説明

スクリーン印刷方法

【課題】マスクプレートの配線基板側面のクリーニング頻度を可及的に少なくし得るスクリーン印刷方法を提供する。
【解決手段】スクリーン印刷機のテーブル上に載置された配線基板60の配線パターン60a,60a・・が形成された基板面に、パターン26aとしての所定形状の開口部が形成されたマスクプレート26を被着して印刷剤42をスクリーン印刷する際に、スクリーン印刷を施す印刷領域の境界近傍に、配線パターン60aと同一高さで且つ上面が平坦面である帯状凸部60bを形成した配線基板60を用い、帯状凸部60b上に、マスクプレート26のパターン26aとしての開口部の端縁が位置するように、マスクプレート26を配線基板60の基板面に被着した後、マスクプレート26をスキージ28aによって押圧しつつ、印刷剤42をマスクプレート26上に塗布することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリーン印刷方法に関し、更に詳細にはスクリーン印刷機のテーブル上に載置された配線基板の配線パターンが形成された基板面に、パターンとしての所定形状の開口部が形成されたマスクプレートを被着して印刷剤をスクリーン印刷するスクリーン印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の配線パターンが形成された基板面の所定領域に、ソルダ−レジストやクリームはんだ等の印刷剤を塗布することがある。
この様に、配線基板の所定領域に印刷剤を塗布する際には、スクリーン印刷機が使用されている。
かかるスクリーン印刷機としては、例えば下記特許文献1に提案されているスクリーン印刷機を用いることができる。
このスクリーン印刷機を図3に示す。図3に示すスクリーン印刷機では、Y軸テーブル12、X軸テーブル14、θ軸テーブル16及びZ軸テーブル18が積層されて成る位置決め部10上に保持部20が設けられている。かかる保持部20上には、配線パターンが形成された基板面を上面となるように配線基板22が載置され、クランパ20aによって保持されている。
【0003】
この配線基板22上には、昇降可能に設けられた枠体24によって保持されたマスクプレート26が位置している。マスクプレート26には、配線基板22の基板面の所定領域に印刷剤が塗布されるように、パターンとしての所定形状の開口部が形成されている。
かかるマスクプレート26の上方には、配線基板22の基板面に下面が被着されたマスクプレート26の上面に印刷剤を塗布するスキージ28a,28bが昇降可能に設けられている。
更に、マスクプレート26の上方には、配線基板22の基板面の向きや配線パターンを撮像するカメラ30も設けられている。
【0004】
また、図3に示すスクリーン印刷機には、位置決め部10の側方に、マスクプレート26の下面をクリーニングするクリーニングテープ40を具備するクリーニングユニット34が設けられている。このクリーニングユニット34は、マスクプレート26に平行に設けられたレール32上を移動可能である。マスクプレート26の配線基板面側のクリーニングは、クリーニングテープ40をマスクプレート26の配線基板面側に当接させつつ、供給リール36から引取リール38の方向に走行させて行う。
【特許文献1】特開2004−122613号公報(図2)
【0005】
ところで、図3に示すスクリーン印刷機を用いてスクリーン印刷を施す配線基板22の基板面は、図4(a)に示す様に、配線パターン22a,22a・・によって凹凸面に形成されている。
かかる凹凸面に形成された配線基板22に、図3に示すスクリーン印刷機を用いてスクリーン印刷を施す際には、図4(b)に示す様に、配線基板22の基板面にマスクプレート26を被着し、スキージ28aでマスクプレート26を押圧しつつ、印刷剤42を塗布する。
この様に、マスクプレート26は、スキージ28aの押圧力によって押圧されるものの、配線パターン22aの形状に倣って変形されない。このため、図4(b)に示す如く、マスクプレート26に形成したパターン26aとしての開口部の端縁近傍では、スクリーン印刷を施す印刷領域の境界近傍に位置する配線パターン22aの側方に空間部50が形成される。
【0006】
かかる空間部50には、スキージ28aによって塗布される印刷剤が、パターン26aとしての開口部の端縁(以下、単にパターン26aの端縁と称することがある)から入り込み易い。このため、マスクプレート26を配線基板22の基板面から上昇させたとき、図4(c)に示す如く、配線パターン22aの側方に印刷剤の滲み出し部44aが形成されると共に、マスクプレート26の裏面にも、パターン26aの端縁から延びる滲み出し部46aが転写される。
かかる滲み出し部44a,46aが生じた状態でスクリーン印刷が繰り返されると、図4(d)に示す如く、マスクプレート26の滲み出し部46aが拡大し、配線基板22の印刷領域外に、マスクプレート26の滲み出し部46aの転写に因る滲み出し部44aが発生する。この様に、配線基板22の印刷領域外に滲み出し部44aが生じた配線基板22は不合格品となる。
