説明

セリアック病の薬物療法

tTGase阻害剤の有効量をセリアック病または疱疹状皮膚炎患者に投与することにより、毒性グルテンオリゴペプチドの毒性作用が軽減され、それによってグルテンの障害作用が減弱または排除される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
小麦、大麦、およびライ麦に存在する一般的な食餌タンパク質であるグルテンの摂取が、感受性個体においてセリアック病(Celiac Sprue)と呼ばれる疾病の原因となることが1953年に初めて認識された。グルテンは、グルタミン-およびプロリン-リッチグルテニンならびにプロラミン分子の複雑な混合物であり、セリアック病を誘導する原因であると考えられている。感受性個体がこのようなタンパク質を摂取すると、ペプチドおよび他の栄養素の効率的で広範な終末消化を担当することが知られている小腸の、通常は贅沢な絨毯様の上皮層が平坦化する。セリアック病の他の臨床症状には、疲労、慢性下痢、栄養素の吸収不良、体重低下、腹部膨満、貧血、また、骨粗鬆症、ならびにリンパ腫および癌などの腸の腫瘍を発症するリスクの実質的な増加が挙げられる。この疾病は発現率が欧州の人口の200人に約1人であり、他の人口では診断率がかなり低いと考えられる。
【0002】
関連疾病は、強い掻痒性の小水疱の集まり、丘疹、および蕁麻疹様病変によって特徴付けられる皮膚の慢性発疹である疱疹状皮膚炎である。IgA沈着が、正常に見える皮膚および病変部周囲の皮膚のほとんど全てに生じる。無症候性のグルテン感受性腸疾患が患者の75〜90%および患者の血縁者の一部に見られる。発症は通常徐々に起こる。掻痒および灼熱感が激しく、掻き毟ることによって原発性病変が不明瞭になることが多く、近傍の皮膚が湿疹化し、湿疹と誤診される。長期間の無グルテン食を厳守することで疾病を抑え、薬物治療の必要性をなくすまたは低下することができる患者もいる。ダプソン、スルファピリジン、およびコルヒチンが掻痒の軽減のために処方されることがある。
【0003】
セリアック病(CS)は、一般に、自己免疫疾患であると考えられ、患者の血清中に見られる抗体は、この疾病が性質は免疫学的であるという理論を支持している。組織トランスグルタミナーゼ(tTGaseまたはtTG)およびグリアジンに対する抗体が活動性のCS患者のほぼ100%に見られ、このような抗体、特にIgAクラスの存在が疾病の診断に使用されている。
【0004】
患者の大多数はHLA-DQ2 [DQ(a1*0501,b1*02)]および/またはDQ8 [DQ(a1*0301,b1*0302)]分子を発現する。腸の障害は、特定のグリアジンオリゴペプチドとHLA-DQ2またはDQ8抗原の相互作用によって生じ、上皮下層におけるTリンパ球の増殖を誘発すると考えられる。Tヘルパー1細胞およびサイトカインは局所的な炎症過程において主要な役割を果たし、小腸の絨毛萎縮を生じるようである。
【0005】
現時点では、グルテンを含有する全ての食物を完全に回避する以外に、この疾病の有効な治療法はない。グルテンぬきは、小児に関しては予後を変え、成人にはかなりの改善が見られるが、一部の人、主に発症時に重症の疾病が認められた成人には、この疾病で死亡する人もいる。主な死因はリンパ網内系疾患、特に腸管リンパ腫である。無グルテン食がこのリスクを低下するかどうかは不明である。見かけ上の臨床的寛解は、生検による調査またはEMA価の増加によってのみ検出される組織学的な再発を伴うことが多い。
【0006】
グルテンは、例えば、市販のスープ、ソース、アイスクリーム、ホットドッグ、および他の食材に広く使用されているので、患者は回避するための詳細な食材リストおよびセリアック病に詳しい栄養士の専門的な助言を必要とする。グルテンは少量であっても摂取すると寛解を妨害したり、再発を誘発することがある。欠損に応じて、補助的なビタミン、ミネラル、および造血剤が必要になることもある。診断が正しくないため、または疾病が難治性であるために、グルテンぬきに反応性が悪い、または全く反応しない患者がわずかにいる。後者の場合には、経口副腎皮質ステロイド(例えばプレドニゾン10〜20mg 1日2回)が応答を誘導することがある。
【0007】
セリアック病の重篤性および広範性、ならびに食餌からグルテンを除去する困難さを考慮すると、よりすぐれた治療方法に非常に関心が高まる。特に、セリアック病患者が、有害な影響を生じないでグルテン含有食材を食せる、または再発を誘発しないで少量もしくは適量のこのような食材に少なくとも耐えられることを可能にする治療法の必要性がある。本発明は、セリアック病を治療するために新規薬剤および方法、ならびに新規および既存薬剤の製剤を提供することによってセリアック病のさらにすぐれた治療法のこの必要性を満たす。参照により本明細書に組み入れられる、国際特許出願US03/04743号はグルテンプロテアーゼの安定性および免疫原性の局面を開示している。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
一局面において、本発明は、患者にtTGase(組織トランスグルタミナーゼ)阻害剤を投与することによって、セリアック病および/または疱疹状皮膚炎、ならびにその症状を治療する方法を提供する。一態様において、本発明の方法に使用するtTGase阻害剤は、本明細書に規定する3-ハロ-4,5-ジヒドロイソキサゾール誘導体を含む低分子tTGase阻害剤である。別の局面において、本発明は3-ハロ-4,5-ジヒドロイソキサゾールの新規誘導体化合物を提供する。一態様において、本発明に使用するtTGase阻害剤は、イサチンのアナログ(2,3ジケトインドール)である。
【0009】
別の局面において、本発明は、tTGase阻害剤および薬学的に許容される担体を含む製剤を提供する。一態様において、本製剤は、国際特許出願WO 03/068170号に記載されている1つ以上のグルテナーゼ(glutenase)も含む。本発明はまた、セリアック病を治療するために本発明のtTGase阻害剤の1つ以上の腸溶製剤を投与する方法も提供する。別の局面において、本発明のtTGase阻害剤および/または製剤は、TGaseが疾病の病因の一因子である疾患を治療する際に有用であり、このような疾患には、癌、神経疾患、創傷治癒等を挙げることができる。これらの状態には、TGaseが、細胞毒性である可能性がある不適当なタンパク性凝集体の形成における因子であるようであるアルツハイマー病およびハンチントン病が含まれる。進行性核上麻痺、ハンチントン病、アルツハイマー病、およびパーキンソン病などの疾患では、TGaseの異常な活性化は酸化的ストレスおよび炎症によって生じることがある。
【0010】
本発明の、ならびに本発明を為して使用するための方法のこれらおよび他の局面および態様は、以下の図面および本発明の説明、実施例、特許請求の範囲、ならびに図面にさらに詳細に記載されている。
【0011】
態様の詳細な説明
セリアック病および/または疱疹状皮膚炎は、本明細書に記載する特異的な阻害剤で組織トランスグルタミナーゼを阻害することによって治療される。セリアック病および/または疱疹状皮膚炎に罹患している患者に1つ以上のtTGase阻害剤を投与する方法および組成物が提供される。本発明の組成物は、薬剤の活性型での腸への送達を可能にする腸溶コーティングを含むtTGase阻害剤の製剤を含む;薬剤は、酸性の胃条件における消化または別の化学的変換に耐えるように安定化される。別の態様において、植物はグルテナーゼで前処理されるかもしくは組み合わされる、またはグルテナーゼが本発明のtTGase阻害剤と(同時にまたは本発明の組成物内で)同時投与される。
【0012】
本発明の方法は予防的および治療的目的に有用である。従って、本明細書において使用する「治療する」という用語は疾病の予防および既存の状態の治療の両方をいう。患者の臨床症状を安定化するまたは改善するための進行中の疾病の治療は本発明によって提供される特に有用な利点である。このような治療は、望ましくは、罹患組織の機能が損失される前に実施される;結果として、本発明が提供する予防的治療的利点も重要である。治療作用の証拠は疾病の重症度の任意の軽減、特に、疲労、慢性下痢、栄養素の吸収不良、体重低下、腹部膨満、および貧血のような症状の重症度の軽減であってもよい。他の疾病指標には、グルテンに特異的な抗体の存在、組織トランスグルタミナーゼに特異的な抗体、炎症性T細胞およびサイトカインの存在、ならびに小腸の絨毛構造の破壊が挙げられる。本発明の方法および組成物を適用すると、セリアック病のこれらの疾病指標のいずれかおよび全てが改善されうる。
【0013】
本発明から利益を得ることができる患者は成人および小児を含む。小児、特に、毒性のグルテンペプチドへの早期接触の防止としての予防的治療の利点は、疾病をさらに重症に進行するのを防止することができる。本発明の方法による予防に好適な小児は、素因の遺伝的試験によって、例えば、HLA試験によって;家族歴によって、および当技術分野において公知の他の方法によって同定することができる。他の薬物治療の分野において公知であるようにおよび本明細書の教示内容により、本発明のtTGase阻害剤の用量は小児への使用用に調節することができる。
【0014】
tTGaseを阻害するために関心のある化合物には、一般式

