説明

センサユニットおよび複合基板

【課題】可撓性基板と剛性の回路基板とを接続した場合でも、可撓性基板において絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することのできるセンサユニットおよび複合基板を提供すること。
【解決手段】ロータリエンコーダのセンサユニット5には、可撓性基板9と回路基板7とが接続された複合基板50が用いられており、かかる複合基板50において、可撓性基板9の幅方向の両端部には、絶縁保護層97の端縁970の延長線上に、絶縁保護層97の切り欠き部分971やダミーの端子982等の応力緩和部が設けられている。このため、可撓性基板9に応力が加わった際、絶縁保護層97の端縁970に沿って曲げ応力が集中しようとするが、かかる応力は、絶縁保護層97の切り欠き部分971やダミーの端子982等の応力緩和部によって緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性基板が剛性の回路基板に電気的に接続されたセンサユニット、および複合基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定体に対する回転体の回転を検出するロータリエンコーダは、一般に、周方向にN極およびS極が配置された磁気トラックを備えた磁気スケールに対して磁気抵抗素子等の感磁素子を対向させた構成を有している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−271608号公報
【特許文献2】特開2000−121384号公報
【特許文献3】特許3200361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるロータリエンコーダ等の検出装置において、感磁素子等のセンサ素子は、配置すべき位置の制約等から可撓性基板に接続されるが、かかるセンサ素子からの出力信号に対する増幅回路等は、可撓性基板上に構成することは困難である。そこで、本願発明者等は、剛性の回路基板上に増幅回路等を構成し、かかる回路基板と可撓性基板とを電気的に接続した複合基板を用いることを検討している。しかしながら、可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムの一方面側には、複数本の導電パターンおよび絶縁保護層がこの順に形成されており、可撓性基板の一方側端部において、絶縁保護層から露出している導電パターンの端部が、回路基板と電気的に接続される可撓性基板側端子として利用されるため、可撓性基板に応力が加わった際、絶縁保護層の端縁に沿って応力が集中し、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断するという問題が発生しやすい。かかる問題は、センサ素子として感磁素子以外のセンサ素子を用いたセンサユニットに用いた複合基板でも同様に発生するとともに、センサユニット以外の装置に用いた複合基板でも同様に発生する問題である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可撓性基板と剛性の回路基板とを接続した場合でも、可撓性基板において絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することのできるセンサユニットおよび複合基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、センサ素子と、該センサ素子が電気的に接続された可撓性基板と、該可撓性基板に電気的に接続された剛性の回路基板と、を有するセンサユニットであって、前記可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムと、該基材フィルムの一方面に形成された複数本の導電パターンと、該複数本の導電パターンのうち、前記回路基板と電気的に接続される端部が可撓性基板側端子として幅方向に並ぶ一方の基板端部を避けて前記導電パターン上に積層された絶縁保護層と、を有し、前記可撓性基板の幅方向の両端部には、前記絶縁保護層において前記一方の基板端部が位置する側の端縁の延長線上に、当該端縁への曲げ応力の集中を緩和する応力緩和部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、可撓性基板と、該可撓性基板に電気的に接続された剛性の回路基板と、を有する複合基板であって、前記可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムと、該基材フィルムの一方面に形成された複数本の導電パターンと、該複数本の導電パターンのうち、前記回路基板と電気的に接続される端部が可撓性基板側端子として幅方向に並ぶ一方の基板端部を避けて前記導電パターン上に積層された絶縁保護層と、を有し、前記可撓性基板の幅方向の両端部には、前記絶縁保護層において前記一方の基板端部が位置する側の端縁の延長線上に、当該端縁への曲げ応力の集中を緩和する応力緩和部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、可撓性基板と回路基板とが電気的に接続されて複合基板が構成されており、かかる複合基板において、可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムの一方面側には、複数本の導電パターンおよび絶縁保護層がこの順に形成されており、可撓性基板の一方側端部において、絶縁保護層から露出している導電パターンの端部が、回路基板と電気的に接続される可撓性基板側端子として利用される。ここで、可撓性基板に応力が加わった際、絶縁保護層の端縁に沿って曲げ応力が集中しようとするが、可撓性基板の幅方向の両端部において、絶縁保護層の端縁の延長線上には応力緩和部が設けられているため、絶縁保護層の端縁に曲げ応力が集中することを回避することができる。従って、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することができる。
【0009】
本発明において、前記応力緩和部には、前記絶縁保護層の切り欠き部分が設けられている構成を採用することができる。かかる構成によれば、可撓性基板に応力が加わった際、かかる応力は、幅方向の両端部に設けられた絶縁保護層の切り欠き部分で吸収され、絶縁保護層の端縁に沿って直線的に強く伝わることを緩和することができる。それ故、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することができる。
【0010】
この場合、前記応力緩和部において、前記絶縁保護層の切り欠き部分は、湾曲した形状をもって凹むように切り欠かれていることが好ましい。かかる構成によれば、絶縁保護層の端縁に沿って応力が直線的に強く伝わることをより確実に緩和することができるので、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することをより確実に防止することができる。
【0011】
本発明において、前記応力緩和部には、前記回路基板との電気的な接続に寄与しないダミー端子が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、可撓性基板に応力が加わった際、かかる応力は、ダミー端子で吸収され、絶縁保護層の端縁に沿って直線的に強く伝わることを緩和することができる。それ故、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することができる。
