説明

ステージ組立体、そのようなステージ組立体を含む粒子光学装置、及び、そのような装置において試料を処理する方法

【課題】試料がデュアルビーム粒子光学装置においてより均一に処理されることを可能にするステージ組立体を提供する。
【解決手段】ステージ組立体は、第一軸A1に沿う第一照射ビームEを発生するための第一源と、ビーム交差地点で前記第一軸と交差する第二軸A2に沿う第二照射ビームIを発生するための第二源と、試料を載置し得る試料テーブル21と、基準面に対して垂直なX軸、基準面と平行なY軸、及び、基準面と平行なZ軸と実質的に平行な方向に沿って前記試料テーブルの平行移動をもたらすために配置された一組のアクチュエータとを備え、該一組のアクチュエータは、Z軸と実質的に平行な回転軸RAについての試料テーブル21の回転と、Z軸に対して実質的に垂直なフリップ軸FAについての試料テーブルの回転とをもたらすようさらに配置されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を基準点の近傍に配置するためのステージ組立体に関し、ステージ組立体は、
− 試料を載置し得る試料テーブルと、
− 基準面に対して垂直なX軸、基準面と平行なY軸、及び、基準面と平行なZ軸と実質的に平行な方向に沿って試料テーブルの平行移動をもたらすために配置された一組のアクチュエータとを備え、X軸、Y軸、及び、Z軸は相互に直交し、且つ、基準点を通過する。
【0002】
本発明は、粒子光学装置に関し、粒子光学装置は、
− 第一軸に沿う第一照射ビームを発生するための第一源と、
− ビーム交差地点で第一軸と交差する第二軸に沿う第二照射ビームを発生するための第二源と、
− 冒頭段落に記載されるステージ組立体とを含み、
前記第一軸及び前記第二軸は、ビーム平面を定めることによって、
基準点は、ビーム交差地点であり、基準平面は、ビーム平面である。
【0003】
前段落において言及される第一照射ビーム及び第二照射ビームを、例えば、イオンビーム、電子ビーム、及び、レーザビームで構成される群から選択し得る。
【背景技術】
【0004】
上記の第一段落及び第二段落に示されるステージ組立体及び粒子光学装置は、欧州特許出願第EP1443541A号から既知である。デュアルビームとして一般的に既知のそのような装置では、試料テーブル上に搭載される試料の上で電子顕微鏡技術を遂行するために、電子ビームを用い得るのに対し、試料をミリング(即ち、試料からの材料の表面層の除去)のような特定の処理に晒すために、イオンビームを用い得る。このようにデュアルビームに使用することは、(イオンビームを用いて)そのままの位置で試料を処理し得る単一装置の実現を可能にし、そのような処理の結果を(電子ビームを用いて)そのままの位置で検査し得ることで、もし検査結果がそれが望ましいことを指し示すならば、試料がさらに処理されることを容易に可能にする。このようにして、人は別個の電子顕微鏡とイオンビーム装置との間で試料を前後に輸送しなければならないことを回避し、よって、時間と量力を節約し、装置の外部の環境への露出による試料の汚染の危険性を低減する。
【0005】
例えば、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査型透過電子顕微鏡(STEM)の場合、試料テーブル上に初期的に配置された試料が、電子ビームによって満足に撮像されるよう、(試料の主要表面に対して実質的に垂直な方向に)過大に大きな平均厚みTを有することが露見し得る。そのようなシナリオでは、材料の特定厚さΔTを削ぎ落とすよう、イオンビームに対するX、Yにおける試料(の一部)の走査によって試料を薄くするために、デュアルビームTEM又はSTEM内に存在するイオンビームを用い得る。次に、それが満足に撮像され得るかを決定するために、新しい厚さT=T−ΔTを備える試料(の一部)を電子ビームを用いて監視し得る。もしそうでないならば、イオンビーム等を用いて、試料をさらに薄くし得る。
【0006】
