説明

スイッチ操作装置及び携帯電子機器

【課題】 対向状態にある二つの筐体に対して対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行う。
【解決手段】 二つの筐体(3、4)を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器(1)に適用するスイッチ操作装置において、前記二つの筐体(3、4)の対向面の一方にスイッチ要素(5)を設けると共に、同対向面の他方に前記スイッチ要素(5)をオンオフさせるためのスイッチ操作手段(7)を設け、さらに、前記二つの筐体(3、4)の間に弾性体(6)を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能な、たとえば、携帯電話機などの携帯電子機器に搭載されるスイッチ操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの携帯電子機器は、一段と多機能化の傾向を強めてきている。たとえば、携帯電話機にあっては電話の機能だけでなく、電子メール端末やインターネットブラウザ端末としての機能、カメラとしての機能、さらには、ワンセグテレビジョン放送の受信端末としての機能を兼ね備えたものまである。
【0003】
一方、多機能な携帯電話機は、機能ごとの使用スタイルに違いが出る。たとえば、電話の場合は送受話操作を行いやすいスタイル(便宜的に「電話スタイル」という。)となり、電子メール端末やインターネットブラウザ端末の場合は送信メールの作成や受信メールの閲覧及び送受信の操作を行いやすいスタイル(便宜的に「メールスタイル」という。)となり、カメラの場合はファインダ画像(ディスプレイに写し出された被写体のライブビュー画像)を確認しやすいスタイル(便宜的に「カメラスタイル」という。)となり、テレビの場合はテレビ放送を鑑賞しやすいスタイル(便宜的に「テレビスタイル」という。)となる。
【0004】
これらの多様なスタイルに柔軟に対応できる従来技術としては、たとえば、下記の特許文献1に記載のものが知られている。
【0005】
この従来技術の構成上の特徴は、「操作面が形成された薄型の操作筐体と、表示面が形成された薄型の表示筐体と、操作筐体及び表示筐体を連結する可動連結部とを備え、操作面及び表示面を同一方向に向けて両筐体を展開させた通常オープン状態と、表示面を外側に向け、両筐体の主面を対向させて折り畳んだ逆クローズ状態とを遷移可能な折り畳み式携帯通信端末であって、上記操作面内に設けられ、押圧部位に応じて2以上の異なる操作入力が可能なメイン多機能キーと、上記操作筐体の端面に設けられ、メイン多機能キーと同一の操作を行うことにより、同一の操作入力を行うことが可能なサイド多機能キーとを備える。」というものである。
【0006】
このような構成を備える従来技術によれば、操作面及び表示面を同一方向に向けて両筐体を展開させた「通常オープン状態」と、表示面を外側に向け、両筐体の主面を対向させて折り畳んだ「逆クローズ状態」とを選択できるので、「通常オープン状態」を前記の電話スタイルやメールスタイルの場合に使用し、また、「逆クローズ状態」を前記のカメラスタイルやテレビスタイルに使用することにより、上記の多様な使用スタイルに柔軟に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−312003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の従来技術にあっては、多様な使用スタイルに柔軟に対応できるという利点があるものの、それぞれのスタイルにおけるキー操作やボタン操作は、依然としてそれらのキーやボタンに対して直接的に“指”で行う(指先で押し下げる)仕組みになっているため、たとえば、カメラスタイルの場合には、目視(または指先の感触)でシャッタボタン(従来技術のサイド多機能キー等)を探し出し、そのボタンの上に指先を持って行ってからシャッタ操作を行う必要があり、その間、若干のタイムラグの発生を否めず、シャッタチャンスを逃しかねないという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行うことができるスイッチ操作装置及び携帯電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のスイッチ操作装置は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器に適用するスイッチ操作装置において、前記二つの筐体の対向面の一方にスイッチ要素を設けると共に、同対向面の他方に前記スイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段を設け、さらに、前記二つの筐体の間に弾性体を介在させたことを特徴とする。
なお、上述した請求項1記載の発明は次のようなものであってもよい。
前記スイッチ操作手段は、前記スイッチ要素が機械的接点を有するものである場合に、その機械的接点をオンオフさせることが可能な物理的形状を有している(請求項2記載の発明)。
前記スイッチ操作手段は、前記スイッチ要素が静電容量方式のタッチスイッチである場合に、その静電容量を変化させることが可能である(請求項3記載の発明)。
前記スイッチ操作手段は、前記スイッチ要素が光学式または磁気式のタッチスイッチである場合に、その光路を遮ったり光軸を曲げたり、あるいは、磁束を遮ったり磁束を曲げたりすることが可能なものである(請求項4記載の発明)。
前記スイッチ要素及び前記スイッチ操作手段が複数設けられている(請求項5記載の発明)。
請求項6記載のスイッチ操作装置は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器に適用するスイッチ操作装置において、前記二つの筐体の対向面の少なくとも一方に設けたスイッチ要素と、前記二つの筐体の間に介在させた弾性体と、を備え、前記二つの筐体を挟み込むことで前記弾性体を圧縮変形させて、前記スイッチ要素をオンオフさせるようにした、ことを特徴とする。
請求項7記載の携帯電子機器は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器において、前記二つの筐体の対向面の一方にスイッチ要素を設けると共に、同対向面の他方に前記スイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段を設け、さらに、前記二つの筐体の間に弾性体を介在させたことを特徴とする。
