説明

ジッタ低減回路および半導体集積回路

【課題】クロック信号に乗るジッタを低減することが可能なジッタ低減回路および半導体集積回路の提供を図る。
【解決手段】第1クロック信号CLK1の第1周波数を測定する第1周波数測定回路11と、第2クロック信号CLK2の第2周波数を測定する第2周波数測定回路12と、測定された前記第1および第2周波数を比較し、該第1および第2周波数が所定の関係に有るかどうかを判定する周波数比較判定回路20と、前記周波数比較判定回路からの第1制御信号CNT1を受け取り、前記第1クロック信号の遅延を制御して前記第2クロック信号によるジッタを低減する第1遅延制御回路41と、を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願で言及する実施例は、ジッタ低減回路および半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)は、微細化と共に高集積化および高機能化が進んでおり、例えば、異なる周波数のクロック信号を使用する複数の内部回路を有するものや、動作モードによって所定のクロック信号の周波数が変化するもの等が提供されている。
【0003】
このように、複数のクロック系統を有し、各クロック系統が異なる周波数で動作するLSIでは、或るクロック系統のディジタル回路の動作によって電源電圧が変動すると、その電源電圧変動が電源ノイズとなって他のクロック信号の伝搬過程でジッタが乗る。
【0004】
そのため、例えば、ジッタが乗ったクロック信号を使用する回路では、高速で正確なタイミングでの動作が困難になる。
【0005】
図1は従来の半導体集積回路の一例を示すブロック図であり、電源ノイズの影響を受けないようにした半導体集積回路の例を示すものである。
【0006】
図1において、参照符号50は半導体集積回路(チップ)を示し、また、500は半導体パッケージを示している。されに、参照符号51はクロックバッファ、52はデータブロック、53はクロックドライバ、そして、54はデータドライバを示している。
【0007】
図1に示す従来の半導体集積回路において、クロックバッファ51には、専用の電源線Aおよび接地線AGが接続され、また、データブロック52には、専用の電源線Bおよび接地線BGが接続される。
【0008】
さらに、クロックドライバ53には、専用の電源線Cおよび接地線CGが接続され、そして、データドライバ54には、専用の電源線Dおよび接地線DGが接続される。
【0009】
すなわち、クロックバッファ51、データブロック52、クロックドライバ53およびデータドライバ54といった各ディジタル回路に対して専用の電源線を用いて分離することで他のディジタル回路による電源ノイズがジッタとして回り込むのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−019100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、半導体集積回路50の内部において、各ディジタル回路の電源線を分離して或るディジタル回路で発生した電源ノイズが、例えば、同じ電源線を共有している他のクロック系回路に回り込むのを防いでクロックジッタを抑制するものが提案されている。
【0012】
しかし、図1に示されるように、例えば、クロックバッファ51,データブロック52,クロックドライバ53およびデータドライバ54に対して専用の電源線および接地線を提供するには、半導体パッケージ500にそのためのピンを設けなければならない。
【0013】
ところで、前述したように、近年、複数のクロック系統を有し、各クロック系統が異なる周波数で動作するLSI(半導体集積回路)が増えてきている。
【0014】
そして、このようなLSIにおいて、ジッタを抑制するために、例えば、電源ノイズを発生する回路と他のクロック系回路に対して専用の電源線および接地線を提供するには、電源ピンやグランドピンの大幅な増加につながるため、現実的ではない。
【0015】
さらに、近年のLSIでは、低消費電力化を図るために、動的にクロック信号の周波数を変化させる技術があり、その場合、変化するクロック信号の周波数に対応したジッタ対策を講じなければならない。
【0016】
