説明

スリットコート式塗布装置及びスリットコート式塗布方法

【課題】 乾燥ムラやひけ等の発生を防止して基板上に均一な膜厚の塗布膜を形成することができるスリットコート式塗布装置及びスリットコート式塗布方法を提供する。
【解決手段】 基板1を保持する保持テーブル20と保持テーブル20に保持された基板1の表面に相対向するように配置されると共に基板1の表面に向かって所定の塗布溶液2を流出するスリット状のノズル開口31を有する塗布ヘッド30とを具備し、保持テーブル20と塗布ヘッド30とが水平方向で相対的に移動することで基板1の表面に塗布溶液2が塗布されると共に、塗布溶液2が塗布された基板1の表面に向かって乾燥気体を噴射する噴射手段50をさらに具備するようにし、噴射手段50から噴射された乾燥気体によって基板1表面の塗布溶液2を乾燥させ、且つ塗布溶液2を乾燥させた気体を強制排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルの先端から所定の溶液を流出して基板の表面に溶液を均一に塗布するスリットコート式塗布装置及びスリットコート式塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハやガラス基板等の基板にレジスト材料や絶縁材料などの所定の溶液(溶剤)を塗布する塗布装置としては、例えば、毛細管現象によりノズルの先端から溶液を流出させて、基板の表面に溶液を塗布するスリットコート式塗布装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなスリットコート式塗布装置によって基板の表面に全面に亘って溶液を塗布した後は、一般的に、例えば、ホットプレート上にこの基板を配置して塗布した溶液を乾燥させること等によって基板表面に塗布膜を形成している。
【0004】
そして、このようなスリットコート式塗布装置においては、基板に溶液を均一塗布するためには、ゆっくり塗布をおこなう必要があるため、基板に塗布された溶液がその間に徐々に乾燥し、乾燥ムラやひけ等が発生してしまうという問題がある。特に、使用する溶液の粘度が比較的低い材料を用いて薄い膜厚の塗布膜を形成する場合、このような問題が顕著に表れる。そこで、基板表面に乾燥気体を吹き付けて、基板表面を強制的に乾燥させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法のみでは、基板の表面を乾燥させた気体は湿った状態で閉じられた空間に残留することになり、乾燥気体に湿った気体が混ざり所望の湿度以下の乾燥気体を基板表面に供給することが難しい。特に、凹凸や穴のある基板においては、凹凸や穴周辺部での乾燥ムラやひけが顕著に発生するため、基板の表面に乾燥気体を安定して供給できるようにしなければならない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−343908号公報(第1〜2図、第2〜4頁)
【特許文献2】特開2002−110535号公報(第1図、第1〜11頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、乾燥ムラやひけ等の発生を防止して基板上に均一な膜厚の塗布膜を形成することができるスリットコート式塗布装置及びスリットコート式塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、基板を保持する保持テーブルと該保持テーブルに保持された前記基板の表面に相対向するように配置されると共に当該基板の表面に向かって所定の塗布溶液を流出するスリット状のノズル開口を有する塗布ヘッドとを具備し、前記保持テーブルと前記塗布ヘッドとが水平方向で相対的に移動することで前記基板の表面に前記塗布溶液が塗布されると共に、前記塗布溶液が塗布された前記基板の表面に向かって乾燥気体を噴射する噴射手段を具備し、該噴射手段から噴射された乾燥気体によって前記基板表面の塗布溶液を乾燥させ、且つ前記塗布溶液を乾燥させた気体は強制排気されることを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第1の態様では、基板表面の塗布溶液を乾燥させた気体は、再度基板表面に吹き付けられることがないため、基板表面の塗布溶液を良好に乾燥させることができ、基板表面に膜厚の均一な塗布膜を形成することができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記噴射手段がスリット状のノズル開口を有し、当該噴射手段と前記保持テーブルとが水平方向で相対移動することで前記基板表面に塗布された前記塗布溶液を乾燥させることを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第2の態様では、比較的容易且つ良好に塗布溶液を乾燥させることができる。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記保持テーブルが、当該保持テーブルの面方向に延びる支持軸を中心として回転可能に保持されていると共に、前記噴射手段が、前記保持テーブルの前記塗布ヘッドとは反対面側に配置されていることを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第3の態様では、基板表面の塗布溶液を乾燥させる際、噴射手段によって噴射される乾燥気体による塗布ヘッド内の塗布溶液の乾燥が防止される。