説明

スピン洗浄装置

【課題】被洗浄基板へのミストの再付着を確実に防止できるスピン洗浄装置を提供する。
【解決手段】吐出ノズル11の周囲にノズル用排気ダクト12を設ける。スピン部15の基板チャック3の周囲に、排気ダクト8に連通する風路部7を設ける。吐出ノズル11の近傍のミストを、ノズル用排気ダクト12によって瞬時に排出し、スピン部15にてスピンする被洗浄基板Bの周囲へと飛散するミストは、風路部7によって瞬時に排出することで、被洗浄基板Bへのミストの再付着を確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピン部にてスピンされている被洗浄基板に向けて洗浄液を吐出して洗浄するスピン洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体、液晶、あるいはその他の基板などの製造過程において使用される基板用のスピン洗浄装置は、チャンバ内に被洗浄基板が取り付けられる基板チャックが設けられ、この基板チャックがモータにより旋回すなわちスピンされ、この基板チャックの上方に設けられた吐出ノズルから、スピンしている被洗浄基板に向けて吐出された純水、あるいは薬液などの洗浄液により、この被洗浄基板を洗浄する。このとき、洗浄液が被洗浄基板に吐出されて衝突することで発生したミストが被洗浄基板に再付着しないように、基板チャックの下側でミストを吸引する構成(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、チャンバ内に渦流を発生させてチャンバの排気ダクトから外部へと排出する構成(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【特許文献1】特開2006−66501号公報
【特許文献2】特開2004−349376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のスピン洗浄装置では、ミストを排出するための排気風が、被洗浄基板の周囲のみに設けられているため、例えば吐出ノズル近傍のミストなど、被洗浄基板の中心近傍に位置するミストを排出することが容易でなく、このようなミストの再付着を防止することが容易でないという問題点を有している。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被洗浄基板へのミストの再付着を確実に防止できるスピン洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、排気ダクトを備えたチャンバと、載置された被洗浄基板を前記チャンバ内でスピンさせるスピン部と、前記スピン部に載置されてスピンされている被洗浄基板に向けて前記チャンバ内で洗浄液を吐出する吐出ノズルと、ミストを前記チャンバの外部へと排出するミスト排出手段とを具備し、前記ミスト排出手段は、前記吐出ノズルの周囲に設けられたノズル用排気ダクトと、前記スピン部の周囲に設けられ、前記排気ダクトに連通する風路部とを備えているものである。
【0006】
そして、吐出ノズルの周囲にノズル用排気ダクトを設けるとともに、スピン部の周囲に排気ダクトに連通する風路部を設ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出ノズルの近傍のミストは、ノズル用排気ダクトによって瞬時に排出され、スピン部にてスピンされる被洗浄基板の周囲へと飛散するミストは、風路部によって瞬時に排出されるので、被洗浄基板へのミストの再付着を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態のスピン洗浄装置の構成を図1を参照して説明する。
【0009】
図1において、1はスピン洗浄装置を示し、このスピン洗浄装置は、半導体、液晶あるいはその他の基板の製造工程に使用されるものである。
【0010】
そして、このスピン洗浄装置1は、外囲器である中空なチャンバ2を有し、このチャンバ2内に、被洗浄基板Bを保持する基板保持部としての基板チャック3が配設され、この基板チャック3の下部に延設された回転軸部3aが、回転手段としてのモータ4に接続されている。また、チャンバ2内には、基板チャック3の周囲に第1スピンカップとしての内カップ5と、第2スピンカップとしての外カップ6とが配設され、これら内カップ5と外カップ6との間に風路部7が区画され、この風路部7が、チャンバ2内に区画された排気ダクト8に連通されている。さらに、基板チャック3の上方には、純水、あるいは所定の薬液などの洗浄液を被洗浄基板Bへと吐出する吐出ノズル11が配設され、この吐出ノズル11の周囲に、ノズル用排気ダクト12が設けられている。また、チャンバ2の上部には、このチャンバ2内へと外気を取り込む外気取込手段としての吸気ファン13が複数設けられている。
【0011】
基板チャック3は、上面に載置された被洗浄基板Bを保持固定するターンテーブルであり、回転軸部3aを介してモータ4の動力が伝達されることで、被洗浄基板Bを周方向にスピンさせることが可能となっている。したがって、これら基板チャック3とモータ4とにより、スピン部15が構成されている。
【0012】
