説明

スパッタリング装置及び表示用素子の製造方法

【課題】スパッタリング装置に使用されるシールドが原因となる、異常放電や付着膜の剥がれを低減させたスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】排気可能なスパッタリング室と、該スパッタリング室内に設けられた、ターゲット搭載用のそれぞれ回転可能な複数の支持体と、それぞれの該支持体の複数の面に、互いに離間するように設けられた、複数のカソードと、前記スパッタリング室内で位置決めされた基板の被成膜面の位置に応じて、前記複数の支持体毎に回転させることにより、前記カソードのターゲット搭載面に搭載された前記ターゲットの位置決めをして前記基板に成膜を行うスパッタリング装置のシールドが、前記支持体の前記ターゲットをプラズマクリーニングするために、該ターゲットの表面と平行関係にある構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スパッタリング装置、特に1枚の基板に対し複数のターゲットの同時スパッタリングによって成膜可能で、更に成膜面ではない方向でターゲットのプラズマクリーニングが可能な構造とすることにより、省スペース、高スループット化とコストダウンを図ったスパッタリング装置、及び、このスパッタリング装置を用いた表示用素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なスパッタリング装置では、ターゲットのクリーニングを行う際、基板と対向しない方向に対象とするターゲットを向け、ターゲットが付いているカソードの一部を包囲するシールドとターゲットの間で放電をするというクリーニング方法を行っていた。
【0003】
図4は、従来のスパッタリング装置のスパッタリング室1内の要部を説明するための概略図の一例で、基板12の側面に平行な上方から見た平面図である。この図4に示す従来例は、両面成膜の例であり、スパッタリング室1には、3枚のターゲットを搭載できる6基の支持体20、21、22、20´、21´、22´を備えている。
【0004】
符号10は基板12を保持するトレイ、符号11はゲートバルブである。周知の通り、基板12は、スパッタリング室1を経て、矢印aの方向から搬入搬出される。
【0005】
例えば、支持体20、21、22は、それぞれ、中心軸C20、C21、C22を中心に回転できる構造を持つ支持体である。各々の支持体は、スパッタリング室1内に互いに離間し、トレイ10に搭載される基板12の被成膜面に対向してそれぞれのターゲット搭載面が配設されるように設けられている。各支持体20、21、22は、各3基のカソードを1つの支持体に設けられている。3基のカソードは互いに離間して設けられ、ターゲット搭載面をそれぞれ有している。この構成は、支持体20´、21´、22´についても同様である。
【0006】
ターゲット位置決め機構(不図示)は、ターゲット搭載面にターゲット40、41、42をそれぞれ搭載した各支持体20、21、22をそれぞれ回転させ、1つの支持体が有する複数のターゲットのうち、1枚のターゲットを基板12の被成膜面に対向した成膜位置へ、支持体ごとに、位置決めさせることが可能である。
【0007】
このように、従来のスパッタリング装置の構成によれば、各支持体20、21、22を基板12の被成膜面に対向させて設けてあり、これら支持体には同数の複数のカソード30、31、32が設けられている。1つの支持体の複数あるカソードのターゲット搭載面には、互いに異なる種類のターゲット40、41、42を搭載することができる。各支持体に複数種類のターゲットをそれぞれ搭載する場合には、各種類とも同枚数ずつ、好ましくは同一順序で搭載する。
【0008】
また、この従来のスパッタリング装置は、スパッタリング室1内に設けられていて、支持体20、21、22の周囲の一部分にわたって、この支持体を包囲するとともに、成膜時に基板12と対向されるターゲットに対しては非包囲とするシールド50、51、52(支持体20´、21´、22´に対してはシールド50´、51´、52´)を支持体ごとに備えている。
【0009】
そして、支持体自体を回転可能として構成したため、このようなシールドを設けることにより、実際に基板12に対向していない陰になっている側のターゲット40、41、42に対して、シールド50、51、52とターゲットの間の円弧型をしている裏面放電空間13で、適宜ターゲット表面の予備的なプラズマクリーニング(エイジングやプリスパッタリングとも言う。以下、クリーニングとも言う。)を行い、非エロージョン領域の平坦化、スプラッツの除去、例えばTiターゲットなどの場合におけるターゲット表面に形成された窒化膜の除去などが可能なクリーニング機構を備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-147519号公報
