説明

スクロール圧縮機及びスクロール圧縮機の給油方法

【課題】十分な量の潤滑油をメカ室中心部へ供給し、給油不良とならないスクロール圧縮機を提供する。
【解決手段】センタハウジング21の内面側に、吸入口24から旋回スクロール4の駆動軸方向へ向けてガス連通溝28を設け、旋回端板42の圧縮室側に設けられた入口部と、メカ室13側のガス連通溝28に対向する位置に設けられた出口部とを有し、旋回端板42の圧縮室側からメカ室13側へ通じる油戻し流路とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機に関し、特に、車載用空調装置などに使用されて好適なスクロール圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なスクロール圧縮機において、ハウジング内に、端板の一側面に渦巻き状ラップを立設した固定スクロール部材と、端板の一側面に固定スクロールの壁体と実質的に同一形状の渦巻き状ラップを立設した旋回スクロール部材とが組み合わされて収容されている。そして、この状態で固定スクロール部材に対して旋回スクロール部材を公転旋回運動させることで、各渦巻き状ラップにて形成した圧縮室の容積を漸次減少させ、この圧縮室内の流体を圧縮するようにしている。
【0003】
このようなスクロール圧縮機は、吸入ガスがミスト状の潤滑油とともに吸入口より吸入室へ送られ、圧縮室に取り込まれる。圧縮されたガスは、吐出室に送られ、凝縮器、膨張弁、蒸発器を経た後、吸入口に戻ることで循環している。しかし、潤滑を必要とする部分は、潤滑油を含むガスを循環させるだけでは十分な潤滑が行われないため、特に給油方法を考慮する必要がある。潤滑が必要な部分として、旋回スクロール部材の背面側に、公転旋回運動を行うための軸受等を収納しているメカ室がある。メカ室への給油に際しては、圧縮室の冷媒ガスから分離して圧縮室内面に付着し滞留した潤滑油を、圧縮室からメカ室へ連通するように旋回端板に設けられた油戻し穴を通じて、軸受等摺動部が収納されたメカ室へ、潤滑油を直接給油できるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている、旋回端板から直接メカ室へと通じる「第1の給油通路」の位置は、圧縮室側において潤滑油が十分に滞留せず、十分な量の潤滑油を送ることができない。そのため、旋回スクロールの潤滑油が滞留しやすい位置を選択し旋回端板上に油連通孔を設けていた。その結果、油連通孔が貫通した、旋回端板の背面側(旋回渦巻き状ラップの立設しない側)は、メカ室へ貫通せず、メカ室より外周側のスラスト面の位置に貫通することになり、潤滑油は、スラスト面によって、流路が妨げられることになっていた。この対策としての従来構造を、図7を参照して説明する。図7には、スクロール圧縮機のハウジング2内に旋回スクロール4が収納された状態の軸方向横断面図として、上部部分である吸入口24付近が表されている。従来は、旋回スクロール4の旋回渦巻き状ラップ41側に滞留した油が、背面側に位置するメカ室13まで良好に流れるように、油連通孔46からメカ室13まで連通する油連通溝47を旋回端板42の背面側であるスラスト面に設ける処置を施していた。しかしながら、図7に示すような、油連通孔46(特許文献1の第1の給油通路に相当)や油連通溝47を設けても、旋回渦巻き状ラップ41側からその背面側へ送られた潤滑油は、旋回スクロール4の旋回公転運動によって遠心力が作用し、実際には油の流れ(同図における矢印48参照)はほとんど起こらず、外周側へ拡散してしまいメカ室13へ潤滑油を到達させることが難しかった。したがって、給油が妨げられ、メカ室に収納されている軸受部や係合部が給油不良になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、十分な量の潤滑油をメカ室中心部へ供給し、給油不良とならないスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のスクロール圧縮機およびスクロール圧縮機の給油方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるスクロール圧縮機は、内部が中空のハウジングと、固定端板の一面に固定渦巻き状ラップが立設された固定スクロール部材と、旋回端板の一面に旋回渦巻き状ラップが立設され、前記固定スクロール部材に対し自転を阻止されつつ公転旋回駆動されるよう組み合わされる旋回スクロール部材と、潤滑油を含有する流体を導入する吸入室と、前記固定スクロール部材に対して前記旋回スクロール部材が公転旋回することで、前記吸入室に導入された流体を圧縮する圧縮室と、前記ハウジングに対して軸受部により回転可能に支持されると共に、一端部に形成される偏心部が係合部を介して前記旋回スクロールに係合され、回転力を前記旋回スクロールに伝達する駆動軸と、前記ハウジング内で前記軸受部および前記係合部が収納されるメカ室と、前記吸入室から前記旋回スクロールの駆動軸中心方向へ、前記ハウジング内面側に設けられたガス連通溝と、前記旋回端板の前記圧縮室側に設けられた入口部と、前記メカ室側の前記ガス連通溝に対向する位置に設けられた出口部を備えた、前記旋回端板の前記圧縮室側から前記メカ室側へ通じる油戻し流路と、を有することを特徴とする。