そのような装置と共に用い得る例示的な種類の試料は、シリコンウェーハ(又は、例えば、GaAs結晶のような他の基板)上に製造された半導体装置の小片である。そのような装置における層の厚さ、ゲート構造、相互連結、線寸法、絶縁保全性等を調査するために、小さな小片がウェーハ上の問題の装置から切り取られ、その小片は装置を構成する様々な層を通じた垂直断面を表わしている。満足な撮像を可能にするために、そのような小片は、TEM又はSTEMの試料テーブル上で見られるとき、(電子ビーム軸と平行な方向に)約1nm〜1μmのオーダの微細な厚さを有するべきであるが、電子ビーム軸に対して垂直な著しくより大きな寸法(例えば、〜30×30μm)の主要表面Sを概ね示す。そのような半導体見本とは別に、試料は、生体組織、結晶等の小片でもあり得る。
【0007】
上記の種類の多くの従来技術装置では、電子ビームが第一軸に沿って生成され、Z軸は第一軸と一致するよう固定される。この場合には、Z軸に沿う試料の平行移動は、電子ビームが試料上に正しく集束されることを可能にするのに対し、X軸及び/又はY軸と平行な試料の平行移動は、試料の表面上の異なる地点が電子ビームの焦点に横方向に配置されることを可能にする。これらの同一の自由度も、試料上の所与地点が第二照射ビーム(例えば、イオンビーム)内に配置されることを可能にする(そして、もし第二照射ビームが集束ビーム(例えば、FIB)であるならば、第二照射ビームの焦点内に配置されることも可能にする)。典型的には、試料テーブルは、Z軸に対して垂直な取付平面を示すよう具現化され、試料は、この取付平面と実質的に平行な主要平面Sを示すよう取り付けられる。しかしながら、そのような設定における電子ビームはS上に垂直に衝突するが、第二軸に沿って伝播する第二照射ビームは、Sに対する法線に対して角度φで試料上に衝突する(第一軸及び第二軸は平行でないからである)。典型的には、φの値は、約40〜60度のオーダである。イオンミリングプロセスのために、例えば、比較的大きな値のφが有利である。何故ならば、比較的小さな値のφは、試料中に孔を創成する傾向があるのに対し、比較的大きな値のφにあるイオンビーム(即ち、より良好に近似するかすり入射)は、試料に亘ってより多く塗布され、よって、穿孔よりもミリングを促進する。
【0008】
上記の設定におけるイオンは試料上に垂直に衝突しないので、試料に対するそのようなイオンの効果は、必ずしも等方性ではない。結果的に、イオンを備える照射のそのような非等方性は、試料が電子ビームで見られるときに、実質的に不均一な処理結果を生み得る。例えば、ミリング処理において、試料のイオンビームに面する側は、試料の反対側よりも大きな程度に不満足に薄くあり得る。レーザビーム又は電子ビームのような他の種類の第二照射ビームが用いられるとき、類似の考慮が当て嵌まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この問題を軽減することが本発明の目的である。より具体的には、試料がデュアルビーム粒子光学装置においてより均一に処理されることを可能にするステージ組立体を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記及び他の目的は、冒頭段落に示されるようなステージ組立体において達成され、一組のアクチュエータが、さらに、
Z軸と実質的に平行な回転軸についての試料テーブルの回転と、
Z軸に対して実質的に垂直なフリップ軸についての試料テーブルの回転とをもたらすよう配置され、
それによって、フリップ軸自体が、回転軸について回転され得ることを特徴とする。
【0011】
この脈絡における「回転」という用語は、例えば、極めて小さい傾斜というよりも、むしろ実質的な回転を指す。各回転の可能な範囲は、どんな場合でも、例えば、1度よりも大きく、一般的には、より一層大きい(例えば、360度の完全回転まで、10度よりも大きい)。
【0012】
従って、本発明に従った粒子光学装置は、上記の第二冒頭段落に示される構造を有し、終わりから2番目の先行段落に記載されるよう本発明に従ったステージ組立体を含む。
【0013】
