説明

スイッチング電源回路および電動機の制御装置

【課題】スイッチング電源で、電流検出回路を設けずに、負荷変動に伴う電圧上昇の抑制を可能とする。
【解決手段】スイッチング電源回路14は、一次巻線と二次巻線とを有するトランス41と、スイッチング信号を一次巻線に入力してトランス41を駆動する一次側回路40と、二次巻線に接続され、一次側回路40とは電気的に絶縁されているゲートドライブ回路20−nとを具備している。ゲートドライブ回路20−nは、モータECU100からのPWM信号によって駆動されるゲート駆動回路21−nと、ゲートドライブ回路20−nに流れる電流を増大させるブリーダ抵抗R20−nとを有し、モータECU100からのPWM信号を検出した場合に、ブリーダ抵抗R20−nに流れる電流値を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力側である二次側に接続されている負荷の変動を低減するスイッチング電源回路および電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一次側と二次側が絶縁されたスイッチング電源において、三次巻線であるフィードバック巻線に基いて出力電圧を制御することが行われている。この方法では、フォトカプラなどの絶縁素子が不要となるので、製造コストの点で有利である。
【0003】
フィードバック巻線を利用して出力電圧を制御する場合、フィードバック巻線の負荷電圧を基準として制御が行われる。フィードバック巻線の負荷は固定値であるため、二次側に接続されている負荷が変動すると二次側の出力電圧が変動するという問題が発生する。この問題は、クロスレギュレーションと呼ばれている。特に、フィードバック巻線の負荷よりも二次側の負荷が減少した場合、出力電圧が大きく上昇してしまうという傾向がある。
【0004】
特許文献1には、シャントレギュレータによって、出力電圧の上昇を抑制する技術が開示されている。
特許文献2には、負荷電流を検出し、一定値以下とならないように制御する技術が開示されている。これにより、最大負荷はそのままに、最小負荷領域に於ける負荷を嵩上げすることで、負荷変動を抑制することが可能である。
特許文献3には、負荷回路の動作状態に応じてブリーダ抵抗の接続または切り離しを制御することにより、簡単な回路構成で出力電圧の電力損失を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−251563号公報
【特許文献2】特開平7−337007号公報
【特許文献3】特開2008−245444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明は、負荷の変動に伴う電圧上昇を抑制するには有効である。しかし、電圧上昇の抑制を目的とした専用のフォトカプラが必要であるという問題と、電圧基準としてツェナーダイオードを用いると、その温度特性によって検出精度が劣化するという問題とがある。
特許文献2に記載された発明は、出力端子を流れる負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、負荷電流検出手段からの負荷電流値によりブリーダ抵抗回路に流れる電流を制御する手段とが必要であるという問題がある。
特許文献3に記載された発明は、負荷回路からの動作状態信号が必要であるという問題がある。
【0007】
二次側に電流検出回路を設ける構成のスイッチング電源は、負荷が想定変動領域内において連続的に変動する場合には効果が大きいが、この電流検出回路のノイズ対策にコンデンサなどを追加する必要があり、応答速度が劣化する虞がある。更に、電圧基準としてツェナーダイオードを用いると、その温度特性によって検出精度が劣化する虞がある。よって、スイッチング電源は、負荷の変動値が離散的かつ想定可能な場合には、電流検出回路を設けず、より簡易かつ安価な構成とすることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、応答速度が劣化する虞と、温度特性による検出精度が劣化する虞とがある電流検出回路を設けずに、負荷変動に伴う電圧上昇の抑制を可能とするスイッチング電源回路および電動機の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、スイッチング信号を前記一次巻線に入力して前記トランスを駆動する一次側回路と、前記二次巻線に接続され、前記一次側回路とは電気的に絶縁されている二次側回路と、を具備するスイッチング電源回路において、前記二次側回路は、外部からの駆動信号によって駆動される駆動回路と、前記二次側回路に流れる電流を増大させる負荷抵抗と、外部からの前記駆動信号を検出する駆動信号検出回路と、を有し、前記駆動信号検出回路が外部からの前記駆動信号を検出した場合に、前記負荷抵抗に流れる電流値を減少させることを特徴とするスイッチング電源回路とした。
このようにすることで、本発明に係るスイッチング電源回路によれば、応答速度が劣化する虞と、温度特性による検出精度が劣化する虞とがある電流検出回路を設けずに、負荷変動に伴う電圧上昇の抑制ができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記二次側回路は更に、前記負荷抵抗に流れる電流を遮断する第1のスイッチング素子を有し、前記負荷抵抗は、前記駆動回路と並列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路とした。
このようにすることで、本発明に係るスイッチング電源回路は、第1のスイッチング素子によって負荷抵抗をオン/オフ制御することが明確化できる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記駆動信号検出回路は、外部からの前記駆動信号を監視するウォッチドッグタイマ回路であり、前記ウォッチドッグタイマ回路は、前記駆動信号を検出した場合に、前記第1のスイッチング素子によって前記負荷抵抗に流れる電流を遮断することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源回路とした。
このようにすることで、本発明に係るスイッチング電源回路によれば、駆動信号検出回路はウォッチドッグタイマ回路であることが明確化できる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記ウォッチドッグタイマ回路は、前記駆動信号を検出した場合には、前記駆動信号を検出しなくなった場合よりも高速に、前記第1のスイッチング素子によって、前記負荷抵抗に流れる電流を遮断することを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源回路とした。