【0012】
本発明において、前記可撓性基板の前記一方の基板端部は、前記端子が露出している面側を前記回路基板が位置する側と反対側に向けて当該回路基板に重ねられ、前記回路基板において前記可撓性基板の前記一方の基板端部から露出する回路基板側端子と前記端子とは、前記回路基板側端子と前記端子とに跨るように設けられたハンダにより導通している構成を採用することができる。かかる構成によれば、可撓性基板が片面基板である等が理由で可撓性基板の向きに制約があっても、可撓性基板と回路基板とを電気的に接続することができる。
【0013】
本発明は、前記可撓性基板が、前記一方の基板端部と、該一方の基板端部と反対側に位置する他方の基板端部との間でU字状に曲げられている場合に適用すると効果的である。可撓性基板をU字状に曲げると、可撓性基板に大きな応力が加わり、絶縁保護層の端縁に沿って曲げ応力が集中しようとするが、本発明によれば、絶縁保護層の端縁の延長線上には応力緩和部が設けられているため、絶縁保護層の端縁に曲げ応力が集中することを回避することができる。従って、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することができる。それ故、可撓性基板をU字状に曲げた場合でも、高い信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムの一方面側には、複数本の導電パターンおよび絶縁保護層がこの順に形成されており、可撓性基板の一方側端部において、絶縁保護層から露出している導電パターンの端部が、回路基板と電気的に接続される可撓性基板側端子として利用される。ここで、可撓性基板に応力が加わった際、絶縁保護層の端縁に沿って曲げ応力が集中しようとするが、可撓性基板の幅方向の両端部において、絶縁保護層の端縁の延長線上には応力緩和部が設けられているため、絶縁保護層の端縁に曲げ応力が集中することを回避することができる。従って、絶縁保護層の端縁で導電パターンが切断することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るロータリエンコーダの基本構成等を示す説明図である。
【図2】本発明に係るロータリエンコーダの具体的構成例を示す説明図である。
【図3】本発明に係るロータリエンコーダのセンサユニットの説明図である。
【図4】本発明に係るロータリエンコーダのセンサユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明に係るロータリエンコーダの感磁素子の説明図である。
【図6】本発明に係るロータリエンコーダのセンサユニットに用いたホルダの説明図である。
【図7】本発明に係るロータリエンコーダのセンサユニットに用いた可撓性基板等の説明図である。
【図8】本発明に係るロータリエンコーダのセンサユニットにおいて感磁素子をホルダに固定した様子を示す説明図である。
【図9】本発明に係るロータリエンコーダの磁気スケールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したロータリエンコーダの実施の形態を説明する。なお、ロータリエンコーダにおいて、固定体に対する回転体の回転を検出するにあたっては、固定体に磁気スケールを設け、回転体に感磁素子(センサユニット)を設けた構成、および固定体に感磁素子(センサユニット)を設け、回転体に磁気スケールを設けた構成のいずれの構成を採用してもよいが、以下の説明では、固定体に感磁素子(センサユニット)を設け、回転体に磁気スケールを設けた構成を中心に説明する。また、以下に参照する図面において、マグネットおよび感磁素子等の構成について模式的に示してある。
【0017】
(ロータリエンコーダの基本構成)
図1は、本発明に係るロータリエンコーダ1の基本構成等を示す説明図であり、図1(a)、(b)、(c)は、磁気スケールと感磁素子との位置関係等を模式的に示す説明図、感磁素子からの出力信号の説明図、および感磁素子からの出力信号と回転体の角度位置θ(電気角)との関係を示す説明図である。
【0018】
図1に示すように、本形態のロータリエンコーダ1において、回転体の側には、磁気スケール2が設けられ、固定体の側には、センサユニット5が設けられている。磁気スケール2は、N極とS極とが周方向において交互に着磁された磁気トラック31を回転軸線方向Lの一方側L1に向けており、センサユニット5は、磁気トラック31に対して回転軸線方向Lの一方側L1で対向する感磁素子6(センサ素子)を備えている。本形態では、磁気トラック31には、トラック311、312が2列、同心状に並列して形成されている。かかる磁気トラック31において、2つのトラック311、312の間ではN極およびS極の位置が周方向でずれており、本形態では、2つのトラック311、312の間においてN極およびS極が周方向に1極分ずれている。
【0019】
本形態において、感磁素子6は、磁気抵抗素子であり、磁気トラック31の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えている。かかる感磁素子(磁気抵抗素子)において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン64および−a相(SIN-)の磁気抵抗パターン62を備えており、B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン63および−b相(COS-)の磁気抵抗パターン61を備えている。+a相の磁気抵抗パターン64および−a相の磁気抵抗パターン62は、ブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+a相の磁気抵抗パターン64の中点位置には、+a相が出力される端子(+a)が設けられ、−a相の磁気抵抗パターン62の中点位置には、−a相が出力される端子(−a)が設けられている。また、+b相の磁気抵抗パターン63および−b相の磁気抵抗パターン61も、+a相の磁気抵抗パターン64および−a相の磁気抵抗パターン62と同様、ブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+b相の磁気抵抗パターン63の中点位置には、+b相が出力される端子(+b)が設けられ、−b相の磁気抵抗パターン61の中点位置には、−b相が出力される端子(−b)が設けられている。
【0020】
かかる構成の感磁素子6は、磁気トラック31において隣接するトラック311、312の境界部分313に回転軸線方向Lで重なる位置に配置されている。このため、感磁素子6の磁気抵抗パターン61〜64は、各磁気抵抗パターン61〜64の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度で磁気トラック31の面内方向で向きが変化する回転磁界を検出することができる。すなわち、隣接するトラック311、312の境界部分313においては、各磁気抵抗パターン61〜64の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度でトラック311、312の面内方向の向きが周方向で漸次に変化する回転磁界が発生する。飽和感度領域とは、一般的に、抵抗値変化量kが、磁界強度Hと近似的に「k∝H2」の式で表すことができる領域以外の領域をいう。また、飽和感度領域以上の磁界強度で回転磁界(磁気ベクトルの回転)の方向を検出する際の原理は、強磁性金属からなる磁気抵抗パターン61〜64に通電した状態で、抵抗値が飽和する磁界強度を印加したとき、磁界と電流方向がなす角度θと、磁気抵抗パターン61〜64の抵抗値Rとの間には、下式
