説明

ソルダーレジスト用難燃組成物およびその硬化物

【課題】 ハロゲンフリーかつ高水準の難燃性と可撓性とを共に備え、且つはんだ耐熱性、耐湿性、高温信頼性にも優れるソルダーレジスト用難燃組成物の提供。
【解決手段】 本発明に係るソルダーレジスト用難燃組成物は、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)と多塩基酸無水物(c)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)またはカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)の少なくとも1種を含むアルカリ可溶性樹脂(A)、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)、特定構造のリン含有エポキシ樹脂(D)、水和金属化合物(E)を含むことを特徴とする。本発明に係る組成物は、FPC用のソルダーレジスト、カバーレイフィルム等として好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線に感度よく反応し、かつ希アルカリ水溶液により現像可能であって、プリント配線板のソルダーレジスト、感光性カバーレイ、層間絶縁用膜等として使用された場合、可撓性、密着性、無電解金めっき耐性、絶縁性に優れ、かつ難燃性に優れた塗膜を形成するハロゲンフリーの難燃硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造においては、従来、エッチング時に使用されるレジスト、はんだ付け工程で使用されるソルダーレジストなど、種々の基板保護手段が必要とされる。小型機器等に使用されるフィルム状のプリント配線板(フレキシブルプリント配線板;略称FPC)の製造過程においても、部品搭載のためのはんだ付け工程において無関係な配線を保護するためのソルダーレジストが必要とされる。
【0003】
このような基板の保護手段として、従来はポリイミドフィルムを所定の型に打ち抜いたものを積層するカバーレイフィルムまたは耐熱性材料で構成されたインクを印刷するカバーコートが用いられてきた。このカバーレイフィルムまたはカバーコートは、はんだ付け後の配線の保護膜も兼ねており、はんだ付け時の耐熱性、絶縁性、および基板の組み込み時の折り曲げでクラックが入らない可撓性が必要とされる。さらに、難燃性が要求される場合もある。
【0004】
ポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイフィルムは上記の要求特性を満足しており、現在最も多く使用されているが、型抜きに高価な金型が必要なうえに、打ち抜いたフィルムを人手によって位置合わせ、張り合わせするためさらに高コストになり、また、微細パターンの形成が困難であるという問題がある。また、カバーコートは、スクリーン印刷のため乾燥工程が必要とされることから製造コストが高くなり、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、基板上に感光性組成物を液状で塗布しまたはフィルム状として貼付する方法が提案された。この方法によれば、基板上に被膜を形成した後、写真技術によって露光、現像、加熱すれば微細パターンのカバーコートやカバーレイフィルムを容易に形成することができることから、従来種々の感光性組成物が開発されてきた。
【0006】
しかしながら、従来の感光性組成物には、FPC用として要求されるこれら全ての特性を満足するものはなかった。例えば、ノボラック型エポキシビニルエステル樹脂に多塩基酸無水物を付加反応させたプレポリマー、光重合開始剤、希釈剤、エポキシ樹脂からなる感光性組成物が提案された(特公平1−54390号公報(特許文献1参照))が、このものは耐熱性、絶縁性は良好であるものの、可撓性がなくFPCには不適当であった。また、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物およびエチレン性不飽和コモノマーとから形成されるコポリマーとアミンとの反応生成物である低分子量コポリマーと、カルボン酸含有高分子量コポリマーとからなるバインダー系に、アクリル化ウレタンモノマー成分、光開始剤およびブロックジイソシアネート架橋剤を配合した感光性組成物が提案された(特開平7−278492号公報(特許文献2参照))が、このものは難燃性がなく、用途が限定されてしまうという問題があった。
【0007】
感光性組成物に難燃性を付与する方法としては、従来、臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン化物系難燃剤や、これに三酸化アンチモンなどの難燃助剤を組み合わせてなる難燃剤系を用いる方法があった(特開平9−325490号公報(特許文献3参照)、特開平11−242331号公報(特許文献4参照)等)。しかしながら、これらの難燃剤系は、高温環境における信頼性に劣る場合があり、またアンチモン化合物を使用する際には樹脂の廃棄物処理について環境問題を考慮する必要がある。さらに、臭素化エポキシ樹脂は、充分な難燃効果が得られる量を配合しようとすると可撓性を損なうという問題があった。
【0008】
一方、難燃剤としてリン酸エステルを使用する方法も提案されている(特開平9−235449号公報(特許文献5参照)、特開平10−306201号公報(特許文献6参照)、特開平11−271967号公報(特許文献7参照)等)が、リン酸エステルのみでは難燃効果が弱く、難燃効果を得ようとすると多量のリン酸エステルの使用が避けられず、硬化膜の表面にリン酸エステルがブリードアウトする問題があった。また、特定のシクロアルキレンホスフィン誘導体等を含むことを特徴とする難燃性の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特開2003−192763号公報(特許文献8参照))が、特定のシクロアルキレンホスフィン誘導体が一般的な有機溶媒に難溶性または不溶性である。このため、回路の導線のラインアンドスペースが25μm以下のような精細なプリント配線板に使用するためには、十分な粉砕工程が必要であるという問題があった。
【0009】
さらに、特定の有機リン化合物と、ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキシドとの反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ得られた反応生成物に多塩基酸無水物とを反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂等を含むことを特徴とする難燃性の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物も提案されている(特開2003−277470号公報(特許文献9参照))が、PCT耐性、無電解金めっき耐性が悪いという問題があった。
【0010】
このように、UL規格による基準を満たすほどの高い難燃性と可撓性とタックフリー性を共に備え、はんだ耐熱性、耐湿性、高温信頼性等にも優れたレジストフィルムを得るのは容易ではなく、さらなる改良が望まれていた。
【特許文献1】特公平1−54390号公報
【特許文献2】特開平7−278492号公報
【特許文献3】特開平9−325490号公報
【特許文献4】特開平11−242331号公報
【特許文献5】特開平9−235449号公報
【特許文献6】特開平10−306201号公報
【特許文献7】特開平11−271967号公報
【特許文献8】特開2003−192763号公報
【特許文献9】特開2003−277470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ハロゲンフリーかつ高水準の難燃性、可撓性とタックフリー性とを共に備え、且つはんだ耐熱性、耐湿性、高温信頼性にも優れるソルダーレジスト用難燃組成物、特にFPC用のカバーレイフィルム、ソルダーレジスト等として好適に用いることのできる難燃組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、上記難燃組成物を用いて耐熱保護皮膜を形成するための好適な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定組成の難燃性付与剤を使用することにより上記課題を解決できることを発見し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[34]に示されるソルダーレジスト用難燃組成物およびそれからなる硬化物に関する。
【0013】
[1]以下の:
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)と多塩基酸無水物(c)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)またはカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)の少なくとも1種を含むアルカリ可溶性樹脂(A);
分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B);
光重合開始剤(C);
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(d)と、下記一般式(1)または(2):
【化1】

{式中の各Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示し、Arは、下記一般式(3)または(4):
【化2】

(式中Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示し、mは0〜3の整数を示す。)で表されるキノン類化合物の反応残基を示す。}あるいは下記一般式(5)または(6):
【化3】

{式中の各Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示す。}で表されるリン含有化合物とを、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂(D);及び
水和金属化合物(E);
を含むことを特徴とするソルダーレジスト用難燃組成物。
【0014】
[2]前記カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)が、カルボキシル基を有するビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A1−1)であることを特徴とする、前記[1]に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0015】
[3]前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、固形分酸価30〜150mgKOH/g、重量平均分子量4,000〜40,000、及びガラス転移点−60〜60℃であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0016】
