信号に基づいて演算処理を行うことを特徴とする請求項1または2または4記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項6】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する磁力を検出するセンサ(301、302)と、
磁力が前記シリンダチューブ(250)内部を通過するときの遅れを補償して、前記センサ(301、302)で検出される位置を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項1】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材のストローク位置を検出するストローク位置センサ(100)と、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の原点位置に対応して設けられ、前記検出媒体(350)からの距離に応じて変化する物理量を検出するリセットセンサ(301、302)と、
前記ストローク位置センサ(100)で検出されるストローク位置と、前記リセットセンサ(301、302)で検出される物理量との対応関係を求め、
前記対応関係に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットする演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項2】
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が少なくとも2回ストロークしたときの両対応関係を求め、両対応関係のずれ量に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を求め、この検出ストローク位置を、原点位置にリセットするものであることを特徴とする請求項1記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項3】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する物理量を検出するセンサ(301、302)と、
前記直動部材(201、202)が前記特定位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記センサ(301、302)で検出される位置を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項4】
前記演算処理手段(400)は、
前記直動部材(201、202)が前記原点位置を通過するときの移動速度に基づいて、前記直動部材が原点位置に達したときの検出ストローク位置を補正することを特徴とする請求項1または2記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項5】
前記リセットセンサ(301、302)は、
前記シリンダチューブ(250)の外側に、前記直動部材(201、202)の直動方向に沿って所定距離離間されて設けられた2つのリセットセンサ(301、302)であって、これら2つのリセットセンサ(301、302)は、極性が異なる検出信号を出力するものであり、
前記演算処理手段(400)は、
前記2つのリセットセンサ(301、302)の検出信号を合成した信号に基づいて演算処理を行うことを特徴とする請求項1または2または4記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項6】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた検出媒体(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側の既知の特定位置に設けられ、前記検出媒体(350)で生成され前記直動部材(201)の位置に応じて変化する磁力を検出するセンサ(301、302)と、
磁力が前記シリンダチューブ(250)内部を通過するときの遅れを補償して、前記センサ(301、302)で検出される位置を補正する演算処理手段(400)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−226909(P2006−226909A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42805(P2005−42805)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
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