セラミックス部材と金属部材との接合方法及び燃料電池スタック構造体の製造方法並びに燃料電池スタック構造体
【課題】使用温度が高いセラミックス部材と金属部材との接合に際して、接合工程温度を低く抑えて接合時にセラミックス部材側に割れが生じるのを回避可能なセラミックス部材と金属部材との接合方法及び燃料電池スタック構造体の製造方法並びに燃料電池スタック構造体を提供する。
【解決手段】単セル6が設置される金属製セル板2の形成工程と、周縁部がセル板2の周縁部に接合される金属製セパレータ板3の形成工程と、セル板2に単セル6を設置する工程と、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合する固体電解質型燃料電池ユニット1の形成工程と、隣接する固体電解質型燃料電池ユニット1の各中心部分同士の接合工程を有する燃料電池スタック構造体11の製造方法において、セル板2に単セル6を接合する際に、単セル6に金属ガラス接合層17を成膜した後、金属ガラス接合層17にセル板2を接触させてその過冷却液体域で押圧して接合する。
【解決手段】単セル6が設置される金属製セル板2の形成工程と、周縁部がセル板2の周縁部に接合される金属製セパレータ板3の形成工程と、セル板2に単セル6を設置する工程と、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合する固体電解質型燃料電池ユニット1の形成工程と、隣接する固体電解質型燃料電池ユニット1の各中心部分同士の接合工程を有する燃料電池スタック構造体11の製造方法において、セル板2に単セル6を接合する際に、単セル6に金属ガラス接合層17を成膜した後、金属ガラス接合層17にセル板2を接触させてその過冷却液体域で押圧して接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック構造体の製造に用いるのに好適なセラミックス部材と金属部材との接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなセラミックス部材と金属部材との接合方法としては、例えば、Ti,Hf,Zrなどの活性金属を含むメタライス層を形成した後にろう付けする方法や、活性金属元素を含む銀ろう(BAg−8)などでろう付けする方法といった活性金属ろう付け法がよく知られているが、この接合方法では、接合することができたとしても、接合工程から室温に冷却する過程においてセラミックス部材と金属部材の熱膨張率差によって、セラミックス部材側の界面近傍にクラックが生じたり、破壊したりしてしまう恐れがある。
【0003】
これに対応するべく、熱応力緩和効果のある添加材を入れたろう材を用いる接合方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平6−101303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のセラミックス部材と金属部材との接合方法では、ろう材を溶融して接合することになるので、接合工程の温度を下げることができず、その結果、熱膨張係数差に起因する熱応力が大きくなってしまう。特に使用温度が高い部品において、使用温度で半溶融になって接合界面の相互拡散が進行することで、脆い合金層ができてしまうのを避けるため、接合工程の温度を高くする必要があり、接合工程時にセラミックス部材側やセラミックス部材側界面で破損する可能性がある。
【0005】
例えば、燃料電池スタック構造体の製造に際して、セラミックス部材に相当する単セルと金属部材に相当する金属製セル板との接合や、単セルを搭載した後のセル板のセラミックス部材に相当する絶縁部材と金属部材との接合において、上記したセラミックス部材と金属部材との接合方法を適用して真空高温の条件化でろう付けを行う場合には、単セルの電解質層や電極層の酸素元素が欠損したり、多孔質が望ましい電極層の焼結緻密化が進行してしまったりして、単セルが劣化してしまい、発電性能の低下を招くという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、セラミックス部材と金属部材との接合に際して、これらの部材の使用温度が高い場合であったとしても、接合工程温度を低く抑えることができ、その結果、接合時にセラミックス部材側に割れが生じるのを回避することが可能であるセラミックス部材と金属部材との接合方法及び燃料電池スタック構造体の製造方法並びに燃料電池スタック構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法は、セラミックス部材と金属部材とを接合するに際して、セラミックス部材の表面に金属ガラス接合層を成膜した後、この金属ガラス接合層に金属部材を接触させて金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合する構成としたことを特徴としており、このセラミックス部材と金属部材との接合方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法において、金属ガラス接合層は、その過冷却液体域まで加熱して押圧すると、108〜1010Pa・s程度の粘性流動を示して、数MPa程度の低圧力で塑性変形が可能になる。つまり、セラミックス部材及び金属ガラス接合層間の界面を確実に生成させて、セラミックス部材を破損しない程度に金属ガラス接合層を押圧して塑性変形させると、酸化膜が破壊されて金属ガラス接合層の表面に新生面が露出し、この新生面に対して金属部材が接合することとなる。
【0009】
また、本発明の燃料電池スタック構造体の製造方法は、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、金属製のセル板に単セルを設置する工程において上記したセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いる構成としたことを特徴としている。
【0010】
そして、本発明の燃料電池スタック構造体は、単セルを保持していると共に中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有するセル板と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部をセル板の周縁部に接合させたセパレータ板と、セル板及びセパレータ板の間に形成される空間内の各中心部分間に位置して各々のガス導入孔及びガス排出孔と連通する中央流路部品を具備した固体電解質型燃料電池ユニットを複数積層して成る燃料電池スタック構造体において、セル板に対して、上記したセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて単セルを取り付けてある構成としたことを特徴としている。
【0011】
本発明の燃料電池スタック構造体及びその製造方法では、セル板に対する単セルの取り付けに金属ガラス接合層を用いるので、単セルを真空中において800℃以上の高温に長時間曝すことなく接合し得ることとなり、その結果、電解質層や電極層が脱酸素化したり焼結緻密化したりすることに起因する単セルの劣化を抑制しつつ燃料電池スタック構造体を製造し得ることとなる。このように、燃料電池スタック構造体の製造工程温度を低く抑え得るので、熱応力によって単セルや接合面にクラックが生じるのを回避でき、したがって、製造段階における歩留まりの向上を実現し得ることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記した構成としているので、セラミックス部材と金属部材との接合に際して、これらの部材の使用温度が高い場合であったとしても、接合工程温度を低く抑え得るので、接合時において、セラミックス部材側に割れが発生するのを防ぐことが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法において用いる金属ガラス接合層の金属ガラスとは、ガラス遷移温度と結晶化温度との差が大きい過冷却液体域を有する金属である。一般的に、組成元素が3元素以上で構成され、各元素の原子径が12%以上異なり、各元素が化合物化し易いときに金属ガラスになり易いとされている。例えば、Ni基合金や、Zr基合金や、Ti基合金や、Al基合金や、Mg基合金や、Pd基合金や、Co基合金や、Fe基合金や、Cu基合金や、La基合金を用いることができる。
【0014】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法は、セラミックス部材の表面に金属ガラスから成る接合層を成膜するのに続いて金属部材を重ね合わせて設置し、金属ガラス接合層の過冷却液体域まで加熱して押圧することによって接合することを特徴としているので、金属ガラス接合層が溶融するまで加熱せずに接合したとしても、セラミックス部材に対して接合層界面で剥離することがない。
【0015】
金属ガラス接合層の成膜に際しては、プラズマ溶射法や、コールドスプレー法を用いることができるほか、対向ターゲット型スパッタ法やRFマグネトロンスパッタ法などのスパッタ法等のように成膜速度が速い気相成膜法を用いることができる。
【0016】
金属ガラス接合層の厚さは、金属ガラス材料及び接合条件に依存するほか、セラミックス部材の材料の種類や厚さや表面粗さ、及び、金属部材の材料の厚さ、並びに、これらの部材の熱膨張率差に依存するが、1〜100μmとすることが好ましい。この際、金属ガラス接合層の厚さが10μmよりも薄いと、押圧接合時にセラミックス部材が割れたり、接合不十分によりガスリークが発生したりするといった問題が生じ、一方、金属ガラス接合層の厚さが70μmよりも厚いと、成膜応力によってセラミックス部材にクラックが入ったり、界面の一部が剥離して接合後におけるガスシール性が低下したりするといった問題が生じることから、金属ガラス接合層の厚さを10〜70μmとすることがより好ましい。
【0017】
金属ガラス接合層を過冷却液体域において押圧するに際しては、超音波溶接法又は交流パルス通電接合法を用いることができ、この場合、金属ガラス接合層の流動変形を促進するために、金属部材側の接合面に凹凸加工やV字溝加工を施すことができる。
【0018】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法では、セラミックス部材が酸化物系である場合において、すなわち、アルミナ、マグネシア、セリア、ジルコニア、イットリア、シリカなどの酸化物を主成分とするセラミックスや、ランタン−ガレート系、ランタン−カルシア系などの複合酸化物、ランタン−クロム複合酸化物、ランタン−マンガン複合酸化物などを主成分とするセラミックスである場合において、セラミックス部材の表面に中間層を成膜した後、金属ガラス接合層を成膜する構成とすることができ、この際、Ti、Zr、Hf、Al、Si、Ge、Sn、Zn、Cr、Laから選ばれる一つの元素を主成分として含む層を中間層とすることができる。
【0019】
この構成を採用すると、中間層の構成元素がセラミックス部材表面の酸素と結合して表面のぬれ性が改善されることから、金属ガラス接合層を成膜し始める段階において、島状に成長したり柱状に成長したりし難くなって接合強度が向上するうえ、押圧して接合する段階において、超音波の振動エネルギや交流パルス通電の熱衝撃を緩和し得ることとなり、セラミックス部材界面が破損し難くなって歩留まりの向上が図られることとなる。
【0020】
また、本発明において、セラミックス部材の表面に中間層を成膜した後に金属ガラス接合層を成膜する場合、セラミックス部材と金属部材との接合温度は、金属ガラス接合層の粘度よりも金属ガラス中間層の粘度が高い方が良好である。そこで、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法において、中間層である金属ガラス層を成膜するのに続いて一旦熱処理工程を行い、中間層の結晶化度とこれに伴う接合温度での粘度を調整した後、金属ガラス接合層を成膜する構成とすることが望ましい、すなわち、金属ガラス接合層よりもガラス遷移温度が高い金属ガラス層を中間層とした構成とすることが望ましい。
【0021】
この際、中間層の熱処理は、セラミックス部材のホルダの温度を上昇して加熱する方法や、ハロゲンランプやレーザー照射によって連続的又は間歇的に加熱する方法を用いることができ、これにより、超音波の振動エネルギや交流パルス通電の熱衝撃を緩和し得ることとなり、セラミックス部材界面が破損し難くなって、歩留まりの向上が図られることとなる。
【0022】
さらに、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法では、金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合した後、押圧力を開放した状態で金属ガラス接合層の結晶化温度近傍まで温度を上昇させる熱処理を行うのに続いて冷却する構成とすることができ、この構成とすると、金属ガラス接合層を結晶化させてから使用するため、高温で使用する場合においても、接合界面での元素拡散反応が進行せず、耐久性が高い接合状態が得られることとなる。
【0023】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法は、燃料電池スタック構造体を構成する固体電解質型燃料電池ユニットの単セルと金属製セル板との接合や、絶縁ガスシールを必要とする金属製セル板とセパレータ板との接合部に用いられるほか、高温動作型のインバータに使用されるSiCやGaN、ダイヤモンド半導体や、高温で使用するペルチエモジュールやゼーベックモジュールなどの熱電変換装置に使用される高温動作型のヘビードープ半導体、車載用レーザーレーダーセンサー用光学部品のような高温に昇温される部品における半導体や絶縁体、光学透明・反射・吸収体などと実装基板との接合部や、Liイオンバッテリなどの大電流を取り出す電力端子と絶縁体との接合部に用いられる。
【0024】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を適用可能な燃料電池スタック構造体は、図3に示すように、複数の固体電解質型燃料電池ユニット1をいずれも向きを同じにして積層して成っており、図4にも示すように、破線で示すケース12に収容した状態で上下両側からフランジ13,14で挟み込まれるようになっている。
【0025】
この燃料電池スタック構造体11を構成する固体電解質型燃料電池ユニット1は、図5にも示すように、円形薄板状を成し且つ中心部分にガス導入孔21及びガス排出孔22を有する金属製のセル板2と、このセル板2と同じく円形薄板状を成し且つ中心部分にガス導入孔31及びガス排出孔32を有する金属製のセパレータ板3を備えており、これらのセル板2及びセパレータ板3は、互いに対向した状態で各々の外周縁部同士が接合されて、両板2,3間に形成される空間Sに、集電体4を収容するようになっている。
【0026】