この出願は、上述した課題に鑑み、クロック信号に乗るジッタを低減することが可能なジッタ低減回路および半導体集積回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1実施形態によれば、第1周波数測定回路と、第2周波数測定回路と、周波数比較判定回路と、第1遅延制御回路と、を有することを特徴とするジッタ低減回路が提供される。
【0018】
第1周波数測定回路は、第1クロック信号の第1周波数を測定し、第2周波数測定回路は、第2クロック信号の第2周波数を測定する。
【0019】
周波数比較判定回路は、測定された第1および第2周波数を比較し、該第1および第2周波数が所定の関係に有るかどうかを判定する。
【0020】
第1遅延制御回路は、周波数比較判定回路からの第1制御信号を受け取り、第1クロック信号の遅延を制御して第2クロック信号によるジッタを低減する。
【発明の効果】
【0021】
各実施例によれば、クロック信号に乗るジッタを低減することが可能なジッタ低減回路および半導体集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の半導体集積回路の一例を示すブロック図である。
【図2】本実施例のジッタ低減回路を有する半導体集積回路の一例を示すブロック図である。
【図3】図2のジッタ低減回路における周波数測定回路の一例を示すブロック図である。
【図4】図3の周波数測定回路の動作を説明するためのタイミング図である。
【図5】図2のジッタ低減回路における周波数比較判定回路の一例を示すブロック図である。
【図6】図5の周波数比較判定回路における判定回路の一例を示す図である。
【図7】図2のジッタ低減回路における遅延制御回路の一例を示すブロック図である。
【図8】2つの信号の周波数の比とジッタとの関係を説明するための図である。
【図9】本実施例のジッタ低減回路による遅延時間とジッタとの関係を説明するための図である。
【図10】図2のジッタ低減回路の動作を説明するためのタイミング図である。
【図11】本実施例のジッタ低減回路におけるジッタが少ない条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施例のジッタ低減回路および半導体集積回路を、添付図面を参照して詳述する。
【0024】
図2は本実施例のジッタ低減回路を有する半導体集積回路の一例を示すブロック図である。図2において、参照符号1は半導体集積回路、10はジッタ低減回路、41は第1内部回路、そして、42は第2内部回路を示している。
【0025】
図2に示されるように、本実施例の半導体集積回路1は、ジッタ低減回路10、並びに、第1内部回路41および第2内部回路42を有する。
【0026】
第1内部回路41および第2内部回路42は、それぞれジッタ低減回路10から出力される異なるクロック信号(第1,第2制御クロック信号CLK1',CLK2')で動作する回路であり、例えば、様々な機能を実現するための論理回路やメモリ回路等である。
【0027】
なお、半導体集積回路1は、例えば、ジッタ低減回路10から出力される制御クロック信号CLK1'およびCLK2'を第1内部回路41および第2内部回路42に供給せずに、半導体集積回路1の外部に直接出力するように構成してもよい。
【0028】
ジッタ低減回路10は、第1周波数測定回路11、第2周波数測定回路12、周波数比較判定回路20、第1遅延制御回路31および第2遅延制御回路32を有する。
【0029】
第1周波数測定回路11は、入力する第1クロック信号CLK1の周波数を測定して第1クロック周波数データf1dataを出力し、第2周波数測定回路12は、入力する第2クロック信号CLK2の周波数を測定して第2クロック周波数データf2dataを出力する。
【0030】
周波数比較判定回路20は、第1クロック周波数データf1dataおよび第2クロック周波数データf2dataを受け取って比較し、第1遅延制御回路31および第2遅延制御回路32に対して制御信号CNT1およびCNT2を出力する。
【0031】
第1遅延制御回路31は、第1クロック信号CLK1,第2クロック周波数データf2dataおよび第1制御信号CNT1を受け取り、第1クロック信号CLK1に対して後述する遅延処理を行って第1制御クロック信号CLK1'を出力する。
【0032】
第2遅延制御回路32は、第2クロック信号CLK2,第1クロック周波数データf1dataおよび第2制御信号CNT2を受け取り、第2クロック信号CLK2に対して後述する遅延処理を行って第2制御クロック信号CLK2'を出力する。
