シール及びその製造方法
【課題】成形時間を短縮できるとともに、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保でき、しかも、全体として良好な可撓性を有するシール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シール10は、合成ゴムによって形成されたシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるとともにシール部11に接合されたヒール部12とにより構成されている。シール部11は、成形金型20のシール形成部23に射出した合成ゴムを成形金型20内において加熱架橋することにより成形される。ヒール部12は、成形金型20のヒール形成部26に射出した動的架橋型熱可塑性エラストマーを成形金型20内において冷却させて硬化させることにより成形されるとともにシール部11に接合される。
【解決手段】シール10は、合成ゴムによって形成されたシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるとともにシール部11に接合されたヒール部12とにより構成されている。シール部11は、成形金型20のシール形成部23に射出した合成ゴムを成形金型20内において加熱架橋することにより成形される。ヒール部12は、成形金型20のヒール形成部26に射出した動的架橋型熱可塑性エラストマーを成形金型20内において冷却させて硬化させることにより成形されるとともにシール部11に接合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばダクタイル鋳鉄管等の水道管の継手部に装着されるシール、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図11及び図12に示すように、例えばダクタイル鋳鉄管50の継手部には、合成ゴムよりなるシール51が装着されている。このシール51は、一方のダクタイル鋳鉄管50における雌側端部52の内周に形成された周溝52aに装着され、同雌側端部52の内側に挿入された他方のダクタイル鋳鉄管50における雄側端部53の外周面53aに押し付けられる。シール51は、ダクタイル鋳鉄管50の周溝52aに嵌め込まれるヒール部51aと、このヒール部51aに対し接合されたシール部51bとよりなる。ヒール部51aは、シール部51bよりも高い硬度の合成ゴムによって形成され、周溝52aに対する脱着時に容易に撓む柔軟性と、周溝52aに装着された状態においてシール部51bを保持するための剛性とを備えている。
【0003】
上記シールは、例えば以下のような方法により製造されている。すなわち、まず、合成ゴムを押し出し成形した部材を所定長さに切断し、これを環状に曲げた状態でシールの成形型のキャビティ内に配置する。この部材は、シール部51bとなる。次に、成形型に合成ゴムを射出し、キャビティ内でヒール部51aを成形する。次に、成形型を加熱してその温度を150〜160℃程度に維持し、この状態を15〜20分間程度保持する。そして、このときの熱によってキャビティ内のシール部51b及びヒール部51aを加熱架橋させるとともに一体化させる。以上の工程により、異なる硬度の合成ゴムよりなるシールが製造される。ところが、ゴム製品の架橋に要する時間は、その体積が大きいほど長くなる。上記シールの加熱架橋に要する時間は15〜20分間必要であるため、その製造コストが高くなっている。
【0004】
また、特許文献1には、図13に示すように、ゴム材よりなるシール部60と、合成樹脂よりなるリテーナ部(前記ヒール部51aに相当)61とを一体化した管継手用のシール62が開示されている。このシール62は、次のように製造される。すなわち、まず、射出成形等によりシール部60を成形する。次に、シール用の成形型のキャビティ内に同シール部60を配置した状態で、同キャビティ内に合成樹脂材料を注入してリテーナ部61を成形する。このとき、合成樹脂材料が、シール部60との接合面に結合される。このシール62は、成形時においてシール部60のみを加熱架橋させればよいため、上記シール51よりも成形時間が短縮される。
【特許文献1】特開平6−2790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ゴム材と合成樹脂との接合強度は、ゴム材同士の接合強度よりも低いことが知られている。一方、ダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52の周溝52aに装着されたシール51には、ダクタイル鋳鉄管50の接合動作時において、図12に矢印aで示すように、雄側端部53からシール部51bに対し、ヒール部51aから引き離す方向の力が加わる。このため、ダクタイル鋳鉄管50の接合部のシールとして上記特許文献1のシール62を用いた場合、リテーナ部61とシール部60との接合強度が不足し、ダクタイル鋳鉄管50の接合時に、リテーナ部61からシール部60が脱落する可能性がある。
【0006】
また、図11及び図12に示すシール51を雌側端部52の周溝52aに装着するときには、シール51の周方向における一部をシール51の内側に撓ませた状態で雌側端部52の内周に入れ込まなければならない。しかしながら、特許文献1のシール62のようにリテーナ部61が合成樹脂によって形成されているとその全体の可撓性が不足し、ダクタイル鋳鉄管50への装着が困難となる。
【0007】
この発明の目的は、成形時間を短縮できるとともに、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保でき、しかも、全体として良好な可撓性を有するシール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成された水道管継手用シールであって、前記ヒール部を、動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シール部及びヒール部の少なくともいずれか一方に凹部を形成するとともに、その他方には同凹部内に配置された凸部を形成し、同凹部に対する同凸部のアンカー作用によりシール部及びヒール部を機械的に結合させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記シール部のショアA硬度は50〜60の範囲内とされるとともに、前記ヒール部のショアA硬度は70〜90の範囲内とされていることを特徴とする。なお、このショアA硬度は、JIS K 6353に規定されているものに基づく。