互いに対向した状態で接合するセル板2及びセパレータ板3の各中心部分には、外周縁部と同心状を成し且つ互いに離間する方向に突出する円形凸状段差部23,33がプレス加工によってそれぞれ形成してあって、セパレータ板3の円形凸状段差部33には、ガス導入孔31と連通するガス導入流路51を具備してセル板2及びセパレータ板3間に形成される空間S内に対するガス供給行う中央流路部品5が収容してあると共に、セル板2の円形凸状段差部23には、ガス排出孔22と連通するガス排出流路52を具備して上記空間Sからのガス排出を行う中央流路部品5が収容してあり、一方、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部には、この外周縁部と同心状を成し且つ互いに接近する方向に突出する環状段差24,34がプレス加工によってそれぞれ形成してある。
【0027】
この燃料電池スタック構造体11を製造するに際しては、図1に示すように、金属製のセル板2を形成する工程Aと、金属製のセパレータ板3を形成する工程Bと、セル板2に単セル6を設置する工程Cと、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニット1を形成する工程Dと、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニット1の各中心部分同士を接合する工程Eを有する製造方法を用いることができる。
【0028】
セル板2に単セル6を設置する工程Cにおいて、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いる場合には、セル板2に対して単セル6の電解質層の表面を接合することで設置することができ、この接合方法は、電解質支持型セル,電極支持型セル及び多孔質金属支持型セルのいずれの単セル6にも適用可能である。
【0029】
具体的には、図1に拡大して示すように、燃料極層61,電解質層62及び空気極層63を有する単セル6の電解質層(セラミックス部材)62の表面に金属ガラス接合層17を成膜した後、この金属ガラス接合層17が過冷却液体域となる温度域近傍まで全体を加熱した状態で、接合部に超音波や交流のパルス通電を印加することによって、金属ガラス接合層17をセル板2に接合することができる。
【0030】
この工程Cにおいて、図2(a)に示すように、電解質層62と金属ガラス接合層17との間に、接合強度を増加する目的や、ぬれ性を改善する目的や、熱膨張係数差に起因する熱応力を緩和する目的で、金属ガラス接合層16を成膜するのに先立って中間層18を成膜することができ、加えて、図2(b)に示すように、酸素イオン又は水素イオンの伝導をバリアする目的で、電解質層62に中間層18を形成するのに先立ってバリア層19を成膜することもでき、酸素イオンバリア層19としては、例えば、アルミナやジルコニアやマグネシアやタンタル酸化物などの酸化物を主成分とする層を採用することができる。
【0031】
なお、この工程Cでは、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間や固体電解質型燃料電池ユニット1内の集電体4や一部が多孔化している支持基板としてのセル板2に対して、公知の溶射法、対向ターゲットなどのスパッタ法、蒸着法、エアロゾルデポジッション法、スプレー熱分解法、ガスデポジション法、減圧コールドスプレー法、CCVD法、DVD法、印刷法などの成膜法で燃料極層61,電解質層62及び空気極層63を順次成膜したり、グリーンシートを積層して共焼結させたりすることでも、単セル6をセル板2に設置可能である。
【0032】
上記単セル6の形状はとくに限定されるものではなく、固体電解質型燃料電池ユニット1が円盤状を成す場合には、図6(a)に示すように、単セル6を小径の円板状を成すものとして、セル板2の中心部分と外周縁部との間のドーナツ状領域に複数個配置することができるほか、図6(b)に示すように、単セル6Aをドーナツ状を成すものとして、その内周縁部及び外周縁部にプレス加工済の内側リング7及び外側リング8をそれぞれ接合してセル板2を形成したり、図6(c)に示すように、単セル6Bを扇形状を成すものとして、上記内側リング7及び外側リング8を縦横の桟9で連結して成るフレーム10にそれぞれ接合してセル板2を形成したりすることができる。
【0033】
また、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニット1を形成する工程Dでは、一組のセル板2とセパレータ板3との間に集電体4を設置して各周縁部同士を接合することにより、ユニット1内に一方のガスを流す流路を形成する。これと同時に、ユニット1内の中央流路部品5をセル板2及びセパレータ板3に対して厳密なガスシール接合を行うこともできるが、同種のガスの導入口及び排出口をシールするようにしているので、比較的平坦な金属表面であれば、積層時にボルト締めするだけでも十分である。
【0034】
なお、ユニット1内の中央流路部品5の部分で絶縁を行う場合は、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合する前までに、少なくとも一方の面に公知の溶射法、対向ターゲットスパッタ法、蒸着法、エアロゾルデポジッション法、スプレー熱分解法、ガスデポジション法、減圧コールドスプレー法、CCVD法、DVD法、印刷法などなどの成膜方法で絶縁膜を形成することで絶縁が可能であるほか、比較的緻密でかつ弾力のあるSiCやアルミナ、或いは、チタニアなどの耐熱性ファイバーからなるペーパ状フェルトを挟み込んだ状態でユニット1の積層後にボルト締めすることで絶縁が可能である。
【0035】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を上記したセル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合する工程Dに適用する場合、この工程Dを工程A,Bの後において、工程C及び工程Eの間に実施することができるほか、図7及び図8に示すように、工程C,Eの後に実施することができる。この工程Dを工程C,Eよりも後に実施する場合は、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合することが、すなわち、固体電解質型燃料電池ユニット1を積層するということになる。
【0036】
上記工程Dにおける本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の一実施形態としては、図9(a)に示すように、リング状の焼結体から成る絶縁エッジ枠(セラミックス部材)16を形成し、この絶縁エッジ枠16の両面に金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3との間に挟み込んで、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得るほか、図9(b)に示すように、上記絶縁エッジ枠16の両面に中間層18及び金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3との間に挟み込んで、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得る。
【0037】
また、上記工程Dにおける本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の他の実施形態としては、セル板2及びセパレータ板3の少なくとも一方の周縁部に金属エッジ枠16Aを配置して、図10(a)に示すように、この金属エッジ枠16Aの少なくとも一方の面に絶縁性セラミックス皮膜(セラミックス部材)16Bを形成し、この絶縁性セラミックス皮膜16B上に金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3とを合わせて、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得るほか、図10(b)に示すように、上記絶縁性セラミックス皮膜16B上に中間層18及び金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3とを合わせて、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得る。この際、金属エッジ枠16Aは、金属製のセル板2を形成する工程A、及び、金属製のセパレータ板3を形成する工程Bにおいて、同時にろう付け接合したり拡散接合したりしておくことで、簡便に配置し得る。
【0038】
上記絶縁性セラミックス皮膜は、アルミナや、ジルコニアや、イットリアや、マグネシアや、チタニアや、タンタル酸化物や、ランタン酸化物などの酸化物を主成分として、公知の溶射法や、スパッタ法や、蒸着法や、エアロゾルデポジッション法や、スプレー熱分解法や、印刷法などの皮膜法により形成することができる。
【0039】
ここで、セル板2を形成する工程A及びセパレータ板3を形成する工程Bにおいて、セル板2及びセパレータ板3の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸2a(3a)を形成する構成とすることが可能である。具体的には、図9及び図10に示すように、金属ガラス接合層17が直に接触するセル板2及びセパレータ板3の少なくともいずれか一方の周縁部を、超音波又は交流パルスを印加しつつ押圧する押圧体の表面の凹凸形状に沿って変形させる構成とすることが可能であり、凹凸2a(3a)の起伏量は、押圧体の表面形状に基づいて設定されるほか、セル板2及びセパレータ板3の材料や厚さ、金属ガラス接合層17の材料や接合時の温度や押圧条件に基づいて設定される。
【0040】
加えて、図11に示すように、セル板2及びセパレータ板3の双方の周縁部に金属エッジ枠16Aを配置して、これらの金属エッジ枠16Aのうちの金属ガラス接合層17と接合する金属エッジ枠16Aの面に、上記した凹凸2a(3a)と同様の凹溝やV字溝などの凹凸16aを形成しておくことができるほか、セル板2及びセパレータ板3の各表面や、金属ガラス接合層17と接合する金属エッジ枠16Aの表面にも、金属ガラス接合層を成膜しておくことができる。
【0041】
上記したように、セル板2及びセパレータ板3の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸2a(3a)を形成する構成や、セル板2及びセパレータ板3の周縁部に配置した金属エッジ枠16Aに凹凸16aを形成する構成を採用すると、金属ガラス接合層17の塑性変形が促進されて新生面が出やすくなるので、接合強度の向上が図られることとなり、加えて、接合時における押圧に際して、セル板2及びセパレータ板3の変形が抑えられて、単セル6の配置領域に歪みが生じ難くなり、その結果、単セル6の破損や、集電性能の劣化を回避し得ることとなる。
【0042】
上記したように、真空高温条件を必要としない本発明の接合方法を工程Dに採用すると、図7及び図8に示すように、固体電解質型燃料電池ユニット1の積層位置の調整を行いながら、絶縁接合が要求される工程Dを積層工程として行うことができ、これによって、工程Dよりも前の工程がとり得る工程温度領域が広がるので、接合性能や耐久性を重視した接合材や接合方法を選択することが容易になる。
【0043】
とくに、図8に示すように、単セル6を搭載する工程Cの前に、高いガスシール性能が要求されるユニット1,1間の接合を行う工程Eを行うことが可能になる。これにより、Niろう付けのような安価で且つ簡便であると共にシール接合の信頼性が高い接合方法を採用し得ることとなり、したがって、中央流路部品5が位置するユニット1,1間に対して、単セル6を劣化させることなくガスシール性に優れた接合を行うことができるので、耐熱衝撃性に優れた燃料電池スタック構造体を製造し得ることとなる。
【0044】
さらに、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部分同士を接合する工程Eは、ユニット1,1間にユニット間集電体15を設置すると共に中央流路部品5をガスシール接合する工程でもある。
【0045】
中央流路部品5の絶縁をユニット1内の接合部でとる場合は、この工程Eにおけるユニット1,1間の接合を電気的導通性のある接合とすることが可能であり、公知のろう付け法や、溶接法や、超音波溶接法や、拡散接合法などの手法によって接合することができる。一方、中央流路部品5の絶縁をユニット1外でとる場合は、この工程Eにおけるユニット1,1間の接合を電気的絶縁性で且つガスシール性のある接合とする必要があり、例えば、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることができるほか、公知のセラミックス−ガラス系接着材で貼付する手法によって接合することができる。
【0046】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を上記した互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部分同士を接合する工程Eに適用する場合、この工程Eは、工程A,Bの後において、図12及び図14に示すように、工程C,Dの後に実施することができるほか、図13に示すように、工程C及び工程Eの間に実施することができる。この工程Eを工程C,Dよりも後に実施する場合は、固体電解質型燃料電池ユニット1の各中心部分同士を接合することが、すなわち、固体電解質型燃料電池ユニット1を積層するということになる。
【0047】
とくに、図14に示すように、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合して袋構造の固体電解質型燃料電池ユニット1を形成した後、セル板2に燃料極層61と、電解質層62と、空気極層63とを順次成膜して単セル6を形成して、最後にユニット1,1間の絶縁ガスシールを行うことができ、この構成を採用した場合には、単セル6を形成していないセル板2及びセパレータ板3といった金属部材だけで固体電解質型燃料電池ユニット1を形成することから、厚さや形状のばらつきを少なく抑えた固体電解質型燃料電池ユニット1を形成し得ることとなり、また、ばらつきが生じたとしても熱処理などによって簡単に矯正することができる。
【0048】
ここで、燃料電池スタック構造体の出力密度を向上させるには、固体電解質型燃料電池ユニット1の積層密度を高くする必要があるが、そのためには、各固体電解質型燃料電池ユニット1の平面度が重要になる。固体電解質型燃料電池ユニット1に歪みがあると、ユニット1内及びユニット1,1間のガス流路高さがばらついてしまい、ガスの流れが一様でなくなったり、集電体4、,15の押し付け圧力が不均一となって集電抵抗が大きくなったりして、出力の損失が生じる。
【0049】
上記工程Eにおいて、ユニット1,1間のガス流路高さのばらつきを抑え得る本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の一実施形態としては、図15に示すように、中央流路部品5のガス導入流路51及びガス排出流路52と連通する貫通孔を有する平板状のセラミックス焼結体(セラミックス部材)26及びこのセラミックス焼結体26の両面に成膜した金属ガラス接合層17を具備して成るスペーサ部材20を作成し、このスペーサ部材20を固体電解質型燃料電池ユニット1,1間に挿入して、金属ガラス接合層17の過冷却液体域温度で中心部分を加圧して接合する構成を採用し得る。
【0050】