請求項8記載の携帯電子機器は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器において、前記二つの筐体の対向面の少なくとも一方に設けたスイッチ要素と、前記二つの筐体の間に介在させた弾性体と、を備え、前記二つの筐体を挟み込むことで前記弾性体を圧縮変形させて、前記スイッチ要素をオンオフさせるようにした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行うことができるスイッチ操作装置及び携帯電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の構成図である。
【図2】携帯電話機1のヒンジ2の動きと、その動きに伴う様々な使用スタイルを示す図である。
【図3】各スタイルごとのスイッチ機能割当の概念的フローを示す図である。
【図4】スイッチ要素とそのスイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段を示す図である。
【図5】第2実施形態の構成図である。
【図6】第2実施形態のスイッチ操作の概念図である。
【図7】第3実施形態の構成図である。
【図8】第3実施形態の作用説明図である。
【図9】第4実施形態の構成図である。
【図10】第4実施形態の作用説明図である。
【図11】第5実施形態の構成図である。
【図12】第6実施形態の構成図である。
【図13】第7実施形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の構成図である。この図において、携帯電話機1は、二軸のヒンジ2を介して回転及び折り畳み可能に結合された二つの筐体3、4を有している。図示の折り畳み状態は、二つの筐体3、4を対向させた状態でもあり、前記従来技術の「逆クローズ状態」に相当する。
【0014】
図中下側の筐体3は、前記従来技術の「操作面が形成された薄型の操作筐体」に相当するものであり、以下、同様に操作筐体3ということにする。図中上側の筐体4は、前記従来技術の「表示面が形成された薄型の表示筐体」に相当するものであり、以下、同様に表示筐体4ということにする。
【0015】
ここで、操作筐体3の図中上面側には、送話用マイク(図2のマイク12参照)や各種のキーボタン(オンフックキー、オフフックキー、テンキー、カーソルキー及びファンクションキーなど:図2の操作部10参照)が設けられているが、この図においては、それら各種キーボタンのうちの一つのキー(以下、所定キーという。)5だけを示している。
【0016】
また、表示筐体4の図中上面側には、受話用スピーカ(図2のスピーカ13参照)やディスプレイ(図2の表示部11参照)が設けられていると共に、さらに、ヒンジ2から遠い位置(図示の例では表示筐体4の先端位置)に取り付けられた弾性体6と、上記操作筐体3の所定キー5に対向した位置に設けられた突起7とが設けられている。なお、この図では弾性体6をバネ記号で表しているが、これ(バネ)は図示の便宜である。力を加えると圧縮変形するものであればよく、たとえば、ゴムや弾性樹脂等であってもよい。
【0017】
図2は、携帯電話機1のヒンジ2の動きと、その動きに伴う様々な使用スタイルを示す図である。まず、(a)に示すように、携帯電話機1のヒンジ2は、操作筐体3及び表示筐体4の短辺側一端に沿った方向の第一の軸8(ヒンジ2を示す丸図形を表裏に貫通する方向の軸)の周りに回動可能(矢印ア参照)であり、この回動によって操作筐体3に対する表示筐体4の開閉を可能としている。加えて、ヒンジ2は、前記の第一の軸8と直交する方向の第二の軸9の周りにも回動可能(矢印イ参照)となっており、この回動によって表示筐体4を180度回転させることを可能とし、前記従来技術の「通常オープン状態」と「逆クローズ状態」を実現できるようにしている。
【0018】
ここで、通常オープン状態とは、(b)に示すように、操作面(操作部10)と表示面(表示部11)を同一方向に向けて両筐体(操作筐体3及び表示筐体4)を展開させた状態のことをいい、逆クローズ状態とは、(c)に示すように、表示面(表示部11)を外側に向け、操作筐体3の操作面(操作部10)と表示筐体4の裏面とを対向させて折り畳んだ状態のことをいう。なお、(d)は、携帯電話機1を使用しないときの折り畳み状態である。この未使用時の折り畳み状態においては、操作筐体3の操作面(操作部10)と表示筐体4の表示面(表示部11)とが対向し、操作筐体3の操作面(操作部10)が表示筐体4で覆われるようになっており、この場合、表示筐体4は単なる「蓋」の役割を果たす。また、この未使用時の折り畳み状態においては、表示筐体4の裏面に設けられている弾性体6と突起7が外部に露出する。
【0019】
次に、第1実施形態の作用について説明する。本件発明の課題は、冒頭で述べたように「対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行う」ことにある。この課題を達成するために、第1実施形態では、図1に示すような折り畳み状態(逆クローズ状態)にある二つの筐体(操作筐体3及び表示筐体4)に対して、図中に示すような対向する二つの矢印ウ、エの方向に力を加えるだけで、所要のスイッチ操作(この図では所定キー5の押圧操作である。)を速やかに行えるようにした。
【0020】
すなわち、図1に示す折り畳み状態にある二つの筐体(操作筐体3及び表示筐体4)に対して、矢印ウ、エの方向に力を加えていない場合は、弾性体6の厚みに相当する隙間Aが両筐体3、4の間に生じているため、表示筐体4の突起7と表示筐体4の所定キー5とが離隔し、所要のスイッチ操作は行われない。
【0021】
一方、同折り畳み状態にある二つの筐体(操作筐体3及び表示筐体4)に対して、矢印ウ、エの方向に力を加えた場合は、その力に応じて両筐体3、4の間の弾性体6が圧縮変形して隙間Aが減少し、表示筐体4の突起7で表示筐体4の所定キー5が押圧される結果、所要のスイッチ操作が行われる。
【0022】
このように、この第1実施形態では、矢印ウ、エの方向、つまり、図1に示す折り畳み状態のように対向状態にある二つの筐体(操作筐体3及び表示筐体4)に対して、対向方向への力、具体的には二つの筐体の両面を挟み込むような力を加えるだけで、所定キー5の間接的な押圧操作を行うことができる。
【0023】
