説明

スパシタビン(CNDAC)と、デシタビン及びプロカイン等のDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤との組合せ

本発明の第1の態様は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を含む併用剤に関する。本発明の第2の態様は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を、療法において同時に、逐次に、又は別々に使用するための組合せ製剤として含む医薬製品に関する。本発明の第3の態様は、増殖性疾患を治療する方法に関し、前記方法は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を同時に、逐次に、又は別々に対象に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌及び他の増殖性疾患の治療に適した医薬の組合せ(combination)に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAメチルトランスフェラーゼは、DNA分子中の特定のヌクレオチド塩基へのメチル基の共有結合による付加を促進する酵素の1ファミリーである。既知のDNAメチルトランスフェラーゼはすべて、メチル供与体としてS−アデノシルメチオニン(SAM,S-adenosyl methionine)を使用する。哺乳動物では、活性のあるDNAメチルトランスフェラーゼが4つ確認されており、DNMT1、DNMT2、DNMT3A、及びDNMT3Bと命名されている。
【0003】
DNMT1は、哺乳動物細胞で最も数の多いDNAメチルトランスフェラーゼであり、哺乳動物における重要な維持型メチルトランスフェラーゼであると考えられる。DNMT1は主に哺乳類ゲノム中のヘミメチル化CpGジヌクレオチドをメチル化し、発生において確立されたメチル化パターンの維持を司る。この酵素は約1620のアミノ酸長であり、最初の1100のアミノ酸は制御ドメインを構成し、残りの残基が触媒ドメインを構成する。これらはGly−Lys反復配列によって結合され、両ドメインはDNMT1の触媒機能に必要である。DNMT3は、ヘミメチル化CpG、及び非メチル化CpGを同じ効率でメチル化できるDNAメチルトランスフェラーゼのファミリーの1つである。DNMT3酵素の構造は、制御領域が触媒ドメインに隣接するDNMT1と類似している。
【0004】
最近の研究によって、DNAメチル化とクロマチン構造が分子レベルでどのように連結しているか、またメチル化異常がどのように腫瘍発生と遺伝子性疾患の直接の原因となっているかが明らかとなった。哺乳類の発生におけるDNAメチルトランスフェラーゼの役割、及びDNAメチルトランスフェラーゼが相互作用することが知られているタンパク質のタイプという面でも、DNAメチルトランスフェラーゼに関して新しい情報が数多く明らかとなっている。DNAメチルトランスフェラーゼは、複製後にメチル化パターンをコピーするために単独で作用する酵素ではなく、これまで発見された相互作用のタイプから、転写制御及びクロマチン構造の調整に能動的に関与する、より大型の複合体の構成成分であり得ることが示唆される。これらの知見から、疾病におけるDNAメチル化の無数の役割への理解を深め、これらの欠陥を予防又は修復する新規の治療への発展を促すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
治療レジメンを最適化するために、活性のある医薬品を組み合わせて投与することが多いが、これは当技術分野において十分確立されている。したがって、本発明のねらいは、増殖性疾患、特に癌の治療に大変適した、既知の医薬品の新たな組合せを提供することである。より具体的には、本発明は、ある医薬品を組み合わせて使用することに伴う、驚くべき予想しなかった効果を中心とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の記載
第1の態様において、本発明は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン(「CYC682」又はサパシタビンとしても知られる)、又はその代謝産物を含む組合せを提供する。
【0007】
Qin T et al(2007, 13, Clin. Cancer Res. 4225-4232)は、様々なヒト白血病細胞株でのシタラビンとデシタビンの組合せの効果を開示している。同様に、Kong XB et al(1991, Molecular Pharmacol. 39, 250-257)は、5−アザシチジンがシタラビンに耐性のある細胞株でdCKをアップレギュレーションし、シタラビンのIC50値が12.5〜0.55μMに減少することを示唆している。しかしながら今日まで、他のヌクレオシド代謝産物よりも優れた独特の作用機序を有するサパシタビンと併用するDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の使用に関する教示はない。
【0008】
第2の態様は、本発明の組合せを、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0009】
第3の態様は、増殖性疾患の治療のための薬剤の調製における、本発明による組合せの使用に関する。
【0010】
第4の態様は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を療法において同時に、逐次に、又は別々に使用するための組合せとして含む医薬製品に関する。
【0011】
第5の態様は、増殖性疾患を治療する方法に関し、前記方法は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を同時に、逐次に、又は別々に対象に投与することを含む。
【0012】
第6の態様は、増殖性疾患の治療のための薬剤の調製におけるDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の使用に関し、前記治療は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を同時に、逐次に、又は別々に対象に投与することを含む。
【0013】
第7の態様は、増殖性疾患の治療のための薬剤の調製における、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物の使用に関する。
【0014】
第8の態様は、増殖性疾患の治療のための薬剤の調製におけるDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の使用に関し、前記薬剤は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物との併用療法で使用される。
【0015】
第9の態様は、増殖性疾患の治療のための薬剤の調製における、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物の使用に関し、前記薬剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤との併用療法で使用される。
【0016】
本発明の第10の態様は、増殖性疾患の治療のための上述の組合せに関する。
【0017】
詳細な説明
薬物の組合せの効果は本質的に予測不能であり、一方の薬物が、他方の薬物の効果を部分的に又は完全に阻害する傾向があることが多い。本発明は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンとDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を組み合わせて同時に、別々に、又は逐次に投与しても、この2つの作用物質の間のいかなる有害な相互作用も生じないという驚くべき知見に基づく。このような拮抗的な相互作用が予想に反して全く存在しないということは、臨床応用には決定的に重要である。
【0018】
好ましい一実施形態において、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンとDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を併用すると、各薬物を単独で投与した場合と比較してその効果が高まる。この知見における驚くべき性質は、従来技術に基づく予想からは大きく異なっている。
