説明

スタビライザブッシュ

【課題】スタビライザバーに接着することなく、スタビライザブッシュのねじり剛性を有効に利用しつつ良好な線形ねじり特性を得ることができるスタビライザブッシュを提供する。
【解決手段】筒状からなり、内周面をスタビライザバー20の外周面側に押圧することでスタビライザバー20に一体的に配置され、且つ、外周面に周方向に凹状または凸状からなる係合部11bが形成された一体金具11を備える。ゴム弾性体本体13、14は、筒状からなり、内周面に係合部11bに対して周方向に係合する凸状または凹状からなる被係合部13d、14dが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状からなり車両のスタビライザバーを挿通保持すると共に締結部材により外周面を押圧されて車両ボディに固定されるゴム弾性体本体を備えるスタビライザブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタビライザブッシュは、スタビライザバーとの相対回転角度が小さい場合にはねじり変形してスタビライザバーに追随するが、相対回転角度が大きくなると追随しきれず、両者の間に滑りが発生する。このように、相対回転角度に対するスタビライザブッシュのばね特性(「ねじり特性」とも称する)が、非線形となるため、スティックスリップ現象が発生する。このスティックスリップ現象により、振動が発生し、車両の乗り心地に悪影響を及ぼしたり、異音が発生したりして、快適性を損なう。
【0003】
そこで、ねじり特性を線形とするために、スタビライザブッシュをスタビライザバーに一体的に加硫接着することも考えられるが、大きな部材であるスタビライザバーに加硫接着をするためには、大きな設備が必要となり、高コスト化を招来する。また、特開2006−264435号公報(特許文献1)には、スタビライザバーの外周面に接着剤を塗布して、スタビライザブッシュを後接着することが記載されている。しかし、接着剤を塗布する工程は、工数を要する作業であり、製造工程が増加するため、コストが高くなるという問題を内在している。
【0004】
また、実用新案登録第2555530号公報(特許文献2)には、ゴム弾性体の内周面に金属網状体を一体的に配置し、当該金属網状体の網目に潤滑組成物を充填させることで、スタビライザバーに対して常に滑るようにすることが記載されている。つまり、ゴム弾性体のねじり特性がアンチロール性能に影響を及ぼさないため、スタビライザバーのねじり特性のみがアンチロール性能として発揮する。従って、アンチロール性能としては、線形性を確保できる。
【特許文献1】特開2006−264435号公報
【特許文献2】実用新案登録第2555530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載のスタビライザブッシュでは、ゴム弾性体がねじり変形することはないため、ゴム弾性体が有するねじり剛性を利用していない。さらに、潤滑組成物が介在しているとしても、やはりスティックスリップ現象が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スタビライザバーに接着することなく、スタビライザブッシュのねじり剛性を有効に利用しつつ良好な線形ねじり特性を得ることができるスタビライザブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスタビライザブッシュは、
筒状からなり車両のスタビライザバーを挿通保持すると共に締結部材により外周面を押圧されて車両ボディに固定されるゴム弾性体本体を備えるスタビライザブッシュにおいて、
筒状からなり、内周面を前記スタビライザバーの外周面側に押圧することで前記スタビライザバーに一体的に配置され、且つ、外周面に周方向に凹状または凸状からなる係合部が形成された一体金具を備え、
前記ゴム弾性体本体は、筒状からなり、内周面に前記係合部に対して周方向に係合する凸状または凹状からなる被係合部が形成されたことを特徴とする。
【0008】
ここで、一体金具は、スタビライザバーの外周面に押圧することで、スタビライザバーに対して一体的に取り付けられている。従って、一体金具は、スタビライザバーが車両ボディに対して相対回転した場合に、スタビライザバーと一体的に回転することになる。また、一体金具は、スタビライザバーとは別体に形成されている。従って、この一体金具は、スタビライザバーの外周面に接着剤を塗布することなく、組み付けることができる部品である。
【0009】
また、一体金具の係合部とゴム弾性体本体の被係合部とが周方向に係合するように、ゴム弾性体本体を一体金具に取り付けている。つまり、ゴム弾性体本体は、一体金具とは別体に形成されており、接着剤を塗布したり、加硫接着したりすることなく、一体金具に組み付ける部品である。そして、係合部と被係合部とが周方向に係合することで、一体金具とゴム弾性体本体の内周面との間にて、周方向に滑りが発生することを防止できる。