R=R0−k×sin2θ
R0:無磁界中での抵抗値
k:抵抗値変化量(飽和感度領域以上のときは定数)
で示す関係があることを利用するものである。このような原理に基づいて回転磁界を検出すれば、角度θが変化すると抵抗値Rが正弦波に沿って変化するので、波形品質の高いA相およびB相を得ることができる。
【0021】
かかる構成のロータリエンコーダ1において、感磁素子6には、増幅回路13、14や、これらの増幅回路13、14から出力される正弦波信号sin、cosに補間処理や各種演算処理を行うCPU10(演算回路)等が設けられており、感磁素子6からの出力に基づいて、固定体に対する回転体の回転速度、回転方向、角度位置が検出される。より具体的には、ロータリエンコーダ1において、回転体が磁極の1周期分回転すると、感磁素子6からは、図1(b)に示す正弦波信号sin、cosが2周期分、出力される。従って、正弦波信号sin、cosを増幅回路13、14により増幅した後、CPU10において、図1(c)に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan-1(sin/cos)を求めれば、回転体の角度位置θが分かる。
【0022】
(ロータリエンコーダ1の具体的構成)
図2は、本発明に係るロータリエンコーダ1の具体的構成例を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、ロータリエンコーダ1の側面図、磁気スケール2をセンサユニット5の側から見た斜視図、磁気スケール2の磁気トラック31の説明図、およびセンサユニット5の斜視図である。なお、図2(d)には感磁素子6の表面からシールドテープを剥がした様子を示してある。図3は、本発明に係るロータリエンコーダ1のセンサユニット5の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)、(d)は、センサユニット5を感磁素子6のセンサ面側からみた平面図、センサユニット5の側面図、センサユニット5をセンサ面とは反対側からみた底面図、および感磁素子6の表面からシールドテープを剥がした様子を示す説明図である。図4は、本発明に係るロータリエンコーダ1のセンサユニット5の分解斜視図であり、図4(a)、(b)、(c)、(d)は、センサユニット5においてホルダから回路基板等を外した状態の斜視図、回路基板から可撓性基板等を外した状態の斜視図、可撓性基板を展開した状態の斜視図、および回路基板を裏面側(センサ面とは反対側)からみた様子を示す斜視図である。
【0023】
図2(a)、(b)、(d)に示すように、本形態のロータリエンコーダ1において、磁気スケール2およびセンサユニット5はいずれも円環状であり、回転体の回転軸線方向Lで対向し、かつ、磁気スケール2の中心O2、およびセンサユニット5の中心O5が回転体の回転軸線方向L上に位置するように配置されている。
【0024】
図2(b)に示すように、磁気スケール2は、SPPC(冷間圧延鋼板)等の金属製の円環状のヨーク板20と、このヨーク板20の表面(センサユニット5が位置する側)に固定された円環状のセンサマグネット30とを備えており、図2(c)に示すように、センサマグネット30の表面(着磁されている面33)には周方向に延びる円環状の磁気トラック31が設けられている。磁気トラック31は半径方向に並列して周方向に延びる内側のトラック311と外側のトラック312とからなる。これらトラック311、312は着磁ヘッドによってセンサマグネット30に対する着磁を行うことにより設けられる。
【0025】
図2(b)に点線で示すように、センサマグネット30の着磁表面には、ステンレス等の非磁性材料からなる円環状の保護シート40が取り付けられている。本例では、磁気トラック31は周方向に90分割されてN極とS極が交互に着磁されており、各磁極が着磁されている角度範囲は4°である。また、各S極および各N極の平面形状は外周から内周側に向けて幅が狭くなる扇形となっている。なお、磁気スケール2から保護カバー4を省略することも可能である。
【0026】
図2(a)、(d)、図3および図4に示すように、センサユニット5は、亜鉛ダイカスト品やアルミニウムダイカスト品からなる円環状のホルダ8と、このホルダ8の裏面側(磁気スケール2が位置する側とは反対側)に取り付けられた剛性の回路基板7と、回路基板7に電気的に接続された可撓性基板9と、可撓性基板9に電気的に接続された感磁素子6とを備えており、感磁素子6において磁気スケール2が位置する側の面がセンサ面6aである。回路基板7には、回路基板7からの出力を、図1(a)に示すCPU10に出力するコネクタ15が実装されている。感磁素子6のセンサ面6aには、電気ノイズ対策として金属製のシールドテープ66(図3(a)参照)が貼り付けられており、センサ面6aはシールドテープ66によって覆われている。
【0027】
(感磁素子8の具体的構成例)
図5は、本発明に係るロータリエンコーダ1の感磁素子6の説明図であり、図5(a)、(b)は、感磁素子6の平面図、および感磁素子6における磁気抵抗パターンの積層状態を模式的に示す説明図である。なお、図5(a)では、各磁気抵抗パターンと重ねて各磁気抵抗パターンと対向配置されるトラック311、312を表してある。
【0028】
図5において、本形態で用いた感磁素子6は、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)、および+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)は、層間絶縁膜を介して積層された第1積層磁気抵抗パターン601として素子基板60の主面60a上に形成されており、素子基板60の主面60a側がセンサ面6aである。+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)、および+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)は各々、磁気トラック31の半径方向においては、その中心がトラック311、312の境界部分313に対向して配置されており、磁気トラック31の周方向においては、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)が検出する+a相と+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)が検出する+b相が最小位相差となる最小機械角度ずれた位置に配置されている。すなわち、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)、および+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)は、磁気スケール2から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な角度位置に配置されている。本例では、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)と+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)は周方向で1°ずれた位置に配置されている。なお、本形態では、図5(b)に示すように、素子基板60の主面60a上に+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)が形成され、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)がその上に積層されている。なお、最小位相差とは90°の位相差であり、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)と+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)の上下関係は逆でもよい。