【0019】
以下に記載の好ましい実施形態は、上述の本発明のすべての態様に適用可能である。
【0020】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシン(I)は、2’−シアノ−2−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンとしても知られ(Hanaoka, K., et al, Int, J. Cancer, 1999:82:226-236; Donehower R, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2000: abstract 764; Burch, PA, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2001: abstract 364)、ヌクレオシドCNDAC、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンの新規の2’−デオキシシチジン代謝拮抗プロドラッグであり、経口投与される。
【0021】
【化1】

【0022】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシン(I)(「CYC682」又はサパシタビンとしても知られる)は、DNA鎖の自発的な切断作用を有するという、ゲムシタビン等の他のヌクレオシド代謝産物に優る独特な作用形態を有し、種々の細胞株、異種移植片及び転移癌モデルで強力な抗腫瘍活性を示す。
【0023】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシン(I)は、固形腫瘍での前臨床データに基づき、経口バイオアベイラビリティがあり、ゲムシタビン(主な市販ヌクレオシド類似体)及び5−FU(広く使用される代謝拮抗薬)に優る改善された活性を有するという点で、いくつもの研究の焦点となってきた。近年、(I)が結腸癌モデルで強い抗癌活性を示すことが研究者らによって報告された。同じモデルで、(I)は、生存を増やし、結腸癌の肝臓への転移の広がりを防ぐ点において、ゲムシタビン又は5−FUよりも優れていることが見出された(Wu M, et al, Cancer Research, 2003:63:2477-2482)。今日まで、種々の癌患者からの第1相データによれば、用量制限毒性として骨髄抑制があるものの、ヒトの(I)に対する耐容性が良好であることが示唆されている。
【0024】
好ましい一実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はシトシン類似体である。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はアザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンから選択されることがより好ましい。
【0025】
アザシチジン(vidaza、5−アザシチジン)及びデシタビン(dacogen、5−アザ−2’−デオキシシチジン)は、以下に記載する最も重要なDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT,DNA methyltransferase)阻害剤である。細胞内では、アザシチジンは酵素リボヌクレオチドレダクターゼによってデシタビンに変換できる。これらのシチジンのピリミジン類似体はRNAとDNAへそれぞれ組み込まれ、DNMTと共有結合複合体を形成し、活性酵素を欠乏させる(Fenaux P, (2005) Nature Clinical Practice, 2, S36-44)。アザシチジンもRNAへ組み込まれ、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAの欠損を引き起こし、最終的にタンパク質合成を阻害する。これらの作用物質は、メチルトランスフェラーゼ阻害とは別に、DNA合成に直接干渉するため、高用量では細胞毒性を示す。
【0026】
非常に好ましい一実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はデシタビンである。
【0027】
デシタビン、すなわち5−アザ−2’−デオキシシチジン(商標Dacogen)は、化合物4−アミノ−1−(2−デオキシ−b−D−エリスロ−ペントフラノシル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オンであり、構造を下に示す。
【0028】
【化2】

【0029】
デシタビンは、骨髄異形成症候群(MDS,myelodysplastic syndromes)の治療に適応であるが、このMDSにはFrench−American−Britishサブタイプすべて(不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、芽球増加を伴う不応性貧血、芽球増加を伴う進行期不応性貧血、及び慢性骨髄単球性白血病)、並びに中間リスク−1(Intermediate−1)、中間リスク−2(Intermediate−2)及び高リスク(High−risk)の国際予後予測スコアリングシステム群のde novo及び二次性のMDSで、以前に治療された及び未治療のものが含まれる。
【0030】
デシタビンは、リン酸化されDNAに直接組み込まれた後にその抗腫瘍効果を発揮するとされている。デシタビンは、DNAメチルトランスフェラーゼを阻害し、DNAの低メチル化、及び細胞の分化又はアポトーシスを引き起こす。腫瘍細胞においてデシタビンが引き起こした低メチル化により、細胞の分化及び増殖の制御に重要な遺伝子の正常機能を回復し得る。急速に分裂する細胞では、デシタビンの細胞毒性は、DNAメチルトランスフェラーゼとDNAへ組み込まれた化合物との間の共有結合の付加体の形成にも帰因し得る。非増殖細胞は、デシタビンに比較的非感受性である。
【0031】
別の非常に好ましい一実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はアザシチジン(商標Vidaza)、化合物4−アミノ−1−β−D−リボフラノシル−s−トリアジン−2(1H)−オンであり、構造を下に示す。
【0032】
【化3】

【0033】
アザシチジンは、抗腫瘍性のピリミジンヌクレオシド類似体であり、骨髄の造血細胞の異常により正常な血液細胞の生産が低下することで起こる疾患である骨髄異形成症候群の数種のサブタイプの治療に使用される。薬剤は癌細胞等の急速に分裂する細胞に対し細胞毒性効果を発揮し、細胞の正しい分化、及び増殖を制御する遺伝子の正常機能の回復を促し得る。
【0034】
アザシチジンは、下記の骨髄異形成症候群のサブタイプの治療に特に適応である。不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(好中球減少症若しくは血小板減少症を伴う場合、又は輸血を必要とする場合)、芽球増加を伴う不応性貧血、芽球増加を伴う進行期不応性貧血及び慢性骨髄単球性白血病。
【0035】
アザシチジンは、DNAの低メチル化、及び骨髄の異常造血細胞に対する直接的な細胞毒性を引き起こすことにより、抗腫瘍効果を発揮するとされている。インビトロにおいてDNAメチル化阻害が最大となるのに必要なアザシチジンの濃度では、DNA合成は大きく抑制されない。低メチル化により、分化又は増殖に重要な遺伝子の機能を回復し得る。アザシチジンの細胞毒性効果により、通常の増殖制御メカニズムに対して非応答性となった癌細胞等の急速に分裂する細胞が死滅する。非増殖細胞は、アザシチジンに比較的非感受性である。
【0036】
別の非常に好ましい一実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、1−(β−D−リボフラノシル)−1,2−ジヒドロピリミジン−2−オン、又は2−ピリミドン−1−β−D−リボシドとしても知られるゼブラリンであり、構造を下に示す。
【0037】
【化4】

【0038】