上記の「両面を挟み込むような力」は、多くの場合、携帯電話機1を掴んでいる手先の動きで得られるから、具体的には、親指とその他の四指によって携帯電話機1を挟持しているときに、それらの指先に力を込めることによって簡単に得られるから、たとえば、図1に示す折り畳み状態が「カメラスタイル」のときのものであるとすれば、事前に所定キー5の機能をシャッタキーに割り当てておくことにより、同折り畳み状態にある二つの筐体(操作筐体3及び表示筐体4)に対して、矢印ウ、エの方向に力を加えるだけでシャッタ操作を行うことができるという作用が得られる。
【0024】
このため、前記の従来技術と比べて所定のスイッチ操作を速やかに行うことができ、たとえば、カメラスタイルで使用しているときに、シャッタチャンスを逃すことがないという特有の効果が得られる。
【0025】
これは、前記の従来技術にあっては、目視(または指先の感触)でシャッタボタン(従来技術のサイド多機能キー等)を探し出す必要があったが、第1実施形態のように構成すれば、筐体3、4を保持している手先に力を込めるだけでシャッタ操作を行うことができ、いちいちシャッタボタンを探し出す必要がないからである。
【0026】
なお、以上の説明では、所定のスイッチ操作を「シャッタ操作」としたが、これはあくまでも一例に過ぎない。要は、使用スタイルごとに多用される任意のスイッチ操作であればよく、たとえば、電話スタイルの場合の「オンフックキー操作」や「オフフックキー操作」、メールスタイルの場合の「メール送受信操作」、テレビスタイルの場合の「受信チャンネル変更操作」などであってもよい。
【0027】
図3は、各スタイルごとのスイッチ機能割当の概念的フローを示す図である。なお、このフローは、携帯電話機1の内部電子回路で実行されるものであるが、その電子回路の構成や仕組みについては、たとえば、前記の特許文献1をはじめとした様々な公知文献に記載されているとおり、一般周知のものであるので、ここでの説明を省略する。
【0028】
図示のフローは、所定キー5の押し下げイベントに応答して実行される、いわゆるイベント起動型のものである。このフローを開始すると、まず最初に携帯電話機1の使用スタイルを判定する(ステップS1)。この判定は、たとえば、携帯電話機1の現在の動作モードを調べることによって行うことができる。これは、一般的に多機能型の携帯電話機は、ファンクションキーやメニューキーなどの操作入力に応答して、電話端末としての動作モード、メール端末やブラウザ端末としての動作モード、カメラとしての動作モード、テレビ受信機としての動作モードなどを適宜に切り換えることができるようになっているからであり、この動作モードを調べることによって、現在、どのスタイルで使用されているかを判定できるからである。
【0029】
このようにして、使用スタイルを判定すると、次に、各々のスタイルごとのキー機能の割当処理を実行する。すなわち、「電話スタイル」の場合は通話中であるか否かを判定し(ステップS2)、通話中でなければ所定キー5をオンフックキーに割当て(ステップS3)、通話中であれば所定キー5をオフフックキーに割当てる(ステップS4)ことにより、筐体3、4を保持している手先に力を込めるだけでオンフック操作(通話中でない場合)やオフフック操作(通話中の場合)を行うことができ、速やかに通話の開始(オンフック操作)と終了(オフフック操作)を行うことができるようになる。
【0030】
また、「メールスタイル」の場合は送信待ちメールがあるか否かを判定し(ステップS5)、送信待ちメールがなければ所定キー5をメール受信キーに割当て(ステップS6)、送信待ちメールがあれば所定キー5をメール送受信キーに割当てる(ステップS7)ことにより、筐体3、4を保持している手先に力を込めるだけでメールの受信操作や送受信操作を行うことができ、速やかにメールの送信と受信を行うことができるようになる。
【0031】
また、「カメラスタイル」の場合は所定キー5をシャッタキーに割当て(ステップS8)、あるいは、「テレビスタイル」の場合は所定キー5をチャンネル変更キーに割当てる(ステップS9)ことにより、いずれの場合も、筐体3、4を保持している手先に力を込めるだけでシャッタ操作やチャンネル変更操作を行うことができ、速やかにカメラ撮影や番組の変更を行うことができるようになる。
【0032】
したがって、この第1実施形態によれば、「対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行うことができるスイッチ操作装置及び携帯電子機器を提供する」という本件発明の課題を達成することができる。
【0033】
なお、図3のフローにおいては、携帯電話機1の現在の“動作モード”を調べることによって使用スタイルを判定しているが、これに限定されない。たとえば、以下に示す特定の条件の場合は、二つの筐体(操作筐体3と表示筐体4)の相対的な位置関係から、どのスタイルで使用されているかを判定することも可能である。特定の条件とは、たとえば、図2(b)のように表示筐体4を開いた状態のときには「電話機」として使用し、且つ、図2(c)のように表示筐体4を裏返しにして折り畳んだ状態のときには「テレビ受信機」として使用することが“決まっている場合”である。このような場合には、表示筐体4が開かれていることをもって電話スタイルであると判定し、一方、表示筐体4が裏返しになっていることをもってテレビスタイルであると判定してもよい。
【0034】
また、二つの筐体の相対的な位置関係と前記動作モードとの組み合わせから使用スタイルの判定を行ってもよい。すなわち、表示筐体4が開かれ且つ電話モードの場合に電話スタイルと判定し、表示筐体4が開かれ且つメール端末モードの場合にメールスタイルと判定し、表示筐体4が裏返しにして折り畳まれ且つカメラモードの場合にカメラスタイルと判定し、表示筐体4が裏返しにして折り畳まれ且つテレビ受信モードの場合にテレビスタイルと判定してもよい。より確実に使用スタイルを判定できる。
【0035】
ここで、本件発明の課題(対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行うことができるスイッチ操作装置及び携帯電子機器を提供する)を達成する上で、欠くことのできない構成要件について検討する。
【0036】
まず、対象となる携帯電子機器(実施形態の説明では携帯電話機1)は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能なものである。二つの筐体を対向させた状態の一例は、ヒンジで連結した二つの筐体を折り畳んだ状態である。この折り畳み状態は、発明の思想上、具体的に限定されないが、たとえば、携帯電話機1を例にすると、カメラやテレビ受信機として使用する場合の折り畳み状態が相当する。
