説明

スイッチング回路

【課題】 入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができるスイッチング回路を提供すること。
【解決手段】 規範電圧波形追従駆動部4へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成部31と、規範電圧波形追従駆動部4に設けられ、カレントミラーの回路構成によりフィードバックの差動処理を行う比較部41と、規範電圧波形生成部31による規範電圧波形に対して補償を行うカレントミラー誤差補償部32を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、規範電圧波形追従駆動部へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成部を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスイッチング回路にあっては、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させる課題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができるスイッチング回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、フィードバック構成部によりスイッチング素子を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路において、前記フィードバック構成部へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成手段と、前記フィードバック構成部に設けられ、カレントミラーの回路構成によりフィードバックの差動処理を行う差動手段と、前記規範電圧波形生成手段による規範電圧波形に対して補償を行う補償手段と、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
【図2】実施例1のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図3】カットオフを説明するスイッチング回路の入出力波形の説明波形図である。
【図4】図3の波形をゲイン及びオフセットで調整した波形の説明波形図である。
【図5】実施例1のスイッチング回路の入出力波形の説明波形図である。
【図6】実施例1のスイッチング回路の入出力波形の説明波形図である。
【図7】実施例2のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
【図8】実施例2のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図9】理想的な出力電圧波形を示す波形図である。
【図10】過小振幅な出力電圧波形を示す波形図である。
【図11】過大振幅な出力電圧波形を示す波形図である。
【図12】実施例2のスイッチング回路の選択回路部の波形生成の状態を示すタイムチャートである。
【図13】実施例3のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
【図14】実施例3のスイッチング回路の出力波形の説明波形図である。
【図15】実施例4のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
【図16】実施例4のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図17】実施例4における出力電圧波形調整部の具体構成を示す説明図である。
【図18】電源電圧が一定状態のスイッチング回路の出力波形の説明波形図である。
【図19】電源電圧が変動状態のスイッチング回路の出力波形の説明波形図である。
【図20】実施例5のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
【図21】入力波形に対する出力波形の遅れの説明波形図である。
【図22】実施例5において入力波形を補償した状態を示す説明波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のスイッチング回路を実現する実施の形態を、請求項1,2に係る発明に対応する実施例1と、請求項1,3に係る発明に対応する実施例2と、請求項1,3,4に係る発明に対応する実施例3と、請求項1〜5に係る発明に対応する実施例4と、請求項1〜6に係る発明に対応する実施例5とに基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