別の好ましい実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は非ヌクレオシド類似体である。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、プロカインアミド、プロカイン、ヒドララジン、及び((−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG,((-)-epigallocatechin-3-gallate)から選択されることがより好ましい。
【0039】
プロカインアミド(商標Pronestyl, Procan, Procanbid)は、化合物4−アミノ−N−(2−ジエチルアミノエチル)ベンズアミドであり、構造を下に示す。
【0040】
【化5】

【0041】
プロカインアミドは、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を阻害し、CpGアイランドの高度メチル化を解除することで癌細胞中で発現がサイレント化した遺伝子発現を再活性化することが示されている。プロカインアミドは、複製中のDNAメチル化パターンの維持を司ると考えられている哺乳類の酵素、DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1,DNA methyltransferase 1)のヘミメチラーゼ活性を特に阻害する。
【0042】
プロカインは、化合物2−(ジエチルアミン)エチル−4−アミノベンゾエートであり、構造を下に示す。
【0043】
【化6】

【0044】
プロカインは、酵素活性に干渉することによりDNAメチルトランスフェラーゼを阻害すると考えられているDNA脱メチル化剤である。
【0045】
ヒドララジン(Apresoline)は、化合物1−ヒドラジノフタラジンモノハイドロクロライドであり、構造を下に示す。
【0046】
【化7】

【0047】
(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)は下に示す構造を有するカテキン類似体である。
【0048】
【化8】

【0049】
EGCGは、DNMT活性を阻害し、癌細胞中でメチル化により発現がサイレント化した遺伝子を再活性化すると考えられている。
【0050】
別の好ましい実施形態において、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、N−フタリル−1−トリプトファンとしても知られるRG108であり、構造を下に示す。
【0051】
【化9】

【0052】
RG108は、酵素活性に干渉することによりDNAメチルトランスフェラーゼを阻害すると考えられているDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。特に、RG108はDNA脱メチル化によって腫瘍細胞で腫瘍抑制遺伝子発現(p16、SFRP1、分泌Frizzled関連タンパク質−1、及びTIMP−3)を再活性化するとされている。RG108はまたヒト腫瘍細胞株(HCT116、NALM−6)増殖を阻害し、培養中の倍加時間を上昇させる。
【0053】
用語「増殖性疾患」は、細胞周期の制御を必要とするあらゆる疾患、例えば再狭窄及び心筋症等の心血管系障害、糸球体腎炎及び関節リウマチ等の自己免疫疾患、乾癬等の皮膚科疾患、並びにマラリア、気腫、及び脱毛症等の抗炎症性、抗真菌性、及び抗寄生虫性の疾患を含む、広い意味で本明細書で使用される。これらの疾患では、本発明の化合物は、必要に応じて、所望の細胞内でのアポトーシスを誘発、又は静止を維持し得る。
【0054】
増殖性疾患は、癌又は白血病であることが好ましく、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、頭頚部癌、結腸癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、肝癌、肉腫、リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫及び多発性骨髄腫から選択されることが最も好ましい。
【0055】
特に好ましい一実施形態では、増殖性疾患は、血液学的悪性疾患、例えば進行型の白血病又は骨髄異形成症候群(MDS)である。他にも急性骨髄性白血病(AML,acute myelogenous leukemia)、急性リンパ球性白血病(ALL,acute lymphocytic leukemia)、又は慢性リンパ球性白血病(CLL,chronic lymphocytic leukemia)が例として挙げられる。
【0056】
特に好ましい一実施形態では、増殖性疾患は肺癌、リンパ芽球性白血病、及び急性骨髄性白血病から選択される。
【0057】
本明細書において使用される場合、語句「薬剤の調製」には、薬剤の調製のあらゆる段階における本発明の構成成分の使用に加え、本発明の構成成分をこのような薬剤として直接使用することも含む。
【0058】
本明細書において使用される場合、用語「併用療法」は、サパシタビン又はその代謝産物、及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を投与する療法を指すが、投与が同時でない場合、それらが両方とも同じ時間枠内で治療上作用できる時間枠内に逐次に投与する。
【0059】
サパシタビン、又はその代謝産物とDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を併用して同時に、逐次に、又は別々に投与してもよい(投与レジメンの一部として)。
【0060】
本明細書において使用される場合、「同時に」は、2つの作用物質が同時に投与されることを意味し、一方、用語「併用して」は、投与が同時でない場合、それらが両方とも同じ時間枠内で治療上作用できる時間枠内に「逐次に」投与されることを意味する。このように、「逐次に」投与する場合は、1つの作用物質が投与された後5分、10分、又は数時間以内に、別の作用物質を投与でき、最初に投与された作用物質の循環半減期には、それらが両方とも治療上有効な量で同時に存在している。構成成分の投与間の時間遅延は、構成成分の厳密な性質、それらの相互作用、及びそれら各々の半減期により変動するであろう。
【0061】
「併用して」又は「逐次に」とは対照的に、本明細書で「別々に」を使用する場合は、作用物質間の投与の時間差が大きく、すなわち第1に投与された作用物質は、第2の作用物質が投与されたとき、治療上有効な量で血流内に存在しなくてもよいことを意味する。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンに先立ち、逐次に、又は別々に投与される。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンが投与される少なくとも4時間前に投与されることが好ましく、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンが投与される少なくとも72時間前に投与されることがより好ましい。
【0063】
特に好ましい実施形態では、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤に先立って、逐次に、又は別々に投与される。1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が投与される少なくとも1時間前に投与されることが好ましく、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が投与される少なくとも24時間前に投与されることがより好ましい。
【0064】
好ましい一実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、単一の構成成分ごとにそれぞれ治療上有効な量で投与される。言いかえれば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、併用する以外で投与されたとしても、治療上有効となる量で投与される。
【0065】
別の好ましい実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンを、単一の構成成分ごとにそれぞれ治療量以下の量で投与される。言いかえれば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、併用する以外で投与された場合、治療上無効となる量で投与される。