内カップ5は、略円筒状の内カップ本体5aと、この内カップ本体5a全体の上端部から基板チャック3側である上方中心側へと傾斜状に形成された略円筒状の内カップ傾斜部5bとを一体に備えている。そして、内カップ傾斜部5bの先端部は、基板チャック3に保持された被洗浄基板Bの外周縁部近傍、かつ、この被洗浄基板Bの被洗浄面と略等しい高さ位置に位置している。したがって、基板チャック3上の被洗浄基板Bと内カップ5の内カップ傾斜部5bとの間には、略隙間が形成されない状態となっている。
【0013】
一方、外カップ6は、内カップ5よりも一回り大きく形成され、略円筒状の外カップ本体6aと、この外カップ本体6a全体の上端部から基板チャック3側へある情報中心側へと傾斜状に形成された略円筒状の外カップ傾斜部6bとを一体に備えている。そして、外カップ傾斜部6bの先端部は、内カップ傾斜部5bの先端部よりも上方に離間され、かつ、この内カップ傾斜部5bよりも中心側へと突出している。すなわち、外カップ傾斜部6bの上端部の内径寸法は、内カップ傾斜部5bの内径寸法よりも小さく、基板チャック3に保持された被洗浄基板Bの外周縁部よりも平面視で内側に位置するように構成されている。
【0014】
また、外カップ6は、想像線に示すように、上下動可能に設けられている。ここで、この外カップ6の上下動は、図示しない制御手段により制御されている。この制御手段は、基板チャック3に保持された被洗浄基板Bの回転数を、モータ4の回転数により検出し、この検出した回転数に応じて、外カップ6を上下動させることで、この外カップ6に対して相対的に固定された内カップ5との間に区画された風路部7を広くしたり、狭くしたりして、風路部7内での吸込風の流速を増減させる。
【0015】
排気ダクト8は、外カップ6の外周縁部からチャンバ2の側部へと連続して形成され、図示しない排気手段としての排気ファンなどが内部に設けられている。この排気ファンは、図示しないファン回転モータなどを介して、例えば制御手段によりその回転が制御されている。
【0016】
吐出ノズル11は、洗浄液を貯留する図示しないタンクに基端側が連通接続され、このタンクの近傍に圧送手段としての図示しない圧送ポンプが設けられている。また、この吐出ノズル11の先端には、複数の吐出部11aが放射状に傾斜して設けられている。これら吐出部11aは、揺動可能に設けられ、基板チャック3に保持された被洗浄基板Bの上方にてこの被洗浄基板Bに対向している。そして、圧送ポンプにより、タンク内に貯留された洗浄液が圧送され、吐出部11aから被洗浄基板Bの被洗浄面へと洗浄液が吐出されるように構成されている。
【0017】
ノズル用排気ダクト12は、吐出ノズル11の基端側の周囲を覆いチャンバ2の外部へと連続する筒状のダクト本体12aと、このダクト本体12aの先端側に設けられた拡開部12bとを備えている。
【0018】
ダクト本体12a内には、図示しないノズル用排気手段としてのノズル用排気ファンが内部に設けられている。このノズル用排気ファンは、図示しないノズル用ファン回転モータなどを介して、例えば制御手段によりその回転が制御される。
【0019】
ここで、制御手段は、チャンバ2の内外にそれぞれ設けられた図示しない圧力計により、チャンバ2の内外の圧力を検出しており、これら検出した圧力の差により、吸気ファン13、排気ファンやノズル用排気ファンの駆動を制御して、チャンバ2内の圧力を、外気よりも低い圧力に一定制御する圧力制御手段の機能をも有している。
【0020】
また、拡開部12bは、吐出ノズル11の吐出部11aが位置する部分であり、ダクト本体12aに対して拡開状に形成されて下端部に吸引開口12cが開口され、この吸引開口12cの周囲に、上方へと傾斜した傾斜面12dが形成されている。そして、この傾斜面12dには、吸引開口12cからのミストの被洗浄基板B側への垂れを防止する液垂れ防止手段としての液垂れ防止板12eが、傾斜面12dに対して交差する方向へと突設されている。
【0021】
そして、このノズル用排気ダクト12と風路部7とにより、洗浄液が被洗浄基板Bに衝突して発生したミストをチャンバ2の外部へと排出するミスト排出手段16が構成されている。
【0022】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0023】
まず、被洗浄基板Bを基板チャック3の載置面上に載置し、この基板チャック3に保持した状態で、制御手段からモータ4へと信号を出力して、モータ4を所定の回転数で回転させる。
【0024】
同時に、制御手段からの出力により、吸気ファン13、排気ファンおよびノズル用排気ファンなどを駆動させ、各排気ダクト8,12内を通過する風を形成する。
【0025】
ここで、このモータ4の回転数に応じて、制御手段が外カップ6を上下動させることで、風路部7での風の流速を調整する。
【0026】
また、制御手段は、チャンバ2内の室圧がチャンバ2の外気圧よりも若干低くなるように、各ファンの駆動を制御する。
【0027】
この状態で、制御手段からの信号などにより圧送ポンプを駆動させて、吐出ノズル11の各吐出部11aから、回転している被洗浄基板Bの被洗浄面へと、各吐出部11aを揺動させつつ洗浄液を吐出する。
【0028】
このとき、回転している被洗浄基板Bの洗浄面に衝突した洗浄液の一部は、被洗浄基板Bの洗浄面に対して跳ね返ってミストとなり、被洗浄基板Bの中心近傍のミストは、ノズル用排気ダクト12の吸引開口12cからノズル用排気ダクト12内へと吸い込まれ、このノズル用排気ダクト12を介してチャンバ2の外部へと排出される。また、ノズル用排気ダクト12の内壁に付着して液滴に変化し、この内壁を伝って下側へと移動してきたミストは、液垂れ防止板12eにより堰き止められて吸引開口12cから被洗浄基板B側へと落下しない。
