説明

セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法

【課題】製造効率を低下させることなく、薄く、高く、微小ピッチで放熱性に優れたフィンを有する、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体を効率的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】薄いアルミニウム板21と、厚いアルミニウム31とでセラミック基板10を、アルミ合金系ロウを介して挟んでロウ付けして、接合体仕掛品100aとした後、薄いアルミニウム板21をエッチングにより所定のパターンの回路用金属層に形成し、その後、厚いアルミニウム板31の表面に、切り起こし法によってフィン41を形成して、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体を製造する。ロウ付け過程では、フィン41はないから、それに座屈等の変形を生じさせることなく、薄く、微小ピッチのフィン付きの接合体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール等に使用される冷却用のフィン付きの放熱部材(ヒートシンク)の接合されたセラミック基板など、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体(以下、単に「接合体」とも言う)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール等の半導体装置や電子部品の搭載に用いられるセラミック基板に、それらの発熱体を冷却するためのフィン(冷却フィン、凹凸)の付いた放熱部材が接合された接合体の製造方法としては、各種の技術が提案されている。一方、この接合体を構成する放熱部材は、熱伝導性や放熱性、さらには被加工性などから、アルミニウムや銅、或いはこれらを主成分とする合金から、或いはこれらを主体としたものから形成されることが多い。そして、このようなフィン(ひれ)付き放熱部材についても各種の製造方法(製法)が知られている。
【0003】
ところで、電子部品等については益々その小型化、高密度化が進んでいる。このため、セラミック基板に接合されるフィン付きの放熱部材についても、小型で高い放熱性のものが要求されてきている。このような要請に応えるためには、フィンの厚さを薄くし、かつこれを小さいピッチで多数形成し、いかに放熱面積を広く確保するかが重要である。これに応えるフィン付きの放熱部材としては、金属部材(金属板)の一方の面において、薄く、小ピッチで多数のフィンを起立状に起こすように形成する加工法、すなわち、刃物(切削工具の切れ刃)を金属部材の面に沿うように斜めに切り込むことで、その表面にフィンを切り起こすように形成し、小ピッチで次々と切り込むことで多数のフィンを形成する方法(切り起こし法)が知られている(特許文献1)。また、セラミック基板と放熱部材との接合に関しては各種の技術が知られている。この場合、高い熱伝導性を保持するためには、活性ロウを用いる技術のほか、セラミック基板(例えばアルミナ基板)とアルミニウム又はこれを主成分とする合金製(以下、単にアルミニウム製ともいう)の放熱部材とを、基板にメタライズ層を形成することなく、その両者間にアルミ合金(例えば、Al−Si)系のロウ材を介在させ、所定温度下で加圧して接合する技術も知られている(特許文献2)。
【0004】
他方、セラミック基板にフィンを形成する技術としては、溶湯法によりその基板にフィンを一体的に形成する技術も知られている(特許文献3)。これは、セラミック基板を、フィン形状を有する所定温度に保持された鋳型内に配置し、不活性ガス雰囲気下(又は真空下)で溶融させたアルミニウム(溶湯)を同雰囲気下で、その鋳型内に加圧状態で流して同基板に接触させ、その後、冷却、固化させることで、フィン付きの放熱部材を同基板に一体形成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−142996号公報
【特許文献2】特開2004−152971号公報