(式中、R1、R2、およびR3は、独立に、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アラキル(arakyl)、アラルケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキル基から選択される)
を有するものが挙げられる。R1およびR2はアミノ酸、ペプチド、ペプチドミメティック、またはペプチド保護基であってもよい。
【0015】
例示的なR1基には、Cbz、Fmoc、およびBocが挙げられる。本発明の他の態様において、R1はアリールエーテル、アリール、アルキルエーテル、またはアルキル基、例えば、O-ベンジル、ベンジル、メチル、またはエチルである。
【0016】
関心対象のR2基には、OMe、OtBu、Gly、およびGly-NH2が挙げられる。他の態様において、R2は、(s)-Bn、(s)-CO2Me、(s)-Me、(R)-Bn、(S)-CH2CONHBn、(S)-(1H-イノール-イル)-メチル、および(S)-(4-ヒドロヒ(hydrohy)-フェニル)-メチルからなる群より選択される。
【0017】
R3は、好ましくは、ハロ基、すなわち、F、Cl、Br、およびIである。本発明のいくつかの態様において、R3はCl以外のハロゲンである、すなわちI、F、およびBrからなる群より選択される。
【0018】
X1およびX2は、NH、O、およびNR4からなる群より選択される。ここで、R4は低級アルキルである。
【0019】
nは、0〜10、通常0〜5、さらに通常0〜3の整数である。
【0020】
イソキサゾール由来の本発明のtTGase阻害化合物は、本明細書の他の目的および教示内容のために当技術分野において公知の方法を使用して容易に製造することができる。これらの化合物の合成経路の例も以下の実施例に記載されている。例えば、Castelhanoらは、ジヒドロイソキサゾール誘導体(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステルはウシ表皮トランスグルタミナーゼの阻害剤であることを証明した(Castelhano et al., Bioorg. Chem. (1988) 16, 335-340)。トランスグルタミナーゼ阻害剤の以下の一般式はEP0237082に開示されている:

【0021】
ここで、本発明は、ヒト組織トランスグルタミナーゼの本質的に有効な阻害剤であるために、セリアック病および/または疱疹状皮膚炎を治療するために使用することができるこの属の新規化合物を特定する。本発明者らはまた、同等の活性を有する新規化合物も開示する。
【0022】
tTGase阻害剤の別の例はジオキソインドリンイサチンのアナログである。イサチンの環状α-ケトアミド構造はtTGaseグルタミル基質のγ-カルボキサミド基のすぐれたアナログとして作用する。α-ケトアミドはシステイン依存的プロテアーゼの可逆的な阻害剤として広範に使用されており、同様に、イサチンの複素環構造は、基質γ-カルボキサミドカルボニル基のアナログとして酵素によって認識されると思われる求電子カルボニル基を有する。当技術分野において公知の標準的な手法を使用して、ペプチド基質の他の部分を模倣している阻害剤に追加の官能基を導入するようにイサチン構造の芳香環部分をさらに誘導体化することができる。
【0023】
関心対象のイサチンアナログは以下の一般式:

(式中、R1、R2、およびR3は、同じであっても異なってもよく、独立に、H、ハロ基、すなわち、F、Cl、Br、およびI、低級アルキルを含むアルキル、アリール、ならびにNO2から選択される)
を有する。
【0024】
tTGase阻害剤として関心対象の化合物を表Iに記載する:
(表1)ヒトtTGaseのジヒドロイソキサゾール阻害剤の解離定数(KI)および阻害速度定数(kinh)