前記回転軸についての試料の回転は、(イオン処理のような)試料処理の効果が(回転軸について)回転対称にされることを可能にし、よって、上記に言及された非等方性/不均一性を取り除き、或いは、少なくとも軽減する。回転軸についてのこの角度的な自由度(DOF)と共に、フリップ軸についてもたらされるさらなる角度的なDOFは、試料中の広範囲の特定の結晶向きが、第一及び/又は第二照射ビームに沿って向けられることを可能にする。電子顕微鏡の当業者に普通な用語では、回転軸及びフリップ軸についての角度的なDOFの組み合わせは、試料のα傾斜及びβ傾斜の双方を可能にする。
【0014】
同様に、第四冒頭段落に示されるような方法は、本発明に従って、イオンビームを用いた照射中、試料は、ビーム平面と実質的に平行な回転軸について角度的に変位される。
【0015】
本発明に従ったステージ組立体及び粒子光学装置の具体的な実施態様において、一組のアクチュエータは、X軸と一致する主要軸についてY軸及びZ軸の回転を追加的にもたらし得る。この主要軸についてのY軸及びZ軸の回転は、第一及び/又は第二照射ビームの(試料上への)入射角度が調節されることを可能にする。具体的には、そのビームによって遂行される処理を最適化するよう、主要面S上への第二照射ビーム(例えば、イオンビーム)の入射角度φを今や調節し得る。その上、主要軸についての回転的なDOFは、ユーセントリック座標系の創成を可能にし、ユーセントリック座標系では、試料テーブルの多様なDOFが余り退化しない。非ユーセントリック系では、具体的なDOFにおける試料テーブルの所望の正味運動は、一般的には、組全体の構成素子DOFから成り、よって、試料の活性化及び配置を複雑化する。前記組は、例えば、多様なDOF(所謂コンピュセントリック系)の相互従属性(縮退)を表現するマトリックスから決定され得る。
【0016】
前段落に示されるようなステージ組立体の具体的な実施態様は、
X軸と平行な方向に沿って平行移動され得るサブステージと、
主要軸についてのフレームの回転をもたらすために、サブステージ上に搭載される主要回転組立体と、
フレームを基準とするときに、Y軸と平行な方向に沿うスレッドの平行移動をもたらすために、フレームによって支持されるY組立体と、
フレームを基準とするときに、回転軸についてのプラットフォームの回転をもたらすために、及び/又は、回転軸に沿ったプラットフォームの平行移動をもたらすために、スレッドによって支持されるZ組立体と、
フレームを基準とするときに、前記フリップ軸についての前記試料テーブルの回転をもたらすために、前記プラットフォームによって支持されるフリップ組立体とを含む。
【0017】
本発明者は、そのような構成が、本発明によってもたらされる追加的なDOFが効率的且つ正確に実現されることを可能にすることを見い出した。
【0018】
本明細書を通じた類似の脈絡において、前段落において用いられる「を基準とするとき」という表現は、たとえ内部フレームワーク自体が(上記に言及されるサブステージ及び主要回転組立体のような)外部フレームワークに対して移動可能であり得るとしても、(座標系を定める)軸又は一組の軸が(上記に言及されるフレームのような)内部フレームワークに対して固定される状況に言及するために用いられる。その場合には、内部フレームワークは、外部フレームワークのより大局的な座標系内に、その独自の局所的な座標系を有する。
【0019】
多くの用途のために、回転軸についての試料テーブルの角ストロークは、例えば、約90度〜180度だけであれば十分である。本発明に従ったステージ組立体及び粒子光学装置の具体的な実施態様において、回転軸についての試料テーブルの角ストロークは、実質的に360度以上である。そのような回転は、試料の全ての側が第二照射ビーム(例えば、イオンビーム)に自由自在に向けられることを可能にし、そのビームを用いた処理によって達成し得る結果に関するより大きな自由をもたらす。そのような角ストロークを達成する1つの方法は、もし前段落で言及されるZ組立体が、所与の意味でプラットフォームを回転軸について連続的に回転し得るならば、そのような設定において、試料は、所望であれば、イオン処理の過程において回転軸についての(同様な意味での)数回の回転を行い得る。代替的なシナリオでは、回転軸についての試料の角ストロークは、ちょうど360度未満であり、そのような設定では、試料はある意味でそのストロークの終点まで回転されることができ、次に、反対の意味でそのストロークの始点まで戻るよう回転されることができ、イオン処理(異なる第二照射ビームの場合には他の処理)の過程において所望にこの前後回転を反復し得る。