【0010】
つまり、本発明のスタビライザブッシュによれば、スタビライザバーと一体金具との間で滑りが発生することを防止でき、且つ、一体金具とゴム弾性体本体の内周面との間で滑りが発生することを防止できる。従って、スティックスリップ現象が発生することを防止でき、結果として、異音の発生を防止でき、且つ、車両の乗り心地性能の良好とすることができる。
【0011】
さらに、ゴム弾性体本体の内周側は、実質的に、スタビライザバーの外周面に対して滑りが発生しない構成となる。つまり、スタビライザバーが車両ボディに対してねじり変形する場合に、ゴム弾性体本体自体もねじり変形することになる。つまり、本発明のスタビライザブッシュによれば、ゴム弾性体本体のねじり剛性を有効に利用して、アンチロール力を発揮している。さらに、ゴム弾性体本体の内周側は、実質的に、スタビライザバーの外周面に対して滑りが発生しないため、ゴム弾性体本体のねじり特性を線形とすることができる。つまり、スタビライザバーの線形ねじり特性とゴム弾性体本体の線形ねじり特性により、線形のアンチロール性能を発揮することが可能となる。
【0012】
ここで、スタビライザバーの外周面そのものを、本発明の一体金具のような凹凸状とすることも考えられるが、スタビライザバーの外周面を加工することは製造コストの高騰につながる。従って、本発明のように、一体金具をスタビライザバーと別に有することで、スタビライザバーは、円形の径方向断面からなるものを用いることができる。
【0013】
また、本発明のスタビライザブッシュにおいて、前記係合部は、軸方向に凹状または凸状に形成され、前記被係合部は、前記係合部に対して軸方向に係合するとよい。つまり、ゴム弾性体本体と一体金具とが軸方向にずれることを防止できる。これにより、安定したアンチロール性能を発揮できる。
【0014】
また、本発明のスタビライザブッシュにおいて、前記一体金具の内周面と前記スタビライザバーの外周面との間に挟まれて配置され、且つ、前記一体金具との間における摩擦係数および前記スタビライザバーとの間における摩擦係数が、前記一体金具と前記スタビライザバーとの間における摩擦係数より大きな材質からなるシート状部材をさらに備えるとよい。これにより、スタビライザバーと一体金具との間で滑りが発生することをより確実に防止できる。つまり、スタビライザバーと一体金具との一体性を強化することができる。
【0015】
特に、前記シート状部材は、弾性材料からなるとよい。シート状部材が弾性変形することで、シート状部材とスタビライザバーとの間の密着力、および、シート状部材と一体金具との間の密着力をより強固なものとすることができる。また、シート状部材は、一体金具に対して別体に成形されたものとしてもよいし、一体金具の内周面に加硫接着されたり、接着剤により接着されたりしてもよい。
【0016】
また、上述した本発明のスタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体本体の内周面のうち軸方向の開口両端部は、前記一体金具の外周面または前記スタビライザバーの外周面に全周に亘って当接しているとよい。つまり、当該当接部分がシール性能を発揮して、ゴム弾性体本体の内周面への異物の侵入を防止できる。そして、ゴム弾性体本体の内周面のうち軸方向の開口両端部は、一体金具の外周面に当接させる方が、より製造が容易となる。
【0017】
この場合、さらに、前記ゴム弾性体本体の前記開口両端部は、前記一体金具または前記スタビライザバーの外周面のうち円形の径方向断面を有する部位に当接し、前記ゴム弾性体本体の前記開口両端部における径方向断面形状は、円形からなるとよい。これにより、当該開口両端部がスタビライザバーに対してねじれる場合であっても、全周に亘って、確実に当接状態を維持できる。つまり、シール性能を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<第一実施形態>
次に、第一実施形態のスタビライザブッシュ10について、図1〜図7を参照して説明する。図1は、第一実施形態のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、一体金具11をスタビライザバー20へ組み付けた状態の軸方向断面図である。図4は、図3のB−B断面図である。図5は、図3のC−C断面図である。図6は、一体金具11をスタビライザバー20へ組み付けた状態の斜視図である。図7は、ゴム弾性体本体13、14の斜視図である。
【0019】
スタビライザブッシュ10は、筒状からなり、貫通孔にスタビライザバー20を挿通保持している。ここで、スタビライザバー20は、外径が同径の丸棒状の鋼材からなり、車両上方から見た場合にコの字型からなる。そして、スタビライザバー20のコの字型の両端が、それぞれ左右の車輪(図示せず)を支持するサスペンションアーム(図示せず)に連結されている。
