シード結晶からキャストシリコンを製造するための方法及び装置
光電池及び他の用途のためのシリコンをキャストする方法。かかる方法によれば、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも35cmである少なくとも2つの寸法を有する単結晶質又は双晶シリコンのキャスト体が与えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年7月20日出願の米国仮出願60/951,151の利益を請求する。米国仮出願60/951,151の全ての開示は参照として本明細書中に包含する。本出願は、また、2007年7月20日出願の米国仮出願60/951,155の利益も請求する。米国仮出願60/951,155の全ての開示は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、一般には、光起電の分野、及び光起電用途のためのキャストシリコンを製造するための方法及び装置に関する。本発明は更に、光電池及び他の半導体デバイスのような器具を製造するために用いることができる新しい形態のキャストシリコンに関する。この新規なシリコンは、単結晶質、ほぼ単結晶質、又は双晶構造を有することができ、シード結晶を用いるキャスティングプロセスによって製造することができる。
【背景技術】
【0003】
光電池は光を電流に変換する。光電池の最も重要な基準の1つは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するその効率である。光電池は種々の半導体材料から製造することができるが、妥当なコストで容易に入手でき、光電池の製造において用いるための電気特性、物理特性、及び化学特性の好適なバランスを有しているので、シリコンが一般的に用いられる。
【0004】
光電池を製造するための公知の手順においては、シリコン供給材料を正又は負の導電型のいずれかを誘起させるための材料(又はドーパント)と混合し、溶融し、次に、個々のシリコン粒の粒径によって、溶融区域から結晶化シリコンを単結晶質シリコンのインゴットに引き上げる(チョクラルスキー(CZ)法又はフロートゾーン(FZ)法による)か、或いは多結晶質シリコン又はポリシリコンのブロック又は「ブリック」にキャストすることのいずれかによって結晶化させる。上記に記載の手順においては、インゴット又はブロックを、公知のスライシング又はソーイング法によって薄い基材(ウエハとも呼ぶ)に切り出す。次に、これらのウエハを光電池に加工することができる。
【0005】
光電池の製造において用いるための単結晶質シリコンは、一般に、CZ又はFZ法(いずれも結晶質シリコンの円筒形のブールが製造される方法である)によって製造される。CZ法に関しては、ブールを溶融シリコンのプールからゆっくりと引き上げる。FZ法に関しては、溶融区域を通して固体材料を供給し、溶融区域の他の側の上で再凝固させる。これらの方法によって製造される単結晶質シリコンのブールは、格子間クラスター又は欠陥クラスターの酸素誘起積層欠陥(OSF)及び「螺旋」欠陥の環のような放射状に分布する不純物及び欠陥を含む。これらの不純物及び欠陥が存在していても、単結晶質シリコンは一般に、高効率の太陽電池を製造するのに用いることができるので、光電池を製造するための好ましいシリコン源である。しかしながら、単結晶質シリコンは、上記に記載したもののような公知の技術を用いる従来の多結晶質シリコンよりも製造するのがより高価である。
【0006】
光電池の製造において用いるための従来の多結晶質シリコンは、一般にキャスティングプロセスによって製造される。従来の多結晶質シリコンを製造するためのキャスティングプロセスは、光起電技術において公知である。簡単に言うと、かかるプロセスにおいては、溶融シリコンを石英ルツボのようなルツボ内に収容し、制御された方法で冷却してその中に含まれているシリコンを結晶化させる。得られる多結晶質シリコンのブロックは、一般に、光電池を製造するために用いるウエハの寸法と同等か又はこれに近接する断面を有するブリックに切断し、ブリックをかかるウエハに切り取るか又は他の方法で切り出す。このようにして製造される多結晶質シリコンは、それから製造されるウエハ内において粒の互いに対する配向が有効にランダムである結晶粒の凝集体である。
【0007】
従来の多結晶質シリコン又はポリシリコンのいずれにおいても、粒のランダムな配向によって、得られるウエハの表面をテクスチャー加工することが困難になる。テクスチャー加工は、光の反射を減少させて電池の表面全体にわたる光エネルギー吸収を向上させることによって光電池の効率を向上させるために用いられる。更に、従来の多結晶質シリコンの粒の間の境界において形成される「キンク」は、転位のクラスター又はラインの形態の構造欠陥を核形成する傾向がある。これらの転位及びそれらが吸引する傾向を有する不純物は、従来の多結晶質シリコンから製造される機能している光電池において電荷キャリアの迅速な再結合を引き起こすと考えられる。これにより、電池の効率の低下が引き起こされる可能性がある。かかる多結晶質シリコンから製造される光電池は、一般に、公知の技術によって製造される単結晶質シリコン中に存在する放射状に分布する欠陥を考慮しても、単結晶質シリコンから製造される同等の光電池と比較してより低い効率を有する。しかしながら、従来の多結晶質シリコンの製造に関する比較的菜簡単さ及びより低いコスト、並びに電池加工における有効な欠陥の不動態化のために、多結晶質シリコンは光電池を製造するためにより広く用いられているシリコンの形態である。
【0008】
幾つかの従来のキャスティング法は、結晶成長のために「冷壁」ルツボを用いることを含んでいた。「冷壁」という用語は、ルツボの壁部上及び壁内に存在する誘導コイルが水冷されており、また、溝を有していて一般に100℃より低く保たれるという事項を指す。ルツボの壁部は、コイルと供給材料との間に非常に近接して位置させることができる。ルツボの壁部の材料はさほど断熱性ではなく、したがって冷却されたコイルと熱平衡状態に保つことができる。したがって、ルツボ内のシリコンを誘導加熱することは、誘起されてその中へ流れる電流によって直接シリコンを加熱することを意味するので、シリコンの加熱はルツボの壁部からの放射に基づかない。このように、ルツボの壁部はシリコンの溶融温度よりも低く保たれ、溶融シリコンに対して「冷たい」とみなされる。誘導加熱された溶融シリコンの凝固中においては、ルツボのこれらの冷壁が熱シンクとして作用する。インゴットは迅速に冷却され、これは冷壁に対する放射によって定まる。したがって、初めの凝固前面は速やかに実質的に湾曲し始め、結晶核形成がインゴットの側部において起こり、インゴットの中心に向かって対角方向に成長し、垂直方向に幾何学的に整列した種付けプロセス又は実質的に平坦な凝固前面を保持することへの試みが混乱する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
幾つかの態様によれば、本発明は、シード結晶を用いてキャストシリコンを製造する方法及び装置に関する。通常、異なる配向のシリコン結晶は、シリコンインゴットの凝固中において異なる速度で成長する。シリコン単結晶太陽電池の製造のために望ましい配向は、エッチングプロセスを用いて光捕捉面を簡便に形成するという理由で、(100)方向である。残念なことに、(100)方向の粒は、ランダムに核形成された粒と競合する結晶化中、例えば他の配向の粒がより迅速に成長する単結晶キャスティングプロセス中において良好に機能しない。
【0010】
幾つかの態様によれば、及びインゴット内の種付けされた結晶の体積を最大にするために、(111)方向のシリコンの境界によって(100)方向のシード領域を取り囲む。この境界は他の結晶方位に対して非常に首尾よく競合する。このようにして、高効率太陽電池において用いるために得られるウエハの小数キャリアの寿命を最大にする、単結晶及び/又は双晶ブリックとして高く機能するインゴットをキャストすることができる。
【0011】
ここで用いる「単結晶質シリコン」という用語は、全体にわたって1つの一貫した結晶方位を有する単結晶シリコン体を指す。更に、通常の多結晶質シリコンは、センチメートルスケールの粒径分布を有し、複数のランダムに配向されている結晶がシリコン体内に配置されている結晶質シリコンを指す。
【0012】
更に、ここで用いる「ポリシリコン」という用語は、ミクロンオーダーの粒径、及び与えられたシリコン体内に配置されている複数の粒方位を有する結晶質シリコンを指す。例えば、粒は、通常は平均でおよそサブミクロン乃至およそサブミリメートルの寸法であり(例えば、個々の粒は裸眼では視認できない)、粒方位は全体にわたってランダムに分布している。
【0013】
更に、ここで用いる「ほぼ単結晶質のシリコン」という用語は、物体の50体積%より多い量にわたって1つの一貫した結晶方位を有する結晶質シリコン体を指し、例えばかかるほぼ単結晶質のシリコンは多結晶質領域に隣接する単結晶シリコン体を含むか、又は他の結晶方位のシリコンのより小さい結晶を部分的か又は全体で含むシリコンの大きな隣接して一貫する結晶を含んでいてよく、より小さい結晶は全体積の50%より多い量を構成しない。好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の25%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。より好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の10%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。更により好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の5%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。
【0014】
更に、ここで用いる「双晶シリコン」という用語は、物体の50体積%以上に関して全体にわたって1つの一貫した結晶方位、及び物体の体積の残りに関して他の一貫した結晶方位を有するシリコン体を指す。例えば、かかる双晶シリコンは、結晶質シリコンの体積の残りを構成する異なる結晶方位を有する他の単結晶シリコン体に隣接する1つの結晶方位を有する単結晶シリコン体を含んでいてよい。好ましくは、双晶シリコンは同じシリコン体内にそれらの結晶方位においてのみ異なる2つの別個の領域を含んでいてよい。
【0015】
しかしながら、ここで用いる「幾何学的に配列されている多結晶質シリコン」(以下においては「幾何学的多結晶質シリコン」と略称する)という用語は、本発明の幾つかの態様による、多重配向結晶がシリコン体内に配置されている幾何学的に配列されたセンチメートルスケールの粒径分布を有する結晶質シリコンを指す。例えば、幾何学的多結晶質シリコンにおいては、それぞれの粒は通常は約0.25cm2〜約2,500cm2の寸法の平均断面積、及びシリコン体と同程度の大きさであってよい高さを有し、例えば高さは断面の面に直交するシリコン体の寸法と同等の大きさであってよく、幾何学的多結晶質シリコン体内の粒方位は所定の配向にしたがって制御される。幾何学的多結晶質シリコンの粒の高さ又は長さに直交する粒の断面の形状は、通常は、その上に形成されるシード結晶又はシード結晶の一部の形状と同じである。好ましくは、粒の断面の形状は多角形である。好ましくは、多角形の粒の角部は3つの異なる粒の接合部に対応する。幾何学的多結晶質シリコン体内のそれぞれの粒は、好ましくは粒全体にわたって1つの隣接して一貫する結晶方位を有するシリコンを含むが、1以上の粒は、少量の異なる方位のシリコンのより小さな結晶を含んでいてもよい。例えば、かかる粒のそれぞれは部分的か又は全体的に他の結晶方位のシリコンのより小さな結晶を含んでいてよく、かかるより小さな結晶は、粒の全体積の25%より多い量、好ましくは粒の全体積の10%より多い量、より好ましくは粒の全体積の5%より多い量、更により好ましくは粒の全体積の1%より多い量、更により好ましくは粒の全体積の0.1%より多い量を構成しない。
【0016】
具現化され広範に記載された本発明によれば、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内に、溶融シリコンをシード結晶のパターンと接触させて配置し;ここで、パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;そして、単結晶質シリコンの領域を含み、場合によってはそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する固形体を形成する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、また、シリコン供給材料を、少なくとも1つの表面上において、単結晶質シリコンを含むシリコンシード結晶のパターンと接触させて配置し;ここで、パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;シリコン供給材料及びシリコンシード結晶のパターンをシリコンの溶融温度に加熱し;ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後で、シリコンシード結晶のパターンが部分的に溶融したら、加熱を制御してシリコンシード結晶のパターンが完全には溶融しないようにし、ここで、制御工程はルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを含み;シリコンを冷却することによって単結晶質シリコンを含む固形体を形成する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、また、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する双晶シリコン体が提供される。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、また、約2×1016原子/cm3〜約5×1017原子/cm3の炭素濃度、5×1017原子/cm3を超えない酸素濃度、少なくとも1×1015原子/cm3の窒素濃度を有し、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する双晶シリコン体が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体が提供される。
本発明の更なる態様によれば、また、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるウエハ;ウエハ内のp−n接合;場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;場合によっては背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;及び、ウエハ上の導電性接点;を含む太陽電池が提供される。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体から形成されるウエハ;ウエハ内のp−n接合;場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;場合によっては背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;及び、ウエハ上の導電性接点;を含む太陽電池が提供される。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体から形成される、少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有する連続双晶シリコンウエハ;ウエハ内のp−n接合;場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;場合によっては背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;及び、ウエハ上の導電性接点;を含む太陽電池が提供される。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、また、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるシリコンを含むウエハが提供される。
【0024】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体から形成されるシリコンを含む、少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有するウエハが提供される。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、また、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内に、溶融シリコンを少なくとも1つのシリコンシード結晶と接触させて配置し;そして溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することによって、場合によってはそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する双晶シリコンの固形体を形成することを含み、ここで形成工程は、少なくとも初めは冷却のための少なくとも1つの壁部と平行である溶融シリコンの端部における固/液界面を形成し、界面を、冷却中において、溶融シリコンと冷却のための少なくとも1つの壁部との間の距離を増加させる方向に移動させるように制御することを含む、キャストシリコンの製造方法が提供される。
【0026】
本発明の更なる態様によれば、また、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁を有する容器内に、溶融シリコンを容器の表面の全領域又は実質的に全ての領域を覆うように配列されている少なくとも1つのシリコンシード結晶と接触させて配置し;そして溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することによって、場合によってはそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する双晶シリコンの固形体を形成する;ことを含む、キャストシリコンの製造方法が提供される。
【0027】
本発明の更なる特徴及び有利性を以下の説明において示すが、これらは記載から明らかであるか、或いは本発明の幾つかの態様の実施によって教示される。本発明の特徴及び他の有利性は、明細書及び特許請求の範囲並びに添付の図面において特に示されている半導体装置の構造並びに製造方法及び装置によって理解及び達成される。
【0028】
本発明によれば、また、ルツボの内側壁を剥離コートで被覆し、底壁を未被覆のままにし;シリコンシード結晶を未被覆の壁部と接触させて配置し;シリコン供給材料をルツボ内に配置し;シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら供給材料を溶融し;シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし;そして、シリコンを第2の温度に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0029】
本発明によれば、また、先にキャストしたインゴットをスラブにスライスし;スラブを化学的に処理して不純物を除去し;スラブをシード層として用いるためにルツボ内に配置し;次にルツボにキャスティングのための供給材料を充填する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0030】
本発明によれば、また、層の中心領域におけるシード結晶が表面に直交する1つの結晶極方向を有し、層領域の約50%〜約99%を覆い、一方、層の端部上の残りのシード結晶が表面に直交する少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの層領域を覆うように、単結晶質シリコンシード結晶の層をルツボの少なくとも1つの表面上に配置し;供給材料シリコンを加え、供給材料及びシード層の一部を溶融状態にし;シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを所定の例えば均一の第1の温度にし、次にシリコンを均一な第2の温度に好ましくは均一に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0031】
本発明によれば、また、少なくとも約10cm×約10cmの面積を有する少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に載置されているルツボの底面上に配置し;固体又は液体のシリコン供給材料及び部分的に溶融するシード結晶を導入し;凸状の固体境界によって単結晶質成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜き;シリコンを第1の温度にし、それを第2の温度に好ましくは均一に冷却し;シード結晶と反対側のキャストシリコンの側部からスラブを切り出し;化学プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして、大きなスラブをその後のキャスティングプロセスのための新しいシード層として用いる;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0032】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示及び説明であり、特許請求する発明の更なる説明を与えるように意図されることを理解すべきである。本発明は、また、ここで記載し特許請求する方法によって製造されるシリコン、並びにかかるシリコンから製造されるウエハ及び太陽電池も包含する。
【0033】
本明細書に含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一態様によるルツボの底面上のシリコンシードの代表的な配列を示す。
【図2】図2は、本発明の一態様によるルツボの底面上のシリコンシードの代表的な配列を示す。
【図3】図3は、単一の結晶方位を有するシード結晶を用いたキャストインゴットの断面を示す。
【図4】図4は、本発明の一態様による、一部のシード結晶が1つの結晶方位を有し、一部のシード結晶が他の結晶方位を有するシード結晶を用いたキャストインゴットの断面を示す。
【図5】図5は、本発明の一態様による代表的な方法を示す。
【図6A】図6Aは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6B】図6Bは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6C】図6Cは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6D】図6Dは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6E】図6Eは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6F】図6Fは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6G】図6Gは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図7】図7は、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図8】図8は、本発明の一態様による、部分的に被覆されているルツボ中に装填したシリコン供給材料の例を示す。
【図9】図9は、本発明の一態様によるシード層材料を再生利用する方法の例を示す。
【図10】図10は、本発明の一態様による、シード層を形成するための単結晶シリコンの代表的な配列を示す。
【図11】図11は、本発明の一態様による、大きな単結晶シード層を生成させるための代表的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで本発明の幾つかの態様を詳細に説明し、その幾つかの例を添付の図面において示す。可能な限り、同じか又は類似の部品を示すために同じか又は同様の参照番号を図面全体にわたって用いる。
【0036】
本発明にしたがう幾つかの態様においては、溶融シリコンの結晶化は1以上のシード結晶を用いるキャスティングプロセスによって行う。ここで開示するように、かかるキャスティングプロセスは、結晶化シリコンのキャスト体における結晶粒の寸法、形状、及び配向を制御するように行うことができる。ここで用いる「キャスト」という用語は、溶融シリコンを保持するために用いる型又は容器内で溶融シリコンを冷却することによってシリコンを形成することを意味する。溶融シリコンのような液体はその中にそれが配置される容器の形状をとるので、ここでは溶融シリコンの冷却を型又は容器内だけでなく任意の手段によって溶融シリコンを閉じ込めながら行うこともできることも意図される。一例として、シリコンはルツボ内で凝固させることによって形成することができ、ここでは凝固は、溶融体中に導入される冷却された外部物体を通してではなく、ルツボの少なくとも1つの壁部から始まる。ルツボは、カップ、シリンダー、又はボックスのような任意の好適な形状を有していてよい。したがって、本発明による溶融シリコン結晶化プロセスは、ブール又はリボンを「引き出す」ことによっては制御されない。更に、本発明の一態様にしたがうと、型、容器、又はルツボは、溶融シリコンと接触する少なくとも1つの「加熱側壁」面を含む。ここで用いる「加熱側壁」という用語は、それが接触する溶融シリコンと等温か又はこれよりも熱い表面を指す。好ましくは、加熱側壁面はシリコンの加工中において固定して保持される。
【0037】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、結晶化シリコンは、連続単結晶質、ほぼ単結晶質のシリコン、連続双晶、又は制御された粒方位を有する連続幾何学的多結晶質のいずれかであってよい。ここで用いる「連続単結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が単結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない単結晶シリコンを指す。更に、ここで用いる「連続幾何学的多結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が幾何学的多結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない幾何学的多結晶質シリコンを指す。更に、ここで用いる「連続双晶」という用語は、全体にわたって2つの結晶方位のみを有し、一緒に結合して双晶を形成する単結晶質シリコンの別々の片ではない双晶シリコンの均一な物体を指す。
【0038】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、結晶化は、結晶質シリコンの「シード」の所望の一群を、例えば溶融シリコンを保持することができる石英ルツボのような容器の底部内に配置することによって行うことができる。ここで用いる「シード」という用語は、所望の結晶構造を有し、好ましくは少なくとも1つの断面が幾何学的、好ましくは多角形の形状を有し、好ましくはそれをその中に配置することができる容器の表面に合致する側部を有する好ましい幾何学的形状のシリコンの片を指す。かかるシードは、シリコンの単結晶質の片か、又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの片、例えば単結晶質シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られるスラブ又は水平切片のいずれかであってよい。本発明にしたがうと、シードは、その底面と平行な頂面を有していてよいが、必ずしもそうでなくてもよい。例えば、シードは寸法が直径で約2mm〜約3000mmで変化するシリコンの片であってよい。例えば、シードは直径で約10mm〜約1000mmであってよい。シリコンの片は、約1mm〜約1000mm、好ましくは約5mm〜約50mmの厚さを有していてよい。シードの好適な寸法及び形状は簡便性及びタイリングを得るように選択することができる。タイリングは、以下により詳細に説明するが、シリコンシード結晶を例えばルツボの底面又は1以上の側面及び底面にわたって所定の幾何学的配向又はパターンで配列することである。1つ又は複数のシードが、それらが配置される箇所に隣接する全ルツボ表面を覆い、それにより種付けされた結晶の成長凝固前面がシードから離れる方向に移動した場合に、ルツボの断面の全寸法を一貫した幾何学的結晶として保持することができることが好ましい。