[4]前記多塩基酸無水物(c)が、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、及びメチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸から成る群から選択される多塩基酸無水物である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0017】
[5]前記アルカリ可溶性樹脂(A)の30〜100質量%が、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0018】
[6]前記分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)が、ウレタンアクリレート(B1)である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0019】
[7]前記分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の70〜100質量%が、1分子中に2個のエチレン性不飽和基を有する化合物である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0020】
[8]前記光重合開始剤(C)の20〜95質量%が、リン含有光重合開始剤である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0021】
[9]前記リン含有エポキシ樹脂(D)のエポキシ当量が200〜700g/eqである、前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0022】
[10]前記リン含有エポキシ樹脂(D)のリン含有率が、1〜9質量%の範囲にある、前記[1]〜[9]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0023】
[11]前記リン含有エポキシ樹脂(D)の、ソルダーレジスト難燃組成物の固形分中での含有率が、5〜40質量%の範囲である、前記[1]〜[10]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0024】
[12]前記水和金属化合物(E)の熱分解時の吸熱量が、400〜2500J/gであることを特徴とする、前記[1]〜[11]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0025】
[13]前記水和金属化合物(E)が、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムであることを特徴とする、前記[1]〜[12]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0026】
[14]前記水和金属化合物(E)の、ソルダーレジスト難燃組成物の固形分中での含有率が、5〜40質量%の範囲である、前記[1]〜[13]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0027】
[15]前記水和金属化合物(E)が、0.3〜3.0質量%の割合でカップリング剤処理された水和金属化合物である、前記[1]〜[14]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0028】
[16]有機溶剤(F)をさらに含有する、前記[1]〜[15]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0029】
[17]前記リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)をさらに含有する、前記[1]〜[16]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0030】
[18]融点が75℃〜150℃であるリン酸エステル化合物(H)をさらに含有する、前記[1]〜[17]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0031】
[19]エポキシ用熱硬化促進剤(I)をさらに含有する、前記[1]〜[18]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0032】
[20]前記エポキシ用熱硬化促進剤(I)がトリアジン骨格を有する、前記[1]〜[19]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0033】
[21]ハロゲンフリーの着色剤(J)をさらに含有する、前記[1]〜[20]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0034】
[22]前記ソルダーレジスト難燃組成物の配合割合が、アルカリ可溶性樹脂(A)30〜70質量%、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)3〜20質量%、光重合開始剤(C)1〜10質量%、リン含有エポキシ樹脂(D)5〜25質量%、水和金属化合物(E)5〜30質量%、有機溶剤(F)10〜60質量%、リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)0〜10質量%、リン酸エステル化合物(H)2〜10質量%、エポキシ用熱硬化促進剤(I)0.1〜3質量%、及び着色剤(J)0.05〜2質量%である、前記[21]に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0035】
[23]ソルダーレジスト難燃組成物の固形分中でのリン含有率が1.0〜5.0質量%である、前記[1]〜[22]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0036】
[24]粘度が500〜500,000mPa・s(25℃)であることを特徴とする、前記[1]〜[23]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【0037】
[25]前記[1]〜[24]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物が硬化したことを特徴とする硬化物。
【0038】
[26]前記[1]〜[24]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物を、基板上に塗布した後、50〜120℃の温度範囲で1〜30分間乾燥し、5〜100μmの厚みとし、露光し、現像し、そして熱硬化させることを特徴とするソルダーレジスト難燃組成物の硬化方法。
【0039】
[27]前記[1]〜[24]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物から形成された感光層を支持体上に有することを特徴とする難燃性カバーレイフィルム。
【0040】
[28]前記支持体がポリエステルフィルムであることを特徴とする、前記[27]に記載の難燃性カバーレイフィルム。
【0041】
[29]前記[1]〜[24]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物を支持体上に塗布し、乾燥させ、そして感光層を形成させることを特徴とする難燃性カバーレイフィルムの製造方法。
【0042】
[30]前記[1]〜[24]のいずれかに記載のソルダーレジスト難燃組成物から成る絶縁保護皮膜。
【0043】
[31]前記[30]に記載の絶縁保護皮膜を有することを特徴とするプリント配線基板。
【0044】
[32]前記[30]に記載の絶縁保護皮膜を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板。
【0045】
[33]前記[27]または「28」に記載の難燃性カバーレイフィルムの感光層と基板とを貼合する貼合工程と、感光層を露光する露光工程と、露光工程後の現像工程と、感光層を熱硬化させる熱硬化工程とを有することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【0046】
[34]前記[25]に記載の硬化物を含有することを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0047】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物は、パターンを形成したフィルムを通した選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部分を現像することによるソルダーレジストパターンの形成において、現像性、光感度に優れ、得られた硬化物は、ハロゲンフリーかつ高水準の難燃性、可撓性とタックフリー性を共に満足するものであり、特にFPC用の液状ソルダーレジストインキ組成物、感光性カバーレイフィルムに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明に用いられるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)を得る方法は、エポキシ樹脂(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)と多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる。ここで使用されるエポキシ樹脂(a)としては、本発明がハロゲンフリーであっても優れた難燃効果を発現することからハロゲン原子非含有のエポキシ樹脂が好ましい。ここで、ハロゲン原子非含有のエポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂を製造する際、エピクロロヒドリンと反応させる原料フェノール樹脂中にハロゲン原子が含まれていないか或いはハロゲン原子で実質的に変性されていないエポキシ樹脂である。即ち、通常のエピクロルヒドリンの使用により混入される塩素分は含んでいてもよく、具体的にはハロゲン原子量約5,000ppm以下であることが好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1−6ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、ジメチルビスフェノールCジグリシジルエーテル等の2官能型エポキシ樹脂、1,6−ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシ樹脂、1−(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−(2−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−フェニル−メタン等のナフタレン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、シクロペンテンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン等のヒダントイン型エポキシ樹脂、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂、フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0049】