実施例1のスイッチング回路1は、制御パルス生成部2、規範補償波形生成部3、規範電圧波形追従駆動部4、負荷5、電源6を主要な構成としている。
制御パルス生成部2は、規範電圧波形追従駆動部4を駆動制御するための波形となる制御パルスを生成し出力する。
規範補償波形生成部3は、規範電圧波形生成部31とカレントミラー誤差補償部32を備え、規範電圧波形追従駆動部4へ入力する波形を生成する。
規範電圧波形生成部31は、予めノイズと損失が要求される所定の値を満たす入力波形(本明細書において規範波形と呼ぶ)を生成する。
カレントミラー誤差補償部32は、規範波形に対して、規範電圧波形追従駆動部4のカレントミラー誤差を補償する。
規範電圧波形追従駆動部4は、入力される規範波形によりオンオフのスイッチシングを行う駆動部である。
負荷5は、スイッチングによる電圧のオンオフで駆動するものである。
電源6は、負荷5の駆動のための電源を供給する。
【0011】
実施例1のスイッチング回路について、さらに説明する。
図2は実施例1のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
実施例1のスイッチング回路1では、制御パルス生成部2と規範電圧波形生成部31を共通化したパルス発生器V3として備えている。
そして、カレントミラー誤差補償部32は、電源電圧V4をパルス発生器V3の下流(GND側)に設ける構成である。
【0012】
実施例1のスイッチング回路1において、規範電圧波形追従駆動部4は、比較部41、閾値電圧オフセット部42、スイッチング素子制御端子駆動部43、スイッチング素子44、出力電圧検知部45を主要な構成としている。
比較部41は、抵抗R1、トランジスタQ1,Q2からなり、カレントミラー回路を構成し、規範電圧波形と出力波形を比較し、差分を出力する。
【0013】
閾値電圧オフセット部42は、抵抗R3、トランジスタQ3,Q4、電源V1からなり、カレントミラー回路を構成し、スイッチング素子の特性に合わせて電圧レベルを直流的にオフセットする。
スイッチング素子制御端子駆動部43は、抵抗R4〜R6、ダイオードD1,D2、トランジスタQ5,Q6からなり、エミッタフォロア回路(プッシュプル回路)を構成し、スイッチング素子44のゲート駆動信号を出力する。
スイッチング素子44は、例えばMOSFETのパワートランジスタM1であり、負荷5への電源電圧のオンオフを制御する。
出力電圧検知部45は、コンデンサC1、可変抵抗R2からなり、スイッチング素子44から負荷5への出力を比較部41へ入力して、フィードバック構成の帰還路を形成し、この帰還路で出力電圧の検知を行う。なお、コンデンサC1は位相進み補償を行う。
また、実施例1では、負荷5を抵抗R7、インダクタンスL1、パワートランジスタM2で構成している。
【0014】
作用を説明する。
[追従性向上作用]
実施例1のスイッチング回路では、まず、制御パルス生成部2が立上り及び立下りを有するパルス、例えばPWMパルスを出力する。
規範電圧波形生成部31では、立上り又は立下りのタイミングを用いて、規範電圧波形を生成する。規範電圧波形は、例えば制御パルスをRCローパスフィルタで丸めるようにし、あるいは特定帯域の通過を抑制して、ノイズと損失を良好な特性にした信号波形である。
そして、カレントミラー誤差補償部32は、規範電圧波形生成部31で生成される信号波形に所定の電圧Vbe分(Vbe´)を加える。
そのため、規範電圧波形追従駆動部4には、カレントミラー誤差補償部32により所定の電圧Vbe分が加えられた信号波形が入力される。
【0015】
規範電圧波形追従駆動部4では、比較部41のカレントミラー回路構造において、抵抗R1と可変抵抗R2はそれぞれ入力(規範電圧波形)と出力の比率を決めており、例えば2倍の関係となる。
【0016】
例えば、入力電圧が上昇すると、トランジスタQ1側の電流が増えるのでトランジスタQ2の電流も増えようとする。その際に、可変抵抗R2から流れている分の電流よりも多く必要とする分が閾値電圧オフセット部42から流れ込み、スイッチング素子制御端子駆動部43のトランジスタQ5がオフ、トランジスタQ6がオンする方向へ徐々に変化し、スイッチング素子44であるパワートランジスタM1のゲート電位が下がりオフする方向に変化し出力電圧が上昇する。すなわち、入力電圧が上昇すると出力電圧も上昇する。低下は逆の動作となる。
【0017】