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記乾燥気体の圧力が0.1MPa以上であることを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第4の態様では、基板表面の塗布溶液を比較的短時間で良好に乾燥させることができ、基板表面に膜厚の均一な塗布膜を形成することができる。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記乾燥気体の相対湿度が20%以下であることを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第5の態様では、塗布溶液を比較的短時間で確実に乾燥させることができる。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記噴射手段が、所定温度に加熱された乾燥気体を前記基板表面に向かって噴射することを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第6の態様では、塗布溶液の乾燥時間を大幅に短縮することができ、且つ塗布膜の均一性も向上する。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記塗布溶液が塗布された前記基板の表面近傍にイオンを供給するイオン供給手段が前記噴射手段に近接して設けられていることを特徴とするスリットコート式塗布装置にある。
かかる第7の態様では、噴射手段から乾燥気体を噴射させる際に、静電気の発生を防止できるため、基板の塗布溶液をさらに良好に乾燥させることができる。
【0014】
本発明の第8の態様は、基板を保持する保持テーブルと該保持テーブルに保持された前記基板の表面に相対向するように配置されると共に当該基板の表面に向かって所定の塗布溶液を流出するスリット状のノズル開口を有する塗布ヘッドとを、水平方向で相対的に移動することで前記基板の表面に前記塗布溶液を塗布する塗布工程と、該塗布工程後に連続して実施され前記塗布溶液が塗布された基板の表面に向かって乾燥気体を吹き付けることにより当該基板表面の塗布溶液を乾燥させる乾燥工程と、前記塗布溶液を乾燥させた後の気体を強制排気する排気工程と、を有することを特徴とするスリットコート式塗布方法にある。
かかる第8の態様では、基板表面の塗布溶液を乾燥させた気体は、再度基板表面に吹き付けられることがないため、基板表面の塗布溶液を良好に乾燥させることができ、基板表面に膜厚の均一な塗布膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るスリットコート式塗布装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、スリットコート式塗布装置の要部断面図である。図1に示すように、スリットコート式塗布装置10は、シリコンウェハ、半導体基板等の基板1が保持される保持テーブル20と、保持テーブル20の基板1側に設けられる塗布ヘッド30と、基板1に塗布する塗布溶液2を塗布ヘッド30に供給する貯留手段40と、乾燥気体を噴射する噴射手段50と、強制的に気体を排気する排気手段(排気装置とも言う)60とを具備する。なお、図示しないが、これら保持テーブル20、塗布ヘッド30、貯留手段40及び噴射手段50等は、所定の封止空間内に配置されており、排気手段60は、詳しくは後述するが、この封止空間内に流れる気体を外部に強制的に排気する。
【0016】
保持テーブル20は、本実施形態では、鉛直方向下側の面に基板1を保持する。すなわち、基板1は、その表面が鉛直方向下向きとなるように保持テーブル20に保持される。この保持テーブル20による基板1の保持方法は、特に限定されず、例えば、真空ポンプ等の吸引による方法が挙げられる。なお、保持テーブル20は、例えば、図示しない駆動モータ等のテーブル駆動手段によって基板1の面方向に沿って直線移動自在に設けられている。
【0017】
また、保持テーブル20は、例えば、その移動方向中央部に設けられる支持軸25に回転可能に保持されている。すなわち、保持テーブル20は、この支持軸25を中心として少なくとも180°回転させて、保持テーブル20を反転させることができるようになっている。
【0018】
塗布ヘッド30は、鉛直方向上側に向かって開口し貯留手段40から供給された塗布溶液2を流出するスリット状のノズル開口31と、このノズル開口31に連通する溶液溜まり部32とを有する。また、塗布ヘッド30は、図示しない装置本体に鉛直方向に移動自在に保持されており、塗布ヘッド30の先端と基板1の表面との間隔が、例えば、塗布溶液2の動粘度、塗布溶液2の基板1に対する濡れ性、基板1に塗布する塗布溶液2の厚さ等を考慮して適宜調整されるようになっている。
【0019】
貯留手段40は、塗布溶液2を保持する貯留タンク41と、一端が塗布ヘッド30に接続され、他端が貯留タンク41に接続される供給管42とで構成され、貯留タンク41の内部に貯留されている塗布溶液2を、供給管42を介して塗布ヘッド30に供給する。