【特許文献2】特開平7-28098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、この従来のスパッタリング装置のクリーニング機構は、図4に表される裏面放電空間13が円弧型のため、シールドとターゲットの間の距離がターゲットの場所ごとに一定にはならず、ターゲットのクリーニングにおいて、一気に高電力を投入すると異常放電が発生しやすくなる。そのため、クリーニングに適当な、目標とする積算電力値を達成するために、放電電力を段階的に上げていかなければならず、不必要な時間と電力の使用やターゲットの製造に利用されない消費等、生産性の低下が生じていた。
【0012】
そして、この従来のスパッタリング装置のクリーニング機構は、裏面放電空間13が円弧型のため、シールドとターゲットの間の距離がターゲットの場所ごとに一定にはならず、シールド端部のシールドとターゲットの間の距離がより短い部分で、放電による熱を、より生じやすくなっていた。これにより、局所的なシールドの変形が起きやすく、シールドの寿命が短くなり、シールドのメンテナンスや新しいシールドとの交換を行わなければならない回数が増え、生産性の低下が生じていた。
【0013】
さらに、この従来のスパッタリング装置のクリーニング機構は、裏面放電空間13が円弧型のため、シールドとターゲットの間の距離がターゲットの場所ごとに一定にはならず、ターゲットのクリーニングを行うと、シールドへの付着膜の膜厚が、シールドとターゲットの間の距離がより短い部分では膜厚がより厚く、シールドとターゲットの間の距離がより長い部分では膜厚がより薄くなる。
【0014】
シールドへの付着膜の膜厚がある程度以上に達する場合、シールドへの付着膜が剥がれ、異常放電等の原因になり、また、応力等でシールドの変形が生じる可能性があるため、このような異常が発生する前に、新しいシールドとの交換をしなければならない。このとき、シールドとターゲットの間の距離がより長い部分で、付着膜の膜厚がより薄く、上記異常の発生の可能性が見受けられない場合も、シールドとターゲットの間の距離がより短く、シールドへの付着膜の膜厚がより厚くなり、上記発生の可能性が見受けられる場合は、シールドの交換が必要となり、生産性の低下が生じていた。
【0015】
そこで、この発明の目的は、ターゲットのクリーニング機構において、シールドの構造を変えることにより、より生産性の高いクリーニング機構を有するスパッタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本願に係わるスパッタリング装置は、排気可能なスパッタリング室と、該スパッタリング室内に設けられた、ターゲット搭載用のそれぞれ回転可能な複数の支持体と、それぞれの該支持体の複数の面に、互いに離間するように設けられた、複数のカソードと、スパッタリング室内で位置決めされた基板の被成膜面の位置に応じて、複数の支持体毎に回転させることにより、前記カソードのターゲット搭載面に搭載された前記ターゲットの位置決めをして基板に成膜を行うスパッタリング装置において、
支持体のターゲットをプラズマクリーニングするために、該ターゲットの表面と平行関係にあるシールドを有する構成をしている。
【発明の効果】
【0017】
この発明のスパッタリング装置によれば、シールドへの膜付着が均等に行われるため、適宜、高電力を投入しても異常放電を起こすことなく安定化し、かつ、シールドの交換周期を長くして生産性を落とすことなく、基板上にスパッタリングする前のターゲット表面の予備的なクリーニング、非エロージョン領域の平坦化及びスプラッツの除去などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明のスパッタリング装置の説明に供する、要部の概略的平面図であって、3個のターゲットを用いて1枚の基板に同時に成膜する構成例を示した図である。
【図2】本願発明のスパッタリング装置のさらに他の構成例の説明に供する、要部の概略的平面図であって、この発明を両面成膜装置に適用した構成例を示す図である。
【図3】本願発明の要部であるスパッタリング装置に備えてあるクリーニング装置の説明に供する概略的な説明図である。
【図4】従来のスパッタリング装置の構成例の説明を示す要部の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して、本願の発明のスパッタリング装置に関する実施の形態について説明するが、これら図において、各構成要件の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、この発明は何らこの発明の好適例に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱することなく多くの変形及び変更が可能である。
【0020】
図1は、この発明におけるスパッタリング装置のスパッタリング室内の主要構成要件である基板と、支持体と、ターゲットと、シールドを主として概略的に示す平面図である。図1に示す構成例では、基板ホルダ17に一枚の基板12が搭載されている。この基板12は、図面の紙面と直交する方向に立てられ、基板ホルダ17に保持されている。基板の被成膜面12aは、通常は平坦面である。
【0021】