【0039】
次に、好ましくは、溶融シリコンの結晶化が固体のシードの元の頂部のレベルか又はこれより下のレベルで開始し、シードから離れる方向、好ましくは上向きに離れる方向に進行するように溶融シリコンの冷却が行われるように、溶融シリコンをシードの存在下で冷却及び結晶化させる。溶融シリコンの端部における固/液界面は、好ましくは初めは、その中でそれがキャストされる容器の冷却面、例えばルツボ内の表面と合致する。本発明の幾つかの態様によれば、溶融シリコンと結晶化シリコンとの間の液/固界面は、一部、例えば凝固段階の開始部分、又はキャスティングプロセスの全部にわたって実質的に平坦に保持することができる。本発明の一態様においては、溶融シリコンのそれぞれの端部における固/液界面は、冷却中に、好ましくは実質的に平坦な固/液界面を保持しながら溶融シリコンとルツボの冷却面との間の距離が増加する方向に移動するように制御する。
【0040】
したがって、本発明にしたがうと、凝固前面は容器の冷却面の形状と平行にすることができる。例えば、平坦な底部のルツボを用いると、凝固前面を実質的に平坦に保持することができ、固/液界面は制御されたプロファイルを有する。固/液界面は、それが端から中心に移動するにつれて湾曲の半径が減少するように制御することができる。また、固/液界面は、容器の幅の少なくとも半分の湾曲の平均半径を保持するように制御することができる。更に、固/液界面は容器の幅の少なくとも2倍の湾曲の平均半径を保持するように制御することができる。固体は、容器の幅の少なくとも約4倍の湾曲の半径を有する僅かに凸状の界面を有することができる。例えば、固/液界面は、0.7m平方のルツボにおいては一般に2mよりも大きく、ルツボの水平寸法の2倍より大きく、好ましくはルツボの水平寸法の約8倍〜約16倍の湾曲の半径を有することができる。
【0041】
本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cmであり、例えば側部において少なくとも約20cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cmであり、例えば側部において少なくとも約30cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cmであり、例えば側部において少なくとも約35cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cmであり、例えば側部において少なくとも約40cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cmであり、例えば側部において少なくとも約50cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cmであり、例えば側部において少なくとも約60cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cmであり、例えば側部において少なくとも約70cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。
【0042】
本発明の幾つかの態様にしたがって製造されるキャストシリコンのインゴットの水平方向の寸法の上限は、キャスティング技術及びルツボ製造技術によってのみ決定され、本発明方法それ自体によっては決定されない。少なくとも1m2で4〜8m2以下の断面積を有するインゴットを本発明にしたがって製造することができる。同様に、インゴットの高さの上限は、より長いサイクル時間と関係する可能性があり、キャスティングプロセスの原理とは関係しない。約50cm〜約80cm以下のインゴットの高さが可能である。したがって、本発明にしたがうと、連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を、約66cm×66cmの断面にうまく成長させることができ、連続単結晶質シリコンの長方形の固体片は体積が少なくとも33,750cm3である。更に、本発明にしたがうと、好ましくはそれぞれキャスティング容器の内部寸法と同程度の大きさである少なくとも2つの寸法、及びインゴットと同等の高さである第3の寸法を有するキャストされた連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。例えば、シリコンのキャスト体が立方体形又は直方体形の固体である場合には、これらの上記の寸法は、かかる物体の長さ、幅、及び高さに関する。
【0043】
本発明の幾つかの態様にしたがうように溶融シリコンの結晶化を行うことにより、ランダムではなく特定の粒界及び特定の粒径を有するキャストシリコンを製造することができる。更に、全てのシードが互いに同じ相対方向に配向し、例えば(100)極方向がルツボの底面に直交し、(110)極方向が長方形又は正方形の断面のルツボの側面の1つに平行になるように1つ又は複数のシードを整列させることにより、かかるキャストシリコンの極方向が1つ又は複数のシードのものと同じである単結晶質シリコン又はほぼ単結晶質のシリコンである大きなキャストシリコン体を得ることができる。同様に、他の極方向はルツボの底面に直交していてよい。更に、複数のシードの配列は、ルツボの底面に直交する1以上の極方向を有していてよい。例えば、配列には、ルツボの底面に直交する1つの極方向を有するシードの中心部分、及び中心部分を取り囲み、ルツボの底面と直交する他の極方向を有するシードの他の「保護」部分を含ませることができる。更に、本発明の一態様にしたがうと、1つ又は複数のシードを、任意の1つの共通の極方向又は任意の2つの共通の極方向がルツボの底面に直交するように配列させることができる。
【0044】
例えばCZ又はFZ法にしたがって溶融シリコンのプールから円筒形のブールを引き上げる従来の方法によって単結晶質シリコンを製造する場合には、得られる単結晶質シリコンは、螺旋欠陥(空格子点及び自己格子間原子のような固有の欠陥から形成される)及びOSF環状欠陥のような放射状に分布する不純物及び欠陥を含む。螺旋欠陥は、単数形又はクラスター形のいずれかの格子間シリコン原子又は空格子点である。かかる螺旋欠陥はX線トポグラフィーによって検出することができ、シリコン内の「螺旋」として現れる。これらは、また、欠陥観察のためにシリコンを選択的酸エッチングした後に検出することもできる。
【0045】
従来のCZ又はFZ法によれば、シリコン内の酸素原子及びかかる酸素原子によって引き起こされるシリコン内の欠陥の分布は放射状に位置する。これは、これらが中心軸に関して対称の環状、螺旋状、又は縞状に配列される傾向を有することを意味する。OSF環状欠陥はこれの特定の例であり、ナノメートルスケールの酸素沈殿物がシリコンの引き上げられた単結晶質インゴット又はブール内に円筒の帯状の積層欠陥を核形成して、かかるシリコンから製造されるウエハ上に環状の欠陥帯を与える。かかる帯は選択的酸エッチングの後のシリコン試料において観察することができる。
【0046】
螺旋欠陥及びOSF環状欠陥のいずれも、例えば従来のCZ又はFZ法によれば、引き上げプロセスの回転対称性、軸方向の熱勾配、及びプロセスに固有の回転のために、溶融シリコンのプールから円筒形のブールを引き上げることによって単結晶質シリコンのブールにおいて起こる。一方、本発明の幾つかの態様によるキャスティングプロセスによれば、かかる螺旋欠陥及びOSF環状欠陥を示さないシリコンを製造することができる。これは、円筒対称性を有しないシリコン体において、及び等温線が凝固及び冷却プロセス全体にわたってインゴット全体で実質的に平坦であるプロセスにおいて、キャスティングプロセス中の欠陥の取り込みを、回転によって影響を受けない成長界面において実質的にランダムに分布させることができるためである。
【0047】
異なる方法によって成長させたシリコン中の軽質元素不純物の濃度に関しては、表1において示す下記のレベルが特徴的であると広く考えられる。
【0048】
【表1】
【0049】
CZインゴット片は、5×1017原子/cm3程度の低さ(しかしながらこれよりは低くない)の酸素を有するように製造することができる。炭素及び窒素濃度は、FZ及びCZインゴットにおいては意図的なドーピングによって増加させることができるが、ドーピングはこれらの技術における固体溶解度限界を超えず(キャスト材料と同様)、ドープされたインゴットは直径が20cmより大きい寸法では製造されなかった。これに対し、キャストインゴットは、通常は、剥離コート及び炉の加熱区域のデザインのために炭素及び窒素が過飽和状態である。結果として、液相の核形成及び成長のために、沈殿した窒化物及び炭化物があちこちに存在する。更に、本発明の幾つかの態様によれば、上記に報告された不純物レベルを有し、50×50×20cm3及び60×60×5cm3程度の大きさの寸法を有するキャスト単結晶インゴットが製造された。これらの寸法は例示のみのものであり、本発明のキャスティングプロセスに関する上限とはみなされない。
【0050】
例えば、不純物レベルに関しては、約1〜5×1017原子/cm3(約1×1017原子/cm3〜約5×1017原子/cm3を示す)の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度が、本発明によるシリコンキャストにおいて好ましい。本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cm、例えば側部において少なくとも約20cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cm、例えば側部において少なくとも約30cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cm、例えば側部において少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cm、例えば側部において少なくとも約40cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cm、例えば側部において少なくとも約50cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cm、例えば側部において少なくとも約60cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cm、例えば側部において少なくとも約70cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。
【0051】
本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。
【0052】
本発明の幾つかの態様にしたがって製造され、上記に示す不純物濃度を有するキャストシリコンのインゴットの水平方向の寸法の上限は、キャスティング技術及びルツボ製造技術によってのみ決定され、本発明方法それ自体によっては決定されない。したがって、本発明にしたがうと、上記に示す不純物濃度を有し、好ましくはそれぞれキャスティング容器の内部寸法と同程度の大きさである少なくとも2つの寸法、及びインゴットと同等の高さである第3の寸法を有するキャストされた連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。例えば、シリコンのキャスト体が立方体形又は直方体形の固体である場合には、これらの上記の寸法は、かかる物体の長さ、幅、及び高さに関する。
【0053】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、キャスティングプロセスのために用いる1つ又は複数のシードは、任意の所望の寸法及び形状のものであってよいが、好適には、シリコンの正方形、長方形、六角形、偏菱形、又は八角形の片のような単結晶質シリコン、双晶シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの幾何学的形状の片である。これらはタイリングに対して伝導性に形成して、端から端まで且つルツボの底部に適合させて所望のパターンで配置又は「タイリング」することができる。また本発明の幾つかの態様にしたがうと、シードをルツボの1以上(全てを含む)の側部上に配置することができる。かかるシードは、例えば単結晶質シリコンのブールのような結晶質シリコンの源を所望の形状を有する片に切り出すことによって得ることができる。またシードは、その後のキャスティングプロセスにおいて用いるためのシードを初めのキャスティングプロセスから製造することができるように、本発明の幾つかの態様によるプロセスによって製造される連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、又は連続幾何学的多結晶質シリコンのいずれかの試料からそれらを切り出すことによって形成することもできる。したがって、例えば連続単結晶質、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる連続単結晶質、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンのいずれかのスラブを、その後のキャスティングのためのテンプレートとして機能させることができる。かかる1つ又は複数のシード結晶は、その中にシードが配置されるルツボ又は他の容器の底部のような一面の寸法及び形状であるか又は実質的にかかる寸法及び形状にすることができる。単結晶質キャスティングの目的のためには、欠陥の取り込みを防ぐために可能な限り少量のシードでルツボの底部を覆うことが好ましい。単結晶質キャスティングの目的のためには、また、(100)及び(111)のような2つの異なる結晶方位を有するシードの所定の配列によってルツボの底部を覆うことも好ましい。好ましくは、シード結晶の配列には、ルツボの底面に直交する(100)極方向を有するシードの中心部分、及びルツボの底面に直交する(111)極方向を有し、中心部分を取り囲むシードの他の「保護」部分を含ませることができる。したがって、1つ又は複数のシードは、その中に1つ又は複数のシードを配置して本発明によるキャスティング方法を行うルツボ又は他の容器の底部のような1以上の面の寸法及び形状、又は実質的にかかる寸法及び形状であってよい。
【0054】
ここで、本発明の特定の態様にしたがってシリコンを製造するための方法及び装置を説明する。しかしながら、これらは本発明の原理にしたがってシリコンを形成する唯一の方法ではないことを理解すべきである。
【0055】
図1を参照すると、シード100を、石英ルツボのような底部及び壁部を有するルツボ110の底部に、いずれも大きな連続的に配向されているスラブ120を形成するように同じ配向で密に接するように配置する。或いは、これらは、製造される得られるシリコンにおいて意図的に選択された粒径を有する特定の粒界を形成するように予め選択された不整配向で密に接触させる。
【0056】
例えば、幾何学的多結晶質シリコンをキャストするためには、得られる結晶化された幾何学的多結晶質シリコンの断面粒径及び好ましくは断面形状はシードと同等か又はこれに近似し、粒の高さは断面に直交するシリコンの寸法と同等の長さであってよい。幾何学的多結晶質シード結晶、例えば幾何学的多結晶質シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる幾何学的多結晶質シリコンのスラブを、幾何学的多結晶質シリコンをキャストするための1つ又は複数のシード結晶として用いる場合には、得られる幾何学的多結晶質シリコンの粒の断面粒径及び好ましくは断面形状は、1つ又は複数の幾何学的多結晶質シードにおける粒に近似する。したがって、幾何学的多結晶質シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる幾何学的多結晶質シリコンのスラブを「幾何学的多結晶質シリコンシード結晶」(「幾何学的に配列された多結晶質シリコンシード結晶」とも呼ぶ)とすることができ、その後の幾何学的多結晶質シリコンのキャスティングのためのテンプレートとして機能させることができる。かかるシード結晶は、その中にシードが配置されるルツボ又は他の容器の底部のような一面の寸法及び形状であるか又は実質的にかかる寸法及び形状であってよい。かかるシード結晶を本発明方法において用いる場合には、得られる幾何学的多結晶質シリコンは、好ましくはシードにおける粒と同等か又は実質的に同等の断面寸法及び形状を有する結晶粒を有する。
【0057】
シード100はタイリングすることができ、好ましくはルツボ110の底部全体を実質的に覆うように配置する。また、ルツボ110がシリカ、窒化ケイ素、又は液体カプセル封入剤から製造されるもののような、ルツボ110からの結晶化シリコンの取り出しを助ける剥離コートを有することが好ましい。更に、シードは、厚さ約3mm〜約100mmの1つの所望の結晶方位又は2つの異なる所望の結晶方位の単結晶質シリコンの1つ又は複数のスラブを含んでいてよい。図1においては特定の数及び寸法のシード100を示すが、シードの数及び寸法のいずれも用途に応じて増加又は減少させることができることは当業者に容易に認められる。
【0058】
図2を参照すると、二者択一の配列のシード300及び310の平面図が示される。図2においては、シード300及び310を、図1に示されるルツボ110のような底部及び壁部を有するルツボ(図示せず)の底部に、2つの異なる結晶方位で密に接して底部及び壁部を有するルツボの底面の全幅320を覆うか又はほぼ完全に覆うように配置する。本発明にしたがうと、シード300及び310は単結晶シリコン片であってよい。好ましくは、シード300は(100)結晶方位を有し、一方、シード310は(111)結晶方位を有していて、それらのそれぞれの極方向がルツボ110の底面に直交するようになっていてよい。図2において示すように、一連の(111)シード310は一連の(100)シード300を取り囲むように選択的に配置する。(111)結晶方位は低エネルギーの成長前面を与えると考えられているので、図2においてはルツボ110の底面に直交する(111)極方向を有するシード310を示しているが、シード310に関して他の結晶方位が可能である。好ましくは、シード300はシード310と異なる結晶方位を有する。図2においては特定の数及び寸法のシード300及び310を示しているが、シードの数、寸法、及び結晶方位を用途に応じて変化させることができることは当業者に容易に認められる。例えば、シード結晶300及び310の2つの組の1つが単結晶質シリコンの単一のスラブであってよい。即ち、シード300は単結晶質(100)シリコンの単一のスラブであってよく、一連の(111)シード310又はこれらの任意の他の組み合わせによって取り囲んでルツボ110の底面を覆うことができる。かかる具体的に選択されたシードの配列及びしたがって粒界を有するシリコンを製造する場合には、好ましくは、粒界の接合部は与えられた角部において接する3つの粒界のみを有し、これは図2のシード結晶配列において示される。したがって、シード300をルツボの底面上に配置することができ、シード310をシード300によって占められていないルツボの底部の周縁領域上に配置することができる。シード300及び310を用いるシリコンキャスティングによって製造されるインゴットを、図3、4、及び6Gを参照して以下に説明する。
【0059】
図1〜2において開示するシードのレイアウト(又はパターン)にしたがうと、例えば、次にシリコン供給材料(図示せず)をルツボ110中のシード100、300、及び/又は310の上に導入し、次に溶融することができる。また、溶融シリコンをルツボ110中に注ぎ入れることができる。他の例においては、ルツボ110をまずシリコンの溶融温度に非常に近い温度か又はそれ以下の温度にすることができ、次に溶融シリコンを注ぎ入れる。本発明の幾つかの態様にしたがうと、凝固が始まる前にシードの薄層を溶融することができる。
【0060】
次に、上記で議論した任意の例においては、例えば熱を周囲に放射する固体の熱シンク材料によって、ルツボ110を冷却し、それによってルツボ110の底部(及びシードが側面上にもタイリングされている場合に限り側部)から熱を除去し、一方、ルツボ110の開放頂部には熱を未だ加える。したがって、シードを固体として保持しながら溶融シリコンを導入し、溶融体の指向性凝固によって円柱状の粒の上方向への成長を引き起こす。このようにして、得られるシリコンのキャストインゴットはシリコンシード100又は300及び310の結晶方位に似るようになる。得られるインゴットは、例えば水平のスラブに切り出して、他のキャスティングプロセスのためのシード層として作用させることができる。スラブは、例えば、キャスティングのために用いるルツボ又は他の容器の底面のような表面の寸法及び形状を有するか又は実質的にかかる寸法及び形状を有していてよい。例えば、かかるスラブの1つだけをキャスティングプロセスのために用いることができる。したがって、シリコンのキャストインゴットの得られる結晶構造に特定の影響を与え、究極的には制御するように、シリコンを形成するのに用いるルツボ内でのシード結晶の配向を選択することができる。
【0061】
本発明の幾つかの態様とは異なり、公知のキャスティングプロセスは、多結晶質粒を制御せずにシリコンの完全に溶融した塊からの指向性凝固によってキャストすることを含む。得られる粒は、基本的にランダムの配向及び寸法分布を有する。ランダムな粒方位により、シリコンウエハを有効にテクスチャー加工することが困難になる。更に、通常の成長技術の自然の産物である粒界における「キンク」は、転位のクラスター又はラインなどの構造欠陥を核形成する傾向があることが示されている。これらの転位及びそれらが吸引する傾向を有する不純物は、電荷キャリアの迅速な再結合を引き起こし、光起電材料としての特性を低下させる。したがって、本発明の一態様にしたがうと、構造欠陥を最小にしながら小数キャリアの寿命及び不純物ゲッタリングを最大にするように粒の寸法、形状、及び配向が明確に選択されるように、単結晶質シリコン又は双晶シリコンのいずれかをキャスティングするための規則粒界ネットワークの注意深いプランニング及び種付けが達成される。
【0062】
個々のシード100、又は300及び310を配置することに代わる方法においては、複数の単結晶質シード結晶を用いる代わりに、単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの先のキャスティングにおいて製造されたインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られるシリコンの切片又はスラブを、本発明による単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンをキャストするための単一のシード結晶として用いることができる。かかる単一のシード結晶は、キャスティングを行うために用いられるルツボ又は他の容器の表面と同じ寸法及び形状であるか又は実質的に同じ寸法及び形状であってよい。例えば、図2において示されるシードのレイアウト又はパターンを用いて形成されるシリコンのキャストインゴットから採られる単一のシード結晶をその後のキャスティングプロセスのために用いることができる。また、上記で議論した任意のシードの配列は、単結晶質シリコンの固形体、双晶シリコンの固形体、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体のいずれかをキャストするための態様にも適用することができ、ここではシード結晶をルツボの底面、又は底面及び側面の両方の上にそのように配置する。
【0063】
図3を参照すると、キャストシリコンのインゴット400を凝固させた後のルツボ110の中央部を通る縦断面が示されている。図3中のA−A線の平面は、図2において示すシードのレイアウト又はパターンに対応する。図3において示す例においては、図2の平面図において示すようにルツボ110の底面上に(100)シード300を配置し、但し(100)シード300を取り囲んで(111)シードを配置しない。この例においては、得られるシリコンのインゴット400は、キャスティングプロセスの凝固段階中に異なる粒方位の結晶成長を行うための多数の核形成部位として働かせることができるルツボの表面と接触する。例えば、ルツボ110の湾曲する角部410を多結晶質シリコン領域420の成長のための核形成部位として働かせることができ、その成長は(100)シード300からの(100)単結晶質シリコン領域430の核形成及び成長と競合する。キャスティング中においては、多結晶質シリコン領域420はシード300上に侵入し、得られるインゴット400は一部が単結晶質シリコンで一部が多結晶質シリコンである。(100)単結晶質シリコン領域430と多結晶質シリコン領域420との間の区分は線440によって示され、これは多結晶質シリコン領域420がどのように角部410におけるその核形成部位から外側へ成長するかを示す。したがって、(100)単結晶質シリコン領域430の核形成及び成長は、例えばルツボ110の側壁からのランダムに配向された粒の競合する横方向の粒成長のために減退する。
【0064】
更に図3を参照すると、キャスティングが完了した後、得られるキャストシリコンのインゴット400を、5列のブリック450及び2つの側プレート460に切り出す。側プレート460は、通常は多結晶質シリコンであり、キャスティング中に拡散するルツボ110の壁部からの不純物を含む可能性がある。したがって、側プレート460を取り除き、その後のキャスティングプロセスのための供給材料として用いることができる。(100)単結晶質シリコンのキャスティングが所望の場合には、図3に示す5つのブリック450の3つのみが(100)単結晶質シリコンを含む。2つのブリック450及び両方の側プレート460は、多結晶質シリコンのみ、或いは線440がそれを通って横切っているブリック450によって示されるように多結晶質シリコンと単結晶質シリコンの組み合わせを含む。したがって、インゴット400における(100)単結晶質シリコン領域430の体積収量は、多結晶質シリコン領域420の体積によって減少する。
【0065】
図4を参照すると、キャストシリコンのインゴット400を凝固させた後のルツボ110の中央部を通る縦断面が示されている。図4中のA−A線の平面は、図2において示すシードのレイアウト又はパターンに対応する。図4において示す例においては、図2において示すシード300及び310の配列を用い、(100)シード300をルツボ110の底面上に配置し、(111)シード310を(100)シード300を取り囲んで配置する。この例においては、得られるシリコンのインゴット400の一部は、多結晶質シリコン領域420を成長させるための核形成部位として働かせることができるルツボ110の湾曲した角部410を含むルツボの表面と接触している。しかしながら、(111)単結晶質シリコン領域510の核形成及び成長は、多結晶質シリコン領域420の成長と競合して最終的にはその量を制限する。
【0066】
したがって、キャスティング中においては、多結晶質シリコン領域420の成長は、(11)シード310の上の(111)単結晶質シリコン領域510の成長と競合することによって制限される。(111)単結晶質シリコン領域510と多結晶質シリコン領域420との間の区分は線440によって示され、これは多結晶質シリコン領域420がシード310におけるその核形成部位からの(111)単結晶質シリコン領域510の外方向への成長によってどのように制限されるかを示す。同様に、(111)単結晶質シリコン領域510と(100)単結晶質シリコン領域430との間の区分は線520によって示され、これは、(111)シード310から成長する(111)単結晶質シリコン領域510及び(100)シード300から成長する(100)単結晶質シリコン領域430の粒の交点を示す。したがって、得られるインゴット400は多結晶質シリコン領域420を側プレート460中にしか含まない。したがって、キャストシリコンのインゴット400の領域430及び510においては、(100)及び(111)単結晶質シリコンの高品質の双晶が含まれる。(111)単結晶質シリコン領域510の核形成及び成長によって、ルツボ110の側壁からのランダムに配向された粒の競合する横方向の粒成長が制限される。
【0067】