これらのエポキシ樹脂(a)は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用も可能である。また、上記の各エポキシ樹脂と共に、一部以下の化合物、即ち、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド等の単官能性エポキシ化合物を用いてもよい。これらの中で、特に好ましいのは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
【0050】
前記不飽和基含有モノカルボン酸(b)の代表的なものとして、アクリル酸、メタクリル酸、あるいはさらに、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物等の水酸基含有(メタ)アクリレートの不飽和二塩基酸無水物付加物等が挙げられる。ここで特に好ましいのはアクリル酸および/またはメタクリル酸である。不飽和基含有モノカルボン酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
前記多塩基酸無水物(c)の代表的なものとして、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−エン−1,2−ジカルボン酸無水物、エンドビシクロ−[2,2,1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの中では、ソルダーレジスト難燃組成物を硬化させた場合のPCT耐性、HHBT耐性の点から、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、及びメチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸から成る群から選択された多塩基酸無水物が好ましい。さらに、特に、好ましくは、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸である。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
前記エポキシ樹脂(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)と多塩基酸無水物(c)との反応は、エポキシ樹脂(a)に不飽和基含有モノカルボン酸(b)を反応させ、次いで多塩基酸無水物(c)を反応させる第1の方法と、エポキシ樹脂(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)と多塩基酸無水物(c)とを同時に反応させる第2の方法があるが、どちらの方法を用いてもよい。上記反応は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対して、不飽和基含有モノカルボン酸(b)を約0.7〜1.4モルとなる比率で反応させるのが好ましく、特に好ましくは約0.9〜1.1モルとなる比率である。また、上記反応生成物(ア)と多塩基酸無水物(c)との反応は、反応生成物(ア)中の水酸基1当量当たり多塩基酸無水物(c)を約0.1〜1当量反応させるのが好ましい。これらの反応は、反応溶媒の存在下または非存在下でハイドロキノン、メチルハイドロキノン、酸素等の重合禁止剤の存在下、反応温度は約50〜150℃、反応時間は約1〜10時間が好ましい。反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが好適に用いられる。これらの溶媒は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)の一例として、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物(d)由来の単位と、ジオール(e)由来の単位と、ジイソシアネート(f)由来の単位とを構成単位として含む化合物が挙げられる。この化合物において、両末端はヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)由来の単位からなり、両末端の間は、ウレタン結合により連結されたジオール(e)由来の単位とジイソシアネート(f)由来の単位から構成されている。そして、このウレタン結合により連結された繰り返し単位のいくつかには、カルボキシル基が存在した構造となっている。
【0054】
すなわち、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、−(ORbO−CONHRcNHCO)n−〔式中、ORbOはジオール(e)の脱水素残基、Rcはジイソシアネート(f)の脱イソシアネート残基を表す。〕で表される。カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、少なくとも、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)と、ジオール(e)と、ジイソシアネート(f)とを反応させることにより製造できるが、ここで、ジオール(e)またはジイソシアネート(f)の少なくともどちらか一方には、カルボキシル基を有する化合物を使用することが必要である。好ましくは、カルボキシル基を有するジオールを使用する。
【0055】
このようにジオール(e)および/またはジイソシアネート(f)として、カルボキシル基を有する化合物を使用することにより、RbまたはRc中にカルボキシル基が存在するウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)を製造できる。
また、ジオール(e)およびジイソシアネート(f)の少なくとも一方が2種類以上用いられている場合には、繰り返し単位は複数の種類を表すが、その複数の単位の規則性は完全ランダム、ブロック、局在等、目的に応じて適宜選ぶことができる。
【0056】
ここで用いられるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトンまたは酸化アルキレン付加物、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート−アクリル酸付加物、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、トリメチロールプロパン−酸化アルキレン付加物−ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうちでは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0057】
ジオール(e)は、ジイソシアネート(f)と共に、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)の繰り返し単位を構成する化合物である。ジオール(e)としては、2つのアルコール性ヒドロキシル基を有する分岐または直鎖状の化合物を使用できる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン等の低分子量のジオールが挙げられる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系ジオール、多価アルコールと多塩基酸のエステルから得られるポリエステル系ジオール、ヘキサメチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート等のポリカーボネート系ジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリブチロラクトンジオール等のポリラクトン系ジオールなどの高分子量のジオールも挙げられる。ジオールとしては数平均分子量が約300〜2,000であるものを使用すると、感光性組成物からなる硬化膜の可撓性がより優れるため好ましい。
【0058】
また、カルボキシル基を有するジオールとしては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。ジオールは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、数平均分子量が約300〜2,000であるジオールと、ジメチロールプロピオン酸および/またはジメチロールブタン酸を組み合わせて用いることが好ましい。
【0059】
本発明で用いられるジイソシアネート(f)としては、具体的に2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、(o,m,またはp)−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネートおよび1,5−ナフタレンジイソシアネート等のジイソシナートが挙げられる。これらのジイソシアネートは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)は、(1)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)と、ジオール(e)と、ジイソシアネート(f)を一括混合して反応させる方法、(2)ジオール(e)とジイソシアネート(f)を反応させて、1分子あたり1個以上のイソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーを製造した後、このウレタンイソシアネートプレポリマーとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)を反応させる方法、(3)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(d)とジイソシアネート(f)を反応させて、1分子あたり1個以上のイソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーを製造した後、このプレポリマーとジオール(e)とを反応させる方法などで製造することができる。
【0061】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)中のカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(A2)の配合割合が、約30〜100質量%であることが好ましい。