この基板12の形状は、矩形型の平行平面板とする。この基板ホルダ15は、矢印のaの方向から、基板12を搭載した状態で、スパッタリング室1内へとゲートバルブ11を介して搬入されて位置決めされている。
この基板12の被成膜面12aに対向して、ターゲット支持用の複数個、ここでは一例として3個の支持体25、26、27が設置されている。この構成例では、この支持体25、26、27を、断面形状が四角形の支持体、例えば対向面が平行平面である矩形体とし、従って、その断面は一例として長方形とする。
【0022】
これら支持体25、26、27は、それぞれ中心軸を回転軸C25、C26、C27として回転し、かつ適当な回転位置のところで停止されて、その停止位置に位置決めできるように形成されている。
この支持体25、26、27の被成膜面12aに対向する側の面25a、26a、27aと、その反対側の対向面25b、26b、27bとがそれぞれターゲット搭載面を構成している。この場合、この支持体25、26、27自体の面上に個別にカソード35a、36a、37a、35b、36b及び37bを設けて、これらカソードの外側面をターゲット搭載面25a、26a、27a、25b、26b及び27bとする。この構成例では、支持体とカソードとを別体とした構成としている。
【0023】
回転軸C25、C26、C27は、被成膜面に対して平行であるとともに、回転軸同士が平行となっている。この支持体25、26、27は、回転軸C25、C26、C27を軸に正逆の両方向に回転できる構造となっている。
中心側にある支持体26の回転軸C26は、基板12の中心に合わせてあり、その両側の支持体25及び27の回転軸C25およびC27は、回転軸C26から等距離のところに位置決めされている。さらに、回転軸C25及びC27は、被成膜面すなわち基板面との間及び互いのターゲット間同士で、成膜に最適な位置関係となるように、位置決めされる。
【0024】
これら各ターゲット搭載面上に対応するターゲットがそれぞれ搭載される。これらターゲットのうち、一方のカソード35a、36a、37aに搭載されるターゲットは、同一種類のターゲットとする。また、他方のカソード35b、36b、37bに搭載されるターゲットは、一方のターゲットとは異なる種類でも同じ種類でも良いが、互いに同一種類であるターゲットとする。
【0025】
中心側にある支持体26は、ターゲット搭載面26a及び26b、すなわちこれらターゲット搭載面に搭載されたターゲットの被スパッタリング面が被成膜面12aに対して平行となるように位置決めされる。同様に、この中心側にある支持体26を中心として両側の周辺側にある支持体25及び27のターゲット搭載面25a、25b及び27a、27bすなわちこれらターゲット搭載面に搭載されたターゲットの被スパッタリング面が被成膜面12aと対向するように位置決めされている。
【0026】
この場合、例えば、周辺側にある支持体25及び27のターゲット搭載面25a及び27aの延長線と被成膜面12aの延長線との交差角を互いに等しい角度α(0°<α<90°)とする。このように、周辺側にあるターゲット搭載面35a、35b及び37a、37bは、中心側にあるターゲット搭載面36a、36bから離れるに従って、被成膜面12aに接近するように、中心側にあるターゲット搭載面に対して傾斜させてある。その結果、周辺側にあるターゲットの被スパッタリング面と被成膜面とが角度αで傾斜(交差)する。
【0027】
支持体25、26、27に対して被成膜面12aと相反する側に、ターゲットのクリーニング用の裏面放電空間13が搭載される。この裏面放電空間13は、ターゲット搭載面25a、26a、27aもしくは25b、26b、27bが被成膜面12aに対して平行であるときに、支持体25、26、27に対して被成膜面12aと相対する側を向いているターゲット搭載面との距離が一定になるようなシールド55、56、57が搭載される。ここで、例えば、距離βは500mmより小さい距離を設定することができる。
【0028】
そのシールド55、56、57には、放電によるシールドの温度上昇を抑制するために、冷却機構14、15、16が搭載される。その冷却機構14、15、16は、冷却媒体を流すことができる機構となっている。
【0029】
このような、支持体25、26、27に対して被成膜面12aと相反する側を向いているターゲット搭載面との距離βが一定のクリーニング機構が搭載されることにより、クリーニングの際、一気に高電力を投入しても異常放電の発生を低減させることができた。
また、支持体25、26、27に対して被成膜面12aと相反する側を向いているターゲット搭載面との距離βが一定のクリーニング機構が搭載されることにより、シールド全体が受ける温度が一定になり、シールドの変形が起きにくく、シールドが高寿命になった。
【0030】
さらに、支持体25、26、27に対して被成膜面12aと相反する側を向いているターゲット搭載面との距離βが一定のクリーニング機構が搭載されることにより、シールド全体に付着する膜の分布が一定になり、シールドが高寿命になった。