【特許文献2】特開2004−115337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の製法のうち、フィンを有するアルミニウム製の放熱部材を、セラミック基板にアルミ合金系のロウ材によりロウ付けするためには、両者の接合面間に一定の面圧(例えば、0.2MPa)をかける必要がある。このため、このようなロウ付け法ではフィンの先端に対して大きな荷重(外力)が作用する。一方、切り起こし法によって形成されるフィンは、放熱部材(素材)に刃物で切り込むことで、その面を所定の厚さで切り起こして塑性変形させることで形成されるものである。したがって、このようなフィンは、面に垂直に起立する形とはならず、通常、若干傾斜し、或いは若干カールした状態で立ち上がる状態で形成される。したがって、このような切り起こし法で薄く形成されたフィンを有する放熱部材をロウ付けする場合には、特に、フィンの高さが高いほど、座屈等の変形を生じがちとなる。すなわち、切り起こし法によって、一方の面にフィンを形成してなる放熱部材をその根元側のベース部(基部)の表面を、セラミック基板に接触させるようにし、その接合面間に面圧がかかるようにしてロウ付けする場合には、フィンの厚さの微小化や、その高さの高寸法化には自ずと限界があり、したがって、薄く高いフィンの付いた放熱部材をロウ付けしてなる接合体の製造には限界があった。
【0007】
また、このようにしてフィンを形成した放熱部材をセラミック基板にロウ付けする場合には、そのフィンがある分、放熱部材自体のかさ(体積)が大きいものとなる。したがって、接合炉(ロウ付け炉)は、その内部空間の大きいものが必要となるため、そのロウ付けにおける生産性ないし製造効率が悪くなり、コストアップを招いてしまうという問題もある。
【0008】
さらに、溶湯法により、セラミック基板に溶融したアルミニウムを接触させて、その冷却、固化後にフィン付きの放熱部材を一体形成する技術では、薄くかつ面積の広いフィンや、高さ寸法の大きいフィンを微小ピッチで形成することは困難である。というのは、湯回り性(溶融金属の流動性)の問題や、形成したフィンを鋳型から抜くために付与すべき型抜き勾配等、鋳造法に起因する制約があるためである。
【0009】
しかも、溶湯法によってセラミック基板にフィン付き放熱部材を形成する場合、フィンが形成された面と反対側の面に、同時に回路用金属層部位を形成し、この金属層部位を、後でエッチングにより所定パターンの回路に形成するということは事実上困難である。そのエッチングのためには、鋳造されたフィンにもエッチングレジストを塗布する必要があるが、多数の凹凸であるフィンにレジストを塗布し、その後、除去することは極めて非効率的である。一方、回路用金属層部位の表面のみにエッチングレジストを塗布してパターン形成し、その面のみをエッチング溶液に晒すことも困難である。これらがその理由である。
【0010】
本発明は、セラミック基板と金属製のフィン付き放熱部材が接合状態にあり、熱伝導性及び放熱性に優れた接合体の製造方法におけるような、上記した問題点に鑑みてなされたもので、ロウ付け時の圧力によるフィンの座屈等による変形や、製造効率の低下を招くことなく、薄く、高く、しかも、微小ピッチで放熱性に優れたフィンを有する、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体を効率的に製造することのできる方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の発明は、セラミック部材と金属製のフィン付き放熱部材が接合状態にある、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法において、
前記セラミック部材に、前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を接合状態で形成し、
その形成後に、前記金属部位の表面に、切り起こし法によってフィンを形成するフィン形成工程を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、セラミック部材はセラミック基板であって、その一方の面に回路用金属層が形成されており、その他方の面に金属製のフィン付き放熱部材が接合状態にある、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法において、
該セラミック基板の一方の面には前記回路用金属層の形成用の金属部位を、該セラミック基板の他方の面には前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を、同一の工程においてそれぞれ接合状態で形成し、
その形成後に、前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位の表面に、切り起こし法によってフィンを形成するフィン形成工程を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記セラミック基板の一方の面には前記回路用金属層の形成用の金属部位を、該セラミック基板の他方の面には前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を、同一の工程においてそれぞれ接合状態で形成した後、