【0008】
潤滑油を含有する流体は、吸入室へ導入されたあと、圧縮室へと導入され、前記固定スクロール部材に対して前記旋回スクロール部材が公転旋回することで圧縮される。旋回、圧縮される過程において、流体に含まれる潤滑油は、流体から分離して、スクロール部材の圧縮室側の表面に付着する。付着した潤滑油は、スクロール部材の段部の隅角部分など、滞留しやすい箇所に滞留する。旋回端板には圧縮室側からメカ室側に通じるように油戻し流路が設けられているので、滞留している潤滑油は、旋回端板の圧縮室側に設けられた入口部から油戻し流路に進入し、メカ室側に設けられた出口部へと導かれる。
【0009】
一方、吸入室から圧縮室へ導入されない残りの流体は、ハウジングに設けられたガス連通溝を通して、軸受部や係合部が収納されているメカ室へと導入される。ガス連通溝は、吸入室から、駆動軸方向に向かって設けられている。したがって、駆動状態において、ガス連通溝は、駆動軸方向へ流体が流れている状態にある。
【0010】
ハウジング内面側に設けられたガス連通溝に対向する位置に出口部が設けられているので、油戻り流路を通過し出口部から吐出された潤滑油は、ガス連通溝を流れる流体の流れに引き込まれる。流体の流れに乗じた潤滑油は、メカ室の駆動軸方向へと導かれる。したがって、駆動軸まわりに設置されている駆動軸の摺動部分の給油性が向上し、オイルリッチな状態を維持することができる。摺動部はオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止することができる。したがって、摺動部の損傷の少ないスクロール圧縮機を提供することができる。
【0011】
上記の発明において、前記入口部は、前記圧縮室の潤滑油が滞留する位置に設置されることを特徴とする。
潤滑油が滞留する位置に入口部が設置されているので、十分な量の潤滑油が油戻し流路へ吸入される。吸入された潤滑油は、入口部からガス連通溝に対向する位置の出口部に通じるように設置された油流路を通り、出口部から吐出される。吐出された十分な量の潤滑油は、ガス連通溝を流れる流体の流れに引き込まれる。流体の流れに乗じた潤滑油は、メカ室の駆動軸方向へと導かれる。したがって、駆動軸まわりに設置されている駆動軸の摺動部分の給油性が向上し、さらにオイルリッチな状態を維持することができる。摺動部はオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止することができる。したがって、摺動部の損傷の少ないスクロール圧縮機を提供することができる。
【0012】
上記の発明において、前記油戻し流路は、前記入口部から前記旋回端板のメカ室側スラスト面へ開口された油連通孔と、前記油連通孔から前記出口部まで連通する、前記スラスト面に設けられた油連通溝と、を有することを特徴とする。
潤滑油は、旋回端板の潤滑油が滞留する位置に設けられた入口部から油連通孔を通り、旋回端板のスラスト面側に達する。旋回端板のスラスト面側には、油連通孔から出口部へ連通する油連通溝が設けられているので、スラスト面側に導かれた潤滑油は、油連通溝を通じて出口部へと導かれる。出口部はガス連通溝位置にあるので、出口部から吐出された潤滑油は、ガス連通溝の流体の流れに引き込まれる。流体の流れに乗じた潤滑油は、メカ室の駆動軸方向へと導かれる。したがって、駆動軸まわりに設置されている駆動軸の摺動部分の給油性が向上し、さらにオイルリッチな状態を維持することができる。摺動部はオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止することができる。
旋回スクロール部材のスラスト面に油連通溝を追加工すれば良いので、各部品の型取りを改めて行う必要が無い。
【0013】
上記の発明において、前記油戻し流路は、前記入口部から前記旋回端板のメカ室側スラスト面へ開口された油連通孔と、前記旋回端板のスラスト面と前記ハウジングとの間に設置されたスラストプレートに、前記油連通孔の位置と重なるように開口されたスラストプレート孔と、前記スラストプレート孔に対向する前記ハウジングの内面側の位置から前記ガス連通溝まで連通する、前記ハウジングのスラスト受け面に設けられた油連通溝と、を有することを特徴とする。
【0014】
潤滑油は、旋回端板の潤滑油が滞留する位置に設けられた入口部から油連通孔を通り、旋回端板のスラスト面側に達する。旋回端板のスラスト面とハウジングの間に設置されたスラストプレートは、旋回端板に設けられた油連通孔の位置に重なるようにスラストプレート孔が開口されている。したがって、油連通孔から流出した潤滑油はスラストプレート孔を通過する。ハウジングのスラスト受け面には、スラストプレート孔に対向する位置から露出部へ連通する油連通溝が設けられているので、スラストプレート孔を通過した潤滑油は、油連通溝を通じて出口部へと導かれる。出口部はガス連通溝位置にあるので、出口部から吐出された潤滑油は、ガス連通溝の流体の流れに引き込まれる。流体の流れに乗じた潤滑油は、メカ室の駆動軸方向へと導かれる。したがって、駆動軸まわりに設置されている駆動軸の摺動部分の給油性が向上し、さらにオイルリッチな状態を維持することができる。摺動部はオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止することができる。