【0033】
すなわち、周波数比較判定回路20は、例えば、2つの回路(41,42)にそれぞれ入力されるクロック信号(CLK1,CLK2)の周波数を、周波数測定回路(11,12)で得られたデータからその関係性を比較判定する。
【0034】
そして、クロックにジッタが乗る条件であれば、周波数比較判定回路20からの制御信号(CNT1,CNT2)をアクティブにして、遅延制御回路(31,32)に入力するクロック信号(CLK1,CLK2)に対して所定の遅延を与えてクロック信号に乗るジッタを低減する。
【0035】
なお、図2では、2つのクロック信号CLK1,CLK2が相互に影響を及ぼしてそれぞれジッタを与える場合を示すが、例えば、第2クロック信号CLK2が第1クロック信号CLK1に対して与えるジッタのみを低減する場合には、第2遅延制御回路32等は不要になる。
【0036】
図3は図2のジッタ低減回路10における周波数測定回路11(12)の一例を示すブロック図であり、図4は図3の周波数測定回路11(12)の動作を説明するためのタイミング図である。
【0037】
ここで、第1および第2周波数測定回路11,12は同様の構成とされており、以下では、第1周波数測定回路11を例として説明する。
【0038】
図3に示されるように、第1周波数測定回路11は、バイナリカウンタ111,レジスタ112およびインバータ113,114を有する。
【0039】
第1クロック信号CLK1は、直列接続された2段のインバータ113,114を介してバイナリカウンタ111のイネーブル/リセット端子に供給されると共に、インバータ113で反転されてレジスタ112のクロック端子に供給される。
【0040】
ここで、バイナリカウンタ111は、2段のインバータ113,114を介して入力される第1クロック信号CLK1が高レベル『H』の期間にイネーブルとなってカウント動作を行い、低レベル『L』の期間にリセットされる。
【0041】
バイナリカウンタ111のクロック端子には基準クロック信号ref-clkが供給され、インバータ113,114を介してイネーブル/リセット端子に供給される第1クロック信号CLK1が高レベル『H』期間における基準クロック信号ref-clkの数をカウントする。
【0042】
ここで、図4においては、説明を簡略化するために、例えば、基準クロック信号ref-clkの周波数が800[MHz]で第1クロック信号CLK1の周波数が100[MHz]のときの例を示している。
【0043】
このとき、第1クロック信号CLK1が高レベル『H』の期間にカウントされる基準クロック信号ref-clkの数は4(4周期)となり、バイナリカウンタ111から出力されるカウント値countは『4』となる。
【0044】
そして、バイナリカウンタ111からのカウント値countは、レジスタ112に供給され、図4に示されるように、第1クロック信号CLK1が高レベル『H』から低レベル『L』に立ち下がってから再び高レベル『H』に立ち上がるまで値『4』が保持される。
【0045】
すなわち、レジスタ112は、第1クロック信号CLK1が高レベル『H』の期間にカウントされた値『4』を第1クロック信号CLK1の第1周波数測定データf1dataとして保持して出力する。
【0046】
なお、前述したように、第1および第2周波数測定回路11,12は同様の構成とされ、第2周波数測定回路12では、第1クロック信号CLK1が第2クロック信号CLK2となり、第1クロック周波数データf1dataが第2クロック周波数データf2dataとなる。
【0047】
さらに、第2周波数測定回路12では、第1クロック信号CLK1の第1周波数測定データf1dataが第2クロック信号CLK2の第2周波数測定データf2dataとなる。
【0048】
図5は図2のジッタ低減回路10における周波数比較判定回路20の一例を示すブロック図であり、図6は図5の周波数比較判定回路20における判定回路203(204)の一例を示す図である。
【0049】
図5に示されるように、周波数比較判定回路20は、第1演算器201、第2演算器202、第1判定回路203および第2判定回路204を有する。
【0050】
第1演算器201は、第1および第2周波数測定回路からの第1周波数測定データf1dataおよび第2周波数測定データf2dataを受け取り、(2×f1data)/f2dataの演算を行う。