【0066】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、相乗的に相互作用することが好ましい。本明細書において使用される場合、用語「相乗的」は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が併用して使用された場合、2つの構成成分の個々の効果を加えた場合に予想されるよりもより大きな効果を生むことを意味する。相乗的な相互作用により、患者に投与する各構成成分の量を減らすことができるため、化学療法の毒性を減らしながら、同様の治療効果を生ずる及び/又は維持することができ、有利である。したがって、特に好ましい実施形態では、各構成成分を治療量以下の量で投与することができる。
【0067】
代謝産物
本明細書において使用される場合、用語「代謝産物」は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンの代謝によって産生される化学的に修飾された実体を含む。
【0068】
本発明の特に好ましい一実施形態では、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンの代謝産物は、2’−C’−シアノ−2’−ジオキシ−1−β−D−アラビノ−ペントフラノシルシトシン(CNDAC,2'-C'-cyano-2'-dioxy-1-β-D-arabino-pentofuranosyl cytosine)である。
【0069】
非常に好ましい一実施形態では、サパシタビンの代謝産物はCNDACであり、DNAメチルトランスフェラーゼはデシタビンである。この実施形態では、併用する構成成分を同時に、逐次に、又は別々に投与してもよい。構成成分を逐次に、又は別々に投与することが好ましい(例えばCNDAC又はデシタビンで前処置)。
【0070】
別の非常に好ましい一実施形態では、サパシタビンの代謝産物はCNDACであり、DNAメチルトランスフェラーゼはアザシチジンである。この特定の実施形態では、併用する構成成分は、逐次に、又は別々に投与することが好ましく、アザシチジンで前処置することが特に好ましい。
【0071】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、細胞内部で代謝され、活性代謝物CNDAC三リン酸(CNDACTP,CNDAC-triphosphate)となり、このプロセスには、パルミトイル部分の切断とヌクレオシドキナーゼの作用によるCNDACTPに対する活性化の両方が含まれる。
【0072】
塩/エステル
本発明の作用物質は、塩又はエステル、特に薬学的に許容される塩又はエステルとして存在してもよい。
【0073】
本発明の作用物質の薬学的に許容される塩には、適切な酸付加塩か、又はその塩基性塩がある。適切な医薬用塩の総説はBerge et al, J Pharm Sci, 66 1-19 (1977)に見られる。塩は、例えば、鉱酸等の無機強酸、例えば硫酸、リン酸、若しくはハロゲン化水素酸で、炭素原子が1〜4個の非置換の、若しくは(例えば、ハロゲンで)置換されたアルカンカルボン酸等の強有機カルボン酸、例えば酢酸等で、飽和又は不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、若しくはテトラフタル酸で、ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、若しくはクエン酸で、アミノ酸、例えばアスパラギン酸、若しくはグルタミン酸で、安息香酸で、又は非置換の若しくは(例えば、ハロゲンで)置換された(C−C)−アルキルスルホン酸、若しくはアリールスルホン酸等の有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、若しくはp−トルエンスルホン酸等で、形成される。
【0074】
エステルは、エステル化される官能基によって、有機酸、又はアルコール/水酸化物のいずれかを用いて形成される。有機酸には、炭素原子が1〜12個の非置換の、若しくは(例えば、ハロゲンで)置換されたアルカンカルボン酸等のカルボン酸、例えば酢酸等、飽和、若しくは不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸、ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸若しくはクエン酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸、安息香酸、又は非置換の、若しくは(例えば、ハロゲンで)置換された(C−C)−アルキルスルホン酸、若しくはアリールスルホン酸等の有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、若しくはp−トルエンスルホン酸等が含まれる。適切な水酸化物には、無機の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムが含まれる。アルコールには、非置換の又は、例えばハロゲンによって置換されてもよい1〜12個の炭素原子のアルカンアルコールが含まれる。
【0075】
鏡像異性体/互変異性体
本発明はまた、必要な場合には、作用物質の鏡像異性体及び互変異性体をすべて含む。当業者は、光学的性質(1又は複数のキラル炭素原子)、又は互変異性の特徴を有する化合物を認識できるであろう。対応する鏡像異性体及び/又は互変異性体は当技術分野において知られている方法によって単離/調製されてもよい。
【0076】
立体異性体及び幾何異性体
本発明の作用物質のいくつかは立体異性体、及び/又は幾何異性体として存在してもよい。例えばそれらの異性体は、1又は複数の非対称性中心、及び/又は幾何学中心を有し得るため、2つ以上の立体異性形態、及び/又は幾何学的形態で存在し得る。本発明は、これらの阻害剤の個々の立体異性体及び幾何異性体のすべて、及びそれらの混合物の使用を企図する。請求項の中で使用される用語はこれらの形態を包含するが、ただし、前記形態が適切な機能活性を保持するものとする(しかし、必ずしも同じ程度にではない)。
【0077】
本発明はまた、作用物質の適切な同位体変種、又はその薬学的に許容される塩をすべて含む。本発明の作用物質の同位体の変種、又はその薬学的に許容される塩は、少なくとも1つの原子が同じ原子番号であるが、通常自然界で見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子によって置換されたものと定義される。作用物質、及びその薬学的に許容される塩に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素の同位体があり、それぞれH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F、及び36Clである。作用物質のある同位体変種、及びその薬学的に許容される塩、例えば、H、又は14C等の放射性同位元素が組み込まれるものは、薬剤、及び/又は基質の組織分布の研究において有用である。トリチウム、すなわちH、また炭素14、すなわち14Cの同位体は、調製、及び検出が容易であるため特に好ましい。さらに、重水素、すなわちH、等の同位体での置換は、代謝安定性が高いため、ある療法上の利点、例えば、インビボ半減期の増加、又は必要投薬量の減少をもたらし、ある状況下では好ましい場合がある。本発明の作用物質の同位体変種、及びその薬学的に許容される塩は、適切な試薬の適切な同位体変種を使用して、従来の手順で通常調製できる。
【0078】
溶媒和物
本発明はさらに、本発明の作用物質の溶媒和物の形態も含む。特許請求の範囲で使用される用語は、これらの形態を包含する。
【0079】
多形
本発明はさらに、様々な結晶形態、多形形態、及び無水又は含水形態の本発明の作用物質に関する。このような化合物の合成的調製において使用される溶媒からの精製、及び/又は単離方法をわずかに変更することによって、このようないかなる形態の化合物でも単離し得ることは医薬品業界ではよく確立されている。
【0080】
プロドラッグ