そして、シールドに冷却機構14、15、16が搭載されることにより、シールド55、56、57の放電による温度上昇が抑制され、局所的な熱変形に対するシールドの寿命を延ばすことができた。
【0031】
図2は、この発明を両面成膜装置に適用した構成例を説明するための、概略的な平面図である。この場合には、トレイ10の両側に基板12、12`が搭載されていて、両基板12、12`に成膜を行う構成例である。
【0032】
この構成例では、図1に示した各支持体等の他に、これらに追加して、別の支持体等をトレイ10に対し、対称的に、トレイ10の反対側にも設けている。
また、1つの支持体に3つのターゲットが備えている点も図1と異なる。これら対称的新たに設けられている支持体その他の所要の構成要件には、`を付けてそれぞれ示す。これらの追加して設けられた支持体等は、図1で説明した支持体等と同一の構成及び作用(又は機能)を有するので、その重複する詳細な説明は省略する。
【0033】
図2に示す構成例では、同一構成の支持体をトレイ10の各側に3個ずつ備えている。支持体20と20`、21と21`及び22と22`は、それぞれ図1の25、26及び27に対応している。これら支持体は、それぞれほぼ六角柱の形状をしているが、一つ置きに側面が大きく形成されており、それら側面にカソードが設けられている。各支持体は、それぞれ中心軸C20、C21、C22、C20´、C21´、C22´を回転軸として、正逆方向に回転(回動)し、かつ適当な回転位置で停止して、その停止箇所にターゲットを位置決めできるように形成されている。各支持体の中心軸は、既に説明した図1の支持体25、26及び27の中心軸と同様に、被成膜面に平行かつそれぞれの中心軸と平行となっている。
【0034】
これら6個の支持体のうち、中心側及び一方の周辺側にある支持体20及び21につき代表として説明し、残りの支持体の構成及び作用などは、支持体20及び21のいずれかと同様であるので、重複する説明は省略する。
【0035】
支持体20及び21のそれぞれの回転軸をC20及びC21とし、支持体の3つの側面に設けられているカソードを30a、30b、30c及び31a、31b、31cとする。各カソードのターゲット搭載面20a、20b、20c、21a、21b及び21c上には、ターゲット40a、40b、40c、41a、41b及び41cがそれぞれ搭載されている。一つの支持体に対する3個のターゲットは、同一種類のターゲットでも異なる種類のターゲットでも良いとする。支持体同士では、同一の順番位置には同一種類のターゲットを搭載しておく。従って、基板12、12´に対し、同時に同一種類のターゲットが対向する。
【0036】
この図2に示す構成例では、各支持体を回転させて、互いに同一種類の第一のターゲットを基板に対向させて位置決めして成膜を行う。このようにして、同一のスパッタリング室内で、一枚の基板12に、3つの異なる成分の膜を成膜することができる。
【0037】
この図2に示す構成例においても、図1において説明した場合と同様に、成膜時に基板の被成膜面に対向するターゲットの被スパッタリング面、従って支持体のターゲット搭載面は、中心側にある支持体21の場合には、被成膜面12aと平行であり、一方、周辺側にある支持体20では、被成膜面12aに対して角度αで傾斜している。しかしながら、成膜時に基板に対面する全てのターゲットの被スパッタリング面を、この基板面に平行となるようにしても良い。
【0038】
図2に示す構成例でも、図1と同様に、支持体ごとに、支持体に対して被成膜面12aと平行かつ相反する側を向いているターゲット搭載面との距離βが一定となるようなシールド50、51、52、50`、51`、52`をそれぞれ設けてある。これらシールドは、それぞれの支持体の中心軸方向に沿って、上下方向において、カソードやターゲットを実質的に覆うように設けてある。そして、このシールド50、51、52、50`、51`、52`は、支持体の裏側(被成膜面12aと相対する方向)に、しかも、支持体の回転の妨げとならないように設けられている。
【0039】
このシールドは、各シールドにクリーニング機構が設けられている。このクリーニング機構を設けることで、各支持体に、予備的なクリーニングを、他の支持体及び基板への影響を及ぼすことなく実施することができる。
このクリーニング機構は、少なくとも、各ターゲットを搭載するカソードごとに、専用の直流又は高周波電源を有する。さらに、クリーニング機構と相対する方向にカソードが向いたとき、カソード搭載面とクリーニング機構の距離が一定となり、異常放電やシールドの変形を抑えるような構造を備えている。また、このクリーニング機構には、シールドの温度上昇を抑えるような冷却機構が備えてある。これらのクリーニング装置は、設計に応じて任意好適な構成とし得る。
【0040】
図3は、クリーニング機構の一構成例の説明に供する図式的な概略図である。各カソード30a、30b、30Cには、ターゲット搭載面20a、20b、20C及びそれらの上には、ターゲット40a、40b、40Cが配置され、それぞれに個別パワーを印加できる直流又は高周波電源15を設けておく。そして、シールド50の背面にはシールド冷却用の冷却機構14を備えている。また、クリーニング中に、他の部位にターゲット粒子が付着するのを避けるため、遮蔽機構を設けることが望ましい。