【0020】
上記に示されたようなステージ組立体及び粒子光学装置の具体的な実施態様において、フリップ軸についての試料テーブルの角ストロークは、実質的に360度以上である。もしフリップ軸が(回転軸についてのステージ組立体の適切な角度調節によって)主要軸と平行であるように配置され、第二照射ビームがイオンビームとして具現されるならば、そのような角ストロークは、ステージ組立体が一種の「イオン旋盤」として使用されることを可能にする。そのような設定において、人は、フリップ軸についての特定の円筒形/円錐形プロファイルを有することが求められるチップ(tip)及びプローブのような多様な精密アイテムを製造し得る。同様な方法で、レーザビームを第二照射ビームとして用いることで、人は「レーザ旋盤」を実現し得る。ここに記載されるような実質的に360度以上の角ストロークは、前段落において言及されるものと類似の方法で実現され得る(しかしながら、今やZ組立体よりもむしろフリップ組立体を今や含む)。
【0021】
上記に記載された資料テーブルに加え、本発明に従ったステージ組立体は、(試料テーブルとは異なる)1つ又はそれよりも多くの追加的な試料キャリアも含み得る。例えば、ステージ組立体は、さらに検査されるべき(ウェーハの断面部分のような)バルク試料の一部を保持/位置決め/操作するための上記されたような試料テーブルに加え、(半導体ウェーハ全体若しくはその実質的部分、GaAs結晶、又は、薄膜ヘッド用の基板として使用されるフェライトの塊等)バルク試料を保持/位置決め/操作するための試料キャリアを有し得る。試料テーブル及び試料キャリアを、例えば、スライダ又は回転ラックのような交換機構の上に搭載することができ、交換機構はそれぞれが基準点(第一軸及び第二軸のビーム交差点)の近傍に配置されることを可能にする。本発明に従った粒子光学装置に用いられるとき、試料テーブル上で検査されるバルク試料の一部は、望ましければ、装置内に存在する第二照射ビーム(例えば、イオンビーム又はレーザビーム)を用いてバルク試料から切断され得る。
【0022】
前数段落は、イオンビームの使用に数度言及している。この脈絡において、材料除去を含むイオン処理に加え、イオンビームと試料との間の界面に存在するイオンビームと(意図的に導入された)気相物質との間の相互作用を介した試料上への物質の堆積のような、材料増大を含むイオン処理も着想し得ることは述べるに値する。そのようなシナリオでは、回転軸について本発明によってもたらされる余分な角度的なDOFは、例えば、試料の露出表面に亘る不均一な厚さでの材料の堆積を防止するのを助ける。
【0023】
同様に、(例えば、レーザアブレーションを介して)試料から材料を除去し、或いは、試料上へのレーザ補助堆積を遂行するために、レーザビームを用い得る。
【0024】
本発明及びその付随的な利点は、例示的な実施態様及び添付の概略的な図面に基づいてさらに解明されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面中、対応する機能は、対応する参照符号によって指し示されている。
【0026】
実施態様1
図1は、本発明に従った粒子光学装置1及びステージ組立体3の実施態様の一部の立面図を示している。図面中、ステージ組立体3は、以下の構成要素から成っている。
− X軸と平行な方向dに沿って前後に平行移動され得るサブステージ5。
− X軸と平行な主軸PAについてのフレーム9の回転をもたらすために、サブステージ5上に取り付けられる主要回転組立体7。
− フレーム9を基準とするときに、Y軸と平行な方向dに沿うスレッドの前後方向の平行移動をもたらすために、フレーム9によって支持されるY組立体11。