このようにすることで、本発明に係るスイッチング電源回路によれば、駆動信号を検出した場合に、この駆動信号によるアンダーシュートを高速に抑制可能である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記トランスは更に三次巻線を有し、請求項3または請求項4に記載のスイッチング電源回路は更に、前記トランスの三次巻線に接続された整流回路と、当該整流回路の電圧信号が所定値になるようスイッチング信号を制御するフィードバック回路を備えたことを特徴とするスイッチング電源回路とした。
このようにすることで、本発明に係るスイッチング電源回路は、三次巻線によってフィードバック制御を行うことが明確化できる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記駆動信号は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調方式)信号、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調方式)信号、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)信号、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)信号、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)信号、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)信号のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路とした。
このようにすることで、本発明に係るスイッチング電源回路によれば、上記駆動信号のいずれかに効果を奏することが明確化できる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、第2のスイッチング素子により、複数相の電動機への通電を順次転流させるインバータと、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路の前記二次側回路が有している前記駆動回路によって、前記インバータの前記第2のスイッチング素子のオン/オフ状態を制御することを特徴とする電動機の制御装置とした。
このようにすることで、本発明に係る電動機の制御装置は、インバータのスイッチング素子のオン/オフ状態を制御する駆動回路に適用可能であることが明確化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、応答速度が劣化する虞と、温度特性による検出精度が劣化する虞とがある電流検出回路を設けずに、負荷変動に伴う電圧上昇が抑制可能とするスイッチング電源回路および電動機の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態のインバータ装置を示す概略の構成図である。
【図2】第1の実施形態のスイッチング電源回路を示す概略の構成図である。
【図3】第1の実施形態のゲートドライブと高圧側マイコンと一次側を示す概略の構成図である。
【図4】第1の実施形態の各ゲートドライブ回路を示す概略の構成図である。
【図5】スイッチング電源の二次側の負荷電流と出力電圧との関係を示す図である。
【図6】従来技術のゲートドライブ部の動作を示すタイムチャートである。
【図7】第1の実施形態のゲートドライブ部の動作を示すタイムチャートである。
【図8】第2の実施形態のウォッチドッグタイマ回路を示す図である。
【図9】第3の実施形態のウォッチドッグタイマ回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以降、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態のインバータ装置を示す概略の構成図である。
インバータ装置10には、モータECU100と、モータ110とが接続されている。インバータ装置10は、モータECU100の駆動信号によって、モータ110を回転駆動する。
【0020】
インバータ装置10は、インバータ回路11と、電源部12と、平滑コンデンサC12と、電流センサ13(=13−1〜13−3)と、ゲートドライブ回路20と、高圧側マイコン回路30と、トランス41と、一次側回路40と、スイッチング電源回路14とを有している。インバータ回路11は、第2のスイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子11−1〜11−6と、フライホイールダイオードD11−1〜D11−6を具備している。
【0021】
本実施形態のインバータ装置10は、電動機の駆動装置である。本実施形態のインバータ装置10は、バッテリなどの電源部12から供給される直流電力を、三相ブラシレスであるモータ110を駆動するための交流電力に変換する機能と、モータ110より回生される交流電力を直流電力に変換する機能とを有している。
【0022】
電源部12は、インバータ回路11を介してモータ110に電力を供給するための蓄電装置であり、複数のバッテリブロックが直列接続されている。本実施形態のバッテリブロックは、複数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池などがモジュール化されて構成されている。しかし、これに限られず、電源部12は、キャパシタで構成しても良い。
平滑コンデンサC12は、電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−の間に接続され、電源部12の出力電圧を平滑化している。
【0023】
インバータ回路11は、電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間に接続された三相インバータ回路である。インバータ回路11は、スイッチング素子であるIGBT素子11(=11−1〜11−6)とフライホイールダイオードD11(=D11−1〜D11−6)とをそれぞれ逆方向に並列接続したIGBTモジュールが、三相インバータ回路の各アームを構成している。U相、V相、W相の上アームと下アームを構成するIGBTモジュールは、それぞれ直列接続されて三相インバータ回路を構成している。
【0024】
IGBT素子11−1およびフライホイールダイオードD11−1は、U相の上アーム(P側)を構成している。また、IGBT素子11−3およびフライホイールダイオードD11−3は、V相の上アームを構成し、IGBT素子11−5およびフライホイールダイオードD11−5は、W相の上アームを構成している。
【0025】
IGBT素子11−2およびフライホイールダイオードD11−2は、U相の下アーム(N側)を構成している。また、IGBT素子11−4およびフライホイールダイオードD11−4は、V相の下アームを構成し、IGBT素子11−6およびフライホイールダイオードD11−6は、W相の下アームを構成している。
【0026】