更に図4を参照すると、キャスティングが完了した後、得られるキャストシリコンのインゴット400を、5列のブリック450及び2つの側プレート460に切り出す。多結晶質シリコン領域420を含む側プレート460は、取り除き、その後のキャスティングプロセスのための供給材料として用いることができる。したがって、図4において示す5つのブリック450の全ては、単結晶質シリコン又は双晶シリコンを含み、中心の3つのブリック450は(100)単結晶質シリコンを含み、2つの外側のブリックは一部が(100)及び一部が(111)配向のシリコンの高品質の双晶を含む。したがって、多結晶質シリコンの量は(111)単結晶質シリコン領域510を成長させることによって減少し、これにより多結晶質シリコン領域420の体積が制限される。したがって、図4において示す例においては、図2に示すシードのレイアウト又はパターンからシリコンをキャストすることによって、多結晶質シリコンの成長に対する緩衝が与えられ、シリコンのキャストインゴットあたりの単結晶質シリコン領域の量が向上する。これは、ルツボ110の角部410におけるランダムに配向された多結晶質シリコンの核形成及び成長よりも迅速に核形成及び成長する、(111)シード310における(111)結晶方位の低エネルギーの成長前面によるものであると考えられる。
【0068】
図5は、本発明にしたがうシリコンの代表的な製造方法を示すフローチャートである。図5にしたがうと、方法600は、単結晶質シリコン成長のために(100)及び(110)のような2つの結晶方位の単結晶質シリコンシード結晶を選択し、1つの結晶方位のシード結晶が他の結晶方位を有するシード結晶を取り囲むように配置されるように単結晶質シリコンシード結晶をルツボ内に配置する(工程605)によって開始することができる。また、単結晶質シリコン又は双晶シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる単一のスラブを単一のシード結晶として用いることができる。次に、シリコン供給材料をルツボに加えることができる(工程610)。次に、ルツボの底部を底から冷却しながら(受動的又は能動的のいずれかで行う:工程615を参照)、ルツボを頂部から加熱する。溶融中においては、シリコンの溶融段階を監視して、固/液界面の位置を追跡及び制御する(工程620)。単結晶質シリコンシード結晶の一部が溶融するまでシリコンの溶融段階を進行させる(工程625)。単結晶質シリコンシード結晶の所望の部分が溶融したら、溶融段階を終了し、結晶成長段階を開始する(工程630)。シリコンの結晶化が完了するまで、ルツボ内において結晶成長を一方向且つ垂直方向に継続させる(工程635)。最後に、更なる処理のためにインゴットを取り出す(工程640)。
【0069】
図6Aに示すように、シリコン供給材料200を、例えば2つの方法の1つでシード220を含むルツボ210に導入することができる。第1の方法においては、ルツボ210を、好適には好都合な寸法の塊の形態の固体シリコン供給材料200で全容量まで装填し、装填したルツボ210をキャスト装置(図示せず)内に配置する。
【0070】
図6Bに示すように、ルツボ210内の熱プロファイルは、ルツボ110内のシリコン充填物の頂部が加熱されて溶融し、一方、底部が能動冷却又は受動冷却されてルツボ210の底部におけるシード220の固相が保持されるように、即ち供給材料200が溶融した際に浮遊しないように設定する。熱を水冷壁に放射するために、固体の熱シンク材料230をルツボ210の底部と接触させる。例えば、熱シンク材料230はグラファイトの固体ブロックであってよく、好ましくはルツボの底部と同等の大きさか又はこれよりも大きな寸法を有していてよい。本発明にしたがうと、例えば、熱シンク材料は、66cm×66cmである底面を有するルツボと共に用いる場合には、66cm×66cm×20cmであってよい。ルツボ210の側壁は、好ましくは、シード220をルツボ210の底部上のみに配置するならば、いかなるようにも冷却しない。シード220をルツボ210の底部及び側部の上に配置する場合には、熱シンク材料230は、所望の熱プロファイルを保持するためにルツボ210の底部及び側部の両方の上に配置する。
【0071】
シリコン供給材料200の溶融段階を精密に監視して、溶融シリコンとシードとの間の界面の位置を追跡する。好ましくは、シード220以外の供給材料シリコン200の全部が完全に溶融するまで溶融体240(図6Bに示す)の溶融を進行させ、その後シード220を部分的に溶融する。例えば、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することによって、シード220が完全には溶融しないように加熱を精密に制御することができる。好ましくは、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で測定して約0.05℃/分以下のΔTを保持することによって、加熱を精密に制御することができる。例えば、本発明にしたがうと、ΔTはルツボとグラファイトの大きなブロックとの間のルツボの外表面上で測定することができ、溶融したシード220の部分を算出するために、浸漬ロッドを溶融体240中に挿入して溶融体の深さを測定することができる。
【0072】
図6Cに示すように、部分250は溶融体240の下のシード220の全厚さの溶融部分を示す。シード220の部分250が溶融体240の下で溶融した後、溶融段階を速やかに終了して結晶成長段階を開始し、ここでは、ルツボ210の頂部における加熱を減少させるか、及び/又は熱シンク材料230における底部の冷却を増加させる。このプロセスの例として、図6Dに示すグラフは、シード220の部分250の溶融を時間の関数として示す。図6Dに示すように、5〜6cmの間の初期厚さを有するシードの部分を、固体シードの2cmを僅かに下回る厚さが残留するまで徐々に溶融する。例えば、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で(例えば冷却ブロック内に載置された熱電対によって)測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することによって、シード220が完全には溶融しないように加熱を精密に制御することができる。好ましくは、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で測定して約0.05℃/分以下のΔTを保持することによって、加熱を精密に制御することができる。この時点において、次に溶融段階を速やかに終了して結晶成長段階を開始し、これはグラフの縦座標上で測定される固体厚さが相対的に上昇することによって示される。
【0073】
図6Eに示すように、部分250は溶融体240の下のシード220の全厚さの溶融部分を示す。シード220の部分250が溶融体240の下で溶融した後、次に溶融段階を速やかに終了して結晶成長段階を開始し、ここではルツボ210の頂部における加熱を減少させるか、及び/又は熱シンク材料230における底部の冷却を増加させる。次に、図6Fに示すように、シリコンの結晶化が完了するまで熱シンク230を通して熱を引き抜きながら、種付けされた結晶の成長をルツボ210内で一方向に且つ垂直方向に継続させる。好ましくは実質的に平坦な固/液界面285が、上方向にルツボ210の底面から離れて広がる。結晶成長の終了後にキャスティングサイクルを完了し、ここでルツボ210内の頂部から底部への熱勾配を均一にする。次に、インゴット280全体を室温にゆっくりと冷却する。単結晶質シリコンのキャスティングについては、この種付けによる一方向の成長によってキャストされた単結晶質シリコンの連続固形体290が生成する。
【0074】
図6Gに示すように、例えば図2のシードのレイアウト又はパターンにしたがう種付け結晶成長を、シリコンの結晶化が完了するまでルツボ210内において垂直方向に継続させる。ルツボ210内での頂部から底部への熱勾配が均一になった時点で、キャスティングサイクルが終了する。次に、インゴット260全体を室温にゆっくりと冷却する。単結晶質及び双晶シリコンのキャスティングについては、図6Gに示すように、(100)シード300の周りを取り囲む(111)シード310のパターン(図2に示す)を用いることにより、それから核形成及び成長するそれぞれの(111)シードの上に例えば(111)配向を有する粒270が生成する。このようにして、(111)及び(100)結晶方位の単結晶質シリコンの高品質の双晶がインゴット260の体積の大部分、好ましくは実質的に大部分を占める。
【0075】
図7に示す他のプロセスにおいては、シリコン供給材料200をまず別の室又は別の溶融容器300内で溶融させることができる。シード220は、溶融した供給材料305を溶融体パイプ310を介してルツボ210中に供給又は注ぎ入れる前に、頂部から部分的に溶融してもしなくてもよく、その後、図6B〜6Gを参照して記載したように冷却及び成長を進行させる。他の態様においては、シリコンシード結晶をルツボ210の壁部上に載置することができ(図示せず)、上記したように種付け成長をルツボ210の側部及び底部から進行させることができる。また、シリコン供給材料200をルツボ210とは別の溶融容器300内で溶融し、同時にルツボ210をシリコンの溶融温度に加熱し、シード220が完全には溶融しないように加熱を制御する。シード220が部分的に溶融したら、溶融した供給材料305を溶融容器300からルツボ210中へ移すことができ、冷却及び結晶化を開始することができる。したがって、本発明の一態様にしたがうと、結晶化シリコンの固形体の一部にシード220を含ませることができる。また、溶融体の導入前にシードを完全に固体に保持することができる。この場合においては、溶融容器300内の溶融シリコンを溶融温度を超えて加熱し、この過熱液体によって過熱液体を導入した際に幾つかのシードの一部を溶融させる。
【0076】
図7に示すような2段階キャスト装置においては、溶融した供給材料305を溶融容器300から注ぎ入れ、シード220の上に落下させ、凝固中にそれらの結晶化を行わせる。また、溶融を中心の溶融容器300内で行って、これをルツボ210の1以上の複製品(図示せず)のような分布された配列の凝固ルツボに供給することができる。本発明の幾つかの態様にしたがうと、凝固ルツボはルツボの側部及び底部のいずれか又は両方の上のシード220と整列させることができる。このアプローチの幾つかの有利性としては、溶融システムと凝固システムが分離されて、それぞれのキャスティング工程のより良好な最適化が可能になること;新しい材料の溶融を通常の方法で行い、必要に応じてルツボの供給を保持するシリコンの半連続溶融が可能になること;凝固段階を溶融体の中央から与えながら頂部(及び場合によっては底部の排出部)のシリコンをスラグ化して、出発シリコン材料の純度が向上すること;及び、溶融容器300を溶融した供給材料305と平衡にし、もはや大きな不純物源ではなくなること;が挙げられる。
【0077】
したがって、上記に記載の方法の1つによってインゴット260又は280をキャストした後、得られるキャストインゴットを、例えばインゴットの底部又は他の部分を切除して、それをその後のキャスティング操作において単結晶又は双晶シードとして用いることによって更に処理して、本発明にしたがう単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができ(ここで、かかる単結晶シードの寸法及び形状はその後のキャスティング操作において用いるルツボの底部と同じ寸法及び形状である)、インゴットの残りを、光電池に加工するためのブリック及びウエハに切り出すことができる。また、インゴット全体を、将来のキャスティング操作のための複数のキャスト装置においてシード結晶として用いるための水平のスラブに切り出すことができる。
【0078】
本発明の幾つかの態様にしたがう方法において用いるシリコン供給材料には、以下のもの:ホウ素、アルミニウム、リチウム、ガリウム、リン、アンチモン、ヒ素、及びビスマス;を含むリストから選択されるもののような1種類以上のドーパントを含ませることができる。かかるドーパントの全量は、約0.01原子ppm(ppma)〜約2ppmaであってよい。かかる1種類又は複数のドーパントの全量は、約0.01原子ppm(ppma)〜約2ppmaであってよい。好ましくは、シリコン中の1種類又は複数のドーパントの量は、シリコンから製造されるウエハが約0.1〜約50Ω・cm、好ましくは約0.5〜約5.0Ω・cmの抵抗を有するような量である。また、ここで開示する方法及び装置を用いて、好適な液相を有する他の材料をキャストすることができる。例えば、本発明の幾つかの態様によって、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、サファイア、及び数多くの他のIII−V又はII−VI材料、並びに金属及び合金をキャストすることができる。
【0079】
図8は、キャスティングのためにルツボ810中に装填されるシリコン(供給材料800及び結晶質シード801)の断面を示す。窒化ケイ素又は炭化ケイ素のような剥離コート820を、供給材料800がルツボ810と接触するルツボ810の領域に施すことができ、これはキャスティング中に完全に溶融するようになるシリコン800の領域に対応する。結晶質シード801の下側にはコートは施さない。シード801は完全には溶融せず、したがってルツボ810に接着しない。
【0080】
図9は、結晶質シリコンシード層を再利用するための方法を示す。図9に示すように、シード層901から成長したキャストインゴット900を、まず破線にそってスライスしてシード層901を含む材料のスラブを取り出す。次に、材料のスラブを破線の端部で切り取って、他のルツボ内に配置するのに障害となる可能性のある過剰の材料を除去する。元のシード層901の寸法及び形状に切り取られた切取スラブ902を次に、好適な液体又は他の材料を含むタンク又はタブのような容器910内において、場合によってはシリコンの他の同様の片と一緒に処理して、層901(及び場合によってはシリコンの他の片)から汚染物質及びデブリスを除去し、その後、その後のキャスティングプロセスにおいてシード層として用いるために新しいルツボ920内に配置する。
【0081】
図10は、シード層を形成するように配列した単結晶シリコン片の代表的な配列を示す。(001)結晶方位はシリコン太陽電池を製造するために有利な特性を有することが示されている。(001)シリコンは、その全表面を覆うパターンピラミッドを形成するように化学的にエッチングすることができ、これにより反射を減少させることと材料内の光路長を増加させることの両方によってシリコンの光捕捉能を向上させることができる。化学エッチングは公知の方法によって行うことができる。しかしながら、シリコンの多結晶質領域に隣接して配置した場合には、その(001)極方向に対して鋭角に粒界を成長させるその傾向によって(001)シリコンのキャスティングは困難になる。多結晶質シリコンの成長に対抗するために、幾何学的配列の複数の単結晶質シリコンシード結晶を、ルツボ(図示せず)内の少なくとも1つの表面、例えばルツボの底面の上に配置することができる。ここで、幾何学的配列としては最密多角形が挙げられる。図10において示すように、(001)シリコンの片1000は、長方形の(111)シリコン1001の周縁によって取り囲まれている。周縁のシリコン1001の極方向を(111)として示すが、これは、多結晶質領域に隣接して成長する際に競合的に優位である任意の結晶方位であってよい。このようにして、得られるキャストインゴット(図示せず)の大部分は(001)シリコンから構成され、シリコン1001から成長する競合的に優位な(111)粒によって、シリコン1000の上の(001)シリコンによって占められる領域内での多結晶質シリコンの成長が制限される。同様に、本発明の幾つかの態様にしたがって多結晶質シリコン体をキャストすることによって製造されるシリコン結晶粒は、円柱状に成長させることができる。更に、かかる結晶粒は、凝固が進行するにつれて収縮する(001)断面領域を有するのではなく、それから形成されるシードの形状であるか又はそれに近似する断面を有することができる。このような具体的に選択された粒界を有し、好ましくは粒界の接合部が角部において接する3つの粒界のみを有するシリコンを製造する場合には、条件は図10において示される配列に合致する。
【0082】
図11は、シード層として用いるための大面積で転位のない単結晶を製造するための方法を示す。断面で示すこの方法においては、多結晶質供給材料1100を、面積が約25cm2〜約10,000cm2の横方向の寸法及び約3mm〜約1000mmの厚さを有していてよい単結晶シード1101と一緒に装填する。供給材料1100をルツボ1110内に配置し、これを次に伝熱性部品(1120)及び断熱性部品(1130)から構成される複数の層1120、1121、及び1130の頂部上の装置(図示せず)内に配置する。伝熱性部品1120の領域は、好ましくはルツボ1110の底部とほぼ同じ形状であり、シード結晶1101の約50%〜約150%の横方向の面積を有する。溶融の間は、伝熱性領域1120を通して支持プレート1121に熱を引き抜き、一方、熱が断熱層1130を通過することは抑止される。シード結晶1101の完全な溶融を抑止するために、キャスティングの溶融段階の間においても伝熱性領域1120を通して熱を伝導除去する。全ての供給材料1100及びシード結晶1101の少量が液体シリコン1102に溶融したら、残りの固体シリコン1103は、次に凝固プロセスのための核形成層として作用する。断熱層1130の存在は、核形成及び成長の間の固体シリコン1103の形状、及び図11において矢印で示される凝固の方向を制御するのを助ける。凝固表面の強い湾曲によって固体シリコン1103の外側への成長が引き起こされ、一方、多結晶質領域1105が最小になる。インゴット1104がキャストされたら、インゴットの上部から水平の層を切り出して(破線)、新しいシードスラブ1106として用いることができる。スラブ1106は、清浄化し、切り取り、新しいルツボ1110内で新しいインゴットのための完全なシード層として用いるか、或いは上記に記載した方法を再び用いて更に大きい単結晶のための出発点として用いることができる。
【0083】
更に、ここではシリコンのキャスティングを記載したが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の半導体材料及び非金属結晶質材料をキャストすることができる。例えば、本発明者らは、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム(そのサファイアの単結晶形態を含む)、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ヒ化ガリウムインジウム、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、酸化イットリウムバリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び他の半導体、酸化物、並びに液相を有する金属間化合物のような本発明の幾つかの態様にしたがう他の材料のキャスティングを意図している。更に、数多くの他のIII−V族又はII−VI族材料、並びに金属及び合金を、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストすることができる。
【0084】
約1410℃〜約1300℃の間の範囲のような第1の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る温度勾配を含む。平均で約1350℃のような第2の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る減少した温度勾配及び/又は均一な温度プロファイルを含む。温度勾配を減少させることは、本開示との関連では時にはアニーリングと呼ぶことができる。アニーリングとしては、例えば断熱を停止することが挙げられる。
【0085】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内において、溶融シリコンをシード結晶のパターンと接触させて配置することを含む。冷却壁は、例えば容器又はルツボの1以上の側壁及び/又は底面であってよい。
【0086】
望ましくは、シード結晶のパターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列する。幾つかの態様においては、パターンは容器又はルツボの内表面の全体或いは実質的に全ての領域及び/又は一部を覆う。
【0087】
本方法には、単結晶質シリコンの領域を含む固形体を形成することを更に含ませることができる。望ましくは、固形体又はインゴットは実質的部分の単結晶質シリコンを含む。また、形成は双晶シリコンの領域を有する固形体を含むことができる。固形体は、任意の好適な寸法を有することができ、一般には十分な純度及び/又は結晶化度を保持しながらより大きな規模の経済を与えることが望ましい。固形体は、それぞれ少なくとも約10cm、少なくとも約25cm、少なくとも約35cm、及び/又は少なくとも約50cmの少なくとも2つの寸法を有することができる。
【0088】
また、固形体には、その後のキャスティングプロセスにおいて用いることができるもののような複数の単結晶シリコンシード結晶を含ませることができる。また、本方法には、本方法によって先にキャストしたシリコン体から切り出したシード結晶を用いてシリコンの他の固形体を形成することを含ませることができる。
【0089】
形成工程には、少なくとも初めは冷却のための少なくとも1つの壁部と平行である溶融シリコンの端部における固/液界面を形成するように溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することを含ませることができ、ここでは固/液界面を、冷却中において、溶融シリコンと冷却のための少なくとも1つの壁部との間の距離を増加させる方向に移動させるように制御することができる。言い換えれば、凝固前面は冷却源から離れる方向に前進する。冷却源及び/又は熱シンクによって、凝固前面を概して水平方向及び/又は概して垂直方向のような任意の好適な方向で前進させることができる。望ましくは、冷却は、例えば熱を水冷壁に放射するための熱シンク材料を用いることを含む。
【0090】
幾つかの態様においては、配置工程は、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列によって第1の結晶方位の配列が取り囲まれているか、包囲されているか、及び/又は縁取られている配列で配置することを更に含む。本方法には、冷却によって固/液界面を、冷却のための少なくとも1つの壁部と平行な端部を保持しながらルツボの底部から離れる方向に移動させることを更に含ませることができる。
【0091】
幾つかの態様においては、(111)方位を有するシード結晶の境界によって(100)方位を有する複数の単結晶シリコンシード結晶を取り囲む。望ましくは、(100)方位により、例えば、多結晶質シリコンが側壁上で成長及び/又は形成され、内側に向かって広がることが減少及び/又は抑止される。
【0092】
幾つかの態様においては、溶融シリコンを配置する工程は、ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し、ルツボ及びシリコンを少なくともシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の複数の単結晶シリコンシード結晶が完全には溶融しないように加熱を制御し、そして溶融シリコンを溶融容器からルツボ中に移すことを更に含む。別の及び/又は専用の溶融容器を用いることによって、例えば増加した能力及び/又は生産性を与えることができる。
【0093】
幾つかの態様においては、溶融シリコンを配置する工程は、ルツボ及びシリコンをシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、加熱を制御して、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを更に含む。ΔTは、時間に対する温度変化速度を指す。
【0094】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、シリコン供給材料を、少なくとも1つの表面上において、単結晶質シリコンを含むシリコンシード結晶のパターンと接触させて配置することを含む。パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列する。本方法は、シリコン供給材料及びシリコンシード結晶のパターンをシリコンの溶融温度に加熱し、シリコンシード結晶のパターンが完全には溶融しないように加熱を制御することを更に含む。望ましくは、制御工程は、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを含む。ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達し及び/又は到達した後において、シリコンシード結晶のパターンが部分的に溶融したら、本方法に、シリコンを冷却することによって単結晶質シリコンを含む固形体を形成することを更に含ませることができる。また、形成工程は、単結晶質シリコンに代えて及び/又はこれに加えて双晶シリコンの領域を有する固形体を形成することを更に含む。また、形成工程には、固形体の少なくとも一部が複数の単結晶シリコンシード結晶を含むようにすることを更に含ませることができる。
【0095】
ここで用いる「有する」、「含む」、及び「包含する」という用語は、開かれた包含的な表現である。また、「から構成される」という用語は、閉じられた排他的な表現である。特許請求の範囲又は明細書における任意の用語の解釈においては不明確さが存在するが、記載者の意図は開かれた包含的な表現である。
【0096】
本方法には、また、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列が第1の結晶方位の配列を少なくとも部分的か及び/又は完全に取り囲むように配置することを含ませることができる。
【0097】
幾つかの態様においては、本発明は、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか及び/又は実質的に含まない双晶シリコン体を包含する。望ましくは、該物体は、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する。また、連続キャスト双晶シリコンはそれぞれ少なくとも約35cm及び/又は少なくとも約50cmの少なくとも2つの寸法を有する。
【0098】
本物体は、例えば、約2×1016原子/cm3〜約5×1017原子/cm3の炭素濃度、5×1017原子/cm3を超えない酸素濃度、及び少なくとも1×1015原子/cm3の窒素濃度を有することができる。炭素、酸素、及び窒素の他の範囲が可能である。望ましくは、本物体は、螺旋欠陥を含まないか及び/又は実質的に含まず、及び/又は酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない。
【0099】
幾つかの態様においては、本発明の太陽電池は、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まない連続双晶シリコン体から形成されるウエハを含む。本物体は、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する。太陽電池には、ウエハ内のp−n接合、及びウエハ上の導電性接点を更に含ませることができる。また、連続キャスト双晶シリコン体は、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する。望ましくは、本物体は、放射状に分布する欠陥及び/又は酸素誘起積層欠陥を含まないか又は実質的に含まない。
【0100】
幾つかの態様においては、本発明は、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるシリコンのウエハを包含する。また、ウエハは少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有することができ、及び/又は、物体はそれぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有することができる。
【0101】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、ルツボの内側壁を剥離コートで被覆し、底面を未被覆のままにすることを含む。本方法には、また、シリコンシード結晶を未被覆の底面と接触させて配置し、シリコン供給材料をルツボ内に配置することを含ませることができる。本方法には、また、シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながらシリコン供給材料を溶融し、シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを含ませることができる。本方法には、また、物体を第1の温度にし、そして物体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。また、ルツボ及び/又は容器の全内表面及び/又は実質的に全ての内表面を剥離コートで被覆することができる。