− 回転軸RAについてのプラットフォーム17の回転をもたらし、且つ、その回転軸RAに沿ったプラットフォーム17の平行移動をもたらすために、スレッド13によって支持されるZ組立体15。フレーム9を基準とするときに、回転軸RAはZ軸と平行である。
− フリップ軸FAについての試料テーブルの回転をもたらすためにプラットフォーム17によって支持されるフリップ組立体19。フリップ軸FAは、フレーム9を基準とするときに、Z軸に対して垂直であり、Z組立体15の回転機能性の故に、回転軸RAについてそれ自体が回転される得る。
【0027】
前段落において参照されたX軸、Y軸、及び、Z軸は、相互に直交し、基準点cに共通の源を有する。描写されている実施態様において、X軸は主軸PAと一致し、固定されている。他方、Y軸及びZ軸は、フレーム9に対して基準とされ、よって、フレーム9が主要回転組立体によって主軸PAについて角度的に変位するときに、フレーム9と共に回転する。例えば、もしフレーム9が、X軸と平行に延びる平面9bを備える平面部分9aを含み且つY組立体11を支持するならば、Y軸はこの平面9bと平行に延び、Z軸は、主軸PAについての平面部分9aの回転向きに拘わらず、この平面9bに対して垂直に延びる。主軸PAについて回転され得るそのような座標系は、当該技術分野においてユーセントリック座標系と呼ばれる。
【0028】
基準点cは、第一軸A1及び第二軸A2(図2を参照)の交差点も形成し、その両方はビーム平面BP(図2の図面の平面)内に位置し、そのビーム平面BPは主軸PAに対して垂直である。第一軸A1及び第二軸A2は、地点cについて角度θだけ相互に変位している。例えば、電子ビームE(第一照射ビーム)は第一軸A1に沿って方向付けられ、イオンビームI(第二照射ビーム)は第二軸A2に沿って方向付けられ得る。これらのビームE及びIは、当該技術分野において既知の粒子源及び粒子光学を用いて生成される(よって、ここでは描写されない)。ビームE及びIの双方とも地点cに収束され得る。試料テーブル21をビームの焦点cに対して出入れ移動するために、Z組立体15を用い得る。
【0029】
ステージ組立体3の具体的な実施態様において、例えば、サブステージ5及びY組立体11の直線ストロークは、約100mmのオーダ(即ち、第一軸A1に対して±50mm)であり、Z組立体15の直線ストロークは、約10mmのオーダ(試料テーブル21が主軸PAのレベルに対して±5mm変位されることを許容する)であり、主要回転組立体7の回転範囲は、少なくともθ(A1及びA2の双方を包含する)であり、Z組立体15の角ストロークは、(回転軸RAについて)180度であり、フリップ組立体19の角ストロークも、(フリップ軸FAについて)180度である。しかしながら、もちろん、これらの範囲の異なる値も選択し得る。
【0030】
上記のユーセントリック系は、試料テーブル21上に載置され且つ試料テーブル21の平面と実質的に平行な主要平面Sを示す試料の場合には、第一軸A又は第二軸AのいずれかによってSで境界を定められる角度を(主要回転組立体7を用いて)調節するよう試料21を操作し得るという利点を有する。
【0031】
図1及び2に描写されるように、フリップ軸FAは主要軸PAと一致している。しかしながら、これは全くの偶然であり、フリップ軸FAは、望ましければ、(Z組立体15を用いた)回転軸PAについてのプラットフォーム17の適切な回転を介して、主要軸PAと角度を定めるようなされ得る。その上、フリップ軸FAは、(Z組立体15を用いた)軸RAに沿った及び/又は(Y組立体11を用いた)方向dに沿ったプラットフォーム17の適切な変位によって主要軸PAから離れて変位され得る。
【0032】
また、図1及び2に描写されるように、回転軸RAは第一軸Aと一致している。しかしながら、これは全くの偶然であり、回転軸RAは、もし望ましければ、(主要回転組立体7を用いた)主要軸PAについてのフレーム9の適切な回転を介して、第一軸Aと角度を定めるようされ得る。その上、回転軸RAは、(サブステージ5を用いた)方向dに沿った及び/又は(Y組立体11を用いた)方向dYに沿ったフレーム9の適切な変位によって、第一軸Aから離れて変位され得る。
【0033】