【0020】
また、スタビライザブッシュ10は、その外周面が締結部材30により押圧されて、車両ボディ40(サスペンションメンバ)に固定されている。ここで、図2に示すように、締結部材30は、金属製からなり、U字型形状部31と、フランジ部32とを備えている。U字型形状部31は、スタビライザブッシュ10の外周面を押圧するU字型形状からなる。このU字型形状部31の押圧面(U字型の内側面)の軸方向断面形状は、中心軸に平行な直線状をなしている。フランジ部32は、U字型形状部31の開口両端から外側へ向かって延びるようにそれぞれ設けられ、ボルト(図2に示す)により車両ボディ40に取付けるための部分である。
【0021】
そして、スタビライザブッシュ10は、一体金具11と、シート状部材12と、2個のゴム弾性体本体13、14とを備えている。一体金具11は、図3〜図6に示すように、全体としては筒状に形成された金具からなる。具体的には、一体金具11は、周方向の一箇所に切割部11aが形成されたC字型形状からなる。この一体金具11の内周面の内径は、軸方向全長に亘って同径からなり、スタビライザバー20の外径より僅かに大きな径となるように形成されている。そして、一体金具11の軸方向中央部には、径方向に貫通された係合部11bが、周方向に複数形成されている。この係合部11bは、一体金具11の外周面から見た場合に、周方向に凹状に形成されている。さらに、係合部11bは貫通形成されているため、一体金具11の外周面から見た場合に、軸方向においても凹状に形成されていることになる。つまり、一体金具11の外周面において、周方向および軸方向に凹凸状に形成されている。
【0022】
さらに、一体金具11のC字型の周方向両端部には、径方向外方に突出する一対のフランジ部11c、11dが形成されている。これら一対のフランジ部11c、11dは、軸方向両端部が、軸方向中央部より径方向外方への突出量が大きくなっており、それぞれに貫通孔が形成されている。この貫通孔には、溶接用のピンを挿通するため孔である。具体的には、一体金具11は、切割部11aを開いた状態として、スタビライザバー20の外周面に巻きつけたシート状部材12(後述する)の外周面側に挿入する。そして、一対のフランジ部11c、11dの貫通孔にピンを挿通して溶接することにより、切割部11aが連結される。その結果、一体金具11は、スタビライザバー20の外周面側に押圧する状態となり、この状態にて、スタビライザバー20に一体的に配置される。
【0023】
シート状部材12は、ゴム弾性体により薄厚のシート状に形成されている。このシート状部材12の大きさは、一体金具11の内周面を展開した大きさと同一である。つまり、シート状部材12の一方の辺長は、一体金具11の軸方向長さと同一であり、シート状部材12の他方の辺長は、一体金具11の内周面の周長と同一である。このシート状部材12は、図1および図2に示すように、一体金具11の内周面とスタビライザバー20の外周面との間に挟まれて配置されている。
【0024】
さらに、シート状部材12は、一体金具11との間における摩擦係数およびスタビライザバー20との間における摩擦係数が、一体金具11とスタビライザバー20との間における摩擦係数より大きな材質が適用されている。つまり、シート状部材12を介在することで、スタビライザバー20と一体金具11との間で滑りが発生することをより確実に防止できる。つまり、スタビライザバー20と一体金具11との一体性を強化することができる。
【0025】
特に、シート状部材12は、ゴム弾性材料を適用しているため、シート状部材12が弾性変形することで、シート状部材12とスタビライザバー20との間の密着力、および、シート状部材12と一体金具11との間の密着力をより強固なものとすることができる。なお、シート状部材12は、一体金具11に対して別体に成形されたものとしてもよいし、一体金具11の内周面に加硫接着されたり、接着剤により接着されたりしてもよい。
【0026】
ゴム弾性体本体13、14は、全体としては、筒状からなる。このゴム弾性体本体13、14全体としての軸方向長さは、一体金具11の一対のフランジ部11c、11dのうち、径方向外方への突出量が小さい範囲(軸方向中央部の範囲)の軸方向長さとほぼ同等である。つまり、一体金具11のうち溶接個所である軸方向両端部は、ゴム弾性体本体13、14よりも軸方向外方に位置している。
【0027】
ただし、成形性の観点から、軸方向中央部を径方向に2個に切断した、第一のゴム弾性体本体13と第二のゴム弾性体本体14とをそれぞれ成形している。第一のゴム弾性体本体13は、筒状からなる。具体的には、第一のゴム弾性体本体13は、周方向の一箇所に切割部13aが形成されたC字型形状からなる。