【0041】
次に、実際の表示用素子の製造方法について、一例として、本発明のスパッタリング装置を用いる液晶パネルの製造工程を説明する。
液晶パネルの製造工程として、アレイ製造工程及びBM(ブラックマトリックス)製造工程等があるが、主にアレイ製造工程のうち、下記のa、d、eの工程ではスパッタリング装置が使用される。
ここで、アレイ製造工程とは、例えばガラス基板 上にトランジスタや配線を構成し、具体的には、各種薄膜の成膜、洗浄、フォトレジスト塗布、パターン露光、現像、エッチング、レジスト剥離、検査の各工程からなる。
【0042】
この中で成膜は、以下のa→b→c→d→e→fの順番に行われる。
a. ゲート電極 (Mo Al 等)
b. ゲート絶縁膜 (SiNx 等)
c. 半導体層 (a-Si a-Si(n+)P 等)
d. ソース・ドレイン電極 (Mo Al 等)
e. 透明電極 (ITO 等)
f. 保護膜 (SiNx 等)
【0043】
まず、トレイ 10には不図示のクランプ
で基板 12を固定する。
それぞれのカソード は、それぞれ回転して基板側、裏面放電側に向けられる。裏面放電はターゲット
のクリーニングで使用し、例えば、成膜の前に既に行われていることが好ましい。図2に表されるようなカソードの場合、最大3種類の成膜ができるようになっている。また、基板
12は左右に配置されたカソード によって2枚同時に成膜できるようになっている。
【0044】
不図示のトランスファ室 から搬送されたトレイ 10は、スパッタリング室 1内の所定の位置で止まり、不図示のマスク がトレイ 10の枠全体を覆い膜が付かないようにようにする。
【0045】
次にトレイ 10の搬入及びターゲットの位置決めと同時に、スパッタリング室
1内にAr等のスパッタリングガスを添加する。スパッタリング室 1内が所定の真空度になったら、カソード 側に電圧をかけてスパッタ成膜放電をおこなう。
【0046】
成膜終了後、カソード 側の電圧とスパッタリングガスが止められ、その後、トレイ10はスパッタリング室 1から不図示の真空処理室室 等へと搬送される。
【0047】
以上、添付図面を参照して本願の好ましい実施形態、実施例を説明したが、本発明はかかる実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲のおいて種々の形態に変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:スパッタリング室
10:トレイ
11:ゲートバルブ
12:基板
13:裏面放電空間
14:冷却機構
15:直流又は高周波電源
16:クリーニング機構
17:基板ホルダ
20、21、22、20`、21`、22`、25、26、27:支持体
C20、C21、C22、C25、C26、C27:中心軸
20a、20b、20c、21a、21b、21c、22a、22b、22c、25a、25b、25c、26a、26b、26c、27a、27b、27c:カソード搭載面
30a、30b、30c、31a、31b、31c、32a、32b、32c、35a、35b、35c、36a、36b、36c、37a、37b、37c:カソード
40a、40b、40c、41a、41b、41c、42a、42b、42c、45a、45b、45c、46a、46b、46c、47a、47b、47c:ターゲット
50、51、52、50`、51`、52`、55、56、57:シールド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気可能なスパッタリング室と、 該スパッタリング室内に設けられた、ターゲット搭載用のそれぞれ回転可能な複数の支持体と、それぞれの該支持体の複数の面に、互いに離間するように設けられた、複数のカソードと、 前記スパッタリング室内で位置決めされた基板の被成膜面の位置に応じて、前記複数の支持体毎に回転させることにより、前記カソードのターゲット搭載面に搭載された前記ターゲットの位置決めをして前記基板に成膜を行うスパッタリング装置において、前記支持体の前記ターゲットをプラズマクリーニングするために、該ターゲットの表面と平行関係にある表面を有するシールドが配置されることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記シールドに冷媒を流すことができることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記スパッタリング装置を用いた表示用素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32550(P2011−32550A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181290(P2009−181290)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】