この際、図16(a),(b)に示すように、セラミックス焼結体26に代えて、金属板26Aに形成して成る絶縁セラミックス皮膜16Bをセラミックス部材として採用することができ、この絶縁セラミックス皮膜16Bの両面に金属ガラス接合層17を成膜してスペーサ部材20Cと成すことが可能である。
【0051】
これらの構成を採用すると、例えば、ユニット内に燃料ガスを流し、ユニット1,1間にカソード用と冷却あるいは温調用を兼ねる空気を流して発電する場合、一般的に空気流量の方が流量が多くなるが、その発熱量は発電量に依存するため、性能設計に応じて固体電解質型燃料電池ユニット1内の流路高さに比べてユニット1,1間の流路高さを調整して、ガス供給量や発電に伴う発熱温度分布を調整する場合において、スペーサ部材20,20Cの厚さ寸法を変えるだけで、ユニット1,1の間隔を容易に変更し得ることとなる。
【0052】
つまり、互いに同じ形状を成す固体電解質型燃料電池ユニット1に対して、運転条件や発電出力特性に応じて、固体電解質型燃料電池ユニット1,1の間隔を容易に調整することができるので、積層方向の温度分布のばらつきが少ない出力密度が高い燃料電池スタック構造体スタックを製造し得ることとなる。
【0053】
また、上記工程Eにおいて、ユニット1,1間のガス流路高さのばらつきを抑え得る本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の他の実施形態として、図17に示す構成を採用し得る。この構成は、中央流路部品5が、セル板2及びセパレータ板3の平板部分をそれぞれ裏表から挟み込むようになっていて、ユニット1,1間の接合面の厚さが比較的大きい場合において、この中央流路部品5の一方に絶縁セラミックス皮膜(セラミックス部材)16Bと金属ガラス接合層17(あるいは中間層18及び金属ガラス接合層17)を順次形成し、金属ガラス接合層17の過冷却液体域温度で中央流路部品5の部分を加圧して接合するようになっている。
【0054】
この際、金属ガラス接合層17と直に接触する側の中央流路部品5の表面に、図18(a)に示すように、凹溝5aを形成したり、図18(b)に示すように、V字溝5bを形成したりすることができる。また、絶縁セラミックス皮膜16Bを成膜する側の中央流路部品5の表面にも、固体電解質型燃料電池ユニット1に歪みを生じさせることなく成膜前処理としての疎面化処理を施すことがで、さらに、セラミックス皮膜の成膜条件において、例えば、エアロゾルデポジッション法や溶射法における粒子速度を増加したとしても、固体電解質型燃料電池ユニット1の変形を抑制しつつ緻密且つ絶縁性能良好な皮膜を界面剥離を生じさせることなく成膜し得る。
【0055】
この構成を採用すると、板厚が厚い中央流路部品5に起伏の大きな凹溝5aやV字溝5bを形成したうえで、セラミックス部材としてのセラミックス皮膜16Bを成膜することができるので、金属ガラス接合層17の塑性変形を促進して新生面を出現させ易くなって、中央流路部品5及び金属ガラス接合層17の界面の接合強度が向上することとなり、加えて、中央流路部品5の表面に疎面化処理などの成膜前処理を施すことで、金属製の中央流路部品5及び絶縁セラミックス皮膜16の界面の接合強度も向上することとなる。
【0056】
そして、上記のようにして製造した本発明の燃料電池スタック構造体において、固体電解質型燃料電池ユニット1内の中央流路部品5,5間の接合部は、同種のガスの導入系及び排気系間のシールであるのに対して、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間のとくに外周縁部間の接合は、ユニット1内を流れる一方のガスとユニット1,1間を流れる他方のガスとをシールするため、固体電解質型燃料電池ユニット1の外周縁部間の接合には、高いシール性能が要求される。
【0057】
中央流路部品5,5間の絶縁は、ユニット1内及びユニット1外における中心部分間のいずれかでとる必要があるが、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を適用して、固体電解質型燃料電池ユニット1の外周縁部間を絶縁ガスシール接合した本発明の燃料電池スタック構造体とすることにより、中央流路部品5,5間の絶縁をユニット1内で行う構造とすることができ、これにより、高いシール性能が要求される固体電解質型燃料電池ユニット1,1間の接合は、耐熱衝撃性に優れる金属−金属間の接合とすることができる。
【0058】
このように、本発明の燃料電池スタック構造体では、固体電解質型燃料電池ユニット1のセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法によって接合しているので、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部間における接合の信頼性が向上することとなり、加えて、固体電解質型燃料電池ユニット1内及びユニット1,1間における集電体4,15のセル板2やセパレータ板3などに対する絶縁構造が簡略なものとなる。
【0059】
また、固体電解質型燃料電池ユニット1,1の中心部分間をガスシール耐久性が高い金属−金属接合構造とすることができるので、急速起動又は負荷変動運転の性能向上を図るためのバーナや改質器をユニット1の中心部分に組み込み得ることとなる。
【0060】
さらに、本発明の燃料電池スタック構造体において、固体電解質型燃料電池ユニット1のセル板2及びセパレータ板3の金属ガラス接合層17と直に接触する各外周縁部に、この外周縁部と同心状を成し且つ互いに接近する方向に突出する環状段差24,34をプレス加工によって形成する構成と成すことができ、この場合には、接合に伴う金属ガラス接合層の変形沈み込みや、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部の押圧体による変形を環状段差24,34が吸収することとなり、その結果、単セル6の破損や単セル6と集電体4,15との接触抵抗の増加を阻止し得ることとなる。
【0061】
さらにまた、本発明の燃料電池スタック構造体において、固体電解質型燃料電池ユニット1の中央流路部品5が位置する中心部分間を本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法によって接合する構成と成すことができ、この構成とした場合には、高温での電気絶縁性及びガスシール性能の向上を実現でき、その結果、接合強度及び信頼性を格段に高め得ることとなる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
図8に示すように、まず、工程A,Bにおいて、厚さ0.1mmのSUS430製の平板にプレス加工を施して、セル板2及びセパレータ板3を形成すると共に、両板2,3の各中央部分に中央流路部品5を上下から拡散接合し、これと同時に、セパレータ板3の外周縁部に、厚さ300μmのリング状の金属エッジ枠16Aを拡散接合した。
【0064】
この際、セル板2のセル形成領域はドーナツ形状を成しており、このセル形成領域は、口径5mmの丸型貫通孔が多数形成されたパンチング板状になっている。また、セル板2の外周縁部近傍には、図10(a)に示すように、外周縁部接合時の応力を緩和するためのプレスライン24が形成してある。
【0065】
次いで、工程Eにおいて、上に積層するセル板2と下に積層するセパレータ板3との間にユニット間集電体15を挟み込んだ状態で、集電体15,セル板2あるいはセパレータ板3の一部,中心流路部分をNiろう付け法によりろう付けした。この際、セパレータ板3の中心流路部分のユニット1の内側になる表面には、エアロゾルデポジッション法により、セラミックス部材であるアルミナ層16を15μm成膜した。また、セパレータ板3の外周縁部に取り付けた金属エッジ枠16Aの表面にも同様にアルミナ層16を成膜した。
【0066】
次に、金属ガラス接合層17の成膜時のぬれ性を向上させて、アルミナ層16と金属ガラス接合層17との密着強度を高めるために、二重リング状にCrスパッタ層を0.2μm成膜するのに続いて、同様にして二重リング状に厚さ5μmの金属ガラス接合層17をスパッタ成膜した。
【0067】
ここで、金属ガラス接合層17としては、Zr−Al−Cu−(Fe,Ni)系や、Pd−Ni−Cu系のものを用いることができる。中間層として、Cr層とガラス遷移温度が高い、例えば、Ni−Ta−Ti−(Zr,Hf,Nb)系の金属ガラス層18を成膜し、その上に金属ガラス接合層17であるZr−Al−Cu−Ni系を成膜することができる。
【0068】
これにより、例えば、超音波接合時において、金属ガラス接合層17が昇温して変形し、セパレータ板3と接合する際に、中間層としての金属ガラス層18の変形が少なく、超音波振動による応力を緩和することによって、アルミナ層16にクラックが生じるのを抑える効果が大きいものとなる。
【0069】
そして、工程Cにおいて、図8に拡大して示すように、セル板2のセル形成領域に空気極層63として、膜厚約30μmのLSC(ランタンストロンチウムクロム複合酸化物)を減圧コールドスプレー法で成膜した。この際、空気極層63は、セル板2の貫通孔からの覗く集電体15の表面の多孔部分を埋めると共に、セル板2と集電体15の表面との段差を埋めるように成膜される。
【0070】
これに続いて、電解質層62として、膜厚約15μmのYSZ(イットリアドープジルコニア)を対向ターゲットスパッタ法により、セル板2の多数の貫通孔を覆うように成膜した後、燃料極層61として、Ni−SDC(サマリウムドープセリア)を減圧コールドスプレー法で成膜した。
【0071】
最後に、工程Dにおいて、Ar雰囲気の中で、凹凸を有する押圧体としての電極間にセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部を挟み込み、10MPaで押圧しながら1kWの超音波を印加し、この状態で押圧電極を円周方向に少しずつ移動させて、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を接合した。
【0072】
そして、これらの工程を繰り返して固体電解質型燃料電池ユニット1を20層積層し、中央流路部品5が位置する中心部分を上下から押圧挟持した後、Ar雰囲気中において650℃まで昇温させて熱処理を行って、本実施例の燃料電池スタック構造体11を得た。
【0073】
そこで、上記のようにして形成した燃料電池スタック構造体11を580℃の高温環境下に置いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内にはHeガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間にはArガスを流したところ、ユニット1内からユニット1外へのガスリークは検知されず、各ユニット1のセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部間は絶縁状態で保持されていた。
【0074】
続いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内には水素ガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間には空気を流して発電テストを実施しところ、0.1W/cm2の発電出力が得られた。
【0075】
上記の試験結果から、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製作した本実施例の燃料電池スタック構造体11では、高温環境下においても、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部間における接合部分の絶縁ガスシール性が良好に維持されることが立証された。また、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることで、単セル6を搭載したセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を、単セル6を劣化させるような高温高真空条件を用いることなく接合可能であることが実証できた。
【0076】
[実施例2]
図14に示すように、まず、工程A,Bにおいて、厚さ0.1mmのSUS430製の平板にプレス加工を施して、セル板2及びセパレータ板3を形成すると共に、両板2,3の各中央部分に中央流路部品5を上下から拡散接合した。この際、セル板2のセル形成領域はドーナツ形状を成しており、このセル形成領域は、口径5mmの丸型貫通孔が多数形成されたパンチング板状になっている。
【0077】
次いで、セル板2に設けた中央流路部品5のユニット間接合面には、後工程において金属ガラス接合層17に新生面の出現を促進させるため、図18に示すように、深さ20〜100μmの凹溝5a又はV字溝5bを形成した。一方、セパレータ板3に設けた中央流路部品5のユニット間接合面には、エアロゾルデポジッション法を用いてセラミックス部材であるアルミナ層16を20μm成膜した。
【0078】
次に、金属ガラス接合層17の成膜時のぬれ性を向上させて、アルミナ層16と金属ガラス接合層17との密着強度を高めるために、図16(b)に示すように、アルミナ層16上にCrスパッタ層を二重リング状に0.2μm成膜するのに続いて、同様にして二重リング状に厚さ10μmの金属ガラス接合層17をスパッタ成膜した。
【0079】
このとき、合金微粉体を吹き付けて成膜するコールドスプレー法や微粉体プラズマ溶射法を用いて、中間層としてNi−Co−Cr−Al−Y合金系を0.5μm成膜した後、金属ガラス接合層17を成膜してもよく、金属ガラス接合層17としては、Ni−Ta−Ti−(Zr,Hf,Nb)系や、Zr−Al−Cu−(Fe,Ni)系や、Fe−Cr−Mo−C系などを用いることができる。
【0080】
そして、工程Dにおいて、集電体4を間にしてセル板2及びセパレータ板3を重ね合わせ、各外周縁部同士をレーザ溶接で接合して袋とじ構造の固体電解質型燃料電池ユニット1を形成した。この固体電解質型燃料電池ユニット1内の集電体4は、インコネル製金属メッシュであり、セル形成領域側の表面にSUS430の金属粉を焼結させることで多孔径を調整している。
【0081】
次に、工程Cにおいて、図14に拡大して示すように、セル板2のセル形成領域に燃料極層61として、Ni−SDC(サマリウムドープセリア)を減圧コールドスプレー法で成膜した。この際、燃料極層61は、セル板2の貫通孔からの覗く集電体4の表面の多孔部分を埋めると共に、セル板2と集電体4の表面との段差を埋めるように成膜される。
【0082】
これに続いて、電解質層62として、膜厚約15μmのYSZ(イットリアドープジルコニア)を対向ターゲットスパッタ法により、セル板2の多数の貫通孔を覆うように成膜した後、空気極層63として、LSC(ランタンストロンチウムクロム複合酸化物)を減圧コールドスプレー法で成膜した。
【0083】
最後に、工程Eにおいて、上記工程で作製した固体電解質型燃料電池ユニット1を20層積層し、中央流路部品5が位置する中心部分を上下から押圧電極で挟持して、炉にセットした。真空引きの後、Arをフローさせて段階的に昇温して押圧電極に圧力を印加調整しながら、押圧電極の交流パルス電圧を印加して接合し、最終的には620℃まで昇温させて熱処理を行って、本実施例の燃料電池スタック構造体11を得た。
【0084】