【0029】
−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)、および−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)も、+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)、および+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)と同様、層間絶縁膜を介して積層された第2積層磁気抵抗パターン602として素子基板60の主面60a上に形成されている。−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)、および−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)は各々、磁気トラック31の半径方向においては、その中心がトラック311、312の境界部分313に対向して配置されており、磁気トラック31の周方向においては、−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)が検出する−a相と−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)が検出する−b相とが最小位相差となる最小機械角度ずれた位置に配置されている。すなわち、−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)、および−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)は、磁気スケール2から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な角度位置に配置されている。本例では、−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)と−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)は周方向で1°ずれた位置に配置されている。なお、本形態では、図5(b)に示すように、素子基板60の主面60a上に−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)が形成され、−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)がその上に積層されている。なお、最小位相差とは90°の位相差であり、−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)と−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)の積層関係は逆でもよい。
【0030】
次に、第1積層磁気抵抗パターン601と第2積層磁気抵抗パターン602は、周方向で重ならない位置に配置されている。より詳細には、第1積層磁気抵抗パターン601と第2積層磁気抵抗パターン602は、第1積層磁気抵抗パターン601の+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)から検出される+a相と、第2積層磁気抵抗パターン602の−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)から検出される−a相が180°の位相差となる位置であり、第1積層磁気抵抗パターン601の+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)から検出される+b相と、第2積層磁気抵抗パターン602の−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)から検出される−b相とが180°の位相差となる位置に配置されている。さらに、第1積層磁気抵抗パターン601と第2積層磁気抵抗パターン602が電気的或いは磁気的に干渉しない最小距離だけ離れた角度位置に配置されている。本例では、第1積層磁気抵抗パターン601の+a相の磁気抵抗パターン64(SIN+)と、第2積層磁気抵抗パターン602の−a相の磁気抵抗パターン62(SIN-)は周方向に22°ずれた位置に配置されている。第1積層磁気抵抗パターン601の+b相の磁気抵抗パターン63(COS+)と、第2積層磁気抵抗パターン602の−b相の磁気抵抗パターン61(COS-)も、同様に、周方向に22°ずれた位置に配置されている。
【0031】
ここで、各磁気抵抗パターン61〜64は互いに平行ではなく、図3等に示すホルダ8の中心O8(センサユニット5の中心O5)から径方向に延在する複数の仮想線上に位置しており、ホルダ8およびセンサユニット5の半径方向に延在している。かかる磁気抵抗パターン61〜64は、ガラスあるいはシリコンからなる素子基板60上に、半導体プロセスによって強磁性体NiFe等の磁性体膜を積層することによって形成されている。素子基板60は長方形をしており、各磁気抵抗パターン61〜64は素子基板60の中央領域に形成されている。素子基板60の端部には、一方の長辺に沿って複数の端子68が形成されており、かかる端子68は、図4等に示す可撓性基板9との電気的な接続に用いられている。また、各磁気抵抗パターン61〜64は、端子68を避けるように形成されたエポキシ樹脂等の保護層(図示せず)によって覆われており、かかる保護層は、例えば、スクリーン印刷によって形成されている。
【0032】
(回路基板7の詳細構成)
図4に示すように、回路基板7は、概ねホルダ8の外周形状に沿った形状を有する円環状であり、中央に丸穴78が形成されている。かかる回路基板7は、ガラス−エポキシ基板等の剛性基板であり、ホルダ8の裏面側に重ねて配置され、ネジによってホルダ8に固定されている。このため、回路基板7の外周側にはネジを止める複数の穴77が形成されている。
【0033】
回路基板7において、ホルダ8の側に位置する第1基板面71には、図1(a)に示す増幅回路13、14等を構成する電子部品79やコネクタ15が実装されている。また、回路基板7の第1基板面71には、丸穴78の近傍位置に可撓性基板9との電気的な接続に用いられる複数の端子73が形成されている。かかる端子73を用いての可撓性基板9との接続は、図7等を参照して後述する。本形態では、端子73として計8つが形成されており、かかる端子73のうち、両側の端子732を除く計6つの端子731が可撓性基板9との電気的な接続に用いられる。これに対して、両側の端子732は、ハンダにより可撓性基板9に接続されるが、電気的な接続に利用されないダミー端子である。かかるダミーの端子732は、他の端子731に比して幅寸法が大であり、他の端子731よりも径方向のやや外側に配置されている。
【0034】
