説明

スタンプ部材の製造方法及び製造装置

【課題】波状形状を有するスタンプ部材の経済的な製造を可能にするような、スタンプ部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、第1工程において、ワーク(1)がスタンプ加工ないし微細切削加工され、第1工程と第2工程との間に、前記ワークが搬送され、前記ワーク(1’)は、第2工程において、波状形状が付与されると同時に、「ばり」の除去もなされることを特徴とする、二つの製造工程を備えたスタンプ部材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従うスタンプ部材の製造方法、並びに、特許請求の範囲の請求項4の上位概念に従う前記方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人によるEP0885074B1から、スタンプ部材の製造方法、特には二つの製造工程でディスクを製造する方法、が知られている。その場合、第1工程でワークがスタンプ加工ないし微細切削加工される。微細切削加工は、特殊なスタンプ加工方法であり、それによれば、特別にクリーンな切断面が達成され得る。この微細切削加工については、DE19738635C2に十分に記載されている。ワークのスタンプ加工ないし微細切削加工の際、切断面上に、「ばり」が生じる。これは、取り除かれなければならない。このために、EP0885074B1においては、第2工程が設けられている。当該工程において、「ばり」が打ち抜かれ、平坦化される。微細切削加工工程から(「ばり」の)打抜工程へのワークの搬送は、搬送用クランプ具によって行われる。
【0003】
スタンプ加工によって製造され、自動変速機のディスククラッチやシフト装置として利用されるディスク部材は、その外周に延在する波状形状(Wellung)を有する。当該波状形状は、追加の加工工程によって製造される。EP1128081B1には、波状形状(波状形態)の付与がなされたディスクの製造方法の一種が記載されている。ディスククラッチは、一般に、インナーディスクとアウターディスクとを有しており、その各々は、内側歯または外側歯を有している。アウターディスクが波状形状を有しており、インナーディスクは平坦に形成されている。波状形状の製造は、スタンプ加工の後で、波状形状付与装置において行われる。当該装置は、平坦なディスクに波状形状を形成するのに好適な変形加工装置を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、波状形状を有するスタンプ部材の経済的な製造を可能にするような、スタンプ部材の製造方法を提供することである。また、本発明の課題は、当該方法の経済的な実施を可能にするような、構造において簡単で製造においてコスト有利な装置を提供することである。さらに、本発明の課題は、当該方法による製造品を有利な利用形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、特許請求の範囲の独立請求項1、4及び7によって、解決される。有利な実施の形態は、従属請求項から明らかである。
【0006】
本発明によれば、二つの製造工程を備えた方法において、第2工程が、波状形状の付与と、「ばり」の除去と、の両方の作用を担う。これにより、従来技術においては順次に異なる装置で実施されていた二つの加工工程が、同時に実施され得る。このことは、製造時間を短縮させ、製造コストを低減する。
【0007】
有利な実施の形態によれば、前記「ばり」の除去は、先行する加工が残した「ばり」の打抜加工(Verpraegen)によって行われる。「ばり」は、先行する微細切削加工によってワーク上に生じるものである。この打抜加工は、追加の切削屑を生じないため、クリーンな方法である、という利点がある。
【0008】
また、有利な実施の形態によれば、前記第1工程と前記第2工程、すなわち、微細切削加工工程と打抜/波状形状付与工程は、一つのツール装置行程中に実施される。これにより、製造品の(単位時間あたりの)生産個数が高められる。
【0009】
また、本発明によれば、前記方法の実施のための装置として、二段階ツール装置が考慮される。当該装置は、第1工程として微細切削加工工程を有し、第2工程として打抜/波状形状付与工程を有する。これにより、単一のツール装置上において、スタンプ部材が製造され得る。第1工程から第2工程への搬送は、好適には、搬送装置によって行われる。
【0010】
好適な実施の形態によれば、二段階ツール装置は、下部と上部とを有している。下部と上部とのいずれか一方は、移動可能であって、一行程を実施するようになっている。これにより、二つの工程、すなわち、微細切削加工工程と打抜/波状形状付与工程とが、単一のツール装置行程において行われる、という利点が得られる。これにより、製造品の(単位時間あたりの)生産個数が高められる。また、二つの工程が一つのツール装置に一体化されることによって、ツール装置に関して、相対的に少ない投資コストで済む。
【0011】
本発明によれば、前記方法によって製造されたスタンプ部材が、ディスク部材として利用される。特には、自動車用の自動変速機のディスククラッチまたはシフト装置のディスクとして利用される。このようなディスク部材は、大変高い生産数で製造されるため、前記方法によって達成されるより少ない製造コスト、ないし、前記装置によって達成されるより少ない投資コストは、大変に有利に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】第1工程の後のスタンプ部材の概略図である。
【図1b】第2工程の後のスタンプ部材の概略図である。
【図2】本発明による方法の実施のための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態が、図面に示されており、以下において詳述される。これらの記述及び/または図面から、更なる特徴及び/または利点が明らかにされる。
【0014】