【0051】
同様に、第2演算器202は、第1および第2周波数測定回路からの第1周波数測定データf1dataおよび第2周波数測定データf2dataを受け取り、(2×f2data)/f1dataの演算を行う。
【0052】
ここで、f1dataおよびf2dataは、第1および第2クロック信号CLK1およびCLK2を基準クロック信号ref-clkでカウントした値であり、第1および第2クロック信号CLK1およびCLK2の周波数をf1およびf2とすれば、次のように表される。
【0053】
すなわち、第1演算器201では、(2×f2)/f1の演算を行い、第2演算器202では、(2×f1)/f2の演算を行うことになる。
【0054】
図6に示されるように、判定回路203(204)は、複数入力のオアゲートであり、上記の演算器201(202)の演算による商で小数値の数ビット(図6では、4ビット)の論理和を取って、制御信号CNT1(CNT2)を出力する。
【0055】
図7は図2のジッタ低減回路10における遅延制御回路31(32)の一例を示すブロック図である。なお、第1および第2遅延制御回路31,32は同様の構成とされており、以下では、第1遅延制御回路31を例として説明する。
【0056】
図7に示されるように、第1遅延制御回路31は、バッファ301,302,…,30m、並びに、選択回路311および312を有する。ここで、バッファ301〜30mおよび選択回路311は、遅延回路として機能する。
【0057】
すなわち、選択回路311は、バッファ301〜30mの各出力信号を受け取り、第2周波数測定データf2dataに応じて、所定の遅延時間を有するいずれかのバッファの出力信号を選択して出力する。
【0058】
選択回路312は、選択回路311の出力信号および第1クロック信号CLK1を受け取り、第1制御信号CNT1に応じていずれかを選択して第1制御クロック信号CLK1'として出力する。
【0059】
具体的に、選択回路312は、第1制御信号CNT1が高レベル『H』(”1”)のときに選択回路311(遅延回路)の出力信号を選択し、また、第1制御信号CNT1が低レベル『L』(”0”)のときに第1クロック信号CLK1をそのまま選択して出力する。
【0060】
なお、第1制御信号CNT1が低レベル『L』のときは、第1クロック信号CLK1および第2クロック信号CLK2の周波数の関係により、第1クロック信号CLK1にジッタが乗っていない場合であり、そのときはそのまま第1クロック信号CLK1を出力する。
【0061】
図8は2つの信号の周波数の比とジッタとの関係を説明するための図であり、電源ノイズを発生する回路に入力されるクロック信号をCLK2とし、この電源ノイズの影響を受けてジッタが乗るクロック信号をCLK1と仮定した場合の例を示す。
【0062】
図8において、縦軸は、第1クロック信号CLK1に乗るジッタのピーク間の期間(Period Jitter peak to peak:[ps])を示し、横軸は、ノイズを発生する回路の動作周波数(第2クロック信号CLK2の周波数[MHz])を示す。
【0063】
図8に示されるように、ジッタが乗る第1クロック信号CLK1の周波数f1の正の整数(自然数)倍が電源ノイズを発生する回路の第2クロック信号CLK2の周波数f2の2倍((2×f2)/f1=n、ここで、nは自然数)になるときにジッタが少なくなる。
【0064】
すなわち、(2×f2)/f1=1,(2×f2)/f1=2,(2×f2)/f1=3,…のときに、第1クロック信号CLK1のジッタが低減されることが分かる。
【0065】
ここで、例えば、第1クロック信号CLK1のジッタが低減されるのは、(2×f2)/f1=nに完全に一致する場合だけでなく、その自然数nに幅を持たせたものに対してもジッタ低減の効果が発揮される。
【0066】
図9は本実施例のジッタ低減回路による遅延時間とジッタとの関係を説明するための図である。
【0067】
図9において、縦軸は、第1クロック信号CLK1に乗るジッタのピーク間の期間([ps])を示し、横軸は、第1クロック信号CLK1に与える遅延時間D1([ns])、すなわち、第1遅延制御回路31により与えられる第1遅延時間D1を示す。
【0068】