回路基板7は両面基板であり、ホルダ8が位置する側とは反対側の第2基板面72には各種の配線パターンが形成されているが、配線パターンが形成されている領域を含む広い領域には、配線パターンを覆うレジスト層の表面に、さらに絶縁性の印刷層76(図3(c)および図4(d)にグレーで表示した領域)が形成されている。
【0035】
(ホルダ8の詳細構成)
図6は、本発明に係るロータリエンコーダ1のセンサユニット5に用いたホルダ8の説明図であり、図6(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、ホルダ8をセンサ面6a側からみた平面図、ホルダ8の側面図、ホルダ8をセンサ面6aと反対側からみた底面図、感磁素子6が配置される開口部周辺を拡大して示す平面図、およびE−E′断面図である。
【0036】
図2、図3、図4および図6に示すように、ホルダ8は、全体として円環形状を有するトレイ(tray)状であり、その本体部分は円環状の板状部80からなる。板状部80には、円形の中央穴82が形成されており、板状部80の外周部分81は、中央穴82と同心状の円形である。従って、ホルダ8は、ホルダ8の中心O8を円中心とする円弧状の外周部分81(円周部分)と、ホルダ8の中心O8を円中心とする円形の内周部分82a(円周部分)を備えている。
【0037】
また、ホルダ8は、板状部80の裏面側で回路基板7の第1基板面71を部分的に受ける基板支持用段部85を備えており、図6(c)には、基板支持用段部85に相当する部分をグレーの領域として表してある。かかる基板支持用段部85は、板状部80の裏面側の他の領域よりわずかに高い位置にあり、板状部80の裏面側において、基板支持用段部85が形成されていない領域は、基板支持用段部85から見ると、浅い凹部になっている。このため、ホルダ8の裏面側に回路基板7を重ねて固定すると、板状部80の裏面側と回路基板7の第1基板面71との間には狭い隙間が確保されることになる。
【0038】
ホルダ8において、板状部80には、感磁素子6が内側に配置される略矩形の開口部86が形成されており、開口部86に対して中心O8を挟む反対側位置の外周部分81は、コネクタ15が内側に配置される切り欠き87が形成されている。
【0039】
かかるホルダ8において、開口部86の内周部分のうち、中心O8が位置する側の辺部分は、感磁素子6の径方向の位置決めを行うための度当たり部89になっている。また、ホルダ8には、開口部86の内側に向けて互いに対向するように突き出た2つの突部881、882が形成されている。突部881、882は、板状部80の厚さ方向の途中位置に板状部80より薄い寸法をもって形成されており、突部881、882の上面は、ホルダ8の表面側からみて低い位置にある。かかる突部881、882は、図8を参照して後述するように、感磁素子6を厚さ方向で位置決めするとともに、感磁素子6が接着剤で固定される部分である。
【0040】
(可撓性基板9の詳細構成)
図7は、本発明に係るロータリエンコーダ1のセンサユニット5に用いた可撓性基板9等の説明図であり、図7(a)、(b)、(c)、(d)は、可撓性基板9の平面図、可撓性基板9に感磁素子6と回路基板7を接続する際の互いの位置関係を示す平面図、ハンダ付け後の断面図、および可撓性基板9をU字状に曲げた様子を示す断面図である。
【0041】
図7に示すように、可撓性基板9は、長方形の平面形状を有しており、長手方向に直線的に延在する複数本の導電パターン96が形成されている。また、可撓性基板9において、長手方向の一方側の基板端部9sには回路基板7に接続される複数の端子98が可撓性基板9の幅方向に沿って設けられ、長手方向の他方側の基板端部9tには感磁素子6が接続される複数の端子99が可撓性基板9の幅方向に沿って設けられている。
【0042】
本形態において、導電パターン96は計6本形成されているのに対して、端子99は、計8つ形成されている。すなわち、8つの端子99のうち、両側の端子992を除く計6つの端子991は、感磁素子6との電気的な接続に用いられるのに対して、両側の端子992は、ハンダにより感磁素子6に接続されるが、電気的な接続に利用されないダミー端子である。従って、端子991は、導電パターン96の端部として形成されているが、端子992は、導電パターン96に接続していない。
【0043】
また、端子98も、端子99と同様、計8つ形成されており、8つの端子98のうち、両側の端子982を除く計6つの端子981は、回路基板7の端子731に接続されて回路基板7との電気的な接続に用いられるのに対して、両側の端子982は、ハンダにより回路基板7のダミーの端子732に接続されるダミー端子である。従って、端子981は、導電パターン96の端部として形成されているが、端子982は、導電パターン96に接続していない。
【0044】
かかる構成の可撓性基板9は、絶縁性の基材フィルム95と、基材フィルム95の一方面に形成された複数本の導電パターン96と、複数本の導電パターン96の表面を覆う絶縁保護層97とを有する片面基板であり、第1基板面91および第2基板面92のうち、第1基板面91の側のみに導電パターン96や端子98、99が形成されている。ここで、絶縁保護層97は、可撓性基板9の長手方向の両方の基板端部9s、9tを避けて形成されている。すなわち、絶縁保護層97は、一方側の基板端部9sでは、可撓性基板9の辺部分から所定の寸法を隔てた位置に形成されており、絶縁保護層97の端縁970は、辺部分に平行に直線的に延在している。従って、端子981は、導電パターン96のうち、絶縁保護層97から露出している部分からなる。また、絶縁保護層97は、他方側の基板端部9tでも、可撓性基板9の辺部分から所定の寸法を隔てた位置に形成されており、端子982は、導電パターン96のうち、絶縁保護層97から露出している部分からなる。なお、導電パターン96は銅箔パターンからなり、端子98、99に相当する部分には、銅箔パターンの表面にスズ−銅等のメッキが施されている。
【0045】
このような構成の可撓性基板9に感磁素子6を電気的に接続するにあたっては、可撓性基板9の基板端部9tにおいて、第1基板面91と感磁素子6に用いた素子基板60の主面60a側(センサ面6a側)とを対向させた状態で、可撓性基板9の端子99と感磁素子6の端子68とをハンダ67により接続する。
【0046】
また、可撓性基板9と回路基板7とを電気的に接続するにあたっては、可撓性基板9の基板端部9sにおいて、可撓性基板9の端子98と回路基板7の端子73とをハンダ90により接続する。その際、可撓性基板9は片面基板であり、しかも、可撓性基板9をU字状に曲げて感磁素子6のセンサ面6aをホルダ8の表面側に向かせる必要がある。
【0047】
そこで、本形態では、可撓性基板9と回路基板7とを電気的に接続するにあたっては、まず、可撓性基板9の一方の基板端部9sは、端子98が露出している第1基板面91側を回路基板7が位置する側と反対側に向けて回路基板7に重ねられる。この状態で、可撓性基板9の基板端部9sから回路基板7の端子73が露出した状態となり、かつ、可撓性基板9の端子99と回路基板7の端子73とは1対1の関係をもって直線的に並ぶ。この状態で、ハンダ90を端子73、99に跨るように設け、端子73と端子99とをハンダ90により接続する。
【0048】
このようにして可撓性基板9と回路基板7とを接続して複合基板50を構成する。従って、感磁素子6から出力された信号は、可撓性基板9を介して回路基板7に出力され、回路基板7上に形成した増幅回路12、13によって増幅された後、コネクタ15を介してCPU10に出力されることになる。それ故、感磁素子6から出力された微弱なアナログ信号を、コネクタ15を介して出力する必要がないので、信号の劣化が発生しない。また、感磁素子6は、可撓性基板9に接続されているため、可撓性基板9を曲げることによって、ホルダ8の表面側に向かせることができる等の利点がある。