IGBT素子11−1,11−3,11−5のコレクタ端子は、電源部12の正極側端子PN+に接続されている。IGBT素子11−2,11−4,11−6のエミッタ端子は、電源部12の負極側端子PN−に接続されている。各IGBT素子11−1〜11−6のコレクタ端子−エミッタ端子間は、コレクタ端子からエミッタ端子への方向と逆方向にフライホイールダイオードD11−1〜D11−6が並列接続されている。
【0027】
IGBT素子11−1〜11−6をパルス幅変調によりON/OFFするPWM(Pulse Width Modulation)信号(ゲート信号)がモータECU100よりIGBT素子11−1〜11−6のゲート端子に入力される。このPWM信号は、外部であるモータECU100から入力される駆動信号である。
IGBT素子11−1のエミッタ端子と、IGBT素子11−2のコレクタ端子とは、後述するモータ110のU相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−3のエミッタ端子と、IGBT素子11−4のコレクタ端子とは、後述するモータ110のV相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−5のエミッタ端子と、IGBT素子11−6のコレクタ端子とは、後述するモータ110のW相のコイル端子に接続されている。
【0028】
モータ110は、負荷としての電力機器であり、例えば、ハイブリッド車両、燃料電池車両、または、電動車両などの車両に駆動源として搭載される三相ブラシレスモータなどである。このモータ110は、U相、V相、W相の各コイル端子を備え、各相のコイルに流れる三相の交流電流によって回転駆動する。
【0029】
電流センサ13−1は、インバータ回路11のU相のアームとモータ110のU相との間に接続され、更に図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。同様に、電流センサ13−2は、インバータ回路11のV相のアームと、モータ110のV相との間に接続され、更に図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。電流センサ13−3は、インバータ回路11のW相のアームと、モータ110のW相との間に接続され、更に図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
【0030】
電流センサ13(=13−1〜13−3)は、モータ110の相電流を検出するセンサであり、それぞれU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力する。本実施形態の電流センサ13(=13−1〜13−3)は、U相、V相、W相全てについて設けられている。しかし、相電流の3相の和が0であることから、三相中の二相の電流値により、残り一相の電流値は算出可能である。よって、電流センサ13を三相のうち二相のみに設ける構成としても良い。
【0031】
スイッチング電源回路14は、一次側回路40と、トランス41と、ゲートドライブ回路20の一部とを具備し、更に図示しない高圧側マイコン回路30の一部を具備している。このスイッチング電源回路14は、低圧バッテリ系統である電源Vig(図2)から高圧バッテリ系統である二次側の直流電圧に変換する機能と、この低圧バッテリ系統と高圧バッテリ系統とを絶縁する。このスイッチング電源回路14は、後述する図3で詳細に説明する。
【0032】
本実施形態のインバータ装置10は、第2のスイッチング素子であるIGBT素子11−1〜11−6により、複数相の電動機であるモータ110への通電を順次転流させるインバータ回路11と、後述する図2に示すスイッチング電源回路14の二次側回路であるゲートドライブ回路20のゲート駆動回路21−1〜21−6によって、インバータ回路11のIGBT素子11−1〜11−6のオン/オフ状態を制御する。
【0033】
モータECU100は、モータ110の駆動動作および回生動作を制御する。モータECU100の出力側は、ゲートドライブ回路20に接続されている。モータECU100には、高圧側マイコン回路30の出力側と、ゲートドライブ回路20の出力側とが接続されている。モータECU100は、駆動信号であるPWM信号を出力して、第2のスイッチング素子であるIGBT素子11−1〜11−6を駆動する。
【0034】
図2は、第1の実施形態のスイッチング電源回路を示す概略の構成図である。
図2に示すスイッチング電源回路14は、図1に示すインバータ装置10の一次側回路40と、ゲートドライブ回路20と、トランス41とから構成されている。一次側回路40は、トランス41を介してゲートドライブ回路20と接続されている。
一次側回路40は、スイッチング電源回路14の一次側であり、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR40と、制御IC42と、抵抗R44と、整流ダイオードD40と、平滑コンデンサC40と、負荷Z40と、電源Vigと、分圧抵抗R42H,R42Lとを有している。
【0035】
一次側回路40は、電界効果トランジスタTR40によって生成されたスイッチング信号を、トランス41の一次巻線に入力して、トランス41を駆動する。
電源Vigは、トランス41の一次巻線を介して電界効果トランジスタTR40のドレイン端子に接続されている。電界効果トランジスタTR40のソース端子は、グランドに接続されている。
トランス41の三次巻線は、順方向に接続された整流ダイオードD40を介して、平滑コンデンサC40と負荷Z40に並列に接続されている。この整流ダイオードD40のカソード端子は更に、分圧抵抗R42H,R42Lの直列回路に接続されている。分圧抵抗R42Hと分圧抵抗R42Lの接続ノードは更に、制御IC42を介して、電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。
【0036】
制御IC42は、リファレンス電源43と、エラーアンプ44と、発振器46と、コンパレータ47とを有している。制御IC42の入力信号は、エラーアンプ44の反転入力端子に接続され、更に抵抗R44を介してエラーアンプ44の出力端子に接続されている。リファレンス電源43の出力端子は、エラーアンプ44の非反転入力端子に接続されている。エラーアンプ44の出力端子は、コンパレータ47の非反転入力端子に接続されている。発振器46の出力端子は、コンパレータ47の反転入力端子に接続されている。コンパレータ47の出力端子は、この制御IC42の出力端子であり、電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。
【0037】