【0028】
この第一のゴム弾性体本体13の外周面の軸方向一方端には、全周に亘って径方向外方に突出する第一のフランジ部13bが形成されている。また、第一のゴム弾性体本体13の内周面のうち、フランジ部13bに対応する軸方向位置13cは、径方向断面形状が一体金具11の外径と同一もしくは当該外径より僅かに小さな円形に形成されている。当該部分13cを、第一の円形内周面部とも称する。また、第一のゴム弾性体本体13の内周面のうち、フランジ部13bを除く部分に対応する軸方向位置には、径方向内方に凸状の第一の被係合部13dが周方向に複数形成されている。この第一の被係合部13dは、一体金具11の係合部11bのうち、軸方向中央より一方側の部分に挿入可能な形状からなる。さらに、第一の被係合部13dの径方向内方への突出量は、一体金具11の板厚より僅かに小さくされている。つまり、第一の被係合部13dの径方向内方への突出量は、一体金具11の係合部11の径方向長さより小さい。
【0029】
そして、第一のゴム弾性体本体13は、切割部13aを開いた状態として、一体金具11の外周側に挿入する。そして、第一の被係合部13dを一体金具11の係合部11bに係合するように配置すると共に、切割部13aが閉じるようにすることで、両者が周方向に係合する。さらに、第一の被係合部13dを、一体金具11の係合部11bのうち軸方向一端側に寄せておく。従って、第一の被係合部13dは、一体金具11の係合部11bに対して、軸方向に係合することになる。さらに、このとき、第一のゴム弾性体13の第一の円形内周面部13cが、一体金具11の軸方向一端側の外周面のうち、円形の径方向断面を有する部位に、全周に亘って当接する状態となる。
【0030】
また、第二のゴム弾性体本体14は、第一のゴム弾性体本体13と同一形状からなる。第二のゴム弾性体本体14において、第一のゴム弾性体本体13の切割部13aに対応する部位を切割部14aとし、第一のフランジ部13bに対応する部位を第二のフランジ部14bとし、第一の円形内周面部13cに対応する部位を第二の円形内周面部14cをし、第一の被係合部13dに対応する部位を第二の被係合部14dとする。
【0031】
そして、第二のゴム弾性体本体14は、切割部14aを開いた状態として、一体金具11の外周側であって、第一のゴム弾性体本体13に対して軸方向に隣接するように挿入する。このとき、第二のフランジ部14bが、第一のフランジ部13bから軸方向に最も遠い位置に位置するように配置される。そして、第二の被係合部14dを一体金具11の係合部11bに係合するように配置すると共に、切割部14aが閉じるようにすることで、両者が周方向に係合する。さらに、第二の被係合部14dを、一体金具11の係合部11bのうち軸方向他端側に寄せておく。従って、第二の被係合部14dは、一体金具11の係合部11bに対して、軸方向に係合することになる。さらに、このとき、第二のゴム弾性体本体14の第二の円形内周面部14cが、一体金具11の軸方向一端側の外周面のうち、円形の径方向断面を有する部位に、全周に亘って当接する状態となる。
【0032】
つまり、第一、第二のゴム弾性体本体13、14を一体として考えた場合に、この一体ゴム13、14の外周面の軸方向両端にフランジ部13b、14bが形成されている。また、一体ゴム13、14の内周面のうち軸方向の開口両端部に、一体金具11の外周面のうち円形の径方向断面を有する部位に、全周に亘って当接している。さらに、一体ゴム13、14の内周面のうち軸方向中央部には、一体金具11の係合部11bに周方向および軸方向に対して係合する、突起(被係合部13d、14d)が形成されている。
【0033】
そして、ゴム弾性体本体13、14は、車両ボディ40に形成された孤凹状溝にはめ込まれ、且つ、ゴム弾性体本体13、14の外周面を締結部材30により押圧されて、ボルトにより締結部材30を車両ボディ40に固定する。
【0034】
スタビライザブッシュ10を以上説明した構成とすることで、以下の効果を奏する。スタビライザバー20に実質的に一体的に固定された一体金具11の係合部11bと、ゴム弾性体本体13、14の被係合部13d、14dとを周方向に係合することで、一体金具11とゴム弾性体本体13、14の内周面との間にて、周方向の滑りが発生することを防止できる。そして、一体金具11とスタビライザバー20との間で滑りが発生することも防止できる。従って、スティックスリップ現象が発生することを防止でき、結果として、異音の発生を防止でき、且つ、車両の乗り心地性能の良好とすることができる。
【0035】