【0015】
油連通溝をハウジングスラスト受け面に設けることで、旋回端板へ油連通溝を設ける必要が無い。ハウジングの型の製作時に油連通溝を予め形成しておくことにより、油連通溝を追加工がする必要がなくなるので、工数が低減できる。
【0016】
上記の発明において、内部が中空のハウジングと、固定端板の一面に固定渦巻き状ラップが立設された固定スクロール部材と、旋回端板の一面に旋回渦巻き状ラップが立設され、前記固定スクロール部材に対し自転を阻止されつつ公転旋回駆動されるよう組み合わされる旋回スクロール部材と、潤滑油を含有する流体を導入する吸入室と、前記固定スクロール部材に対して前記旋回スクロール部材が公転旋回することで、前記吸入室に導入された流体を圧縮する圧縮室と、前記ハウジングに軸受部により回転可能に支持されると共に、一端部に形成される偏心部が係合部を介して前記旋回スクロールに係合され、回転力を前記旋回スクロールに伝達する駆動軸と、前記ハウジング内で前記軸受部および前記係合部が収納されるメカ室と、前記吸入室から前記旋回スクロールの駆動軸中心方向へ、前記ハウジング内面側に設けられたガス連通溝と、記旋回端板の前記圧縮室側に設けられた入口部と、前記メカ室側に設けられた出口部を有する油戻し流路を備えた、スクロール圧縮機において、前記圧縮室に滞留する前記潤滑油を、前記ガス連通溝の流体の流れを利用して前記メカ室に導入することを特徴とする給油方法である。
【0017】
潤滑油を含有する流体は、吸入室へ導入されたあと、圧縮室へと導入され、前記固定スクロール部材に対して前記旋回スクロール部材が公転旋回することで圧縮される。旋回、圧縮される過程において、流体に含まれる潤滑油は、流体から分離して、スクロール部材の圧縮室側の表面に付着する。付着した潤滑油は、スクロール部材の隅角部分など、滞留しやすい箇所に滞留する。旋回端板には圧縮室側からメカ室側に通じるように油戻し流路が設けられているので、滞留している潤滑油は、旋回端板の圧縮室側に設けられた入口部から油戻し流路に進入し、メカ室側に設けられた出口部へと導かれる。
【0018】
一方、吸入室から圧縮室へ導入されない残りの流体は、ハウジングに設けられたガス連通溝を通して、軸受部や係合部が収納されているメカ室へと導入される。ガス連通溝は、吸入室から、駆動軸中心方向に向かって設けられている。したがって、駆動状態において、ガス連通溝は、駆動軸中心方向へ流体が流れている状態にある。
【0019】
油戻り流路を通過し出口部から流出した潤滑油は、ガス連通溝を流れる流体の流れを利用して、メカ室の駆動軸方向へと導かれる。したがって、駆動軸まわりに設置されている駆動軸の摺動部分の給油性が向上し、オイルリッチな状態を維持することができる。摺動部はオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、油戻り流路を通過し出口部から流出した潤滑油は、ガス連通溝を流れる流体の流れに乗じるので、旋回スクロール部材の旋回公転運動によって遠心力の作用を受けにくい。ガス連通溝はメカ室の駆動部へ連通しているので、潤滑油は、圧縮室から送られるガス連通溝のガスの流れに乗じ、メカ室の駆動部へ導かれる。したがって、給油が妨げられてメカ室部が給油不良となることが無いので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止可能な圧縮機とその給油方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機の横断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機のスラスト面の横断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機の旋回端板スラスト表面を表した図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るスクロール圧縮機のスラスト受け面の横断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るスクロール圧縮機のセンタハウジングのスラスト受け面を表した図である。
【図7】本発明の従来のスクロール圧縮機の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1および図2を用いて説明する。図1には本発明に係るスクロール圧縮機1の縦断面図が示されている。車載用空調装置などに好適に使用されているもので、駆動軸6が水平方向になるように横置きに設置されている。スクロール圧縮機1は、内部が中空のハウジング2と、ハウジング2に固定して内設される固定スクロール3と、自転を阻止されつつ公転旋回可能にハウジング2内に支持される旋回スクロール4とを備えている。