このため、図3に示すスクリーン印刷機では、スクリーン印刷が終了した配線基板22の基板面をカメラ30によって撮像し、滲み出し部44aが基準値に到達したとき、クリーニングユニット34によりマスクプレート26の配線基板面側にクリーニングを施す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示すクリーニングユニット34によってマスクプレート26の配線基板面側をクリーニングすることによって、滲み出し部44aは基準値以下とすることができる。
しかしながら、クリーニングユニット34によるマスクプレート26のクリーニングの際には、配線基板22にスクリーン印刷を施すことができない。このため、かかるクリーニングを頻繁に行う場合には、配線基板22の生産性を著しく低下されることになる。
そこで、本発明の課題は、マスクプレートの配線基板面側のクリーニング頻度を可及的に少なくし得るスクリーン印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく、スクリーン印刷を繰り返して実施し、基板面の滲み出し部が基準値に到達した配線基板についてチェックすると、大きな滲み出し部が形成された部分と、滲み出し部が実質的に形成されない部分とが存在することが判明した。
更に、配線基板に大きな滲み出し部が形成された部分について、マスクプレートに所定形状の開口部として形成したパターンと配線基板の配線パターンとの位置関係を検討したところ、印刷領域の境界近傍の配線パターンとマスクプレートのパターンとしての開口部の端縁との間に微小隙間が形成されていることを知った。
一方、配線基板に滲み出し部が実質的に形成されない部分では、印刷領域の境界近傍の配線パターン上にマスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置していることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、スクリーン印刷機のテーブル上に載置された配線基板の配線パターンが形成された基板面に、パターンとしての所定形状の開口部が形成されたマスクプレートを被着して印刷剤をスクリーン印刷する際に、該配線基板として、スクリーン印刷を施す印刷領域の境界近傍に、前記配線パターンと同一高さで且つ上面が平坦面である帯状凸部を形成した配線基板を用い、前記帯状凸部上に、前記マスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置するように、前記マスクプレートを配線基板の基板面に被着した後、前記マスクプレートを所定圧力で押圧しつつ、前記印刷剤をマスクプレート上に塗布することを特徴とするスクリーン印刷方法にある。
かかる本発明のおいて、帯状凸部を、帯状凸部を、配線パターンと同一高さであって、前記配線パターンとして利用されないダミーパターンとすることによって、帯状凸部を形成する工程等を増やすことを必要としないため好ましい。
【0010】
また、本発明は、スクリーン印刷機のテーブル上に載置された配線基板の配線パターンが形成された基板面に、パターンとしての所定形状の開口部が形成されたマスクプレートを被着して印刷剤をスクリーン印刷する際に、該配線基板として、スクリーン印刷を施す印刷領域外に位置し、前記印刷領域の境界近傍に、前記印刷剤の滲み出しを防止するダム用凸部を形成した配線基板を用い、前記ダム用凸部よりも印刷領域側に、前記マスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置するように、前記マスクプレートを配線基板の基板面に被着した後、前記マスクプレートを所定圧力で押圧しつつ、前記印刷剤をマスクプレート上に塗布することを特徴とするスクリーン印刷方法でもある。
かかる本発明においても、ダム用凸部を、前記配線パターンとして利用されないダミーパターンとすることによって、帯状凸部を形成する工程等を増やすことを要しないため好ましい。
【発明の効果】
【0011】
配線基板の印刷領域外への印刷物の滲み出しは、マスクプレートの配線基板面側への印刷剤の滲み出しによって発生する。
つまり、配線基板の基板面にマスクプレートが被着されたとき、配線基板の印刷領域の境界近傍に位置する配線パターンとマスクプレートのパターンとしての開口部の端縁との間に微小隙間が形成されることがある。かかる微小間隙からは、スクリーン印刷の際のスキージ等による印圧によって印刷剤が配線パターンの側方にマスクプレートとの間に形成された空間部内に滲み出し、マスクプレートの配線基板面側に転写される。
このマスクプレートの配線基板面側に転写され印刷部の滲み出しは、次の配線基板の基板面にマスクプレートが被着された際に、配線基板の基板面に転写され、配線基板の基板面に印刷領域を越える滲み出しが形成される。