【0037】
次に、上記の折り畳み状態において、二つの筐体(実施形態の説明では操作筐体3と表示筐体4)の対向面の各々に、スイッチ要素(実施形態の説明では所定キー5)と、そのスイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段(実施形態の説明では突起7)とを設ける点にある。
【0038】
図4は、スイッチ要素とそのスイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段を示す図である。(a)は、前記の実施形態におけるスイッチ要素とスイッチ操作手段の一例を示しており、所定キー5は、ケース5aと、押しボタン5bと、押しボタン5bを上方に付勢するためのバネ5c、5cと、押しボタン5bの下面とケース5aの底面に設けられた一対の接点5d、5dとを有している。この所定キー5は、通常は、図示の状態(一対の接点5d、5dが離隔したオフ状態。)にあるが、バネ5c、5cの付勢力に抗して押しボタン5bを押し下げることにより、一対の接点5d、5dが接触してオン状態に遷移する。
【0039】
このように、スイッチ要素が機械的な接点を有するものである場合、そのスイッチ要素をオンさせるためのスイッチ操作手段は、その機械的接点をオンオフさせることが可能な物理的形状、すなわち、バネ5c、5cの付勢力に抗して押しボタン5bを押し下げることができる形状を有していればよく、具体的には図示のように硬めの素材からなる突起7であればよい。なお、機械的な接点を有するスイッチ要素はこの例に限らない。たとえば、ラバースイッチなども機械的な接点を有するスイッチ要素の一例である。
【0040】
しかし、スイッチ要素は「機械的な接点を有する」ものだけではない。たとえば、(b)に示すようなタッチ式のものもある。タッチ式スイッチ要素の典型例は、静電容量の変化を検出してオンオフする静電容量方式のものである。この方式のスイッチ要素(静電容量方式タッチスイッチ5e)の場合、上記のような硬めの素材からなる突起7は、そのスイッチ要素(静電容量方式タッチスイッチ5e)をオンさせるためのスイッチ操作手段として不適切である。この場合、静電容量の変化を促すことができるスイッチ操作手段とすべきである。たとえば、突起7の代わりに電極7aを配置し、その電極7aに所定電位(たとえば、接地電位等の任意電位)を与えるようにすれば、その電極7aをスイッチ要素(静電容量方式タッチスイッチ5e)に接近させるだけで、静電容量の変化を促し、同スイッチ要素をオンさせることができる。
【0041】
あるいは、電極7aと筐体(表示筐体4)表面の金属部分との間を電気的に接続してもよい。筐体表面の金属部分は手が触れる部分でもあるので、人体に帯電した静電気により、スイッチ要素(静電容量方式タッチスイッチ5e)の静電容量の変化を促し、同様にして、同スイッチ要素をオンさせることができる。
【0042】
このように、スイッチ要素と、そのスイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段の組み合わせは、そのスイッチ要素の原理に適合した最適なものとすべきである。ここでは、スイッチ要素の原理として「機械的な接点を有するもの」と、「静電容量方式のもの」の二つを示したが、これは代表例に過ぎない。他の原理のスイッチ要素の場合であっても、当然ながらその原理に適合したスイッチ操作手段とすればよい。たとえば、光学方式のスイッチ要素の場合には光路を遮ったり光軸を曲げたりできるスイッチ操作手段とすればよく、あるいは、磁気方式のスイッチ要素の場合には磁束を遮ったり磁束を曲げたりできるスイッチ操作手段とすればよい。
【0043】
また、図4(c)に示すようなスイッチ構造も考えられる。すなわち、操作筐体3に一対の接点(以下、第一接点5fと第二接点5g)を備えると共に、表示筐体4に、それらの一対の接点をショートさせるための対向接点7bを備えるようなスイッチ構造の場合である。このような場合、表示筐体4の対向接点7bは、操作筐体3の一対の接点(第一接点5fと第二接点5g)を電気的にショートさせてオンさせるためのものであるから、この対向接点7bは、要するに、操作筐体3のスイッチ要素、つまり、一対の接点(第一接点5fと第二接点5g)をオンさせるためのスイッチ操作手段であるということができる。
【0044】
また、「スイッチ操作手段」を明示的に設けることなく、たとえば、表示筐体4の形状によっては、表示筐体4それ自体を同手段として使用することも可能である。すなわち、表示筐体4の任意の部分で所定スイッチ5を押圧することができる場合は、前記の突起7の代わりに表示筐体4の任意の部分を利用することができるので、この場合は表示筐体4が「スイッチ操作手段」としての機能を兼ね備えることになる。
【0045】
次に、弾性体6の役割であるが、この弾性体6がない場合は、図1のような折り畳み状態にあるときに、所定キー5が突起7によって不本意に押されてしまうことがある。弾性体6を設けておけば、少なくとも、この弾性体6を圧縮変形させる程度の力を加えない限り、所定キー5が突起7によって不本意に押されることがない。このように、弾性体6の役割は所定キー5の不本意なオン遷移を回避することにある。したがって、弾性体6は所定の弾性力を有していればよく、その形態(バネやゴム等)は任意である。また、弾性体6の取り付け位置は、折り畳み状態にある二つの筐体(操作筐体3と表示筐体4)の間に所定の弾性力を働かせることができる場所であればよく、したがって、操作筐体3と表示筐体4の間に介在していればよい。つまり、図示の例では表示筐体4の側に位置させているが、これに限らず、操作筐体3の側に位置させても構わない。
【0046】
さらに、筐体の長手方向における弾性体6の取り付け位置も任意である。たとえば、図1のように表示筐体4の先端付近にすれば、折り畳みの支点(ヒンジ2の位置)から最も遠い位置となるので(支点と作用点の距離が離れるので)、弾性体6の素材に多少硬めのものを用いた場合であつても、所要の弾性力を得ることができるから好ましいが、これに限らず、弾性体6に柔らかめの素材を用いれば、たとえば、突起7の付近や突起7とヒンジ2の間、または、ヒンジ2の近くに位置させることも可能である。
【0047】