【0023】
固定スクロール3は、渦巻状の壁体としての固定渦巻状ラップ31が立設される固定端板32を有している。旋回スクロール4は、渦巻状の壁体としての旋回渦巻状ラップ41が立設される旋回端板42を有し、旋回渦巻状ラップ41が固定渦巻状ラップ31に噛み合わさった状態で公転旋回可能に支持されている。固定スクロール3と旋回スクロール4とは後述する圧縮部5を構成している。
【0024】
スクロール圧縮機1は、この旋回スクロール4を駆動する図示しない駆動装置を備えている。旋回スクロール4と駆動装置とは、回転力を旋回スクロール4に伝達する駆動軸6により連結され、駆動装置により旋回スクロール4を駆動することができる。駆動軸6は、ハウジング2の軸受部7により回転可能に支持されると共に、一端部に形成される偏心部8が係合部を介して旋回スクロール4に係合される。
【0025】
さらに、スクロール圧縮機1は、潤滑油を含有する冷媒ガスを導入する吸入室9と、吸入室9に導入された冷媒ガスを圧縮する圧縮室51とを備えている。圧縮室51は、固定スクロール3に対して旋回スクロール4が公転旋回することで冷媒ガスを圧縮する。
【0026】
ハウジング2は駆動軸6が水平となるように横置きに配置されており、スクロール圧縮機1の各部を包む略円筒形状をなす密閉容器として構成されている。このハウジング2は、センタハウジング21と、このセンタハウジング21に隣接して配置される蓋状ハウジング22とから構成されている。センタハウジング21は略円筒状に形成されており、蓋状ハウジング22は一端が閉止された略円筒形状に形成されている。この蓋状ハウジング22は、開口している側の端部がセンタハウジング21に嵌合した状態で、センタハウジング21に複数の締結ボルト23により固定される。ハウジング2は、センタハウジング21に吸入口24が形成され、蓋状ハウジング22に吐出口25が形成される。吸入口24及び吐出口25は、当該スクロール圧縮機1の外部の図示しない冷媒ガス経路に接続される。
【0027】
センタハウジング21は、蓋状ハウジング22の反対側の端部に縮径したリング形状をなす支持部26が形成されている。駆動軸6は、回転の中心となる中心軸線がセンタハウジング21の中心軸線とほぼ一致する方向、及び位置で、ハウジング2内に設けられる。また、センタハウジング21の内周部には、センタハウジング21と駆動軸6との隙間を封止し、ハウジング2外部へ冷媒ガスの漏洩を抑制するリップシール10が取り付けられている。さらに、このセンタハウジング21の内周部には、第1の軸受部としての転がり軸受11と第2の軸受部としての玉軸受12が装着されている。この玉軸受12は、リップシール10に隣接するように設けられ、該リップシール10の外側の短部で回転軸としての駆動軸6を回転自在に支持している。転がり軸受11は、リップシール10の内側で、駆動軸6の大径部61(偏心部8側の端部)を回転自在に支持している。このセンタハウジング21と駆動軸6との間に設けられる玉軸受12、転がり軸受11は、ハウジング11に駆動軸16を回転可能に支持する軸受部を構成している。
【0028】
駆動軸6の外部への突出部には、公知の如く、動力を受ける図示省略の電磁クラッチ、プーリ等が設けられ、図示省略されたエンジン等の駆動源からVベルト等を介して動力が伝達されるようになっている。
【0029】
駆動軸6は、駆動装置とは反対側の端部に偏心部8が形成されている。偏心部8は、偏心駆動ピン81とドライブブッシュ82によって構成されている。偏心駆動ピン81は、略円柱状に形成されている。さらに、偏心駆動ピン81は、偏心駆動ピン81の中心軸線と駆動軸6の中心軸線とが平行となり、且つ、偏心駆動ピン81の中心軸線が駆動軸6の中心軸線から所定量だけ離れて位置するように設けられている。したがって、偏心駆動ピン81は、駆動軸6の回転の中心となる中心軸線に対して所定量だけ偏心している。ドライブブッシュ82は、偏心駆動ピン81の外周側を覆うように偏心駆動ピン81に嵌合されている。また、駆動軸6には、公転旋回運動によって旋回スクロール4に与えられるアンバランス量を打ち消すためのバランスウェイト83が連結されている。
【0030】
さらに、偏心部8の蓋状ハウジング22側には上述した圧縮部5が設けられている。圧縮部5は、センタハウジング21に内設されている。この圧縮部5は、偏心部8側に旋回スクロール4が位置し、蓋状ハウジング22側に固定スクロール3が位置するように設けられている。
【0031】
旋回スクロール4は、略円盤状に形成される旋回端板42が偏心部8と対向するように配設されている。旋回渦巻状ラップ41は、旋回端板42の固定スクロール3側の面(偏心部8と対向する面の反対側の面)に立設されている。旋回スクロール4は、センタハウジング21のスラスト受け面により旋回端板42を回転可能にスラスト支持されている。さらに、旋回スクロール4は、旋回端板42が偏心部8と対向する面のほぼ中心に、偏心部8が係合するためのボス部43が形成されている。
【0032】