【0102】
本方法には、また、先にキャストした物体を少なくとも1つのスラブにスライスし、少なくとも1つのスラブを化学的に処理して不純物を除去することを含ませることができる。本方法には、また、少なくとも1つのスラブをシード層として少なくとも1つのルツボ内に配置し、溶融シリコンをシード層と接触させて配置することを含ませることができる。本方法には、また、ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し、物体を第1の温度にし、そして物体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。
【0103】
化学的に処理する工程には、不純物を除去及び/又は減少させる任意の好適な手順を含ませることができる。望ましくは、化学的処理によって金属及び/又は残留金属を除去する。化学的処理としては、苛性浸漬、例えばシリコンを水酸化ナトリウム溶液中に約30分間配置して金属を除去し、次に例えば脱イオン水ですすぐことを挙げることができる。化学的処理としては、また、酸浸漬、例えばシリコンを塩酸溶液中に配置して例えば残留金属を除去することを挙げることができる。例えば、シリコンを脱イオン水ですすぎ、乾燥することができる。化学的処理は、機械によって自動化するか、及び/又は手動で行うことができる。
【0104】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、単結晶質シリコンシード結晶の層を、ルツボ内の少なくとも1つの表面上に、層の中心のシード結晶が1つの第1の結晶極方向を有し、シード層領域の約50%〜約99%を覆い、一方、層の端部上のシード結晶が少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの領域を覆うように配置することを含む。本方法には、また、供給材料シリコンを導入して、供給材料シリコン及びシード層の一部を溶融状態にすることを含ませることができる。本方法には、また、シード層及びシード層と接触しているルツボの一部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを含ませることができる。本方法には、また、固形体を第1の温度にし、そして固形体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。
【0105】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、少なくとも約10cm×約10cmの面積の少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に載置されているルツボの底部上に配置することを含む。本方法には、また、液体シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し、凸状の固体境界によって単結晶質成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを含ませることができる。本方法には、また、物体を第1の温度にし、物体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。本方法には、また、シード結晶と反対側の物体の側部からスラブを切り出し、化学プロセスを用いてスラブを清浄化し、そしてスラブをその後のキャスティングプロセスのためのシード層として用いることを含ませることができる。
【0106】
以下の実施例は本発明の幾つかの態様にしたがう実験結果である。これらの実施例は本発明の幾つかの態様を単に例示し示すために与えるものであり、いかなるようにも本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0107】
実施例1:
ルツボの製造:2つの層から構成される支持構造体上にルツボを配置した。支持構造体の底層は、複合体層を支持する80cm×80cm×2.5cmの寸法の固体の等方成形グラファイトプレートであった。上部の複合体層は、60cm×60cm×1.2cmの寸法の伝熱性等方成形グラファイトプレートであり、全ての側部について厚さ1.2cmの断熱性グラファイトファイバーボードの10cmの周縁部によって取り囲まれている内部領域を有していた。このように、複合体層は底層を完全に覆っていた。
【0108】
シードの製造:MEMC, Inc.から得られ、0.3ppmaのホウ素を有する純粋なチョクラルスキー(CZ)シリコン(単結晶質)のブールを、ダイアモンドコートバンドソーを用いてその長さに沿って、側部あたり140mmからの寸法の正方形の断面を有するように切り落とした。得られた単結晶質シリコンのブロックを、同じソーを用いてその断面を通して約2cm〜約3cmの厚さを有するスラブに切り出した。これらのスラブを単結晶質シリコンのシード結晶又は「シード」として用いた。シリコンブールの(100)結晶学的極方向を保持した。次に、得られた単結晶シリコンスラブを、石英ルツボの底部内に、スラブの(100)方向が上向きになり、(110)方向がルツボの1つの側に平行に保持されるように配列した。石英ルツボは、側部について68cmの正方形の断面、及び約40cmの深さを有していた。スラブを、それらの長尺方向をルツボの底に平行に、それらの側部を互いに接触させてルツボの底部内に配列して、ルツボの底部の上にかかるスラブの単一の完全な層を形成した。
【0109】
キャスティング:室温において、ルツボにシードプレートを装填し、次に固体シリコン供給材料を265kgの全質量まで充填した。高ホウ素ドープシリコンの少量のウエハを加えて、約0.3ppmaの全インゴットドーピングに十分なホウ素を与えた。充填したルツボを、まず支持構造体の断熱性部分の上に載置したグラファイト支持プレートで取り囲み、次に多結晶質シリコンをキャストするのに用いるin−situの溶融/一方向性凝固キャスト装置中に装填した。抵抗加熱器を約1550℃に加熱することによって溶融プロセスを行い、断熱部を合計で6cm開放することによって熱を底部から放射放出させながら加熱が頂部から行われるように、加熱器を構成した。この構成によって、溶融をルツボの底部に向かう上から下への方向で進行させた。底部を通る受動冷却により、熱電対によって監視しながら、シード結晶を溶融温度において固体状態で保持した。溶融の程度は、10分毎に溶融体中に沈下させた石英浸漬ロッドによって測定した。浸漬ロッドの高さを装置内の空のルツボについて採った測定値と比較して、残りの固体材料の高さを求めた。浸漬ロッド測定によって、まず供給材料を溶融し、次にシード結晶の約1.5cmの高さしか残留しなくなるまで溶融段階を継続させた。この時点において、加熱力を1500℃の温度設定値まで低下させ、一方、断熱部分を12cmに開放することによって底部からの放射を増加させた。浸漬ロッド測定によって観察されるように、凝固が始まる前に更に1mm又は2mmのシード結晶が溶融した。次に、種付けした単結晶の成長を凝固工程の終了まで進行させた。成長段階及びキャスティングサイクルの残りは通常のパラメーターを用いて行い、ここでは、頂部から底部への熱勾配を均一にし、次にインゴット全体を室温にゆっくりと冷却した。キャストシリコン生成物は66cm×66cm×24cmのインゴットであった。シードと合致する結晶性の領域が底部において始まり、非溶融材料の端部と適合し、成長が始まるにつれてそこから横方向に外側へルツボの壁部に向かって成長し、結晶化の終了に向かって一定の寸法に安定化した。インゴットから切り出したブリックの面を視認検査することによって単結晶質シリコン構造が明らかであった。
【0110】
実施例2:
実施例1のようにして種付けを行い、大きな単結晶体積を含むインゴットをキャストした。冷却した後、インゴットをその側部を下にして立て、切り出し用の固定ダイアモンド研磨材を有するバンドソー中に装填した。インゴットの底部を、2cmの厚さを有する単一の層として切り出した。次に、この層を切断テーブル上に水平に固定した。同じバンドソー内において、約1.5cmをそれぞれの側部から除去するように層の端部を切り取った。次に、スラブをサンドブラストにかけて接着剤及び異物を除去し、その後、加熱水酸化ナトリウム浴中でエッチングし、すすぎ、HCl浴中に浸漬して金属を除去した。次に、スラブを先のインゴットと同じ寸法の標準的なルツボの底部上に配置した。シリコン供給材料を265kgの全質量に装填し、キャスティングプロセスを繰り返して第2の種付けされたインゴットを製造した。
【0111】
実施例3:
シードの製造:ルツボの底部の輪郭を描くのに用いた18kgの正方形の(100)プレートから出発してシード層を形成して、58×58cmの被覆領域及び2〜3cmの範囲の厚さを与えた。これらのプレートを一緒に、ルツボ内の中心に位置する大きな正方形に配置した。次に、この正方形を(111)配向シード結晶の厚さ2cmの層によって取り囲んで、全シード層を63cm×63cmの正方形にした。
【0112】
キャスティング:シードを含むルツボにシリコンを265kgの全質量に充填し、キャスト装置内に配置した。実施例1のようにしてキャスティングを行い、溶融の終了及び凝固の開始を通してシード層が損なわれないで残留することが確保されるようにプロセスを監視した。得られたインゴットを12.5cmのブリックの5×5グリッドに切り出した。ブリックの結晶構造の光学検査により、(111)結晶が緩衝層として作用し、ランダムに核形成された粒が(100)の体積中に入るのを抑止したことが示された。
【0113】
したがって、本発明の幾つかの態様及び上記に記載した実施例にしたがうと、シリコンは、好ましくはOSF及び/又は螺旋欠陥のような放射状に分布する欠陥を実質的に含まないか又は含まず、物体の少なくとも2つの寸法が、好ましくは少なくとも約10cm、好ましくは少なくとも約20cm、より好ましくは少なくとも約30cm、更により好ましくは少なくとも約40cm、更により好ましくは少なくとも約50cm、更により好ましくは少なくとも約60cm、最も好ましくは少なくとも約70cmである、キャストされた連続単結晶質シリコン体、キャストされた双晶シリコン体、又はキャストされたほぼ単結晶質のシリコン体であることができる。最も好ましくは、かかるシリコン体の第3の寸法は、少なくとも約5cm、好ましくは少なくとも約15cm、最も好ましくは少なくとも約20cmである。シリコン体は単一の物体としての1つの別々の片であってよく、或いは完全か又は部分的に他のシリコン内に含ませるか又はそれによって取り囲むことができる。シリコン体は、好ましくはそれぞれキャスティング容器の内部寸法と同程度の大きさである少なくとも2つの寸法を有して形成することができる。ここで開示するように、本発明の幾つかの態様を用いて、簡単でコスト的に有効なキャスティングプロセスによって単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの大きな物体を製造することができる。
【0114】
本発明の幾つかの態様にしたがうシリコンから製造されるウエハは好適に薄く、光電池において用いることができる。更に、ウエハはn−型又はp−型であることができる。例えば、ウエハは厚さ約10ミクロン〜厚さ約700ミクロンであることができる。更に、光電池において用いるウエハは、好ましくはウエハ厚さ(t)よりも大きい拡散長(Lp)を有する。例えば、tに対するLpの比は好適には少なくとも0.5である。これは例えば、少なくとも約1.1又は少なくとも約2であってよい。拡散長は、少数キャリア(例えばp−型の材料における電子)が、多数キャリア(p−型の材料における正孔)と再結合する前に拡散することができる平均距離である。Lpは関係式:Lp=(Dτ)1/2(式中、Dは拡散定数である)によって小数キャリアの寿命τに相関する。拡散長は、光子線誘導電流法又は表面光電圧法のような数多くの技術によって測定することができる。例えば、どのようにして拡散長を測定できるかの説明に関しては、A. Fahrenbruch及びR. Bubeによる"Fundamentals of Solar Cells", Academic Press, 1983, p.90-102を参照されたい。
【0115】
ウエハは約100mm〜約600mmの幅を有することができる。好ましくは、ウエハは少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有する。本発明のシリコンから製造されるウエハ、及びしたがって本発明によって製造される光電池は、例えば約50〜約3600cm2の表面積を有することができる。ウエハの前面は好ましくはテクスチャー加工する。例えば、ウエハは、化学エッチング、プラズマエッチング、又はレーザー若しくは機械的スクライビングを用いて好適にテクスチャー加工することができる。(100)極方向を有するウエハを用いる場合には、ウエハを水酸化ナトリウムのような塩基の水溶液中、昇温温度、例えば約70℃〜約90℃において、約10〜約120分間処理することによって、ウエハをエッチングして異方性テクスチャー加工された表面を形成することができる。水溶液には、イソプロパノールのようなアルコールを含ませることができる
したがって、キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し;場合によってはウエハの表面について清浄化処理を行い;場合によっては表面へのテクスチャー加工工程を行い;例えば表面をドープすることによってp−n接合を形成し;場合によっては表面上に反射防止被覆を析出させ;場合によっては例えばアルミニウム焼結工程によって背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層を形成し;そしてウエハ上に導電性接点を形成する;ことによって、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストシリコンインゴットから製造されるウエハを用いて太陽電池を製造することができる。不動態化層は、表面原子のダングリングボンドを結合させる露出ウエハ面との界面を有する層である。シリコン上の不動態化層の例としては、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、及びアモルファスシリコンが挙げられる。この層は、一般に1ミクロンよりも薄く、光に対して透明であるか、或いは反射防止層として作用する。
【0116】
例えばp−型のシリコンウエハを用いて光電池を製造するための通常の一般的な方法においては、ウエハの1つの側部を好適なn−ドーパントに曝露して、ウエハの前面又は受光側の上にエミッタ層及びp−n接合を形成する。通常は、n−型層又はエミッタ層は、まず化学析出又は物理析出のような当該技術において通常的に用いられる技術を用いてp−型のウエハの前面上にn−ドーパントを析出させ、かかる析出の後、n−ドーパント、例えばリンをシリコンウエハの前面中に導入して、n−ドーパントをウエハ表面中に更に拡散させることによって形成される。この「ドライブイン」工程は、通常、ウエハを高温に曝露することによって行う。これにより、n−型層とp−型シリコンウエハ基材との間の境界領域においてp−n接合が形成される。ウエハ表面は、リン又は他のドーピングを行ってエミッタ層を形成する前にテクスチャー加工することができる。吸光性を更に向上させるために、通常は、窒化ケイ素のような場合によって用いる反射防止被覆をウエハの前面に施し、場合によっては同時に表面及び/又はバルクの不動態化を与えることができる。
【0117】
p−n接合を光エネルギーに曝露することによって生成する電位を利用するために、光電池には、通常、ウエハの前面上に導電性前面電気接点、及びウエハの背面上に導電性背面電気接点が与えられているが、両方の接点をウエハの背面上に配することができる。かかる接点は、通常は、1以上の高電導性金属で形成され、したがって通常は不透明である。
【0118】
したがって、上記に記載の幾つかの態様にしたがう太陽電池には、放射状に分布する欠陥を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン体、双晶シリコン体、又はほぼ単結晶質のシリコン体(このシリコン体は、上記に記載したようなものであってよく、例えばそれぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する)から形成されるウエハ;ウエハ内のp−n接合、場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;好ましくは背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;並びにウエハ上の導電性接点;を含ませることができ、物体は螺旋欠陥を含まないか又は実質的に含まず、OSF欠陥を含まないか又は実質的に含まないことができる。
【0119】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者には明らかである。例えば、単結晶質シリコンの形成に関する開示されているプロセス及び方法は、双晶シリコン又はほぼ単結晶質のシリコン或いはこれらの組み合わせの形成に適用することもできる。更に、ここではシリコンのキャスティングを記載しているが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の半導体材料及び非金属結晶質材料をキャストすることができる。例えば、本発明者らは、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ヒ化ガリウムインジウム、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、酸化イットリウムバリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、及び他の半導体、酸化物、並びに液相を有する金属間化合物のような本発明の幾つかの態様にしたがう他の材料のキャスティングを意図している。本発明の他の態様は、ここで開示している発明の明細書及び実施例を考察することから当業者には明らかである。明細書及び実施例は例示のみのものとして考えられ、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年7月20日出願の米国仮出願60/951,151の利益を請求する。米国仮出願60/951,151の全ての開示は参照として本明細書中に包含する。本出願は、また、2007年7月20日出願の米国仮出願60/951,155の利益も請求する。米国仮出願60/951,155の全ての開示は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、一般には、光起電の分野、及び光起電用途のためのキャストシリコンを製造するための方法及び装置に関する。本発明は更に、光電池及び他の半導体デバイスのような器具を製造するために用いることができる新しい形態のキャストシリコンに関する。この新規なシリコンは、単結晶質、ほぼ単結晶質、又は双晶構造を有することができ、シード結晶を用いるキャスティングプロセスによって製造することができる。
【背景技術】
【0003】
光電池は光を電流に変換する。光電池の最も重要な基準の1つは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するその効率である。光電池は種々の半導体材料から製造することができるが、妥当なコストで容易に入手でき、光電池の製造において用いるための電気特性、物理特性、及び化学特性の好適なバランスを有しているので、シリコンが一般的に用いられる。
【0004】
光電池を製造するための公知の手順においては、シリコン供給材料を正又は負の導電型のいずれかを誘起させるための材料(又はドーパント)と混合し、溶融し、次に、個々のシリコン粒の粒径によって、溶融区域から結晶化シリコンを単結晶質シリコンのインゴットに引き上げる(チョクラルスキー(CZ)法又はフロートゾーン(FZ)法による)か、或いは多結晶質シリコン又はポリシリコンのブロック又は「ブリック」にキャストすることのいずれかによって結晶化させる。上記に記載の手順においては、インゴット又はブロックを、公知のスライシング又はソーイング法によって薄い基材(ウエハとも呼ぶ)に切り出す。次に、これらのウエハを光電池に加工することができる。
【0005】
光電池の製造において用いるための単結晶質シリコンは、一般に、CZ又はFZ法(いずれも結晶質シリコンの円筒形のブールが製造される方法である)によって製造される。CZ法に関しては、ブールを溶融シリコンのプールからゆっくりと引き上げる。FZ法に関しては、溶融区域を通して固体材料を供給し、溶融区域の他の側の上で再凝固させる。これらの方法によって製造される単結晶質シリコンのブールは、格子間クラスター又は欠陥クラスターの酸素誘起積層欠陥(OSF)及び「螺旋」欠陥の環のような放射状に分布する不純物及び欠陥を含む。これらの不純物及び欠陥が存在していても、単結晶質シリコンは一般に、高効率の太陽電池を製造するのに用いることができるので、光電池を製造するための好ましいシリコン源である。しかしながら、単結晶質シリコンは、上記に記載したもののような公知の技術を用いる従来の多結晶質シリコンよりも製造するのがより高価である。
【0006】
光電池の製造において用いるための従来の多結晶質シリコンは、一般にキャスティングプロセスによって製造される。従来の多結晶質シリコンを製造するためのキャスティングプロセスは、光起電技術において公知である。簡単に言うと、かかるプロセスにおいては、溶融シリコンを石英ルツボのようなルツボ内に収容し、制御された方法で冷却してその中に含まれているシリコンを結晶化させる。得られる多結晶質シリコンのブロックは、一般に、光電池を製造するために用いるウエハの寸法と同等か又はこれに近接する断面を有するブリックに切断し、ブリックをかかるウエハに切り取るか又は他の方法で切り出す。このようにして製造される多結晶質シリコンは、それから製造されるウエハ内において粒の互いに対する配向が有効にランダムである結晶粒の凝集体である。
【0007】
従来の多結晶質シリコン又はポリシリコンのいずれにおいても、粒のランダムな配向によって、得られるウエハの表面をテクスチャー加工することが困難になる。テクスチャー加工は、光の反射を減少させて電池の表面全体にわたる光エネルギー吸収を向上させることによって光電池の効率を向上させるために用いられる。更に、従来の多結晶質シリコンの粒の間の境界において形成される「キンク」は、転位のクラスター又はラインの形態の構造欠陥を核形成する傾向がある。これらの転位及びそれらが吸引する傾向を有する不純物は、従来の多結晶質シリコンから製造される機能している光電池において電荷キャリアの迅速な再結合を引き起こすと考えられる。これにより、電池の効率の低下が引き起こされる可能性がある。かかる多結晶質シリコンから製造される光電池は、一般に、公知の技術によって製造される単結晶質シリコン中に存在する放射状に分布する欠陥を考慮しても、単結晶質シリコンから製造される同等の光電池と比較してより低い効率を有する。しかしながら、従来の多結晶質シリコンの製造に関する比較的菜簡単さ及びより低いコスト、並びに電池加工における有効な欠陥の不動態化のために、多結晶質シリコンは光電池を製造するためにより広く用いられているシリコンの形態である。
【0008】
幾つかの従来のキャスティング法は、結晶成長のために「冷壁」ルツボを用いることを含んでいた。「冷壁」という用語は、ルツボの壁部上及び壁内に存在する誘導コイルが水冷されており、また、溝を有していて一般に100℃より低く保たれるという事項を指す。ルツボの壁部は、コイルと供給材料との間に非常に近接して位置させることができる。ルツボの壁部の材料はさほど断熱性ではなく、したがって冷却されたコイルと熱平衡状態に保つことができる。したがって、ルツボ内のシリコンを誘導加熱することは、誘起されてその中へ流れる電流によって直接シリコンを加熱することを意味するので、シリコンの加熱はルツボの壁部からの放射に基づかない。このように、ルツボの壁部はシリコンの溶融温度よりも低く保たれ、溶融シリコンに対して「冷たい」とみなされる。誘導加熱された溶融シリコンの凝固中においては、ルツボのこれらの冷壁が熱シンクとして作用する。インゴットは迅速に冷却され、これは冷壁に対する放射によって定まる。したがって、初めの凝固前面は速やかに実質的に湾曲し始め、結晶核形成がインゴットの側部において起こり、インゴットの中心に向かって対角方向に成長し、垂直方向に幾何学的に整列した種付けプロセス又は実質的に平坦な凝固前面を保持することへの試みが混乱する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
幾つかの態様によれば、本発明は、シード結晶を用いてキャストシリコンを製造する方法及び装置に関する。通常、異なる配向のシリコン結晶は、シリコンインゴットの凝固中において異なる速度で成長する。シリコン単結晶太陽電池の製造のために望ましい配向は、エッチングプロセスを用いて光捕捉面を簡便に形成するという理由で、(100)方向である。残念なことに、(100)方向の粒は、ランダムに核形成された粒と競合する結晶化中、例えば他の配向の粒がより迅速に成長する単結晶キャスティングプロセス中において良好に機能しない。
【0010】
幾つかの態様によれば、及びインゴット内の種付けされた結晶の体積を最大にするために、(111)方向のシリコンの境界によって(100)方向のシード領域を取り囲む。この境界は他の結晶方位に対して非常に首尾よく競合する。このようにして、高効率太陽電池において用いるために得られるウエハの小数キャリアの寿命を最大にする、単結晶及び/又は双晶ブリックとして高く機能するインゴットをキャストすることができる。
【0011】
ここで用いる「単結晶質シリコン」という用語は、全体にわたって1つの一貫した結晶方位を有する単結晶シリコン体を指す。更に、通常の多結晶質シリコンは、センチメートルスケールの粒径分布を有し、複数のランダムに配向されている結晶がシリコン体内に配置されている結晶質シリコンを指す。
【0012】
更に、ここで用いる「ポリシリコン」という用語は、ミクロンオーダーの粒径、及び与えられたシリコン体内に配置されている複数の粒方位を有する結晶質シリコンを指す。例えば、粒は、通常は平均でおよそサブミクロン乃至およそサブミリメートルの寸法であり(例えば、個々の粒は裸眼では視認できない)、粒方位は全体にわたってランダムに分布している。
【0013】
更に、ここで用いる「ほぼ単結晶質のシリコン」という用語は、物体の50体積%より多い量にわたって1つの一貫した結晶方位を有する結晶質シリコン体を指し、例えばかかるほぼ単結晶質のシリコンは多結晶質領域に隣接する単結晶シリコン体を含むか、又は他の結晶方位のシリコンのより小さい結晶を部分的か又は全体で含むシリコンの大きな隣接して一貫する結晶を含んでいてよく、より小さい結晶は全体積の50%より多い量を構成しない。好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の25%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。より好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の10%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。更により好ましくは、ほぼ単結晶質のシリコンは、全体積の5%より多い量を構成しないより小さな結晶を含んでいてよい。
【0014】
更に、ここで用いる「双晶シリコン」という用語は、物体の50体積%以上に関して全体にわたって1つの一貫した結晶方位、及び物体の体積の残りに関して他の一貫した結晶方位を有するシリコン体を指す。例えば、かかる双晶シリコンは、結晶質シリコンの体積の残りを構成する異なる結晶方位を有する他の単結晶シリコン体に隣接する1つの結晶方位を有する単結晶シリコン体を含んでいてよい。好ましくは、双晶シリコンは同じシリコン体内にそれらの結晶方位においてのみ異なる2つの別個の領域を含んでいてよい。
【0015】