【0011】
請求項4に記載の発明は、合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成されたシールの製造方法であって、前記シール部を成形するためのシール形成部を有する第1金型と、同シール形成部を閉塞する第2金型とを組み合わせた状態でシール形成部に合成ゴムを射出し、第1金型及び第2金型を加熱して前記シール形成部内の合成ゴムを所定時間加熱架橋させてシール部を成形した後、前記ヒール部を成形するためのヒール形成部を有する第3金型を第2金型に代えて第1金型に組み合わせ、この状態でヒール形成部に熱可塑性エラストマーを射出し、ヒール形成部内の動的架橋型熱可塑性エラストマーを冷却して硬化させることによりヒール部を成形するとともに同シール部とヒール部とを接合させることを特徴とする。
【0012】
(作用)
この発明によれば、合成ゴムにてシール部を形成し、動的架橋型熱可塑性エラストマーによりヒール部を形成するため、金型による成形時にはシール部のみを金型内において加熱架橋させればよい。このため、シール部及びヒール部を共に合成ゴムにより形成し、両方を金型内で加熱架橋させる場合に比較して、加熱架橋を必要とする成形部分の容量が小さくなるため、金型での加熱架橋に要する時間が短縮される。この結果、金型におけるシールの成形時間が短縮される。また、合成ゴムよりなるシール部と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部との接合強度は、合成ゴムよりなるシール部と合成樹脂よりなるヒール部との接合強度よりも向上する。従って、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保できる。また、動的架橋型熱可塑性エラストマーは、合成樹脂よりも可撓性に富む。従って、シール全体として良好な可撓性を確保できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、成形時間を短縮できるとともに、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保でき、しかも、全体として良好な可撓性を確保できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について図1〜図3を用いて説明する。
図1(a),(b)及び図2に示すように、シール10は、合成ゴムによって形成された環状のシール部11と、合成ゴムより高い硬度の動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるとともにこのシール部11に接合された環状のヒール部12とにより構成されている。JIS K 6353に規定されたシール部11のショアA硬度は50〜60の範囲内とされるとともに、同じくヒール部12のショアA硬度は70〜90の範囲内とされている。
【0015】
シール部11に用いる合成ゴムと、ヒール部12に用いる動的架橋熱可塑性エラストマーとは、シール部11とヒール部12との接着強度を向上させるために相溶性が良好なもの同士を組み合わせることが好ましい。例えば、合成ゴムとしてオレフィン系ゴムであるエチレン・プロピレンゴム(EP)を用いた場合には、動的架橋型熱可塑性エラストマーとしてオレフィン系動的架橋熱可塑性エラストマー(オレフィン系樹脂(PP,PE)のマトリックスにオレフィン系ゴム(EPR,EPDM)を動的架橋し微分散したもの(商品名;「サントプレーン」(エーイーエス・ジャパン(株)製等))を用いることが好ましい。また、スチレン・ブタジエン・ゴム(SBR)には、スチレン系動的架橋熱可塑性エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー(SIS)を組み合わせることが好ましい。また、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)、 ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)等の水素添加スチレン系動的架橋熱可塑性エラストマーは、オレフィン系合成ゴム、スチレン系合成ゴムのいずれに対しても比較的良好な相溶性を示す。このため、水素添加スチレン系動的架橋熱可塑性エラストマーからなるヒール部12には、複数種類の合成ゴムからなるシール部11を組み合わせることができる。
【0016】
シール部11とヒール部12とは、円錐面状の境界面により接合されている。合成ゴムにより形成されたシール部11は、図11に示すように、ダクタイル鋳鉄管50の接合部分において雄側端部53の外周面53aに密接する柔軟性を有している。一方、合成ゴムよりも高い硬度を有する動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成されたヒール部12は、ダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52の周溝52aに対する脱着を可能とする可撓性と、雌側端部52への雄側端部53の挿入時においてシール部11を所定位置に保持する剛性とを有している。
【0017】
次に、上記シール10の製造方法について説明する。
シール10は、図3(a),(b)に示すような成形金型20を用いて射出成形される。成形金型20は、下金型21aと、この下金型21aに組み合わされる中金型21bよりなる第1金型22を備え、この第1金型22には、シール10のシール部11を成形するためのシール形成部23が形成されている。また、成形金型20は、第1金型22に対して選択的に組み合わされる第2金型24及び第3金型25を備えている。第2金型24は、第1金型22に組み合わされた状態において前記シール形成部23を閉塞する。また、第3金型25は、第1金型22に組み合わされた状態においてヒール部12を成形するためのヒール形成部26を備えている。
【0018】
シール10を成形するには、まず、図3(a)に示すように、第1金型22に第2金型24を組み合わせるとともに、図示しない加熱装置により第1金型22及び第2金型24を加熱し、第2金型24のゲート24aを介してシール形成部23に合成ゴム材料を射出する。そして、シール形成部23内の合成ゴム材料を所定時間加熱架橋させることによりシール部11を成形する。
【0019】