【0025】
記載されているように(Piper et al., Biochemistry (2001) 41,386-393)、発現、精製、およびアッセイした組換えヒト組織トランスグルタミナーゼを用いたtTGaseアッセイにおいて上記の本発明の例示的な化合物を試験した。Cbz-Gln-Gly基質に対する競合的阻害が全ての基質に観察された;全ての場合において、酵素の非可逆的不活性化も観察された。
【0026】
本発明の理解を容易にするために、本発明のtTGase阻害剤は、一部には、構造の示した位置に存在しうる種々の有機部分を参照して規定されている種々の「R」基を有する構造を用いて上記に記載されている。以下には、各R基について掲載されている有機部分を規定するために使用されるフレーズの簡単な定義が提供されている。
【0027】
本明細書において使用する「アルキル」は、炭素原子および水素原子だけからなり、不飽和を含有せず、炭素原子数1〜8で、単結合によって分子の残りに結合されている直鎖状または分岐鎖状炭化水素鎖基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)等をいう。本明細書において特に明記しない限り、アルキル基は、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオ、-N(R8)2、-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、または-N(R8)C(O)R8(式中、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)で置換されていてもよい。本明細書において特に明記しない限り、置換アルキル基を含有する以下に規定する基については、置換はアルキル基の任意の炭素上であってもよいことが理解される。
【0028】
「アルコキシ」は、式-ORa(式中、Raは、上記に規定されるアルキル基である)の基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソ-プロポキシ)、n-ブトキシ、n-ペントキシ、1,1-ジメチルエトキシ(t-ブトキシ)等をいう。本明細書において特に明記しない限り、置換アルコキシ基を含有する以下に規定する基については、置換はアルコキシ基の任意の炭素上であってもよいことが理解される。アルコキシ基のアルキル基は、上記のように置換されていてもよい。
【0029】
「アルキルチオ」は、式-SRa(式中、Raは、上記に規定されるアルキル基である)の基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、1-メチルエチルチオ(イソ-プロピルチオ)、n-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、1,1-ジメチルエチルチオ(t-ブチルチオ)等をいう。本明細書において特に明記しない限り、置換アルキルチオ基を含有する以下に規定する基については、置換はアルキルチオ基の任意の炭素上であってもよいことが理解される。アルキルチオ基のアルキル基は、上記のように置換されていてもよい。
【0030】
「アルケニル」は、炭素原子および水素原子だけからなり、少なくとも1つの二重結合を有し、炭素原子数2〜8で、単結合または二重結合によって分子の残りに結合されている直鎖状または分岐鎖状炭化水素鎖基、例えば、エテニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、ペンタ-1,4-ジエニル等をいう。本明細書において特に明記しない限り、置換アルケニル基は、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオ、シクロアルキル、-N(R8)2、-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、または-N(R8)-C(O)-R8(式中、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)で置換されていてもよい。本明細書において特に明記しない限り、置換アルケニル基を含有する以下に規定する基については、置換はアルケニル基の任意の炭素上であってもよいことが理解される。
【0031】
「アリール」は、フェニルまたはナフチル基をいう。本明細書において特に明記しない限り、「アリール」という用語または(「アラルキル」におけるような)「アラ(ar)-」という接頭文字は、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオ、シクロアルキル、-N(R8)2、-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、または-N(R8)C(O)R8(式中、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)からなる群より選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基を含むことが意味される。「アリール」という用語はまた、化合物C6H5、すなわちBnもさす。
【0032】
「アラルキル」は、式-RaRb(式中、Raは上記に規定するアルキル基であり、Rbは上記に規定する1つ以上のアリール基である)の基、例えば、ベンジル、ジフェニルメチル等をいう。アリール基は上記のように置換されていてもよい。
【0033】
「アラルケニル」は、式-RcRb(式中、Rcは上記に規定するアルケニル基であり、Rbは上記に規定する1つ以上のアリール基である)の基、例えば、3-フェニル-1-プロペニル等をいう。アリール基およびアルケニル基は上記のように置換されていてもよい。
【0034】
「アルキレン鎖」は、炭素および水素だけからなり、不飽和を含まず、炭素原子数1〜8の直鎖状または分岐鎖状2価炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン等をいう。アルキレン鎖は、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオ、シクロアルキル、-N(R8)2、-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、または-N(R8)C(O)R8(式中、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。アルキレン鎖は、鎖内の任意の2つの炭素を介して分子の残りに結合されうる。
【0035】
「アルケニレン鎖」は、炭素および水素だけからなり、少なくとも1つの二重結合を有し、炭素原子数2〜8の直鎖状または分岐鎖状2価炭化水素鎖、例えば、エテニレン、1-プロペニレン、1-ブテニレン、1-ペンテニレン、ヘキサ-1,4-ジエニレン等をいう。アルケニレン鎖は、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオ、シクロアルキル、-N(R8)2、-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、または-N(R8)C(O)R8(式中、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。アルケニレン鎖は、鎖内の任意の2つの炭素を介して分子の残りに結合されうる。
【0036】
「シクロアルキル」は、炭素原子および水素原子だけからなり、炭素原子数3〜10で、飽和していて、単結合によって分子の残りに結合されている安定な1価単環式または二環式炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、デカリニル等をいう。本明細書において特に明記しない限り、「シクロアルキル」という用語は、アルキル、アリール、アラルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオ、シクロアルキル、-N(R8)2、-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、または-N(R8)C(O)R8(式中、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)からなる群より独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基を含むことが意味されている。
【0037】
「シクロアルキルアルキル」は、式-RaRd(式中、Raは上記に規定するアルキル基であり、Rdは上記に規定するシクロアルキル基である)の基をいう。アルキル基およびシクロアルキル基は上記に規定するように置換されていてもよい。
【0038】
「ハロ」はブロモ、クロロ、フルオロ、またはヨードをいう。
【0039】
「ハロアルキル」は、上記に規定する1つ以上のハロ基によって置換されている上記に規定するアルキル基、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1-ブロモメチル-2-ブロモエチル等をいう。
【0040】
「ハロアルコキシ」は、式-ORc(式中、Rcは上記に規定するハロアルキル基である)の基、例えば、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、1-フルオロメチル-2-フルオロエトキシ、3-ブロモ-2-フルオロプロポキシ、1-ブロモメチル-2-ブロモエトキシ等をいう。
【0041】