なお、図9において、曲線L1は、(2×f2)/f1=2/3の関係が成り立つときのものであり、例えば、f1=200[MHz],f2=66.6[MHz]の場合を示している。
【0069】
また、図9において、曲線L2は、(2×f2)/f1=1/4の関係が成り立つときのものであり、例えば、f1=220[MHz],f2=27.5[MHz]の場合を示している。
【0070】
上述した図8に示す関係((2×f2)/f1=n、nは自然数)を満たすとき、第1クロック信号CLK1のクロックエッジが毎サイクル電源ノイズの影響を同様に受けるため、ノイズによる遅延変動が毎サイクル同じになり、その結果、ジッタが小さくなる。
【0071】
図9の曲線L1に示されるように、(2×f2)/f1=2/3の関係が成り立つとき、第1クロック信号CLK1に与える遅延時間(第1遅延時間)D1を、D1={1/(2×f2)}×1とすることにより、ジッタを低減することができる。
【0072】
さらに、図9の曲線L1に示されるように、(2×f2)/f1=2/3の関係が成り立つとき、D1を、D1={1/(2×f2)}×2およびD1={1/(2×f2)}×3とすることでも、ジッタを低減することができる。
【0073】
すなわち、第1クロック信号CLK1に与える第1遅延時間D1を、D1={1/(2×f2)}×n(nは自然数)とすることにより、ジッタを低減することができるのが分かる。
【0074】
また、図9の曲線L2に示されるように、(2×f2)/f1=1/4の関係が成り立つとき、第1クロック信号CLK1に与える第1遅延時間D1を、D1={1/(2×f2)}×1とすることにより、ジッタを低減することができる。
【0075】
なお、図9の曲線L2では、D1={1/(2×f2)}×1の個所(D1=18.2[ns])のみしか示されていないが、他の個所も曲線L1と同様である。すなわち、第1クロック信号CLK1に与える第1遅延時間D1を、D1={1/(2×f2)}×n(nは自然数)とすることにより、ジッタを低減することができる。
【0076】
具体的に、例えば、第1クロック信号CLK1に与える第1遅延時間D1を与えることにより、300[ps]近くあったジッタを50[ps]程度にまでに低減することができる。
【0077】
以上では、第1クロック信号CLK1に対して第1遅延制御回路31で制御する第1遅延時間D1について説明したが、第2クロック信号CLK2に対して第2遅延制御回路32で制御する第2遅延時間D2についても同様である。
【0078】
従って、ジッタが乗った第1クロック信号CLK1の第1遅延時間(パス遅延)D1が電源ノイズを発生する回路に入力される第2クロック信号CLK2の周波数f2と次のような関係を満たす場合に、ジッタが少なくなる。
D1={1/(2×f2)}×n (nは自然数)
【0079】
なお、パス遅延D1は、クロック発生回路からディジタル回路や外部回路に出力するまでの信号伝搬時間である。
【0080】
これは、クロックバッファは電源電圧の大きさが変動すると遅延時間が変動し、例えば、電源電圧が高いほど遅延は小さく、また、電源電圧が低いと遅延は大きくなる。
【0081】
そして、パス遅延D1が電源ノイズの周期1/(2×f2)と同じになると、クロック信号が伝搬している間で電源ノイズによって被る遅延変動が毎サイクル同じになるため、サイクル間でクロック周期が変動しなくなる。
【0082】
つまり、電源電圧が電源ノイズの電圧値の平均値で一定の状態でクロック信号が伝搬しているような効果が得られるため、ジッタは少なくなる。
【0083】
なお、ジッタを低減するために第1クロック信号CLK1に与える第1遅延時間D1は、D1={1/(2×f2)}×nに完全に一致する場合だけでなく、その自然数nに幅を持たせたものに対してもジッタ低減の効果は発揮されるのはいうまでもない。
【0084】
図10は図2のジッタ低減回路の動作を説明するためのタイミング図である。ここで、参照符号count1およびcount2は、図3におけるバイナリカウンタ111から出力されるカウント値countに対応する。
【0085】
ここで、カウント値count1は、第1周波数測定回路11におけるバイナリカウンタ111から出力されるカウント値を示し、また、カウント値count2は、第2周波数測定回路12におけるバイナリカウンタ111から出力されるカウント値を示す。
【0086】