以上をまとめると、本実施形態にとって欠くことのできない構成は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器(実施形態の説明では携帯電話機1)であって、その二つの筐体(実施形態の説明では操作筐体3と表示筐体4)の対向面の各々にスイッチ要素(実施形態の説明では所定キー5)と、そのスイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段(実施形態の説明では突起7)とを設けること、及び、その二つの筐体の間に弾性体6を介在させること、にある。
【0048】
少なくともこのような必須の構成要件を備えることにより、本件発明の課題(対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行うことができるスイッチ操作装置及び携帯電子機器を提供する)を達成することができる。
【0049】
<第2実施形態>
第1実施形態では、一つのスイッチ要素(所定キー5)だけを操作しているが、本第2実施形態では、それを発展させて複数のスイッチ要素を操作できるようにする。
【0050】
図5は、第2実施形態の構成図である。この図において、携帯電話機14は、二軸のヒンジ15を介して回転及び折り畳み可能に結合された二つの筐体16、17を有している。図示の折り畳み状態は、二つの筐体16、17を対向させた状態でもあり、前記従来技術の「逆クローズ状態」に相当する。
【0051】
図中下側の筐体16は、前記従来技術の「操作面が形成された薄型の操作筐体」に相当するものであり、以下、同様に操作筐体16ということにする。図中上側の筐体17は、前記従来技術の「表示面が形成された薄型の表示筐体」に相当するものであり、以下、同様に表示筐体17ということにする。
【0052】
ここで、操作筐体16の図中上面側には、送話用マイク(図2のマイク12参照)や各種のキーボタン(オンフックキー、オフフックキー、テンキー、カーソルキー及びファンクションキーなど:図2の操作部10参照)が設けられているが、この図においては、それら各種キーボタンのうちの三つの所定キー18、19、20だけを示している。
【0053】
また、表示筐体17の図中上面側には、受話用スピーカ(図2のスピーカ13参照)やディスプレイ(図2の表示部11参照)が設けられていると共に、さらに、ヒンジ15から遠い位置(図示の例では表示筐体17の先端位置)に取り付けられた弾性体21と、上記操作筐体16の三つの所定キー18、19、20の各々に対向した位置に設けられた三つの突起22、23、24とが設けられている。なお、この図では弾性体21をバネ記号で表しているが、これ(バネ)は図示の便宜である。力を加えると圧縮変形するものであればよく、たとえば、ゴムや弾性樹脂等であってもよい。
【0054】
三つの所定キー18、19、20と三つの突起22、23、24は、それぞれ所定キー18と突起22、所定キー19と突起23、所定キー20と突起24をペアにして配置されており、具体的には、所定キー18と突起22のペア及び所定キー19と突起23のペアは二つの筐体(操作筐体16と表示筐体17)の長手方向のほほ中間付近に配置され、残りの所定キー20と突起24のペアは二つの筐体(操作筐体16と表示筐体17)のヒンジ15から遠い先端付近に配置されている。
【0055】
ヒンジ15は、操作筐体16及び表示筐体17の短辺側一端に沿った方向の第一の軸25の周りに回動可能(矢印ア参照)であり、この回動によって操作筐体16に対する表示筐体17の開閉を可能としている。加えて、ヒンジ15は、前記の第一の軸25と直交する方向の第二の軸26の周りにも回動可能(矢印イ参照)となっており、この回動によって表示筐体17を180度回転させることを可能とし、前記従来技術の「通常オープン状態」と「逆クローズ状態」を実現できるようにしている。
【0056】
次に、第2実施形態の作用について説明する。この第2実施形態では、本件発明の課題(対向状態にある二つの筐体に対して、対向方向への力を加えるだけで所要のスイッチ操作を速やかに行う)を達成するために、折り畳み状態(逆クローズ状態)にある二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)に対して力を加えるだけで、所要のスイッチ操作を速やかに行えるようにした点で前記の第1実施形態と一致するが、その力を加える場所を変えることにより、三つの所定キー18、19、20を選択的に操作できるようにした点で相違する。
【0057】
図6は、第2実施形態のスイッチ操作の概念図である。まず、(a)に示すように二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の先端付近に力を加えた場合と、(b)に示すように二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の中間付近に力を加えた場合で説明する。
【0058】
先端付近に力を加えた場合は同先端付近の弾性体21が大きく圧縮するため、この先端付近で二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の間の距離が接近し(矢印オ参照)、これにより、同先端付近に位置する所定キー20が突起24で押されることになるが、このとき、ヒンジ15に近い二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の中間付近は、先端付近よりも小さな動き(矢印カ参照)となって、この中間付近に位置する所定キー18、19は突起22、23で押されない。
【0059】
一方、中間付近に力を加えた場合は弾性体21の圧縮変形が小さいため(矢印キ参照)、先端付近に位置する所定キー20は突起24で押されないが、以下の理由から、中間付近で二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の間の距離が接近するため(矢印ク参照)、同中間付近に位置する所定キー18、19が突起22、23で押される。これは、ヒンジ15に若干の柔軟性(設計バラツキや組み立ての誤差による)があるからであり、中間付近への力の印加により、ヒンジ15に撓みが生じるからである。なお、この「ヒンジ15の撓み」を利用するためには、弾性体21の硬さを適切に設定しなければならない。弾性体21が柔らかすぎる場合、筐体の中間付近に力を加えた際に弾性体21が先に圧縮変形してしまい、ヒンジ15の撓みを引き出せなくなるからである。したがって、弾性体21の適切な硬さは、筐体の中間付近に力を加えた際に、ヒンジ15の撓みを引き出せる程度のものであればよい。
【0060】