前記フィン形成工程の前に、
前記回路用金属層の形成用の金属部位を、エッチングにより所定のパターンの回路用金属層に形成する回路用金属層形成工程を含むことを特徴とする、請求項2に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記金属部位は、前記セラミック部材に金属部材をロウ付けすることで、接合状態で形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法である。そして、請求項5に記載の発明は、前記金属部位は、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金であり、これを溶湯法によって前記セラミック部材に接合状態で形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製法は、従来技術のように、別途、形成されたフィン付きの放熱部材を、セラミック部材にロウ付けすることによって接合体を製造する方法でなく、また、セラミック基板に溶湯法によってフィン付きの放熱部材を一体化した接合体を製造するという方法でもない。本発明の製法は、セラミック部材に、まず、フィン付き放熱部材を形成するための金属部位を、手段に関係なく接合状態で形成しておき、その後で、この金属部位にフィンを切り起こし法によって形成することで、接合体を製造するというものである。
【0016】
すなわち、本発明では、セラミック部材に金属部位を接合状態で形成するのに、金属板等の金属部材をロウ付けで接合するとしても、その過程ではフィンは存在しないから、従来のようにフィンが座屈する等の変形の問題はない。そして、セラミック部材に接合状態で形成された金属部位に、切り起こし法によりフィンを形成するものであるから、接合体の大小に関係なく、切り起こし可能な範囲で、薄く、高さのある放熱性に優れたフィンを形成できる。したがって、熱伝導性及び放熱性に優れたフィン付き放熱部材付きの接合体を効率的に得ることができる。また、金属部材をロウ付けで接合するとしても、そのロウ付け過程ではフィンは存在しないから、従来のようにフィンがあるために、その分、接合炉を大きくする必要もないので製造効率を高めることもできる。すなわち、本発明は、従来と同様に、フィンを切り起こし法で形成するものではあるが、フィンの形成を、金属部位をセラミック部材に接合状態で形成した後において行うものであることから、このように際立って優れた効果が得られる。
【0017】
また、溶湯法によりフィン付き放熱部材をセラミック部材に形成する製法に比べると、本発明では、接合状態で形成した金属部位に、フィンを切り起こし法にて形成するものであるから、鋳造上の制約に関係なく、薄く、高さ寸法があり、しかも微小ピッチでフィンを形成できる。なお、本発明では、1つのセラミック部材に、フィン付き放熱部材を1以上接合してなるような接合体としても具体化できるし、セラミック部材がセラミック基板のような板、又は帯状の板であるような場合には、その一方の主面又は表裏の両主面において、フィン付き放熱部材を1以上接合してなる接合体としても具体化できる。
【0018】
請求項2に記載の製法によれば、セラミック基板の両面に、同一工程で、金属部位を接合状態で形成している。したがって、ロウ付けにより接合するような場合のように、接合面間に大きな熱膨張差が発生するような場合でも、セラミック基板に反りやクラック等が発生するのを有効に防止できる。
【0019】
さらに請求項3に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製法のように、前記フィン形成工程前に、前記回路用金属層の形成用の金属部位を、エッチングにより所定のパターンの回路用金属層に形成する回路用金属層形成工程を含む製法では、放熱部材をなす側の金属部位にエッチングレジストを塗布することに問題もないので、所定のパターンの回路用金属層をエッチングにより問題なく形成できる。したがって、本製法によれば、半導体装置等の発熱体をセラミック基板の回路用金属層に搭載する構成のパワーモジュール用の放熱モジュールを効率的に製造できる。なお、この場合には、そのエッチングの後で、フィン形成側の金属部位におけるレジストを除去してから、その金属部位の面に切り起こし法にてフィンを形成すればよい。すなわち、本発明によれば、金属部位をロウ付け、又は溶湯法で接合状態で形成する場合も含め、その形成手段にかかわらず、半導体搭載用の、放熱部材付きのセラミック基板をなすような接合体を問題なく製造できる。