ボス部43は、偏心部8側に突出するように形成されている。また、ボス部43は、内側が空洞の略円筒状の形状に形成されている。ボス部43の内側には、転がり軸受44が設けられている。偏心部8は、この転がり軸受44を介して旋回スクロール4に係合されている。このボス部43と偏心部8との間に設けられる転がり軸受44は、旋回スクロール4に偏心部8を係合する係合部を構成している。偏心駆動ピン81は、ドライブブッシュ82及び転がり軸受44を介してボス部43に回動自在に支持されている。これにより、旋回スクロール4は、駆動軸6の回転によって公転旋回運動することができる。また、センタハウジング21と旋回スクロール4との間には、自転阻止機構45が介装され、旋回スクロール4は、これらの構造により自転が阻止されつつ、駆動軸6の中心軸線を公転軸として公転旋回運動可能となっている。
【0033】
固定スクロール3は、固定渦巻状ラップ31が旋回渦巻状ラップ41と対向して噛み合う状態で蓋状ハウジング22の内周面に嵌合して設けられている。固定スクロール3は、上述した締結ボルト23により固定端板32が蓋状ハウジング22に固定されている。
【0034】
固定スクロール3と旋回スクロール4とは、固定渦巻状ラップ31と旋回渦巻状ラップ41が噛み合うように組み合わされることで、各ラップ31、41の間に圧縮室51を形成している。固定スクロール3、旋回スクロール4、圧縮室51によって構成される圧縮部5とセンタハウジング21との間には、吸入室9が形成されている。さらに、固定渦巻状ラップ31とは反対側には、固定端板32と蓋状ハウジング22の内周面とによって吐出室52が画成されている。
【0035】
上述した吸入口24は低圧部としての吸入室9に開口しており、吐出口25は高圧部としての吐出室52に開口している。吸入室9は、潤滑油を含有する冷媒ガスを圧縮室51に導入する。圧縮室51は、固定スクロール3に対して旋回スクロール4が公転旋回することで、冷媒ガスを内部で圧縮する。吐出室52には、圧縮室51で圧縮された高圧の冷媒ガスが吐出される。また、固定端板32の中央には、圧縮室51と吐出室52とを連通する吐出ポート53が設けられ、この吐出ポート53は吐出弁54により開閉可能となっている。
【0036】
なお、吸入口24を圧縮部5とほぼ対向するように開口させたのは、吸入口24からハウジング11内に取り込んだ冷媒ガスを直接圧縮室に導入することで、圧縮効率の低下や圧力損失の増大を抑制するためである。また、圧縮室51で圧縮される冷媒ガスには、スクロール圧縮機1のハウジング11内の各部を潤滑する潤滑油がミスト状の状態で含有されており、この潤滑油によって、スクロール圧縮機1内の各摺動部は潤滑される。
【0037】
スクロール圧縮機1は、さらに、ハウジング11内で第1の軸受部としての転がり軸受11及び係合部としての転がり軸受44が区画されるメカ室13と、ハウジング11内でリップシール10により区画されるシール室14とを備えている。メカ室13は、センタハウジング21の内周面、旋回端板42、駆動軸6の大径部61の端面によって画成される空間である。シール室14は、センタハウジング21の内周面、駆動軸6の大径部61の端面(メカ室13とは反対側の端面)、リップシール10の大径部61側の面によって画成される空間であり、転がり軸受11、駆動軸6の大径部61によってメカ室13と隔てられて隣接している。
【0038】
スクロール圧縮機1は、さらに、冷媒ガスが圧縮される際に圧縮室51内で圧縮されることによって冷媒ガスから分離されて内面に付着して残留する潤滑油をメカ室13に導入する油連通孔46を備えている。油連通孔46は、圧縮室51とメカ室13とを連通するように旋回端板42に設けられる。旋回端板42の背面(旋回渦巻状ラップ41が立設されている面とは反対側の面)は、ハウジングの壁面により接触状態でスラスト支持する上述したスラスト受け面27となる。このスラスト受け面27は、センタハウジング21の径方向に対して略平行な壁面部分をなし、表面にスラストプレート271を有している。旋回スクロール4は、壁面部分となるスラスト受け面27に接触するようにして設けられている。スラストプレート271の表面は、低い摩擦係数を有し、耐摩耗性に優れた素材とされる。
【0039】
図2には、センタハウジング21内に旋回スクロール4が収納された状態での上部分(吸入口24の近傍部分)について、旋回軸方向に旋回スクロール4側から見た図が示されている。センタハウジング21には吸入口24があり、センタハウジング21のスラスト受け面27に吸入口24から、メカ室13へ連通するガス連通溝28が凹設されている。メカ室13は、旋回スクロール4をボス部43(図1参照)に係合するための係合部を収納するために略円筒に凹設されている。旋回端板42には、センタハウジング21に設けられたガス連通溝28の位置付近に開口されるように、油連通孔46が設けられている。ここでのガス連通溝28の位置付近とは、油連通孔46から吐出した油が、ガス連通溝28を流れるガスの流れ15の影響を受ける範囲を指す。本実施形態では、油連通孔46は、ガス連通溝28の溝幅の中央線上に油連通孔46の中心が重なるように設けられている。油連通孔46は、孔の直径が0.5mmから2mmとされる。