各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)は、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nと、ゲート駆動回路21−nとを有し、それぞれトランス41の二次巻線に接続されている。図2では、ゲートドライブ回路20−1,20−2のみを図示している。整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nとは、スイッチング電源回路14の二次側に含まれている。
【0038】
各ゲートドライブ回路20−nのトランス41の二次巻線は、整流ダイオードD20−nを介して、平滑コンデンサC20−nに接続され、スイッチング電源回路14の二次側出力を構成している。このスイッチング電源回路14の二次側出力は、ゲート駆動回路21−nに接続されている。ゲート駆動回路21−nは、モータECU100からのPWM信号(図4)によって駆動される駆動回路である。ゲート駆動回路21−nの出力側は、スイッチング素子であるIGBT素子11−n(図1)のゲート端子に接続されている。スイッチング電源回路14の二次側であるゲートドライブ回路20−nは、スイッチング電源回路14の一次側回路40、および、モータECU100(図1)と電気的に絶縁されている。
【0039】
電源Vigは、例えばイグニッションキーをオンしたときにバッテリから直流電力を供給する。電源Vigは、トランス41の一次巻線を介して、電界効果トランジスタTR40のドレイン端子に接続されている。電界効果トランジスタTR40のソース端子は、一次側回路40のグランドに接続されている。
【0040】
一次側回路40のトランス41の三次巻線は、順接続の整流ダイオードD40を介して、平滑コンデンサC40と負荷Z40とに接続されている。整流ダイオードD40のカソード端子は更に、分圧抵抗R42H,R42Lの直列回路に接続されている。分圧抵抗R42H,R42Lの接続ノードは、制御IC42に接続され、制御IC42の出力側は、電界効果トランジスタTR40に接続されている。
【0041】
トランス41は、一次側回路40に接続されている一次巻線と、ゲートドライブ回路20−1〜20−6に接続されている6個の二次巻線と、高圧側マイコン回路30に接続されている1個の二次巻線と、一次側回路40のフィードバック電圧Vfb(図3)を生成する三次巻線とを有している。
【0042】
図3は、第1の実施形態のゲートドライブと高圧側マイコンと一次側を示す概略の構成図である。図1と同一の要素には同一の符号が付されている。
インバータ装置10は、インバータ回路11と、ゲートドライブ回路20と、高圧側マイコン回路30と、これらゲートドライブ回路20と高圧側マイコン回路30とに電力を供給するスイッチング電源回路14とを有している。
インバータ回路11は、IGBT素子11−1〜11−6と、フライホイールダイオードD11−1〜D11−6を具備している。
スイッチング電源回路14は、ゲートドライブ回路20の一部と、高圧側マイコン回路30の一部と、一次側回路40と、トランス41と、を具備している。このスイッチング電源回路14は、低圧バッテリ系統である電源Vigから高圧バッテリ系統である二次側の直流電圧に変換する機能と、この低圧バッテリ系統と高圧バッテリ系統とを絶縁する。この高圧バッテリ系統である二次側は、IGBT素子11(=11−1〜11−6)のゲートを駆動するゲートドライブ回路20と、高圧側を制御する高圧側マイコン回路30や、図示しないロジック回路や温度センサ回路や電圧検出回路などに電源電圧を印加している。
【0043】
ゲートドライブ回路20は、U相上アームのIGBT素子11−1を駆動するゲートドライブ回路20−1と、U相下アームのIGBT素子11−2を駆動するゲートドライブ回路20−2と、V相上アームのIGBT素子11−3を駆動するゲートドライブ回路20−3と、V相下アームのIGBT素子11−4を駆動するゲートドライブ回路20−4と、W相上アームのIGBT素子11−5を駆動するゲートドライブ回路20−5と、W相下アームのIGBT素子11−6を駆動するゲートドライブ回路20−6とを具備している。
【0044】
ゲート駆動回路21−nは、モータECU100からのPWM信号によって制御され、インバータ回路11を駆動する駆動回路である。ゲート駆動回路21−nの出力側は、スイッチング素子であるIGBT素子11−nのゲート端子に接続されている。スイッチング電源回路14の二次側であるゲートドライブ回路20−nは、スイッチング電源回路14の一次側回路40、および、モータECU100と電気的に絶縁されている。
【0045】
高圧側マイコン回路30は、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30と、高圧側マイコン31と、フォトカプラPC30とを有し、トランス41の二次巻線に接続されている。整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30とは、スイッチング電源回路14の二次側である。スイッチング電源の二次側回路である高圧側マイコン回路30は、スイッチング電源回路14の一次側回路40、および、モータECU100と電気的に絶縁されている。
【0046】
高圧側マイコン回路30のトランス41の二次巻線は、順接続の整流ダイオードD30を介して、平滑コンデンサC30の一端に接続され、スイッチング電源回路14の二次側出力を構成している。このスイッチング電源回路14の二次側出力は、高圧側マイコン31に接続されている。
【0047】
高圧側マイコン31には、図示しない温度センサが接続され、インバータ回路11のIGBT素子11(=11−1〜11−6)の温度を測定可能に構成されている。高圧側マイコン31には、ゲートドライブ回路20−6の整流ダイオードD20−6のカソード端子が接続され、ゲートドライブ回路20−6の電圧Vx−4(図4)を測定可能に構成されている。更に、他のゲートドライブ回路20−1〜20−5の整流ダイオードD20−1〜D20−5のカソード端子が接続され(不図示)、ゲートドライブ回路20−1〜20−5の電圧Vx−1〜Vx−5(図4)も測定可能に構成されている。
高圧側マイコン31の出力端子は、フォトカプラPC30の入力端子に接続されている。フォトカプラPC30の出力端子は、モータECU100に接続され、ゲートドライブ回路20に発生している電圧の情報や、インバータ回路11の温度の情報などをモータECU100に送信する。ここで高圧側マイコン31がモータECU100に送信する信号には、IGBT素子11−n近傍にそれぞれ設けられた図示しない温度センサの出力、電源部12の電圧、ゲート駆動回路21−nに印加されている電圧Vx−nなど、二次側回路に係る様々な情報が含まれている。
【0048】
図3で説明した一次側回路40は、スイッチング電源回路14の一次側である。
【0049】
図4は、第1の実施形態の各ゲートドライブ回路を示す概略の構成図である。