【0020】
本発明において、セラミック部材に金属部位を接合状態で形成する手段は、ロウ付け、又は溶湯法が好ましいが、セラミック部材に金属部位を接合状態で形成した後、フィンの切り起こし加工において、両者の接合界面において剥離(分離)等の問題が生じない限り、金属とセラミックスを接合する公知のいずれの手段を用いてもよい。ここで、ロウ付けは、活性ロウによるものとしてもよいし、セラミック部材の表面にメタライズ層を形成してロウ付けしてもよいが、セラミック基板がアルミナで、金属部材がアルミニウム又はこれを主成分とする合金である場合には、アルミ系合金(Al−Si合金)ロウを用いて加圧下で直接ロウ付けしてもよい。また、セラミック基板がチッカ珪素で、金属板が銅又はこれを主成分とする合金である場合には、活性ロウ(例えば、Ag−Cu−Ti系合金)を用いればよい。さらに、セラミックがチッカ珪素(又はアルミナ)で、金属が銅であれば、Ag−Cu−In−Ti,Ag−Cu−Ti,Cu−Sn−Tiなどの活性ロウを用いることもできる。
【0021】
また、セラミックがアルミナで、その表面に、モリブデン、マンガン等のメタライズ層が同時焼成で形成されているものでは、銅製の金属部材を銀ロウを用いて接合してもよい。さらに、セラミックがチッカ珪素では、活性金属層をCVDやスパッタリングで形成しておいてもよい。すなわち、ロウ付けにより接合する場合には、セラミック部材と、金属部位をなす金属部材との材質に応じ、ロウ付けに適するロウを用い、要すればメタライズ層をセラミック部材の表面に形成しておけばよい。そして、セラミックが、チッカアルミ、アルミナ、チッカ珪素である場合には、アルミニウム(又はアルミニウム合金)を溶湯法で形成できる。このほか、DBC(Direct Bond Copper)法、接着剤による接着、両者の接合面に、相互に圧入嵌合する凹凸を形成しておいて圧入嵌合させることで一体接合する手段、金属ナノペーストによる低温焼結が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した製法の実施の形態例(実施例1)で製造した接合体の説明用正面図(フィンの切り起こし状態の図)。
【図2】実施例1の接合体を製造する工程の説明図。
【図3】図1のフィンの切り起こし状態を拡大して示した説明図。
【図4】図1の接合体をフィン付き放熱部材側から見た図。
【図5】図4において、フィンの幅方向中央に切込みを入れた説明図。
【図6】本発明を具体化した製法の実施例2(変形例)で製造した接合体の説明用正面断面図。
【図7】実施例2の接合体を製造する工程の説明図。
【図8】本発明を具体化した製法の実施例3(変形例)で製造した接合体の説明用正面断面図。
【図9】実施例3の接合体を製造する工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の製法を具体化した実施の形態例(実施例1)について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。ただし、本例では、図1に示したようなフィン付き放熱部材40付きの回路基板をなす接合体101であって、図2に示したように、セラミック基板10の表裏各面に、厚さの異なる4Nのアルミニウム製の平板(アルミニウム板)21,31をロウ付けし、そのうちの厚い方のアルミニウム板(金属部位)31の表面に、切り起こし法でフィン41を形成してなるものを製造する場合で説明する。なお、薄い方のアルミニウム板21は回路用金属層(導電性金属層)の形成用の金属部位である。
【0024】
すなわち、本例では、図2−Aに示したように、セラミック基板(例えば、□30mm角(正方形)で、厚み、1mmのアルミナ板(Al))10を、2枚のアルミニウム板(□30mm角(正方形)で、厚さ、0.5mmと、2mm)21,31で挟んで、図2−Bに示したように、1枚の□30mm角の3層構造の積層板となるように重ねる。ただし、セラミック基板10と、各アルミニウム板21,31の間には、アルミニウム系のロウ材(Al−Si系のロウ材箔。図示せず)を介在させる。そして、これら3者の厚み方向に所定の面圧(0.2MPa)がかかるように錘を載せ、接合炉中でロウ付け温度(630℃)に所定時間加熱して各面間をロウ付けした。これにより、セラミック基板10の各面に、0.5mm厚のアルミニウム板21からなる金属部位(回路用金属層の形成用の金属部位)と、2.0mm厚のアルミニウム板31からなる金属部位(フィン付き放熱部材の形成用の金属部位)とが接合状態で形成された、厚さが略3.5mmの3層構造の接合体(仕掛品)100aを得た(図2−B参照)。