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の固形分酸価は、約30〜150mgKOH/gの範囲であることが好ましく、約40〜120mgKOH/gの範囲であることがさらに好ましい。固形分酸価が約30mgKOH/gより小さい場合にはアルカリ溶解性が悪くなり、固形分酸価が約150mgKOH/gより大きい場合は、ソルダーレジスト用難燃組成物の構成成分の組み合わせによっては硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性が下がる場合がある。なお、ここで固形分酸価とは、アルカリ可溶性樹脂(A)の正味の酸価である。
【0062】
このようなアルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、約4,000〜40,000であるものが好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。重量平均分子量が約4,000未満では、感光性組成物からなる硬化膜の伸度と強度を損なうことがあり、約40,000を超えるとアルカリ溶解性が悪くなる場合がある。
【0063】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)のガラス転移点は、好ましくは、−60〜60℃であり、さらに好ましくは、−40〜60℃である。ここで、ガラス転移点は、DSCにより、窒素雰囲気下、昇温速度約10℃/分で、約−120℃から180℃まで昇温させ、約180℃で、約3分間保持し、降温速度約10℃/分で、約−120℃まで冷却した際の変極点から求める。ガラス転移点が60℃を超えると、ソルダーレジスト難燃組成物の硬化物の良好な可撓性が得られず、ガラス転移点が−60℃未満では、ソルダーレジスト難燃組成物の硬化物のはんだ耐熱性が低くなる。
【0064】
分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)としては、(メタ)アクリレートなどを使用できる。(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
【0065】
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート;
【0066】
メタクリロキシエチルフォスフェート、ビス・メタクリロキシエチルフォスフェート、メタクリロオキシエチルフェニールアシッドホスフェート(フェニールP)等のリン原子を有するメタクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス・グリシジル(メタ)アクリレート等のジアクリレート;
【0067】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリアクリレート;ビスフェノールSのエチレンオキシド4モル変性ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル変性ジアクリレート、脂肪酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド3モル変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド6モル変性トリアクリレート等の変性ポリオールポリアクリレート;ビス(アクリロイルオキシエチル)モノヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸骨格を有するポリアクリレート;
【0068】
α,ω−ジアクリロイル−(ビスエチレングリコール)−フタレート、α,ω−テトラアクリロイル−(ビストリメチロールプロパン)−テトラヒドロフタレート等のポリエステルアクリレート;アリル(メタ)アクリレート;ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等も使用できる。これらの中では、ウレタンアクリレートが、タックが低いことから好ましい。特に、1分子中にエチレン性不飽和基を2個有する化合物が、光感度、および硬化物の可撓性から好ましい。特に、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(B)の配合量は、ソルダーレジスト用難燃組成物中約3〜20質量%の割合が好ましい。
【0069】
本発明に用いられる光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、さらに必要に応じて、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤もしくは光開始助剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。また、可視光領域に吸収のあるIRGACURE784(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等のチタノセン化合物等も使用することができる。光重合開始剤、光増感剤(光開始助剤)はこれらに限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0071】
光重合開始剤(C)の中では、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のリン含有化合物が、難燃性の点から好ましく、使用量は光重合開始剤の中で20〜95質量%が好ましい。
【0072】
これらの光重合開始剤(C)の配合量は、ソルダーレジスト用難燃組成物の固形分中、約1〜10質量%が好ましく、約2〜8質量%がより好ましい。光重合開始剤の配合量が約1質量%未満であると活性エネルギー線の照射を行なっても硬化が不十分か、もしくは照射時間を増やす必要があり、適切な硬化膜特性が得られ難くなる場合がある。一方、約10質量%を超えて光重合開始剤を添加しても光硬化特性に変化はなく、経済的に好ましくない。
【0073】
本発明で用いられるリン含有エポキシ樹脂(D)を得る方法は、特に制限されるものではないが、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(d)と、以下の式(1)または式(2):
【化4】

{式中の各Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示し、Arは、下記一般式(3)または(4):
【化5】

(式中の各Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示す。)で表されるキノン類化合物の反応残基を示す。}あるいは以下の式(5)または式(6):
【化6】

で表されるリン含有化合物とを反応させて得ることができる。
【0074】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(d)は、特に制限されないが、本発明がハロゲンフリーであっても優れた難燃効果を発現することからハロゲン原子非含有のエポキシ樹脂が好ましい。ここで、ハロゲン原子非含有のエポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂を製造する際、エピクロロヒドリンと反応させる原料フェノール樹脂中にハロゲン原子が含まれていないか或いはハロゲン原子で実質的に変性されていないエポキシ樹脂である。即ち、通常のエピクロルヒドリンの使用により混入される塩素分は含んでいてもよく、具体的にはハロゲン原子量約5,000ppm以下であることが好ましい。この様なエポキシ樹脂としては、前記したカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)の合成に使用されるエポキシ樹脂(a)等が使用できる。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0075】
リン含有化合物(d)としては、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド(三光化学(株)社製、HCA−HQ)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(三光化学(株)社製、HCA)、ジフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0076】
エポキシ樹脂(d)と式(1)または式(2)または式(5)または式(6)との反応は、具体的には約20℃〜200℃の温度で撹拌混合することで得ることができる。ここで、式(1)または式(2)で表されるリン含有化合物は、反応系中で、式(5)または式(6)で表されるリン含有化合物(d)と式(3)または式(4)のようなキノン類との反応で発生させることもできる。この場合、有機溶剤や触媒を用いてもかまわない。
【0077】
また、当該反応は、必要に応じて有機溶剤存在下で行うことができる。この際、使用し得る有機溶剤としては、特に制限がないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メトキシプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルカルビトール、酢酸エチル、キシレン、トルエン、シクロヘキサノンまたはN,N−ジメチルホルムアミド等が好ましい。
【0078】
この様に最終的に得られるリン含有エポキシ樹脂(D)は、エポキシ当量約200〜1000グラム/当量(以下、g/eqと記す。)なる範囲が好ましいが、中でもソルダーレジストおよび感光性カバーレイフィルムに用いた場合、アルカリ現像性、基材との密着性、耐熱性のバランスに優れることから、約200〜700g/eqであることが更に好ましい。
【0079】
また、リン含有エポキシ樹脂(D)中のリン原子含有量は、特に制限されるものでないが、例えば、難燃性の改善効果が顕著となる点から、約1〜9質量%が好ましく、耐湿性および他の組成物成分との相溶性から約2〜6質量%であることが好ましい。
また、リン含有エポキシ樹脂(A)のソルダーレジスト用難燃組成物の固形分中での含有率は、特に制限されるものでないが、例えば、難燃性の改善効果が顕著となる点から、5〜40質量%の範囲が好ましい。
【0080】
本発明で用いられる水和金属化合物(E)は、結晶水を持つ金属化合物であり、例えば熱分析によるモル当たりの結晶水量が約12〜60質量%の範囲にあるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
難燃効果等の点から、好ましくは、熱分解時の吸熱量が約400〜2,500J/g、さらに好ましくは約600〜2,500J/gの水和金属化合物が用いられる。
【0081】
かかる金属水和化合物の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ素酸バリウム、亜鉛ヒドロキシスズ酸塩、カオリン、バーミキュライト等が挙げられる。これらのうち特に好ましいものは水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムである。
【0082】
本発明で用いられる水和金属化合物(E)の粒子サイズは特に限定されないが、平均粒子径が約40μm以下が好ましく、約2μm以下がさらに好適である。平均粒子径が約40μmを超えると、レジスト膜の透明性が悪化し光透過性が低下したり、塗工膜表面の外観、平滑性が損なわれる場合がある。