「ヘテロシクリル」は、炭素原子、ならびに窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1〜5のヘテロ原子からなる安定な3〜15員環基をいう。本発明の目的のためには、ヘテロシクリル基は、融合または架橋環系を含んでもよい単環系、二環系、または三環系であってもよく;ヘテロシクリル基中の窒素、炭素、、および硫黄原子は酸化されていてもよく;窒素原子は四級化されていてもよく;ヘテロシクリル基は芳香族であっても、部分的もしくは完全に飽和されていてもよい。ヘテロシクリル基は、任意のヘテロ原子において分子の残りに結合されていなくてもよい。このようなヘテロシクリル基の例には、アゼピニル、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、カルバゾリル、シンノリニル、デカヒドロイソキノリル、ジオキソラニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、インドリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、オキシラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、テトラヒドロフリル、トリアジニル、テトラヒドロピラニル、チエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、およびチアモルホリニルスルホンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本明細書において特に明記しない限り、「ヘテロシクリル」という用語は、アルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、-OR8、-R7-OR8、-C(O)OR8、-R7-C(O)OR8、-C(O)N(R8)2、-N(R8)2、-R7-N(R8)2、および-N(R8)C(O)R8 (式中、各R7は直鎖状または分岐鎖状アルキレンまたはアルケニレン鎖であり、各R8は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリールである)からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基を含むことが意味されている。
【0042】
「ヘテロシクリルアルキル」は、式-RaRe(式中、Raは上記に規定するアルキル基であり、Reは上記に規定するヘテロシクリル基であり、ヘテロシクリルが含窒素ヘテロシクリルである場合には、ヘテロシクリルは窒素原子でアルキル基に結合しうる)の基をいう。ヘテロシクリル基は上記に規定するように置換されていてもよい。
【0043】
本明細書に提供される式において、等比体積(isosteric)置換に基づいてもよい分子の変更が含まれる。「等比体積置換」は、1つの原子または官能基全体を同様のサイズ、形状、および電磁特性を有する別のもので置換することにより化合物を修飾する概念をいい、例えば、OはS、Nの等比体積置換であり、COOHはテトラゾールの等比体積置換であり、FはHの等比体積置換であり、スルホネートはホスホネートの等比体積置換である等である。
【0044】
本明細書において使用する、「市販」の化合物は、Acros Organics (Pittsburgh PA)、Aldrich Chemical (Milwaukee WI、Sigma ChemicalおよびFlukaを含む)、Apin Chemicals Ltd. (Milton Park UK)、Avocado Research (Lancashire U.K.)、BDH Inc. (Toronto, Canada)、Bionet (Cornwall, U.K.)、Chemservice Inc. (West Chester PA)、Crescent Chemical Co. (Hauppauge NY)、Eastman Organic Chemicals, Eastman Kodak Company (Rochester NY)、Fisher Scientific Co. (Pittsburgh PA)、Fisons Chemicals (Leicestershire UK)、Frontier Scientific (Logan UT)、ICN Biomedicals, Inc. (Costa Mesa CA)、Key Organics (Cornwall U.K.)、Lancaster Synthesis (Windham NH)、Maybridge Chemical Co. Ltd. (Cornwall U.K.)、Parish Chemical Co. (Orem UT)、Pfaltz & Bauer, Inc. (Waterbury CN)、Polyorganix (Houston TX)、Pierce Chemical Co. (Rockford IL)、Riedel de Haen AG (Hannover, Germany)、Spectrum Quality Product, Inc. (New Brunswick, NJ)、TCI America (Portland OR)、Trans World Chemicals, Inc.(Rockville MD)、Wako Chemicals USA, Inc. (Richmond VA)、Novabiochem and Argonaut Technologyを含む標準的な商業的供給源から入手することができる。
【0045】
本明細書において使用する、合成段階を実施するための「好適な条件」は本明細書に明白に提供されているまたは合成有機化学に使用される方法に関する刊行物を参照して識別してもよい。本発明の化合物を製造する際に有用な反応物質の合成を詳細に記載している参照書籍および上記の専門書も、本発明による合成段階を実施するための好適な条件を提供している。
【0046】
本明細書において使用する「当技術分野において公知の方法」は、種々の参照書籍およびデータベースにより同定することができる。本発明の化合物を製造する際に有用な反応物質の合成を詳細に記載している、または製造を記載している文献の参照を提供している好適な参照書籍および専門書には、例えば、「Synthetic Organic Chemistry」, John Wiley & Sons, Inc., New York; S. R. Sandler et al., 「Organic Functional Group Preparations」, 2nd Ed., Academic Press, New York, 1983; H.O. House, 「Modern Synthetic Reactions」, 2nd Ed., W. A. Benjamin, Inc. Menlo Park, Calif. 1972; T. L. Gilchrist,「Heterocyclic Chemistry」, 2nd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1992; J. March, 「Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure」, 4th Ed., Wiley-Interscience, New York, 1992が挙げられる。具体的な反応物質および類似の反応物質も、ほとんどの公共図書館および大学の図書館において、ならびにオンラインデータベースにより入手可能であるChemical Abstract Service of the American Chemical Societyによって作製されている公知の化学物質のインデックスによっても同定することができる (詳細はAmerican Chemical Society, Washington, D. C., www.acs.orgにコンタクトすることができる) 。公知であるがカタログで市販品を購入できない化学物質は特注化学合成企業によって製造することができ、標準的な化学物質供給企業(例えば、上記に掲載するもの)の多くは特注合成サービスを提供している。
【0047】
「されていてもよい」または「てもよい」は、その後に記載されている状況の事象が生じても生じなくてもよいこと、また、該記載が、その事象または状況が生じる場合も生じない場合も含むことを意味する。例えば、「置換されていてもよいアリール」は、アリール基が置換されていても置換されていなくてもよいこと、そして該記載は置換アリール基および置換基のないアリール基を含むことを意味する。
【0048】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的な有効性および特性を保持し、生物学的またはそれ以外において望ましくないことがない塩をいう。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に付加することによって製造される。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。好ましい無機塩はアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。有機塩基から誘導される塩には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等などの、一級、二級、および三級アミン、天然型置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基イオン交換樹脂が挙げられるが、それに限定されるわけではない。特に好ましい有機塩基はイソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。
【0049】