【0025】
次に、この接合体(仕掛品)100aにおける両アルミニウム板21,31には、その全面にエッチングレジストを塗布し、本例では、0.5mm厚のアルミニウム板21側に、その各辺(4辺)とも外縁端に沿って、所定幅(例えば2mm)でアルミニウムが露出するようにし、エッチングした。これにより、図2−Cに示したように、0.5mm厚のアルミニウム板21側の各辺に沿って、幅2mmのセラミック部位(絶縁部位)12を露出させ、そのアルミニウム板21が□26mm角の回路用金属層(導電性金属層)となるようにした。そして、レジストを除去して回路用金属層を有する接合体(仕掛品)100bとした。
【0026】
次に、この回路用金属層を有する接合体(仕掛品)100bにおけるアルミニウム板31に、図2−Dに示したようにフィン41を形成する。すなわち、この接合体(仕掛品)100bを、フィンの切り起こし用の加工工程に回し、加工機(切削機械)において固定し、2.0mm厚のアルミニウム板31の表面に、その1辺に沿う形で、図3に示したように、刃物(切削工具の切れ刃)800を斜めに切り込ませ、切り起こし法により、順次、肉厚の薄いフィン41を微小ピッチで多数形成して、図1に示したような接合体であるフィン付き放熱部材付きの回路基板101を得た。なお、このような本例では、切り起こし後のフィン41は、図3に示したようにカール形状を呈しており、その肉厚T1が略0.5mmで、ピッチP1が1.5mm、そして高さH1が3mmで、根元(セラミック基板10側)におけるアルミニウム部位の厚み(平均厚さ)T2が、反対側のアルミニウム板(回路用金属層)21の厚みと略同じとなるようにした。なお、フィン41は、2.0mm厚のアルミニウム板31の表面の全域に形成してもよいが、本例では、図4に示したように、そのアルミニウム板31における各辺(4辺)とも、外縁端に沿って所定幅(幅2mm)で、四角枠状の四角枠部35として残存させ、その枠の内側において、幅26mmのフィン41を多数形成した。
【0027】
このようにして製造されたフィン付き放熱部材付きの回路基板(以下、接合体ともいう)101では、微小な肉厚T1(0.5mm)、微小なピッチP1(1.5mm)で、しかも高さ寸法H1が3mmと高い多数のフィン41を有する放熱効果の高いフィン付き放熱部材40を有するものをなしている。このような本例では、フィン41の切り起こし法による形成を、アルミニウム板31をセラミック基板10にロウ付けした後で行うことで、接合体101として製造したものであるから、別途に、フィン付き放熱部材として形成した放熱部材をセラミック基板にロウ付けするような場合に発生する、フィンの座屈等の問題や、接合炉が大きくなることによる製造効率の低下を招くこともなく、薄く、放熱効果の高いフィンを有する接合体を効率的に得ることができる。なお、図1では、フィン41を直線状で斜めに立ち上がっている状態に簡略化して示している。
【0028】
また、本例では、上記もしたように、この周囲の各辺の外縁に沿って幅2mmのアルミニウム板部位からなる四角枠部35が残存していることから、この四角枠部35を、冷媒流路に対する取り付け部として有効に利用することもできる。すなわち、例えば、このようなフィン41を水冷とする場合には、その流路における取り付け部位に対し、接合体のこの四角枠部35を取り付け面とし、ここにリング状パッキンを介在させるなどして取り付けることで、高いシール性を保持することもできる。さらに、本例では、セラミック基板10の各面側におけるアルミニウムの実質的な厚みを上記したように均一化しているため、ヒートサイクルによるセラミック基板10の反りやクラックの発生防止が図られている。したがって、パワーモジュールに好適な放熱モジュールとなすことができる。
【0029】
なお、前記接合体101のフィン41は、図5に示したように、その幅方向の例えば中間位置で、その高さ方向に根元までスリット(切り込み)45を形成しておくのが好ましい。というのは、このようなスリット45が無い場合には、フィン41がその幅(26mm)方向に延びる多数のリブをなすことから、その方向に直交する垂直な断面を横断面とする曲げに関する強度は、フィン41が幅方向に連なっている分、これと直交する横断面に比べて、著しく大きいくなり、その直交する方向における強度上のアンバランスが発生する。これに対して、前記のようにスリット45を入れておけば、直交する方向の両断面における強度のアンバランスを小さくできるため、熱応力のアンバランスによりセラミック基板10に発生する応力のアンバランスも小さくできる。これにより、セラミック基板10の反りやクラック等の発生を低減させることができる。この意味で、スリット45は、なるべく複数列、切り込むように形成するのが好ましい。因みに、このようなスリット45の形成のためには、切り起こし前に、アルミニウム板31にスリット45形成用の切込みを入れておいてもよいし、ロウ付けするアルミニウム板自体を複数に分割しておいてもよい。さらには、フィンの切り起こしと同時に、スリットが切削される(削り込まれる)ように刃先が形成された切り起こし用の刃物を使用することとしてもよい。