【0083】
本発明で用いられる水和金属化合物(E)は、極性を有する表面処理剤により表面処理がなされているものが、ソルダーレジスト等の硬化物とした場合の耐湿性、HHBT耐性、向上等の観点から特に好ましい。かかる極性を有する表面処理剤の例としては、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、イミダゾールシラン等のシランカップリング剤やチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0084】
本発明で用いられる水和金属化合物(E)の配合量は、特に制限されるものではないがソルダーレジスト用難燃組成物の固形分中での含有率が約5〜40質量%の範囲が好ましい。水和金属化合物のソルダーレジスト用難燃組成物の固形分中での含有率が約5質量%未満では難燃効果が低く、約40質量%を超えると硬化膜の可撓性が低くなる傾向がある。
【0085】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物は、上記の各成分を3本ロールミルやビーズミルなど通常の方法で混合することによって製造できる。混合の方法には特に制限はなく、一部の成分を混合してから残りの成分を混合してもよく、または、すべての成分を一括で混合してもよい。また、ソルダーレジスト用難燃組成物には、粘度調節などのために必要に応じて有機溶剤(F)を添加して使用してもよい。このようにして粘度を調節することによって、ロールコート、スピンコート、スクリーンコート、カーテンコートなどで対象物上に塗布したり、プリントしたりしやすくなる。
【0086】
有機溶剤(F)としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;セロソルブ系、カルビトール系およびそれらのエステル、エーテル誘導体の溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;ニトロ化合物系溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサメチルベンゼン、クメン芳香族系溶媒;テトラリン、デカリン、ジペンテン等の炭化水素からなる芳香族系および脂環族系等の溶媒等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
有機溶媒(F)の使用量は、ソルダーレジスト用難燃組成物の粘度が約500〜500,000mPa・s〔B型粘度計(Brookfield Viscometer)にて25℃で測定。〕になるよう調節するのが好ましい。更に好ましくは約800〜30,000mPa・sである。このような粘度であると対象物への塗布や印刷により適し、使用しやすくなる。また、このような粘度とするために好ましい有機溶媒(F)の使用量は、ソルダーレジスト用難燃組成物の固形分中、約10〜60質量%である。約60質量%を超えると固形分濃度が低くなり、この感光性組成物を基板などに印刷する場合、一回の印刷で十分な膜厚が得られず、多数回の印刷が必要になる場合がある。
【0088】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物には、リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)を、難燃性を損ねない範囲で、用いることもできる。
リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)の具体例としては、前記したものが使用できる。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0089】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物には、必要に応じて、融点が約45〜150℃のリン酸エステル化合物(H)を含有することができる。特に、得られるソルダーレジスト用難燃組成物の硬化物の可撓性が不十分な場合には、リン酸エステル化合物(H)を併用することにより、難燃性を損なうことなく可撓性を高めることができるため好ましい。具体例としては、大八化学工業社製のPX−200、PX−201、PX−202等が挙げられる。これらのリン酸エステル化合物(H)を単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。なお、リン酸エステル化合物(H)は、リン含有エポキシ樹脂(D)には含まれない。
【0090】
リン酸エステル化合物(H)を使用する場合は、その割合は特に制限されないが、ソルダーレジスト用難燃組成物固形分中で、約2〜10質量%の含有率とするのが好ましく、さらに好ましくは、約2〜8質量%の含有率である。リン酸エステル化合物(H)の配合割合が少なすぎると、難燃性、可撓性が不十分な場合があり、多すぎると硬化後に長期間保存するとリン酸エステル化合物が表面にブリードアウトする場合がある。
【0091】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物には、リン含有エポキシ樹脂(D)またはリン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(G)の硬化を促進する目的で、エポキシ用熱硬化促進剤(I)を使用することもできる。アミン、四級アンモニウム塩、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物等の酸無水物、ポリアミド、イミダゾール類、トリアジン化合物等の窒素含有複素環化合物、尿素化合物、有機金属化合物等が使用できる。
【0092】
アミンとしては、脂肪族および芳香族の第一、第二、第三アミンが挙げられる。脂肪族アミンの例としては、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メンセンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7−エン等が挙げられる。芳香族アミンの例としてはメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフォニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ベンジルジメチルジアミン等が挙げられる。
【0093】
四級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、ジヘキシルジメチルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ヘキサトリメチルアンモニウムイオン、オクタトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、ドコセニルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリエチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムイオン、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、ジオレイルジメチルアンモニウムイオン、N−メチルジエタノールラウリルアンモニウムイオン、ジプロパノールモノメチルラウリルアンモニウムイオン、ジメチルモノエタノールラウリルアンモニウムイオン、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムイオンなどを備えた四級アンモニウム塩、アルキルアミノプロピルアミン四級化物が例示できる。
【0094】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等の芳香族酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ポリアジピン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。ポリアミドとしては、ダイマー酸にジエチレントリアミンやトリエチレンテトラアミン等のポリアミンを縮合反応させて得られる第一および第二アミノ基を有するポリアミノアミドが挙げられる。
【0095】
イミダゾール類としては、具体的には、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、2−メチルイミダゾリウム・イソシアヌレート等が挙げられる。
【0096】
トリアジン化合物は、窒素原子3個を含む6員環を有する化合物であって、例えばメラミン化合物、シアヌル酸化合物およびシアヌル酸メラミン化合物等が挙げられる。具体的には、メラミン化合物としてメラミン、N−エチレンメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン等が挙げられる。シアヌル酸化合物としては、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリメチルシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリエチルシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、トリ(n−プロピル)シアヌレート、トリス(n−プロピル)イソシアヌレート、ジエチルシアヌレート、N,N’−ジエチルイソシアヌレート、メチルシアヌレート、メチルイソシアヌレート等が挙げられる。シアヌル酸メラミン化合物は、メラミン化合物とシアヌル酸化合物との等モル反応物が挙げられる。尿素化合物としては、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、フェニルジメチルウレア等が挙げられる。
【0097】
有機金属化合物としては、有機酸金属塩、1,3−ジケトン金属錯塩、金属アルコキシド等が挙げられる。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の有機酸金属塩、ニッケルアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート等の1,3−ジケトン金属錯塩、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、アルミニウムブトキシド等の金属アルコキシドが挙げられる。
【0098】
エポキシ用熱硬化促進剤(I)の中では、トリアジン骨格を有する化合物が好ましい。これらの配合量は、触媒量であり、すなわち、ソルダーレジスト難燃組成物中で約0.1〜3質量%が好ましい。
【0099】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物には必要に応じて、ハロゲンフリーの着色剤(J)を使用することができる。