さらに、ゴム弾性体本体13、14の内周側は、実質的に、スタビライザバー20の外周面に対して滑りが発生しない構成となっている。つまり、スタビライザバー20が車両ボディ40に対してねじり変形する場合に、ゴム弾性体本体13、14自体もねじり変形することになる。つまり、本実施形態のスタビライザブッシュ10は、ゴム弾性体本体13、14のねじり剛性を有効に利用して、アンチロール力を発揮している。さらに、ゴム弾性体本体13、14のねじり特性を線形とすることができる。つまり、スタビライザバー20の線形ねじり特性とゴム弾性体本体13、14の線形ねじり特性により、線形のアンチロール性能を発揮することが可能となる。また、一体金具11をスタビライザバー20と別体とすることで、スタビライザバー20は、円形の径方向断面からなるものを用いることができ、別途加工を施すことなく、低コスト化を図ることができる。
【0036】
さらに、一体金具11の係合部11bとゴム弾性体本体13、14の被係合部13d、14dとは、軸方向にも係合している。従って、ゴム弾性体本体13、14と一体金具11とが軸方向にずれることを防止でき、安定したアンチロール性能を発揮できる。
【0037】
さらに、ゴム弾性体本体13、14の軸方向の開口両端部に位置する円形内周面部13c、14cは、一体金具11の外周面に全周に亘って当接している。つまり、この円形内周面部13c、14cがシール性能を発揮して、ゴム弾性体本体13、14の内周面への異物の侵入を防止できる。
【0038】
特に、円形内周面部13c、14cは、その径方向断面形状を円形とし、且つ、一体金具11の外周面のうち円形の径方向断面を有する部位に当接している。これにより、円形内周面部13c、14cがスタビライザバー20に対してねじれる場合であっても、全周に亘って、確実に当接状態を維持でき、シール性能を向上できる。
【0039】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態のスタビライザブッシュ100について、図8を参照して説明する。図8は、第二実施形態のスタビライザブッシュ100を車両に組み付けた状態の軸方向から見た図である。ここで、第二実施形態のスタビライザブッシュ100は、上述した第一実施形態のスタビライザブッシュ10に対して、実質的に、一体金具111が相違する。以下、一体金具111のみについて説明する。なお、第二実施形態のスタビライザブッシュ100において、第一実施形態のスタビライザブッシュ10と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
第一実施形態のスタビライザブッシュ10を構成する一体金具11は、C字型形状とし、一部品とした。第二実施形態のスタビライザブッシュ100を構成する一体金具111は、軸方向に半分に分割した二部品としている。つまり、2つの一体金具111は、スタビライザバー20に取り付けられる際に、軸方向の両端の2か所について、それぞれ周方向の2か所の合計4か所にピンを挿通して溶接する。この場合も、第一実施形態と同様の効果を奏する。第一実施形態に比べて、部品点数が増加するが、組み付けの際に切割部11aを開くことが不要となり、組み付けやすくなる。
【0041】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態のスタビライザブッシュ200について、図9を参照して説明する。図9は、第三実施形態のスタビライザブッシュ200を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。図9に示すように、第三実施形態のスタビライザブッシュ200は、第一実施形態のスタビライザブッシュ10に対して、一体金具211と第一のゴム弾性体本体213が相違する。なお、第三実施形態のスタビライザブッシュ200において、第一実施形態のスタビライザブッシュ10と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
一体金具211は、第一実施形態の一体金具11のうちフランジ部11cの径方向外方に突出する部分の一端側のみを取り除いた形状からなる。第一のゴム弾性体213は、内周面のうちフランジ部13bに対応する軸方向位置213cの部分が、スタビライザバー20に全周に亘って直接当接している。この場合も、シール性は第一実施形態と同等となり、その他の効果も同様に奏する。
【0043】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態のスタビライザブッシュ300について、図10を参照して説明する。図10は、第四実施形態のスタビライザブッシュ300を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。図10に示すように、第三実施形態のスタビライザブッシュ300は、第一実施形態のスタビライザブッシュ10を構成する第一のゴム弾性体本体13と第二のゴム弾性体本体14とを一体成形した一体のゴム弾性体本体301を用いている。成形型を適宜変更することで、ゴム弾性体本体301を一体成形することが可能となる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0044】