そこで、上記のようにして形成した燃料電池スタック構造体10を580℃の高温環境下に置いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内にはHeガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間にはArガスを流したところ、ユニット1内からユニット1外へのガスリークは検知されず、各ユニット1,1間は絶縁状態で保持されていた。
【0085】
続いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内には水素ガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間には空気を流して発電テストを実施しところ、0.1W/cm2の発電出力が得られた。
【0086】
上記の試験結果から、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製作した本実施例の燃料電池スタック構造体11では、高温環境下においても、固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部間における接合部分の絶縁ガスシール性が良好に維持されることが立証された。また、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることで、単セル6を搭載したセル板2及びこのセル板2と隣接するセパレータ板3の各中心部同士を、単セルを劣化させるような高温高真空条件を用いることなく接合可能であることが実証できた。
【0087】
[実施例3]
図12に示すように、まず、工程A,Bにおいて、厚さ0.1mmのSUS430製の平板にプレス加工を施して、セル板2及びセパレータ板3を形成すると共に、実施例2と同様にして両板2,3の各中央部分に中央流路部品5を上下から拡散接合した。
【0088】
次いで、セル板2に設けた中央流路部品5のユニット間接合面の中心部分には、後工程において金属ガラス接合層17に新生面の出現を促進させるため、深さ20〜100μmの凹溝5a又はV字溝5bを形成した。一方、セパレータ板3に設けた中央流路部品5のユニット間接合面には、エアロゾルデポジッション法を用いてアルミナ層16を20μm成膜した。
【0089】
この際、金属ガラス接合層17の成膜時のぬれ性を向上させて、アルミナ層16と金属ガラス接合層17との密着強度を高めるために、アルミナ層16上にCrスパッタ層を二重リング状に0.2μm成膜するのに続いて、同様にして二重リング状に厚さ10μmの金属ガラス接合層17をスパッタ成膜した。
【0090】
次に、工程Cにおいて、図2(b)に示すように、Ni−YSZ燃料極支持体61上に電解質層62としてのYSZ(イットリアドープジルコニア)を膜厚約30μmで形成して成る単セル6を用い、この単セル6の電解質層62におけるセル板2との接合部分に対して、膜厚約0.5μmのイオンバリア層としてのアルミナ層19及び膜厚約0.2μmの中間層としてのCr層18をRFスパッタ法により順次成膜した後、Ni−Ta−Ti−(Zr,Hf,Nb)系の金属ガラス接合層17を対向ターゲットスパッタ法により10μm成膜した。
【0091】
続いて、セル板2の所定位置に上記単セル6の電解質層62をセットして金属ガラス接合層17をセル板2に接触させ、真空中において、パルス通電する電極を押し付けつつ750℃まで段階的に昇温させてパルス通電して接合した。
【0092】
この後、セル板2の所定位置に接合した電解質層62の表面に、空気極層63としてのLSCF(ランタンクロマイト系)を成膜して、セル板2を完成させた。
【0093】
そして、工程Dにおいて、集電体4を間にしてセル板2及びセパレータ板3を重ね合わせ、各外周縁部同士をレーザ溶接で接合して袋とじ構造の固体電解質型燃料電池ユニット1を形成した。
【0094】
最後に、工程Eにおいて、上記工程で作製した固体電解質型燃料電池ユニット1を20層積層し、中央流路部品5が位置する中心部分を上下から押圧電極で挟持して、炉にセットした。真空引きの後、Arをフローさせて段階的に昇温して押圧電極に適宜圧力を加えながら、押圧電極の交流パルス電圧を印加して接合し、最終的には620℃まで昇温させて熱処理を行って、本実施例の燃料電池スタック構造体11を得た。
【0095】
そこで、上記のようにして形成した燃料電池スタック構造体11を580℃の高温環境下に置いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内にはHeガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間にはArガスを流したところ、ユニット1内からユニット1外へのガスリークは検知されず、各ユニット1,1間は絶縁状態で保持されていた。
【0096】
続いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内には水素ガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間には空気を流して発電テストを実施しところ、0.1W/cm2の発電出力が得られた。
【0097】
上記の試験結果から、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製作した本実施例の燃料電池スタック構造体11では、高温環境下においても、セル板2と単セル6との接合部分の絶縁ガスシール性が良好に維持されることが立証された。
【0098】
なお、この実施例において、上記工程Eにおける固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部分間の接合に、公知のガラス−セラミックス系接着剤を用いることも可能である。
【0099】
また、図8のように、実施例1と同様の絶縁処理や金属ガラス接合層17をあらかじめ形成したセル板2及びセパレータ板3を用いて、実施例1と同様の方法でセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を接合した後、ユニット1,1間に金属製ガスシール材を介在させて、ユニット1,1の各中心部分間をねじ止め締結して燃料電池スタック構造体11と成すこともできるほか、図7や図13に示すように、ユニット1,1の各中心部分間の接合を先に行った後、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を溶接して接合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際の一実施態様を示す製造工程説明図である。
【図2】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際の他の実施態様を示す単セルとセル板との接合部分における拡大断面説明図(a)及びさらに他の実施態様を示す単セルとセル板との接合部分における拡大断面説明図(b)である。
【図3】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製造した一実施態様による燃料電池スタック構造体を示す全体斜視説明図である。
【図4】図3A−A線に基づく断面説明図である。
【図5】図3における燃料電池スタック構造体を構成する固体電解質型燃料電池ユニットの分解斜視説明図である。
【図6】図3における燃料電池スタック構造体を構成する固体電解質型燃料電池ユニットの単セルの配置パターンを示すセル板の平面説明図(a)〜(c)である。
【図7】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。
【図8】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。(実施例1)
【図9】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示すセル板及びセパレータ板の各外周縁部同士の接合部分における拡大断面説明図(a),(b)である。
【図10】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示すセル板及びセパレータ板の各外周縁部同士の接合部分における拡大断面説明図(a),(b)である。
【図11】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示すセル板及びセパレータ板の各外周縁部同士の接合部分における拡大断面説明図である。
【図12】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。(実施例3)
【図13】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。
【図14】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。(実施例2)
【図15】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分同士の接合部分における拡大断面説明図である。
【図16】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分間に挟み込まれる金属エッジ枠の部分拡大断面説明図(a)及び平面説明図(b)である。
【図17】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分同士の接合部分における拡大断面説明図である。
【図18】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分同士の接合部分における部分拡大断面説明図(a),(b)である。
【符号の説明】
【0101】
1 固体電解質型燃料電池ユニット
2 セル板
2a セル板周縁部の凹凸
3 セパレータ板
3a セパレータ板周縁部の凹凸
5 中央流路部品
6,6A,6B 単セル
11 スタック構造体
16 絶縁エッジ枠(セラミックス部材)
16B セラミックス皮膜(セラミックス部材)
17 金属ガラス接合層
18 中間層
19 バリア層
21,31 ガス導入孔
22,32 ガス排出孔
26 セラミックス焼結体(セラミックス部材)
62 電解質層(セラミックス部材)
S 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック構造体の製造に用いるのに好適なセラミックス部材と金属部材との接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなセラミックス部材と金属部材との接合方法としては、例えば、Ti,Hf,Zrなどの活性金属を含むメタライス層を形成した後にろう付けする方法や、活性金属元素を含む銀ろう(BAg−8)などでろう付けする方法といった活性金属ろう付け法がよく知られているが、この接合方法では、接合することができたとしても、接合工程から室温に冷却する過程においてセラミックス部材と金属部材の熱膨張率差によって、セラミックス部材側の界面近傍にクラックが生じたり、破壊したりしてしまう恐れがある。
【0003】
これに対応するべく、熱応力緩和効果のある添加材を入れたろう材を用いる接合方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平6−101303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のセラミックス部材と金属部材との接合方法では、ろう材を溶融して接合することになるので、接合工程の温度を下げることができず、その結果、熱膨張係数差に起因する熱応力が大きくなってしまう。特に使用温度が高い部品において、使用温度で半溶融になって接合界面の相互拡散が進行することで、脆い合金層ができてしまうのを避けるため、接合工程の温度を高くする必要があり、接合工程時にセラミックス部材側やセラミックス部材側界面で破損する可能性がある。
【0005】
例えば、燃料電池スタック構造体の製造に際して、セラミックス部材に相当する単セルと金属部材に相当する金属製セル板との接合や、単セルを搭載した後のセル板のセラミックス部材に相当する絶縁部材と金属部材との接合において、上記したセラミックス部材と金属部材との接合方法を適用して真空高温の条件化でろう付けを行う場合には、単セルの電解質層や電極層の酸素元素が欠損したり、多孔質が望ましい電極層の焼結緻密化が進行してしまったりして、単セルが劣化してしまい、発電性能の低下を招くという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、セラミックス部材と金属部材との接合に際して、これらの部材の使用温度が高い場合であったとしても、接合工程温度を低く抑えることができ、その結果、接合時にセラミックス部材側に割れが生じるのを回避することが可能であるセラミックス部材と金属部材との接合方法及び燃料電池スタック構造体の製造方法並びに燃料電池スタック構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法は、セラミックス部材と金属部材とを接合するに際して、セラミックス部材の表面に金属ガラス接合層を成膜した後、この金属ガラス接合層に金属部材を接触させて金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合する構成としたことを特徴としており、このセラミックス部材と金属部材との接合方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法において、金属ガラス接合層は、その過冷却液体域まで加熱して押圧すると、108〜1010Pa・s程度の粘性流動を示して、数MPa程度の低圧力で塑性変形が可能になる。つまり、セラミックス部材及び金属ガラス接合層間の界面を確実に生成させて、セラミックス部材を破損しない程度に金属ガラス接合層を押圧して塑性変形させると、酸化膜が破壊されて金属ガラス接合層の表面に新生面が露出し、この新生面に対して金属部材が接合することとなる。
【0009】
また、本発明の燃料電池スタック構造体の製造方法は、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、金属製のセル板に単セルを設置する工程において上記したセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いる構成としたことを特徴としている。
【0010】
そして、本発明の燃料電池スタック構造体は、単セルを保持していると共に中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有するセル板と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部をセル板の周縁部に接合させたセパレータ板と、セル板及びセパレータ板の間に形成される空間内の各中心部分間に位置して各々のガス導入孔及びガス排出孔と連通する中央流路部品を具備した固体電解質型燃料電池ユニットを複数積層して成る燃料電池スタック構造体において、セル板に対して、上記したセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて単セルを取り付けてある構成としたことを特徴としている。