ゲートドライブ回路20−nは、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nと、第1のスイッチング素子であるNPN型のトランジスタTR20−nと、ブリーダ抵抗R20−nと、ゲート駆動回路21−nと、フォトカプラPC21−nと、フォトカプラPC22−nと、ウォッチドッグタイマ回路22−nとを有し、トランス41の二次巻線に接続されている。
【0050】
トランス41の二次巻線は、順方向の整流ダイオードD20−nを介して平滑コンデンサC20−nとゲート駆動回路21−nに接続されている。平滑コンデンサC20−nの両端子間に発生する電圧は、電圧Vx−nである。更に整流ダイオードD20−nのカソード端子には、PNP型であるトランジスタTR20−nのエミッタ端子が接続されている。トランジスタTR20−nのコレクタ端子は、ブリーダ抵抗R20−nを介してゲートドライブ回路20−nのグランドに接続されている。
【0051】
モータECU100のPWM信号端子は、フォトカプラPC21−nを介して、ゲート駆動回路21−nに接続され、ゲート駆動回路21−nにPWM信号を出力するように構成されている。
ゲート駆動回路21−nのフェール信号端子は、フォトカプラPC22−nを介してモータECU100に接続されて、モータECU100にフェール信号を出力するように構成されている。
フェール信号は、シリアル通信によって情報が送信される。モータECU100は、フェール信号に基づいた二次側回路の情報を取得し、過熱や短絡(過電流)や過電圧などを検知したとき、種々の制御素子の破壊を防止するためにモータ110を駆動停止する保護機能を有している。
【0052】
ゲート駆動回路21−nの出力側は、IGBT素子11−nのゲート端子と第1のエミッタ端子に接続され、モータ110のU相、V相、W相ぞれぞれの駆動信号を発生する。IGBT素子11−nの第1のエミッタ端子は、抵抗R11−nを介してグランドに接続され、第2のエミッタ端子は、直接にグランドに接続されている。IGBT素子11−nのコレクタ端子と第2のエミッタ端子との間には、フライホイールダイオードD11−nが逆方向に接続されている。
【0053】
モータECU100からのPWM信号は更に、駆動信号検出回路であるウォッチドッグタイマ回路22−nによってPWM信号が発生しているか否かの判定信号に変換され、トランジスタTR20−nのベース端子に入力されている。
ウォッチドッグタイマ回路22−nは、パルス信号が発生していると出力端子がHレベルになり、所定時間に亘ってパルス信号が発生していないと出力端子がLレベルになる。すなわち、ウォッチドッグタイマ回路22−nは、モータECU100からのパルス信号(駆動信号)を検出する。
この構成により、PWM信号(パルス)が発生したときには、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力端子がHレベルになり、トランジスタTR20−nがオフし、ブリーダ抵抗R20−nに流れる電流値が減少する。
PWM信号(パルス)が発生していないときには、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力端子がLレベルになり、トランジスタTR20−nがオンし、ブリーダ抵抗R20−nに流れる電流が増大する。
すなわち、ウォッチドッグタイマ回路22−nは、パルス信号(駆動信号)を検出した場合に、トランジスタTR20−nによってブリーダ抵抗R20−nに流れる電流を遮断する。
【0054】
ウォッチドッグタイマ回路22−nは、バッファであるオペアンプOP22と、ダイオードD23と、抵抗R24と、抵抗R25と、コンデンサC26と、シュミットトリガST27とを有している。
【0055】
ウォッチドッグタイマ回路22−nの入力側は、オペアンプOP22を介して順方向のダイオードD23とを介して抵抗R24の一端に接続されている。抵抗R24の他端は、抵抗R25及びコンデンサC26の並列回路でグランドに接続され、更にシュミットトリガST27に接続されている。シュミットトリガST27の出力側は、当該ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力側である。
【0056】
本実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nは、PWM信号の開始時に、ダイオードD23及び抵抗R24を介してコンデンサC26が充電される。本実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nは、PWM信号の停止時に、コンデンサC26が蓄えた電荷は、抵抗R25を介してグランドに流れる。
本実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nは、抵抗R24に比べて抵抗R25の抵抗値は大きく設定されているので、PWM信号の開始時は、PWM信号の停止時に比べて高速に変化する出力信号を出力する。
【0057】
(第1の実施形態の動作)
図1ないし図3に基いて、第1の実施形態のインバータ装置10の動作を説明する。
図1に示すインバータ装置10が起動され、変圧を開始した時点では、トランス41の3次巻線には電流が流れていないので、制御IC42の入力端子のフィードバック電圧Vfb(図3)は0Vである。制御IC42は、起動直後に於いて、電界効果トランジスタTR40のゲート端子に印加するスイッチングパルスのデューティを徐々に増大させ、それに伴ってトランス41の一次巻線にはスイッチング信号であるパルス電流の最大値が徐々に増大し始める。
【0058】
トランス41の一次巻線にスイッチング信号であるパルス電流が流れると共に、トランス41が駆動され、トランス41の三次巻線にもパルス電流が徐々に増大する。このパルス電流は、整流ダイオードD40と平滑コンデンサC40によって整流されて、フィードバック電圧Vfbを発生する。フィードバック電圧Vfbは、制御IC42の入力端子に印加される。制御IC42は、印加されたフィードバック電圧Vfbに応じてスイッチングパルスのデューティを減少させる。このようにフィードバック制御することにより、一定時間が経過すると、フィードバック電圧Vfbは所定値に収束する。
【0059】
トランス41の一次巻線に徐々にパルス電流が流れはじめると、トランス41の二次巻線にもパルス電流が徐々に増大する。このパルス電流は、整流ダイオードD20−nと平滑コンデンサC20−nによって整流され、ゲート駆動回路21−nに流れる。
【0060】
ゲート駆動回路21−nにPWM信号が入力されていない状態では、ゲート駆動回路21−nは、IGBT素子11−nのゲート端子に信号を出力しない。このとき、ゲート駆動回路21−nの負荷抵抗は大きく、ゲートドライブ回路20−nの負荷電流は少ない。しかし、このときウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号はLレベルとなり、トランジスタTR20−nがオンするので、ブリーダ抵抗R20−nには一定の電流が流れる。これにより、ゲートドライブ回路20−nの整流ダイオードD20−nには、一定の負荷電流が流れる。