次に、第1金型22から第2金型24を取り外し、その代わりに、前記第3金型25を第1金型22に組み合わせる。この状態において、第3金型25のゲート25aを介してヒール形成部26内に動的架橋型熱可塑性エラストマーを射出する。このとき、射出速度や射出圧が高いほど発熱量が多くなり、ヒール形成部26内の空気の温度、さらには、第3金型25の温度が上昇し易くなる。この温度上昇を抑制し、ヒール形成部26内の動的架橋型熱可塑性エラストマーの硬化を促進するために、ヒール形成部26に対して動的架橋型熱可塑性エラストマーをより低圧で射出する。すなわち、ヒール部12は加熱架橋不要な動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成されるため、シール部11とは異なり成形時において第3金型25を加熱する必要がない。このとき、動的架橋型熱可塑性エラストマーを低圧で射出することにより、ヒール部12に成形歪みが生じにくくなる。そして、ヒール形成部26内の動的架橋型熱可塑性エラストマーを冷却して硬化させることによりヒール部12を形成するとともにシール部11とヒール部12とを接合させる。このとき、シール部11とヒール部12とは、合成ゴムと合成樹脂との組み合わせよりも相溶性が高い合成ゴムと動的架橋型熱可塑性エラストマーの組み合わせであるため、良好に接合される。
【0020】
以上の工程により、合成ゴムよりなるシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるとともにシール部11に接合されたヒール部12とにより構成されたシール10が製作される。このようにして成形されたシール10におけるヒール部12とシール部11との接合強度は5MPa以上であった。これに対し、合成樹脂によって形成されたヒール部とシール部11との接合強度は0MPaに近かった。すなわち、合成樹脂によってヒール部が形成されたシールを成形金型20から取り外そうとすると、それだけでシール部11とヒール部とが分離してしまった。
【0021】
以上のように構成されたシール10は、図11及び図12に示す前記ダクタイル鋳鉄管50における雌側端部52の周溝52aの内径とほぼ同じ外径のものが同ダクタイル鋳鉄管50の継手部に使用される。そして、シール10は、その周方向における一部をシール10の内側に撓ませた状態で周溝52aに装着される。このとき、ヒール部12が合成樹脂よりも可撓性に富んだ動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成されているため、シール10はその全体が容易に撓んでヒール部12が周溝52aに対し容易に嵌入する。
【0022】
2つのダクタイル鋳鉄管50を接続するときに、一方のダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52に対して他方のダクタイル鋳鉄管50の雄側端部53を挿入させると、雄側端部53の外周面53aに対してシール10のシール部11が圧接された状態となる。そして、このシール部11により、2つのダクタイル鋳鉄管50の継手部がシールされる。このように雌側端部52に対して雄側端部53を挿入させるとき、シール10のシール部11が雄側端部53によって雄側端部53の奥に向かって押される。このとき、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部12と合成ゴムよりなるシール部11との接合強度が、合成ゴムと合成樹脂との接合強度よりも高いことから、シール部11のヒール部12からの脱落が有効に防止される。
【0023】
この実施形態は、以下の効果を発揮する。
(1) 合成ゴムよりなるシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部12とによりシール10を構成したため、成形金型20による成形時には、シール部11のみを成形金型20内において加熱架橋させればよい。このため、シール部11及びヒール部12を共に合成ゴムにより形成し、両方を成形金型20内で加熱架橋させる場合に比較して、加熱架橋を必要とする成形部分の容量が小さくなるため、成形金型20での加熱架橋に要する時間が短縮される。この結果、シール10の成形時間が短縮される。
【0024】
(2) 合成ゴムよりなるシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部12との接合強度は、同シール部11と、合成樹脂よりなるヒール部との接合強度よりも向上する。従って、シール部11とヒール部12との接合強度を良好に確保できる。ゆえに、ダクタイル鋳鉄管への装着時において、シール部11とヒール部12との分離を防止することができる。
【0025】
(3) 動的架橋型熱可塑性エラストマーは、合成樹脂よりも可撓性に富む。従って、シール10全体として良好な可撓性を確保できるため、ダクタイル鋳鉄管への装着を容易に行うことができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について図4〜図6を用いて説明する。
図4に示すシール10のシール部11には、図5に示すように、環状の溝部30が複数本(図4,5では2本)形成されている。この各溝部30は、その底部側において断面積が拡大する形状を備えている。また、ヒール部12には、前記溝部30内に配置された突条部31が複数本形成されている。そして、シール部11とヒール部12とは、その境界面での接合に加え、各溝部30に対する突条部31のアンカー作用により機械的にも結合されている。
【0027】
この実施形態のシール10は、第1実施形態で用いた成形金型20とほぼ同じ構成の図6(a),(b)に示すような成形金型20を用いて射出成形される。この成形金型20における第2金型24には、前記溝部30を形成するための環状の突条部24bが複数(図6(a)では2本)形成されている。そして、第1金型22に第2金型24を組み合わせた状態で、シール形成部23に合成ゴム材料を射出することにより、溝部30を有するシール部11が成形される。
【0028】
次に、第1金型22に第3金型25を組み合わせた状態でヒール形成部26に動的架橋型熱可塑性エラストマーを射出することにより、シール部11の溝部30内に配置された突条部31を有するヒール部12が成形される。
【0029】
以上のように構成されたこの実施形態は、第1実施形態と同様に、ダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52の周溝52aに対して容易に装着される。
この実施形態は、前記第1実施形態の(1)〜(3)に記載した効果の他に下記の効果を発揮する。
【0030】