【0049】
(可撓性基板9に対する補強)
図7等を参照して説明したセンサユニット5および複合基板50において、可撓性基板9の一方側の基板端部9sでは、絶縁保護層97が可撓性基板9の辺部分から所定の寸法を隔てた位置に形成されており、絶縁保護層97の端縁970は、辺部分に平行に直線的に延在している。また、可撓性基板9は、基板端部9s、9tの間でU字状に曲げられている。このため、可撓性基板9に加わった応力が絶縁保護層97の端縁970に沿って集中し、導電パターン96が端縁970で断線するという不具合や、可撓性基板9が端縁970で断線するという不具合が発生するおそれがある。
【0050】
そこで、本形態では、図7を参照して以下に説明するように、可撓性基板9の幅方向の両端部には、絶縁保護層97の端縁970の延長線上に、端縁970への曲げ応力の集中を緩和して、端縁970での不具合の発生を防止する応力緩和部が設けられている。
【0051】
まず、本形態では、絶縁保護層97の端縁970への曲げ応力の集中を緩和する応力緩和部として、可撓性基板9の幅方向の両端部には、絶縁保護層97の端縁970の延長線上に、絶縁保護層97の切り欠き部分971(絶縁保護層97の非形成部分/応力緩和部)が設けられている。ここで、絶縁保護層97の切り欠き部分971は、湾曲した形状をもって凹むように切り欠かれている。このため、可撓性基板9に応力が加わった際、かかる応力は、幅方向の両端部に設けられた絶縁保護層97の切り欠き部分971で吸収され、絶縁保護層97の端縁970に沿って直線的に強く伝わることを緩和することができる。しかも、絶縁保護層97の切り欠き部分971は、湾曲した形状をもって凹むように切り欠かれているため、可撓性基板9に応力が加わった際、かかる応力は、切り欠き部分971の湾曲した形状に沿って吸収され、絶縁保護層97の端縁970に沿って直線的に強く伝わることを効果的に緩和することができる。それ故、絶縁保護層97の端縁970で導電パターン96が切断すること等を防止することができる。
【0052】
また、本形態では、絶縁保護層97の端縁970への曲げ応力の集中を緩和する応力緩和部として、可撓性基板9の幅方向の両端部には、絶縁保護層97の端縁970の延長線上に、回路基板7との電気的な接続に寄与しないダミーの端子982(応力緩和部)が設けられている。しかも、可撓性基板9のダミーの端子982はハンダ90によって回路基板7のダミーの端子732と固定されている。このため、可撓性基板9に応力が加わった際、かかる応力は、ダミーの端子982や回路基板7のダミーの端子732によって分散されるため、応力が絶縁保護層97の端縁970に沿って直線的に強く伝わることを効果的に緩和することができる。それ故、絶縁保護層97の端縁970で導電パターン96が切断すること等を防止することができる。
【0053】
(感磁素子6の位置決め構造)
図8は、本発明に係るロータリエンコーダ1のセンサユニット5において感磁素子6をホルダ8に固定した様子を示す説明図であり、図8(a)、(b)は、感磁素子6を固定した状態を表面側からみた平面図、および裏面側からみた説明図である。
【0054】
本形態では、図7を参照して説明した可撓性基板9をU字形状に曲げて感磁素子6のセンサ面6aをホルダ8の表面に向け、この状態で感磁素子6をホルダ8に固定する。具体的には、図7(d)に示すように可撓性基板9をU字形状に曲げて、図8に示すように、感磁素子6をホルダ8の開口部86内に配置する。その際、感磁素子6をホルダ8の突部881、882の上面に重ねる。この状態で、感磁素子6には可撓性基板9の弾性力が作用し、感磁素子6は、ホルダ8の中心O8に向けて付勢される。その結果、感磁素子6は、ホルダ8の度当たり部89に当接し、感磁素子6の位置決めが行われる。従って、感磁素子6がホルダ8の度当たり部89に当接して位置決めされた状態で、突部881、882と感磁素子6とに跨るように接着剤28を塗布、固化させれば、感磁素子6はホルダ8上の径方向の所定の位置に固定される。従って、図5を参照して説明した各磁気抵抗パターン61〜64は、ホルダ8の中心O8(センサユニット5の中心O5)から径方向に延在する複数の仮想線上に位置することになる。
【0055】
(磁気スケール2の詳細構成)
図9は、本発明に係るロータリエンコーダ1の磁気スケールの説明図であり、図9(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、磁気スケールの平面図、断面図、センサマグネットの平面図、ヨーク板の平面図、および成形直後(研磨前)のセンサマグネットの説明図である。図2(b)を参照して説明したように、本形態のロータリエンコーダ1において、磁気スケール2は、円環状のヨーク板20と、このヨーク板20の表面(センサユニット5が位置する側)に固定した円環状のセンサマグネット30とを備えている。図9に示すように、ヨーク板20は、センサマグネット30より幅寸法が大であり、ヨーク板20の内周部分21は、センサマグネット30の内周縁35より内側に位置し、ヨーク板20の外周部分22は、センサマグネット30の外周縁32より外側に位置している。従って、磁気スケール2の円形の外周縁および円形の内周縁は、ヨーク板20の内周部分21および外周部分22に相当する。
【0056】
かかる構成の磁気スケール2において、センサマグネット30は、ヨーク板20の円形状を基準に着磁されている。より具体的には、センサマグネット30は、円環状に成形した磁性体をヨーク板20に接着剤により固定した後、磁性体の表面を研磨し、しかる後に着磁を行って、磁気トラック31を形成することにより、形成されている。かかる着磁の際、本形態では、センサマグネット30(磁性体)の円形状ではなく、ヨーク板20の内周部分21や外周部分22等、ヨーク板20の円形状を基準に着磁されている。このため、磁気スケール2では、磁気トラック31と、ヨーク板20の内周部分21および外周部分22とは、同心状である。
【0057】
ここで、センサマグネット30は、フェライトなどの磁性粉(マグネット原料)とPPS(polyphenylene sulfide)等の熱可塑性樹脂材料(プラスチック材料)とを混合して成形したプラスチックマグネットである。本形態において、センサマグネット30は、各種のプラスチックマグネットのうち、フィルムゲート(フラッシュゲート)により成形されたプラスチックマグネットである。かかるフィルムゲートによる成形では、フィルム状(膜状)のゲートを使用し、かつ、このフィルム状のゲートを円環状のセンサマグネット30の内周面となる部分の全周に設けて成形する。従って、本形態のセンサマグネット30には、パーティングラインが存在しない。また、フィルムゲートを用いると、図9(e)にゲートの位置を矢印Gで示すように、成形直後のセンサマグネット30の内周面の端縁には、ゲートが位置していた全周にわたってゲート痕39が発生する。そこで、本形態において、センサマグネット30は、フィルムゲートにより成形された後、ゲートが位置していた面側全体が研磨され、ゲート痕が除去されている。このため、センサマグネット30は、プラスチックマグネットであるにもかかわらず、ゲート痕が存在しない。また、センサマグネット30は、両面のうち、着磁されている側の面33が反対側の面34に比して平面度が高い。但し、センサマグネット30については、少なくとも、着磁されている面33が研磨されていればよく、センサマグネット30の両面を研磨してもよい。