【0061】
モータECU100から、モータ110を駆動するPWM信号が出力されたならば、ゲート駆動回路21−nは、このPWM信号に応じて、IGBT素子11−nのゲート端子に信号を出力する。このとき、ゲート駆動回路21−nの負荷は減少し、ゲートドライブ回路20−nの負荷電流は増大する。このときには、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号はHレベルであり、トランジスタTR20−nがオフする。このとき、ブリーダ抵抗R20−nは切り離され、電流は流れなくなる。
【0062】
図5は、スイッチング電源の二次側の負荷電流と出力電圧との関係を示す図である。横軸は負荷電流[mA]を示し、縦軸は出力電圧[V]を示している。
WHは、ゲートドライブ回路20−5の負荷電流と出力電圧との関係を示している。WLは、ゲートドライブ回路20−6の負荷電流と出力電圧との関係を示している。VHは、ゲートドライブ回路20−3の負荷電流と出力電圧との関係を示している。VLは、ゲートドライブ回路20−4の負荷電流と出力電圧との関係を示している。UHは、ゲートドライブ回路20−1の負荷電流と出力電圧との関係を示している。ULは、ゲートドライブ回路20−2の負荷電流と出力電圧との関係を示している。WH,WL,VH,VL,UH,ULの負荷電流は、いずれも整流ダイオードD20−nに流れる電流であり、出力電圧は、電圧Vx−nであり、かつ、平滑コンデンサC20−nの端子間に発生する電圧である。
【0063】
FBは、一次側回路40の負荷電流と出力電圧との関係を示している。この負荷電流は、整流ダイオードD40に流れる電流であり、出力電圧は、平滑コンデンサC40の端子間に発生する電圧である。
【0064】
一次側回路40は、出力電圧をフィードバック制御しているので、負荷電流に依らずに一定である。しかし、ゲートドライブ回路20−nの出力電圧Vx−nは、一次側回路40のフィードバック制御に依存している。ゲートドライブ回路20−nの負荷が小さいときには、負荷電流が減少すると共に出力電圧Vx−nが上昇する。この出力電圧の上昇により、素子や集積回路が破壊される虞がある。
【0065】
本実施形態では、PWM信号が出力されていないとき、すなわち、ゲート駆動回路21−nの負荷電流が小さいときには、ブリーダ抵抗R20−nを並列接続している。これにより、ゲートドライブ回路20−nの負荷電流を増大させ、出力電圧の上昇を抑制する効果がある。
【0066】
更に、PWM信号が出力されているとき、すなわち、ゲート駆動回路21−nに所定の負荷電流が流れているときには、ブリーダ抵抗R20−nを切り離している。これにより、ゲートドライブ回路20−nの動作時の消費電力を低減させる効果がある。
【0067】
図6(a),(b)は、従来技術のゲートドライブ部の動作を示すタイムチャートである。横軸は全て時間t(共通)を示している。
図6(a)の縦軸はPWM信号を示し、図6(b)の縦軸は電圧Vx−nを示している。なお、従来技術のゲートドライブ部は、第1の実施形態のゲートドライブ部と異なり、ブリーダ抵抗R20−nを有していない。
タイミングt0以前に於いては、PWM信号は出力されておらず、よってウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号はLレベルである。
【0068】
タイミングt0において、モータECU100がPWM信号を出力し始めると、ゲート駆動回路21−nの負荷が減少、電圧Vx−nが急峻に下降したのち上昇する。所定時間が経過しても、電圧Vx−nは、電力供給増によって電圧が降下している。
タイミングt2において、モータECU100がPWM信号の出力を停止すると、電圧Vx−nは所定の電圧に復帰する。
【0069】
図7(a)〜(e)は、第1の実施形態のゲートドライブ部の動作を示すタイムチャートである。横軸は全て時間t(共通)を示している。
図7(a)の縦軸はPWM信号を示し、図7(b)の縦軸はシュミットトリガST27への入力信号を示し、図7(c)の縦軸はウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号を示している。図7(d)は、ブリーダ抵抗R20−nが接続状態であるか、非接続状態であるかを示し、図7(e)の縦軸は電圧Vx−nを示している。
【0070】
タイミングt0以前に於いては、PWM信号は出力されておらず、よって、シュミットトリガST27への入力信号はLレベルであり、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号はLレベルである。このとき、ブリーダ抵抗R20−nは接続された状態であり、電圧Vx−nは所定の電圧である。
【0071】
タイミングt0において、モータECU100がPWM信号を出力し始めると、シュミットトリガST27への入力信号が立ち上がる。同時に、ゲート駆動回路21−nの負荷が減少し、電圧Vx−nが急峻に下降する。
所定時間が経過したタイミングt1に於いて、シュミットトリガST27への入力信号が立ち上りの閾値を超え、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号がHレベルに変化する。さらに、トランジスタTR20−nがオフし、ブリーダ抵抗R20−nに流れる電流が減少する。これにより、ブリーダ抵抗R20−nによる消費電力の増大を抑止することが可能である。本実施形態において、ウォッチドッグタイマ回路22−nは、PWM信号の開始時の応答時間が短くなるように構成されている。これにより、PWM信号の開始時に於ける電圧Vx−nの急峻な下降(アンダーシュート)を抑止することが可能である。
タイミングt1から所定時間が経過すると、電圧Vx−nが所定の値に収束し、駆動時の安定状態となる。
【0072】
タイミングt2において、モータECU100がPWM信号を停止すると、シュミットトリガST27への入力信号が立ち下がる。同時に、ゲート駆動回路21−nの負荷が増大し、電圧Vx−nが上昇する。
タイミングt3において、シュミットトリガST27への入力信号が立下りの閾値以下となり、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号がLレベルに変化すると、トランジスタTR20−nがオンし、ブリーダ抵抗R20−nが再接続されて一定の電流が流れる。これにより、トランス41の二次側の負荷電流の減少により、電圧Vx−nが増大することを抑止可能である。
【0073】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A)〜(E)のような効果がある。
(A) PWM信号が停止し、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号がLレベルに変化すると、トランジスタTR20−nがオンし、ブリーダ抵抗R20−nが接続されて一定の電流が流れる。これにより、トランス41の二次側の負荷電流の減少により、電圧Vx−nが増大することを抑止可能である。