(4) シール部11に溝部30を複数形成するとともに、各溝部30内に配置された突条部31をヒール部12に形成した。そして、各溝部30に対する突条部31のアンカー作用により、シール部11とヒール部12とを機械的に結合させた。このため、シール部11とヒール部12との結合強度がさらに向上し、ヒール部12からのシール部11の脱落が有効に防止される。
【0031】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態について図7及び図8を用いて説明する。
図7に示すシール40は、前記シール部11と同様の合成ゴムによって形成された環状のシール部41と、前記ヒール部12と同様の動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるとともにシール部41に接合された環状のヒール部42とにより構成されている。このシール40は、前記シール10と同様にして成形される。
【0032】
このシール40は、図8に示すように、一方のダクタイル鋳鉄管50における雌側端部52の内周側に形成された斜面52bと、他方のダクタイル鋳鉄管50における雄側端部53の外周面53aとの間に装着される。シール40は、雌側端部52に装着された押し輪54によってヒール部42を雌側端部52側に押圧されることにより、斜面52b及び外周面53aにシール部11を押圧させた状態で保持される。そして、このシール部11により、ダクタイル鋳鉄管50の接合部がシールされる。
【0033】
この実施形態のシール40は、上記第1実施形態の(1)〜(3)に記載の各効果を有する。
(他の実施形態)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0034】
・ 第2実施形態において、図9に示すように、ヒール部12に溝部30を形成するとともに、同溝部30に対応する突条部31をシール部11に形成する。そして、ヒール部12の溝部30に対するシール部11の突条部31のアンカー作用によりシール部11及びヒール部12を機械的に結合させる。
【0035】
・ 図10に示すように、シール部11とヒール部12との境界面を周方向に延びる複数のひだ状に形成する。この場合には、シール部11とヒール部12との接合面積が増大し、両者の接合強度が向上する。
【0036】
・ シール部11の周方向に沿って穴部を複数箇所に形成するとともに、ヒール部12の周方向に沿って各穴部に対応する凸部を複数箇所に形成する。そして、各穴部に対する凸部のアンカー作用によりシール部11及びヒール部12を機械的に結合させる。
【0037】
・ 図3(b)又は図6(b)に二点鎖線で示すように、成形金型20の第3金型25において第1金型22と当接する側に断熱部43を設ける。この場合には、ヒール部12の成形時において第1金型22から第3金型25への熱の伝達が断熱部43により制限されるため、第1金型22の熱による第3金型25の温度上昇が抑制される。従って、第3金型25のヒール形成部26に射出された動的架橋型熱可塑性エラストマーが有効に冷却されてその硬化時間が短縮されるため、シール10の成形に要する時間が一層短縮される。
【0038】
・ この発明のシールは、合成ゴムよりなるシール部11と、このシール部11よりも高い硬度を有する動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるものであればよく、シール部11,41及びヒール部12,42の断面形状は上記各実施形態に限定されない。
【0039】
以下、上記各実施形態から把握される技術的思想を記載する。
(1) 合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成された水道管継手用シールの成形金型であって、前記シール部を成形するためのシール形成部を有する第1金型と、同第1金型に組み合わされるとともに同シール形成部を閉塞する第2金型と、同第2金型に代えて第1金型に組み合わされるとともに前記ヒール部を成形するためのヒール形成部を有する第3金型とによって構成されることを特徴とする水道管継手用シールの成形金型。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は第1実施形態のシールを示す正面図、(b)は同じく一部破断状態の側面図。
【図2】シールの縦断面図。
【図3】(a),(b)は共に成形金型を示す縦断面図。
【図4】第2実施形態のシールを示す一部破断状態の側面図。
【図5】シールの縦断面図。
【図6】(a),(b)は共に成形金型を示す縦断面図。
【図7】第3実施形態のシールの一部を示す縦断面図。
【図8】シールが装着されたダクタイル鋳鉄管を示す縦断面図。
【図9】他の実施形態のシールを示す縦断面図。
【図10】他の実施形態のシールを示す縦断面図。
【図11】従来のシールが装着されたダクタイル鋳鉄管を示す縦断面図。
【図12】シールが装着されたダクタイル鋳鉄管の接合部を示す縦断面図。
【図13】別のシールを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
10…水道管継手用シール、11…シール部、12…ヒール部、20…成形金型、22…第1金型、23…シール形成部、24…第2金型、25…第3金型、26…ヒール形成部、30…凹部としての溝部、31…凸部としての突条部、40…シール、41…シール部、42…ヒール部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばダクタイル鋳鉄管等の水道管の継手部に装着されるシール、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図11及び図12に示すように、例えばダクタイル鋳鉄管50の継手部には、合成ゴムよりなるシール51が装着されている。このシール51は、一方のダクタイル鋳鉄管50における雌側端部52の内周に形成された周溝52aに装着され、同雌側端部52の内側に挿入された他方のダクタイル鋳鉄管50における雄側端部53の外周面53aに押し付けられる。シール51は、ダクタイル鋳鉄管50の周溝52aに嵌め込まれるヒール部51aと、このヒール部51aに対し接合されたシール部51bとよりなる。ヒール部51aは、シール部51bよりも高い硬度の合成ゴムによって形成され、周溝52aに対する脱着時に容易に撓む柔軟性と、周溝52aに装着された状態においてシール部51bを保持するための剛性とを備えている。
【0003】