なお、図10の左半分は、第1クロック信号CLK1にジッタが乗っておらず、第1クロック信号CLK1をそのまま制御クロック信号CLK1'として出力する場合(CNT1=”0”の場合)を示す。
【0087】
また、図10の右半分は、第1クロック信号CLK1にジッタが乗っており、第1クロック信号CLK1に対して所定の遅延時間D1を与えた信号を制御クロック信号CLK1'として出力する場合(CNT1=”1”)を示す。
【0088】
なお、図10では、第1クロック信号CLK1に与える所定の遅延時間D1は、D1=1/(2×f2)としている。また、2つのクロックCLK1,CLK2の周波数f1,f2との間には、前述した図9の曲線L2に示される(2×f2)/f1=1/4の関係が成り立っている。
【0089】
図10に示されるように、図2〜図7を参照して説明した実施例では、まず、第1および第2周波数測定回路11,12により、第1および第2クロック信号CLK1,CLK2の周波数を基準クロック信号ref-clkでカウントすることにより測定する。
【0090】
さらに、第1および第2周波数測定回路11,12から第1クロック周波数データf1dataおよび第2クロック周波数データf2dataが周波数比較判定回路20に供給され、周波数比較判定回路20は、制御信号CNT1およびCNT2を出力する。
【0091】
すなわち、図3および図4を参照して説明したように、バイナリカウンタ111は、例えば、第1クロック信号CLK1の立ち上がりと共にカウントを始める。そして、第1クロック信号CLK1の立下り時にレジスタ112に第1および第2カウント値count1,count2を第1および第2クロック周波数データf1data,f2dataとして保持する。
【0092】
具体的に、第1クロック周波数データf1dataは『4』となり、第2クロック周波数データf2dataは『16』となっている。
【0093】
周波数比較判定回路20では、周波数測定回路で得られた第1および第2クロック周波数データf1data,f2dataに基づいて固定小数点の演算を行う。
【0094】
すなわち、図5を参照して説明したように、第1演算器201では、(2×f1data)/f2dataの演算を行い、第2演算器202では、(2×f2data)/f1dataの演算を行う。
【0095】
さらに、図6を参照して説明したように、演算の結果から第1および第2判定回路203,204において、第1および第2演算器201,202の演算による商で小数値の数ビットの論理和を取って、第1および第2遅延制御信号CNT1,CNT2を出力する。
【0096】
すなわち、演算の商における数ビットの論理和を取ることで、自然数nに幅を持たせ、その幅(誤差)を持った自然数に対して、(2×f2)/f1=nの関係を満たしているかどうかを判定する。
【0097】
これは、前述したように、(2×f2)/f1=nが完全に一致する(式が成り立つ)場合だけでなく、その自然数nに幅を持たせたものに対してもジッタ低減の効果が得られるからである。
【0098】
そして、幅を持った自然数に対して、(2×f2)/f1=nの関係を満たしていなければ、第1および第2遅延制御信号CNT1,CNT2をアクティブ(『H』)にする。
【0099】
これにより、図7を参照して説明したように、第1および第2遅延制御回路31,32では、第1および第2遅延制御信号CNT1,CNT2がアクティブ(『H』)であれば、第1および第2クロック信号CLK1,CLK2に第1および第2遅延時間D1,D2を与える。
【0100】
一方、第1および第2遅延制御信号CNT1,CNT2が非アクティブ(『L』)であれば、第1および第2遅延制御回路31,32は、入力された第1および第2クロック信号CLK1,CLK2をそのまま出力する。
【0101】
図11は本実施例のジッタ低減回路におけるジッタが少ない条件を説明するための図である。ここで、f1=200[MHz],f1data=20である。すなわち、4[GHz]の基準クロック信号ref-clkでカウントした場合を示している。
【0102】
図11に示されるように、200[MHz]の周波数の第1クロック信号CLK1に対して、第2クロック信号CLK2の周波数が100,200および400[MHz]のとき、(2×f2)/f1および(2×f1data)/f2dataが1.0,2.0および4.0となる。
【0103】