【0011】
本発明の燃料電池スタック構造体及びその製造方法では、セル板に対する単セルの取り付けに金属ガラス接合層を用いるので、単セルを真空中において800℃以上の高温に長時間曝すことなく接合し得ることとなり、その結果、電解質層や電極層が脱酸素化したり焼結緻密化したりすることに起因する単セルの劣化を抑制しつつ燃料電池スタック構造体を製造し得ることとなる。このように、燃料電池スタック構造体の製造工程温度を低く抑え得るので、熱応力によって単セルや接合面にクラックが生じるのを回避でき、したがって、製造段階における歩留まりの向上を実現し得ることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記した構成としているので、セラミックス部材と金属部材との接合に際して、これらの部材の使用温度が高い場合であったとしても、接合工程温度を低く抑え得るので、接合時において、セラミックス部材側に割れが発生するのを防ぐことが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法において用いる金属ガラス接合層の金属ガラスとは、ガラス遷移温度と結晶化温度との差が大きい過冷却液体域を有する金属である。一般的に、組成元素が3元素以上で構成され、各元素の原子径が12%以上異なり、各元素が化合物化し易いときに金属ガラスになり易いとされている。例えば、Ni基合金や、Zr基合金や、Ti基合金や、Al基合金や、Mg基合金や、Pd基合金や、Co基合金や、Fe基合金や、Cu基合金や、La基合金を用いることができる。
【0014】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法は、セラミックス部材の表面に金属ガラスから成る接合層を成膜するのに続いて金属部材を重ね合わせて設置し、金属ガラス接合層の過冷却液体域まで加熱して押圧することによって接合することを特徴としているので、金属ガラス接合層が溶融するまで加熱せずに接合したとしても、セラミックス部材に対して接合層界面で剥離することがない。
【0015】
金属ガラス接合層の成膜に際しては、プラズマ溶射法や、コールドスプレー法を用いることができるほか、対向ターゲット型スパッタ法やRFマグネトロンスパッタ法などのスパッタ法等のように成膜速度が速い気相成膜法を用いることができる。
【0016】
金属ガラス接合層の厚さは、金属ガラス材料及び接合条件に依存するほか、セラミックス部材の材料の種類や厚さや表面粗さ、及び、金属部材の材料の厚さ、並びに、これらの部材の熱膨張率差に依存するが、1〜100μmとすることが好ましい。この際、金属ガラス接合層の厚さが10μmよりも薄いと、押圧接合時にセラミックス部材が割れたり、接合不十分によりガスリークが発生したりするといった問題が生じ、一方、金属ガラス接合層の厚さが70μmよりも厚いと、成膜応力によってセラミックス部材にクラックが入ったり、界面の一部が剥離して接合後におけるガスシール性が低下したりするといった問題が生じることから、金属ガラス接合層の厚さを10〜70μmとすることがより好ましい。
【0017】
金属ガラス接合層を過冷却液体域において押圧するに際しては、超音波溶接法又は交流パルス通電接合法を用いることができ、この場合、金属ガラス接合層の流動変形を促進するために、金属部材側の接合面に凹凸加工やV字溝加工を施すことができる。
【0018】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法では、セラミックス部材が酸化物系である場合において、すなわち、アルミナ、マグネシア、セリア、ジルコニア、イットリア、シリカなどの酸化物を主成分とするセラミックスや、ランタン−ガレート系、ランタン−カルシア系などの複合酸化物、ランタン−クロム複合酸化物、ランタン−マンガン複合酸化物などを主成分とするセラミックスである場合において、セラミックス部材の表面に中間層を成膜した後、金属ガラス接合層を成膜する構成とすることができ、この際、Ti、Zr、Hf、Al、Si、Ge、Sn、Zn、Cr、Laから選ばれる一つの元素を主成分として含む層を中間層とすることができる。
【0019】
この構成を採用すると、中間層の構成元素がセラミックス部材表面の酸素と結合して表面のぬれ性が改善されることから、金属ガラス接合層を成膜し始める段階において、島状に成長したり柱状に成長したりし難くなって接合強度が向上するうえ、押圧して接合する段階において、超音波の振動エネルギや交流パルス通電の熱衝撃を緩和し得ることとなり、セラミックス部材界面が破損し難くなって歩留まりの向上が図られることとなる。
【0020】
また、本発明において、セラミックス部材の表面に中間層を成膜した後に金属ガラス接合層を成膜する場合、セラミックス部材と金属部材との接合温度は、金属ガラス接合層の粘度よりも金属ガラス中間層の粘度が高い方が良好である。そこで、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法において、中間層である金属ガラス層を成膜するのに続いて一旦熱処理工程を行い、中間層の結晶化度とこれに伴う接合温度での粘度を調整した後、金属ガラス接合層を成膜する構成とすることが望ましい、すなわち、金属ガラス接合層よりもガラス遷移温度が高い金属ガラス層を中間層とした構成とすることが望ましい。
【0021】
この際、中間層の熱処理は、セラミックス部材のホルダの温度を上昇して加熱する方法や、ハロゲンランプやレーザー照射によって連続的又は間歇的に加熱する方法を用いることができ、これにより、超音波の振動エネルギや交流パルス通電の熱衝撃を緩和し得ることとなり、セラミックス部材界面が破損し難くなって、歩留まりの向上が図られることとなる。
【0022】
さらに、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法では、金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合した後、押圧力を開放した状態で金属ガラス接合層の結晶化温度近傍まで温度を上昇させる熱処理を行うのに続いて冷却する構成とすることができ、この構成とすると、金属ガラス接合層を結晶化させてから使用するため、高温で使用する場合においても、接合界面での元素拡散反応が進行せず、耐久性が高い接合状態が得られることとなる。
【0023】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法は、燃料電池スタック構造体を構成する固体電解質型燃料電池ユニットの単セルと金属製セル板との接合や、絶縁ガスシールを必要とする金属製セル板とセパレータ板との接合部に用いられるほか、高温動作型のインバータに使用されるSiCやGaN、ダイヤモンド半導体や、高温で使用するペルチエモジュールやゼーベックモジュールなどの熱電変換装置に使用される高温動作型のヘビードープ半導体、車載用レーザーレーダーセンサー用光学部品のような高温に昇温される部品における半導体や絶縁体、光学透明・反射・吸収体などと実装基板との接合部や、Liイオンバッテリなどの大電流を取り出す電力端子と絶縁体との接合部に用いられる。
【0024】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を適用可能な燃料電池スタック構造体は、図3に示すように、複数の固体電解質型燃料電池ユニット1をいずれも向きを同じにして積層して成っており、図4にも示すように、破線で示すケース12に収容した状態で上下両側からフランジ13,14で挟み込まれるようになっている。
【0025】
この燃料電池スタック構造体11を構成する固体電解質型燃料電池ユニット1は、図5にも示すように、円形薄板状を成し且つ中心部分にガス導入孔21及びガス排出孔22を有する金属製のセル板2と、このセル板2と同じく円形薄板状を成し且つ中心部分にガス導入孔31及びガス排出孔32を有する金属製のセパレータ板3を備えており、これらのセル板2及びセパレータ板3は、互いに対向した状態で各々の外周縁部同士が接合されて、両板2,3間に形成される空間Sに、集電体4を収容するようになっている。
【0026】
互いに対向した状態で接合するセル板2及びセパレータ板3の各中心部分には、外周縁部と同心状を成し且つ互いに離間する方向に突出する円形凸状段差部23,33がプレス加工によってそれぞれ形成してあって、セパレータ板3の円形凸状段差部33には、ガス導入孔31と連通するガス導入流路51を具備してセル板2及びセパレータ板3間に形成される空間S内に対するガス供給行う中央流路部品5が収容してあると共に、セル板2の円形凸状段差部23には、ガス排出孔22と連通するガス排出流路52を具備して上記空間Sからのガス排出を行う中央流路部品5が収容してあり、一方、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部には、この外周縁部と同心状を成し且つ互いに接近する方向に突出する環状段差24,34がプレス加工によってそれぞれ形成してある。
【0027】
この燃料電池スタック構造体11を製造するに際しては、図1に示すように、金属製のセル板2を形成する工程Aと、金属製のセパレータ板3を形成する工程Bと、セル板2に単セル6を設置する工程Cと、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニット1を形成する工程Dと、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニット1の各中心部分同士を接合する工程Eを有する製造方法を用いることができる。
【0028】
セル板2に単セル6を設置する工程Cにおいて、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いる場合には、セル板2に対して単セル6の電解質層の表面を接合することで設置することができ、この接合方法は、電解質支持型セル,電極支持型セル及び多孔質金属支持型セルのいずれの単セル6にも適用可能である。
【0029】
具体的には、図1に拡大して示すように、燃料極層61,電解質層62及び空気極層63を有する単セル6の電解質層(セラミックス部材)62の表面に金属ガラス接合層17を成膜した後、この金属ガラス接合層17が過冷却液体域となる温度域近傍まで全体を加熱した状態で、接合部に超音波や交流のパルス通電を印加することによって、金属ガラス接合層17をセル板2に接合することができる。
【0030】
この工程Cにおいて、図2(a)に示すように、電解質層62と金属ガラス接合層17との間に、接合強度を増加する目的や、ぬれ性を改善する目的や、熱膨張係数差に起因する熱応力を緩和する目的で、金属ガラス接合層16を成膜するのに先立って中間層18を成膜することができ、加えて、図2(b)に示すように、酸素イオン又は水素イオンの伝導をバリアする目的で、電解質層62に中間層18を形成するのに先立ってバリア層19を成膜することもでき、酸素イオンバリア層19としては、例えば、アルミナやジルコニアやマグネシアやタンタル酸化物などの酸化物を主成分とする層を採用することができる。
【0031】
なお、この工程Cでは、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間や固体電解質型燃料電池ユニット1内の集電体4や一部が多孔化している支持基板としてのセル板2に対して、公知の溶射法、対向ターゲットなどのスパッタ法、蒸着法、エアロゾルデポジッション法、スプレー熱分解法、ガスデポジション法、減圧コールドスプレー法、CCVD法、DVD法、印刷法などの成膜法で燃料極層61,電解質層62及び空気極層63を順次成膜したり、グリーンシートを積層して共焼結させたりすることでも、単セル6をセル板2に設置可能である。
【0032】
上記単セル6の形状はとくに限定されるものではなく、固体電解質型燃料電池ユニット1が円盤状を成す場合には、図6(a)に示すように、単セル6を小径の円板状を成すものとして、セル板2の中心部分と外周縁部との間のドーナツ状領域に複数個配置することができるほか、図6(b)に示すように、単セル6Aをドーナツ状を成すものとして、その内周縁部及び外周縁部にプレス加工済の内側リング7及び外側リング8をそれぞれ接合してセル板2を形成したり、図6(c)に示すように、単セル6Bを扇形状を成すものとして、上記内側リング7及び外側リング8を縦横の桟9で連結して成るフレーム10にそれぞれ接合してセル板2を形成したりすることができる。
【0033】
また、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニット1を形成する工程Dでは、一組のセル板2とセパレータ板3との間に集電体4を設置して各周縁部同士を接合することにより、ユニット1内に一方のガスを流す流路を形成する。これと同時に、ユニット1内の中央流路部品5をセル板2及びセパレータ板3に対して厳密なガスシール接合を行うこともできるが、同種のガスの導入口及び排出口をシールするようにしているので、比較的平坦な金属表面であれば、積層時にボルト締めするだけでも十分である。
【0034】
なお、ユニット1内の中央流路部品5の部分で絶縁を行う場合は、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合する前までに、少なくとも一方の面に公知の溶射法、対向ターゲットスパッタ法、蒸着法、エアロゾルデポジッション法、スプレー熱分解法、ガスデポジション法、減圧コールドスプレー法、CCVD法、DVD法、印刷法などなどの成膜方法で絶縁膜を形成することで絶縁が可能であるほか、比較的緻密でかつ弾力のあるSiCやアルミナ、或いは、チタニアなどの耐熱性ファイバーからなるペーパ状フェルトを挟み込んだ状態でユニット1の積層後にボルト締めすることで絶縁が可能である。
【0035】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を上記したセル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合する工程Dに適用する場合、この工程Dを工程A,Bの後において、工程C及び工程Eの間に実施することができるほか、図7及び図8に示すように、工程C,Eの後に実施することができる。この工程Dを工程C,Eよりも後に実施する場合は、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合することが、すなわち、固体電解質型燃料電池ユニット1を積層するということになる。
【0036】
上記工程Dにおける本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の一実施形態としては、図9(a)に示すように、リング状の焼結体から成る絶縁エッジ枠(セラミックス部材)16を形成し、この絶縁エッジ枠16の両面に金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3との間に挟み込んで、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得るほか、図9(b)に示すように、上記絶縁エッジ枠16の両面に中間層18及び金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3との間に挟み込んで、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得る。