【0020】
この貯留手段40の貯留タンク41から供給管42を介して塗布ヘッド30に塗布溶液2が供給され、塗布ヘッド30の液体溜まり部32内に塗布溶液2が充填されると、液体溜まり部32内の塗布溶液2が毛細管現象によってノズル開口31の先端まで上昇する。これにより、スリット状のノズル開口31には、塗布溶液2が全体に均一に充填されるようになっている。そして、この状態から塗布ヘッド30を上昇させてノズル開口31から突出した塗布溶液2を基板1の表面に接触させ、この状態で、保持テーブル20と塗布ヘッド30とを基板1の面方向において相対的に移動させる。例えば、本実施形態では、塗布ヘッド30を固定して保持テーブル20を基板1の面方向に直線移動させることで、これら塗布ヘッド30と保持テーブル20とを相対的に移動させている。これにより、ノズル開口31から塗布溶液2が連続的に流出し、基板1の表面には塗布溶液2が均一な厚さで塗布される。
【0021】
また、保持テーブル20の塗布ヘッド30とは反対面側には、保持テーブル20の表面に向かって乾燥気体を噴射する噴射手段50が設けられている。噴射手段50は、本実施形態では、鉛直方向下側に向かって開口し、基板1の幅よりも若干広い幅のスリット状のノズル開口51を有する噴射ヘッド52と、この噴射ヘッド52に乾燥気体を供給する乾燥気体供給装置53とからなる。そして、詳しくは後述するが、噴射ヘッド52のノズル開口51から噴射させた乾燥気体を基板1の表面に吹き付けることで、基板1上に塗布された塗布溶液2を乾燥させて塗布膜を形成している。
【0022】
なお、噴射ヘッド52の位置は、特に限定されないが、ノズル開口51から噴射された乾燥気体が塗布ヘッド30のノズル開口31近傍に流れ込まないような位置とすることが望ましい。塗布ヘッド52から噴射された乾燥気体によって塗布ヘッド30内の塗布溶液2が乾燥してしまう虞があるからである。
【0023】
また、噴射手段50のノズル開口51から噴射される乾燥気体としては、反応性がなくクリーンな乾燥気体であればよいが、相対湿度が20%以下であることが好ましい。なお、乾燥気体としては、具体的には、窒素、ドライな清浄エアー等を用いることが好適に考えられるが、ドライな清浄エアーは清浄処理が必要であることから、本実施形態では、窒素を用いている。
【0024】
また、排気手段60は、基板1よりも下側、本実施形態では、保持テーブル20の塗布ヘッド30側に設けられている。この排気手段60は、例えば、ファン等によって基板1の周囲の気体を吸引することで、基板1上の塗布溶液2に吹き付けられた気体を外部に強制的に排出する。これにより、噴射手段50によって噴射される乾燥気体は、基板1の端面で、整流状態で下部に流れていくため、常に乾燥した気体のみが基板1の表面に吹き付けられるようになっている。
【0025】
以下、このようなスリットコート式塗布装置10を用いたスリットコート式塗布方法について詳しく説明する。なお、図3及び図4は、スリットコート式塗布装置の動作を示す概略図である。まず、図3(a)に示すように、保持テーブル20の下面に基板1を固定し、塗布ヘッド30を上昇させて基板1の表面と塗布ヘッド30のノズル開口31の先端面との間隔が所定の間隔となるように調整する。具体的には、ノズル開口31から突出する塗布溶液2の先端部が、基板1の表面の位置よりも若干高い位置となるように塗布ヘッド30を上昇させる。なお、本実施形態では、塗布ヘッド30を移動させることで、塗布ヘッド30と基板1との間隔を調整しているが、勿論、塗布ヘッド30を固定して、保持テーブル20を移動するようにしてもよい。
【0026】
次に、図3(b)に示すように、図示しないテーブル駆動手段によって保持テーブル20を基板1の面方向、すなわち水平方向に直線移動させることで、塗布ヘッド30のノズル開口から突出している塗布溶液2が基板1の表面に接触して塗布溶液2の塗布が開始される。ここで、上述したように、保持テーブル20の移動に伴う基板1の下側の空気の流れが、遮蔽板70によって遮断されている。すなわち、遮蔽板70によって、ノズル開口31の先端から突出している塗布溶液2の乾燥が抑えられているため、保持テーブル20の移動により塗布溶液2が基板1に確実に接触して、基板1への塗布溶液2の塗布が開始される。
【0027】
このように基板1への塗布溶液2の塗布が開始された後、図3(c)に示すように、保持テーブル20をさらに移動させることで、塗布溶液2がノズル開口31から連続的に流出し、基板1の全面に塗布溶液2が塗布される。
【0028】
そして、このように基板1の全面に塗布溶液2を塗布した後は、図4(a)に示すように、基板1を保持した状態で、支持軸25を中心として保持テーブル20を180°回転させる。すなわち、基板1の塗布溶液2が塗布された面が鉛直方向上向きとなるようにする。次に、図4(b)に示すように、噴射ヘッド52から乾燥気体である窒素を噴射させながら、保持テーブルを水平方向に直線往復移動させる。すなわち、噴射ヘッド52のノズル開口51から乾燥気体を噴射させながら保持テーブル20を移動させることによって、基板1全面に乾燥気体を吹き付けて基板1表面の塗布溶液2を乾燥させる。このとき、噴射手段50のノズル開口51から噴射される乾燥気体は、整流となっていることが好ましい。乾燥気体の気流に乱れがあると、塗布溶液2に乾燥ムラ等が生じる虞があるからである。例えば、本実施形態では、基板1の下側に設けられた排気手段60によって基板1の周囲の気体を吸引して強制排気するようにしているため、基板1に吹き付けられる乾燥気体は整流となっている。