次に、(c)に示すように二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の左右一方端付近に力を加えた場合と、(d)に示すように二つの筐体(操作筐体16及び表示筐体17)の左右他方端付近に力を加えた場合で説明する。
【0061】
(c)に示すように、左右一方端付近に力を加えた場合(矢印ケ参照)は、同端付近に位置する所定キー18が突起22で押され、第二の軸26に沿った位置にある所定キー20と、左右他方端付近に位置する所定キー19は、それぞれ突起23、24で押されない。これは、左右一方端付近に力を加えた場合、表示筐体17がヒンジ15の第二の軸26の反時計回り方向に回動(矢印コ参照)するからである。
【0062】
同様にして、(d)に示すように、左右他方端付近に力を加えた場合(矢印サ参照)は、同端付近に位置する所定キー19が突起23で押され、第二の軸26に沿った位置にある所定キー20と、左右他方端付近に位置する所定キー18は、それぞれ突起22、24で押されない。これは、左右他方端付近に力を加えた場合、表示筐体17がヒンジ15の第二の軸26の時計回り方向に回動(矢印シ参照)するからである。
【0063】
このように、本第2実施形態によれば、二つの筐体(操作筐体16と表示筐体17)に加える力の位置を変えることにより、三つの所定キー18、19、20を選択的に操作することができる。詳しくは、(a)に示すように、二つの筐体(操作筐体16と表示筐体17)の先端付近に力を加えることにより、同先端付近に位置する所定キー20だけを操作することができ、また、(b)及び(c)に示すように、二つの筐体(操作筐体16と表示筐体17)の中間付近で且つ左右一方端付近に力を加えることにより、中間付近で且つ左右一方端付近に位置する所定キー18だけを操作することができ、また、(b)及び(d)に示すように、二つの筐体(操作筐体16と表示筐体17)の中間付近で且つ左右他方端付近に力を加えることにより、中間付近で且つ左右他方端付近に位置する所定キー19だけを操作することができる。
【0064】
<第3実施形態>
第2実施形態では、複数のスイッチ要素(三つの所定キー18、19、20)を選択的に操作できるようにしたが、それら三つの所定キー18、19、20の並び方は筐体の先端付近に一つ、中間付近に二つであった。つまり、2列に配列されていたが、本第3実施形態では1列にしたものを開示する。
【0065】
図7は、第3実施形態の構成図である。この図において、携帯電話機31は、ヒンジ(図1のヒンジ2や図5のヒンジ15参照)によって折り畳み可能な二つの筐体(操作筐体32と表示筐体33)を備える。操作筐体32には横一列に配列された三つの所定キー34、35、36が設けられており、表示筐体33には、それらの三つの所定キー34、35、36に各々対向する三つの突起37、38、39が設けられている。なお、表示筐体33の先端付近には、前記の第1実施形態や第2実施形態と同様に弾性体40が設けられている。
【0066】
二つの筐体(操作筐体32と表示筐体33)は、ヒンジによって折り畳み可能になっていると共に、表示筐体33は、ヒンジの第二の軸41により、180度回転可能になっている。
【0067】
さて、本第3実施形態と前記の第2実施形態との相違の第一は、三つの所定キー34、35、36及び三つの突起37、38、39が横一列に配列されていることにある。相違の第二は、それら三つの突起37、38、39の高さに差が付けられていることにある。具体的には、中央の突起38の高さよりも、その両側の突起37、39が若干低くなっていることにある。すなわち、中央の突起38の高さをa、その両側の突起37、39の高さをbとしたとき、a>bの関係に設定したことにある。
【0068】
図8は、第3実施形態の作用説明図である。まず、(a)に示すように、二つの筐体(操作筐体32と表示筐体33)の中央部分に力を加えた場合(矢印ス参照)は、弾性体40が圧縮変形し、中央の所定キー35が突起38に押され、その両側の所定キー34、36は突起37、39で押されない。これは、中央の突起38の高さaがその両側の突起37、39の高さbよりも大きく設定されているからである。
【0069】
また、(b)に示すように、二つの筐体(操作筐体32と表示筐体33)の左右一方端に力を加えた場合(矢印セ参照)は、弾性体40が圧縮変形せず(または圧縮変形しても僅か。)、その代わりに、表示筐体33がヒンジの第二の軸41の反時計回り方向に回動(矢印ソ参照)する。このため、左右一方端の所定キー34が突起37に押され、それ以外の所定キー35、36は突起38、39で押されない。これも、中央の突起38の高さaがその両側の突起37、39の高さbよりも大きく設定されているからであり、表示筐体33の反時計回り方向の回動により、左右一方端の所定キー34だけが突起37に押されるからである。
【0070】
同様に、(c)に示すように、二つの筐体(操作筐体32と表示筐体33)の左右他方端に力を加えた場合(矢印タ参照)は、弾性体40が圧縮変形せず(または圧縮変形しても僅か。)、その代わりに、表示筐体33がヒンジの第二の軸41の時計回り方向に回動(矢印チ参照)する。このため、左右他方端の所定キー36が突起39に押され、それ以外の所定キー34、35は突起37、38で押されない。これも、中央の突起38の高さaがその両側の突起37、39の高さbよりも大きく設定されているからであり、表示筐体33の時計回り方向の回動により、左右他方端の所定キー36だけが突起39に押されるからである。
【0071】
このように、本第3実施形態によれば、三つの所定キー34、35、36を横一列に配置した場合であっても、それらのスイッチの選択的操作を行うことができる。
【0072】
<第4実施形態>
第2及び第3実施形態では、三つのスイッチを選択的に操作できるようにしたが、本第4実施形態ではさらに一つ加えて、四つのスイッチを選択的に操作できるようにしたものを開示する。
【0073】
図9は、第4実施形態の構成図である。この図において、携帯電話機42は、ヒンジ(図1のヒンジ2や図5のヒンジ15参照)によって折り畳み可能な二つの筐体(操作筐体43と表示筐体44)を備える。操作筐体43には四角形の各コーナに配列された四つの所定キー45、46、47、48が設けられており、表示筐体44には、それらの四つの所定キー45、46、47、48の各々に対向する四つの突起49、50、51、52が設けられている。なお、表示筐体44の先端付近には、前記の第1〜第3実施形態と同様に弾性体53が設けられていると共に、さらに、ヒンジの第一の軸54に近い位置にも弾性体55が設けられている。