【0037】
また、上記工程Dにおける本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の他の実施形態としては、セル板2及びセパレータ板3の少なくとも一方の周縁部に金属エッジ枠16Aを配置して、図10(a)に示すように、この金属エッジ枠16Aの少なくとも一方の面に絶縁性セラミックス皮膜(セラミックス部材)16Bを形成し、この絶縁性セラミックス皮膜16B上に金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3とを合わせて、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得るほか、図10(b)に示すように、上記絶縁性セラミックス皮膜16B上に中間層18及び金属ガラス接合層17を成膜した後、セル板2とセパレータ板3とを合わせて、超音波溶接法又はパルス通電接合法で接合する構成を採用し得る。この際、金属エッジ枠16Aは、金属製のセル板2を形成する工程A、及び、金属製のセパレータ板3を形成する工程Bにおいて、同時にろう付け接合したり拡散接合したりしておくことで、簡便に配置し得る。
【0038】
上記絶縁性セラミックス皮膜は、アルミナや、ジルコニアや、イットリアや、マグネシアや、チタニアや、タンタル酸化物や、ランタン酸化物などの酸化物を主成分として、公知の溶射法や、スパッタ法や、蒸着法や、エアロゾルデポジッション法や、スプレー熱分解法や、印刷法などの皮膜法により形成することができる。
【0039】
ここで、セル板2を形成する工程A及びセパレータ板3を形成する工程Bにおいて、セル板2及びセパレータ板3の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸2a(3a)を形成する構成とすることが可能である。具体的には、図9及び図10に示すように、金属ガラス接合層17が直に接触するセル板2及びセパレータ板3の少なくともいずれか一方の周縁部を、超音波又は交流パルスを印加しつつ押圧する押圧体の表面の凹凸形状に沿って変形させる構成とすることが可能であり、凹凸2a(3a)の起伏量は、押圧体の表面形状に基づいて設定されるほか、セル板2及びセパレータ板3の材料や厚さ、金属ガラス接合層17の材料や接合時の温度や押圧条件に基づいて設定される。
【0040】
加えて、図11に示すように、セル板2及びセパレータ板3の双方の周縁部に金属エッジ枠16Aを配置して、これらの金属エッジ枠16Aのうちの金属ガラス接合層17と接合する金属エッジ枠16Aの面に、上記した凹凸2a(3a)と同様の凹溝やV字溝などの凹凸16aを形成しておくことができるほか、セル板2及びセパレータ板3の各表面や、金属ガラス接合層17と接合する金属エッジ枠16Aの表面にも、金属ガラス接合層を成膜しておくことができる。
【0041】
上記したように、セル板2及びセパレータ板3の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸2a(3a)を形成する構成や、セル板2及びセパレータ板3の周縁部に配置した金属エッジ枠16Aに凹凸16aを形成する構成を採用すると、金属ガラス接合層17の塑性変形が促進されて新生面が出やすくなるので、接合強度の向上が図られることとなり、加えて、接合時における押圧に際して、セル板2及びセパレータ板3の変形が抑えられて、単セル6の配置領域に歪みが生じ難くなり、その結果、単セル6の破損や、集電性能の劣化を回避し得ることとなる。
【0042】
上記したように、真空高温条件を必要としない本発明の接合方法を工程Dに採用すると、図7及び図8に示すように、固体電解質型燃料電池ユニット1の積層位置の調整を行いながら、絶縁接合が要求される工程Dを積層工程として行うことができ、これによって、工程Dよりも前の工程がとり得る工程温度領域が広がるので、接合性能や耐久性を重視した接合材や接合方法を選択することが容易になる。
【0043】
とくに、図8に示すように、単セル6を搭載する工程Cの前に、高いガスシール性能が要求されるユニット1,1間の接合を行う工程Eを行うことが可能になる。これにより、Niろう付けのような安価で且つ簡便であると共にシール接合の信頼性が高い接合方法を採用し得ることとなり、したがって、中央流路部品5が位置するユニット1,1間に対して、単セル6を劣化させることなくガスシール性に優れた接合を行うことができるので、耐熱衝撃性に優れた燃料電池スタック構造体を製造し得ることとなる。
【0044】
さらに、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部分同士を接合する工程Eは、ユニット1,1間にユニット間集電体15を設置すると共に中央流路部品5をガスシール接合する工程でもある。
【0045】
中央流路部品5の絶縁をユニット1内の接合部でとる場合は、この工程Eにおけるユニット1,1間の接合を電気的導通性のある接合とすることが可能であり、公知のろう付け法や、溶接法や、超音波溶接法や、拡散接合法などの手法によって接合することができる。一方、中央流路部品5の絶縁をユニット1外でとる場合は、この工程Eにおけるユニット1,1間の接合を電気的絶縁性で且つガスシール性のある接合とする必要があり、例えば、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることができるほか、公知のセラミックス−ガラス系接着材で貼付する手法によって接合することができる。
【0046】
本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を上記した互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部分同士を接合する工程Eに適用する場合、この工程Eは、工程A,Bの後において、図12及び図14に示すように、工程C,Dの後に実施することができるほか、図13に示すように、工程C及び工程Eの間に実施することができる。この工程Eを工程C,Dよりも後に実施する場合は、固体電解質型燃料電池ユニット1の各中心部分同士を接合することが、すなわち、固体電解質型燃料電池ユニット1を積層するということになる。
【0047】
とくに、図14に示すように、セル板2及びセパレータ板3の各周縁部同士を接合して袋構造の固体電解質型燃料電池ユニット1を形成した後、セル板2に燃料極層61と、電解質層62と、空気極層63とを順次成膜して単セル6を形成して、最後にユニット1,1間の絶縁ガスシールを行うことができ、この構成を採用した場合には、単セル6を形成していないセル板2及びセパレータ板3といった金属部材だけで固体電解質型燃料電池ユニット1を形成することから、厚さや形状のばらつきを少なく抑えた固体電解質型燃料電池ユニット1を形成し得ることとなり、また、ばらつきが生じたとしても熱処理などによって簡単に矯正することができる。
【0048】
ここで、燃料電池スタック構造体の出力密度を向上させるには、固体電解質型燃料電池ユニット1の積層密度を高くする必要があるが、そのためには、各固体電解質型燃料電池ユニット1の平面度が重要になる。固体電解質型燃料電池ユニット1に歪みがあると、ユニット1内及びユニット1,1間のガス流路高さがばらついてしまい、ガスの流れが一様でなくなったり、集電体4、,15の押し付け圧力が不均一となって集電抵抗が大きくなったりして、出力の損失が生じる。
【0049】
上記工程Eにおいて、ユニット1,1間のガス流路高さのばらつきを抑え得る本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の一実施形態としては、図15に示すように、中央流路部品5のガス導入流路51及びガス排出流路52と連通する貫通孔を有する平板状のセラミックス焼結体(セラミックス部材)26及びこのセラミックス焼結体26の両面に成膜した金属ガラス接合層17を具備して成るスペーサ部材20を作成し、このスペーサ部材20を固体電解質型燃料電池ユニット1,1間に挿入して、金属ガラス接合層17の過冷却液体域温度で中心部分を加圧して接合する構成を採用し得る。
【0050】
この際、図16(a),(b)に示すように、セラミックス焼結体26に代えて、金属板26Aに形成して成る絶縁セラミックス皮膜16Bをセラミックス部材として採用することができ、この絶縁セラミックス皮膜16Bの両面に金属ガラス接合層17を成膜してスペーサ部材20Cと成すことが可能である。
【0051】
これらの構成を採用すると、例えば、ユニット内に燃料ガスを流し、ユニット1,1間にカソード用と冷却あるいは温調用を兼ねる空気を流して発電する場合、一般的に空気流量の方が流量が多くなるが、その発熱量は発電量に依存するため、性能設計に応じて固体電解質型燃料電池ユニット1内の流路高さに比べてユニット1,1間の流路高さを調整して、ガス供給量や発電に伴う発熱温度分布を調整する場合において、スペーサ部材20,20Cの厚さ寸法を変えるだけで、ユニット1,1の間隔を容易に変更し得ることとなる。
【0052】
つまり、互いに同じ形状を成す固体電解質型燃料電池ユニット1に対して、運転条件や発電出力特性に応じて、固体電解質型燃料電池ユニット1,1の間隔を容易に調整することができるので、積層方向の温度分布のばらつきが少ない出力密度が高い燃料電池スタック構造体スタックを製造し得ることとなる。
【0053】
また、上記工程Eにおいて、ユニット1,1間のガス流路高さのばらつきを抑え得る本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法の他の実施形態として、図17に示す構成を採用し得る。この構成は、中央流路部品5が、セル板2及びセパレータ板3の平板部分をそれぞれ裏表から挟み込むようになっていて、ユニット1,1間の接合面の厚さが比較的大きい場合において、この中央流路部品5の一方に絶縁セラミックス皮膜(セラミックス部材)16Bと金属ガラス接合層17(あるいは中間層18及び金属ガラス接合層17)を順次形成し、金属ガラス接合層17の過冷却液体域温度で中央流路部品5の部分を加圧して接合するようになっている。
【0054】
この際、金属ガラス接合層17と直に接触する側の中央流路部品5の表面に、図18(a)に示すように、凹溝5aを形成したり、図18(b)に示すように、V字溝5bを形成したりすることができる。また、絶縁セラミックス皮膜16Bを成膜する側の中央流路部品5の表面にも、固体電解質型燃料電池ユニット1に歪みを生じさせることなく成膜前処理としての疎面化処理を施すことがで、さらに、セラミックス皮膜の成膜条件において、例えば、エアロゾルデポジッション法や溶射法における粒子速度を増加したとしても、固体電解質型燃料電池ユニット1の変形を抑制しつつ緻密且つ絶縁性能良好な皮膜を界面剥離を生じさせることなく成膜し得る。
【0055】
この構成を採用すると、板厚が厚い中央流路部品5に起伏の大きな凹溝5aやV字溝5bを形成したうえで、セラミックス部材としてのセラミックス皮膜16Bを成膜することができるので、金属ガラス接合層17の塑性変形を促進して新生面を出現させ易くなって、中央流路部品5及び金属ガラス接合層17の界面の接合強度が向上することとなり、加えて、中央流路部品5の表面に疎面化処理などの成膜前処理を施すことで、金属製の中央流路部品5及び絶縁セラミックス皮膜16の界面の接合強度も向上することとなる。
【0056】
そして、上記のようにして製造した本発明の燃料電池スタック構造体において、固体電解質型燃料電池ユニット1内の中央流路部品5,5間の接合部は、同種のガスの導入系及び排気系間のシールであるのに対して、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間のとくに外周縁部間の接合は、ユニット1内を流れる一方のガスとユニット1,1間を流れる他方のガスとをシールするため、固体電解質型燃料電池ユニット1の外周縁部間の接合には、高いシール性能が要求される。
【0057】
中央流路部品5,5間の絶縁は、ユニット1内及びユニット1外における中心部分間のいずれかでとる必要があるが、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を適用して、固体電解質型燃料電池ユニット1の外周縁部間を絶縁ガスシール接合した本発明の燃料電池スタック構造体とすることにより、中央流路部品5,5間の絶縁をユニット1内で行う構造とすることができ、これにより、高いシール性能が要求される固体電解質型燃料電池ユニット1,1間の接合は、耐熱衝撃性に優れる金属−金属間の接合とすることができる。
【0058】
このように、本発明の燃料電池スタック構造体では、固体電解質型燃料電池ユニット1のセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法によって接合しているので、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部間における接合の信頼性が向上することとなり、加えて、固体電解質型燃料電池ユニット1内及びユニット1,1間における集電体4,15のセル板2やセパレータ板3などに対する絶縁構造が簡略なものとなる。
【0059】
また、固体電解質型燃料電池ユニット1,1の中心部分間をガスシール耐久性が高い金属−金属接合構造とすることができるので、急速起動又は負荷変動運転の性能向上を図るためのバーナや改質器をユニット1の中心部分に組み込み得ることとなる。
【0060】
さらに、本発明の燃料電池スタック構造体において、固体電解質型燃料電池ユニット1のセル板2及びセパレータ板3の金属ガラス接合層17と直に接触する各外周縁部に、この外周縁部と同心状を成し且つ互いに接近する方向に突出する環状段差24,34をプレス加工によって形成する構成と成すことができ、この場合には、接合に伴う金属ガラス接合層の変形沈み込みや、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部の押圧体による変形を環状段差24,34が吸収することとなり、その結果、単セル6の破損や単セル6と集電体4,15との接触抵抗の増加を阻止し得ることとなる。
【0061】
さらにまた、本発明の燃料電池スタック構造体において、固体電解質型燃料電池ユニット1の中央流路部品5が位置する中心部分間を本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法によって接合する構成と成すことができ、この構成とした場合には、高温での電気絶縁性及びガスシール性能の向上を実現でき、その結果、接合強度及び信頼性を格段に高め得ることとなる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
図8に示すように、まず、工程A,Bにおいて、厚さ0.1mmのSUS430製の平板にプレス加工を施して、セル板2及びセパレータ板3を形成すると共に、両板2,3の各中央部分に中央流路部品5を上下から拡散接合し、これと同時に、セパレータ板3の外周縁部に、厚さ300μmのリング状の金属エッジ枠16Aを拡散接合した。
【0064】