【0030】
上記例では、セラミック基板10の両面の金属部位の形成を、アルミニウム板21,31をロウ付けすることで行ったが、ロウ付けに代えて溶湯法で形成してもよい。なお、溶湯法で各金属部位を形成した後は、上記と同様の工程を経ることにより、放熱効果の高いフィンを有する接合体が得られることは明らかである。なお、このように溶湯法で形成する場合には、アルミニウムの表面状態によっては、要すれば、その表面を平面研削等で平滑になるようにしてから、フィンを切り起こすようにすれば良い。
【0031】
さて、次ぎに本発明の製法を具体化した実施例2について、図6、図7に基づいて説明する。ただし、本例と上記例(実施例1)とは、図6、7に示したように、本例で製造する接合体201が、上記例におけるアルミニウム板のうち、厚さが2.0mm厚の□30mm角のアルミニウム板に代えて、厚さがこれよりさらに厚い3mmで、□50mm角のアルミニウム板51を用いると共に、その中央に外形輪郭と同心相似形配置で、平面視、□30mm角で、1mmの深さの平坦な凹部(凹み)53をプレス成形してなる成形板を用いている点と、それを用いた3層構造をなす接合体構造をなしている点のみが異なるだけであり、上記例の変形例とでも言うべきものである。したがって、製造工程及び効果については、上記例と本質的相違はないので、前例と同一部位又は対応する部位には、同一の符号を付すなどし、相違点を中心として簡潔に説明する。
【0032】
すなわち、本例では、図6、7に示したように、□50mm角のアルミニウム板51の凹部53内に、アルミナ製のセラミック基板(□30mm角(正方形)、厚み、1mm)10、配置すると共に、このセラミック基板10の上に、厚さの薄いアルミニウム板(厚み、0.5mm)21を配置し、各板間をロウ付けし、そのうちの3mm厚のアルミニウム板(金属部位)51の凸となす部位55の表面に、切り起こし法でフィン41を形成してなる接合体(フィン付き放熱部材付きの回路基板)201を製造したものである。
【0033】
すなわち、図7−A、Bに示したように、□50mm角のアルミニウム板(厚み3mm)51の凹部53内のその底面上に、1mm厚のセラミック基板10を配置して、このセラミック基板10の上に、0.5mm厚のアルミニウム板21を配置する。このとき、その各面間には、上記したのと同じロウ材を介在させて、上記したのと同じ条件でロウ付けして、セラミック基板10の両面にアルミニウム板(金属部位)21,51を接合状態で形成した3層構造の接合体仕掛品200aを得た(図7−B参照)。なお、□50mm角のアルミニウム板51の平面視、□30mm角の凹部53は、内部にセラミック基板10が収容状態で載置されるように、これより若干大きめに形成されている。
【0034】
また、本例でも、ロウ付けにより接合体仕掛品200aを形成した後、図7−Cに示したように、回路用金属層の形成用の肉厚0.5mmのアルミニウム板21の周囲を、その各辺(4辺)とも外縁端に沿って幅2mmでエッチングで除去し、セラミックの絶縁部位12を露出させ、26mm角の回路用金属層を有する接合体仕掛品200bとした(図7−C参照)。次ぎに、この接合体仕掛品200bのうち、肉厚3mmの凹部付きアルミニウム板51のうち、相対的に凸となす部位55側の全面に、上記したのと同様にして、切り起こし法により同様の厚み、ピッチのフィンを形成し、図6に示した接合体201を得た。
【0035】