閾値電圧オフセット部42では、ダイオードD1、ダイオードD2からトランジスタQ2のカレントミラー回路に流れ込む、もしくは流れ出す電流に対して、トランジスタQ3,Q4のカレントミラー回路部分を用いて予め一定の電流を供給することで、スイッチング素子制御端子駆動部43の電位をプラス側へオフセットする。トランジスタQ3から流れ込む電流値は可変抵抗R3により決定される。また、トランジスタQ3,Q4の構成を流れ込む構成から吸い込む構成にすればマイナス方向へオフセットする効果を得る。
【0018】
また、スイッチング素子制御端子駆動部43は、コンプリメンタリエミッタフォロア(プッシュプル回路)構成として、低インピーダンス駆動としている。スイッチング素子44は、取り扱う電力が大きいほどゲートの入力容量が大きく、ミラー効果によりスイッチング時に大きく変化する特性があるため、低インピーダンスで駆動する。
また、出力電圧検知部45のコンデンサC1により出力電圧の位相を進ませることにより、フィードバック構成における応答性を良くする。
このようにして、実施例1のスイッチング回路1では、フィードバック構成によって、入力信号波形によく追従した出力波形にする。
【0019】
ここで、比較部41のカレントミラーへ入力される電圧をVin、トランジスタQ1のベース・エミッタ間の電圧をVbeとすると、ベース電流を無視して考えた場合トランジスタQ1のコレクタ・エミッタ間に流れる電流i1は、次の数式1のように考えることができる。
【0020】
(数式1)
i1=(Vin−Vbe)/R1
【0021】
カレントミラー構成のために、トランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間に流れる電流i1´はi1に等しいとし、トランジスタQ2のコレクタ電圧であるバイアス電圧Vbiasの変動は小さいので、i3とともに一定と考える。すると、次の数式2、数式3を得る。
【0022】
(数式2)
i1´=i2+i3=(Vin−Vbe)/R1
【0023】
(数式3)
i2=(Vin−Vbe)/R1−i3
【0024】
これより、スイッチング回路1の出力電圧Voutは、次の数式4、数式5のように考えることができる。
【0025】
(数式4)
Vout−Vbias=i2・R2={(Vin−Vbe)/R1−i3}・R2
【0026】
(数式5)
Vout=(Vin−Vbe)・R2/R1+Vbias−i3・R2
【0027】
図3はカットオフを説明するスイッチング回路の入出力波形の説明波形図である。図4は図3の波形をゲイン及びオフセットで調整した波形の説明波形図である。なお、図3はゲイン=1、図4はゲイン=2の状態を示すものである。
数式5のようにスイッチング回路の出力電圧を考えると、図3に示すように、出力電圧波形には、ベース・エミッタ間の電圧分のカットオフ状態が生じる。
このようにカットオフ状態が生じると、抵抗R2、R3により、ゲインとオフセット電圧を調整しても、図4に示すように入出力電圧波形は一致しないことになる。
【0028】
図5は実施例1のスイッチング回路の入出力波形の説明波形図である。図5は、図3と同様にゲイン1の状態で、図2に示す回路構成を解析した結果である。
実施例1では、カレントミラー誤差補償部32により、規範電圧波形生成部31で生成される信号波形に所定の電圧Vbe分が加えられる。
そのため、上記数式5は、実施例1では、次の数式6のようになる。
【0029】
(数式6)
Vout={(Vin+Vbe´)−Vbe}・R2/R1+Vbias−i3・R2
【0030】
規範電圧波形生成部31から規範電圧波形追従駆動部4の比較部41のカレントミラーに入力される規範波形に、カレントミラーのベース・エミッタ間の電圧分のオフセット電圧Vbe´が加えられることにより、出力電圧Voutは入力した電圧Vinのゲイン倍となる。そのため、図5に示すように、オフセット状態が発生しない入出力波形にすることができる。
図6は実施例1のスイッチング回路の入出力波形の説明波形図である。図6は、図4と同様にゲイン2の状態で、図2に示す回路構成を解析した結果である。
さらに、実施例1では、図5に示すように、カットオフ状態の発生しない状態の入出力波形の特性を得るため、ゲイン=2にした場合に、図6のような入出力波形の特性を得る。つまり、図5の特性からゲインを変更した際に、可変抵抗R2のゲイン調整、可変抵抗R3のオフセット電圧調整を行うことにより、図6に示すように、規範電圧波形に良好に追従した波形を出力することが可能となる。
このように実施例1では、カレントミラー誤差補償部32によるカットオフ状態の除去による追従性の向上によって、さらに入力信号波形によく追従した出力波形にする。
【0031】
次に、効果を説明する。
実施例1のスイッチング回路にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0032】