しかしながら、ここで用いる「幾何学的に配列されている多結晶質シリコン」(以下においては「幾何学的多結晶質シリコン」と略称する)という用語は、本発明の幾つかの態様による、多重配向結晶がシリコン体内に配置されている幾何学的に配列されたセンチメートルスケールの粒径分布を有する結晶質シリコンを指す。例えば、幾何学的多結晶質シリコンにおいては、それぞれの粒は通常は約0.25cm2〜約2,500cm2の寸法の平均断面積、及びシリコン体と同程度の大きさであってよい高さを有し、例えば高さは断面の面に直交するシリコン体の寸法と同等の大きさであってよく、幾何学的多結晶質シリコン体内の粒方位は所定の配向にしたがって制御される。幾何学的多結晶質シリコンの粒の高さ又は長さに直交する粒の断面の形状は、通常は、その上に形成されるシード結晶又はシード結晶の一部の形状と同じである。好ましくは、粒の断面の形状は多角形である。好ましくは、多角形の粒の角部は3つの異なる粒の接合部に対応する。幾何学的多結晶質シリコン体内のそれぞれの粒は、好ましくは粒全体にわたって1つの隣接して一貫する結晶方位を有するシリコンを含むが、1以上の粒は、少量の異なる方位のシリコンのより小さな結晶を含んでいてもよい。例えば、かかる粒のそれぞれは部分的か又は全体的に他の結晶方位のシリコンのより小さな結晶を含んでいてよく、かかるより小さな結晶は、粒の全体積の25%より多い量、好ましくは粒の全体積の10%より多い量、より好ましくは粒の全体積の5%より多い量、更により好ましくは粒の全体積の1%より多い量、更により好ましくは粒の全体積の0.1%より多い量を構成しない。
【0016】
具現化され広範に記載された本発明によれば、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内に、溶融シリコンをシード結晶のパターンと接触させて配置し;ここで、パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;そして、単結晶質シリコンの領域を含み、場合によってはそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する固形体を形成する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、また、シリコン供給材料を、少なくとも1つの表面上において、単結晶質シリコンを含むシリコンシード結晶のパターンと接触させて配置し;ここで、パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;シリコン供給材料及びシリコンシード結晶のパターンをシリコンの溶融温度に加熱し;ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後で、シリコンシード結晶のパターンが部分的に溶融したら、加熱を制御してシリコンシード結晶のパターンが完全には溶融しないようにし、ここで、制御工程はルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを含み;シリコンを冷却することによって単結晶質シリコンを含む固形体を形成する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、また、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する双晶シリコン体が提供される。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、また、約2×1016原子/cm3〜約5×1017原子/cm3の炭素濃度、5×1017原子/cm3を超えない酸素濃度、少なくとも1×1015原子/cm3の窒素濃度を有し、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する双晶シリコン体が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体が提供される。
本発明の更なる態様によれば、また、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるウエハ;ウエハ内のp−n接合;場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;場合によっては背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;及び、ウエハ上の導電性接点;を含む太陽電池が提供される。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体から形成されるウエハ;ウエハ内のp−n接合;場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;場合によっては背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;及び、ウエハ上の導電性接点;を含む太陽電池が提供される。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体から形成される、少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有する連続双晶シリコンウエハ;ウエハ内のp−n接合;場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;場合によっては背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;及び、ウエハ上の導電性接点;を含む太陽電池が提供される。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、また、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるシリコンを含むウエハが提供される。
【0024】
本発明の更なる態様によれば、また、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続キャスト双晶シリコン体から形成されるシリコンを含む、少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有するウエハが提供される。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、また、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内に、溶融シリコンを少なくとも1つのシリコンシード結晶と接触させて配置し;そして溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することによって、場合によってはそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する双晶シリコンの固形体を形成することを含み、ここで形成工程は、少なくとも初めは冷却のための少なくとも1つの壁部と平行である溶融シリコンの端部における固/液界面を形成し、界面を、冷却中において、溶融シリコンと冷却のための少なくとも1つの壁部との間の距離を増加させる方向に移動させるように制御することを含む、キャストシリコンの製造方法が提供される。
【0026】
本発明の更なる態様によれば、また、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁を有する容器内に、溶融シリコンを容器の表面の全領域又は実質的に全ての領域を覆うように配列されている少なくとも1つのシリコンシード結晶と接触させて配置し;そして溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することによって、場合によってはそれぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法を有する双晶シリコンの固形体を形成する;ことを含む、キャストシリコンの製造方法が提供される。
【0027】
本発明の更なる特徴及び有利性を以下の説明において示すが、これらは記載から明らかであるか、或いは本発明の幾つかの態様の実施によって教示される。本発明の特徴及び他の有利性は、明細書及び特許請求の範囲並びに添付の図面において特に示されている半導体装置の構造並びに製造方法及び装置によって理解及び達成される。
【0028】
本発明によれば、また、ルツボの内側壁を剥離コートで被覆し、底壁を未被覆のままにし;シリコンシード結晶を未被覆の壁部と接触させて配置し;シリコン供給材料をルツボ内に配置し;シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながら供給材料を溶融し;シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを第1の温度にし;そして、シリコンを第2の温度に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0029】
本発明によれば、また、先にキャストしたインゴットをスラブにスライスし;スラブを化学的に処理して不純物を除去し;スラブをシード層として用いるためにルツボ内に配置し;次にルツボにキャスティングのための供給材料を充填する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0030】
本発明によれば、また、層の中心領域におけるシード結晶が表面に直交する1つの結晶極方向を有し、層領域の約50%〜約99%を覆い、一方、層の端部上の残りのシード結晶が表面に直交する少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの層領域を覆うように、単結晶質シリコンシード結晶の層をルツボの少なくとも1つの表面上に配置し;供給材料シリコンを加え、供給材料及びシード層の一部を溶融状態にし;シード層を通して熱を引き抜くことによってシリコンを凝固させ;シリコンを所定の例えば均一の第1の温度にし、次にシリコンを均一な第2の温度に好ましくは均一に冷却する;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0031】
本発明によれば、また、少なくとも約10cm×約10cmの面積を有する少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に載置されているルツボの底面上に配置し;固体又は液体のシリコン供給材料及び部分的に溶融するシード結晶を導入し;凸状の固体境界によって単結晶質成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜き;シリコンを第1の温度にし、それを第2の温度に好ましくは均一に冷却し;シード結晶と反対側のキャストシリコンの側部からスラブを切り出し;化学プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして、大きなスラブをその後のキャスティングプロセスのための新しいシード層として用いる;ことを含むキャストシリコンの製造方法が提供される。
【0032】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示及び説明であり、特許請求する発明の更なる説明を与えるように意図されることを理解すべきである。本発明は、また、ここで記載し特許請求する方法によって製造されるシリコン、並びにかかるシリコンから製造されるウエハ及び太陽電池も包含する。
【0033】
本明細書に含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一態様によるルツボの底面上のシリコンシードの代表的な配列を示す。
【図2】図2は、本発明の一態様によるルツボの底面上のシリコンシードの代表的な配列を示す。
【図3】図3は、単一の結晶方位を有するシード結晶を用いたキャストインゴットの断面を示す。
【図4】図4は、本発明の一態様による、一部のシード結晶が1つの結晶方位を有し、一部のシード結晶が他の結晶方位を有するシード結晶を用いたキャストインゴットの断面を示す。
【図5】図5は、本発明の一態様による代表的な方法を示す。
【図6A】図6Aは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6B】図6Bは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6C】図6Cは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6D】図6Dは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6E】図6Eは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6F】図6Fは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図6G】図6Gは、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図7】図7は、本発明の幾つかの態様による単結晶質又は双晶シリコンに関する代表的なキャスティングプロセスを示す。
【図8】図8は、本発明の一態様による、部分的に被覆されているルツボ中に装填したシリコン供給材料の例を示す。
【図9】図9は、本発明の一態様によるシード層材料を再生利用する方法の例を示す。
【図10】図10は、本発明の一態様による、シード層を形成するための単結晶シリコンの代表的な配列を示す。
【図11】図11は、本発明の一態様による、大きな単結晶シード層を生成させるための代表的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで本発明の幾つかの態様を詳細に説明し、その幾つかの例を添付の図面において示す。可能な限り、同じか又は類似の部品を示すために同じか又は同様の参照番号を図面全体にわたって用いる。
【0036】
本発明にしたがう幾つかの態様においては、溶融シリコンの結晶化は1以上のシード結晶を用いるキャスティングプロセスによって行う。ここで開示するように、かかるキャスティングプロセスは、結晶化シリコンのキャスト体における結晶粒の寸法、形状、及び配向を制御するように行うことができる。ここで用いる「キャスト」という用語は、溶融シリコンを保持するために用いる型又は容器内で溶融シリコンを冷却することによってシリコンを形成することを意味する。溶融シリコンのような液体はその中にそれが配置される容器の形状をとるので、ここでは溶融シリコンの冷却を型又は容器内だけでなく任意の手段によって溶融シリコンを閉じ込めながら行うこともできることも意図される。一例として、シリコンはルツボ内で凝固させることによって形成することができ、ここでは凝固は、溶融体中に導入される冷却された外部物体を通してではなく、ルツボの少なくとも1つの壁部から始まる。ルツボは、カップ、シリンダー、又はボックスのような任意の好適な形状を有していてよい。したがって、本発明による溶融シリコン結晶化プロセスは、ブール又はリボンを「引き出す」ことによっては制御されない。更に、本発明の一態様にしたがうと、型、容器、又はルツボは、溶融シリコンと接触する少なくとも1つの「加熱側壁」面を含む。ここで用いる「加熱側壁」という用語は、それが接触する溶融シリコンと等温か又はこれよりも熱い表面を指す。好ましくは、加熱側壁面はシリコンの加工中において固定して保持される。
【0037】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、結晶化シリコンは、連続単結晶質、ほぼ単結晶質のシリコン、連続双晶、又は制御された粒方位を有する連続幾何学的多結晶質のいずれかであってよい。ここで用いる「連続単結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が単結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない単結晶シリコンを指す。更に、ここで用いる「連続幾何学的多結晶質シリコン」という用語は、シリコン体が幾何学的多結晶質シリコンの1つの均一な物体であり、一緒に結合してシリコンのより大きな片を形成するシリコンのより小さな片ではない幾何学的多結晶質シリコンを指す。更に、ここで用いる「連続双晶」という用語は、全体にわたって2つの結晶方位のみを有し、一緒に結合して双晶を形成する単結晶質シリコンの別々の片ではない双晶シリコンの均一な物体を指す。
【0038】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、結晶化は、結晶質シリコンの「シード」の所望の一群を、例えば溶融シリコンを保持することができる石英ルツボのような容器の底部内に配置することによって行うことができる。ここで用いる「シード」という用語は、所望の結晶構造を有し、好ましくは少なくとも1つの断面が幾何学的、好ましくは多角形の形状を有し、好ましくはそれをその中に配置することができる容器の表面に合致する側部を有する好ましい幾何学的形状のシリコンの片を指す。かかるシードは、シリコンの単結晶質の片か、又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの片、例えば単結晶質シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られるスラブ又は水平切片のいずれかであってよい。本発明にしたがうと、シードは、その底面と平行な頂面を有していてよいが、必ずしもそうでなくてもよい。例えば、シードは寸法が直径で約2mm〜約3000mmで変化するシリコンの片であってよい。例えば、シードは直径で約10mm〜約1000mmであってよい。シリコンの片は、約1mm〜約1000mm、好ましくは約5mm〜約50mmの厚さを有していてよい。シードの好適な寸法及び形状は簡便性及びタイリングを得るように選択することができる。タイリングは、以下により詳細に説明するが、シリコンシード結晶を例えばルツボの底面又は1以上の側面及び底面にわたって所定の幾何学的配向又はパターンで配列することである。1つ又は複数のシードが、それらが配置される箇所に隣接する全ルツボ表面を覆い、それにより種付けされた結晶の成長凝固前面がシードから離れる方向に移動した場合に、ルツボの断面の全寸法を一貫した幾何学的結晶として保持することができることが好ましい。
【0039】
次に、好ましくは、溶融シリコンの結晶化が固体のシードの元の頂部のレベルか又はこれより下のレベルで開始し、シードから離れる方向、好ましくは上向きに離れる方向に進行するように溶融シリコンの冷却が行われるように、溶融シリコンをシードの存在下で冷却及び結晶化させる。溶融シリコンの端部における固/液界面は、好ましくは初めは、その中でそれがキャストされる容器の冷却面、例えばルツボ内の表面と合致する。本発明の幾つかの態様によれば、溶融シリコンと結晶化シリコンとの間の液/固界面は、一部、例えば凝固段階の開始部分、又はキャスティングプロセスの全部にわたって実質的に平坦に保持することができる。本発明の一態様においては、溶融シリコンのそれぞれの端部における固/液界面は、冷却中に、好ましくは実質的に平坦な固/液界面を保持しながら溶融シリコンとルツボの冷却面との間の距離が増加する方向に移動するように制御する。
【0040】
したがって、本発明にしたがうと、凝固前面は容器の冷却面の形状と平行にすることができる。例えば、平坦な底部のルツボを用いると、凝固前面を実質的に平坦に保持することができ、固/液界面は制御されたプロファイルを有する。固/液界面は、それが端から中心に移動するにつれて湾曲の半径が減少するように制御することができる。また、固/液界面は、容器の幅の少なくとも半分の湾曲の平均半径を保持するように制御することができる。更に、固/液界面は容器の幅の少なくとも2倍の湾曲の平均半径を保持するように制御することができる。固体は、容器の幅の少なくとも約4倍の湾曲の半径を有する僅かに凸状の界面を有することができる。例えば、固/液界面は、0.7m平方のルツボにおいては一般に2mよりも大きく、ルツボの水平寸法の2倍より大きく、好ましくはルツボの水平寸法の約8倍〜約16倍の湾曲の半径を有することができる。
【0041】
本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cmであり、例えば側部において少なくとも約20cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cmであり、例えば側部において少なくとも約30cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cmであり、例えば側部において少なくとも約35cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cmであり、例えば側部において少なくとも約40cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cmであり、例えば側部において少なくとも約50cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cmであり、例えば側部において少なくとも約60cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cmであり、例えば側部において少なくとも約70cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。
【0042】
本発明の幾つかの態様にしたがって製造されるキャストシリコンのインゴットの水平方向の寸法の上限は、キャスティング技術及びルツボ製造技術によってのみ決定され、本発明方法それ自体によっては決定されない。少なくとも1m2で4〜8m2以下の断面積を有するインゴットを本発明にしたがって製造することができる。同様に、インゴットの高さの上限は、より長いサイクル時間と関係する可能性があり、キャスティングプロセスの原理とは関係しない。約50cm〜約80cm以下のインゴットの高さが可能である。したがって、本発明にしたがうと、連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を、約66cm×66cmの断面にうまく成長させることができ、連続単結晶質シリコンの長方形の固体片は体積が少なくとも33,750cm3である。更に、本発明にしたがうと、好ましくはそれぞれキャスティング容器の内部寸法と同程度の大きさである少なくとも2つの寸法、及びインゴットと同等の高さである第3の寸法を有するキャストされた連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。例えば、シリコンのキャスト体が立方体形又は直方体形の固体である場合には、これらの上記の寸法は、かかる物体の長さ、幅、及び高さに関する。
【0043】
本発明の幾つかの態様にしたがうように溶融シリコンの結晶化を行うことにより、ランダムではなく特定の粒界及び特定の粒径を有するキャストシリコンを製造することができる。更に、全てのシードが互いに同じ相対方向に配向し、例えば(100)極方向がルツボの底面に直交し、(110)極方向が長方形又は正方形の断面のルツボの側面の1つに平行になるように1つ又は複数のシードを整列させることにより、かかるキャストシリコンの極方向が1つ又は複数のシードのものと同じである単結晶質シリコン又はほぼ単結晶質のシリコンである大きなキャストシリコン体を得ることができる。同様に、他の極方向はルツボの底面に直交していてよい。更に、複数のシードの配列は、ルツボの底面に直交する1以上の極方向を有していてよい。例えば、配列には、ルツボの底面に直交する1つの極方向を有するシードの中心部分、及び中心部分を取り囲み、ルツボの底面と直交する他の極方向を有するシードの他の「保護」部分を含ませることができる。更に、本発明の一態様にしたがうと、1つ又は複数のシードを、任意の1つの共通の極方向又は任意の2つの共通の極方向がルツボの底面に直交するように配列させることができる。
【0044】
例えばCZ又はFZ法にしたがって溶融シリコンのプールから円筒形のブールを引き上げる従来の方法によって単結晶質シリコンを製造する場合には、得られる単結晶質シリコンは、螺旋欠陥(空格子点及び自己格子間原子のような固有の欠陥から形成される)及びOSF環状欠陥のような放射状に分布する不純物及び欠陥を含む。螺旋欠陥は、単数形又はクラスター形のいずれかの格子間シリコン原子又は空格子点である。かかる螺旋欠陥はX線トポグラフィーによって検出することができ、シリコン内の「螺旋」として現れる。これらは、また、欠陥観察のためにシリコンを選択的酸エッチングした後に検出することもできる。
【0045】
従来のCZ又はFZ法によれば、シリコン内の酸素原子及びかかる酸素原子によって引き起こされるシリコン内の欠陥の分布は放射状に位置する。これは、これらが中心軸に関して対称の環状、螺旋状、又は縞状に配列される傾向を有することを意味する。OSF環状欠陥はこれの特定の例であり、ナノメートルスケールの酸素沈殿物がシリコンの引き上げられた単結晶質インゴット又はブール内に円筒の帯状の積層欠陥を核形成して、かかるシリコンから製造されるウエハ上に環状の欠陥帯を与える。かかる帯は選択的酸エッチングの後のシリコン試料において観察することができる。
【0046】
螺旋欠陥及びOSF環状欠陥のいずれも、例えば従来のCZ又はFZ法によれば、引き上げプロセスの回転対称性、軸方向の熱勾配、及びプロセスに固有の回転のために、溶融シリコンのプールから円筒形のブールを引き上げることによって単結晶質シリコンのブールにおいて起こる。一方、本発明の幾つかの態様によるキャスティングプロセスによれば、かかる螺旋欠陥及びOSF環状欠陥を示さないシリコンを製造することができる。これは、円筒対称性を有しないシリコン体において、及び等温線が凝固及び冷却プロセス全体にわたってインゴット全体で実質的に平坦であるプロセスにおいて、キャスティングプロセス中の欠陥の取り込みを、回転によって影響を受けない成長界面において実質的にランダムに分布させることができるためである。
【0047】
異なる方法によって成長させたシリコン中の軽質元素不純物の濃度に関しては、表1において示す下記のレベルが特徴的であると広く考えられる。
【0048】
【表1】
【0049】
CZインゴット片は、5×1017原子/cm3程度の低さ(しかしながらこれよりは低くない)の酸素を有するように製造することができる。炭素及び窒素濃度は、FZ及びCZインゴットにおいては意図的なドーピングによって増加させることができるが、ドーピングはこれらの技術における固体溶解度限界を超えず(キャスト材料と同様)、ドープされたインゴットは直径が20cmより大きい寸法では製造されなかった。これに対し、キャストインゴットは、通常は、剥離コート及び炉の加熱区域のデザインのために炭素及び窒素が過飽和状態である。結果として、液相の核形成及び成長のために、沈殿した窒化物及び炭化物があちこちに存在する。更に、本発明の幾つかの態様によれば、上記に報告された不純物レベルを有し、50×50×20cm3及び60×60×5cm3程度の大きさの寸法を有するキャスト単結晶インゴットが製造された。これらの寸法は例示のみのものであり、本発明のキャスティングプロセスに関する上限とはみなされない。
【0050】
例えば、不純物レベルに関しては、約1〜5×1017原子/cm3(約1×1017原子/cm3〜約5×1017原子/cm3を示す)の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度が、本発明によるシリコンキャストにおいて好ましい。本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cm、例えば側部において少なくとも約20cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cm、例えば側部において少なくとも約30cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cm、例えば側部において少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cm、例えば側部において少なくとも約40cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cm、例えば側部において少なくとも約50cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cm、例えば側部において少なくとも約60cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cm、例えば側部において少なくとも約70cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、好ましくはキャストされている単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。
【0051】