例えば、第2クロック信号CLK2の周波数が100[MHz]のとき、(2×f2)/f1=1となり、第1遅延制御信号CNT1が非アクティブ(『L』)で、第1遅延制御回路31は、第1クロック信号CLK1をそのまま第1制御クロック信号CLK1'として出力する。
【0104】
一方、例えば、第2クロック信号CLK2の周波数が150[MHz]のとき、(2×f2)/f1および(2×f1data)/f2data=1.5となり、このとき、第1遅延制御回路31は、第1クロック信号CLK1に対して所定の第1遅延時間D1を与えて出力する。
【0105】
ここで、第2クロック信号CLK2の周波数が150[MHz]のときの第1遅延時間D1は、(2×f2)/f1=1.5となり、第1遅延制御回路31は、例えば、D1=1/(2×f2)≒3.3[ns]となる。
【0106】
そして、第1遅延制御回路31は、第1クロック信号CLK1に対して3.3[ns]の第1遅延時間D1を与えて、第1制御クロック信号CLK1'として出力する。このとき、第1遅延制御信号CNT1はアクティブ(『H』)となっている。
【0107】
以上の制御によりジッタがのったクロック信号の遅延変動量を毎サイクル同じにすることができ、ジッタを低減することが可能になる。また、クロック信号の周波数を変化させる機能を有する半導体集積回路に対しても、変化したクロック周波数に応じて、パス遅延(遅延時間)を制御するができ、動的なジッタ対策が可能になる。
【0108】
このように、本実施例によれば、各クロック系回路で電源分離を行うことなく、複数のクロック信号で動作する半導体集積回路におけるクロックジッタの低減、並びに、動的なクロック周波数の変化に応じたジッタ対策手法を提供することができる。
【0109】
以上の説明では、周波数の異なる2つのクロック信号を使用する半導体集積回路の例を説明したが、クロック信号の数は2つに限定されるものではなく、さらに多くの数でもよく、その場合には、任意の2つのクロック信号を対象として制御を行うことになる。
【0110】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
第1クロック信号の第1周波数を測定する第1周波数測定回路と、
第2クロック信号の第2周波数を測定する第2周波数測定回路と、
測定された前記第1および第2周波数を比較し、該第1および第2周波数が所定の関係に有るかどうかを判定する周波数比較判定回路と、
前記周波数比較判定回路からの第1制御信号を受け取り、前記第1クロック信号の遅延を制御して前記第2クロック信号によるジッタを低減する第1遅延制御回路と、を有することを特徴とするジッタ低減回路。
【0111】
(付記2)
付記1に記載のジッタ低減回路において、
前記比較判定回路は、前記第1周波数をf1とし、前記第2周波数をf2とするとき、2×f2/f1が幅を持った自然数である場合には、前記第1遅延制御回路において前記第1クロック信号に遅延を与えないように前記第1制御信号を出力し、2×f2/f1が幅を持った自然数ではない場合には、前記第1遅延制御回路において前記第1クロック信号に第1遅延時間を与えるように前記第1制御信号を出力することを特徴とするジッタ低減回路。
【0112】
(付記3)
付記2に記載のジッタ低減回路において、
前記比較判定回路は、
2×f2/f1を演算する第1演算器と、
前記第1演算器の演算による商で小数値の数ビットの論理和を取って第1制御信号を出力する第1判定回路と、を有することを特徴とするジッタ低減回路。
【0113】
(付記4)
付記2または3に記載のジッタ低減回路において、
前記第1遅延時間は、nを自然数として、{1/(2×f2)}×nにより与えられることを特徴とするジッタ低減回路。
【0114】
(付記5)
付記1〜4のいずれか1項に記載のジッタ低減回路において、さらに、
前記周波数比較判定回路からの第2制御信号を受け取り、前記第2クロック信号の遅延を制御して前記第1クロック信号によるジッタを低減する第2遅延制御回路を有することを特徴とするジッタ低減回路。
【0115】
(付記6)
付記5に記載のジッタ低減回路において、
前記比較判定回路は、前記第1周波数をf1とし、前記第2周波数をf2とするとき、2×f1/f2が幅を持った自然数である場合には、前記第2遅延制御回路において前記第2クロック信号に遅延を与えないように前記第2制御信号を出力し、2×f1/f2が幅を持った自然数ではない場合には、前記第2遅延制御回路において前記第2クロック信号に第2遅延時間を与えるように前記第2制御信号を出力することを特徴とするジッタ低減回路。