本発明のソルダーレジスト難燃組成物の配合割合は、アルカリ可溶性樹脂(A)約30〜70質量%、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)約3〜20質量%、光重合開始剤(C)約1〜10質量%、リン含有エポキシ樹脂(D)約5〜25質量%、水和金属化合物(E)約5〜30質量%、有機溶剤(F)約10〜60質量%、リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)約0〜10質量%、リン酸エステル化合物(H)約2〜10質量%、エポキシ用熱硬化促進剤(I)約0.1〜3質量%、着色剤(J)約0.05〜2質量%の範囲が好ましい。
【0100】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物には、流動性の調整のため、さらに流動調整剤を添加することができる。流動性調整剤は、例えば、感光性組成物をロールコート、スピンコート、スクリーンコート、カーテンコートなどで対象物に塗布する場合などに、感光性組成物の流動性を適宜調節でき好ましい。流動調整剤としては、例えば、無機および有機充填剤、ワックス、界面活性剤等が挙げられる。無機充填剤の具体例としては、タルク、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸塩化合物等が挙げられる。有機充填剤の具体例としては、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、弗素樹脂等が挙げられる。ワックスの具体例としては、ポリアミドワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。界面活性剤の具体例としては、シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル、アミド等が挙げられる。これらの流動性調整剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうちでは、無機充填剤を使用すると、感光性組成物の流動性だけではなく、密着性、硬度などの特性も改良できるため好ましい。
【0101】
また、本発明のソルダーレジスト用難燃組成物には必要に応じて、顔料、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の添加剤を添加することができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。増粘剤としては、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、スティブンサイト、四ケイ素マイカ、テニオライトなどの層状ケイ酸塩及びそれらを有機カチオン処理した層間化合物、シリカ及び有機化シリカ、ポバール、セルロース誘導体等が挙げられる。消泡剤は、印刷、塗工時および硬化時に生じる泡を消すために用いられ、具体的には、アクリル系、シリコーン系等の界面活性剤が挙げられる。レベリング剤は、印刷、塗工時に生じる皮膜表面の凹凸を失くすために用いられ、具体的には、アクリル系、シリコーン系等の界面活性剤が挙げられる。密着性付与剤としては、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等が挙げられる。また、他の添加剤として、例えば保存安定性のために紫外線防止剤、可塑剤などを、本発明の作用効果を損なわない限り添加することができる。
【0102】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物を、基板上などに適当な厚みで塗布し、熱処理して乾燥し、その後、露光、現像、熱硬化して硬化させることにより、硬化物とすることができる。本発明のソルダーレジスト用難燃組成物は、様々な用途に使用できるが、耐熱性、硬度、寸法安定性、可撓性を有し、そり変形の起こりにくい硬化膜を形成できるため、プリント配線基板の絶縁保護被膜としての使用に適していて、特にFPC基板の絶縁保護被膜に用いるのに適している。絶縁保護被膜を形成する場合には、感光性組成物を回路が形成された基板上に乾燥後の厚みが約10μm〜100μmの厚みになるように塗布した後、約50℃〜120℃の温度範囲で、約1〜30分間熱処理して乾燥し、その後、所望の露光パターンが施されたネガマスクを介して露光し、未露光部分をアルカリ現像液で現像し除去して、約100℃〜180℃の温度範囲で、約20〜60分間熱硬化して硬化させる方法が挙げられる。なお、本発明のソルダーレジスト用難燃組成物を、例えば、多層プリント配線基板の層間の絶縁樹脂層として使用してもよい。
【0103】
露光に用いられる活性光は、公知の活性光源、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク、各種レーザー装置等から発生する活性光が用いられる。感光層に含まれる光重合開始剤(D)の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるので、その場合は活性光源は紫外線を有効に放射するものが好ましい。もちろん、光重合開始剤(C)が可視光線に感受するもの、例えば、9,10−フェナンスレンキノン等である場合には、活性光としては可視光が用いられ、その光源としては前記活性光源以外に写真用フラッド電球、太陽ランプなども用いられる。また、現像液は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液を使用することができる。
【0104】
また、本発明のソルダーレジスト用難燃組成物は、感光性カバーレイフィルムの感光層に使用することもできる。感光性カバーレイフィルムは、重合体フィルムなどからなる支持体上に、感光性組成物からなる感光層を有するものである。感光層の乾燥後の厚みは約5〜70μmが好ましい。支持体に使用される重合体フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂からなるフィルム等を例示でき、これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、または、ポリプロピレンからなるフィルムが好ましい。また、これらの重合体フィルムは、後に感光層から除去する必要があるため、感光層から容易に除去可能であることが好ましい。これらの重合体フィルムの厚さは、通常、約5〜100μm、好ましくは約10〜30μmである。
【0105】
感光性カバーレイフィルムは、感光性組成物を支持体上に塗布し乾燥する感光層形成工程により製造できる。また、形成された感光層上に、カバーフィルムを設けることにより、支持体、感光層、カバーフィルムが順次積層され、感光層の両面にフィルムを有する感光性カバーレイフィルムを製造することもできる。カバーフィルムは感光性カバーレイフィルムの使用時には剥がされるが、使用時までの間に感光層上にカバーフィルムが設けられることにより、感光層を保護でき、作業性に優れた感光性カバーレイフィルムとなる。カバーフィルムとしては、上述した支持体に使用される重合体フィルムと同様のものを使用でき、カバーフィルムと支持体とは、同じ材料であっても異なる材料であってもよく、また、厚みも同じであっても異なっていてもよい。
【0106】
感光性カバーレイフィルムを使用して、プリント配線基板に絶縁保護被膜を形成するためには、まず、感光性カバーレイフィルムの感光層と基板とを貼合する貼合工程を行う。ここで、カバーフィルムが設けられている感光性カバーレイフィルムを使用する場合には、カバーフィルムを剥がして感光層を露出させてから基板に接触させる。そして、感光層と基板とを加圧ラミネーターや真空加圧ラミネーターなどで約40〜120℃程度で熱圧着して、基板上に感光層を積層する。そして、感光層を所望の露光パターンが施されたネガマスクを介して露光する露光工程を行う。その後、感光層から支持フィルムを剥離する。現像液で未露光部分を除去し現像する現像工程と、感光層を熱硬化させる熱硬化工程を行うことによって、基板の表面に絶縁保護被膜が設けられたプリント配線基板を製造できる。また、このような感光性カバーレイフィルムを使用して、多層プリント配線基板の層間に絶縁樹脂層を形成してもよい。なお、露光に用いられる活性光および現像液には、上述したものを同様に使用できる。
【0107】
本発明のソルダーレジスト用難燃組成物は、光感度や現像性、シェルフライフ(保存寿命)などの感光性被膜の形成に関する性能と、難燃性、絶縁性、耐熱性、硬度、寸法安定性などの絶縁保護被膜としての性能を同時に満足でき、かつ、可撓性を有する硬化膜を形成できる。特に、リン含有エポキシ樹脂(D)、水和金属化合物(E)、場合によっては、融点が約75〜150℃のリン酸エステル(H)、リン含有光開始剤等を複合的に用いることによる、ハロゲンフリーでかつ難燃性、可撓性を有するこのような感光性組成物は、フレキシブルプリント配線基板のような薄い配線基板の絶縁保護被膜としての使用に最適である。
【実施例】
【0108】
次に本発明を合成例、実施例および比較例により具体的に説明する。尚、例中において「部」および「%」は特に断りのない限りすべて質量基準である。尚、リン含有エポキシ(A)のリン含有量は、以下の方法にて測定した。
【0109】
[リン含有量測定法]試料1gに硝酸25mlおよび過塩素酸10mlを加えて内容物を5〜10mlになるまで加熱分解し、この液を1000mlメスフラスコに蒸留水で希釈する。この試料液10mlを100mlメスフラスコに入れ、硝酸10ml、0.25%バナジン酸アンモニウム溶液を10ml及び5%モリブデン酸アンモニウム溶液10mlを加えた後、蒸留水で標線まで希釈しよく振り混ぜ、放置するこの発色液を石英セルに入れ、分光光度計を用いて波長440nmの条件でブランク液を対照にして試料およびリン標準液の吸光度を測定する。リン標準液はリン酸カリウムを蒸留水でP=0.1mg/mlとして調整した液を100mlメスフラスコ10ml入れて蒸留水で希釈する。
【0110】
次いで、リン含有量を次式より求める。
【0111】
リン含有量(%)=試料の吸光度/リン標準液の吸光度/試料(g)
【0112】
[合成例1]<PUA−1>
ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業社製PTG−850SN、分子量850)85、0g(=0.1mol)、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてジメチルロールプロピオン酸93.8g(=0.7mol)、ジイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート199.8g(=0.9mol)を計量し、50℃に加熱した。さらにジラウリル酸ジ−n−ブチルスズを150mg投入し、80℃に加熱した。さらに、p−メトキシフェノール及びジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを各々90mgずつ投入後、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート24.4g(=0.21mol)を加えた。80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアナート基の吸収スペクトル(2,280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了し、カルボキシル基を有するウレタンアクリレートを得た。合成時の溶媒として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを使用した。このようにして、固形分酸価が90mgKOH/gであって、固形分濃度50質量%の粘稠な液体のウレタンアクリレート(PUA−1)を得た。このものの重量平均分子量は17,200、粘度(25℃)は11,000mPa・sであった。ガラス転移点は52℃であった。