本発明の幾つかの態様によれば、好ましくはそれぞれ少なくとも約20cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。好ましくは、それぞれ少なくとも約30cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。より好ましくは、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約10cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約40cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約50cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約60cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。更により好ましくは、それぞれ少なくとも約70cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有し、約1〜5×1017原子/cm3の溶解炭素濃度、約2〜3×1017原子/cm3の溶解酸素濃度、及び約1〜5×1015原子/cm3の溶解窒素濃度を有する、放射状に分布する欠陥及び/又は不純物を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができる。
【0052】
本発明の幾つかの態様にしたがって製造され、上記に示す不純物濃度を有するキャストシリコンのインゴットの水平方向の寸法の上限は、キャスティング技術及びルツボ製造技術によってのみ決定され、本発明方法それ自体によっては決定されない。したがって、本発明にしたがうと、上記に示す不純物濃度を有し、好ましくはそれぞれキャスティング容器の内部寸法と同程度の大きさである少なくとも2つの寸法、及びインゴットと同等の高さである第3の寸法を有するキャストされた連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体を形成することができる。例えば、シリコンのキャスト体が立方体形又は直方体形の固体である場合には、これらの上記の寸法は、かかる物体の長さ、幅、及び高さに関する。
【0053】
本発明の幾つかの態様にしたがうと、キャスティングプロセスのために用いる1つ又は複数のシードは、任意の所望の寸法及び形状のものであってよいが、好適には、シリコンの正方形、長方形、六角形、偏菱形、又は八角形の片のような単結晶質シリコン、双晶シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、又は幾何学的に配列された多結晶質シリコンの幾何学的形状の片である。これらはタイリングに対して伝導性に形成して、端から端まで且つルツボの底部に適合させて所望のパターンで配置又は「タイリング」することができる。また本発明の幾つかの態様にしたがうと、シードをルツボの1以上(全てを含む)の側部上に配置することができる。かかるシードは、例えば単結晶質シリコンのブールのような結晶質シリコンの源を所望の形状を有する片に切り出すことによって得ることができる。またシードは、その後のキャスティングプロセスにおいて用いるためのシードを初めのキャスティングプロセスから製造することができるように、本発明の幾つかの態様によるプロセスによって製造される連続単結晶質シリコン、連続双晶シリコン、ほぼ単結晶質のシリコン、又は連続幾何学的多結晶質シリコンのいずれかの試料からそれらを切り出すことによって形成することもできる。したがって、例えば連続単結晶質、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる連続単結晶質、連続双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンのいずれかのスラブを、その後のキャスティングのためのテンプレートとして機能させることができる。かかる1つ又は複数のシード結晶は、その中にシードが配置されるルツボ又は他の容器の底部のような一面の寸法及び形状であるか又は実質的にかかる寸法及び形状にすることができる。単結晶質キャスティングの目的のためには、欠陥の取り込みを防ぐために可能な限り少量のシードでルツボの底部を覆うことが好ましい。単結晶質キャスティングの目的のためには、また、(100)及び(111)のような2つの異なる結晶方位を有するシードの所定の配列によってルツボの底部を覆うことも好ましい。好ましくは、シード結晶の配列には、ルツボの底面に直交する(100)極方向を有するシードの中心部分、及びルツボの底面に直交する(111)極方向を有し、中心部分を取り囲むシードの他の「保護」部分を含ませることができる。したがって、1つ又は複数のシードは、その中に1つ又は複数のシードを配置して本発明によるキャスティング方法を行うルツボ又は他の容器の底部のような1以上の面の寸法及び形状、又は実質的にかかる寸法及び形状であってよい。
【0054】
ここで、本発明の特定の態様にしたがってシリコンを製造するための方法及び装置を説明する。しかしながら、これらは本発明の原理にしたがってシリコンを形成する唯一の方法ではないことを理解すべきである。
【0055】
図1を参照すると、シード100を、石英ルツボのような底部及び壁部を有するルツボ110の底部に、いずれも大きな連続的に配向されているスラブ120を形成するように同じ配向で密に接するように配置する。或いは、これらは、製造される得られるシリコンにおいて意図的に選択された粒径を有する特定の粒界を形成するように予め選択された不整配向で密に接触させる。
【0056】
例えば、幾何学的多結晶質シリコンをキャストするためには、得られる結晶化された幾何学的多結晶質シリコンの断面粒径及び好ましくは断面形状はシードと同等か又はこれに近似し、粒の高さは断面に直交するシリコンの寸法と同等の長さであってよい。幾何学的多結晶質シード結晶、例えば幾何学的多結晶質シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる幾何学的多結晶質シリコンのスラブを、幾何学的多結晶質シリコンをキャストするための1つ又は複数のシード結晶として用いる場合には、得られる幾何学的多結晶質シリコンの粒の断面粒径及び好ましくは断面形状は、1つ又は複数の幾何学的多結晶質シードにおける粒に近似する。したがって、幾何学的多結晶質シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる幾何学的多結晶質シリコンのスラブを「幾何学的多結晶質シリコンシード結晶」(「幾何学的に配列された多結晶質シリコンシード結晶」とも呼ぶ)とすることができ、その後の幾何学的多結晶質シリコンのキャスティングのためのテンプレートとして機能させることができる。かかるシード結晶は、その中にシードが配置されるルツボ又は他の容器の底部のような一面の寸法及び形状であるか又は実質的にかかる寸法及び形状であってよい。かかるシード結晶を本発明方法において用いる場合には、得られる幾何学的多結晶質シリコンは、好ましくはシードにおける粒と同等か又は実質的に同等の断面寸法及び形状を有する結晶粒を有する。
【0057】
シード100はタイリングすることができ、好ましくはルツボ110の底部全体を実質的に覆うように配置する。また、ルツボ110がシリカ、窒化ケイ素、又は液体カプセル封入剤から製造されるもののような、ルツボ110からの結晶化シリコンの取り出しを助ける剥離コートを有することが好ましい。更に、シードは、厚さ約3mm〜約100mmの1つの所望の結晶方位又は2つの異なる所望の結晶方位の単結晶質シリコンの1つ又は複数のスラブを含んでいてよい。図1においては特定の数及び寸法のシード100を示すが、シードの数及び寸法のいずれも用途に応じて増加又は減少させることができることは当業者に容易に認められる。
【0058】
図2を参照すると、二者択一の配列のシード300及び310の平面図が示される。図2においては、シード300及び310を、図1に示されるルツボ110のような底部及び壁部を有するルツボ(図示せず)の底部に、2つの異なる結晶方位で密に接して底部及び壁部を有するルツボの底面の全幅320を覆うか又はほぼ完全に覆うように配置する。本発明にしたがうと、シード300及び310は単結晶シリコン片であってよい。好ましくは、シード300は(100)結晶方位を有し、一方、シード310は(111)結晶方位を有していて、それらのそれぞれの極方向がルツボ110の底面に直交するようになっていてよい。図2において示すように、一連の(111)シード310は一連の(100)シード300を取り囲むように選択的に配置する。(111)結晶方位は低エネルギーの成長前面を与えると考えられているので、図2においてはルツボ110の底面に直交する(111)極方向を有するシード310を示しているが、シード310に関して他の結晶方位が可能である。好ましくは、シード300はシード310と異なる結晶方位を有する。図2においては特定の数及び寸法のシード300及び310を示しているが、シードの数、寸法、及び結晶方位を用途に応じて変化させることができることは当業者に容易に認められる。例えば、シード結晶300及び310の2つの組の1つが単結晶質シリコンの単一のスラブであってよい。即ち、シード300は単結晶質(100)シリコンの単一のスラブであってよく、一連の(111)シード310又はこれらの任意の他の組み合わせによって取り囲んでルツボ110の底面を覆うことができる。かかる具体的に選択されたシードの配列及びしたがって粒界を有するシリコンを製造する場合には、好ましくは、粒界の接合部は与えられた角部において接する3つの粒界のみを有し、これは図2のシード結晶配列において示される。したがって、シード300をルツボの底面上に配置することができ、シード310をシード300によって占められていないルツボの底部の周縁領域上に配置することができる。シード300及び310を用いるシリコンキャスティングによって製造されるインゴットを、図3、4、及び6Gを参照して以下に説明する。
【0059】
図1〜2において開示するシードのレイアウト(又はパターン)にしたがうと、例えば、次にシリコン供給材料(図示せず)をルツボ110中のシード100、300、及び/又は310の上に導入し、次に溶融することができる。また、溶融シリコンをルツボ110中に注ぎ入れることができる。他の例においては、ルツボ110をまずシリコンの溶融温度に非常に近い温度か又はそれ以下の温度にすることができ、次に溶融シリコンを注ぎ入れる。本発明の幾つかの態様にしたがうと、凝固が始まる前にシードの薄層を溶融することができる。
【0060】
次に、上記で議論した任意の例においては、例えば熱を周囲に放射する固体の熱シンク材料によって、ルツボ110を冷却し、それによってルツボ110の底部(及びシードが側面上にもタイリングされている場合に限り側部)から熱を除去し、一方、ルツボ110の開放頂部には熱を未だ加える。したがって、シードを固体として保持しながら溶融シリコンを導入し、溶融体の指向性凝固によって円柱状の粒の上方向への成長を引き起こす。このようにして、得られるシリコンのキャストインゴットはシリコンシード100又は300及び310の結晶方位に似るようになる。得られるインゴットは、例えば水平のスラブに切り出して、他のキャスティングプロセスのためのシード層として作用させることができる。スラブは、例えば、キャスティングのために用いるルツボ又は他の容器の底面のような表面の寸法及び形状を有するか又は実質的にかかる寸法及び形状を有していてよい。例えば、かかるスラブの1つだけをキャスティングプロセスのために用いることができる。したがって、シリコンのキャストインゴットの得られる結晶構造に特定の影響を与え、究極的には制御するように、シリコンを形成するのに用いるルツボ内でのシード結晶の配向を選択することができる。
【0061】
本発明の幾つかの態様とは異なり、公知のキャスティングプロセスは、多結晶質粒を制御せずにシリコンの完全に溶融した塊からの指向性凝固によってキャストすることを含む。得られる粒は、基本的にランダムの配向及び寸法分布を有する。ランダムな粒方位により、シリコンウエハを有効にテクスチャー加工することが困難になる。更に、通常の成長技術の自然の産物である粒界における「キンク」は、転位のクラスター又はラインなどの構造欠陥を核形成する傾向があることが示されている。これらの転位及びそれらが吸引する傾向を有する不純物は、電荷キャリアの迅速な再結合を引き起こし、光起電材料としての特性を低下させる。したがって、本発明の一態様にしたがうと、構造欠陥を最小にしながら小数キャリアの寿命及び不純物ゲッタリングを最大にするように粒の寸法、形状、及び配向が明確に選択されるように、単結晶質シリコン又は双晶シリコンのいずれかをキャスティングするための規則粒界ネットワークの注意深いプランニング及び種付けが達成される。
【0062】
個々のシード100、又は300及び310を配置することに代わる方法においては、複数の単結晶質シード結晶を用いる代わりに、単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの先のキャスティングにおいて製造されたインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られるシリコンの切片又はスラブを、本発明による単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンをキャストするための単一のシード結晶として用いることができる。かかる単一のシード結晶は、キャスティングを行うために用いられるルツボ又は他の容器の表面と同じ寸法及び形状であるか又は実質的に同じ寸法及び形状であってよい。例えば、図2において示されるシードのレイアウト又はパターンを用いて形成されるシリコンのキャストインゴットから採られる単一のシード結晶をその後のキャスティングプロセスのために用いることができる。また、上記で議論した任意のシードの配列は、単結晶質シリコンの固形体、双晶シリコンの固形体、又はほぼ単結晶質のシリコンの固形体のいずれかをキャストするための態様にも適用することができ、ここではシード結晶をルツボの底面、又は底面及び側面の両方の上にそのように配置する。
【0063】
図3を参照すると、キャストシリコンのインゴット400を凝固させた後のルツボ110の中央部を通る縦断面が示されている。図3中のA−A線の平面は、図2において示すシードのレイアウト又はパターンに対応する。図3において示す例においては、図2の平面図において示すようにルツボ110の底面上に(100)シード300を配置し、但し(100)シード300を取り囲んで(111)シードを配置しない。この例においては、得られるシリコンのインゴット400は、キャスティングプロセスの凝固段階中に異なる粒方位の結晶成長を行うための多数の核形成部位として働かせることができるルツボの表面と接触する。例えば、ルツボ110の湾曲する角部410を多結晶質シリコン領域420の成長のための核形成部位として働かせることができ、その成長は(100)シード300からの(100)単結晶質シリコン領域430の核形成及び成長と競合する。キャスティング中においては、多結晶質シリコン領域420はシード300上に侵入し、得られるインゴット400は一部が単結晶質シリコンで一部が多結晶質シリコンである。(100)単結晶質シリコン領域430と多結晶質シリコン領域420との間の区分は線440によって示され、これは多結晶質シリコン領域420がどのように角部410におけるその核形成部位から外側へ成長するかを示す。したがって、(100)単結晶質シリコン領域430の核形成及び成長は、例えばルツボ110の側壁からのランダムに配向された粒の競合する横方向の粒成長のために減退する。
【0064】
更に図3を参照すると、キャスティングが完了した後、得られるキャストシリコンのインゴット400を、5列のブリック450及び2つの側プレート460に切り出す。側プレート460は、通常は多結晶質シリコンであり、キャスティング中に拡散するルツボ110の壁部からの不純物を含む可能性がある。したがって、側プレート460を取り除き、その後のキャスティングプロセスのための供給材料として用いることができる。(100)単結晶質シリコンのキャスティングが所望の場合には、図3に示す5つのブリック450の3つのみが(100)単結晶質シリコンを含む。2つのブリック450及び両方の側プレート460は、多結晶質シリコンのみ、或いは線440がそれを通って横切っているブリック450によって示されるように多結晶質シリコンと単結晶質シリコンの組み合わせを含む。したがって、インゴット400における(100)単結晶質シリコン領域430の体積収量は、多結晶質シリコン領域420の体積によって減少する。
【0065】
図4を参照すると、キャストシリコンのインゴット400を凝固させた後のルツボ110の中央部を通る縦断面が示されている。図4中のA−A線の平面は、図2において示すシードのレイアウト又はパターンに対応する。図4において示す例においては、図2において示すシード300及び310の配列を用い、(100)シード300をルツボ110の底面上に配置し、(111)シード310を(100)シード300を取り囲んで配置する。この例においては、得られるシリコンのインゴット400の一部は、多結晶質シリコン領域420を成長させるための核形成部位として働かせることができるルツボ110の湾曲した角部410を含むルツボの表面と接触している。しかしながら、(111)単結晶質シリコン領域510の核形成及び成長は、多結晶質シリコン領域420の成長と競合して最終的にはその量を制限する。
【0066】
したがって、キャスティング中においては、多結晶質シリコン領域420の成長は、(11)シード310の上の(111)単結晶質シリコン領域510の成長と競合することによって制限される。(111)単結晶質シリコン領域510と多結晶質シリコン領域420との間の区分は線440によって示され、これは多結晶質シリコン領域420がシード310におけるその核形成部位からの(111)単結晶質シリコン領域510の外方向への成長によってどのように制限されるかを示す。同様に、(111)単結晶質シリコン領域510と(100)単結晶質シリコン領域430との間の区分は線520によって示され、これは、(111)シード310から成長する(111)単結晶質シリコン領域510及び(100)シード300から成長する(100)単結晶質シリコン領域430の粒の交点を示す。したがって、得られるインゴット400は多結晶質シリコン領域420を側プレート460中にしか含まない。したがって、キャストシリコンのインゴット400の領域430及び510においては、(100)及び(111)単結晶質シリコンの高品質の双晶が含まれる。(111)単結晶質シリコン領域510の核形成及び成長によって、ルツボ110の側壁からのランダムに配向された粒の競合する横方向の粒成長が制限される。
【0067】
更に図4を参照すると、キャスティングが完了した後、得られるキャストシリコンのインゴット400を、5列のブリック450及び2つの側プレート460に切り出す。多結晶質シリコン領域420を含む側プレート460は、取り除き、その後のキャスティングプロセスのための供給材料として用いることができる。したがって、図4において示す5つのブリック450の全ては、単結晶質シリコン又は双晶シリコンを含み、中心の3つのブリック450は(100)単結晶質シリコンを含み、2つの外側のブリックは一部が(100)及び一部が(111)配向のシリコンの高品質の双晶を含む。したがって、多結晶質シリコンの量は(111)単結晶質シリコン領域510を成長させることによって減少し、これにより多結晶質シリコン領域420の体積が制限される。したがって、図4において示す例においては、図2に示すシードのレイアウト又はパターンからシリコンをキャストすることによって、多結晶質シリコンの成長に対する緩衝が与えられ、シリコンのキャストインゴットあたりの単結晶質シリコン領域の量が向上する。これは、ルツボ110の角部410におけるランダムに配向された多結晶質シリコンの核形成及び成長よりも迅速に核形成及び成長する、(111)シード310における(111)結晶方位の低エネルギーの成長前面によるものであると考えられる。
【0068】
図5は、本発明にしたがうシリコンの代表的な製造方法を示すフローチャートである。図5にしたがうと、方法600は、単結晶質シリコン成長のために(100)及び(110)のような2つの結晶方位の単結晶質シリコンシード結晶を選択し、1つの結晶方位のシード結晶が他の結晶方位を有するシード結晶を取り囲むように配置されるように単結晶質シリコンシード結晶をルツボ内に配置する(工程605)によって開始することができる。また、単結晶質シリコン又は双晶シリコンのインゴットから切り出されるか又は他の方法で得られる単一のスラブを単一のシード結晶として用いることができる。次に、シリコン供給材料をルツボに加えることができる(工程610)。次に、ルツボの底部を底から冷却しながら(受動的又は能動的のいずれかで行う:工程615を参照)、ルツボを頂部から加熱する。溶融中においては、シリコンの溶融段階を監視して、固/液界面の位置を追跡及び制御する(工程620)。単結晶質シリコンシード結晶の一部が溶融するまでシリコンの溶融段階を進行させる(工程625)。単結晶質シリコンシード結晶の所望の部分が溶融したら、溶融段階を終了し、結晶成長段階を開始する(工程630)。シリコンの結晶化が完了するまで、ルツボ内において結晶成長を一方向且つ垂直方向に継続させる(工程635)。最後に、更なる処理のためにインゴットを取り出す(工程640)。
【0069】
図6Aに示すように、シリコン供給材料200を、例えば2つの方法の1つでシード220を含むルツボ210に導入することができる。第1の方法においては、ルツボ210を、好適には好都合な寸法の塊の形態の固体シリコン供給材料200で全容量まで装填し、装填したルツボ210をキャスト装置(図示せず)内に配置する。
【0070】
図6Bに示すように、ルツボ210内の熱プロファイルは、ルツボ110内のシリコン充填物の頂部が加熱されて溶融し、一方、底部が能動冷却又は受動冷却されてルツボ210の底部におけるシード220の固相が保持されるように、即ち供給材料200が溶融した際に浮遊しないように設定する。熱を水冷壁に放射するために、固体の熱シンク材料230をルツボ210の底部と接触させる。例えば、熱シンク材料230はグラファイトの固体ブロックであってよく、好ましくはルツボの底部と同等の大きさか又はこれよりも大きな寸法を有していてよい。本発明にしたがうと、例えば、熱シンク材料は、66cm×66cmである底面を有するルツボと共に用いる場合には、66cm×66cm×20cmであってよい。ルツボ210の側壁は、好ましくは、シード220をルツボ210の底部上のみに配置するならば、いかなるようにも冷却しない。シード220をルツボ210の底部及び側部の上に配置する場合には、熱シンク材料230は、所望の熱プロファイルを保持するためにルツボ210の底部及び側部の両方の上に配置する。
【0071】
シリコン供給材料200の溶融段階を精密に監視して、溶融シリコンとシードとの間の界面の位置を追跡する。好ましくは、シード220以外の供給材料シリコン200の全部が完全に溶融するまで溶融体240(図6Bに示す)の溶融を進行させ、その後シード220を部分的に溶融する。例えば、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することによって、シード220が完全には溶融しないように加熱を精密に制御することができる。好ましくは、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で測定して約0.05℃/分以下のΔTを保持することによって、加熱を精密に制御することができる。例えば、本発明にしたがうと、ΔTはルツボとグラファイトの大きなブロックとの間のルツボの外表面上で測定することができ、溶融したシード220の部分を算出するために、浸漬ロッドを溶融体240中に挿入して溶融体の深さを測定することができる。
【0072】
図6Cに示すように、部分250は溶融体240の下のシード220の全厚さの溶融部分を示す。シード220の部分250が溶融体240の下で溶融した後、溶融段階を速やかに終了して結晶成長段階を開始し、ここでは、ルツボ210の頂部における加熱を減少させるか、及び/又は熱シンク材料230における底部の冷却を増加させる。このプロセスの例として、図6Dに示すグラフは、シード220の部分250の溶融を時間の関数として示す。図6Dに示すように、5〜6cmの間の初期厚さを有するシードの部分を、固体シードの2cmを僅かに下回る厚さが残留するまで徐々に溶融する。例えば、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で(例えば冷却ブロック内に載置された熱電対によって)測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することによって、シード220が完全には溶融しないように加熱を精密に制御することができる。好ましくは、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、ルツボの外表面上で測定して約0.05℃/分以下のΔTを保持することによって、加熱を精密に制御することができる。この時点において、次に溶融段階を速やかに終了して結晶成長段階を開始し、これはグラフの縦座標上で測定される固体厚さが相対的に上昇することによって示される。
【0073】
図6Eに示すように、部分250は溶融体240の下のシード220の全厚さの溶融部分を示す。シード220の部分250が溶融体240の下で溶融した後、次に溶融段階を速やかに終了して結晶成長段階を開始し、ここではルツボ210の頂部における加熱を減少させるか、及び/又は熱シンク材料230における底部の冷却を増加させる。次に、図6Fに示すように、シリコンの結晶化が完了するまで熱シンク230を通して熱を引き抜きながら、種付けされた結晶の成長をルツボ210内で一方向に且つ垂直方向に継続させる。好ましくは実質的に平坦な固/液界面285が、上方向にルツボ210の底面から離れて広がる。結晶成長の終了後にキャスティングサイクルを完了し、ここでルツボ210内の頂部から底部への熱勾配を均一にする。次に、インゴット280全体を室温にゆっくりと冷却する。単結晶質シリコンのキャスティングについては、この種付けによる一方向の成長によってキャストされた単結晶質シリコンの連続固形体290が生成する。
【0074】
図6Gに示すように、例えば図2のシードのレイアウト又はパターンにしたがう種付け結晶成長を、シリコンの結晶化が完了するまでルツボ210内において垂直方向に継続させる。ルツボ210内での頂部から底部への熱勾配が均一になった時点で、キャスティングサイクルが終了する。次に、インゴット260全体を室温にゆっくりと冷却する。単結晶質及び双晶シリコンのキャスティングについては、図6Gに示すように、(100)シード300の周りを取り囲む(111)シード310のパターン(図2に示す)を用いることにより、それから核形成及び成長するそれぞれの(111)シードの上に例えば(111)配向を有する粒270が生成する。このようにして、(111)及び(100)結晶方位の単結晶質シリコンの高品質の双晶がインゴット260の体積の大部分、好ましくは実質的に大部分を占める。
【0075】
図7に示す他のプロセスにおいては、シリコン供給材料200をまず別の室又は別の溶融容器300内で溶融させることができる。シード220は、溶融した供給材料305を溶融体パイプ310を介してルツボ210中に供給又は注ぎ入れる前に、頂部から部分的に溶融してもしなくてもよく、その後、図6B〜6Gを参照して記載したように冷却及び成長を進行させる。他の態様においては、シリコンシード結晶をルツボ210の壁部上に載置することができ(図示せず)、上記したように種付け成長をルツボ210の側部及び底部から進行させることができる。また、シリコン供給材料200をルツボ210とは別の溶融容器300内で溶融し、同時にルツボ210をシリコンの溶融温度に加熱し、シード220が完全には溶融しないように加熱を制御する。シード220が部分的に溶融したら、溶融した供給材料305を溶融容器300からルツボ210中へ移すことができ、冷却及び結晶化を開始することができる。したがって、本発明の一態様にしたがうと、結晶化シリコンの固形体の一部にシード220を含ませることができる。また、溶融体の導入前にシードを完全に固体に保持することができる。この場合においては、溶融容器300内の溶融シリコンを溶融温度を超えて加熱し、この過熱液体によって過熱液体を導入した際に幾つかのシードの一部を溶融させる。
【0076】