なお、上記実施形態において、シート状部材12は、ゴム弾性体により形成したが、例えば、上述した摩擦係数の関係を満たすのであれば樹脂とすることも可能である。ただし、組み付け性およびコストの観点から、ゴムシートを適用することが最も良い。また、一体金具11の係合部11bとゴム弾性体13、14の被係合部13d、14dの凹凸を、上記実施形態の逆にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第一実施形態のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】一体金具11をスタビライザバー20に組み付けた状態の軸方向断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】図3のC−C断面図である。
【図6】一体金具11をスタビライザバー20に組み付けた状態の斜視図である。
【図7】ゴム弾性体本体13、14の斜視図である。
【図8】第二実施形態のスタビライザブッシュ100を車両に組み付けた状態の軸方向から見た図である。
【図9】第三実施形態のスタビライザブッシュ200を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。
【図10】第四実施形態のスタビライザブッシュ300を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10、100、200、300:スタビライザブッシュ
11、111、211:一体金具、
11a:切割部、 11b:係合部、 11c、11d:フランジ部
12:シート状部材
13、14、213、301:ゴム弾性体本体
13a:切割部、 13b:第一のフランジ部
13c、213c:第一の円形内周面部、 13d:第一の被係合部
14a:切割部、 14b:第二のフランジ部、 14c:第二の円形内周面部
14d:第二の被係合部
20:スタビライザバー
30:締結部材、 31:U字型形状部、 32:フランジ部
40:車両ボディ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状からなり車両のスタビライザバーを挿通保持すると共に締結部材により外周面を押圧されて車両ボディに固定されるゴム弾性体本体を備えるスタビライザブッシュにおいて、
筒状からなり、内周面を前記スタビライザバーの外周面側に押圧することで前記スタビライザバーに一体的に配置され、且つ、外周面に周方向に凹状または凸状からなる係合部が形成された一体金具を備え、
前記ゴム弾性体本体は、筒状からなり、内周面に前記係合部に対して周方向に係合する凸状または凹状からなる被係合部が形成されたことを特徴とするスタビライザブッシュ。
【請求項2】
前記係合部は、軸方向に凹状または凸状に形成され、
前記被係合部は、前記係合部に対して軸方向に係合する請求項1に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項3】
前記一体金具の内周面と前記スタビライザバーの外周面との間に挟まれて配置され、且つ、前記一体金具との間における摩擦係数および前記スタビライザバーとの間における摩擦係数が、前記一体金具と前記スタビライザバーとの間における摩擦係数より大きな材質からなるシート状部材をさらに備える請求項1または2に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項4】
前記シート状部材は、弾性材料からなる請求項3に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項5】
前記ゴム弾性体本体の内周面のうち軸方向の開口両端部は、前記一体金具の外周面または前記スタビライザバーの外周面に全周に亘って当接している請求項1〜4の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項6】
前記ゴム弾性体本体の前記開口両端部は、前記一体金具または前記スタビライザバーの外周面のうち円形の径方向断面を有する部位に当接し、
前記ゴム弾性体本体の前記開口両端部における径方向断面形状は、円形からなる請求項5に記載のスタビライザブッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−83643(P2009−83643A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255530(P2007−255530)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】