この際、セル板2のセル形成領域はドーナツ形状を成しており、このセル形成領域は、口径5mmの丸型貫通孔が多数形成されたパンチング板状になっている。また、セル板2の外周縁部近傍には、図10(a)に示すように、外周縁部接合時の応力を緩和するためのプレスライン24が形成してある。
【0065】
次いで、工程Eにおいて、上に積層するセル板2と下に積層するセパレータ板3との間にユニット間集電体15を挟み込んだ状態で、集電体15,セル板2あるいはセパレータ板3の一部,中心流路部分をNiろう付け法によりろう付けした。この際、セパレータ板3の中心流路部分のユニット1の内側になる表面には、エアロゾルデポジッション法により、セラミックス部材であるアルミナ層16を15μm成膜した。また、セパレータ板3の外周縁部に取り付けた金属エッジ枠16Aの表面にも同様にアルミナ層16を成膜した。
【0066】
次に、金属ガラス接合層17の成膜時のぬれ性を向上させて、アルミナ層16と金属ガラス接合層17との密着強度を高めるために、二重リング状にCrスパッタ層を0.2μm成膜するのに続いて、同様にして二重リング状に厚さ5μmの金属ガラス接合層17をスパッタ成膜した。
【0067】
ここで、金属ガラス接合層17としては、Zr−Al−Cu−(Fe,Ni)系や、Pd−Ni−Cu系のものを用いることができる。中間層として、Cr層とガラス遷移温度が高い、例えば、Ni−Ta−Ti−(Zr,Hf,Nb)系の金属ガラス層18を成膜し、その上に金属ガラス接合層17であるZr−Al−Cu−Ni系を成膜することができる。
【0068】
これにより、例えば、超音波接合時において、金属ガラス接合層17が昇温して変形し、セパレータ板3と接合する際に、中間層としての金属ガラス層18の変形が少なく、超音波振動による応力を緩和することによって、アルミナ層16にクラックが生じるのを抑える効果が大きいものとなる。
【0069】
そして、工程Cにおいて、図8に拡大して示すように、セル板2のセル形成領域に空気極層63として、膜厚約30μmのLSC(ランタンストロンチウムクロム複合酸化物)を減圧コールドスプレー法で成膜した。この際、空気極層63は、セル板2の貫通孔からの覗く集電体15の表面の多孔部分を埋めると共に、セル板2と集電体15の表面との段差を埋めるように成膜される。
【0070】
これに続いて、電解質層62として、膜厚約15μmのYSZ(イットリアドープジルコニア)を対向ターゲットスパッタ法により、セル板2の多数の貫通孔を覆うように成膜した後、燃料極層61として、Ni−SDC(サマリウムドープセリア)を減圧コールドスプレー法で成膜した。
【0071】
最後に、工程Dにおいて、Ar雰囲気の中で、凹凸を有する押圧体としての電極間にセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部を挟み込み、10MPaで押圧しながら1kWの超音波を印加し、この状態で押圧電極を円周方向に少しずつ移動させて、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を接合した。
【0072】
そして、これらの工程を繰り返して固体電解質型燃料電池ユニット1を20層積層し、中央流路部品5が位置する中心部分を上下から押圧挟持した後、Ar雰囲気中において650℃まで昇温させて熱処理を行って、本実施例の燃料電池スタック構造体11を得た。
【0073】
そこで、上記のようにして形成した燃料電池スタック構造体11を580℃の高温環境下に置いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内にはHeガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間にはArガスを流したところ、ユニット1内からユニット1外へのガスリークは検知されず、各ユニット1のセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部間は絶縁状態で保持されていた。
【0074】
続いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内には水素ガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間には空気を流して発電テストを実施しところ、0.1W/cm2の発電出力が得られた。
【0075】
上記の試験結果から、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製作した本実施例の燃料電池スタック構造体11では、高温環境下においても、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部間における接合部分の絶縁ガスシール性が良好に維持されることが立証された。また、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることで、単セル6を搭載したセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を、単セル6を劣化させるような高温高真空条件を用いることなく接合可能であることが実証できた。
【0076】
[実施例2]
図14に示すように、まず、工程A,Bにおいて、厚さ0.1mmのSUS430製の平板にプレス加工を施して、セル板2及びセパレータ板3を形成すると共に、両板2,3の各中央部分に中央流路部品5を上下から拡散接合した。この際、セル板2のセル形成領域はドーナツ形状を成しており、このセル形成領域は、口径5mmの丸型貫通孔が多数形成されたパンチング板状になっている。
【0077】
次いで、セル板2に設けた中央流路部品5のユニット間接合面には、後工程において金属ガラス接合層17に新生面の出現を促進させるため、図18に示すように、深さ20〜100μmの凹溝5a又はV字溝5bを形成した。一方、セパレータ板3に設けた中央流路部品5のユニット間接合面には、エアロゾルデポジッション法を用いてセラミックス部材であるアルミナ層16を20μm成膜した。
【0078】
次に、金属ガラス接合層17の成膜時のぬれ性を向上させて、アルミナ層16と金属ガラス接合層17との密着強度を高めるために、図16(b)に示すように、アルミナ層16上にCrスパッタ層を二重リング状に0.2μm成膜するのに続いて、同様にして二重リング状に厚さ10μmの金属ガラス接合層17をスパッタ成膜した。
【0079】
このとき、合金微粉体を吹き付けて成膜するコールドスプレー法や微粉体プラズマ溶射法を用いて、中間層としてNi−Co−Cr−Al−Y合金系を0.5μm成膜した後、金属ガラス接合層17を成膜してもよく、金属ガラス接合層17としては、Ni−Ta−Ti−(Zr,Hf,Nb)系や、Zr−Al−Cu−(Fe,Ni)系や、Fe−Cr−Mo−C系などを用いることができる。
【0080】
そして、工程Dにおいて、集電体4を間にしてセル板2及びセパレータ板3を重ね合わせ、各外周縁部同士をレーザ溶接で接合して袋とじ構造の固体電解質型燃料電池ユニット1を形成した。この固体電解質型燃料電池ユニット1内の集電体4は、インコネル製金属メッシュであり、セル形成領域側の表面にSUS430の金属粉を焼結させることで多孔径を調整している。
【0081】
次に、工程Cにおいて、図14に拡大して示すように、セル板2のセル形成領域に燃料極層61として、Ni−SDC(サマリウムドープセリア)を減圧コールドスプレー法で成膜した。この際、燃料極層61は、セル板2の貫通孔からの覗く集電体4の表面の多孔部分を埋めると共に、セル板2と集電体4の表面との段差を埋めるように成膜される。
【0082】
これに続いて、電解質層62として、膜厚約15μmのYSZ(イットリアドープジルコニア)を対向ターゲットスパッタ法により、セル板2の多数の貫通孔を覆うように成膜した後、空気極層63として、LSC(ランタンストロンチウムクロム複合酸化物)を減圧コールドスプレー法で成膜した。
【0083】
最後に、工程Eにおいて、上記工程で作製した固体電解質型燃料電池ユニット1を20層積層し、中央流路部品5が位置する中心部分を上下から押圧電極で挟持して、炉にセットした。真空引きの後、Arをフローさせて段階的に昇温して押圧電極に圧力を印加調整しながら、押圧電極の交流パルス電圧を印加して接合し、最終的には620℃まで昇温させて熱処理を行って、本実施例の燃料電池スタック構造体11を得た。
【0084】
そこで、上記のようにして形成した燃料電池スタック構造体10を580℃の高温環境下に置いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内にはHeガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間にはArガスを流したところ、ユニット1内からユニット1外へのガスリークは検知されず、各ユニット1,1間は絶縁状態で保持されていた。
【0085】
続いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内には水素ガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間には空気を流して発電テストを実施しところ、0.1W/cm2の発電出力が得られた。
【0086】
上記の試験結果から、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製作した本実施例の燃料電池スタック構造体11では、高温環境下においても、固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部間における接合部分の絶縁ガスシール性が良好に維持されることが立証された。また、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることで、単セル6を搭載したセル板2及びこのセル板2と隣接するセパレータ板3の各中心部同士を、単セルを劣化させるような高温高真空条件を用いることなく接合可能であることが実証できた。
【0087】
[実施例3]
図12に示すように、まず、工程A,Bにおいて、厚さ0.1mmのSUS430製の平板にプレス加工を施して、セル板2及びセパレータ板3を形成すると共に、実施例2と同様にして両板2,3の各中央部分に中央流路部品5を上下から拡散接合した。
【0088】
次いで、セル板2に設けた中央流路部品5のユニット間接合面の中心部分には、後工程において金属ガラス接合層17に新生面の出現を促進させるため、深さ20〜100μmの凹溝5a又はV字溝5bを形成した。一方、セパレータ板3に設けた中央流路部品5のユニット間接合面には、エアロゾルデポジッション法を用いてアルミナ層16を20μm成膜した。
【0089】
この際、金属ガラス接合層17の成膜時のぬれ性を向上させて、アルミナ層16と金属ガラス接合層17との密着強度を高めるために、アルミナ層16上にCrスパッタ層を二重リング状に0.2μm成膜するのに続いて、同様にして二重リング状に厚さ10μmの金属ガラス接合層17をスパッタ成膜した。
【0090】
次に、工程Cにおいて、図2(b)に示すように、Ni−YSZ燃料極支持体61上に電解質層62としてのYSZ(イットリアドープジルコニア)を膜厚約30μmで形成して成る単セル6を用い、この単セル6の電解質層62におけるセル板2との接合部分に対して、膜厚約0.5μmのイオンバリア層としてのアルミナ層19及び膜厚約0.2μmの中間層としてのCr層18をRFスパッタ法により順次成膜した後、Ni−Ta−Ti−(Zr,Hf,Nb)系の金属ガラス接合層17を対向ターゲットスパッタ法により10μm成膜した。
【0091】
続いて、セル板2の所定位置に上記単セル6の電解質層62をセットして金属ガラス接合層17をセル板2に接触させ、真空中において、パルス通電する電極を押し付けつつ750℃まで段階的に昇温させてパルス通電して接合した。
【0092】
この後、セル板2の所定位置に接合した電解質層62の表面に、空気極層63としてのLSCF(ランタンクロマイト系)を成膜して、セル板2を完成させた。
【0093】
そして、工程Dにおいて、集電体4を間にしてセル板2及びセパレータ板3を重ね合わせ、各外周縁部同士をレーザ溶接で接合して袋とじ構造の固体電解質型燃料電池ユニット1を形成した。
【0094】
最後に、工程Eにおいて、上記工程で作製した固体電解質型燃料電池ユニット1を20層積層し、中央流路部品5が位置する中心部分を上下から押圧電極で挟持して、炉にセットした。真空引きの後、Arをフローさせて段階的に昇温して押圧電極に適宜圧力を加えながら、押圧電極の交流パルス電圧を印加して接合し、最終的には620℃まで昇温させて熱処理を行って、本実施例の燃料電池スタック構造体11を得た。
【0095】
そこで、上記のようにして形成した燃料電池スタック構造体11を580℃の高温環境下に置いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内にはHeガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間にはArガスを流したところ、ユニット1内からユニット1外へのガスリークは検知されず、各ユニット1,1間は絶縁状態で保持されていた。
【0096】
続いて、固体電解質型燃料電池ユニット1内には水素ガスを導入すると共に、固体電解質型燃料電池ユニット1,1間には空気を流して発電テストを実施しところ、0.1W/cm2の発電出力が得られた。
【0097】
上記の試験結果から、本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製作した本実施例の燃料電池スタック構造体11では、高温環境下においても、セル板2と単セル6との接合部分の絶縁ガスシール性が良好に維持されることが立証された。
【0098】
なお、この実施例において、上記工程Eにおける固体電解質型燃料電池ユニット1,1の各中心部分間の接合に、公知のガラス−セラミックス系接着剤を用いることも可能である。
【0099】
また、図8のように、実施例1と同様の絶縁処理や金属ガラス接合層17をあらかじめ形成したセル板2及びセパレータ板3を用いて、実施例1と同様の方法でセル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を接合した後、ユニット1,1間に金属製ガスシール材を介在させて、ユニット1,1の各中心部分間をねじ止め締結して燃料電池スタック構造体11と成すこともできるほか、図7や図13に示すように、ユニット1,1の各中心部分間の接合を先に行った後、セル板2及びセパレータ板3の各外周縁部同士を溶接して接合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際の一実施態様を示す製造工程説明図である。
【図2】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際の他の実施態様を示す単セルとセル板との接合部分における拡大断面説明図(a)及びさらに他の実施態様を示す単セルとセル板との接合部分における拡大断面説明図(b)である。
【図3】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて製造した一実施態様による燃料電池スタック構造体を示す全体斜視説明図である。
【図4】図3A−A線に基づく断面説明図である。