【0029】
さらに、吐出部11aの揺動および被洗浄基板Bの回転により被洗浄基板Bの洗浄面に沿って被洗浄基板Bの外周方向へと飛散するミストは、内カップ6と外カップ7との隙間(クリアランス)から風路部7へと吸い込まれ、排気ダクト8を介してチャンバ2の外部へと排出される。
【0030】
このように、上記一実施の形態によれば、吐出ノズル11の周囲にノズル用排気ダクト12を設けるとともに、スピン部15の基板チャック3の周囲に排気ダクト8に連通する風路部7を設けることにより、被洗浄基板Bの中心近傍のミストは、吐出ノズル11の近傍のノズル用排気ダクト12により瞬時に排出され、スピン部15にてスピンされる被洗浄基板Bの周囲へと飛散するミストは、風路部7により瞬時に排出されるので、被洗浄基板Bへのミストの再付着を確実に防止できる。
【0031】
また、被洗浄基板Bの回転数に応じて、外カップ6の高さを可変させて、風路部7の風路面積を変化させることで、ミストの飛散状況に対応して風路部7からの吸込量を可変させることができ、使い勝手が向上する。
【0032】
具体的には、被洗浄基板Bの回転数が大きくなると、外カップ6の高さを低くして風路部7の風路面積を狭くして風速を増加させることにより、回転数の増大に伴い、被洗浄基板Bの外周側へと、より飛散しやすくなるミストを、風路部7にて確実に吸い込むことができる。
【0033】
さらに、チャンバ2内の室圧を、このチャンバ2の外気圧よりも若干低い圧力に一定制御することにより、チャンバ2からの排気風を効率よく形成し、ミストを、ノズル用排気ダクト12、あるいは風路部7へと、より確実に吸い込んで、このミストを、より円滑に外部へと排出できる。
【0034】
そして、ノズル用排気ダクト12内に、液垂れ防止板12eを設けることにより、ノズル用排気ダクト12の内壁などに付着して液化したミストが、ノズル用排気ダクト12から被洗浄基板Bへと落下することを防止できる。
【0035】
この結果、ミストの再付着による被洗浄基板Bの歩留まりの悪化を防止でき、製造コストの削減なども可能になる。
【0036】
なお、上記一実施の形態において、例えば外カップ傾斜部12bの基端部を、外カップ本体12aに対して回動可能にヒンジなどにより接続し、被洗浄基板Bの回転数に応じて、制御手段などからの信号により外カップ傾斜部12bを外カップ本体12aに対して回動させるなど、被洗浄基板Bの回転数に対応して風路部7の風路面積を可変させる構成は、他の任意の構成とすることが可能である。
【0037】
また、外カップ6は、可動しない構成とすることも可能である。この場合には、スピン洗浄装置1の構成が簡略化する。
【0038】
さらに、制御手段と圧力制御手段とのそれぞれを別個に設ける構成も可能である。
【0039】
同様に、各ファン、圧送ポンプ、モータ4などは、それぞれ別個の制御手段により制御することも可能である。
【0040】
そして、ノズル用排気ダクト12の形状などは、上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態のスピン洗浄装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 スピン洗浄装置
2 チャンバ
5 内カップ
6 外カップ
7 風路部
8 排気ダクト
11 吐出ノズル
12 ノズル用排気ダクト
15 スピン部
16 ミスト排出手段
B 被洗浄基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ダクトを備えたチャンバと、
載置された被洗浄基板を前記チャンバ内でスピンさせるスピン部と、
前記スピン部に載置されてスピンされている被洗浄基板に向けて前記チャンバ内で洗浄液を吐出する吐出ノズルと、
ミストを前記チャンバの外部へと排出するミスト排出手段とを具備し、
前記ミスト排出手段は、
前記吐出ノズルの周囲に設けられたノズル用排気ダクトと、
前記スピン部の周囲に設けられ、前記排気ダクトに連通する風路部とを備えている
ことを特徴としたスピン洗浄装置。
【請求項2】
前記チャンバ内にて前記スピン部の周囲に位置し、上端部が、前記スピン部に載置された被洗浄基板と略等しい高さに位置する内カップと、
前記チャンバ内にて前記内カップの外方に可動的に設けられ、この内カップとの間に、前記風路部を区画する外カップと、
被洗浄基板の洗浄時に前記スピン部による被洗浄基板の回転数に応じて前記外カップを動作させて前記風路部の風路面積を変化させる制御手段と
を具備したことを特徴とした請求項1記載のスピン洗浄装置。
【請求項3】
被洗浄基板の洗浄時に前記チャンバ内の室圧をこのチャンバの外気圧よりも低い圧力に一定制御する圧力制御手段
を具備したことを特徴とした請求項1または2記載のスピン洗浄装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−60107(P2008−60107A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231654(P2006−231654)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】