図7に示すような2段階キャスト装置においては、溶融した供給材料305を溶融容器300から注ぎ入れ、シード220の上に落下させ、凝固中にそれらの結晶化を行わせる。また、溶融を中心の溶融容器300内で行って、これをルツボ210の1以上の複製品(図示せず)のような分布された配列の凝固ルツボに供給することができる。本発明の幾つかの態様にしたがうと、凝固ルツボはルツボの側部及び底部のいずれか又は両方の上のシード220と整列させることができる。このアプローチの幾つかの有利性としては、溶融システムと凝固システムが分離されて、それぞれのキャスティング工程のより良好な最適化が可能になること;新しい材料の溶融を通常の方法で行い、必要に応じてルツボの供給を保持するシリコンの半連続溶融が可能になること;凝固段階を溶融体の中央から与えながら頂部(及び場合によっては底部の排出部)のシリコンをスラグ化して、出発シリコン材料の純度が向上すること;及び、溶融容器300を溶融した供給材料305と平衡にし、もはや大きな不純物源ではなくなること;が挙げられる。
【0077】
したがって、上記に記載の方法の1つによってインゴット260又は280をキャストした後、得られるキャストインゴットを、例えばインゴットの底部又は他の部分を切除して、それをその後のキャスティング操作において単結晶又は双晶シードとして用いることによって更に処理して、本発明にしたがう単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの物体を形成することができ(ここで、かかる単結晶シードの寸法及び形状はその後のキャスティング操作において用いるルツボの底部と同じ寸法及び形状である)、インゴットの残りを、光電池に加工するためのブリック及びウエハに切り出すことができる。また、インゴット全体を、将来のキャスティング操作のための複数のキャスト装置においてシード結晶として用いるための水平のスラブに切り出すことができる。
【0078】
本発明の幾つかの態様にしたがう方法において用いるシリコン供給材料には、以下のもの:ホウ素、アルミニウム、リチウム、ガリウム、リン、アンチモン、ヒ素、及びビスマス;を含むリストから選択されるもののような1種類以上のドーパントを含ませることができる。かかるドーパントの全量は、約0.01原子ppm(ppma)〜約2ppmaであってよい。かかる1種類又は複数のドーパントの全量は、約0.01原子ppm(ppma)〜約2ppmaであってよい。好ましくは、シリコン中の1種類又は複数のドーパントの量は、シリコンから製造されるウエハが約0.1〜約50Ω・cm、好ましくは約0.5〜約5.0Ω・cmの抵抗を有するような量である。また、ここで開示する方法及び装置を用いて、好適な液相を有する他の材料をキャストすることができる。例えば、本発明の幾つかの態様によって、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、サファイア、及び数多くの他のIII−V又はII−VI材料、並びに金属及び合金をキャストすることができる。
【0079】
図8は、キャスティングのためにルツボ810中に装填されるシリコン(供給材料800及び結晶質シード801)の断面を示す。窒化ケイ素又は炭化ケイ素のような剥離コート820を、供給材料800がルツボ810と接触するルツボ810の領域に施すことができ、これはキャスティング中に完全に溶融するようになるシリコン800の領域に対応する。結晶質シード801の下側にはコートは施さない。シード801は完全には溶融せず、したがってルツボ810に接着しない。
【0080】
図9は、結晶質シリコンシード層を再利用するための方法を示す。図9に示すように、シード層901から成長したキャストインゴット900を、まず破線にそってスライスしてシード層901を含む材料のスラブを取り出す。次に、材料のスラブを破線の端部で切り取って、他のルツボ内に配置するのに障害となる可能性のある過剰の材料を除去する。元のシード層901の寸法及び形状に切り取られた切取スラブ902を次に、好適な液体又は他の材料を含むタンク又はタブのような容器910内において、場合によってはシリコンの他の同様の片と一緒に処理して、層901(及び場合によってはシリコンの他の片)から汚染物質及びデブリスを除去し、その後、その後のキャスティングプロセスにおいてシード層として用いるために新しいルツボ920内に配置する。
【0081】
図10は、シード層を形成するように配列した単結晶シリコン片の代表的な配列を示す。(001)結晶方位はシリコン太陽電池を製造するために有利な特性を有することが示されている。(001)シリコンは、その全表面を覆うパターンピラミッドを形成するように化学的にエッチングすることができ、これにより反射を減少させることと材料内の光路長を増加させることの両方によってシリコンの光捕捉能を向上させることができる。化学エッチングは公知の方法によって行うことができる。しかしながら、シリコンの多結晶質領域に隣接して配置した場合には、その(001)極方向に対して鋭角に粒界を成長させるその傾向によって(001)シリコンのキャスティングは困難になる。多結晶質シリコンの成長に対抗するために、幾何学的配列の複数の単結晶質シリコンシード結晶を、ルツボ(図示せず)内の少なくとも1つの表面、例えばルツボの底面の上に配置することができる。ここで、幾何学的配列としては最密多角形が挙げられる。図10において示すように、(001)シリコンの片1000は、長方形の(111)シリコン1001の周縁によって取り囲まれている。周縁のシリコン1001の極方向を(111)として示すが、これは、多結晶質領域に隣接して成長する際に競合的に優位である任意の結晶方位であってよい。このようにして、得られるキャストインゴット(図示せず)の大部分は(001)シリコンから構成され、シリコン1001から成長する競合的に優位な(111)粒によって、シリコン1000の上の(001)シリコンによって占められる領域内での多結晶質シリコンの成長が制限される。同様に、本発明の幾つかの態様にしたがって多結晶質シリコン体をキャストすることによって製造されるシリコン結晶粒は、円柱状に成長させることができる。更に、かかる結晶粒は、凝固が進行するにつれて収縮する(001)断面領域を有するのではなく、それから形成されるシードの形状であるか又はそれに近似する断面を有することができる。このような具体的に選択された粒界を有し、好ましくは粒界の接合部が角部において接する3つの粒界のみを有するシリコンを製造する場合には、条件は図10において示される配列に合致する。
【0082】
図11は、シード層として用いるための大面積で転位のない単結晶を製造するための方法を示す。断面で示すこの方法においては、多結晶質供給材料1100を、面積が約25cm2〜約10,000cm2の横方向の寸法及び約3mm〜約1000mmの厚さを有していてよい単結晶シード1101と一緒に装填する。供給材料1100をルツボ1110内に配置し、これを次に伝熱性部品(1120)及び断熱性部品(1130)から構成される複数の層1120、1121、及び1130の頂部上の装置(図示せず)内に配置する。伝熱性部品1120の領域は、好ましくはルツボ1110の底部とほぼ同じ形状であり、シード結晶1101の約50%〜約150%の横方向の面積を有する。溶融の間は、伝熱性領域1120を通して支持プレート1121に熱を引き抜き、一方、熱が断熱層1130を通過することは抑止される。シード結晶1101の完全な溶融を抑止するために、キャスティングの溶融段階の間においても伝熱性領域1120を通して熱を伝導除去する。全ての供給材料1100及びシード結晶1101の少量が液体シリコン1102に溶融したら、残りの固体シリコン1103は、次に凝固プロセスのための核形成層として作用する。断熱層1130の存在は、核形成及び成長の間の固体シリコン1103の形状、及び図11において矢印で示される凝固の方向を制御するのを助ける。凝固表面の強い湾曲によって固体シリコン1103の外側への成長が引き起こされ、一方、多結晶質領域1105が最小になる。インゴット1104がキャストされたら、インゴットの上部から水平の層を切り出して(破線)、新しいシードスラブ1106として用いることができる。スラブ1106は、清浄化し、切り取り、新しいルツボ1110内で新しいインゴットのための完全なシード層として用いるか、或いは上記に記載した方法を再び用いて更に大きい単結晶のための出発点として用いることができる。
【0083】
更に、ここではシリコンのキャスティングを記載したが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の半導体材料及び非金属結晶質材料をキャストすることができる。例えば、本発明者らは、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム(そのサファイアの単結晶形態を含む)、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ヒ化ガリウムインジウム、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、酸化イットリウムバリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び他の半導体、酸化物、並びに液相を有する金属間化合物のような本発明の幾つかの態様にしたがう他の材料のキャスティングを意図している。更に、数多くの他のIII−V族又はII−VI族材料、並びに金属及び合金を、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストすることができる。
【0084】
約1410℃〜約1300℃の間の範囲のような第1の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る温度勾配を含む。平均で約1350℃のような第2の温度は、通常は固形体を横切るか及び/又はそれを通る減少した温度勾配及び/又は均一な温度プロファイルを含む。温度勾配を減少させることは、本開示との関連では時にはアニーリングと呼ぶことができる。アニーリングとしては、例えば断熱を停止することが挙げられる。
【0085】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内において、溶融シリコンをシード結晶のパターンと接触させて配置することを含む。冷却壁は、例えば容器又はルツボの1以上の側壁及び/又は底面であってよい。
【0086】
望ましくは、シード結晶のパターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列する。幾つかの態様においては、パターンは容器又はルツボの内表面の全体或いは実質的に全ての領域及び/又は一部を覆う。
【0087】
本方法には、単結晶質シリコンの領域を含む固形体を形成することを更に含ませることができる。望ましくは、固形体又はインゴットは実質的部分の単結晶質シリコンを含む。また、形成は双晶シリコンの領域を有する固形体を含むことができる。固形体は、任意の好適な寸法を有することができ、一般には十分な純度及び/又は結晶化度を保持しながらより大きな規模の経済を与えることが望ましい。固形体は、それぞれ少なくとも約10cm、少なくとも約25cm、少なくとも約35cm、及び/又は少なくとも約50cmの少なくとも2つの寸法を有することができる。
【0088】
また、固形体には、その後のキャスティングプロセスにおいて用いることができるもののような複数の単結晶シリコンシード結晶を含ませることができる。また、本方法には、本方法によって先にキャストしたシリコン体から切り出したシード結晶を用いてシリコンの他の固形体を形成することを含ませることができる。
【0089】
形成工程には、少なくとも初めは冷却のための少なくとも1つの壁部と平行である溶融シリコンの端部における固/液界面を形成するように溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することを含ませることができ、ここでは固/液界面を、冷却中において、溶融シリコンと冷却のための少なくとも1つの壁部との間の距離を増加させる方向に移動させるように制御することができる。言い換えれば、凝固前面は冷却源から離れる方向に前進する。冷却源及び/又は熱シンクによって、凝固前面を概して水平方向及び/又は概して垂直方向のような任意の好適な方向で前進させることができる。望ましくは、冷却は、例えば熱を水冷壁に放射するための熱シンク材料を用いることを含む。
【0090】
幾つかの態様においては、配置工程は、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列によって第1の結晶方位の配列が取り囲まれているか、包囲されているか、及び/又は縁取られている配列で配置することを更に含む。本方法には、冷却によって固/液界面を、冷却のための少なくとも1つの壁部と平行な端部を保持しながらルツボの底部から離れる方向に移動させることを更に含ませることができる。
【0091】
幾つかの態様においては、(111)方位を有するシード結晶の境界によって(100)方位を有する複数の単結晶シリコンシード結晶を取り囲む。望ましくは、(100)方位により、例えば、多結晶質シリコンが側壁上で成長及び/又は形成され、内側に向かって広がることが減少及び/又は抑止される。
【0092】
幾つかの態様においては、溶融シリコンを配置する工程は、ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し、ルツボ及びシリコンを少なくともシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の複数の単結晶シリコンシード結晶が完全には溶融しないように加熱を制御し、そして溶融シリコンを溶融容器からルツボ中に移すことを更に含む。別の及び/又は専用の溶融容器を用いることによって、例えば増加した能力及び/又は生産性を与えることができる。
【0093】
幾つかの態様においては、溶融シリコンを配置する工程は、ルツボ及びシリコンをシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、加熱を制御して、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを更に含む。ΔTは、時間に対する温度変化速度を指す。
【0094】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、シリコン供給材料を、少なくとも1つの表面上において、単結晶質シリコンを含むシリコンシード結晶のパターンと接触させて配置することを含む。パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列する。本方法は、シリコン供給材料及びシリコンシード結晶のパターンをシリコンの溶融温度に加熱し、シリコンシード結晶のパターンが完全には溶融しないように加熱を制御することを更に含む。望ましくは、制御工程は、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを含む。ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達し及び/又は到達した後において、シリコンシード結晶のパターンが部分的に溶融したら、本方法に、シリコンを冷却することによって単結晶質シリコンを含む固形体を形成することを更に含ませることができる。また、形成工程は、単結晶質シリコンに代えて及び/又はこれに加えて双晶シリコンの領域を有する固形体を形成することを更に含む。また、形成工程には、固形体の少なくとも一部が複数の単結晶シリコンシード結晶を含むようにすることを更に含ませることができる。
【0095】
ここで用いる「有する」、「含む」、及び「包含する」という用語は、開かれた包含的な表現である。また、「から構成される」という用語は、閉じられた排他的な表現である。特許請求の範囲又は明細書における任意の用語の解釈においては不明確さが存在するが、記載者の意図は開かれた包含的な表現である。
【0096】
本方法には、また、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列が第1の結晶方位の配列を少なくとも部分的か及び/又は完全に取り囲むように配置することを含ませることができる。
【0097】
幾つかの態様においては、本発明は、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか及び/又は実質的に含まない双晶シリコン体を包含する。望ましくは、該物体は、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する。また、連続キャスト双晶シリコンはそれぞれ少なくとも約35cm及び/又は少なくとも約50cmの少なくとも2つの寸法を有する。
【0098】
本物体は、例えば、約2×1016原子/cm3〜約5×1017原子/cm3の炭素濃度、5×1017原子/cm3を超えない酸素濃度、及び少なくとも1×1015原子/cm3の窒素濃度を有することができる。炭素、酸素、及び窒素の他の範囲が可能である。望ましくは、本物体は、螺旋欠陥を含まないか及び/又は実質的に含まず、及び/又は酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない。
【0099】
幾つかの態様においては、本発明の太陽電池は、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まない連続双晶シリコン体から形成されるウエハを含む。本物体は、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する。太陽電池には、ウエハ内のp−n接合、及びウエハ上の導電性接点を更に含ませることができる。また、連続キャスト双晶シリコン体は、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する。望ましくは、本物体は、放射状に分布する欠陥及び/又は酸素誘起積層欠陥を含まないか又は実質的に含まない。
【0100】
幾つかの態様においては、本発明は、放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるシリコンのウエハを包含する。また、ウエハは少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有することができ、及び/又は、物体はそれぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有することができる。
【0101】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、ルツボの内側壁を剥離コートで被覆し、底面を未被覆のままにすることを含む。本方法には、また、シリコンシード結晶を未被覆の底面と接触させて配置し、シリコン供給材料をルツボ内に配置することを含ませることができる。本方法には、また、シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながらシリコン供給材料を溶融し、シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを含ませることができる。本方法には、また、物体を第1の温度にし、そして物体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。また、ルツボ及び/又は容器の全内表面及び/又は実質的に全ての内表面を剥離コートで被覆することができる。
【0102】
本方法には、また、先にキャストした物体を少なくとも1つのスラブにスライスし、少なくとも1つのスラブを化学的に処理して不純物を除去することを含ませることができる。本方法には、また、少なくとも1つのスラブをシード層として少なくとも1つのルツボ内に配置し、溶融シリコンをシード層と接触させて配置することを含ませることができる。本方法には、また、ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し、物体を第1の温度にし、そして物体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。
【0103】
化学的に処理する工程には、不純物を除去及び/又は減少させる任意の好適な手順を含ませることができる。望ましくは、化学的処理によって金属及び/又は残留金属を除去する。化学的処理としては、苛性浸漬、例えばシリコンを水酸化ナトリウム溶液中に約30分間配置して金属を除去し、次に例えば脱イオン水ですすぐことを挙げることができる。化学的処理としては、また、酸浸漬、例えばシリコンを塩酸溶液中に配置して例えば残留金属を除去することを挙げることができる。例えば、シリコンを脱イオン水ですすぎ、乾燥することができる。化学的処理は、機械によって自動化するか、及び/又は手動で行うことができる。
【0104】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、単結晶質シリコンシード結晶の層を、ルツボ内の少なくとも1つの表面上に、層の中心のシード結晶が1つの第1の結晶極方向を有し、シード層領域の約50%〜約99%を覆い、一方、層の端部上のシード結晶が少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの領域を覆うように配置することを含む。本方法には、また、供給材料シリコンを導入して、供給材料シリコン及びシード層の一部を溶融状態にすることを含ませることができる。本方法には、また、シード層及びシード層と接触しているルツボの一部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを含ませることができる。本方法には、また、固形体を第1の温度にし、そして固形体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。
【0105】
幾つかの態様においては、キャストシリコンを製造する方法は、少なくとも約10cm×約10cmの面積の少なくとも1つの単結晶質シード結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に載置されているルツボの底部上に配置することを含む。本方法には、また、液体シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し、凸状の固体境界によって単結晶質成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成することを含ませることができる。本方法には、また、物体を第1の温度にし、物体を第2の温度に冷却することを含ませることができる。本方法には、また、シード結晶と反対側の物体の側部からスラブを切り出し、化学プロセスを用いてスラブを清浄化し、そしてスラブをその後のキャスティングプロセスのためのシード層として用いることを含ませることができる。
【0106】
以下の実施例は本発明の幾つかの態様にしたがう実験結果である。これらの実施例は本発明の幾つかの態様を単に例示し示すために与えるものであり、いかなるようにも本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0107】
実施例1:
ルツボの製造:2つの層から構成される支持構造体上にルツボを配置した。支持構造体の底層は、複合体層を支持する80cm×80cm×2.5cmの寸法の固体の等方成形グラファイトプレートであった。上部の複合体層は、60cm×60cm×1.2cmの寸法の伝熱性等方成形グラファイトプレートであり、全ての側部について厚さ1.2cmの断熱性グラファイトファイバーボードの10cmの周縁部によって取り囲まれている内部領域を有していた。このように、複合体層は底層を完全に覆っていた。
【0108】
シードの製造:MEMC, Inc.から得られ、0.3ppmaのホウ素を有する純粋なチョクラルスキー(CZ)シリコン(単結晶質)のブールを、ダイアモンドコートバンドソーを用いてその長さに沿って、側部あたり140mmからの寸法の正方形の断面を有するように切り落とした。得られた単結晶質シリコンのブロックを、同じソーを用いてその断面を通して約2cm〜約3cmの厚さを有するスラブに切り出した。これらのスラブを単結晶質シリコンのシード結晶又は「シード」として用いた。シリコンブールの(100)結晶学的極方向を保持した。次に、得られた単結晶シリコンスラブを、石英ルツボの底部内に、スラブの(100)方向が上向きになり、(110)方向がルツボの1つの側に平行に保持されるように配列した。石英ルツボは、側部について68cmの正方形の断面、及び約40cmの深さを有していた。スラブを、それらの長尺方向をルツボの底に平行に、それらの側部を互いに接触させてルツボの底部内に配列して、ルツボの底部の上にかかるスラブの単一の完全な層を形成した。
【0109】
キャスティング:室温において、ルツボにシードプレートを装填し、次に固体シリコン供給材料を265kgの全質量まで充填した。高ホウ素ドープシリコンの少量のウエハを加えて、約0.3ppmaの全インゴットドーピングに十分なホウ素を与えた。充填したルツボを、まず支持構造体の断熱性部分の上に載置したグラファイト支持プレートで取り囲み、次に多結晶質シリコンをキャストするのに用いるin−situの溶融/一方向性凝固キャスト装置中に装填した。抵抗加熱器を約1550℃に加熱することによって溶融プロセスを行い、断熱部を合計で6cm開放することによって熱を底部から放射放出させながら加熱が頂部から行われるように、加熱器を構成した。この構成によって、溶融をルツボの底部に向かう上から下への方向で進行させた。底部を通る受動冷却により、熱電対によって監視しながら、シード結晶を溶融温度において固体状態で保持した。溶融の程度は、10分毎に溶融体中に沈下させた石英浸漬ロッドによって測定した。浸漬ロッドの高さを装置内の空のルツボについて採った測定値と比較して、残りの固体材料の高さを求めた。浸漬ロッド測定によって、まず供給材料を溶融し、次にシード結晶の約1.5cmの高さしか残留しなくなるまで溶融段階を継続させた。この時点において、加熱力を1500℃の温度設定値まで低下させ、一方、断熱部分を12cmに開放することによって底部からの放射を増加させた。浸漬ロッド測定によって観察されるように、凝固が始まる前に更に1mm又は2mmのシード結晶が溶融した。次に、種付けした単結晶の成長を凝固工程の終了まで進行させた。成長段階及びキャスティングサイクルの残りは通常のパラメーターを用いて行い、ここでは、頂部から底部への熱勾配を均一にし、次にインゴット全体を室温にゆっくりと冷却した。キャストシリコン生成物は66cm×66cm×24cmのインゴットであった。シードと合致する結晶性の領域が底部において始まり、非溶融材料の端部と適合し、成長が始まるにつれてそこから横方向に外側へルツボの壁部に向かって成長し、結晶化の終了に向かって一定の寸法に安定化した。インゴットから切り出したブリックの面を視認検査することによって単結晶質シリコン構造が明らかであった。
【0110】
実施例2:
実施例1のようにして種付けを行い、大きな単結晶体積を含むインゴットをキャストした。冷却した後、インゴットをその側部を下にして立て、切り出し用の固定ダイアモンド研磨材を有するバンドソー中に装填した。インゴットの底部を、2cmの厚さを有する単一の層として切り出した。次に、この層を切断テーブル上に水平に固定した。同じバンドソー内において、約1.5cmをそれぞれの側部から除去するように層の端部を切り取った。次に、スラブをサンドブラストにかけて接着剤及び異物を除去し、その後、加熱水酸化ナトリウム浴中でエッチングし、すすぎ、HCl浴中に浸漬して金属を除去した。次に、スラブを先のインゴットと同じ寸法の標準的なルツボの底部上に配置した。シリコン供給材料を265kgの全質量に装填し、キャスティングプロセスを繰り返して第2の種付けされたインゴットを製造した。
【0111】
実施例3:
シードの製造:ルツボの底部の輪郭を描くのに用いた18kgの正方形の(100)プレートから出発してシード層を形成して、58×58cmの被覆領域及び2〜3cmの範囲の厚さを与えた。これらのプレートを一緒に、ルツボ内の中心に位置する大きな正方形に配置した。次に、この正方形を(111)配向シード結晶の厚さ2cmの層によって取り囲んで、全シード層を63cm×63cmの正方形にした。
【0112】
キャスティング:シードを含むルツボにシリコンを265kgの全質量に充填し、キャスト装置内に配置した。実施例1のようにしてキャスティングを行い、溶融の終了及び凝固の開始を通してシード層が損なわれないで残留することが確保されるようにプロセスを監視した。得られたインゴットを12.5cmのブリックの5×5グリッドに切り出した。ブリックの結晶構造の光学検査により、(111)結晶が緩衝層として作用し、ランダムに核形成された粒が(100)の体積中に入るのを抑止したことが示された。
【0113】