tTGase阻害剤または薬学的に許容される塩は1つ以上の不斉中心を有してもよく、従って絶対立体化学に関して(R)-もしくは(S)-としてまたはアミノ酸の(D)-もしくは(L)-として規定することができるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体化学型を生じうる。本発明は、全てのこのような可能な異性体、ならびにラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことが意味されている。光学的に活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体はキラルシントンもしくはキラル試薬を使用して製造しても、または逆相HPLCなどの従来の技法を使用して分離してもよい。本明細書に記載する化合物がオレフィン系二重結合または他の幾何学的不斉中心を有し、特に規定しない場合には、化合物はEおよびZ幾何異性体を含むことが意図されている。同様に、全ての互変異性体も含まれることが意図されている。
【0050】
本発明は、治療的投与のための種々の製剤のtTGase阻害剤を提供する。一局面において、薬剤は、薬学的に許容される適当な担体または希釈剤と組み合わせることによって薬学的組成物に製剤化され、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、ミクロスフェア、およびエアゾールなどの固体、半固体、液体、または気体の剤形に製剤化される。従って、tTGase阻害剤の投与は種々の方法で実施されるが、経口投与が好ましい投与経路である。tTGase阻害剤は投与により全身作用となる製剤もあれば;植え込み部位において作用用量を保持する作用をする植え込み物の使用などの製剤により阻害剤は局所化される製剤もある。
【0051】
tTGase阻害剤が薬学的に許容される塩の形態で投与される剤形もある。tTGase阻害剤が単独で使用される剤形もあるが、tTGaseが薬学的に活性な別の化合物を併用使用される剤形もある。後者の態様では、他の作用化合物は、以下の実施例に記載するように、毒性のグルテンオリゴペプチドを切断または分解することができるグルテナーゼである態様もある。以下の方法および賦形剤は例にすぎず、限定するものではない。
【0052】
経口製剤では、薬剤は単独で、または錠剤、粉末、顆粒、もしくはカプセルを製造するための適当な補助剤、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、またはジャガイモデンプンなどの従来の補助剤;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなどの結合剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;いくつかの態様では、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、および矯味矯臭剤と併用使用される。
【0053】
本発明の一態様において、経口製剤は、作用剤が腸管に送達されるように、腸溶コーティングを含む。腸溶製剤は、強い酸性の胃内容物から作用成分を保護するために使用されることが多い。このような製剤は、酸性環境において不溶性で、塩基性環境において可溶性であるフィルム状ポリマーで固体剤形をコーティングすることによって製造される。例示的なフィルムは、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、メタクリレートコポリマー、およびセルロースアセテートフタレートである。
【0054】
本発明のtTGase阻害剤の他の腸溶製剤は、消化管粘膜と細胞層との強い粘着性の相互作用を示し、粘膜の吸収上皮およびパイエル板のリンパ組織を覆う濾胞関連上皮を通ることができる生物学的に破壊性のポリマーから製造される加工ポリマーミクロスフェアを含む。ポリマーは長時間腸上皮との接触を維持し、実際に腸上皮の細胞および細胞間を通過する。例えば、Mathiowitz et al. (1997) Nature 386 (6623): 410-414を参照されたい。薬物送達システムは、Dorkoosh et al. (2001) J Control Release 71 (3): 307-18によって記載されている超微細孔ヒドロゲル(SPH)およびSPHコンポジット(SPHC)の孔も使用することがある。
【0055】
別の態様において、tTGase阻害剤もしくはその製剤を食物と混合する、またはグルテンを含有する食材を前処理するために使用する。
【0056】
製剤は、典型的には、単位剤形で提供され、「単位剤形」という用語は、各単位が、薬学的に許容される希釈剤、担体、または基剤と関連して望ましい作用を生ずる十分な量が算出されている所定の量のtTGase阻害剤を含有する、ヒト被験者の単回投与として好適な物理的に別個の単位をいう。本発明の単位剤形の仕様は、使用する特定の複合体および達成される作用、ならびに宿主における各複合体に関連する薬物動態に依存する。
【0057】
基剤、補助剤、担体、または希釈剤などの薬学的に許容される賦形剤は一般利用が容易である。さらに、pH調節緩衝剤、浸透圧調節剤、安定剤、湿潤剤等などの薬学的に許容される補助物質も一般利用が容易である。
【0058】
治療する患者および状態、ならびに投与経路に応じて、tTGase阻害剤は、平均的な人に対して1日あたり0.01mg〜500mg V/体重1 kg、例えば、約100mg/dayの量が投与される。小児用製剤には用量は適当に調節される。用量レベルは、具体的な阻害剤、患者の食餌および食餌のグルテン含有量、症状の重症度、ならびに副作用に対する被験者の感受性の関数として変わりうることを当業者は理解している。本発明の阻害剤には他よりも強力なものもある。所定の阻害剤の好ましい用量は、種々の手段によって当業者が容易に設定することができる。好ましい手段は、所定の化合物の生理学的な効力を測定することである。
【0059】
本発明の方法は、製剤等によりtTGase阻害剤の有効量を投与することによって、セリアック病および/または疱疹状皮膚炎に罹患している患者を治療する際に有用である。好適な患者の診断は、当技術分野において公知の種々の基準を使用することができる。グリアジンおよび/または組織トランスグルタミナーゼに特異的な抗体の定量的な増加は疾病を示す。家族歴およびHLA対立遺伝子HLA-DQ2 [DQ(a1*0501,b1*02)]および/またはDQ8 [DQ(a1*0301,b1*0302)]の存在は疾病に対する感受性を示す。さらに、tTGは、ハンチントン病およびヘルペス状皮膚炎以外の皮膚病などの他の疾病において重要な作用を果たすので、本発明の化合物の種々の製剤型(例えば、局所製剤、静脈内注射)はこのような医学的状態の治療に有用である。これらの状態には、TGaseが、毒性になる可能性のある不適当なタンパク性凝集物の形成における因子であると思われる、アルツハイマー病およびハンチントン病が挙げられる。進行性核上麻痺、ハンチントン病、アルツハイマー病、およびパーキンソン病などの疾病では、TGaseの異常な活性化は酸化的ストレスおよび炎症によって生じうる。
【0060】
治療作用は臨床的な成果に関してまたは免疫学的もしくは生化学的試験によって測定される。有害なT細胞活性の抑制は、反応性Th1細胞の計数によって、病変部位におけるサイトカイン放出を定量することによってまたは当技術分野において公知の自己免疫性T細胞の存在についての他のアッセイを使用することによって測定することができる。また、医師および患者が疾病の症状軽減を同定することができる。
【0061】
種々の投与方法が本発明を実施する際に使用される。好ましい一態様において、例えば、食事と一緒に摂取される経口投与が使用される。治療用製剤の用量は、疾病の性質、投与頻度、投与方法、患者からの薬剤のクリアランス等に応じて大きく異なることがある。初回量はやや多めで、維持量は少なめでもよい。投与は毎週もしくは隔週と低頻度であっても、または高頻度で少量に分割して、食事と共に毎日、週2回等の回数で投与して有効用量レベルを維持してもよい。
【0062】
以下の実施例は本発明を製造し、使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されており、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定する意図のものではなく、以下の実験が、実施される全ての実験または唯一の実験であると示す意図のものではない。使用する数字(例えば量、温度)に関する精度を確実にするための努力が払われているが、いくぶんかの実験誤差および偏差が存在することがある。特に示さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセ氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0063】
実施例1
ジヒドロキシイソキサゾールを含有するtTGase阻害剤の合成
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル (表1、構造1A参照、式5参照、n=0、X=NH、R1=BnO、R2=(S)-Bn、R3=Br) の合成
N-Cbz-L-Phe (0.30g, 1.0mmol)およびHOBt (0.15g, 1.1eq)を2mL DMFに溶解した。報告されている手法(Rohloff et al. (1992) Tetrahedron Lett. 33 (22): 3113-3116)に従って製造した3-ブロモ-5-アミノメチル-4,5-ジヒドロイソアゾール(isoazole)(0.18g, 1.0eq)を氷浴で冷却中の溶液に添加し、次に1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (0.23g, 1.2eq)を添加した。氷浴をはずし、撹拌を終夜継続した。溶液を酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO3溶液および食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥してろ過した。溶媒を留去し、残渣をSiO2クロマトグラフィーで精製して、表題の化合物を白色の固体として得た(0.24g, 52%)。