上記シールは、例えば以下のような方法により製造されている。すなわち、まず、合成ゴムを押し出し成形した部材を所定長さに切断し、これを環状に曲げた状態でシールの成形型のキャビティ内に配置する。この部材は、シール部51bとなる。次に、成形型に合成ゴムを射出し、キャビティ内でヒール部51aを成形する。次に、成形型を加熱してその温度を150〜160℃程度に維持し、この状態を15〜20分間程度保持する。そして、このときの熱によってキャビティ内のシール部51b及びヒール部51aを加熱架橋させるとともに一体化させる。以上の工程により、異なる硬度の合成ゴムよりなるシールが製造される。ところが、ゴム製品の架橋に要する時間は、その体積が大きいほど長くなる。上記シールの加熱架橋に要する時間は15〜20分間必要であるため、その製造コストが高くなっている。
【0004】
また、特許文献1には、図13に示すように、ゴム材よりなるシール部60と、合成樹脂よりなるリテーナ部(前記ヒール部51aに相当)61とを一体化した管継手用のシール62が開示されている。このシール62は、次のように製造される。すなわち、まず、射出成形等によりシール部60を成形する。次に、シール用の成形型のキャビティ内に同シール部60を配置した状態で、同キャビティ内に合成樹脂材料を注入してリテーナ部61を成形する。このとき、合成樹脂材料が、シール部60との接合面に結合される。このシール62は、成形時においてシール部60のみを加熱架橋させればよいため、上記シール51よりも成形時間が短縮される。
【特許文献1】特開平6−2790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ゴム材と合成樹脂との接合強度は、ゴム材同士の接合強度よりも低いことが知られている。一方、ダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52の周溝52aに装着されたシール51には、ダクタイル鋳鉄管50の接合動作時において、図12に矢印aで示すように、雄側端部53からシール部51bに対し、ヒール部51aから引き離す方向の力が加わる。このため、ダクタイル鋳鉄管50の接合部のシールとして上記特許文献1のシール62を用いた場合、リテーナ部61とシール部60との接合強度が不足し、ダクタイル鋳鉄管50の接合時に、リテーナ部61からシール部60が脱落する可能性がある。
【0006】
また、図11及び図12に示すシール51を雌側端部52の周溝52aに装着するときには、シール51の周方向における一部をシール51の内側に撓ませた状態で雌側端部52の内周に入れ込まなければならない。しかしながら、特許文献1のシール62のようにリテーナ部61が合成樹脂によって形成されているとその全体の可撓性が不足し、ダクタイル鋳鉄管50への装着が困難となる。
【0007】
この発明の目的は、成形時間を短縮できるとともに、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保でき、しかも、全体として良好な可撓性を有するシール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成された水道管継手用シールであって、前記ヒール部を、動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シール部及びヒール部の少なくともいずれか一方に凹部を形成するとともに、その他方には同凹部内に配置された凸部を形成し、同凹部に対する同凸部のアンカー作用によりシール部及びヒール部を機械的に結合させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記シール部のショアA硬度は50〜60の範囲内とされるとともに、前記ヒール部のショアA硬度は70〜90の範囲内とされていることを特徴とする。なお、このショアA硬度は、JIS K 6353に規定されているものに基づく。
【0011】
請求項4に記載の発明は、合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成されたシールの製造方法であって、前記シール部を成形するためのシール形成部を有する第1金型と、同シール形成部を閉塞する第2金型とを組み合わせた状態でシール形成部に合成ゴムを射出し、第1金型及び第2金型を加熱して前記シール形成部内の合成ゴムを所定時間加熱架橋させてシール部を成形した後、前記ヒール部を成形するためのヒール形成部を有する第3金型を第2金型に代えて第1金型に組み合わせ、この状態でヒール形成部に熱可塑性エラストマーを射出し、ヒール形成部内の動的架橋型熱可塑性エラストマーを冷却して硬化させることによりヒール部を成形するとともに同シール部とヒール部とを接合させることを特徴とする。
【0012】
(作用)
この発明によれば、合成ゴムにてシール部を形成し、動的架橋型熱可塑性エラストマーによりヒール部を形成するため、金型による成形時にはシール部のみを金型内において加熱架橋させればよい。このため、シール部及びヒール部を共に合成ゴムにより形成し、両方を金型内で加熱架橋させる場合に比較して、加熱架橋を必要とする成形部分の容量が小さくなるため、金型での加熱架橋に要する時間が短縮される。この結果、金型におけるシールの成形時間が短縮される。また、合成ゴムよりなるシール部と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部との接合強度は、合成ゴムよりなるシール部と合成樹脂よりなるヒール部との接合強度よりも向上する。従って、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保できる。また、動的架橋型熱可塑性エラストマーは、合成樹脂よりも可撓性に富む。従って、シール全体として良好な可撓性を確保できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、成形時間を短縮できるとともに、ヒール部とシール部との接合強度を良好に確保でき、しかも、全体として良好な可撓性を確保できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について図1〜図3を用いて説明する。
図1(a),(b)及び図2に示すように、シール10は、合成ゴムによって形成された環状のシール部11と、合成ゴムより高い硬度の動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるとともにこのシール部11に接合された環状のヒール部12とにより構成されている。JIS K 6353に規定されたシール部11のショアA硬度は50〜60の範囲内とされるとともに、同じくヒール部12のショアA硬度は70〜90の範囲内とされている。