(1)規範電圧波形追従駆動部4によりスイッチング素子44を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路1において、規範電圧波形追従駆動部4へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成部31と、規範電圧波形追従駆動部4に設けられ、カレントミラーの回路構成によりフィードバックの差動処理を行う比較部41と、規範電圧波形生成部31による規範電圧波形に対して補償を行うカレントミラー誤差補償部32を備えたため、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
【0033】
(2)上記(1)において、比較部41は、2つのトランジスタQ1,Q2をベース入力が共有する対称状に配置したカレントミラーの回路構成を備え、カレントミラー誤差補償部32は、比較部41のトランジスタのベース・エミッタ間の電圧Vbe分を、規範電圧波形に加える補償を行うため、比較部41のトランジスタのベース・エミッタ間の電圧により生じるカットオフ状態が発生しないようにして、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2は、スイッチング状態によって、規範電圧波形、オン電圧、オフ電圧を切り換えて入力する例である。
構成を説明する。
図7は実施例2のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
実施例2のスイッチング回路1では、オン電圧出力部71、オフ電圧出力部72、タイマ73、選択回路部74を備えている。
実施例2では、規範電圧波形生成部31の出力を選択回路部74へ入力し、選択回路部74の出力を規範電圧波形追従駆動部4へ入力する。
オン電圧出力部71は、スイッチング素子44を完全にオンするオン電圧(ロー)を選択回路部74へ出力する。
オフ電圧出力部72は、スイッチング素子44を完全にオフするオフ電圧(ハイ)を選択回路部74へ出力する。なお、このオン電圧、オフ電圧は、スイッチング素子44から見てのオンオフとする。
【0035】
タイマ73は、規範電圧波形生成部31からの出力波形と、オン電圧出力部71の出力と、オフ電圧出力部72の出力とを切り替える時間のカウントを行い、選択回路部74へ出力する。
選択回路部74は、タイマ73からのカウントに従って、規範電圧波形生成部31からの出力波形と、オン電圧出力部71の出力と、オフ電圧出力部72の出力とを切り替えて、規範電圧波形追従駆動部4へ出力する。
【0036】
さらに実施例2のスイッチング回路の構成について説明する。
図8は実施例2のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
図8に示す構成においては、オン電圧出力部71として、電源電圧Vonを設け、オフ電圧出力部72として、電源電圧Voffを設ける。また、制御パルス生成部2と規範電圧波形生成部31を共通化したパルス発生器Vpwmを備える。
選択回路部74は、AND回路741,742,743、OR回路744を備えている。
タイマ73は、予め設定された時間範囲では、それぞれ該当するAND回路741〜743にON(あるいは1)の出力を行う。
【0037】
AND回路741は、タイマ73からの出力とパルス発生器Vpwmからの出力のAND論理演算処理を行い、タイマ73からの出力がオンの場合には、パルス発生器Vpwmからの出力をOR回路744へ出力する。
AND回路742は、タイマ73からの出力と電源電圧Vonからの出力のAND論理演算処理を行い、タイマ73からの出力がオンの場合には、電源電圧Vonからの出力をOR回路744へ出力する。
AND回路743は、タイマ73からの出力と電源電圧Voffからの出力のAND論理演算処理を行い、タイマ73からの出力がオンの場合には、電源電圧Voffからの出力をOR回路744へ出力する。
OR回路744は、AND回路741〜743のオン出力とオフ出力のOR演算を行い、出力を行う。
その他構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0038】
作用を説明する。
[追従性向上作用]
図9は理想的な出力電圧波形を示す波形図である。図10は過小振幅な出力電圧波形を示す波形図である。図11は過大振幅な出力電圧波形を示す波形図である。
図9に示すように、負荷5の電源電圧に対して、完全にオンオフする理想的な出力電圧波形の場合、半導体デバイスによる定常損失以外の定常損失及び出力電圧波形のカットオフ状態は発生しない。
【0039】