【0040】
次に、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機1の作用について説明する。駆動源を駆動すると、駆動力が図示を省略する駆動装置の従動プーリに伝達され、駆動軸6が回転し、この回転力が偏心部8等を介して旋回スクロール4に伝達され、この旋回スクロール4が自転阻止機構45によって自転が阻止されながら公転軌道上を旋回する。すると、潤滑油のミストを含む冷媒ガスが吸入口24からハウジング2内の吸入室9に吸い込まれ、圧縮室51内に導入される。
【0041】
そして、旋回スクロール4が旋回し続けると、これに伴って圧縮室51が次第に狭められ、内部の冷媒ガスが圧縮されつつ中央部に至り、吐出ポート53を通って吐出室52へ吐き出される。吐出弁54は、圧縮室51と吐出室52との差圧により開閉する。すなわち、圧縮室51の冷媒ガスの圧力が吐出室52の圧力よりも高くなると、吐出弁54を押し開いて高圧の冷媒ガスが吐出室52に流出する。その後、高圧の冷媒ガスは、吐出室52から吐出口25を経て外部に吐き出される。
【0042】
このとき、ミスト状の潤滑油を含んだ冷媒ガスは圧縮室51に導入され、旋回スクロール4が旋回して圧縮室51の容積が漸次減少することで圧縮されるが、この圧縮室51では、冷媒ガスからミスト状の潤滑油が分離される。そして、この分離した潤滑油は、固定スクロール3に対して旋回スクロール4が回転することで、その噛み合い部によりかき集められ、圧縮室51の圧力により油連通孔46を通してメカ室13に導入される。
【0043】
一方、メカ室13側の負圧を防ぐために、吸入口24から吸入された冷媒ガスは、センタハウジング21の吸入口24の直下の位置のスラスト受け面27に設けられたガス連通溝28を通して、メカ室13へも送られている。したがって、ガス連通溝28には、吸入口24側からメカ室13側へ流れる冷媒ガスの流れ(図1の矢印15参照)が作用している。
【0044】
油連通孔46は、ガス連通溝28を流れるガスの流れ15の影響を受ける範囲に設けられているので、油連通孔46から送出された潤滑油は、ガスの流れ15に乗じてメカ室13側へ導かれる。ガスの流れ15の影響を受ける範囲とは例えば、本実施形態のように、ガス連通溝28に油連通孔46の出口部全体が、軸方向に重なる位置でも良いし、油連通溝46の出口部が部分的に重なる位置でも良い。
【0045】
以上、説明した本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機1によれば、圧縮室に滞留した潤滑油は、ガス連通溝28のガスの流れ15を利用した油戻し流路を形成することで、メカ室13中心部へ導入される。潤滑油が到達したメカ室13は、メカ室13に収納されている係合部分などの駆動軸6の摺動部分の給油性が向上し、オイルリッチな状態を維持することができる。摺動部はオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止することができる。
【0046】
なお、上述した本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機1は、上述した実施例に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、潤滑油の滞留場所が、ガス連通溝28に対向する位置になく、ガス連通溝28に対向する位置に油連通孔46を設置しても、メカ室13への給油効果が望めない場合は、圧縮室51の油連通孔46の入口部は潤滑油の滞留場所に設け、スラスト面側の油連通孔46の出口部はガス連通溝28付近に設けても良い。すなわち。旋回端板42の部材内を板厚直角方向や斜め方向に貫通させて入口部と出口部を設けることで、油戻し流路を形成しても良い。
また、旋回端板42のスラスト面と、センタハウジング21のスラスト受け面27の間に、スラストプレート271が設置されている場合は、油連通孔46と対向するようにスラストプレート271に貫通する孔を設けても良い。スラストプレート271に孔を開口することで、潤滑油はガスの流れ15に乗じ易くなる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図3および図4を用いて説明する。第2実施形態は、油連通孔46の設置位置と別途設けられる油連通溝47について、第1実施形態と相違しており、その他の構成については同様である。
図3には、油連通孔46をガス連通溝28付近に設置しない実施形態として、センタハウジング21内に旋回スクロール4が収納された状態での上部分(吸入口24の近傍部分)について、旋回軸方向に旋回スクロール4側から見た図が示されている。図4には、旋回端板42をスラスト面(旋回渦巻き状ラップ41が立設されていない側の面)の油連通溝が設けられた状態を示す側面図が示されている。