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0064】
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-酪酸メチルエステル (式5参照、n=2、X=NH、R1=BnO、R2=(S)-CO2Me、R3=Br) (50) の合成
N-Cbz-L-Glu-OMeを使用した以外は、化合物1Aの手法に従って表題の化合物を製造した。

(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-酪酸メチルエステル
【0065】
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-N-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-スクシンアミド酸メチルエステル (式5参照、n=1、X=NH、R1=BnO、R2=(S)-CO2Me、R3=Br) (51) の合成
N-Cbz-L-Asp-OMeを使用した以外は、化合物1Aの手法により、表題の化合物を製造した。

(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-N-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-スクシンアミド酸メチルエステル
【0066】
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-フェニル-プロピオン酸3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチルエステル (式5参照、n=0、X=O、R1=BnO、R2=(S)-Bn、R3=Br)(表1、2a参照) の合成
アセトニトリル (6mL)、DIEA (0.18mL, 1.0eq)および過剰量の臭化アリル (3mL)の混合液にN-Cbz-L-Phe (0.30g, 1.0mmol)を溶解した。反応を終夜進行させ、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和Na2CO3溶液および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮してアリルエステルを透明な油状物質として得た(0.34g, 定量的)。エステル (0.19g, 0.57mmol)およびジブロモホルムアルドキシム(0.14g, 1.1eq)を3mLの酢酸エチル(ethyl acetated)に溶解し、NaHCO3 (0.21g, 4.3eq)を溶液に添加した。反応混合物を終夜撹拌し、酢酸エチル(ethyl acetated)で希釈し、飽和NaHCO3溶液および食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をSiO2クロマトグラフィーで精製して、表題の化合物を白色の固体として得た(0.15g, 58%)。

(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-フェニル-プロピオン酸3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチルエステル
【0067】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル (表1、構造1i参照;式5参照、n=0、X=NH、R1=BnO、R2=(S)-Me、R3=Br) の合成
N-Cbz-L-Alaを使用した以外は、化合物1Aの手法に従って表題の化合物を製造した。

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0068】
(S)-2-アセチルアミノ-N-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-フェニル-プロピオンアミド (表1、構造3a参照、式5参照、n=0、X=NH、R1=Me、R2=(S)-Bn、R3=Br) の合成
N-Ac-L-Pheを使用した以外は、化合物1Aの手法に従って表題の化合物を製造した。

(S)-2-アセチルアミノ-N-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-フェニル-プロピオンアミド
【0069】
{(R)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル (表1、構造1h参照、式5参照、n=0、X=NH、R1=BnO、R2=(R)-Bn、R3=Br) の合成
N-Cbz-D-Pheを使用した以外は、化合物1Aの手法に従って表題の化合物を製造した。

{(R)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0070】
{(S)-2-ベンジルカルバモイル-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)カルバモイル]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(表1、構造1g参照、式5参照、n=0, X=NH, R1=BnO, R2=(S)-CH2CONHBn, R3=Br) の合成
N-Cbz-L-Aspのβ-ベンジルアミド((S)-N-ベンジル-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-スクシンアミド酸)を使用した以外は、化合物1Aの手法に従って表題の化合物を製造した。

{(S)-2-ベンジルカルバモイル-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0071】
[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(1H-インドール-3-イル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(式5参照、n=0、X=NH、R1=BnO、R2=(S)-(1H-インドール-3-イル)-メチル、R3=Br)(57)の合成
N-Cbz-L-Trpを使用した以外は、化合物1Aの手法に従って表題の化合物を製造した。

[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(1H-インドール-3-イル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル
【0072】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-メチル-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(表1、構造2b参照、式5参照、n=0、X=NMe、R1=BnO、R2=(S)-Bn、R3=Br) の合成
N-メチルアリルアミンを使用した以外は、化合物2aの手法に従って表題の化合物を製造した。

[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-メチル-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル
【0073】
[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-メチルカルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル (式5参照、n=0、X=NH、R1=BnO、R2=(S)-(4-ヒドロキシ-フェニル)-メチル、R3=Br) (59) の合成
N-Cbz-L-Tyrを使用した以外は、化合物1aの手法に従って表題の化合物を製造した。