【0074】
(B) PWM信号が出力開始し、ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力信号がHレベルに変化すると、トランジスタTR20−nがオフし、ブリーダ抵抗R20−nに流れる電流が減少する。これにより、ブリーダ抵抗R20−nによる消費電力の増大を抑止することが可能である。
【0075】
(C) 二次側回路の駆動信号が出力されていることを判定してトランジスタTR20−nをオンし、ブリーダ抵抗R20−nに一定の電流を流している。これにより、温度特性を持ちやすいツェナーダイオードなどを有する電流検出回路を使うことなく、必要な場合だけブリーダ抵抗R20−nを接続することが可能である。
【0076】
(D) ウォッチドッグタイマ回路22−nは、PWM信号が開始するときに高速に信号を出力し、ブリーダ抵抗R20−nを接続している。これにより、PWM信号の開始時に於ける電圧Vx−nの急峻な下降を抑止することが可能である。
(E) 二次側回路の駆動信号が出力されていることを判定して、ブリーダ抵抗R20−nを接続している。これにより、二次側回路のノイズ耐性が向上し、かつ、二次側のゲート駆動回路21−nの応答速度が改善する効果を奏する。
【0077】
(第2の実施形態の構成)
本実施形態のインバータ装置10は、第1の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nとは異なるウォッチドッグタイマ回路22A−nを有している。
【0078】
図8は、第2の実施形態のウォッチドッグタイマ回路を示す図である。図4に示す第1の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nと同一の要素には同一の符号が付されている。
【0079】
ウォッチドッグタイマ回路22A−nは、第1の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nのダイオードD23とは逆方向に接続されているダイオードD23Aと、抵抗R25とは抵抗値が異なる抵抗R25Aと、電源Vccとを有しているほかは、第一の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nと同様の構成を有している。
【0080】
ウォッチドッグタイマ回路22A−nの入力側は、オペアンプOP22を介して逆方向のダイオードD23と抵抗R24に接続されている。この抵抗R24は、一端が電源Vccに接続されている抵抗R25の他端、および、一端がグランドに接続されているコンデンサC26の他端に接続され、更にシュミットトリガST27の入力側端子に接続されている。シュミットトリガST27の出力側は、当該ウォッチドッグタイマ回路22−nの出力側である。
【0081】
(第2の実施形態の動作)
図8に基いて、第2の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22A−nの動作を説明する。
本実施形態に於いて、PWM信号の開始時には、抵抗R25AからコンデンサC26に充電される。PWM信号の停止時には、オペアンプOP22の出力端子の電圧はLレベルであり、コンデンサC26が蓄えた電荷は、抵抗R24とダイオードD23Aを介してオペアンプOP22の出力端子に流れ込む。本実施形態に於いて、抵抗R24に比べて抵抗R25Aの抵抗値は大きく設定されているので、PWM信号の停止時は、PWM信号の開始時に比べて高速に出力信号が変化する。
【0082】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(F)のような効果がある。
(F) PWM信号の停止時は、PWM信号の開始時に比べて高速に出力信号が変化する。これにより、二次側の負荷電流の減少を抑止して、二次側の回路素子や集積回路などの破壊を防止することが可能である。
【0083】
(第3の実施形態の構成)
本実施形態のインバータ装置10は、第1の実施形態とは異なるウォッチドッグタイマ回路22B−nを有している。
【0084】
図9は、第3の実施形態のウォッチドッグタイマ回路を示す図である。図4に示す第1の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−nと同一の要素には同一の符号が付されている。
ウォッチドッグタイマ回路22B−nは、順方向のダイオードD23Bと抵抗R25Bとを介してコンデンサC26の一端に接続されると共に、逆方向のダイオードD23Cと抵抗R25Cとを介してコンデンサC26の一端に接続されている。更に、コンデンサC26は、シュミットトリガST27の入力側端子に接続されている。シュミットトリガST27の出力側は、当該ウォッチドッグタイマ回路22B−nの出力側である。
【0085】
(第3の実施形態の動作)
図9に基いて、本実施形態のウォッチドッグタイマ回路22B−nの動作を説明する。
本実施形態に於いて、PWM信号の開始時には、順方向のダイオードD23Bと抵抗R25BによってコンデンサC26を充電する。PWM信号の停止時には、コンデンサC26が蓄えた電荷は、抵抗R25Cと逆方向のダイオードD23Cを介してオペアンプOP22に流れる。抵抗R25Bの抵抗値を設定することにより、PWM信号の開始時の出力信号の応答時間を設定することが可能である。抵抗R25Cの抵抗値を設定することにより、PWM信号の終了時の出力信号の応答時間を設定することが可能である。
【0086】
(第3の実施形態の効果)
以上説明した第3の実施形態では、次の(G),(H)のような効果がある。
(G) 抵抗R25Bの抵抗値を設定することにより、PWM信号の開始時の出力信号の応答時間を設定することが可能である。これにより、二次側の負荷電流の増加を抑止して、消費電力を低減することが可能である。
【0087】
(H) 抵抗R25Cの抵抗値を設定することにより、PWM信号の終了時の出力信号の応答時間を設定することが可能である。これにより、二次側の負荷電流の減少を抑止して、二次側の回路素子や集積回路などの破壊を防止することが可能である。
【0088】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
【0089】
(a) 第1〜第3の実施形態のモータECU100は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調方式)信号を出力してモータ110を駆動させている。しかし、これに限られず、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調方式)信号、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)信号、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)信号、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)信号、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)信号のいずれによって、モータ110を駆動しても良い。