本発明は、プロドラッグ形態の本発明の作用物質をさらに含む。このようなプロドラッグは通常、1又は複数の適切な基を修飾した化合物であり、この修飾は、ヒト又は哺乳類の対象への投与において解除され得る。このような解除はこのような対象に本来存在する酵素により通常行われるが、このようなプロドラッグと一緒に第2の作用物質を投与し、インビボで解除できる。そのような修飾には、エステル(例えば、上記のもののうちのいずれか)があり、解除はエステル分解酵素等により行われ得る。このような系は他にもあり、当業者にはよく知られている。
【0081】
投与
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、膣、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、髄腔内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、鼻腔、口腔、又は舌下の経路で投与できるよう適応させてもよい。
【0082】
経口投与では、圧縮錠剤、丸剤、錠剤、ジェル剤(gellule)、ドロップ、及びカプセル剤が特に使用される。これらの組成物は、投与量当たり有効成分を1〜2000mg含むことが好ましく、50〜1000mg含むことがより好ましい。
【0083】
他の投与形態には溶液又は乳剤があり、静脈内、動脈内、髄腔内、皮下、皮内、腹腔内、又は筋肉内に注入され、滅菌溶液、又は滅菌可能な溶液から調製される。本発明の医薬組成物はまた、坐剤、膣坐薬、懸濁剤、乳剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム、ゲル、噴霧剤、溶液又は粉剤の形態でもよい。
【0084】
経皮投与の別の方法は、皮膚用パッチ剤の使用である。例えば、有効成分は、ポリエチレングリコールの水性乳剤からなるクリーム、又は流動パラフィンに組み込むことができる。有効成分は、必要ならば安定剤及び保存剤と一緒に、白色ワックス又は白色軟質パラフィン基材からなる軟膏剤に、1〜10重量%の濃度で組み込むこともできる。
【0085】
注射剤型では、投与量当たり有効成分を、10〜1000mg含んでもよく、10〜500mg含むことが好ましい。
【0086】
組成物は単位投与剤形で、すなわち、単位用量を含む別々の部分、又は単位用量の多重若しくは下位の単位の形で製剤化することができる。
【0087】
特に好ましい実施形態では、本発明の組合せ又は医薬組成物は、静脈内に投与する。
【0088】
投薬量
当業者は、必要以上の実験作業を行わず、対象に投与するための本組成物の1つの適切な投与量を容易に決定することができる。典型的には、医師は個々の患者に最適な実際の投薬量を決定するが、それは使用する特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用期間、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄率、薬剤の組合せ、特定の症状の重症度、並びに個人が受けている療法等の様々な因子に依存する。本明細書で開示されている投薬量は、平均的な事例の代表例である。もちろん、高投薬量範囲又は低投薬量範囲がふさわしい個々の事例も存在し、このような投薬量範囲は本発明の範囲内にある。
【0089】
必要ならば、作用物質は、体重1kg当たり0.1〜30mgの投与量で、例えば体重1kg当たり2〜20mgで投与してもよく、体重1kg当たり0.1〜1mgで投与することがより好ましい。
【0090】
目安として、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンは、医師の指導に従い、体の表面積1m当たり1〜120mgの投薬量で投与することが一般的である。投与は経口投与が好ましい。投与は週5日を4週間、又は週3日を4週間行うことができる。投薬量及び投薬頻度は、患者の全般的な病状、並びに生じた有害な影響、特に造血系、肝臓系、及び腎臓系に生じた影響の重症度に適合させることが一般的である。一日の総投与量は1回で投与してもよく、又は1日に2、3、若しくは4回投与する分割投与でもよい。
【0091】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、一般的には、医師の指導に従い、皮下に又は静脈内に投与する。目安として、デシタビンの推奨用量は、15mg/mであり、8時間毎に3時間かけて持続点滴静注し、これを3日間投与する(デシタビンの医薬品添付文書、Fenaux P. (2005) Nature Clinical Practice, 2, S36-44)。このサイクルを6週間毎に繰り返すことが好ましい。進行型固形腫瘍の患者には、一般的にはデシタビンを20〜30mg/m/日で72時間注入する。目安として、アザシチジンの開始時の推奨投与量は、75mg/mで、皮下又は静脈内に7日間連日投与する。(アザシチジンの医薬品添付文書、Fenaux P. (2005) Nature Clinical Practice, 2, S36-44)。
【0092】
本発明を、実施例を用い、下記の図を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】72時間後のHL60細胞の細胞周期プロファイル、及びアポトーシス誘導における、CNDACと併用したアザシチジンの効果を示すグラフである。(A)HL60細胞を128nMのアザシチジンで24時間処置し、次いで128nMのアザシチジンと133nMのCNDACでさらに48時間処置した。細胞を固定し、DNAをヨウ化プロピジウムで染色した。単一の作用物質の対照も含めた。(B)HL60細胞は128nMのアザシチジンで24時間処置し、次いで128nMのアザシチジンと133nMのCNDACでさらに48時間処置した。細胞を、アポトーシス細胞を検出するアネキシンVとヨウ化プロピジウムで染色し、生細胞を検出した。単一の作用物質の対照も含めた。データは、2つのサンプルの平均であり、少なくとも2回の独立した実験の代表値である。
【図2】96時間後のHL60細胞の細胞周期プロファイル、及びアポトーシス誘導における、CNDACと併用したアザシチジンの効果を示すグラフである。(A)HL60細胞を128nMのアザシチジンで24時間処置し、次いで128nMのアザシチジンと133nMのCNDACでさらに72時間処置した。細胞を固定し、DNAをヨウ化プロピジウムで染色した。単一の作用物質の対照も含めた。(B)HL60細胞は128nMのアザシチジンで24時間処置し、次いで128nMのアザシチジンと133nMのCNDACでさらに72時間処置した。細胞は、アポトーシス細胞を検出するアネキシンVとヨウ化プロピジウムで染色し、生細胞を検出した。単一の作用物質の対照も含めた。データは、2つのサンプルの平均であり、少なくとも2回の独立した実験の代表値である。
【図3】HL60細胞の分子事象における、CNDAC及びアザシチジン単独の、又は併用の効果を示す時間経過を示す図である。HL60細胞は以下のように処置した。(D)のモックはDMSOで処置した。(A)はアザシチジン単独(0.5×IC50、128nM)で処置した。(C)は培地で24時間処置し、次いでCNDAC(1×IC50、133nM)で処置した。(AC)はアザシチジン(128nM)で24時間処置し、次いでCNDAC(133nM)で処置した。サンプルをCNDAC添加後に、様々な時間(指定)で回収した。細胞を溶解し、SDS−PAGEによって分画し、ニトロセルロースに移し、切断PARP(アポトーシスのマーカー)と反応させた。データは、2回の独立した実験の代表値である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
[実施例]
材料及び方法
細胞株と試薬
MV4−11、HL60、及びCEM細胞は ECACC(Salisbury, UK)及びATCCから購入した。細胞は、10%のウシ胎児血清(FCS、fetal calf serum)を含むRPMI1640培地中、5%COで37℃で培養した。細胞は0.2×10〜1×10細胞/mlの密度で維持した。
【0095】
CNDACを、欧州特許第535231号(Sankyo社)に記載の方法に従って調製した。CYC682(サパシタビン)を、欧州特許第536936号(Sankyo社)に記載の方法に従って調製した。デカシタビン(Decacitabine)とアザシチジンをSigma-Aldrich社から購入した。10mMのジメチルスルホキシド(DMSO、dimethyl sulphoxide)で全化合物の保存溶液を調製した。別段の記載のない限り、試薬はすべてSigma社(Poole, UK)から購入した。