圧縮効率等の種々の設計条件から旋回渦巻き状ラップ41と吸入口24との位置関係を決定した場合、潤滑油が滞留しやすい位置が、必ずしも、ガス連通溝28付近にあるとは限らず、ガス連通溝28と、潤滑油滞留位置に設けられた油連通孔46とは、離れた位置関係となる。そのような場合においては、図7に示すように、油連通孔46から、ガス連通溝28まで連通させる油連通溝47を、旋回端板42のスラスト面側(旋回渦巻き状ラップが立設されていない側の面)に設ける。
【0048】
油連通溝47を設けることにより、油連通孔46から送出された潤滑油は、油連通溝47を通り、ガス連通溝28付近まで導かれる。ガス連通溝28付近に到達した潤滑油は、図3中の油の流れを示す矢印48のように、ガス連通溝28を流れるガスの流れ(矢印15)に乗じてメカ室13へ導入される。
【0049】
したがって、スラスト面側に導入された潤滑油は、油連通溝47を通り、ガスの流れ15に乗じることができるので、旋回スクロール4の旋回運動の遠心力によって、外周方向へ飛ばされること無く、メカ室13へ導入される。
導入された潤滑油により、メカ室に収納されている、ボス部43と偏心部8との間に設けられる転がり軸受44は、旋回スクロール4に偏心部8を係合部する係合部はオイルリッチな状態が保持される。摺動部がオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止するスクロール圧縮機を提供できる。
旋回端板42に油連通溝47を追加工するだけで、本実施形態による油戻し流路を形成することができるので、スクロール圧縮機の性能改善を容易に行うことができる。
【0050】
なお、上述した本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機1は、図3および図4に示した具体例に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、旋回端板42のスラスト面と、センタハウジング21のスラスト受け面27の間に、スラストプレート271が設置されている場合は、スラストプレート271の油連通溝47のガス連通溝28に連通した終端部に対向する位置に、貫通する孔を設けても良い。この孔を用いて潤滑油を流すことで、潤滑油が図3の矢印15に示すガスの流れに乗じ易くなる。
【0051】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図5および図6を用いて説明する。第3実施形態は、油連通孔46の設置位置については第2実施形態と同様であるが、油連通溝47の設置位置において相違する。
図5には、油戻し流路をセンタハウジング21側に設けた実施形態として、センタハウジング21内に旋回スクロール4が収納された状態での上部分(吸入口24の近傍部分)について、旋回軸方向に旋回スクロール4側からスラスト面を見た断面図が示されている。図6には、センタハウジングのスラスト受け面に設けられたガス連通溝28と油連通溝47の位置関係を表した断面図が示されている。
【0052】
旋回端板42のスラスト面と、センタハウジング21のスラスト受け面27との間には、スラストプレート271が、スラスト受け面27に突設された図1に示す自転阻止機構45であるボスに係合支持され固定されている。スラストプレート271には、旋回端板42に設けられた図3に示す油連通孔46と接する位置に、スラストプレート孔272が開口されている。油連通孔46は、ハウジング21に固定されているスラストプレート271に対して、旋回スクロール4の公転旋回運動によって動くため、定位置とはならない。したがって、スラストプレート孔272は、油連通孔46の軌跡を含む大きさに開口される。スラストプレート孔272と接するセンタハウジング21のスラスト受け面には、スラストプレート孔272と略同形の穴49が凹設され、穴49からガス連通溝28まで連通する油連通溝47が設けられている。
【0053】
油連通孔46は、旋回スクロール4が旋回駆動中、固定側であるスラスト受け面27およびスラストプレート271に対して円形の軌跡を描く。スラストプレート孔272は該軌跡を含む大きさに開口されているので、油連通孔46から送出された潤滑油は、旋回駆動中において、スラストプレート孔272を通過することができる。スラストプレート孔272を通過した潤滑油は、センタハウジング21のスラスト受け面27へ流れる。スラスト受け面27にはスラストプレート孔272と略同形の穴49が設けられているので、潤滑油は、穴49へ流れる。穴49からガス連通溝28までは油連通溝47が連通しているので、穴49に流れた潤滑油は、油連通溝47を通じて、ガス連通溝28へ到達する。ガス連通溝28へ到達した潤滑油は、図5の油の流れ方向を表す矢印48に示すように、ガス連通溝28を流れるガスの流れを表す矢印15の方向の流れに乗じてメカ室13へ導入される。
【0054】
したがって、スラスト面側に導入された潤滑油は、油連通溝47を通り、矢印15に示すガスの流れに乗じることができるので、旋回スクロール4の旋回運動の遠心力によって、外周方向へ飛ばされること無く、メカ室13へ導入される。