[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-メチル-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル
【0074】
1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-フェニル-尿素の合成(式5参照、X1=NH、X2=NH、R2=Ph、R3=Br) (60)の合成
THF (0.5mL)とDMF(0.1mL)の混合物に3-ブロモ-5-アミノメチル-4,5-ジヒドロイソアゾール(isoazole)(20mg, 0.11mmol)およびフェニルイソシアネート(13uL, 1.0eq)を溶解した。30分の撹拌後、混合液を酢酸エチルで希釈し、食塩で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をSiO2クロマトグラフィーで精製して表題の化合物を得た。

1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-フェニル-尿素
【0075】
1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニル)-尿素(式5参照、X1=NH、X2=NH、R2=2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニル、R3=Br) (61) の合成
2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニルイソシアネートを使用した以外は、化合物60の手法に従って表題の化合物を製造した。

1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニル)-尿素
【0076】
1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(4-クロロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-尿素(式5参照、X1=NH、X2=NH、R2=4-クロロ-2-トリフルオロメチルフェニル、R3=Br) (62) の合成
4-クロロ-2-トリフルオロメチル-フェニルイソシアネートを使用した以外は、化合物60の手法に従って表題の化合物を製造した。

1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(4-クロロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-尿素
【0077】
1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(4-フルオロ-フェニル)-尿素(式5参照、X1=NH、X2=NH、R2=4-フルオロ-フェニル、R3=Br) (63) の合成
4-フルオロ-フェニルイソシアネートを使用した以外は、化合物60の手法に従って表題の化合物を製造した。

1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(4-フルオロ-フェニル)-尿素
【0078】
1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(2,5-ジメチル-フェニル)-尿素 (式5参照、X1=NH、X2=NH、R2=2,5-ジメチル-フェニル、R3=Br) (64)の合成
2,5-ジメチル-フェニルイソシアネートを使用した以外は、化合物60の手法に従って表題の化合物を製造した。

1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(2,5-ジメチル-フェニル)-尿素
【0079】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-フルオロ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル (表1、構造1c参照)の合成

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-フルオロ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0080】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(3-フルオロ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(表1、構造1d参照)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(3-フルオロ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0081】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル (表1、構造1e参照)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0082】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル (表1、構造1f)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル
【0083】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ピリジン-4-イルメチルエステル (表1、構造3b参照)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ピリジン-4-イルメチルエステル
【0084】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ピリジン-3-イルメチル エステル (表1、構造3c参照)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ピリジン-3-イルメチル エステル
【0085】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸フェネチルエステル (表1、構造3d参照)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸フェネチルエステル
【0086】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ナフタレン-2-イルメチルエステル (表1、構造3e参照)

{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ナフタレン-2-イルメチルエステル
【0087】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸1,1-ジオキソ-1H-1λ6-ベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルエステル (表1、構造3f参照)

【0088】
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸1,1-ジオキソ-1H-1λ6-ベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルエステル (表1、構造4参照)

【0089】
実施例2
ジオキソインドールを含有するtTGase阻害剤の合成
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミドの合成
5-イサチンスルホン酸(isatinsulfonic acid)のナトリウム塩とPOCl3の反応によって製造した2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルクロリド (0.10g, 0.41mmol)を5mLのTHFに溶解した。この溶液を氷浴で冷却し、DIEA (0.14mL, 2.0eq)を徐々に添加し、次にn-プロピルアミン (35uL, 1.0eq)を添加した。撹拌を40分継続し、溶液を酢酸エチルで希釈し、食塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をSiO2クロマトグラフィーで精製して表題の化合物を得た(65mg, 60%)。

2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミド
【0090】
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸ベンジルアミドの合成
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミドの手法により、ベンジルアミンから表題の化合物を製造した。

2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸ベンジルアミド
【0091】
(S)-1-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニル)-ピロリジン-2-カルボン酸メチルエステルの合成
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミドの手法により、L-Pro-OMeから表題の化合物を製造した。

(S)-1-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニル)-ピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル
【0092】
(S)-2-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルアミノ)-3-フェニル-プロピオンアミドの合成
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミドの手法により、L-Phe-NH2から表題の化合物を製造した。

(S)-2-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルアミノ)-3-フェニル-プロピオンアミド
【0093】
(S)-N-(2-ジメチルアミノ-エチル)-2-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルアミノ)-3-フェニル-プロピオンアミドの合成
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミドの手法により、L-Phe-NHCH2CH2NMe2から表題の化合物を製造した。

(S)-N-(2-ジメチルアミノ-エチル)-2-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルアミノ)-3-フェニル-プロピオンアミド
【0094】
6-ブロモ-7-メチル-1H-インドール-2,3-ジオンの合成
クロラールアルコラート(0.43g, 1.05eq)およびNa2SO4 (2.84g, 20mmol)を10mLの水に溶解した。3-ブロモ-2-メチルアニリン(0.33g, 1.77mmol)を溶液に添加し、次に0.16mLの濃HCl水溶液およびNH2OH・HCl(0.38g, 3.0eq)を添加した。混合物を15分還流し、室温において撹拌をさらに1時間継続した。ろ過して沈殿を回収し、水で洗浄し、真空下乾燥した。この沈殿を1mLのH2SO4に溶解し、溶液を15分加熱した(80℃)。室温に冷却後、混合物を氷水の混合液に注ぎ、沈殿を回収し、水で洗浄し、真空下乾燥して表題の化合物を得た(0.26g, 61%)。

6-ブロモ-7-メチル-1H-インドール-2,3-ジオン
【0095】
7-メチル-6-フェニル-1H-インドール-2,3-ジオンの合成
6-ブロモ-7-メチル-1H-インドール-2,3-ジオン(100mg, 0.38mmol)およびフェニルボロン酸(53mg, 1.1eq)を10mLのDMEに溶解した。Pd(PPh3)4(22mg, 0.05eq)を添加し、次に10mLの水に溶解したNaHCO3(65mg, 2.0eq)を添加した。混合物を2.5時間還流し、有機溶媒を留去した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥し、SiO2クロマトグラフィーで精製して表題の化合物を得た(50mg, 51%)。