【0058】
なお、ゲート痕を除去するにあたっては、センサマグネット30の内周面に治具等を挿入して除去する方法もある。但し、この場合、ゲート痕の除去と同時にセンサマグネット30の端面にも欠け(破損)が生じる可能性があるので、その点では、センサマグネット30においてゲートが位置していた面側全体を研磨する方が好ましい。また、センサマグネット30においてゲートが位置していた面側全体を研磨すれば、平面度が高い平滑面が得られるので、かかる平滑面を着磁面として利用することができるという利点がある。
【0059】
ここで、センサマグネット30は、ゲートが位置する側が研磨され、研磨された面に着磁が施されている。このため、フィルムゲートにより成形した際、気泡が混入した場合でも、ゲートが位置する側では残留気泡密度が低く、ゲートが位置する側とは反対側では残留気泡密度が高いことから、本形態のセンサマグネット30は、センサマグネット30の両面のうち、残留気泡密度が低い側の面が着磁されたプラスチックマグネットである。また、センサマグネット30はゲートが位置する側が研磨され、研磨された面に着磁が施されているため、センサマグネット30の内側面および外側面には、センサマグネット30の両面のうち、着磁された面33を反対側の面34より幅広とする抜きテーパが形成されている。なお、フィルムゲートは、センサマグネット30の外周縁に設けられることもある。
【0060】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のロータリエンコーダ1では、可撓性基板9と回路基板7とが接続された複合基板50が用いられており、かかる複合基板50において、可撓性基板9の幅方向の両端部には、絶縁保護層97の端縁970の延長線上に、絶縁保護層97の切り欠き部分971やダミーの端子982等の応力緩和部が設けられている。このため、可撓性基板9に応力が加わった際、絶縁保護層97の端縁970に沿って曲げ応力が集中しようとするが、かかる応力は、絶縁保護層97の切り欠き部分971やダミーの端子982等の応力緩和部によって緩和され、絶縁保護層97の端縁970に曲げ応力が集中することを回避することができる。従って、絶縁保護層97の端縁970で導電パターン96が切断すること等を防止することができる。
【0061】
特に、本形態では、絶縁保護層97の切り欠き部分971は、湾曲した形状をもって凹むように切り欠かれているため、絶縁保護層97の端縁970に沿って応力が直線的に強く伝わることをより確実に緩和することができる。それ故、絶縁保護層97の端縁970で導電パターン96が切断すること等をより確実に防止することができる。
【0062】
また、本形態では、可撓性基板9がU字状に曲げられているため、その際の捩じり等により、可撓性基板9に大きな応力が加わりやすいが、本形態では、絶縁保護層97の切り欠き部分971やダミーの端子982等の応力緩和部が設けられているため、絶縁保護層97の端縁970で導電パターン96が切断すること等を防止することができ、高い信頼性を得ることができる。
【0063】
また、本形態のセンサユニット5および複合基板50では、可撓性基板9と回路基板7とを電気的に接続するにあたっては、可撓性基板9の一方の基板端部9sを、端子98が露出している第1基板面91側を回路基板7が位置する側と反対側に向けて回路基板7に重ね、この状態で、ハンダ90を端子73、99に跨るように設け、端子73と端子99とをハンダにより接続している。このため、可撓性基板9が片面基板である等が理由で可撓性基板9の向きに制約があっても、可撓性基板9と回路基板7とを電気的に接続することができる。
【0064】
また、本形態のロータリエンコーダ1において、センサユニット5のホルダ8は、センサユニット5の中心O5およびホルダ8の中心O8を円中心とする円周部分(内周部分82aおよび外周部分81)を備え、磁気スケール2は、磁気トラック31と同心状の円周部分(ヨーク板20の内周部分21および外周部分22)を備えている。このため、磁気スケール2を回転体に取り付け、センサユニット5を固定体に取り付ける際、ホルダ8の円周部分と磁気スケール2の円周部分とを治具を用いて位置合わせすれば、ホルダ8およびセンサユニット5と磁気トラック31とを同心状に配置することができる。また、ロータリエンコーダ1を各種機器に搭載した状態で、回転体の回転中心軸線L上に、ホルダ8の中心O8および磁気トラック31の中心が位置する状態とするのも容易である。ここで、感磁素子6は、ホルダ8に保持されているので、ホルダ8の中心O8に対する感磁素子6の位置精度は高い。従って、ホルダ8の円周部分と磁気スケール2の円周部分とを位置合わせすれば、磁気スケール2と感磁素子6との径方向の位置を確実かつ容易に合わせることができる。
【0065】
また、ホルダ8は、感磁素子6の径方向の位置を規定する度当たり部89を備え、可撓性基板9は、感磁素子6を度当たり部89に当接させる付勢力を発生する形状に湾曲している。このため、センサユニット5を組み立てる際、ホルダ8上の径方向の所定位置に感磁素子6を確実に配置することができる。従って、ホルダ8と磁気スケール2とを正確に位置合わせすれば、磁気スケール2と感磁素子6との径方向の位置を確実かつ容易に合わせることができる。特に本形態では、感磁素子6が、ホルダ8の中心O8から径方向に延在する複数本の仮想線上の各々に磁気抵抗パターン61〜64を備えた磁気抵抗素子である。このため、磁気抵抗パターン61〜64は、磁気トラック31の着磁パターンと好適に対応する向きとなるので、感度を向上することができる代わりに、磁気スケール2と感磁素子6との径方向の位置がずれると、感度が著しく低下することになる。しかるに本形態によれば、磁気スケール2と感磁素子6との径方向の位置を確実に合わせることができるので、磁気抵抗パターン61〜64を、ホルダ8の中心O8から径方向に延在する複数本の仮想線上の各々に配置した場合の効果を十分発揮させることができる。
【0066】
また、センサユニット5において、ホルダ8は、回路基板7の第1基板面71を部分的に受けてホルダ8の板状部80と第1基板面71との間に隙間を確保する基板支持用段部85と、感磁素子6が内側に配置される開口部86とを備えている。このため、ホルダ8の裏面側に回路基板7を重ねても、電子部品79とホルダ8との干渉が発生しないとともに、感磁素子6とホルダ8とが重なることもない。それ故、センサユニット5の薄型化を図ることができる。
【0067】
また、回路基板7は両面基板であるが、第2基板面72には、レジスト層の表面にさらに絶縁性の印刷層76が設けられているため、例えば、センサユニット5を金属製の固定体に取り付ける際、金属製の固定体と回路基板7の第2基板面72とが対向するような場合でも、回路基板7と固定体との間に高い絶縁耐圧を確保することができる。
【0068】