導入された潤滑油により、図1に示すボス部43と偏心部8との間に設けられたメカ室13内の転がり軸受44などの旋回スクロール4に偏心部8を係合部する係合部は、オイルリッチな状態が保持される。摺動部がオイルリッチな状態に保たれているので、潤滑油不足による摺動部の磨耗や摺動不良が抑制され、摺動部の損傷を防止するスクロール圧縮機を提供できる。
油連通溝47をハウジングスラスト受け面27に設けることで、旋回端板42へ油連通溝47を設ける必要が無い。センタハウジング21の型の製作時に油連通溝を予め形成しておくことにより、実施できる。油連通溝47を追加工がする必要がなくなるので、工数が低減できる。
【符号の説明】
【0055】
1 スクロール圧縮機
2 ハウジング
3 固定スクロール
4 旋回スクロール
5 圧縮部
6 駆動軸
7 軸受部
8 偏心部
9 吸入室
13 メカ室
15 ガスの流れ
21 センタハウジング
24 吸入口
27 スラスト受け面
28 ガス連通溝
41 旋回渦巻き状ラップ
42 旋回端板
46 油連通孔
47 油連通溝
48 油の流れ
49 穴
51 圧縮室
271 スラストプレート
272 スラストプレート孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空のハウジングと、
固定端板の一面に固定渦巻き状ラップが立設された固定スクロール部材と、
旋回端板の一面に旋回渦巻き状ラップが立設され、前記固定スクロール部材に対し自転を阻止されつつ公転旋回駆動されるよう組み合わされる旋回スクロール部材と、
潤滑油を含有する流体を導入する吸入室と、
前記固定スクロール部材に対して前記旋回スクロール部材が公転旋回することで、前記吸入室に導入された流体を圧縮する圧縮室と、
前記ハウジングに対して軸受部により回転可能に支持されると共に、一端部に形成される偏心部が係合部を介して前記旋回スクロールに係合され、回転力を前記旋回スクロールに伝達する駆動軸と、
前記ハウジング内で前記軸受部および前記係合部が収納されるメカ室と、
前記吸入室から前記駆動軸方向へ、設けられたガス連通溝と、
前記旋回端板の前記圧縮室側に設けられた入口部と、前記メカ室側の前記ガス連通溝に対向する位置に設けられた出口部とを有し、前記旋回端板の前記圧縮室側から前記メカ室側へ通じる油戻し流路と、
を備えていることを特徴とする、スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記入口部は、前記圧縮室の潤滑油が滞留する位置に設置されることを特徴とする、請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記油戻し流路は、前記入口部から、前記メカ室側に位置する前記旋回端板のスラスト面へ開口された油連通孔と、
該油連通孔から前記出口部まで連通するとともに、前記スラスト面に設けられた油連通溝と、を有することを特徴とする、請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記油戻し流路は、前記入口部から、前記メカ室側に位置する前記旋回端板のスラスト面へ開口された油連通孔と、
前記スラスト面と前記ハウジングとの間に設置されたスラストプレートに形成され、前記油連通孔に開口されたスラストプレート孔と、
前記ハウジングのスラスト受け面に設けられた前記スラストプレート孔に対向する前記ハウジングの内面側の位置から前記ガス連通溝まで連通する、油連通溝と、を有することを特徴とする、請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
内部が中空のハウジングと、
固定端板の一面に固定渦巻き状ラップが立設された固定スクロール部材と、
旋回端板の一面に旋回渦巻き状ラップが立設され、前記固定スクロール部材に対し自転を阻止されつつ公転旋回駆動されるよう組み合わされる旋回スクロール部材と、
潤滑油を含有する流体を導入する吸入室と、
前記固定スクロール部材に対して前記旋回スクロール部材が公転旋回することで、前記吸入室に導入された流体を圧縮する圧縮室と、
前記ハウジングに軸受部により回転可能に支持されると共に、一端部に形成される偏心部が係合部を介して前記旋回スクロールに係合され、回転力を前記旋回スクロールに伝達する駆動軸と、
前記ハウジング内で前記軸受部および前記係合部が収納されるメカ室と、
前記吸入室から前記駆動軸方向へ、設けられたガス連通溝と、
記旋回端板の前記圧縮室側に設けられた入口部と、前記メカ室側に設けられた出口部を有する油戻し流路とを備えたスクロール圧縮機の給油方法において、
前記圧縮室に滞留する前記潤滑油を、前記油戻し流路を介して、前記ガス連通溝の流体の流れを利用して前記メカ室に導入することを特徴とする、スクロール圧縮機の給油方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−163956(P2010−163956A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6629(P2009−6629)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】