7-メチル-6-フェニル-1H-インドール-2,3-ジオン
【0096】
tTGの阻害
0〜600μMのPro-Gln-Pro-Aci-Leu-Pro-Tyrを含有する200mM MOPS、pH = 7.1、5mM CaCl2、1mM ETDA中で30℃においてtTG(9μM)を不活性化した。20分ごとに、40μl量を取り出し、340 nmにおける吸収の低下を測定することによって、200mM MOPS、pH = 7.1、5mM CaCl2、1mM ETDA、10mMα-ケトグルタレート、180 U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(Biozyme laboratories)を含有する0.5mlの反応液中で残存するtTG活性を30℃において20分アッセイした。対応する未阻害tTG反応(0μM阻害剤)によって残存活性を補正して、指数関数的減衰にフィットした。みかけの二次不活性化定数の二重-逆数プロットによって、またはイサチンアナログでは、可逆的な阻害剤のデータを競合阻害定数を有する標準的なミカエリスメンテン式にフィットすることによって動態パラメーターを得た。これらの阻害実験の結果を以下に示す。
【0097】
(表2)ジヒドロイソキサゾールによる組織トランスグルタミナーゼ阻害

【0098】
(表3)イサチン誘導体による組織トランスグルタミナーゼ阻害

【0099】
上記の結果は、試験した化合物はtTGase阻害活性を有することを証明している。
【0100】
本明細書に引用する全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願各々が、具体的且つ個別に、参照により組み入れられることが示されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる。
【0101】
本発明は、本発明を実施するための好ましい様式を含むように本発明者らによって見出されたまたは提供された特定の態様に関して記載されている。本発明の意図された範囲から逸脱することなく、数多くの改良および変更を例示されている特定の態様に加えることができることは当業者に理解される。さらに、生物学的な機能の等価性を考慮することにより、生物作用に影響を与えないで、タンパク質の構造、種類、または量の変更を行うことができる。このような改良は全て添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式のtTGase阻害剤であって、

式中、R1およびR2は、独立に、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アラキル(arakyl)、アラルケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキル基、アミノ酸、ペプチド、ペプチドミメティック、またはペプチド保護基から選択され;R2は、さらに、LPYPQPQLPY、LPFPQPQLPF-NH2、LPYPQPQLP、LPYPQPQLPYPQPQPF、LP-X2-15からなる群より選択されてもよく、X2-15は、C末端プロリンが続く任意の2〜15アミノ酸残基からなるペプチドであり、R3はF、I、Cl、およびBrから選択され;nは0〜10であり;XはOおよびNHからなる群より選択される、
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル以外のtTGase阻害剤。
【請求項2】
R1が、BnO、Me、Cbz、Fmoc、Boc、PQP、Ac-PQP、PQPQLPYPQP、Ac-PQPQLPFPQP、QLQPFPQP、LQLQPFPQPLPYPQP、X2-15-Pからなる群より選択され、X2-15が、N末端プロリンが続く任意の2〜15アミノ酸残基からなるペプチドである、請求項1記載の阻害剤。
【請求項3】
R2が、(S)-Bn、(S)-CO2Me、(S)-Me、(R)-Bn、(S)-CH2CONHBn、(S)-(1H-イノール-イル)-メチル、(S)-(4-ヒドロヒ(hydrohy)-フェニル)-メチル、OMe、OtBu、Gly、Gly-NH2、LPY、LPF-NH2からなる群より選択される、請求項1記載の阻害剤。
【請求項4】
R3がBrである、請求項1記載の阻害剤。
【請求項5】
以下からなる群より選択される、請求項1記載の阻害剤:
{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-酪酸メチルエステル;(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-N-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-スクシンアミド酸メチルエステル;(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-フェニル-プロピオン酸3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;(S)-2-アセチルアミノ-N-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-フェニル-プロピオンアミド;{(R)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;{(S)-2-ベンジルカルバモイル-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(1H-インドール-3-イル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-メチル-カルバモイル]-2-フェニル-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;[(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-メチル-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル;1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロイソキサゾール-5-イルメチル)-3-フェニル-尿素;1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(2-クロロ-5-トリフルオロメチル-フェニル)-尿素;1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(4-クロロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-尿素;1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(4-フルオロ-フェニル)-尿素;1-(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-3-(2,5-ジメチル-フェニル)-尿素;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-フルオロ-フェニル)エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(3-フルオロ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル)-カルバミン酸ピリジン-4-イルメチルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ピリジン-3-イルメチルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸フェネチルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸ナフタレン-2-イルメチルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-エチル}-カルバミン酸1,1-ジオキソ-1H-1λ6-ベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルエステル;{(S)-1-[(3-ブロモ-4,5-ジヒドロ-イソキサゾール-5-イルメチル)-カルバモイル]-2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)-エチル}-カルバミン酸1,1-ジオキソ-1H-1λ6-ベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルエステル。
【請求項6】
下記式のtTGase阻害剤:

式中、R1、R2、およびR3は、独立に、H、ハロ基、アルキル、アリール、およびNO2から選択される。
【請求項7】
以下からなる群より選択される、請求項11記載のtTGase阻害剤:
2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸プロピルアミド;2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸ベンジルアミド;(S)-1-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニル)-ピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル;(S)-2-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルアミノ)-3-フェニル-プロピオンアミド;(S)-N-(2-ジメチルアミノ-エチル)-2-(2,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホニルアミノ)-3-フェニル-プロピオンアミド;6-ブロモ-7-メチル-1H-インドール-2,3-ジオン;7-メチル-6-フェニル-1H-インドール-2,3-ジオン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載のtTGase阻害剤の有効量および薬学的に許容される賦形剤を含む、セリアック病および/または疱疹状皮膚炎の治療に使用する製剤。
【請求項9】
請求項8記載の製剤の有効量を患者に投与する段階であって、tTGase阻害剤が該患者のグルテン毒性を軽減する段階を含む、セリアック病および/または疱疹状皮膚炎を治療する方法。
【請求項10】
製剤がグルテナーゼ(glutenase)と共に投与される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
製剤が経口投与される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
製剤が腸溶コーティングを含む、請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2007−511607(P2007−511607A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541273(P2006−541273)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037873
【国際公開番号】WO2005/049064
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【Fターム(参考)】