【0113】
[合成例2]<D−1>
エポキシ当量が172g/eqのビスフェノールF型エポキシ樹脂(EPICLON830S:大日本インキ化学工業株式会社製)を100部、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド(三光化学社製、HCA−HQ)37部、触媒としてトリフェニルホスフィン0.5部を用いて、140℃で5時間反応させて、リン含有率(固形分値)が2.6質量%、エポキシ当量(固形分値)が434g/eqのリン含有エポキシ樹脂を得た。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、80℃に加温し、固形分濃度75質量%の溶液とした。以下、これを樹脂(D−1)と略記する。
【0114】
[合成例3]<D−2>
エポキシ当量が186g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828:ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100部、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド(三光化学社製、HCA−HQ)30部、触媒としてトリフェニルホスフィン0.5部を用いて、140℃で5時間反応させて、リン含有率(固形分値)が2.2質量%、エポキシ当量(固形分値)が411g/eqのリン含有エポキシ樹脂を得た。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、80℃に加温し、固形分濃度75質量%の溶液とした。以下、これを樹脂(D−2)と略記する。
【0115】
[合成例4]<D−3>
エポキシ当量が219g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(KAYARAD EOCN−104S:日本化薬株式会社製)を100部、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファナンスレン−10−オキサイド(三光化学社製、HCA)40部、触媒としてトリフェニルホスフィン0.5部、溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート47部を用いて、140℃で5時間反応させて、リン含有率(固形分値)が4.1質量%、エポキシ当量(固形分値)が369g/eqのリン含有エポキシ樹脂を得た。以下、これを樹脂(D−3)と略記する。
【0116】
[実施例1〜5、及び比較例1〜4](ソルダーレジスト用難燃組成物の調製)
以下の表1に示す割合(質量%)で各成分を配合した後、3本ロールミルに3回通すことにより主剤、硬化剤を調製した。なお、3本ロールミルでの調製時、主剤の固形分濃度71質量%、硬化剤の固形分濃度80質量%になるように、溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート/石油ナフサ=60/40質量%を添加した。
得られた各難燃組成物について、以下の評価を実施した。
【0117】
【表1】

【0118】
<積層物試験片の作製>
基板に、主剤と硬化剤とを混合したインクを100メッシュポリエステル版でスクリーン印刷した。70℃の熱風循環式乾燥機に入れ、30分間乾燥させた。なお、評価用基板としては、下記の(1)および(2)を使用した。
(1)銅箔(厚さ16μm)を片面に積層したポリイミドフィルム(厚さ25μm)からなるプリント基板〔ユピセル(登録商標)N、宇部興産株式会社製〕を10%硫酸アンモニウム水溶液で洗浄し、水洗後、空気流で乾燥したもの。
(2)25μm厚ポリイミドフィルム〔カプトン(登録商標)100H、東レ・デュポン株式会社製〕
【0119】
<積層物試験片の露光、現像、熱硬化>
得られた各積層物試験片を、メタルハライドランプを有する露光機〔オーク(株)製〕HMW−680GWを用いて500mJ/cm2(波長365nmで測定)で露光した。次に、温度30℃、スプレー圧力0.2MPaの1質量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間、続けて温度30℃、スプレー圧力0.15MPaの水で60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去し、150℃、60分の加熱処理を行い、FPC積層板(評価用基板(1)を使用)とポリイミド積層板(評価用基板(2)を使用)を得た。
なお、光感度の評価試料の作製時には、ネガパターンとして日立21段ステップタブレットを用いて露光した。はんだ耐熱性の評価試料の作製時には、ネガパターンとして4cm×6cmの範囲に1cm×1cmの正方形と2cmの長さの1mm/1mm(ライン/スペース)の銅箔が残るものを使用した。その他の評価試料の作製時にはネガパターンを使用しなかった。
【0120】
<物性評価>
物性評価は以下のようにして実施した。結果を以下の表2に示す。また、下記の各評価において、「燃焼性」、「可撓性」については、ポリイミド積層板について評価し、その他の各評価はFPC基板について評価した。
【0121】
【表2】

【0122】
〔評価項目〕
燃焼性
燃焼性試験片は、以下の方法で作成した。厚み25μm、200mm×50mmのポリイミドフィルム(東レデュポン製,カプトン100H)の片面に、主剤と硬化剤を混合させたインクを、100メッシュポリエステル版でスクリーン印刷した。70℃の熱風循環式乾燥機に入れ、30分間乾燥させた。次に、この試験片の反対側の面にも、同様に、インクを印刷し、70℃の熱風循環式乾燥機に入れ、30分間乾燥させた。500mJ/cm2でUV照射後、アルカリ現像を行い、150℃、60分間熱硬化した。この試料を温度23℃で相対湿度50%で48時間状態調整したものを難燃試験用の試料とした。燃焼特性は米国のUnderwriters Laboratories Inc.(ULと略す)の高分子材料の難燃性試験規格94UL−VTM試験に準拠した方法で難燃性を評価した。
【0123】
なお、表2中の「VTM」および「NOT」は、以下の基準による。
【0124】
「VTM−0」:下記の要求事項をすべて満足するもの:
(1)全ての試験片は、各回接炎中止後10秒を越えて有炎燃焼しない。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が50秒を超えないこと。
(3)有炎または赤熱燃焼が125mmの標線まで達しないこと。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しないこと。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は30秒を超えないこと。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき、または有炎時間の合計が51秒から55秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが(1)から(5)を満足すること。
【0125】
「VTM−1」:下記の要求事項をすべて満足するもの:
(1)全ての試験片は、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えないこと。
(3)有炎または赤熱燃焼が125mmの標線まで達しないこと。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しないこと。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は60秒を超えないこと。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき、または有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが(1)から(5)を満足すること。
【0126】
「VTM−2」:下記の要求事項をすべて満足するもの:
(1)全ての試験片は、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えないこと。
(3)有炎または赤熱燃焼が125mmの標線まで達しないこと。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火してもよい。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は60秒を超えないこと。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき、または有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが(1)から(5)を満足すること。
【0127】
「NOT」:以上のクラスいずれにも合格しないもの
【0128】
タック
FPC基板上にソルダーレジスト用難燃組成物を印刷、70℃で30分間乾燥後、30分間放冷させた試験片を用いて、室温で、感光層表面のタックを指触により、以下の基準で評価した。
【0129】
○:べた付きが全くないもの
△:ほんの僅かに、べた付きのあるもの
×:べた付きのあるもの
【0130】
現像性
ソルダーレジスト難燃組成物を印刷、乾燥したFPC積層板を、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いて温度30℃、スプレー圧0.2MPaの条件で1分間現像、スプレー圧0.2MPaの条件で1分間水洗させた後の現像残りを目視判定した。上記表2中の略号は以下のとおりである。
【0131】
○:現像できたもの
×:現像残りがあるもの
【0132】
光感度
ネガパターンとして日立21段ステップタブレットを試料上に重ね、露光(500mJ/cm2)、現像処理後、得られたFPC積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより、硬化性難燃組成物の光感度を評価した。光感度は、ステップタブレットの段数で示され、このステップタブレットの段数が高いほど、光感度が高いことを示す。
【0133】
可撓性
ポリイミド積層板を、感光層からなる硬化膜を外側にして180度に、0.5MPaの圧力で1秒間折り曲げた。硬化膜のひび割れの有無を30倍の光学顕微鏡で調べた。
【0134】
○:硬化膜にひび割れなし
×:硬化膜にひび割れあり
【0135】
ブリード