この状態に対して、図10に示すように、負荷5の電源電圧に対して、過小振幅の出力波形となる場合、電源電圧及びGNDに対してオンオフしきれない分は、定常損失(DC損失)を増加させることになる。また、図11に示すように、負荷5の電源電圧に対して、過大振幅の出力波形となる場合、電源電圧及びGNDを超えた分はカットオフされてしまう。
これに対して、可変抵抗R2によりゲインを調整して、振幅を調整し、可変抵抗R3によりオフセット電圧を調整することが考えられるが、振幅調整の基準電圧位置が一致しないことにより、理想的な波形にすることは困難となる。
【0040】
図12は実施例2のスイッチング回路の選択回路部74の波形生成の状態を示すタイムチャートである。以下t1〜t4は図12に示す時間である。
t1以前では、タイマ73が電源電圧Von(オン電圧出力部71)のオン信号を出力する。すると、AND回路742では、電源電圧Vonが選択される。そして、OR回路744から他のオフ出力とOR演算され、結果的に電源電圧Vonが出力される(図12(d)参照)。
次に、t1〜t2、t3〜t4では、タイマ73がパルス発生器Vpwmのオン信号を出力する。すると、AND回路741では、パルス発生器Vpwmが選択される。そして、OR回路744から他のオフ出力とOR演算され、結果的に規範電圧波形が出力される(図12(b)参照)。
次に、t2〜t3では、タイマ73が電源電圧Voff(オフ電圧出力部72)のオン信号を出力する。すると、AND回路743では、電源電圧Voffが選択される。そして、OR回路744から他のオフ出力とOR演算され、結果的に電源電圧Voffが出力される(図12(c)参照)。
次に、t4〜次のt1では、上記t1以前と同様に電源電圧Vonが出力される(図12(d)参照)。
【0041】
このように選択回路部74の選択により図12(b)〜(d)が、切り替えられることにより、図12(a)に示すように、波形が生成され、規範電圧波形追従駆動部4へ入力される。
ここで、電源電圧Vonは、所定電圧のオン電圧であり、スイッチング素子44を完全にオンさせる電圧である。負荷5の下流でのスイッチング回路1の出力としては、スイッチング素子44のオンにより波形はローとなる。そのため、スイッチング素子44における定常損失(DC損失)を発生させない。また、電源電圧Voffは、所定電圧のオフ電圧であり、スイッチング素子44を完全にオフさせる電圧である。負荷5の下流でのスイッチング回路1の出力としては、スイッチング素子44のオフにより波形はハイとなる。そのため、スイッチング素子44における定常損失(DC損失)を発生させない。
よって、実施例2では、ノイズや損失を抑制する規範波形電圧を、規範電圧波形追従駆動部4へ入力し、且つその入力する波形がスイッチング素子44の定常損失を考慮したものにすることで、実際に規範電圧波形追従駆動部4が追従し、出力する波形がより良好に規範電圧波形に追従したものにする。
【0042】
効果を説明する。
実施例2のスイッチング回路にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0043】
(3)補償手段は、規範電圧波形のオン電圧を出力するオン電圧出力部71と、規範電圧波形のオフ電圧を出力するオフ電圧出力部72と、定常状態ではオン電圧及びオフ電圧を選択し、過渡状態では規範電圧波形生成部31からの規範電圧波形を選択して、規範電圧波形生成部31の後段で波形補償を行う選択回路部74を備えたため、規範電圧波形の定常状態では、所定の電源電圧Von又はVoffにすることにより、スイッチング素子44のオン、オフを完全に行わせ、定常損失を発生させないようにして、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
その他作用効果は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0044】
実施例3は、選択回路部が電源電圧により選択動作を行う例である。
構成を説明する。
図13は実施例3のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
実施例3のスイッチング回路では、選択回路部75、出力電圧検知部76を備えている。選択回路部75は、規範電圧波形生成部31の出力、オン電圧出力部71、及びオフ電圧出力部72を選択して出力する。
出力電圧検知部76は、負荷5の下流から出力電圧検知部45へ向かう検出ラインを分岐させて、選択回路部75へ入力したものである。選択回路部75は、これにより、スイッチング回路1の出力電圧を検知する。そして、出力電圧が電源電圧の90%以上になると、オフ電圧、10%以下になるとオン電圧、それ以外で規範電圧波形生成部31の出力を選択する処理を有する。