【0090】
(b) 第1〜第3の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−n,22A−n,22B−nは、いずれもアナログ回路で構成されている。しかし、これに限られず、デジタル方式のウォッチドッグタイマ回路であっても良い。これにより、回路の無調整化が可能となる。
【0091】
(c) 第1〜第3の実施形態のウォッチドッグタイマ回路22−n,22A−n,22B−nは、いずれもヒステリシス機能付きのシュミットトリガST27を有している。しかし、これに限られず、単なるコンパレータ(比較器)で構成しても良い。
【0092】
(d) 第1〜第3の実施形態のゲートドライブ回路20−nは、それぞれウォッチドッグタイマ回路22−nを有している。しかし、これに限られず、単一のウォッチドッグタイマ回路が、各ゲートドライブ回路20−1〜20−6に信号を出力し、各ブリーダ抵抗R20−nを接続するように構成しても良い。これにより、ゲートドライブ回路20−1〜20−6の回路を簡素化し、コストダウンすることが可能である。
【0093】
(e) 第1〜第3の実施形態のインバータ回路11は、スイッチング素子としてIGBT素子11−1〜11−6を用いている。しかし、これに限られず、大出力用途としてGTO(Gate Turn-Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)をスイッチング素子として用いても良い。また、小出力用途としてパワーバイポーラトランジスタ、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などをスイッチング素子として用いても良い。
【符号の説明】
【0094】
10 インバータ装置(電動機の駆動装置)
11 インバータ回路(インバータ)
11−1〜11−6 IGBT素子(第2のスイッチング素子)
12 電源部
14 スイッチング電源回路
C12 平滑コンデンサ
20−1〜20−6 ゲートドライブ回路(二次側回路)
TR20−n トランジスタ(第1のスイッチング素子)
R20−n ブリーダ抵抗(負荷抵抗)
21−n ゲート駆動回路(駆動回路)
PC21−n,PC22−n フォトカプラ
22−n,22A−n,22B−n ウォッチドッグタイマ回路(駆動信号検出回路)
30 高圧側マイコン回路
40 一次側回路
TR40 電界効果トランジスタ
D40 整流ダイオード(フィードバック回路)
C40 平滑コンデンサ(フィードバック回路)
Z40 負荷(フィードバック回路)
42 制御IC
41 トランス
100 モータECU
110 モータ(複数相の電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
スイッチング信号を前記一次巻線に入力して前記トランスを駆動する一次側回路と、
前記二次巻線に接続され、前記一次側回路とは電気的に絶縁されている二次側回路と、
を具備するスイッチング電源回路において、
前記二次側回路は、外部からの駆動信号によって駆動される駆動回路と、
前記二次側回路に流れる電流を増大させる負荷抵抗と、
外部からの前記駆動信号を検出する駆動信号検出回路と、を有し、
前記駆動信号検出回路が外部からの前記駆動信号を検出した場合に、前記負荷抵抗に流れる電流値を減少させる
ことを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記二次側回路は更に、
前記負荷抵抗に流れる電流を遮断する第1のスイッチング素子を有し、
前記負荷抵抗は、前記駆動回路と並列に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記駆動信号検出回路は、外部からの前記駆動信号を監視するウォッチドッグタイマ回路であり、
前記ウォッチドッグタイマ回路は、前記駆動信号を検出した場合に、前記第1のスイッチング素子によって前記負荷抵抗に流れる電流を遮断する
ことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記ウォッチドッグタイマ回路は、前記駆動信号を検出した場合には、前記駆動信号を検出しなくなった場合よりも高速に、前記第1のスイッチング素子によって、前記負荷抵抗に流れる電流を遮断する
ことを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記トランスは更に三次巻線を有し、
請求項3または請求項4に記載のスイッチング電源回路は更に、
前記トランスの三次巻線に接続された整流回路と、当該整流回路の電圧信号が所定値になるようスイッチング信号を制御するフィードバック回路を備えた
ことを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記駆動信号は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調方式)信号、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調方式)信号、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)信号、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)信号、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)信号、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)信号のいずれかである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路。
【請求項7】
第2のスイッチング素子により、複数相の電動機への通電を順次転流させるインバータと、
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路の前記二次側回路が有している前記駆動回路によって、前記インバータの前記第2のスイッチング素子のオン/オフ状態を制御すること
を特徴とする電動機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−257415(P2012−257415A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129734(P2011−129734)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】