【0096】
細胞培養/細胞毒性試験
併用研究を遂行するために、それぞれの化合物の細胞毒性効果を測定した。各化合物の72時間のIC50を確立するために、実験を96ウェルプレートで実施し、MV4−11細胞株とHL60細胞株を、5,000/ウェルの密度で播種し、CCRF−CEM細胞株を、6,000/ウェルの密度で播種した。各細胞株で、各化合物に対する72時間処置のIC50値を、アラマーブルーアッセイで測定した。
【0097】
各薬剤の希釈系列は培地で調製した。播種の2時間後に、各化合物を所望の濃度の2倍で同量添加し、72時間インキュベートした。処置はすべて3回繰り返して実施された。インキュベーションの終わりに、alamar blue(Roche社製, Lewes, UK)の20%の保存液を培地で調製し、同量を各ウェルに添加し、3時間インキュベートした。吸光度を544〜595nmで読み、データを分析し(Excel Fit v4.0)、各化合物のIC50(細胞増殖を50%阻害したときの化合物の濃度)を測定した。
【0098】
その後、CNDACをデシタビン又はアザシチジンと併用して、3つの異なった処置レジメン、つまり、同時、CNDACで前処置後メチルトランスフェラーゼ阻害剤で処置、及びメチルトランスフェラーゼ阻害剤で前処置後CNDACで処置を使用して検査した。
【0099】
Calcusyn併用薬物プロトコル
併用による処置は以下のように評価した。細胞毒性試験は、ある濃度範囲の2つの薬剤で細胞を処置して使用し、Median Effectモデルを使用して分析した(Chou and Talalay, 1984)。細胞毒性試験については、処置は、同時(例えばヌクレオシド類似体+DMTi)、又は、ヌクレオシド類似体で24時間前処置後、両作用物質(ヌクレオシド類似体−DMTi)の72時間の同時処置、及びその逆(DMTi−ヌクレオシド類似体)、のいずれかであった。純粋な逐次処置を浮遊細胞株で実施するのは不可能だった。投薬は、72時間でIC50をおよそのベースとした。
【0100】
MV4−11、HL60、及びCCRF−CEM細胞が96ウェルプレートに付着しないので、ウェルから培地を吸引することは実際的ではなかった。したがって、前処置された化合物は併用実験中に除去されなかった。併用分析においては、各化合物の2倍の希釈系列を使用したが、単一の作用物質の濃度範囲は、化合物のIC50値に及ぶように選択された。CNDAC、デシタビン及びアザシチジンは培地に化合物を添加する前にDMSOに溶解させた。
【0101】
同時処置では、CNDAC、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、又は両方の薬剤の希釈系列を、プレーティング後24時間の細胞に同時に添加し、37℃で72時間放置した。
【0102】
前処置法では、細胞を播種した直後に第1の薬剤を添加し、24時間放置した。その後、第2の薬剤を含んでいる新たな培地を添加し、72時間インキュベートした。各逐次処置の2つの対照では、一方の薬剤処置の代わりに培地を使用した。処置はすべて3回繰り返して実施された。
【0103】
薬剤処置後、各ウェル中の細胞数を、10%alamar blue(Roche社製, Lewes, East Sussex, U.K.)を含む培地でおよそ6時間、細胞をインキュベートすることにより評価し、544〜595nmで吸光度で読んだ。薬剤の相互作用は、市販のソフトウェアパッケージCalcusynを使用して分析したが、このソフトウェアはChouとTalalayのMedian Effectモデルをベースとしている(Chou, T.C. & Talalay, P. (1984) Adv. Enzyme Regul. 22, 27-55. Quantatative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors)。組合せ指数(C.I.,Combination Index)が1である場合は、薬剤の相互作用が相加的であり、C.I.が1より大きい場合は拮抗的、C.I.が1未満のスコアである場合は相乗的であることを示した。C.I.値は以下の通り定義する。1.45〜1.2では、中程度に拮抗的であり、1.2〜1.1ではわずかに拮抗的であり、1.1〜0.9では相加的であり、0.9〜0.85ではわずかに相乗的であり、0.85〜0.7では中程度に相乗的であり、0.7〜0.3では相乗的である。
【0104】
細胞周期分析
細胞の処置は以下の通り行った。単一の作用物質での評価のため、HL60細胞を0.3x106細胞/mlで3回繰り返して培地中に播種し、128nM(0.5×IC50)のアザシチジンのみ、又は133nM(1×IC50)のCNDACのみ、又はDMSOのみで、48時間又は72時間処置し、フローサイトメトリーのために回収した。併用分析のため、細胞をアザシチジンで24時間処置し、次いで、アザシチジンとCNDACでさらに48時間又は72時間処置した。対照として、各薬剤単一の作用物質処置も実施した。インキュベーションの終わりに、細胞をPBSで2度洗浄して回収し、70%のエタノールで固定し、−20℃で貯蔵した。分析に先立って、細胞を1%のBSAを含むPBSで2度洗浄し、次いで、0.1%Triton X-100を含むPBS中で、ヨウ化プロピジウム(50μg/ml)及びリボヌクレアーゼA(50μg/ml)で染色し、細胞周期プロファイルをフローサイトメトリーによって測定した。
【0105】
アネキシンV染色法
HL60細胞は、128nMのアザシチジン(0.5×IC50と等濃度)で24時間前処置し、次いで128nMのアザシチジン及び133nMのCNDAC(1×IC50と等濃度)で48時間又は72時間同時処置した。単一の作用物質処置も対照として実施した。インキュベーション後、細胞を500gで5分間遠心分離し、PBSで2度洗浄し、annexin緩衝液(10mMのHepes、PH7.4、2.5mMのCaCl2、及び140mMのNaCl)で1度洗浄した。細胞を1x10/mlで再懸濁させ、100μlを5mlのチューブに移し、アネキシンV-FITC色素(Beckton Dickinson社製)5μl、及びヨウ化プロピジウム[50mg/ml]10μlで室温、遮光下で10分間インキュベートした。Annexin緩衝液(1ml)を添加し、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。アネキシンV陽性細胞(アポトーシス)は緑色蛍光に基づいて示され、ヨウ化プロピジウム(死滅)陽性細胞は赤色蛍光に基づいて示された。
【0106】
イムノブロット法による細胞溶解物の調製及び分析
細胞をT25−フラスコに0.3x10細胞/mlで播種し、DMSO、又は128nMのアザシチジン(0.5×IC50と等濃度)のいずれかで24時間処置し、次いで、128nMのアザシチジン及び133nMのCNDAC(1×IC50と等濃度)で、さらに24、36、40、48及び72時間、同時処置した。
【0107】
細胞を500gで5分間遠心分離し、氷冷したPBSで1度洗浄し、100μlのリシス緩衝液(50mMのHEPES、PH7.0、20mMのNaCl、1mMのDTT、1×プロテアーゼ阻害剤、10mMのピロリン酸ナトリウム、10mMのNaF、及び1mMのNaV0)で再懸濁した。サンプルをすべて超音波処理で溶解させた(Sanyo soniprep 150で5アンペアの設定で3秒の処理を2回)。BCA分析(Perbio Science社製, Northumberland, U.K.)を使用して、各溶解物のタンパク質濃度を測定した。
【0108】
溶解物(30μg)を、還元剤を含むゲル添加液と混合し、メーカーの指示に従って(Invitrogen社製, Glasgow, UK)、変性電気泳動条件を使用して、10%又は12%のポリアクリルアミドゲル上で分離した。湿式電気泳動転写で、ニトロセルロース膜(Hybond ECL, Amersham社製, Chalfont St.Giles, UK)にタンパク質を移した。膜をponceau Sで染色し、添加量を確認し、0.1%Tween20含有PBS中5%無脂肪ミルク(PBSTM)で1時間ブロッキングした。膜を、一次抗体と一緒に4℃で一晩インキュベートし、PBSTMで希釈した。この研究で使用された抗体は、切断PARP(Becton Dickinson社製)であった。膜をPBSと0.1%のTween20(PBST)で洗浄し、ホースラディシュペルオキシダーゼ標識二次抗体を含むPBSTMで1時間インキュベートした。膜を洗浄し、ECL溶液(Amersham社製)でインキュベートし、X線フィルム(Amersham社製)に曝露した。