その他構成は、実施例1、実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0045】
作用を説明する。
[追従性向上作用]
図14は実施例3のスイッチング回路の出力波形の説明波形図である。
図14においては、電源電圧の90%を電圧閾値V1、電源電圧の10%を電圧閾値V2とする。
実施例3では、選択回路部75の選択動作によって、出力電圧検知部76で検出するスイッチング回路1の出力電圧がV2(電源電圧の10%)より小さい場合は、出力電圧波形が完全にオンするオン電圧(オン電圧出力部71の出力)が選択されている。そして、出力電圧検知部76で検出するスイッチング回路1の出力電圧が立ち上がり、V2を超えると、規範電圧波形生成部31の出力を選択する。そして、過渡状態でV1(電源電圧の90%)に達すると、出力電圧波形が完全にオフするオフ電圧(オフ電圧出力部72の出力)を選択する。そして、出力電圧検知部76で検出するスイッチング回路1の出力電圧が立下り、V1より小さくなると、規範電圧波形生成部31の出力を選択する。そして、過渡状態でV2(電源電圧の10%)より小さい場合は、出力電圧波形が完全にオンするオン電圧(オン電圧出力部71の出力)を選択する。なお、オン電圧、オフ電圧はスイッチング素子44から見てオンオフを示す。
【0046】
実施例3では、このように、出力電圧が所定の閾値電圧に達することにより出力波形を切り替えることにより、スイッチング素子44の定常状態で、完全なオンオフ動作の状態にするオン電圧、オフ電圧に切り替えることにより、定常損失を生じないようにする。実施例3において、電圧閾値を10%、90%にしているのは、現実的に許容される値を考慮した例を示したものである。そのため、電圧閾値を10%、90%にすると、生じる定常損失を許容される範囲に抑制することになる。
【0047】
効果を説明する。実施例3のスイッチング回路にあっては、実施例1の(1),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(4)上記(3)において、スイッチング回路の出力電圧を検出する出力電圧検知部76を設け、選択回路部75は、スイッチング回路の出力電圧に基づいて、オン電圧、オフ電圧、及び規範電圧波形を選択するため、出力電圧の電圧値により切り換えて波形を補償し、スイッチング素子44のオン、オフを完全に行わせ、定常損失を発生させないようにして、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
その他作用効果は実施例2と同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0048】
実施例4は、電源電圧の変動により、規範電圧波形追従駆動部4のゲインとオフセット電圧を調整する例である。
構成を説明する。
図15は実施例4のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
実施例4のスイッチング回路は、電源電圧検出部81と出力電圧波形調整部82を備えている。
電源電圧検出部81は、電源6の電源電圧を検出し、検出結果を出力電圧波形調整部82へ出力する。
出力電圧波形調整部82は、検出された電源電圧に応じて、規範電圧波形追従駆動部4におけるゲインとオフセット電圧を調整する。
【0049】
実施例4のスイッチング回路の構成についてさらに詳細に説明する。
図16は実施例4のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
実施例4では、図16に示すように、電源電圧検出部81により電源電圧V3の電圧を検出する構成である。さらに、出力電圧波形調整部82により、出力電圧検知部45の可変抵抗R2と、閾値電圧オフセット部42の可変抵抗R3の抵抗値の調整を行う構成である。
【0050】
出力電圧波形調整部82の構成についてさらに説明する。
図17は実施例4の出力電圧波形調整部の具体構成を示す説明図である。
可変抵抗R2を調整する出力電圧波形調整部82の部分について説明する。可変抵抗R2は図17に示すように、複数の抵抗R21からなり、出力電圧波形調整部82により、この複数の抵抗R21の接続、非接続を行うことにより、抵抗値の変更を行う構成である。
可変抵抗R3についても同様の構成である。
その他構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0051】
作用を説明する。
[追従性向上作用]