【0015】
シール部11に用いる合成ゴムと、ヒール部12に用いる動的架橋熱可塑性エラストマーとは、シール部11とヒール部12との接着強度を向上させるために相溶性が良好なもの同士を組み合わせることが好ましい。例えば、合成ゴムとしてオレフィン系ゴムであるエチレン・プロピレンゴム(EP)を用いた場合には、動的架橋型熱可塑性エラストマーとしてオレフィン系動的架橋熱可塑性エラストマー(オレフィン系樹脂(PP,PE)のマトリックスにオレフィン系ゴム(EPR,EPDM)を動的架橋し微分散したもの(商品名;「サントプレーン」(エーイーエス・ジャパン(株)製等))を用いることが好ましい。また、スチレン・ブタジエン・ゴム(SBR)には、スチレン系動的架橋熱可塑性エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー(SIS)を組み合わせることが好ましい。また、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)、 ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)等の水素添加スチレン系動的架橋熱可塑性エラストマーは、オレフィン系合成ゴム、スチレン系合成ゴムのいずれに対しても比較的良好な相溶性を示す。このため、水素添加スチレン系動的架橋熱可塑性エラストマーからなるヒール部12には、複数種類の合成ゴムからなるシール部11を組み合わせることができる。
【0016】
シール部11とヒール部12とは、円錐面状の境界面により接合されている。合成ゴムにより形成されたシール部11は、図11に示すように、ダクタイル鋳鉄管50の接合部分において雄側端部53の外周面53aに密接する柔軟性を有している。一方、合成ゴムよりも高い硬度を有する動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成されたヒール部12は、ダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52の周溝52aに対する脱着を可能とする可撓性と、雌側端部52への雄側端部53の挿入時においてシール部11を所定位置に保持する剛性とを有している。
【0017】
次に、上記シール10の製造方法について説明する。
シール10は、図3(a),(b)に示すような成形金型20を用いて射出成形される。成形金型20は、下金型21aと、この下金型21aに組み合わされる中金型21bよりなる第1金型22を備え、この第1金型22には、シール10のシール部11を成形するためのシール形成部23が形成されている。また、成形金型20は、第1金型22に対して選択的に組み合わされる第2金型24及び第3金型25を備えている。第2金型24は、第1金型22に組み合わされた状態において前記シール形成部23を閉塞する。また、第3金型25は、第1金型22に組み合わされた状態においてヒール部12を成形するためのヒール形成部26を備えている。
【0018】
シール10を成形するには、まず、図3(a)に示すように、第1金型22に第2金型24を組み合わせるとともに、図示しない加熱装置により第1金型22及び第2金型24を加熱し、第2金型24のゲート24aを介してシール形成部23に合成ゴム材料を射出する。そして、シール形成部23内の合成ゴム材料を所定時間加熱架橋させることによりシール部11を成形する。
【0019】
次に、第1金型22から第2金型24を取り外し、その代わりに、前記第3金型25を第1金型22に組み合わせる。この状態において、第3金型25のゲート25aを介してヒール形成部26内に動的架橋型熱可塑性エラストマーを射出する。このとき、射出速度や射出圧が高いほど発熱量が多くなり、ヒール形成部26内の空気の温度、さらには、第3金型25の温度が上昇し易くなる。この温度上昇を抑制し、ヒール形成部26内の動的架橋型熱可塑性エラストマーの硬化を促進するために、ヒール形成部26に対して動的架橋型熱可塑性エラストマーをより低圧で射出する。すなわち、ヒール部12は加熱架橋不要な動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成されるため、シール部11とは異なり成形時において第3金型25を加熱する必要がない。このとき、動的架橋型熱可塑性エラストマーを低圧で射出することにより、ヒール部12に成形歪みが生じにくくなる。そして、ヒール形成部26内の動的架橋型熱可塑性エラストマーを冷却して硬化させることによりヒール部12を形成するとともにシール部11とヒール部12とを接合させる。このとき、シール部11とヒール部12とは、合成ゴムと合成樹脂との組み合わせよりも相溶性が高い合成ゴムと動的架橋型熱可塑性エラストマーの組み合わせであるため、良好に接合される。
【0020】
以上の工程により、合成ゴムよりなるシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるとともにシール部11に接合されたヒール部12とにより構成されたシール10が製作される。このようにして成形されたシール10におけるヒール部12とシール部11との接合強度は5MPa以上であった。これに対し、合成樹脂によって形成されたヒール部とシール部11との接合強度は0MPaに近かった。すなわち、合成樹脂によってヒール部が形成されたシールを成形金型20から取り外そうとすると、それだけでシール部11とヒール部とが分離してしまった。
【0021】
以上のように構成されたシール10は、図11及び図12に示す前記ダクタイル鋳鉄管50における雌側端部52の周溝52aの内径とほぼ同じ外径のものが同ダクタイル鋳鉄管50の継手部に使用される。そして、シール10は、その周方向における一部をシール10の内側に撓ませた状態で周溝52aに装着される。このとき、ヒール部12が合成樹脂よりも可撓性に富んだ動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成されているため、シール10はその全体が容易に撓んでヒール部12が周溝52aに対し容易に嵌入する。
【0022】