図1a及び図1bは、第1工程の後のワーク1と、第2工程の後のワーク1’と、を示している。本発明による方法は、スタンプ部材の製造に役立つ。特には、自動車用の自動変速機のディスククラッチまたはシフト装置に利用されるような、波状形状が付与されたディスク部材の製造に役立つ。本発明による方法は、二つの製造工程を有している。第1工程は、スタンプ加工工程あるいは微細切削加工工程(スタンプ加工工程の特殊な一例と言える)であり、第2工程は、同時実施される打抜工程及び波状形状付与工程である。ここで、打抜工程は、「ばり」除去の役割を担うものである。
【0015】
図1aは、ワーク1を示しているが、それは、微細切削加工工程の後の平坦なディスクであり、素材材料から外側輪郭(場合によっては、内側輪郭)が切断によって形成されている。この微細切削加工工程の際に、「ばり」が発生する。「ばり」は、符号1aで示されている。
【0016】
図1bは、第2工程の実施後のワーク1’を示している。第2工程において、図1aにおける「ばり」1aが、打ち抜かれて除去される。これにより、軽度に丸められたエッジ部1bが得られる。ワーク1’は、さらに、波状形状を有している。それは、振幅aによって、示されている。振幅aは、波状形状の山から波状形状の谷までの距離である。第1工程と第2工程とは、異なる位置で実施される。すなわち、第1工程の実施後に、ワーク1が、隣りの位置に搬送される。これが、図中に矢印Pで示されている。
【0017】
本発明方法の更なる理解のために、図2において、製造装置2、すなわち、ツール装置2が示されている。当該ツール装置2上で、本発明方法が実施され得る。装置2は、位置固定された(不動の)ツール装置下部2aと、可動のツール装置上部2bと、を備えている。ツール装置上部2bは、支柱3上で案内されて、矢印Hの方向の一行程を実施する。ツール装置2は、第1工程部4a,4bと、第2工程部5a、5bと、の二つの工程部(ステーション)を備えている。それらを、ワーク1、1’が、通過していく。第1工程部4a、4bは、微細切削加工部であり、第2工程部5a、5bは、ワーク1’の同時のばり除去部及び波状形状付与部である。微細切削加工部4a、4bから第2工程部5a、5bへのワーク1の搬送は、詳細は不図示の、矢印Tによってのみ暗示された搬送装置によって、行われる。好適には、搬送用クランプ具によって行われる。第1工程(微細切削加工工程)と第2工程(ばり除去工程及び波状形状付与工程)とは、同時に実施される。すなわち、ツール装置上部2bの一行程に伴って、行われる。ツール装置上部2b上に、上方側の各ツール部4b、5bが固定されている。素材材料(不図示)の供給と、完成品1’の取り出しも、同時に行われる。
【0018】
図示されて説明された前記実施の形態から離れて、ツール装置上部が固定されて、ツール装置下部が一行程を実施するべく可動に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 ワーク(スタンプ加工された状態)
1a 「ばり」
1b 「ばり」を除去されたエッジ部
1’ ワーク(波状形状が付与された状態)
2 ツール装置(加工機械)
2a ツール装置下部
2b ツール装置上部
3 支柱
4a 第1工程(下部)
4b 第1工程(上部)
5a 第2工程(下部)
5b 第2工程(上部)
a 波状形状の振幅
P 搬送方向
H 行程方向
T 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程において、ワーク(1)がスタンプ加工ないし微細切削加工され、
第1工程と第2工程との間に、前記ワークが搬送され、
前記ワーク(1’)は、第2工程において、波状形状が付与されると同時に、「ばり」の除去もなされる
ことを特徴とする、二つの製造工程を備えたスタンプ部材の製造方法。
【請求項2】
前記「ばり」の除去は、先行する加工の「ばり」(1a)の打抜加工によって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程と前記第2工程とは、一つの行程(H)中に実施される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
二段階ツール装置(2、2a、2b)を備えており、それによって、前記第1工程は微細切削加工工程(4a、4b)として実施され、前記第2工程は打抜/波状形状付与工程(5a、5b)として実施される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法を実施するための装置。
【請求項5】
前記二段階ツール装置(2)は、前記第1工程(4a、4b)から前記第2工程(5a、5b)へのワークの搬送(T)のための装置を有している
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記二段階ツール装置(2)は、下部(2a)と上部(2b)とを有しており、それらの一方は、ツール装置部に位置固定され、それらの他方は、一行程の実施のために、移動可能に配置されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
自動車用変速機のためのシフト装置のディスクとして、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法によって製造されたスタンプ部材を利用する、利用形態。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−230192(P2011−230192A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101883(P2011−101883)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(592179300)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (56)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】