図18は電源電圧が一定状態のスイッチング回路の出力波形の説明波形図である。図19は電源電圧が変動状態のスイッチング回路の出力波形の説明波形図である。説明上、図18、図19において、電源電圧をVcc、グランド電位をGNDとする。そして、変動した電源電圧をVcc´、グランド電位をGND´とする。
例えば、自動車のバッテリ電圧からも言えるように、電源電圧は変動する。
電源電位が変動した場合、出力電圧波形のGND´よりも低い電圧はカットオフされ、入出力電圧波形が一致しないことになる。また、出力電圧波形がVcc´に達しない部分は、定常損失となる(図19参照)。
実施例4のスイッチング回路では、電源電圧の変動を電源電圧検出部81で検出する。
この際、電源電圧の変動Vcc´、GND´に対して、出力電圧波形調整部82は、まず可変抵抗R2の抵抗値の調整により、ゲインの調整を行う。これにより、波形の振幅が調整される。しかし、電源電圧の変動の振幅の基準電位と、ゲイン調整による振幅の基準電位は一致しない。そのため、出力電圧波形調整部82は、次にR3の抵抗値を調整し、波形のオフセットを行う。これにより、スイッチング回路1の出力波形は、電源電圧の変更に応じた波形になる。そのため、波形のカットオフと損失が生じないようにされる。よって、規範電圧波形追従駆動部4による入力波形への出力波形の追従性が向上することになる。
【0052】
次に、効果を説明する。
実施例4のスイッチング回路にあっては、下記の効果を得ることができる。
(5)規範電圧波形追従駆動部4は、比較部41により差動処理される波形のゲインを調整する可変抵抗R2と、比較部41により差動処理された波形に対して、波形レベルのオフセットを可変抵抗R3による調整で行う閾値電圧オフセット部42を備え、負荷5の電源6の電源電圧を検出する電源電圧検出部81と、検出した電源電圧に基づいて、可変抵抗R2,R3の抵抗値を調整する出力電圧波形調整部82を備えたため、負荷の電源電圧の変動に対して、可変抵抗R2,R3の調整により、ゲインとオフセット量を調整し、出力波形にカットオフと定常損失が生じないようにして、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
その他作用効果は実施例3と同様であるので説明を省略する。
【実施例5】
【0053】
実施例5は、出力電圧波形の追従遅れを考慮して補正した波形を入力する例である。
構成を説明する。
図20は実施例5のスイッチング回路のブロック構成を示す図である。
実施例5のスイッチング回路1では、規範補償波形生成部9は、規範電圧波形生成部31とフィードバック誤差補償部91を備え、規範電圧波形追従駆動部4へ入力する波形を生成する。
フィードバック誤差補償部91は、予め求めた規範電圧波形の入力に対する出力波形の遅れを考慮して、規範電圧波形の補償を行う。
その他構成は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
作用を説明する。
[追従性向上作用]
図21は、入力波形に対する出力波形の遅れの説明波形図である。図22は実施例5において入力波形を補償した状態を示す説明波形図である。
実施例5では、予めノイズ特性と損失特性を設定した任意の波形を用意し、実験やシミュレーション等による解析で、規範電圧波形を入力した際の出力電圧波形を確認する。
すると、図21に示すように、入力波形101に対する出力波形102のフィードバック制御による遅れ分を得る。この出力波形102の遅れを補償するように、規範電圧波形生成部31の生成する規範電圧波形を、フィードバック誤差補償部91により波形103のように進めた波形に補償する。これにより、スイッチング回路1の出力電圧波形を規範電圧波形に遅れを生じない、良好に追従した波形にする。
【0055】
効果を説明する。
実施例5のスイッチング回路にあっては、以下の効果を有する。
(6)フィードバック誤差補償部91は、規範電圧波形生成部31の規範電圧波形を、フィードバック制御による遅れ分、進めた波形に補償するため、スイッチング回路1の規範電圧波形追従駆動部4へ入力する規範電圧波形に対して、規範電圧波形追従駆動部4の出力電圧にフィードバック制御による遅れ分が生じないようにでき、入力した規範電圧波形に対する出力電圧波形の追従性をさらに向上させることができる。
その他作用効果は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0056】
以上、本発明のスイッチング回路を実施例1〜実施例5に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0057】
例えば、実施例2では、選択回路部74を、規範電圧波形生成部31と規範電圧波形追従駆動部4の間に設けたものを示したが、規範電圧波形追従駆動部4とスイッチング素子の間に設けるようにしてもよい。