このような本例においても、微小な肉厚、微小なピッチで、しかも高さ寸法が高い多数のフィン41を有する放熱効果の高いフィン付き放熱部材を有する接合体201が得られる。すなわち、本例でも、フィン41の切り起こし法による形成を、アルミニウム板51をセラミック基板10にロウ付けした後で行うことで、接合体201を製造したものであるから、別途、フィン付き放熱部材として形成した放熱部材をセラミック基板にロウ付けするような場合に発生する、フィンの座屈等の問題や、接合炉が大きくなることによる製造効率の低下を招くこともなく、薄く、放熱効果の高いフィンを有する接合体が効率的に得られる。なお、本例のように、アルミニウム板51に凹部53を設けるような場合のように、平坦でない金属部位を接合状態で形成する場合には、溶湯法によってそれを形成すると、プレス等の工程を要しない分、その工程を簡略化できる。また、本例の接合体201では、肉厚3mmの凹部付きのアルミニウム板51のうち、相対的に凸となす部位より外側の四角枠部57を、上記例において説明したのと同様に、冷却媒体の流路への取付け部として利用できる。
【0036】
次ぎに本発明の製法を具体化した実施例3について、図8、図9に基づいて説明する。ただし、本例では、図8、9に示したように、セラミック部材をなすセラミック基板10の両面にMo(モリブデン)層61、71を有すると共に、その一方のMo層71に銅製のフィン付き放熱部材40を接合状態で有してなる接合体(フィン付き放熱部材付きのセラミック回路基板)301を製造する場合であるが、工程については、上記各例と本質的相違はなく、したがって、変形例とでもいうべきものであるため、前例同様に、実施例1と同一部位又は対応する部位には、同一の符号を付すなどし、相違点を中心として簡潔に説明する。
【0037】
すなわち、本例では、図9−A,Bに示したように、セラミック基板(□30mm角で、厚み、1mmのチッカ珪素(SiN)基板)10の一方の面に、モリブデン板(厚み、0.5mm)61を、そして、他方の面に、中間層が厚い銅(厚さ2mm)75で両表面層が薄いモリブデン(0.5mm)71,71の3層のクラッド材(Mo/Cu/Mo)平板(厚み、3mmm)70を、それぞれ活性ロウでロウ付けして、セラミック基板10の各面に金属部位を接合状態で形成して接合体仕掛品300aを形成した(図9−B参照)。すなわち、チッカ珪素基板10を、Mo板61と、Mo/Cu/Moクラッド板からなる平板70で挟んで、1枚の30mm角の積層板となるように重ねると共に、各面間には図示しない活性ロウ材(Ag−Cu−Ti系のロウ材)箔を介在させ、これら3者の厚み方向に所定の面圧(1kPa)がかかるように錘を載せ、炉中で、900℃に所定時間加熱して、各面間をロウ付けし、厚さ4.5mmの接合体仕掛品300aを得た。
【0038】
次に、この接合体仕掛品300aを形成した後、図9−Cに示したように、回路用金属層の形成用の肉厚0.5mmのMo板61の周囲を、上記例と同様にその各辺(4辺)とも外縁端に沿って幅2mmでエッチングで除去し、セラミックの絶縁部位12を露出させ、26mm角の回路用金属層を有する接合体仕掛品300bとした。その後、クラッド板側において露出するモリブデン層(厚み0.5mm)71を切削して除去して中間の銅(銅層)75を露出させた。そして、この露出させた銅75の表面に、切り起こしで上記例と同様のフィン41を形成し、図8に示した接合体301を得た。なお、クラッド板70におけるこのMo層71の除去は、基板10の反対側の回路用金属層をなすMo板(0.5mm)61の外周を除去したのと同様、エッチングにより除去しても良い。また、刃物のチッピングや、量産時の刃物のダレ(摩耗)を考慮すると、切り起こし加工によりフィンを切り起こし形成する金属(金属部材)は、硬度がHv:100以下のものとするのが好ましい。
【0039】
本例では、セラミック基板10におけるの各面ともにMo層を有している。このため、高温のヒートサイクルで発生する熱応力によるセラミック基板10の反りやクラック等の発生防止に有効である。また、本例のように銅製のフィン付き放熱部材としたものでは、銅がアルミニウムに比べると、放熱性は劣るが熱伝導性に優れるため、フィン41が大きいような場合など、フィンの先端への早い熱伝導性が求められる場合に効果的である。なお、Mo板、Mo/Cu/Moのクラッド板に代えて、W板(タングステン板)と、W/Cu/Wのクラッド板を用いてもよい。すなわち、本発明においてセラミック基板に接合状態で形成される金属部位はこのような複合材でもよく、セラミック基板の材質や接合体の用途等に応じて適宜のものを用いればよい。
【0040】
上記例では、接合体がフィン付き放熱部材の付いたセラミック回路基板である場合を例示したが、本発明の接合体は、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体に広く適用できる。また、上記もしたが、例えばセラミック部材が、それ自体が発熱体であるセラミックヒータであり、これを冷却するために、そのヒータにフィン付き放熱部材が接合状態で設けられる接合体(ヒータ)においても具体化できるなど、広く適用できる。さらに、上記もしたように、このようなフィン付き放熱部材は、例えば、棒状のセラミックヒータなどのセラミック部材の1面に、或いは対向する両面外側面に、1以上形成することもできる。