本発明によれば、イオンビームIを用いた照射中、試料テーブル21を回転軸RAについて回転し得る。これは達成されるべき試料テーブル21上の試料のより均一な/等方性な処理を可能にする。その上、回転軸RAについてのこの角度的な自由度(DOF)と共に、フリップ軸FAについてもたらされるさらなる角度的なDOFが、試料のα傾斜及びβ傾斜の双方を達成/調節し得るよう、第一軸A及び/又は第二軸Aに沿って配向されるべき試料の特定の結晶向きの広い範囲を許容する。
【0034】
実施態様2
本発明に従った粒子光学装置及びステージ組立体の代替的な実施態様は、フレーム9が主要軸PAについて回転され得ない点を除き、実施態様1において上記されたものと同じである。非ユーセントリックであるそのような設定において、回転軸RAは、例えば、第一軸A1と恒久的に平行である。
【0035】
実施態様3
本発明に従った粒子光学装置及びステージ組立体の他の実施態様は、ステージ組立体3がスレッド13上に設けられた追加的構造3’を組み込む点を除き、実施態様1において上記されたものと同じである。図1及び2中の試料テーブルは顕微鏡寸法(例えば、30×30×0.1μm)の顕微鏡的寸法の非常に小さい試料を保持することが意図されているのに対し、追加的な構造内に構成される試料キャリア21Bは、(例えば、直径100mm及び厚さ1.2mmの)半導体ウェーハ全体(の実質的部分)のようなバルク試料を保持することが意図されている。このために、構造3’は、バルク回転軸25についての試料キャリア21Bの回転をもたらすために、及び/又は、バルク回転軸25に沿った試料キャリア21Bの平行移動をもたらすために、スレッド13によって支持されたバルクZ組立体15Bを含む。バルク回転軸25は、回転軸RAと平行であり、そこから一定距離にある。この場合のY組立体11のストロークは、バルク回転軸25が第一軸Aと一致させるのに十分である。ユーセントリック系の場合には、第二軸Aと平行とされるよう、バルク回転軸25も傾斜され得る。
【0036】
半導体ウェーハ(の実質的部分)のようなバルク試料23を試料キャリア21B上に搭載し得る。試料キャリア21Bをバルク回転軸25について角度的に調節し得るという事実は、バルク試料23の向きが調節されることを可能にする。例えば、バルク試料を試料キャリア21Bと交換するために用いられるハンドラーロボットが内在的な配置誤差を有するならば、これは利点であり得る。バルク試料23が試料キャリア21B上に搭載された後、バルク試料23を検査のために電子ビームEの下に移動するために、Y組立体を調節し得る。興味の特定領域が(サブステージ5、Y組立体11、及び/又は、バルクZ組立体15Bに対する適切な調節後)電子ビームを用いてバルク試料23上に配置されるや否や、一片のサブステージ5はそのままの位置で除去され、試料テーブル21に移動され得る。その場合には、それは(もし必要であるならば)イオンビームIで処理され、さらに、電子ビームEで検査され得る。そのような原位置除去及び移動に適した技法は、従来技術において既知である。例えば、上記に言及された欧州公報番号第EP1443541号を参照。
【0037】
実施態様4
本発明に従った粒子光学装置及びステージ組立体のさらなる実施態様は、フリップ軸FAについての試料テーブル21の角ストロークが実質的に360度以上である点を除き、実施態様1乃至3のいずれかにおいて上記されたものと同じである。もしフリップ軸FAが(回転軸RAについての試料テーブル21の適切な角度調節によって)主要軸PAと平行であるよう配置されるならば、そのような角ストロークは、試料テーブル21が一種の「イオン旋盤」として用いられることを可能にし、それによって、試料テーブル21は、イオンビームIによる処理中、フリップ軸FAについて回転される(そして、所望であれば、サブステージ5の補助を得てフリップ軸FAに沿って平行移動もされる)。
【0038】
実施態様5