【0029】
また、基板1表面の塗布溶液2を乾燥させた気体は、溶剤を含んで湿気を帯びた気体となるが、その気体は、基板1上に残るのではなく、基板1下の排気手段60によって強制排気させられる。そのため、湿った気体が再び基板1表面上に吹き付けられることが無いため、噴射手段50のノズル開口51から噴射される乾燥気体を効率よく基板1表面に吹き付けることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、噴射ヘッド52のノズル開口51から乾燥気体を所定量噴射させた状態で、約1分の間に、保持テーブル20を約20往復させることで、塗布溶液2を乾燥させている。
【0031】
また、基板1表面へ塗布溶液2を塗布した後は、ノズル開口31の塗布溶液2を吐出する部分が乾燥しないようにするために、塗布ヘッド30を図示しない格納部に格納させている。
【0032】
ここで、塗布溶液2の乾燥条件は、適宜決定されればよいが、ノズル開口51から噴射される乾燥気体の風量は、塗布溶液2の表面近傍で17(l/s)〜22(l/s)程度となるようにすることが好ましい。これにより、塗布溶液2が波立つことがなく、塗布膜の膜厚のばらつきを防止することができる。また、乾燥気体は、できるだけ短時間に塗布溶液2の表面に吹き付けることが好ましい。具体的には、ノズル開口51から噴射される乾燥気体の風圧を0.1MPa以上、特に、1MPa程度とするのが望ましい。このため、本実施形態では、コンプレッサ等を用いて風圧を上げ、ドレンにて水分除去するようにすることで、より乾燥効率を上げている。圧縮された乾燥気体は、ノズル開口51から噴射される際、何倍もの容積になり、基板1の表面に接するため、より短時間での乾燥が可能となる。
【0033】
以上説明したように、基板1の表面に塗布溶液2を塗布する塗布工程の後に、噴射手段50によって基板1の表面に乾燥気体を吹き付つけて塗布溶液2を乾燥させる乾燥工程を実施し、更に基板1表面の塗布溶液を乾燥させた後の気体を強制排気する排気工程を行うことで、基板1表面、特に、基板1に設けられた凹凸や穴周辺部での乾燥ムラや、ひけ等が発生することがなく、均一な膜厚の塗布膜を基板1の表面に良好に形成することができる。特に、本発明の塗布装置では、塗布工程と、乾燥工程とを連続して行うことができるため、基板1の表面に塗布溶液2が塗布されてから乾燥されるまでのタイムラグを極めて短くできる上、更に、排気工程を行うため、乾燥ムラやひけ等の発生を確実に防止でき、基板1の表面に均一な膜厚の塗布膜を形成することができる。また、乾燥気体を吹き付けることで基板1上の塗布溶液2を比較的短時間で確実に乾燥させることできるため、例えば、複数層の塗布膜を連続して形成することもできる。
【0034】
なお、本実施形態では、噴射ヘッド52のノズル開口51から常温の乾燥気体を噴射するようにしたが、これに限定されず、ノズル開口51から所定温度に加熱された乾燥気体を噴射させるようにしてもよい。これにより、乾燥時間を短縮することできると共に、基板1の表面に形成される塗布膜の膜厚をさらに均一にすることができる。
【0035】
乾燥気体温度20℃に比べ、同一風速に対して乾燥気体の温度を上げた場合は結果的に短時間での乾燥が可能となる。つまり、80℃で1.3倍、140℃で1.5倍の速度での乾燥ができる。特に、塗布材料の沸点が低ければより顕著にこの効果がでるが、均一性を向上させるためには、主溶剤の沸点よりも低いことが望ましい。
【0036】
また、このように噴射ヘッド52のノズル開口51から乾燥気体を噴射させて塗布溶液2を乾燥させる際、乾燥気体と共にイオンを塗布溶液2の表面に供給するようにしてもよい。例えば、噴射ヘッド52に近接してイオン発生装置、いわゆるイオナイザーを設け、噴射ヘッド52から乾燥気体を噴射する際に、このイオン発生装置によってイオンを発生させるようにしてもよい。これにより、静電気の発生を抑えて、塗布溶液2をさらに良好に乾燥させることできる。
【0037】
さらに、本実施形態では、塗布溶液2の溶剤として、2成分系の溶剤、例えば、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)と乳酸エチルとを含む溶剤を用いているが、これに限定されず、例えば、PGMEAのみからなる単成分の溶剤を用いるようにしてもよい。これにより、基板1に塗布された塗布溶液2の乾燥時間を短縮することができると共に、形成される塗布膜の均一性をさらに向上することができる。
【0038】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、保持テーブル20の塗布ヘッドとは反対面側に噴射手段50を設けるようにしたが、これに限定されず、勿論、保持テーブル20の塗布ヘッド30側に噴射手段を設けるようにしてもよい。但し、この場合には、塗布ヘッド30のノズル開口31部分を覆うなどして、ノズル開口31部分に乾燥気体が流れ込まないようにしておくことが望ましい。乾燥気体によって、ノズル開口31内の塗布溶液2が乾燥してしまう虞があるからである。