【0041】
上記例では、セラミック部材(基板)として、アルミナ(Al)、チッカ珪素(SiN)を用いた場合を例示したが、本発明で適用できるセラミックはこれらに限定されるものではない。また、セラミック部材に、接合状態で形成されるフィン付き放熱部材の形成用の金属部位、或いは回路用金属層をなす金属部位の素材も上記例のものに限定されるものでもない。さらに、セラミック部材に、前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を接合状態で形成する手段としては、別途に形成された金属部材をロウ付けする場合や、溶湯法に限定されるものでないのは上述したとおりである。
【符号の説明】
【0042】
10 セラミック基板(セラミック部材)
21 アルミニウム板(回路用金属層形成用の金属部位)
31、51 アルミニウム板(放熱部材の形成用の金属部位)
40 フィン付き放熱部材
41 フィン
61 モリブデン板(回路用金属層形成用の金属部位)
70 クラッド材(放熱部材の形成用の金属部位)
101,201,301 接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック部材と金属製のフィン付き放熱部材が接合状態にある、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法において、
前記セラミック部材に、前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を接合状態で形成し、
その形成後に、前記金属部位の表面に、切り起こし法によってフィンを形成するフィン形成工程を含むことを特徴とする、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法。
【請求項2】
セラミック部材はセラミック基板であって、その一方の面に回路用金属層が形成されており、その他方の面に金属製のフィン付き放熱部材が接合状態にある、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法において、
該セラミック基板の一方の面には前記回路用金属層の形成用の金属部位を、該セラミック基板の他方の面には前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を、同一の工程においてそれぞれ接合状態で形成し、
その形成後に、前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位の表面に、切り起こし法によってフィンを形成するフィン形成工程を含むことを特徴とする、セラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法。
【請求項3】
前記セラミック基板の一方の面には前記回路用金属層の形成用の金属部位を、該セラミック基板の他方の面には前記フィン付き放熱部材の形成用の金属部位を、同一の工程においてそれぞれ接合状態で形成した後、
前記フィン形成工程の前に、
前記回路用金属層の形成用の金属部位を、エッチングにより所定のパターンの回路用金属層に形成する回路用金属層形成工程を含むことを特徴とする、請求項2に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法。
【請求項4】
前記金属部位は、前記セラミック部材に金属部材をロウ付けすることで、接合状態で形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法。
【請求項5】
前記金属部位は、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金であり、これを溶湯法によって前記セラミック部材に接合状態で形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック部材とフィン付き放熱部材との接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−230954(P2011−230954A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102087(P2010−102087)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】