【0109】
結果
血液細胞株において併用したCNDACとデシタビン
CNDACを、AML細胞株HL60及びMV4−11、並びにALL細胞株CCRF−CEMにおいて、デシタビンと併用して、3つの異なった処置レジメンを使用して検査した。各薬剤処置での併用指数値を、表1のED50値、ED75値、及びED90値(細胞の50%、75%及び90%が死滅した曲線上の点)について示す。データは、3回の独立した実験の平均である。
【0110】
【表1】

【0111】
CNDACとデシタビンで、検査した3つの細胞株すべてで中程度から強度の相乗効果が生じた。CNDAC前処置とデシタビン前処置は両方ともこの併用において特に有効な処置レジメンだった。これらの結果により、血液細胞株においてCNDACをデシタビンと併用する考えは支持される。
【0112】
血液細胞株において併用したCNDACとアザシチジン
CNDACを、AML細胞株HL60及びMV4−11、並びにALL細胞株CCRF−CEMにおいて、アザシチジンと併用して、3つの異なった処置レジメンを使用して検査した。各薬剤処置での併用指数値を、表2のED50値、ED75値、及びED90値(細胞の50%、75%及び90%が死滅した曲線上の点)について示す。データは、3回の独立した実験の平均である。
【0113】
【表2】

【0114】
CNDACとアザシチジンで、検査した3つの細胞株すべてで中程度から強度の相乗効果が誘導された。アザシチジン前処置により、HL60細胞とCEM細胞で強い相乗効果が生じ、一方、CNDAC前処置により、MV4−11とCEMの細胞で中程度の相乗効果が生じた。これらの結果により、血液細胞株においてCNDACをアザシチジンと併用する考えは支持される。
【0115】
細胞周期分析
図1Aと図2Aに示すように、HL60細胞又はMV4−11細胞を、DMSO、CNDAC、又はアザシチジンで処置した。評価した化合物濃度は、HL60細胞に対してアザシチジンは0.5×IC50=0.13μM、CNDACはIC50=0.13μM、MV4−11細胞に対してCNDACはIC50=0.46μMであった。指定の状況下で処置後に細胞周期プロファイルを分析した。
【0116】
アザシチジン単独での処置では、72時間及び96時間の曝露で、sub−G1期、G2/M期、及びG2/M期以降の細胞の累積が観察された(図1Aと図2A)。CNDAC単独の処置では、48時間でG2/M期の細胞が累積し、sub−G1期の細胞がわずかに誘導された。作用物質を併用すると、48時間で、sub−G1期では細胞はわずかに増加し、他の細胞周期相でほとんど変化はなかった。72時間で、sub−G1期が細胞の45%となり、アザシチジンとCNDACの単一の作用物質処置でそれぞれ9%と7%であったことと比較して、より飛躍的な上昇が見られた。これらのデータをまとめると、併用処置により、どちらかの作用物質単独の場合よりも、より多くの細胞が時間依存的に死滅することが示される。
【0117】
アネキシンV分析
より詳細に細胞死を評価するために、HL60でのアザシチジン及びCNDACの単一の作用物質及び併用処置を、アポトーシスのマーカーであるアネキシンVによって測定した。細胞を合計96時間、アザシチジン(128nM)に曝露した。併用処置では24時間後に、アザシチジンの存在下でCNDAC(133nM)を添加し、さらに72時間処置した。アザシチジンでの単一の作用物質処置により、72時間及び96時間でアポトーシスを起こしている細胞の割合がわずかに上昇した(図1B及び図2B)。CNDAC単独では対照と比較して、48時間又は72時間でもほとんど効果はなかった(図1B及び図2B)。作用物質の併用は、いずれかの作用物質単独(アザシチジン30.5%及びCNDAC16.5%)の場合より大きな効果(66%)を示し、最長となる96時間の全処置の時点で、単一の作用物質と併用の間の差異は最も大きかった(図2B)。
【0118】
ウェスタンブロット実験
細胞周期分析を補完するために、単一の作用物質で、又は併用で処置したHL60細胞を、ある範囲の時点での切断PARP(アポトーシスのマーカー)の誘導について評価した(図3)。
【0119】
HL60細胞を、DMSO、0.13μMのアザシチジン、0.13μMのCNDAC、又は両方の作用物質(AC)で処置した。アザシチジン又はDMSOで24時間前処置し、次いで、CNDAC、又はDMSOを指定時間添加する計画であった。48時間〜96時間の全処置時間後に細胞を回収した。得られた溶解物(20μg)を12%のアクリルアミドBis-Trisゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移し、図3に示す抗体に反応させた。アザシチジン単独での処置により、早い時点で切断PARPがわずかに誘導されることが示された。切断PARPは併用処置でも観察された。後の時点では、CNDACも、切断PARPを誘導した。併用処置は、いずれかの作用物質単独の場合より、切断PARPに対して大きな効果を示した。結果により、CNDACとアザシチジンの併用はアポトーシスを引き起こすが、Bcl−2ファミリータンパク質を変調しないことが示された。
【0120】
本発明の様々な変更及び改変は、本発明の範囲及び精神を逸脱せずに、当業者に明らかとなるであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態と関連して説明してきたが、特許請求される本発明は、こうした特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明を実施するために説明された態様の様々な変更は、関連分野の技術者には明らかであり、本発明によって包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を含む組合せ。
【請求項2】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がシトシン類似体である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンから選択される、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がデシタビンである、請求項3に記載の組合せ。
【請求項5】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が非ヌクレオシド類似体である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、プロカインアミド、プロカイン、ヒドララジン、及び(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)から選択される、請求項5に記載の組合せ。
【請求項7】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がRG108である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項8】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンの代謝産物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである、請求項1〜7のいずれかに記載の組合せ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の組合せ、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
増殖性疾患の治療のための薬剤の調製における、請求項1〜8のいずれかに記載の組合せの使用。
【請求項11】
増殖性疾患の治療のための、請求項1〜8のいずれかに記載の組合せ。
【請求項12】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を、療法において同時に、逐次に、又は別々に使用するための組合せ製剤として含む医薬品。
【請求項13】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がシトシン類似体である、請求項12に記載の医薬品。