【0116】
(付記7)
付記6に記載のジッタ低減回路において、
前記比較判定回路は、
2×f1/f2を演算する第2演算器と、
前記第2演算器の演算による商で小数値の数ビットの論理和を取って第2制御信号を出力する第2判定回路と、を有することを特徴とするジッタ低減回路。
【0117】
(付記8)
付記6または7に記載のジッタ低減回路において、
前記第2遅延時間は、nを自然数として、{1/(2×f1)}×nにより与えられることを特徴とするジッタ低減回路。
【0118】
(付記9)
付記1〜4のいずれか1項に記載のジッタ低減回路を有する半導体集積回路であって、さらに、
前記第1遅延制御回路からの第1制御クロック信号を受け取る第1内部回路と、
前記第2クロック信号を受け取る第2内部回路と、を有することを特徴とする半導体集積回路。
【0119】
(付記10)
付記5〜8のいずれか1項に記載のジッタ低減回路を有する半導体集積回路であって、さらに、
前記第1遅延制御回路からの第1制御クロック信号を受け取る第1内部回路と、
前記第2遅延制御回路からの第2制御クロック信号を受け取る第2内部回路と、を有することを特徴とする半導体集積回路。
【符号の説明】
【0120】
1,50 半導体集積回路
10 ジッタ低減回路
11 第1周波数測定回路
12 第2周波数測定回路
20 周波数比較判定回路
31 第1遅延制御回路
32 第2遅延制御回路
41 第1内部回路
42 第2内部回路
51 クロックバッファ
52 データブロック
53 クロックドライバ
54 データドライバ
111 バイナリカウンタ
112 レジスタ
113,114 インバータ
201 第1演算器
202 第2演算器
203 第1判定回路
204 第2判定回路
301〜30m バッファ
311,312 選択回路
500 半導体パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロック信号の第1周波数を測定する第1周波数測定回路と、
第2クロック信号の第2周波数を測定する第2周波数測定回路と、
測定された前記第1および第2周波数を比較し、該第1および第2周波数が所定の関係に有るかどうかを判定する周波数比較判定回路と、
前記周波数比較判定回路からの第1制御信号を受け取り、前記第1クロック信号の遅延を制御して前記第2クロック信号によるジッタを低減する第1遅延制御回路と、を有することを特徴とするジッタ低減回路。
【請求項2】
請求項1に記載のジッタ低減回路において、
前記比較判定回路は、前記第1周波数をf1とし、前記第2周波数をf2とするとき、2×f2/f1が幅を持った自然数である場合には、前記第1遅延制御回路において前記第1クロック信号に遅延を与えないように前記第1制御信号を出力し、2×f2/f1が幅を持った自然数ではない場合には、前記第1遅延制御回路において前記第1クロック信号に第1遅延時間を与えるように前記第1制御信号を出力することを特徴とするジッタ低減回路。
【請求項3】
請求項2に記載のジッタ低減回路において、
前記比較判定回路は、
2×f2/f1を演算する第1演算器と、
前記第1演算器の演算による商で小数値の数ビットの論理和を取って第1制御信号を出力する第1判定回路と、を有することを特徴とするジッタ低減回路。
【請求項4】
請求項2または3に記載のジッタ低減回路において、
前記第1遅延時間は、nを自然数として、{1/(2×f2)}×nにより与えられることを特徴とするジッタ低減回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のジッタ低減回路を有する半導体集積回路であって、さらに、
前記第1遅延制御回路からの第1制御クロック信号を受け取る第1内部回路と、
前記第2クロック信号を受け取る第2内部回路と、を有することを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−213118(P2010−213118A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58654(P2009−58654)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】