ポリイミド積層板を40℃の恒温機に、2ヶ月保存した後、試験片の表面を指触および目視により、以下の基準で評価した。上記表2中の略号は以下のとおりである。
【0136】
○:べた付きおよびブリード物が認められないもの
×:べた付きまたはブリード物が認めらるもの
【0137】
はんだ耐熱性
JIS・C−6481の試験法に準じて、FPC積層板表面にロジン系フラックスを塗り、260℃のはんだ浴に5秒間フロートさせることを1サイクルとして、サイクル毎に硬化膜を目視観察により“フクレ”と“はんだ潜り込み”がなく全く変化が認められないことを確認しながら繰り返したときの最大サイクル回数で表した。
【0138】
PCT耐性
上記条件でレジスト皮膜を形成したFPC積層板を、PCT装置(TABAI社製ESPEC HAST CHAMBER EHS−411M)を用いて、121℃、0.2MPaの条件で96時間処理し、硬化皮膜の状態を評価した。
【0139】
○:剥がれ、変色そして溶出なし
△:剥がれ、変色そして溶出の何れかあり
×:剥がれ、変色そして溶出が多く見られる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)と不飽和基含有モノカルボン酸(b)と多塩基酸無水物(c)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)またはカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)の少なくとも1種を含むアルカリ可溶性樹脂(A);
分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B);
光重合開始剤(C);
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(d)と、下記一般式(1)または(2):
【化1】

{式中の各Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示し、Arは、下記一般式(3)または(4):
【化2】

(式中Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示し、mは0〜3の整数を示す。)で表されるキノン類化合物の反応残基を示す。}あるいは下記一般式(5)または(6):
【化3】

{式中の各Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはハロゲンを含まない炭素数1〜6の有機基を示す。}で表されるリン含有化合物とを、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂(D);及び
水和金属化合物(E);
を含むことを特徴とするソルダーレジスト用難燃組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート(A1)が、カルボキシル基を有するビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A1−1)であることを特徴とする、請求項1に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、固形分酸価30〜150mgKOH/g、重量平均分子量4,000〜40,000、及びガラス転移点−60〜60℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項4】
前記多塩基酸無水物(c)が、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、及びメチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸から成る群から選択される多塩基酸無水物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の30〜100質量%が、カルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項6】
前記分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)が、ウレタンアクリレート(B1)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項7】
前記分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の70〜100質量%が、1分子中に2個のエチレン性不飽和基を有する化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項8】
前記光重合開始剤(C)の20〜95質量%が、リン含有光重合開始剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項9】
前記リン含有エポキシ樹脂(D)のエポキシ当量が200〜700g/eqである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項10】
前記リン含有エポキシ樹脂(D)のリン含有率が、1〜9質量%の範囲にある、請求項1〜9のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項11】
前記リン含有エポキシ樹脂(D)の、ソルダーレジスト難燃組成物の固形分中での含有率が、5〜40質量%の範囲である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項12】
前記水和金属化合物(E)の熱分解時の吸熱量が、400〜2500J/gであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項13】
前記水和金属化合物(E)が、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項14】
前記水和金属化合物(E)の、ソルダーレジスト難燃組成物の固形分中での含有率が、5〜40質量%の範囲である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項15】
前記水和金属化合物(E)が、0.3〜3.0質量%の割合でカップリング剤処理された水和金属化合物である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項16】
有機溶剤(F)をさらに含有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項17】
前記リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)をさらに含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項18】
融点が75℃〜150℃であるリン酸エステル化合物(H)をさらに含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項19】
エポキシ用熱硬化促進剤(I)をさらに含有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項20】
前記エポキシ用熱硬化促進剤(I)がトリアジン骨格を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項21】
ハロゲンフリーの着色剤(J)をさらに含有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項22】
前記ソルダーレジスト難燃組成物の配合割合が、アルカリ可溶性樹脂(A)30〜70質量%、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(B)3〜20質量%、光重合開始剤(C)1〜10質量%、リン含有エポキシ樹脂(D)5〜25質量%、水和金属化合物(E)5〜30質量%、有機溶剤(F)10〜60質量%、リン含有エポキシ樹脂(D)以外のエポキシ樹脂(G)0〜10質量%、リン酸エステル化合物(H)2〜10質量%、エポキシ用熱硬化促進剤(I)0.1〜3質量%、及び着色剤(J)0.05〜2質量%である、請求項21に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項23】
ソルダーレジスト難燃組成物の固形分中でのリン含有率が1.0〜5.0質量%である、請求項1〜22のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項24】
粘度が500〜500,000mPa・s(25℃)であることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物が硬化したことを特徴とする硬化物。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物を、基板上に塗布した後、50〜120℃の温度範囲で1〜30分間乾燥し、5〜100μmの厚みとし、露光し、現像し、そして熱硬化させることを特徴とするソルダーレジスト難燃組成物の硬化方法。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物から形成された感光層を支持体上に有することを特徴とする難燃性カバーレイフィルム。
【請求項28】
前記支持体がポリエステルフィルムであることを特徴とする、請求項27に記載の難燃性カバーレイフィルム。
【請求項29】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物を支持体上に塗布し、乾燥させ、そして感光層を形成させることを特徴とする難燃性カバーレイフィルムの製造方法。
【請求項30】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のソルダーレジスト難燃組成物から成る絶縁保護皮膜。
【請求項31】
請求項30に記載の絶縁保護皮膜を有することを特徴とするプリント配線基板。
【請求項32】
請求項30に記載の絶縁保護皮膜を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板。
【請求項33】
請求項27または28に記載の難燃性カバーレイフィルムの感光層と基板とを貼合する貼合工程と、感光層を露光する露光工程と、露光工程後の現像工程と、感光層を熱硬化させる熱硬化工程とを有することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項34】
請求項25に記載の硬化物を含有することを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2006−284911(P2006−284911A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104586(P2005−104586)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】