2つのダクタイル鋳鉄管50を接続するときに、一方のダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52に対して他方のダクタイル鋳鉄管50の雄側端部53を挿入させると、雄側端部53の外周面53aに対してシール10のシール部11が圧接された状態となる。そして、このシール部11により、2つのダクタイル鋳鉄管50の継手部がシールされる。このように雌側端部52に対して雄側端部53を挿入させるとき、シール10のシール部11が雄側端部53によって雄側端部53の奥に向かって押される。このとき、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部12と合成ゴムよりなるシール部11との接合強度が、合成ゴムと合成樹脂との接合強度よりも高いことから、シール部11のヒール部12からの脱落が有効に防止される。
【0023】
この実施形態は、以下の効果を発揮する。
(1) 合成ゴムよりなるシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部12とによりシール10を構成したため、成形金型20による成形時には、シール部11のみを成形金型20内において加熱架橋させればよい。このため、シール部11及びヒール部12を共に合成ゴムにより形成し、両方を成形金型20内で加熱架橋させる場合に比較して、加熱架橋を必要とする成形部分の容量が小さくなるため、成形金型20での加熱架橋に要する時間が短縮される。この結果、シール10の成形時間が短縮される。
【0024】
(2) 合成ゴムよりなるシール部11と、動的架橋型熱可塑性エラストマーよりなるヒール部12との接合強度は、同シール部11と、合成樹脂よりなるヒール部との接合強度よりも向上する。従って、シール部11とヒール部12との接合強度を良好に確保できる。ゆえに、ダクタイル鋳鉄管への装着時において、シール部11とヒール部12との分離を防止することができる。
【0025】
(3) 動的架橋型熱可塑性エラストマーは、合成樹脂よりも可撓性に富む。従って、シール10全体として良好な可撓性を確保できるため、ダクタイル鋳鉄管への装着を容易に行うことができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について図4〜図6を用いて説明する。
図4に示すシール10のシール部11には、図5に示すように、環状の溝部30が複数本(図4,5では2本)形成されている。この各溝部30は、その底部側において断面積が拡大する形状を備えている。また、ヒール部12には、前記溝部30内に配置された突条部31が複数本形成されている。そして、シール部11とヒール部12とは、その境界面での接合に加え、各溝部30に対する突条部31のアンカー作用により機械的にも結合されている。
【0027】
この実施形態のシール10は、第1実施形態で用いた成形金型20とほぼ同じ構成の図6(a),(b)に示すような成形金型20を用いて射出成形される。この成形金型20における第2金型24には、前記溝部30を形成するための環状の突条部24bが複数(図6(a)では2本)形成されている。そして、第1金型22に第2金型24を組み合わせた状態で、シール形成部23に合成ゴム材料を射出することにより、溝部30を有するシール部11が成形される。
【0028】
次に、第1金型22に第3金型25を組み合わせた状態でヒール形成部26に動的架橋型熱可塑性エラストマーを射出することにより、シール部11の溝部30内に配置された突条部31を有するヒール部12が成形される。
【0029】
以上のように構成されたこの実施形態は、第1実施形態と同様に、ダクタイル鋳鉄管50の雌側端部52の周溝52aに対して容易に装着される。
この実施形態は、前記第1実施形態の(1)〜(3)に記載した効果の他に下記の効果を発揮する。
【0030】
(4) シール部11に溝部30を複数形成するとともに、各溝部30内に配置された突条部31をヒール部12に形成した。そして、各溝部30に対する突条部31のアンカー作用により、シール部11とヒール部12とを機械的に結合させた。このため、シール部11とヒール部12との結合強度がさらに向上し、ヒール部12からのシール部11の脱落が有効に防止される。
【0031】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態について図7及び図8を用いて説明する。
図7に示すシール40は、前記シール部11と同様の合成ゴムによって形成された環状のシール部41と、前記ヒール部12と同様の動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるとともにシール部41に接合された環状のヒール部42とにより構成されている。このシール40は、前記シール10と同様にして成形される。
【0032】
このシール40は、図8に示すように、一方のダクタイル鋳鉄管50における雌側端部52の内周側に形成された斜面52bと、他方のダクタイル鋳鉄管50における雄側端部53の外周面53aとの間に装着される。シール40は、雌側端部52に装着された押し輪54によってヒール部42を雌側端部52側に押圧されることにより、斜面52b及び外周面53aにシール部11を押圧させた状態で保持される。そして、このシール部11により、ダクタイル鋳鉄管50の接合部がシールされる。
【0033】
この実施形態のシール40は、上記第1実施形態の(1)〜(3)に記載の各効果を有する。
(他の実施形態)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0034】
・ 第2実施形態において、図9に示すように、ヒール部12に溝部30を形成するとともに、同溝部30に対応する突条部31をシール部11に形成する。そして、ヒール部12の溝部30に対するシール部11の突条部31のアンカー作用によりシール部11及びヒール部12を機械的に結合させる。
【0035】
・ 図10に示すように、シール部11とヒール部12との境界面を周方向に延びる複数のひだ状に形成する。この場合には、シール部11とヒール部12との接合面積が増大し、両者の接合強度が向上する。
【0036】
・ シール部11の周方向に沿って穴部を複数箇所に形成するとともに、ヒール部12の周方向に沿って各穴部に対応する凸部を複数箇所に形成する。そして、各穴部に対する凸部のアンカー作用によりシール部11及びヒール部12を機械的に結合させる。
【0037】
・ 図3(b)又は図6(b)に二点鎖線で示すように、成形金型20の第3金型25において第1金型22と当接する側に断熱部43を設ける。この場合には、ヒール部12の成形時において第1金型22から第3金型25への熱の伝達が断熱部43により制限されるため、第1金型22の熱による第3金型25の温度上昇が抑制される。従って、第3金型25のヒール形成部26に射出された動的架橋型熱可塑性エラストマーが有効に冷却されてその硬化時間が短縮されるため、シール10の成形に要する時間が一層短縮される。