【0074】
二つの筐体(操作筐体43と表示筐体44)は、ヒンジの第一の軸54によって折り畳み可能(矢印ア参照)になっていると共に、表示筐体44は、ヒンジの第二の軸56により、180度回転可能(矢印イ参照)になっている。
【0075】
図10は、第4実施形態の作用説明図である。まず、(a)に示すように、二つの筐体(操作筐体43及び表示筐体44)の先端付近に力を加えた場合(矢印ツ参照)を説明する。この場合、先端側の弾性体53が大きく圧縮するので、同先端付近の所定キー47、48が突起51、52に押される。そして、この場合、前記の第3実施形態の図8(b)、(c)のように、筐体の左右一方端に力を加えれば、同端側の所定キー47が突起51に押され、筐体の左右他方端に力を加えれば、同端側の所定キー48が突起52に押されるので、四つの所定キーのうちの一つの所定キーだけを選択的に操作することができる。
【0076】
次に、図10(b)に示すように、二つの筐体(操作筐体43及び表示筐体44)の中央付近に力を加えた場合(矢印テ参照)を説明する。この場合、ヒンジの撓みにより、そのヒンジの第一の軸54に近い方の弾性体55が大きく圧縮するので、同弾性体55付近の所定キー45、46が突起49、50に押される。そして、この場合も、前記の第3実施形態の図8(b)、(c)のように、筐体の左右一方端に力を加えれば、同端側の所定キー45が突起49に押され、筐体の左右他方端に力を加えれば、同端側の所定キー46が突起50に押されるので、同様に、一つの所定キーだけを選択的に操作することができる。
【0077】
このように、本第4実施形態によれば、四つの所定キー45、46、47、48を設けた場合であっても、それらのスイッチの選択的操作を行うことができる。
【0078】
<第5実施形態>
第1〜第4実施形態では、ヒンジによって「折り畳み状態」にできる携帯電子機器を例にしたが、これに限定されない。上記の「折り畳み状態」は、要するに、二つの筐体が対向している状態を意味するだけであって、同状態に至る過程の“折り畳み操作”の有無は必須ではない。たとえば、いわゆる「スライド方式」の携帯電話機においては、“折り畳み操作”を行うことなく、閉鎖状態、つまり、上蓋としても機能する表示筐体をスライドさせていない状態にするだけで、二つの筐体が対向するから、その二つの筐体を挟持する手先に力を込めるだけで、所定キーを操作できるようにすることは好ましい。
【0079】
図11は、第5実施形態の構成図である。この図において、携帯電話機61は、スライド機構62を介し、図中左右方向に相対的にスライド可能(矢印ト、ナ参照)に結合された二つの筐体(操作筐体63と表示筐体64)を有している。この図の(a)は操作筐体63を開いた状態(表示筐体64をスライドした状態;以下、単にスライド状態という。)を示し、(b)は表示筐体64を閉じた状態(非スライド状態又は格納状態という。)を示す。
【0080】
操作筐体63の図中上面側には、送話用マイク(図2のマイク12参照)や各種のキーボタン(オンフックキー、オフフックキー、テンキー、カーソルキー及びファンクションキーなど:図2の操作部10参照)が設けられているが、この図においては、それら各種キーボタンのうちの所定キー65だけを示している。
【0081】
表示筐体64の図中上面側には、受話用スピーカ(図2のスピーカ13参照)やディスプレイ(図2の表示部11参照)が設けられていると共に、さらに、表示筐体64の先端付近(スライド機構62の基部62bから遠い位置)に取り付けられた弾性体66と、スライド機構62のスライドレール62aの先端付近(スライド機構62の基部62bから遠い位置)に取り付けられた突起67とが設けられている。なお、この図では弾性体66をバネ記号で表しているが、これ(バネ)は図示の便宜である。力を加えると圧縮変形するものであればよく、たとえば、ゴムや弾性樹脂等であってもよい。
【0082】
また、突起67の取り付け位置は、二つの筐体63、64を非スライド状態にしたときに、操作筐体63の所定キー65の真上になるように設定されている。
【0083】
このような構成を有する本第5実施形態では、二つの筐体63、64が非スライド状態にあるとき、表示筐体64の先端付近に力を加えると、この力がスライドレール62aの先端に伝えられ(矢印ニ参照)、スライドレール62aが基部62bを支点にして若干撓む結果、所定キー65が突起67によって押されることになる。したがって、本第5実施形態のようにすれば、スライド方式の携帯電子機器にも適用することができる。
【0084】
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態の構成図である。この実施形態では、スライド方式の携帯電話機71において、複数の所定キーの選択的操作を可能とする。すなわち、この図に示すように、操作筐体63の左右二つの所定キー65a、65bの各々に対応した二つの突起67a、67bをスライドレール62aの先端付近(スライド機構62の基部62bから遠い位置)に取り付ける。
【0085】
このようすれば、(b)に示すように二つの筐体(操作筐体63及び表示筐体64)の左右一方端付近に力を加える(矢印ノ参照)と、同端付近に位置する所定キー65aが突起67aで押され、左右他方端付近に位置する所定キー65bは突起67bで押されない。これは、左右一方端付近に力を加えた場合、表示筐体64がスライド機構62の機械的な撓みによって反時計回り方向に回動(矢印ヌ参照)するからである。なお、軸68はこのときの回動軸を便宜的に示している。
【0086】
また、(c)に示すように二つの筐体(操作筐体63及び表示筐体64)の左右他方端付近に力を加える(矢印ハ参照)と、同端付近に位置する所定キー65bが突起67bで押され、左右一方端付近に位置する所定キー65aは突起67aで押されない。これも、左右他方端付近に力を加えた場合、表示筐体64がスライド機構62の機械的な撓みによって時計回り方向に回動(矢印ネ参照)するからである。
【0087】
このように、第6実施形態によれば、スライド方式の携帯電話機71において、複数の所定キーの選択的操作を可能とすることができる。
【0088】
<第7実施形態>
図13は、第7実施形態の構成図である。この実施形態でも、スライド方式の携帯電話機71において、複数の所定キーの選択的操作を可能とする。すなわち、この図に示すように、操作筐体63に設けられた四つの所定キー65a〜65dの各々に対応した四つの突起67a〜67dをスライドレール62aに取り付ける。