したがって、本発明の幾つかの態様及び上記に記載した実施例にしたがうと、シリコンは、好ましくはOSF及び/又は螺旋欠陥のような放射状に分布する欠陥を実質的に含まないか又は含まず、物体の少なくとも2つの寸法が、好ましくは少なくとも約10cm、好ましくは少なくとも約20cm、より好ましくは少なくとも約30cm、更により好ましくは少なくとも約40cm、更により好ましくは少なくとも約50cm、更により好ましくは少なくとも約60cm、最も好ましくは少なくとも約70cmである、キャストされた連続単結晶質シリコン体、キャストされた双晶シリコン体、又はキャストされたほぼ単結晶質のシリコン体であることができる。最も好ましくは、かかるシリコン体の第3の寸法は、少なくとも約5cm、好ましくは少なくとも約15cm、最も好ましくは少なくとも約20cmである。シリコン体は単一の物体としての1つの別々の片であってよく、或いは完全か又は部分的に他のシリコン内に含ませるか又はそれによって取り囲むことができる。シリコン体は、好ましくはそれぞれキャスティング容器の内部寸法と同程度の大きさである少なくとも2つの寸法を有して形成することができる。ここで開示するように、本発明の幾つかの態様を用いて、簡単でコスト的に有効なキャスティングプロセスによって単結晶質シリコン、双晶シリコン、又はほぼ単結晶質のシリコンの大きな物体を製造することができる。
【0114】
本発明の幾つかの態様にしたがうシリコンから製造されるウエハは好適に薄く、光電池において用いることができる。更に、ウエハはn−型又はp−型であることができる。例えば、ウエハは厚さ約10ミクロン〜厚さ約700ミクロンであることができる。更に、光電池において用いるウエハは、好ましくはウエハ厚さ(t)よりも大きい拡散長(Lp)を有する。例えば、tに対するLpの比は好適には少なくとも0.5である。これは例えば、少なくとも約1.1又は少なくとも約2であってよい。拡散長は、少数キャリア(例えばp−型の材料における電子)が、多数キャリア(p−型の材料における正孔)と再結合する前に拡散することができる平均距離である。Lpは関係式:Lp=(Dτ)1/2(式中、Dは拡散定数である)によって小数キャリアの寿命τに相関する。拡散長は、光子線誘導電流法又は表面光電圧法のような数多くの技術によって測定することができる。例えば、どのようにして拡散長を測定できるかの説明に関しては、A. Fahrenbruch及びR. Bubeによる"Fundamentals of Solar Cells", Academic Press, 1983, p.90-102を参照されたい。
【0115】
ウエハは約100mm〜約600mmの幅を有することができる。好ましくは、ウエハは少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有する。本発明のシリコンから製造されるウエハ、及びしたがって本発明によって製造される光電池は、例えば約50〜約3600cm2の表面積を有することができる。ウエハの前面は好ましくはテクスチャー加工する。例えば、ウエハは、化学エッチング、プラズマエッチング、又はレーザー若しくは機械的スクライビングを用いて好適にテクスチャー加工することができる。(100)極方向を有するウエハを用いる場合には、ウエハを水酸化ナトリウムのような塩基の水溶液中、昇温温度、例えば約70℃〜約90℃において、約10〜約120分間処理することによって、ウエハをエッチングして異方性テクスチャー加工された表面を形成することができる。水溶液には、イソプロパノールのようなアルコールを含ませることができる
したがって、キャストシリコンの固形体をスライスして少なくとも1つのウエハを形成し;場合によってはウエハの表面について清浄化処理を行い;場合によっては表面へのテクスチャー加工工程を行い;例えば表面をドープすることによってp−n接合を形成し;場合によっては表面上に反射防止被覆を析出させ;場合によっては例えばアルミニウム焼結工程によって背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層を形成し;そしてウエハ上に導電性接点を形成する;ことによって、本発明の幾つかの態様にしたがってキャストシリコンインゴットから製造されるウエハを用いて太陽電池を製造することができる。不動態化層は、表面原子のダングリングボンドを結合させる露出ウエハ面との界面を有する層である。シリコン上の不動態化層の例としては、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、及びアモルファスシリコンが挙げられる。この層は、一般に1ミクロンよりも薄く、光に対して透明であるか、或いは反射防止層として作用する。
【0116】
例えばp−型のシリコンウエハを用いて光電池を製造するための通常の一般的な方法においては、ウエハの1つの側部を好適なn−ドーパントに曝露して、ウエハの前面又は受光側の上にエミッタ層及びp−n接合を形成する。通常は、n−型層又はエミッタ層は、まず化学析出又は物理析出のような当該技術において通常的に用いられる技術を用いてp−型のウエハの前面上にn−ドーパントを析出させ、かかる析出の後、n−ドーパント、例えばリンをシリコンウエハの前面中に導入して、n−ドーパントをウエハ表面中に更に拡散させることによって形成される。この「ドライブイン」工程は、通常、ウエハを高温に曝露することによって行う。これにより、n−型層とp−型シリコンウエハ基材との間の境界領域においてp−n接合が形成される。ウエハ表面は、リン又は他のドーピングを行ってエミッタ層を形成する前にテクスチャー加工することができる。吸光性を更に向上させるために、通常は、窒化ケイ素のような場合によって用いる反射防止被覆をウエハの前面に施し、場合によっては同時に表面及び/又はバルクの不動態化を与えることができる。
【0117】
p−n接合を光エネルギーに曝露することによって生成する電位を利用するために、光電池には、通常、ウエハの前面上に導電性前面電気接点、及びウエハの背面上に導電性背面電気接点が与えられているが、両方の接点をウエハの背面上に配することができる。かかる接点は、通常は、1以上の高電導性金属で形成され、したがって通常は不透明である。
【0118】
したがって、上記に記載の幾つかの態様にしたがう太陽電池には、放射状に分布する欠陥を含まないか又は実質的に含まない連続単結晶質シリコン体、双晶シリコン体、又はほぼ単結晶質のシリコン体(このシリコン体は、上記に記載したようなものであってよく、例えばそれぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する)から形成されるウエハ;ウエハ内のp−n接合、場合によってはウエハの表面上の反射防止被覆;好ましくは背面電界及び不動態化層から選択される少なくとも1つの層;並びにウエハ上の導電性接点;を含ませることができ、物体は螺旋欠陥を含まないか又は実質的に含まず、OSF欠陥を含まないか又は実質的に含まないことができる。
【0119】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者には明らかである。例えば、単結晶質シリコンの形成に関する開示されているプロセス及び方法は、双晶シリコン又はほぼ単結晶質のシリコン或いはこれらの組み合わせの形成に適用することもできる。更に、ここではシリコンのキャスティングを記載しているが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の半導体材料及び非金属結晶質材料をキャストすることができる。例えば、本発明者らは、ヒ化ガリウム、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ヒ化ガリウムインジウム、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、酸化イットリウムバリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、及び他の半導体、酸化物、並びに液相を有する金属間化合物のような本発明の幾つかの態様にしたがう他の材料のキャスティングを意図している。本発明の他の態様は、ここで開示している発明の明細書及び実施例を考察することから当業者には明らかである。明細書及び実施例は例示のみのものとして考えられ、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内に、溶融シリコンをシード結晶のパターンと接触させて配置し;
ここで、シード結晶のパターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;そして
単結晶質シリコンの領域を含む固形体を形成する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項2】
固形体が、それぞれ少なくとも約10cmの少なくとも2つの寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
双晶シリコンの領域を含む固形体を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
形成工程が溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することを更に含み、これが、少なくとも初めは冷却のための少なくとも1つの壁部と平行である溶融シリコンの端部における固/液界面を形成し、固/液界面を、冷却中において溶融シリコンと冷却のための少なくとも1つの壁部との間の距離を増加させる方向に移動させるように制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配置工程が、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列によって第1の結晶方位の配列を取り囲んで配置することを更に含み;そして
更に、冷却によって、固/液界面を、端部を冷却のための少なくとも1つの壁部と平行に保持しながらルツボの底部から離れる方向に移動させる;
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(111)方位を有するシード結晶の境界によって(100)方位を有する複数の単結晶シリコンシード結晶を取り囲む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶融シリコンを配置する工程が、ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し、ルツボ及びシリコン供給材料をシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の複数の単結晶シリコンシード結晶が完全には溶融しないように加熱を制御し、そして溶融シリコンを溶融容器からルツボ中に移すことを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
固形体の一部を、複数の単結晶シリコンシード結晶を含むように形成することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
冷却工程が、熱を水冷壁に放射するための熱シンク材料を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該方法にしたがって先にキャストしたシリコン体から切り出したシード結晶を用いてシリコンの他の固形体を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
溶融シリコンを配置する工程が、ルツボ及びシリコンをシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、加熱を制御して、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
パターンによって容器の表面の全領域又は実質的に全ての領域を覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シリコン供給材料を、少なくとも1つの表面上において、単結晶質シリコンを含むシリコンシード結晶のパターンと接触させて配置し;
ここで、パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;
シリコン供給材料及びシリコンシード結晶のパターンをシリコンの溶融温度に加熱し;
ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後で、シリコンシード結晶のパターンが部分的に溶融したら、加熱を制御してシリコンシード結晶のパターンが完全には溶融しないようにし、ここで、制御工程はルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを含み;そして、
シリコンを冷却することによって単結晶質シリコンを含む固形体を形成する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項14】
形成工程が、双晶シリコンの領域を含む固形体を形成することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配置工程が、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列が第1の結晶方位の配列を取り囲むように配置することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
固形体の一部を、複数の単結晶シリコンシード結晶を含むように形成することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する双晶シリコン体。
【請求項18】
約2×1016原子/cm3〜約5×1017原子/cm3の炭素濃度、5×1017原子/cm3を超えない酸素濃度、及び少なくとも1×1015原子/cm3の窒素濃度を有する、請求項17に記載の物体。
【請求項19】
螺旋欠陥を含まないか又は実質的に含まず、酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない、請求項17に記載の物体。
【請求項20】
連続キャスト双晶シリコンが、それぞれ少なくとも約35cmの少なくとも2つの寸法を有する、請求項17に記載の物体。
【請求項21】
放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるウエハ;
ウエハ内のp−n接合;及び
ウエハ上の導電性接点;
を含む太陽電池。
【請求項22】
連続キャスト双晶シリコン体が、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項23】
物体が放射状に分布する欠陥を含まないか又は実質的に含まない、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項24】
連続キャスト双晶シリコン体が、少なくとも約50mmの少なくとも1つの寸法を有し、該物体が、それぞれ少なくとも約25cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項25】
放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるシリコンを含むウエハ。
【請求項26】
ウエハが少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有し、物体が、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、請求項25に記載のウエハ。
【請求項27】
ルツボの内側壁を剥離コートで被覆し、底面を未被覆のままにし;
シリコンシード結晶を未被覆の底面と接触させて配置し;
シリコン供給材料をルツボ内に配置し;
シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながらシリコン供給材料を溶融し;
シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
物体を第1の温度にし;そして
物体を第2の温度に冷却する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項28】
先にキャストした物体を少なくとも1つのスラブにスライスし;
少なくとも1つのスラブを化学的に処理して不純物を除去し;
少なくとも1つのスラブをシード層として少なくとも1つのルツボ内に配置し;
溶融シリコンをシード層と接触させて配置し;
ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項29】
単結晶質シリコンシード結晶のシード層を、ルツボ内の少なくとも1つの表面上に、シード層の中心のシード結晶が1つの第1の結晶極方向を有し、シード層領域の約50%〜約99%を覆い、一方、層の端部上のシード結晶が少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの領域を覆うように配置し;
供給材料シリコンを導入して、供給材料シリコン及び層の一部を溶融状態にし;
シード層及びシード層と接触しているルツボの一部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項30】
少なくとも約10cm×約10cmの面積の少なくとも1つの単結晶質シード結晶をルツボの底部上に配置し;
液体シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し;
凸状の固体境界によって単結晶質成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし、物体を第2の温度に冷却し;
シード結晶と反対側の固形体の側部からスラブを切り出し;
化学的プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして
このスラブをその後のキャスティングプロセスのためのシード層として用いる;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項1】
少なくともシリコンの溶融温度に加熱されている1以上の側壁及び冷却のための少なくとも1つの壁部を有する容器内に、溶融シリコンをシード結晶のパターンと接触させて配置し;
ここで、シード結晶のパターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;そして
単結晶質シリコンの領域を含む固形体を形成する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項2】
固形体が、それぞれ少なくとも約10cmの少なくとも2つの寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
双晶シリコンの領域を含む固形体を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
形成工程が溶融シリコンを冷却して結晶化を制御することを更に含み、これが、少なくとも初めは冷却のための少なくとも1つの壁部と平行である溶融シリコンの端部における固/液界面を形成し、固/液界面を、冷却中において溶融シリコンと冷却のための少なくとも1つの壁部との間の距離を増加させる方向に移動させるように制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配置工程が、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列によって第1の結晶方位の配列を取り囲んで配置することを更に含み;そして
更に、冷却によって、固/液界面を、端部を冷却のための少なくとも1つの壁部と平行に保持しながらルツボの底部から離れる方向に移動させる;
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(111)方位を有するシード結晶の境界によって(100)方位を有する複数の単結晶シリコンシード結晶を取り囲む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶融シリコンを配置する工程が、ルツボとは別の溶融容器内でシリコン供給材料を溶融し、ルツボ及びシリコン供給材料をシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の複数の単結晶シリコンシード結晶が完全には溶融しないように加熱を制御し、そして溶融シリコンを溶融容器からルツボ中に移すことを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
固形体の一部を、複数の単結晶シリコンシード結晶を含むように形成することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
冷却工程が、熱を水冷壁に放射するための熱シンク材料を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該方法にしたがって先にキャストしたシリコン体から切り出したシード結晶を用いてシリコンの他の固形体を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
溶融シリコンを配置する工程が、ルツボ及びシリコンをシリコンの溶融温度に加熱し、ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後に、加熱を制御して、ルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
パターンによって容器の表面の全領域又は実質的に全ての領域を覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シリコン供給材料を、少なくとも1つの表面上において、単結晶質シリコンを含むシリコンシード結晶のパターンと接触させて配置し;
ここで、パターンは複数の単結晶シリコンシード結晶を含み、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第1の結晶方位で配列し、1以上の単結晶シリコンシード結晶を第2の結晶方位で配列し;
シリコン供給材料及びシリコンシード結晶のパターンをシリコンの溶融温度に加熱し;
ルツボ内の他の箇所でシリコンの溶融温度に達した後で、シリコンシード結晶のパターンが部分的に溶融したら、加熱を制御してシリコンシード結晶のパターンが完全には溶融しないようにし、ここで、制御工程はルツボの外表面上で測定して約0.1℃/分以下のΔTを保持することを含み;そして、
シリコンを冷却することによって単結晶質シリコンを含む固形体を形成する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項14】
形成工程が、双晶シリコンの領域を含む固形体を形成することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配置工程が、複数の単結晶シリコンシード結晶を、ルツボの底部内に、第2の結晶方位の配列が第1の結晶方位の配列を取り囲むように配置することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
固形体の一部を、複数の単結晶シリコンシード結晶を含むように形成することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する双晶シリコン体。
【請求項18】
約2×1016原子/cm3〜約5×1017原子/cm3の炭素濃度、5×1017原子/cm3を超えない酸素濃度、及び少なくとも1×1015原子/cm3の窒素濃度を有する、請求項17に記載の物体。
【請求項19】
螺旋欠陥を含まないか又は実質的に含まず、酸素誘起積層欠陥を実質的に含まない、請求項17に記載の物体。
【請求項20】
連続キャスト双晶シリコンが、それぞれ少なくとも約35cmの少なくとも2つの寸法を有する、請求項17に記載の物体。
【請求項21】
放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるウエハ;
ウエハ内のp−n接合;及び
ウエハ上の導電性接点;
を含む太陽電池。
【請求項22】
連続キャスト双晶シリコン体が、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項23】
物体が放射状に分布する欠陥を含まないか又は実質的に含まない、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項24】
連続キャスト双晶シリコン体が、少なくとも約50mmの少なくとも1つの寸法を有し、該物体が、それぞれ少なくとも約25cmの少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項25】
放射状に分布する不純物及び欠陥を含まないか又は実質的に含まず、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する連続双晶シリコン体から形成されるシリコンを含むウエハ。
【請求項26】
ウエハが少なくとも約50mmである少なくとも1つの寸法を有し、物体が、それぞれ少なくとも約25cmである少なくとも2つの寸法、及び少なくとも約20cmの第3の寸法を有する、請求項25に記載のウエハ。
【請求項27】
ルツボの内側壁を剥離コートで被覆し、底面を未被覆のままにし;
シリコンシード結晶を未被覆の底面と接触させて配置し;
シリコン供給材料をルツボ内に配置し;
シード結晶を少なくとも部分的に固体状態に保持しながらシリコン供給材料を溶融し;
シード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
物体を第1の温度にし;そして
物体を第2の温度に冷却する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項28】
先にキャストした物体を少なくとも1つのスラブにスライスし;
少なくとも1つのスラブを化学的に処理して不純物を除去し;
少なくとも1つのスラブをシード層として少なくとも1つのルツボ内に配置し;
溶融シリコンをシード層と接触させて配置し;
ルツボの底部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項29】
単結晶質シリコンシード結晶のシード層を、ルツボ内の少なくとも1つの表面上に、シード層の中心のシード結晶が1つの第1の結晶極方向を有し、シード層領域の約50%〜約99%を覆い、一方、層の端部上のシード結晶が少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの領域を覆うように配置し;
供給材料シリコンを導入して、供給材料シリコン及び層の一部を溶融状態にし;
シード層及びシード層と接触しているルツボの一部を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし;そして
固形体を第2の温度に冷却する;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【請求項30】
少なくとも約10cm×約10cmの面積の少なくとも1つの単結晶質シード結晶をルツボの底部上に配置し;
液体シリコンを少なくとも1つのシード結晶と接触させて配置し;
凸状の固体境界によって単結晶質成長の断面積が増加するようにシード結晶を通して熱を引き抜くことによってシリコンの固形体を形成し;
固形体を第1の温度にし、物体を第2の温度に冷却し;
シード結晶と反対側の固形体の側部からスラブを切り出し;
化学的プロセスを用いてスラブを清浄化し;そして
このスラブをその後のキャスティングプロセスのためのシード層として用いる;
ことを含むキャストシリコンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−534189(P2010−534189A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518293(P2010−518293)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070187
【国際公開番号】WO2009/014957
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070187
【国際公開番号】WO2009/014957
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
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