【0039】
また、上述の実施形態では、塗布ヘッド30及び噴射ヘッド52を固定し、基板1が保持された保持テーブル20を移動させることで、基板1の表面に塗布溶液2を塗布すると共に塗布された塗布溶液2を乾燥させるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、保持テーブル20を固定して、塗布ヘッド30及び噴射ヘッド52を移動させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0040】
また、上述した実施形態では、塗布ヘッド30に近接して遮蔽板70を設けるようにしたが、勿論、この遮蔽板70は設けなくてもよい。さらに、上述した実施形態では、表面が略平坦な面である基板を例示したが、これに限定されず、塗布溶液を塗布する基板は、例えば、レンズ等の表面が曲面である基板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1に係る塗布装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る塗布装置の要部断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る塗布方法を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る塗布方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 基板、 2 塗布溶液、 10 スリットコート式塗布装置、 20 保持テーブル、 30 塗布ヘッド、 31 ノズル開口、 40 貯留手段、 50 噴射手段、 52 噴射ヘッド、 60 排気手段、 70 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持テーブルと該保持テーブルに保持された前記基板の表面に相対向するように配置されると共に当該基板の表面に向かって所定の塗布溶液を流出するスリット状のノズル開口を有する塗布ヘッドとを具備し、前記保持テーブルと前記塗布ヘッドとが水平方向で相対的に移動することで前記基板の表面に前記塗布溶液が塗布されると共に、前記塗布溶液が塗布された前記基板の表面に向かって乾燥気体を噴射する噴射手段をさらに具備し、該噴射手段から噴射された乾燥気体によって前記基板表面の塗布溶液を乾燥させ、且つ前記塗布溶液を乾燥させた気体は強制排気されることを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、前記噴射手段がスリット状のノズル開口を有し、当該噴射手段と前記保持テーブルとが水平方向で相対移動することで前記基板表面に塗布された前記塗布溶液を乾燥させることを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記保持テーブルが、当該保持テーブルの面方向に延びる支持軸を中心として回転可能に保持されていると共に、前記噴射手段が、前記保持テーブルの前記塗布ヘッドとは反対面側に配置されていることを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記乾燥気体の圧力が0.1MPa以上であることを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記乾燥気体の相対湿度が20%以下であることを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記噴射手段が、所定温度に加熱された乾燥気体を前記基板表面に向かって噴射することを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記塗布溶液が塗布された前記基板の表面近傍にイオンを供給するイオン供給手段が前記噴射手段に近接して設けられていることを特徴とするスリットコート式塗布装置。
【請求項8】
基板を保持する保持テーブルと該保持テーブルに保持された前記基板の表面に相対向するように配置されると共に当該基板の表面に向かって所定の塗布溶液を流出するスリット状のノズル開口を有する塗布ヘッドとを、水平方向で相対的に移動することで前記基板の表面に前記塗布溶液を塗布する塗布工程と、該塗布工程後に連続して実施され前記塗布溶液が塗布された基板の表面に向かって乾燥気体を吹き付けることにより当該基板表面の塗布溶液を乾燥させる乾燥工程と、前記基板表面を乾燥した後の湿った気体を強制排気する排気工程と、を有することを特徴とするスリットコート式塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−26591(P2006−26591A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212083(P2004−212083)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】