【0038】
・ この発明のシールは、合成ゴムよりなるシール部11と、このシール部11よりも高い硬度を有する動的架橋型熱可塑性エラストマーによって形成されるものであればよく、シール部11,41及びヒール部12,42の断面形状は上記各実施形態に限定されない。
【0039】
以下、上記各実施形態から把握される技術的思想を記載する。
(1) 合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成された水道管継手用シールの成形金型であって、前記シール部を成形するためのシール形成部を有する第1金型と、同第1金型に組み合わされるとともに同シール形成部を閉塞する第2金型と、同第2金型に代えて第1金型に組み合わされるとともに前記ヒール部を成形するためのヒール形成部を有する第3金型とによって構成されることを特徴とする水道管継手用シールの成形金型。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は第1実施形態のシールを示す正面図、(b)は同じく一部破断状態の側面図。
【図2】シールの縦断面図。
【図3】(a),(b)は共に成形金型を示す縦断面図。
【図4】第2実施形態のシールを示す一部破断状態の側面図。
【図5】シールの縦断面図。
【図6】(a),(b)は共に成形金型を示す縦断面図。
【図7】第3実施形態のシールの一部を示す縦断面図。
【図8】シールが装着されたダクタイル鋳鉄管を示す縦断面図。
【図9】他の実施形態のシールを示す縦断面図。
【図10】他の実施形態のシールを示す縦断面図。
【図11】従来のシールが装着されたダクタイル鋳鉄管を示す縦断面図。
【図12】シールが装着されたダクタイル鋳鉄管の接合部を示す縦断面図。
【図13】別のシールを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
10…水道管継手用シール、11…シール部、12…ヒール部、20…成形金型、22…第1金型、23…シール形成部、24…第2金型、25…第3金型、26…ヒール形成部、30…凹部としての溝部、31…凸部としての突条部、40…シール、41…シール部、42…ヒール部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成された水道管継手用シールであって、
前記ヒール部を、動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成したことを特徴とするシール。
【請求項2】
前記シール部及びヒール部の少なくともいずれか一方に凹部を形成するとともに、その他方には同凹部内に配置された凸部を形成し、同凹部に対する同凸部のアンカー作用によりシール部及びヒール部を機械的に結合させたことを特徴とする請求項1に記載のシール。
【請求項3】
前記シール部のショアA硬度は50〜60の範囲内とされるとともに、前記ヒール部のショアA硬度は70〜90の範囲内とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール。
【請求項4】
合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成されたシールの製造方法であって、
前記シール部を成形するためのシール形成部を有する第1金型と、同シール形成部を閉塞する第2金型とを組み合わせた状態でシール形成部に合成ゴムを射出し、第1金型及び第2金型を加熱して前記シール形成部内の合成ゴムを所定時間加熱架橋させてシール部を成形した後、前記ヒール部を成形するためのヒール形成部を有する第3金型を第2金型に代えて第1金型に組み合わせ、この状態でヒール形成部に動的架橋型熱可塑性エラストマーを射出し、ヒール形成部内の動的架橋型熱可塑性エラストマーを冷却して硬化させることによりヒール部を成形するとともに同シール部とヒール部とを接合させることを特徴とするシールの製造方法。
【請求項1】
合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成された水道管継手用シールであって、
前記ヒール部を、動的架橋型熱可塑性エラストマーにより形成したことを特徴とするシール。
【請求項2】
前記シール部及びヒール部の少なくともいずれか一方に凹部を形成するとともに、その他方には同凹部内に配置された凸部を形成し、同凹部に対する同凸部のアンカー作用によりシール部及びヒール部を機械的に結合させたことを特徴とする請求項1に記載のシール。
【請求項3】
前記シール部のショアA硬度は50〜60の範囲内とされるとともに、前記ヒール部のショアA硬度は70〜90の範囲内とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール。
【請求項4】
合成ゴムよりなるシール部と、このシール部よりも高い硬度を有する可撓性材料によって形成されるとともに同シール部に接合されたヒール部とにより構成されたシールの製造方法であって、
前記シール部を成形するためのシール形成部を有する第1金型と、同シール形成部を閉塞する第2金型とを組み合わせた状態でシール形成部に合成ゴムを射出し、第1金型及び第2金型を加熱して前記シール形成部内の合成ゴムを所定時間加熱架橋させてシール部を成形した後、前記ヒール部を成形するためのヒール形成部を有する第3金型を第2金型に代えて第1金型に組み合わせ、この状態でヒール形成部に動的架橋型熱可塑性エラストマーを射出し、ヒール形成部内の動的架橋型熱可塑性エラストマーを冷却して硬化させることによりヒール部を成形するとともに同シール部とヒール部とを接合させることを特徴とするシールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−157383(P2008−157383A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348141(P2006−348141)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(596004761)イノアックエラストマー株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(596004761)イノアックエラストマー株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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