かかる印刷剤の滲み出し及び転写が繰り返されると、その領域が次第に拡大され、印刷剤が付着することが予定されていない領域に至る。
【0012】
この点、本発明では、スクリーン印刷を施す印刷領域の境界近傍に、配線パターンと同一高さで且つ上面が平坦面である帯状凸部を形成した配線基板を用い、この帯状凸部上にマスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置するように、マスクプレートを配線基板の基板面に被着することにより、印刷剤が滲み出す微小間隙の形成を防止している。
また、かかる帯状凸部を形成できない場合には、スクリーン印刷を施す印刷領域外に位置し、この印刷領域の境界近傍に、印刷剤の滲み出しを防止するダム用凸部を形成した配線基板を用い、ダム用凸部よりも印刷領域側に、マスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置するように、マスクプレートを配線基板の基板面に被着することによって、印刷剤の滲み出す領域の拡大を防止できる。
このため、スクリーン印刷中にマスクプレートの配線基板面側に、パターンとしての開口部の端縁からの印刷剤の滲み出しを抑制でき、スクリーン印刷の途中にマスクプレートの配線基板面側にクリーニングを施す頻度を可及的に少なくできる結果、配線基板の生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るスクリーン印刷方法の一例を図1に示す。図1に示す配線基板60は、図3に示すスクリーン印刷機の保持部20上に載置されており、その基板面には、配線パターン60a,60a・・が形成されている。
更に、かかる配線基板60の基板面には、その印刷領域の境界近傍に、帯状凸部60bが形成されている。この帯状凸部60bは、配線パターン60aと同一高さで且つ上面が平坦面であり、配線パターン60aと同時に同一材料で形成できる。
かかる帯状凸部60bの上面には、図1(a)に示す様に、配線基板60の基板面にマスクプレート26を被着したとき、そのパターン26aとしての開口部の端縁(以下、単にパターン26aの端縁と称することがある)が位置する。
【0014】
図1(a)に示す状態の下で、スキージ28aによってマスクプレート26を押圧しつつはんだペースト等の印刷剤42を塗布すると、マスクプレート26のパターン26aの端縁は、スキージ28aによる印圧によって配線基板60の帯状凸部60bの平坦面に押し付けられて密着する。このため、帯状凸部60bの側方にマスクプレート26との間に空間部62が形成されていても、スキージ28aによる印圧によって空間部62内に印刷剤が滲み出すことを防止できる。
このため、スクリーン印刷が終了し、マスクプレート26を配線基板60の基板面から剥離すると、図1(b)に示す様に、マスクプレート26を配線基板面には、配線基板60の印刷領域に対応する部分のみに印刷剤が付着しているが、その印刷領域外の部分に印刷剤が付着することを防止できる。
この様に、配線基板面の印刷領域外の部分を覆っているマスクプレート26に印刷剤が付着することを防止できるため、マスクプレート26の配線基板面のクリーニング回数を著しく減少できる。例えば、図4(a)に示す配線基板22では、100枚の配線基板22にスクリーン印刷を行ったとき、マスクプレート26の配線基板面のクリーニングを必要とした。これに対し、図1(a)に示す配線基板60では、1000枚の配線基板60にスクリーン印刷を行ったときでも、マスクプレート26の配線基板面のクリーニングを行うことは必要なかった。
【0015】
図1(a)に示す配線基板60の帯状凸部60bは、配線パターン60aと同様に形成できる。例えば、樹脂板の一面側に形成された銅箔にパターンニングを施すことによって、配線パターン60a,60a・・と帯状凸部60bとを同時に形成できる。
かかる帯状凸部60bとしては、最終製品では信号用の配線パターンとして利用されることのないダミーパターン、例えば電解めっきの際に用いる給電用の配線パターンとすることによって、帯状凸部60bのみを形成する工程等を増やすことを必要としないため好ましい。
尚、帯状凸部60bは、プリント基板やフレキシブル回路基板等の最終製品としての配線基板に含まれていてもよく、配線基板中に含まれないように切断等によって除去してもよい。
【0016】
また、図1に示す帯状凸部60bが形成できない場合、図2に示す様に、配線基板70の基板面には、その印刷領域外に位置し、印刷領域の境界近傍に、ダム用凸部70bを形成する。このダム用凸部70bは、配線パターン70aと同一高さであり、配線パターン70aと同一材料で形成できる。
かかる配線基板70の基板面にマスクプレート26を被着した際に、図2(a)に示す様に、ダム用凸部70bよりも印刷領域側に、マスクプレート26の開口部としてのパターン26aの端縁が位置する。このパターン26aの端縁は、配線パターン70aの上面の端縁近傍に位置しているものの、配線パターン70aの上面に位置していない。