また、本形態のロータリエンコーダ1では、磁気スケール2は、磁気トラック31を構成する円環状のセンサマグネット30と、センサマグネット30の一方面側に固定された円環状のヨーク板20とを有している。このため、センサマグネット30が回転した際の磁界変化を感磁素子6で感度よく検出することができる。また、ヨーク板20は、円環状であるため、かかるヨーク板20の外周部分22や内周部分21を基準にセンサマグネット30に対する着磁を行い、その後、ヨーク板20の外周部分22や内周部分21を基準に回転体への取り付けや、センサユニット5との位置合わせ等を行えば、たとえ、センサマグネット30の形状精度や寸法精度が低くても、磁気トラック31と感磁素子6とを高い精度で位置合わせすることができる。それ故、磁気トラック31を構成するセンサマグネット30にプラスチックマグネット等を用いた場合でも、検出感度や検出精度が高い。しかも、ヨーク板20は、センサマグネット30より幅寸法が大であり、ヨーク板20の内周部分21は、センサマグネット30の内周縁35より内側に位置し、ヨーク板20の外周部分22は、センサマグネット30の外周縁32より外側に位置している。従って、磁気スケール2の円形の外周縁および円形の内周縁は、ヨーク板20の内周部分21および外周部分22に相当するので、磁気スケール2の取り扱いや、ヨーク板20の外周部分22や内周部分21を基準にして回転体に磁気スケール2を取り付ける作業等が容易である。
【0069】
また、センサマグネット30は、フィルムゲートにより成形されたプラスチックマグネットであるため、センサマグネット30には、パーティングラインが存在しない。それ故、パーティングラインに起因する着磁精度の低下等が発生しない。また、センサマグネット30は、ゲートが位置する側が研磨され、研磨された面が着磁されている。このため、センサマグネット30では、ゲート痕や残留気泡に起因する着磁精度の低下等が発生しにくい。
【0070】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、感磁素子として磁気抵抗素子が実装されている例を説明したが、感磁素子として、ホール素子、あるいは磁気抵抗素子とホール素子の双方が実装されている場合に適用してもよい。
【0071】
上記実施の形態では、センサマグネット30としてプラスチックマグネットを用いたが、センサマグネット30については、プラスチックマグネットに代えて、焼結マグネットやゴムマグネットを用いてもよい。焼結マグネットとは、磁性粉を焼き固め成形したものであり、ゴムマグネットは、ゴム材料と磁性粉とを混合して成形したものである。なお、上記実施の形態では、磁性粉としてフェライトを用いたが、ネオジウムやサマリウム等を用いてもよい。
【0072】
上記の実施の形態では、電気的な接続にハンダを用いた場合を例示したが、異方性導電膜や金属接合等を利用してもよい。
【0073】
上記実施の形態では、センサマグネット30からゲート痕を除去したが、ゲート痕を残す一方、ゲート痕が発生する側とは反対側を着磁面としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ロータリエンコーダ
2 磁気スケール
5 センサユニット
6 磁気抵抗素子
7 回路基板
8 ホルダ
9 可撓性基板
20 ヨーク板
30 センサマグネット
31 磁気トラック
50 複合基板
76 印刷層
85 基板支持用段部
86 開口部
89 度当たり部
96 導電パターン
97 絶縁保護層
970 絶縁保護層の端縁
971 絶縁保護層の切り欠き部分(応力緩和部)
982 ダミーの端子(応力緩和部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、該センサ素子が電気的に接続された可撓性基板と、該可撓性基板に電気的に接続された剛性の回路基板と、を有するセンサユニットであって、
前記可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムと、該基材フィルムの一方面に形成された複数本の導電パターンと、該複数本の導電パターンのうち、前記回路基板と電気的に接続される端部が可撓性基板側端子として幅方向に並ぶ一方の基板端部を避けて前記導電パターン上に積層された絶縁保護層と、を有し、
前記可撓性基板の幅方向の両端部には、前記絶縁保護層において前記一方の基板端部が位置する側の端縁の延長線上に、当該端縁への曲げ応力の集中を緩和する応力緩和部が設けられていることを特徴とするセンサユニット。
【請求項2】
前記応力緩和部には、前記絶縁保護層の切り欠き部分が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記応力緩和部において、前記絶縁保護層の切り欠き部分は、湾曲した形状をもって凹むように切り欠かれていることを特徴とする請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記応力緩和部には、前記回路基板との電気的な接続に寄与しないダミー端子が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記可撓性基板の前記一方の基板端部は、前記端子が露出している面側を前記回路基板が位置する側と反対側に向けて当該回路基板に重ねられ、
前記回路基板において前記可撓性基板の前記一方の基板端部から露出する回路基板側端子と前記端子とは、前記回路基板側端子と前記端子とに跨るように設けられたハンダにより導通していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記可撓性基板は、前記一方の基板端部と、該一方の基板端部と反対側に位置する他方の基板端部との間でU字状に曲げられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のセンサユニット。
【請求項7】
可撓性基板と、該可撓性基板に電気的に接続された剛性の回路基板と、を有する複合基板であって、
前記可撓性基板は、絶縁性の基材フィルムと、該基材フィルムの一方面に形成された複数本の導電パターンと、該複数本の導電パターンのうち、前記回路基板と電気的に接続される端部が可撓性基板側端子として幅方向に並ぶ一方の基板端部を避けて前記導電パターン上に積層された絶縁保護層と、を有し、
前記可撓性基板の幅方向の両端部には、前記絶縁保護層において前記一方の基板端部が位置する側の端縁の延長線上に、当該端縁への曲げ応力の集中を緩和する応力緩和部が設けられていることを特徴とする複合基板。
【請求項8】
前記応力緩和部には、前記絶縁保護層の切り欠き部分が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の複合基板。
【請求項9】
前記応力緩和部において、前記絶縁保護層の切り欠き部分は、湾曲した形状をもって凹むように切り欠かれていることを特徴とする請求項8に記載の複合基板。
【請求項10】
前記応力緩和部には、前記回路基板との電気的な接続に寄与しないダミー端子が設けられていることを特徴とする請求項7乃至9の何れか一項に記載の複合基板。
【請求項11】
前記可撓性基板の前記一方の基板端部は、前記端子が露出している面側を前記回路基板が位置する側と反対側に向けて当該回路基板に重ねられ、
前記回路基板において前記可撓性基板の前記一方の基板端部から露出する回路基板側端子と前記端子とは、前記回路基板側端子と前記端子とに跨るように設けられたハンダにより導通していることを特徴とする請求項7乃至10の何れか一項に記載の複合基板。
【請求項12】
前記可撓性基板は、前記一方の基板端部と、該一方の基板端部と反対側に位置する他方の基板端部との間でU字状に曲げられていることを特徴とする請求項7乃至11の何れか一項に記載の複合基板。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173179(P2012−173179A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36356(P2011−36356)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】