【請求項14】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンから選択される、請求項13に記載の医薬品。
【請求項15】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がデシタビンである、請求項14に記載の医薬品。
【請求項16】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が非ヌクレオシド類似体である、請求項12に記載の医薬品。
【請求項17】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、プロカインアミド、プロカイン、ヒドララジン、及び(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)から選択される、請求項16に記載の医薬品。
【請求項18】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がRG108である、請求項12に記載の医薬品。
【請求項19】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンの代謝産物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである、請求項12〜18のいずれかに記載の医薬品。
【請求項20】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の形態の、請求項12〜19のいずれかに記載の医薬品。
【請求項21】
増殖性疾患の治療で使用される、請求項12〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項22】
増殖性疾患が癌である、請求項10に記載の使用、又は請求項11に記載の組合せ、又は請求項21に記載の医薬品。
【請求項23】
増殖性疾患が、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、頭頚部癌、結腸癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、肝癌、肉腫、リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される、請求項10に記載の使用、又は請求項11に記載の組合せ、又は請求項21に記載の医薬品。
【請求項24】
増殖性疾患が、肺癌、リンパ芽球性白血病、及び急性骨髄性白血病から選択される、請求項10に記載の使用、又は請求項11に記載の組合せ、又は請求項21に記載の医薬品。
【請求項25】
増殖性疾患を治療する方法であって、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物、及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を同時に、逐次に、又は別々に対象に投与することを含む前記方法。
【請求項26】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を対象に投与した後に、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を逐次に、又は別々に前記対象に投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物を対象に投与した後に、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を逐次に、又は別々に前記対象に投与することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がシトシン類似体である、請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がデシタビンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が非ヌクレオシド類似体である、請求項25〜27のいずれかに記載の併用。
【請求項32】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が、プロカインアミド、プロカイン、ヒドララジン、及び(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がRG108である、請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシンの代謝産物が、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンである、請求項25〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物が、単一の構成成分ごとにそれぞれ治療上有効な量で投与される、請求項25〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物が、単一の構成成分ごとにそれぞれ治療量以下の量で投与される、請求項25〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
増殖性疾患が癌である、請求項25〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
増殖性疾患が、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、頭頚部癌、結腸癌、乳癌、腎臓癌、胃癌、肝癌、肉腫、リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
増殖性疾患が、肺癌、リンパ芽球性白血病及び急性骨髄性白血病から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
増殖性疾患の治療のための薬剤の調製におけるDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の使用であって、前記治療が、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物、及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を同時に、逐次に、又は別々に対象に投与することを含む使用。
【請求項41】
増殖性疾患の治療のための薬剤の調製における、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、及び1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物の使用。
【請求項42】
増殖性疾患の治療のための薬剤の調製におけるDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の使用であって、前記薬剤が、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物との併用療法で使用される使用。
【請求項43】
増殖性疾患の治療のための薬剤の調製における、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N4−パルミトイルシトシン、又はその代謝産物の使用であって、前記薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤との併用療法で使用される使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−522814(P2011−522814A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512202(P2011−512202)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001418
【国際公開番号】WO2009/150405
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】