本発明に従った粒子光学装置の他の実施態様は、イオンビームI(第二照射ビーム)がレーザビームによって置換されている点を除き、実施態様1乃至4のいずれかにおいて上記されたものと同じである。代替的に、電子ビームE(第一照射ビーム)はイオンビーム又はレーザビームと置換され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従ったステージ組立体及び粒子光学装置の実施態様の一部を示す立面図である。
【図2】図1中の矢印2の方向に沿って見られた、図1の主題を示す端面図である。
【図3】補助的な試料キャリアを特色とする、図2の変形を示す端面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 粒子光学装置
3 ステージ組立体
5 サブステージ
9 フレーム
9a 平面部分
9b 平面
11 Y組立体
13 スレッド
15 Z組立体
15B バルクZ組立体
19 フリップ組立体
21 試料テーブル
21B 試料キャリア
23 バルク試料
25 バルク回転軸
PA 主要軸
RA 回転軸
FA フリップ軸
S 主要表面
第一軸
第二軸
E 電子ビーム
I イオンビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を基準点の近傍に配置するためのステージ組立体であり、
前記試料を載置し得る試料テーブルと、
基準面に対して垂直なX軸、前記基準面と平行なY軸、及び、前記基準面と平行なZ軸と実質的に平行な方向に沿って前記試料テーブルの平行移動をもたらすために配置された一組のアクチュエータとを備え、前記X軸、前記Y軸、及び、前記Z軸は相互に直交し、且つ、前記基準点を通過するステージ組立体であって、
前記一組のアクチュエータは、
前記Z軸と実質的に平行な回転軸についての前記試料テーブルの回転と、
前記Z軸に対して実質的に垂直なフリップ軸についての前記試料テーブルの回転とをもたらすようさらに配置されることによって、前記フリップ軸自体が、前記回転軸について回転され得ることを特徴とするステージ組立体。
【請求項2】
前記一組のアクチュエータは、前記X軸と一致する主要軸についての前記Y軸及び前記Z軸の回転を追加的にもたらし得る、請求項1に記載のステージ組立体。
【請求項3】
前記X軸と平行な方向に沿って平行移動され得るサブステージと、
前記主要軸についてのフレームの回転をもたらすために、前記サブステージ上に搭載される主要回転組立体と、
前記フレームを基準とするときに、前記Y軸と平行な方向に沿うスレッドの平行移動をもたらすために、前記フレームによって支持されるY組立体と、
前記フレームを基準とするときに、前記回転軸についてのプラットフォームの回転をもたらすために、及び/又は、前記回転軸に沿った前記プラットフォームの平行移動をもたらすために、前記スレッドによって支持されるZ組立体と、
前記フレームを基準とするときに、前記フリップ軸についての前記試料テーブルの回転をもたらすために、前記プラットフォームによって支持されるフリップ組立体とを含む、
請求項2に記載のステージ組立体。
【請求項4】
前記フリップ軸についての前記試料テーブルの角ストロークは、実質的に360度以上である、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のステージ組立体。
【請求項5】
第一軸に沿う第一照射ビームを発生するための第一源と、
ビーム交差地点で前記第一軸と交差する第二軸に沿う第二照射ビームを発生するための第二源と、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のステージ組立体とを含み、
前記第一軸及び前記第二軸は、ビーム平面を定めることによって、
前記基準点は、前記ビーム交差地点であり、前記基準平面は、前記ビーム平面である、
粒子光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−129214(P2007−129214A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286486(P2006−286486)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】