また例えば、図2には、負荷としてモータと等価となるものを示したが、LED等、スイッチング素子により駆動されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、負荷を駆動する以外のスイッチング動作を行う回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 スイッチング回路
2 制御パルス生成部
3 規範補償波形生成部
31 規範電圧波形生成部
32 カレントミラー誤差補償部
4 規範電圧波形追従駆動部
41 比較部
42 閾値電圧オフセット部
43 スイッチング素子制御端子駆動部
44 スイッチング素子
45 出力電圧検知部
5 負荷
6 電源
9 規範補償波形生成部
91 フィードバック誤差補償部
71 オン電圧出力部
72 オフ電圧出力部
73 タイマ
74 選択回路部
741〜743 AND回路
744 OR回路
75 選択回路部
76 出力電圧検知部
81 電源電圧検出部
82 出力電圧波形調整部
C1 コンデンサ
D1,D2 ダイオード
L1 インダクタンス
M1 パワートランジスタ
M2 パワートランジスタ
Q1〜Q6 トランジスタ
R1,R4〜R7 抵抗
R2,R3 可変抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバック構成部によりスイッチング素子を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路において、
前記フィードバック構成部へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成手段と、
前記フィードバック構成部に設けられ、カレントミラーの回路構成によりフィードバックの差動処理を行う差動手段と、
前記規範電圧波形生成手段による規範電圧波形に対して補償を行う補償手段と、
を備えた、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング回路において、
前記差動手段は、2つのトランジスタをベース入力が共有する対称状に配置したカレントミラーの回路構成を備え、
前記補償手段は、前記差動手段のトランジスタのベース・エミッタ間の電圧分を、前記規範電圧波形に加える補償を行う、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング回路において、
前記補償手段は、
規範電圧波形のオン電圧を出力するオン電圧出力手段と、
規範電圧波形のオフ電圧を出力するオフ電圧出力手段と、
定常状態では前記オン電圧及び前記オフ電圧を選択し、過渡状態では前記規範電圧波形生成手段からの規範電圧波形を選択して、前記規範電圧波形生成手段の後段で波形補償を行う選択手段と、
を備えたことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング回路において、
前記スイッチング回路の出力電圧を検出する出力電圧検出手段を設け、
前記選択手段は、
前記スイッチング回路の出力電圧に基づいて、前記オン電圧、前記オフ電圧、及び規範電圧波形を選択する、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のスイッチング回路において、
前記フィードバック構成部は、前記差動手段により差動処理される波形のゲインを調整する第1の可変抵抗と、
前記差動手段により差動処理された波形に対して、波形レベルのオフセットを第2の可変抵抗による調整で行うオフセット手段を備え、
前記補償手段は、
前記負荷の電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、
検出した電源電圧に基づいて、第1の可変抵抗及び第2の可変抵抗の抵抗値を調整する波形調整手段を備えた、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスイッチング回路において、
前記補償手段は、
規範電圧波形生成手段の規範電圧波形を、フィードバック制御による遅れ分、進めた波形に補償する、
ことを特徴とするスイッチング回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−219585(P2010−219585A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60452(P2009−60452)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】