【図5】図3における燃料電池スタック構造体を構成する固体電解質型燃料電池ユニットの分解斜視説明図である。
【図6】図3における燃料電池スタック構造体を構成する固体電解質型燃料電池ユニットの単セルの配置パターンを示すセル板の平面説明図(a)〜(c)である。
【図7】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。
【図8】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。(実施例1)
【図9】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示すセル板及びセパレータ板の各外周縁部同士の接合部分における拡大断面説明図(a),(b)である。
【図10】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示すセル板及びセパレータ板の各外周縁部同士の接合部分における拡大断面説明図(a),(b)である。
【図11】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示すセル板及びセパレータ板の各外周縁部同士の接合部分における拡大断面説明図である。
【図12】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。(実施例3)
【図13】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。
【図14】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す製造工程説明図である。(実施例2)
【図15】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分同士の接合部分における拡大断面説明図である。
【図16】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分間に挟み込まれる金属エッジ枠の部分拡大断面説明図(a)及び平面説明図(b)である。
【図17】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分同士の接合部分における拡大断面説明図である。
【図18】本発明のセラミックス部材と金属部材との接合方法を燃料電池スタック構造体の製造に用いた際のさらに他の実施態様を示す隣接する固体電解質型燃料電池ユニットの中心部分同士の接合部分における部分拡大断面説明図(a),(b)である。
【符号の説明】
【0101】
1 固体電解質型燃料電池ユニット
2 セル板
2a セル板周縁部の凹凸
3 セパレータ板
3a セパレータ板周縁部の凹凸
5 中央流路部品
6,6A,6B 単セル
11 スタック構造体
16 絶縁エッジ枠(セラミックス部材)
16B セラミックス皮膜(セラミックス部材)
17 金属ガラス接合層
18 中間層
19 バリア層
21,31 ガス導入孔
22,32 ガス排出孔
26 セラミックス焼結体(セラミックス部材)
62 電解質層(セラミックス部材)
S 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス部材と金属部材とを接合するに際して、セラミックス部材の表面に金属ガラス接合層を成膜した後、この金属ガラス接合層に金属部材を接触させて金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合することを特徴とするセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項2】
セラミックス部材が酸化物系である場合において、セラミックス部材の表面に中間層を成膜した後、金属ガラス接合層を成膜する請求項1に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項3】
Ti、Zr、Hf、Al、Si、Ge、Sn、Zn、Cr、Laから選ばれる一つの元素を主成分として含む層を中間層とした請求項2に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項4】
金属ガラス接合層よりもガラス遷移温度が高い金属ガラス層を中間層とした請求項2に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項5】
金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合した後、押圧力を開放した状態で金属ガラス接合層の結晶化温度近傍まで温度を上昇させる熱処理を行うのに続いて冷却する請求項1〜4のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項6】
中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、金属製のセル板に単セルを設置する工程において請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることを特徴とする燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項7】
中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程において、金属製のセル板及び金属製のセパレータ板の各周縁部間にセラミックス部材を配置して請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることを特徴とする燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項8】
中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程において、固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分間にセラミックス部材を配置して請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることを特徴とする燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項9】
セル板を形成する工程及びセパレータ板を形成する工程において、セル板及びセパレータ板の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸を形成する請求項6又は7に記載の燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項10】
単セルを保持していると共に中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有するセル板と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部をセル板の周縁部に接合させたセパレータ板と、セル板及びセパレータ板の間に形成される空間内の各中心部分間に位置して各々のガス導入孔及びガス排出孔と連通する中央流路部品を具備した固体電解質型燃料電池ユニットを複数積層して成る燃料電池スタック構造体において、セル板に対して、請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて単セルを取り付けてあることを特徴とする燃料電池スタック構造体。
【請求項11】
単セルを保持していると共に中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有するセル板と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部をセル板の周縁部に接合させたセパレータ板と、セル板及びセパレータ板の間に形成される空間内の各中心部分間に位置して各々のガス導入孔及びガス排出孔と連通する中央流路部品を具備した固体電解質型燃料電池ユニットを複数積層して成る燃料電池スタック構造体において、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士及び/又は互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士が請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて接合してあることを特徴とする燃料電池スタック構造体。
【請求項12】
固体電解質型燃料電池ユニットのセル板及びセパレータ板の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸が形成してある請求項10又は11に記載の燃料電池スタック構造体。
【請求項1】
セラミックス部材と金属部材とを接合するに際して、セラミックス部材の表面に金属ガラス接合層を成膜した後、この金属ガラス接合層に金属部材を接触させて金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合することを特徴とするセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項2】
セラミックス部材が酸化物系である場合において、セラミックス部材の表面に中間層を成膜した後、金属ガラス接合層を成膜する請求項1に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項3】
Ti、Zr、Hf、Al、Si、Ge、Sn、Zn、Cr、Laから選ばれる一つの元素を主成分として含む層を中間層とした請求項2に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項4】
金属ガラス接合層よりもガラス遷移温度が高い金属ガラス層を中間層とした請求項2に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項5】
金属ガラス接合層の過冷却液体域で押圧して接合した後、押圧力を開放した状態で金属ガラス接合層の結晶化温度近傍まで温度を上昇させる熱処理を行うのに続いて冷却する請求項1〜4のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法。
【請求項6】
中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、金属製のセル板に単セルを設置する工程において請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることを特徴とする燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項7】
中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程において、金属製のセル板及び金属製のセパレータ板の各周縁部間にセラミックス部材を配置して請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることを特徴とする燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項8】
中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つその周囲に単セルが設置される金属製のセル板を形成する工程と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部がセル板の周縁部に接合される金属製のセパレータ板を形成する工程と、セル板に単セルを設置する工程と、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士を接合して固体電解質型燃料電池ユニットを形成する工程と、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程を有する燃料電池スタック構造体の製造方法であって、互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士を接合する工程において、固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分間にセラミックス部材を配置して請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いることを特徴とする燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項9】
セル板を形成する工程及びセパレータ板を形成する工程において、セル板及びセパレータ板の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸を形成する請求項6又は7に記載の燃料電池スタック構造体の製造方法。
【請求項10】
単セルを保持していると共に中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有するセル板と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部をセル板の周縁部に接合させたセパレータ板と、セル板及びセパレータ板の間に形成される空間内の各中心部分間に位置して各々のガス導入孔及びガス排出孔と連通する中央流路部品を具備した固体電解質型燃料電池ユニットを複数積層して成る燃料電池スタック構造体において、セル板に対して、請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて単セルを取り付けてあることを特徴とする燃料電池スタック構造体。
【請求項11】
単セルを保持していると共に中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有するセル板と、中心部分にガス導入孔及びガス排出孔を有し且つ周縁部をセル板の周縁部に接合させたセパレータ板と、セル板及びセパレータ板の間に形成される空間内の各中心部分間に位置して各々のガス導入孔及びガス排出孔と連通する中央流路部品を具備した固体電解質型燃料電池ユニットを複数積層して成る燃料電池スタック構造体において、セル板及びセパレータ板の各周縁部同士及び/又は互いに積層する固体電解質型燃料電池ユニットの各中心部分同士が請求項1〜5のいずれか一つの項に記載のセラミックス部材と金属部材との接合方法を用いて接合してあることを特徴とする燃料電池スタック構造体。
【請求項12】
固体電解質型燃料電池ユニットのセル板及びセパレータ板の少なくともいずれか一方の周縁部に凹凸が形成してある請求項10又は11に記載の燃料電池スタック構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−46329(P2009−46329A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211832(P2007−211832)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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