【0089】
このようすれば、(b)に示すように二つの筐体(操作筐体63及び表示筐体64)の先端付近に力を加える(矢印ヒ参照)と、同先端付近に位置する所定キー65a、65bが突起67a、67bで押され、一方、(c)に示すように二つの筐体(操作筐体63及び表示筐体64)の中央付近に力を加える(矢印フ参照)と、同中央付近に位置する所定キー65c、65dが突起67c、67dで押される。そして、この場合、前記の第3実施形態の図8(b)、(c)のように、筐体の左右一方端に力を加えれば、同端側の所定キー65aまたは65cが突起67aまたは67cに押され、筐体の左右他方端に力を加えれば、同端側の所定キー65bまたは65dが突起67bまたは67dに押されるので、四つの所定キーうちの一つの所定キーだけを選択的に操作することができる。
【0090】
このように、第7実施形態においても、スライド方式の携帯電話機71において、複数の所定キーの選択的操作を可能とすることができる。
【0091】
なお、以上の各実施形態では、携帯電子機器として携帯電話機を例にしたが、これに限定されないことはもちろんである。要は、二つの筐体を対向させた状態で使用可能なものであればよく、たとえば、PDAや小型パソコンのような携帯型情報端末、音楽プレイヤー、DVD再生装置、ゲームマシン、計測機器など如何なる形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 携帯電話機(携帯電子機器)
3 操作筐体(筐体)
4 表示筐体(筐体)
5 所定キー(スイッチ要素)
6 弾性体
7 突起(スイッチ操作手段)
14 携帯電話機(携帯電子機器)
16 操作筐体(筐体)
17 表示筐体(筐体)
18 所定キー(スイッチ要素)
19 所定キー(スイッチ要素)
20 所定キー(スイッチ要素)
21 弾性体
22 突起(スイッチ操作手段)
23 突起(スイッチ操作手段)
24 突起(スイッチ操作手段)
31 携帯電話機(携帯電子機器)
32 操作筐体(筐体)
33 表示筐体(筐体)
34 所定キー(スイッチ要素)
35 所定キー(スイッチ要素)
36 所定キー(スイッチ要素)
37 突起(スイッチ操作手段)
38 突起(スイッチ操作手段)
39 突起(スイッチ操作手段)
40 弾性体
42 携帯電話機(携帯電子機器)
43 操作筐体(筐体)
44 表示筐体(筐体)
45 所定キー(スイッチ要素)
46 所定キー(スイッチ要素)
47 所定キー(スイッチ要素)
48 所定キー(スイッチ要素)
49 突起(スイッチ操作手段)
50 突起(スイッチ操作手段)
51 突起(スイッチ操作手段)
52 突起(スイッチ操作手段)
53 弾性体
55 弾性体
61 携帯電話機(携帯電子機器)
63 操作筐体(筐体)
64 表示筐体(筐体)
65 所定キー(スイッチ要素)
65a 所定キー(スイッチ要素)
65b 所定キー(スイッチ要素)
65c 所定キー(スイッチ要素)
65d 所定キー(スイッチ要素)
66 弾性体
67 突起(スイッチ操作手段)
67a 突起(スイッチ操作手段)
67b 突起(スイッチ操作手段)
67c 突起(スイッチ操作手段)
67d 突起(スイッチ操作手段)
71 携帯電話機(携帯電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器に適用するスイッチ操作装置において、
前記二つの筐体の対向面の一方にスイッチ要素を設けると共に、
同対向面の他方に前記スイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段を設け、
さらに、前記二つの筐体の間に弾性体を介在させた
ことを特徴とするスイッチ操作装置。
【請求項2】
前記スイッチ操作手段は、前記スイッチ要素が機械的接点を有するものである場合に、その機械的接点をオンオフさせることが可能な物理的形状を有していることを特徴とする請求項1記載のスイッチ操作装置。
【請求項3】
前記スイッチ操作手段は、前記スイッチ要素が静電容量方式のタッチスイッチである場合に、その静電容量を変化させることが可能であることを特徴とする請求項1記載のスイッチ操作装置。
【請求項4】
前記スイッチ操作手段は、前記スイッチ要素が光学式または磁気式のタッチスイッチである場合に、その光路を遮ったり光軸を曲げたり、あるいは、磁束を遮ったり磁束を曲げたりすることが可能なものであることを特徴とする請求項1記載のスイッチ操作装置。
【請求項5】
前記スイッチ要素及び前記スイッチ操作手段が複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至4記載のスイッチ操作装置。
【請求項6】
二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器に適用するスイッチ操作装置において、
前記二つの筐体の対向面の少なくとも一方に設けたスイッチ要素と、
前記二つの筐体の間に介在させた弾性体と、を備え、
前記二つの筐体を挟み込むことで前記弾性体を圧縮変形させて、前記スイッチ要素をオンオフさせるようにした、ことを特徴とするスイッチ操作装置。
【請求項7】
二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器において、
前記二つの筐体の対向面の一方にスイッチ要素を設けると共に、
同対向面の他方に前記スイッチ要素をオンオフさせるためのスイッチ操作手段を設け、
さらに、前記二つの筐体の間に弾性体を介在させた
ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項8】
二つの筐体を対向させた状態で使用可能な携帯電子機器において、
前記二つの筐体の対向面の少なくとも一方に設けたスイッチ要素と、
前記二つの筐体の間に介在させた弾性体と、を備え、
前記二つの筐体を挟み込むことで前記弾性体を圧縮変形させて、前記スイッチ要素をオンオフさせるようにした、ことを特徴とする携帯電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−161614(P2010−161614A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2273(P2009−2273)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】