このため、パターン26aの端縁と配線パターン70aの上面の端縁との間に微小間隙が形成され、図2(a)に示す状態の下で、スキージ28aによってマスクプレート26を押圧しつつ印刷剤42を塗布すると、この微小間隙から配線パターン70aの側方の空間部内に印刷剤が滲み出す。
しかし、滲み出した印刷剤の滲み出し部44aは、ダム用凸部70bによって拡大を防止できる。
このため、スクリーン印刷が終了し、マスクプレート26を配線基板70の基板面から剥離すると、図2(b)に示す様に、マスクプレート26を配線基板面には、配線基板70の印刷領域に対応する部分よりも若干広い領域まで印刷剤が付着しているが、その印刷剤の付着領域は極めて少なく実質的に配線基板70の印刷領域に対応する。
【0017】
したがって、配線基板70の印刷領域外の部分に印刷剤が付着することを防止でき、マスクプレート26の配線基板面側のクリーニング回数を著しく減少できる。
図2(a)に示す配線基板70のダム用凸部70bは、配線パターン70aと同様に形成できる。例えば、樹脂板の一面側に形成された銅箔にパターンニングを施すことによって、配線パターン70a,70a・・とダム用凸部70bとを同時に形成できる。
かかるダム用凸部70bとしては、最終製品では信号用の配線パターンとして利用されることのないダミーパターン、例えば電解めっきの際に用いる給電用の配線パターンとすることによって、ダム用凸部70bのみを形成する工程等を増やすことを必要としないため好ましい。
尚、ダム用凸部70bは、プリント基板やフレキシブル回路基板等の最終製品としての配線基板に含まれていてもよく、配線基板中に含まれないように切断等によって除去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るスクリーン印刷方法の一例を説明するための説明図である。
【図2】本発明に係るスクリーン印刷方法の他の例を説明するための説明図である。
【図3】スクリーン印刷機の一例を説明する概略図である。
【図4】従来のスクリーン印刷方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0019】
26 マスクプレート
26a パターン
28a スキージ
34 クリーニングユニット
40 クリーニングテープ
42 印刷剤
60b 帯状凸部
60a ,70a 配線パターン
60,70 配線基板
62,72 空間部
70b ダム用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷機のテーブル上に載置された配線基板の配線パターンが形成された基板面に、パターンとして所定形状の開口部が形成されたマスクプレートを被着して印刷剤をスクリーン印刷する際に、
該配線基板として、スクリーン印刷を施す印刷領域の境界近傍に、前記配線パターンと同一高さで且つ上面が平坦面である帯状凸部を形成した配線基板を用い、
前記帯状凸部上に、前記マスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置するように、前記マスクプレートを配線基板の基板面に被着した後、
前記マスクプレートを所定圧力で押圧しつつ、前記印刷剤をマスクプレート上に塗布することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項2】
帯状凸部を、配線パターンと同一高さであって、前記配線パターンとして利用されないダミーパターンとする請求項1記載のスクリーン印刷方法。
【請求項3】
スクリーン印刷機のテーブル上に載置された配線基板の配線パターンが形成された基板面に、パターンとして所定形状の開口部が形成されたマスクプレートを被着して印刷剤をスクリーン印刷する際に、
該配線基板として、スクリーン印刷を施す印刷領域外に位置し、前記印刷領域の境界近傍に、前記印刷剤の滲み出しを防止するダム用凸部を形成した配線基板を用い、
前記ダム用凸部よりも印刷領域側に、前記マスクプレートのパターンとしての開口部の端縁が位置するように、前記マスクプレートを配線基板の基板面に被着した後、
前記マスクプレートを所定圧力で押圧しつつ、前記印刷剤をマスクプレート上に塗布することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項4】
ダム用凸部を、配線パターンと同一高さであって、前記配線パターンとして利用されないダミーパターンとする請求項3記載のスクリーン印刷方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142618(P2006−142618A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334954(P2004−334954)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】