タンクの製造方法及びタンク
【課題】繊維の巻き付け工程を簡略化できるタンクの製造方法を提供する。
【解決手段】タンク1の製造方法において、口金部3、4が取り付けられたライナ2の外周面に繊維Fを巻き付けて、ライナ2の外層に繊維強化樹脂層を形成する工程を有する。前記繊維強化樹脂層を形成する工程では、繊維Fの巻き始めの先端部Faを、口金部3の外周面に設けられた金属端子3aに固定し、その後ライナ2の外周面に繊維Fを巻き付ける。
【解決手段】タンク1の製造方法において、口金部3、4が取り付けられたライナ2の外周面に繊維Fを巻き付けて、ライナ2の外層に繊維強化樹脂層を形成する工程を有する。前記繊維強化樹脂層を形成する工程では、繊維Fの巻き始めの先端部Faを、口金部3の外周面に設けられた金属端子3aに固定し、その後ライナ2の外周面に繊維Fを巻き付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの製造方法及びタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載される燃料電池システムには、燃料ガスの供給源としての高圧ガスタンクが用いられる。この高圧ガスタンクの製造は、一般に、フィラメントワインディング法(以下、「FW法」という。)を用いて行われる。具体的には、FW法により、例えば熱硬化性の樹脂を含浸させた繊維を、タンクのライナ(内容器)の外周面に巻き付け、その後繊維の樹脂を熱硬化させる。これにより、タンクの外殻に硬い繊維強化樹脂(FRP(Fiber Reinforced Plastics))層が形成され、高圧ガスタンクの強度が確保されている。
【0003】
タンクのライナへの繊維の巻き付け工程は、一般にライナを軸周りに回転させ、その回転されたライナの外周面に繊維を供給して、繊維をライナの外周面に巻き付けている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−214271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の繊維巻き付け工程では、繊維を巻き付け始めるとき、繊維を、例えばライナの長手方向の端部に取り付けられた口金部に巻き付けて固定していた。口金部は、他の部分に比べて径が小さいため、繊維をしっかり固定するためには、繊維を幾重にも巻き付ける必要があった。そして、口金部に多量の繊維が巻かれた状態で、タンク全体への繊維の巻き付けを行うと、例えば口金部やその周辺の繊維の巻き付けが奇麗になおかつ適正にできなくなる。このため、途中で繊維の巻き付けを中断し、手作業で口金部の繊維を剥ぎ取り、再度口金部付近の巻き付けをやり直す必要があった。このため、繊維の巻き付け工程が複雑になり、時間も掛って、タンクの生産性の低下を招いていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、繊維の巻き付け工程を簡略化できるタンクの製造方法及びタンクを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、タンクの製造方法であって、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層を形成する工程を有し、 前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き始めの先端部を口金部の固定部に固定し、その後前記ライナの外周面に繊維を巻き付けることを特徴とする。なお、本発明における「繊維層を形成する工程」は、口金部の一部にも繊維層を形成するものも含まれる。
【0008】
本発明によれば、繊維の巻き始めの先端部を口金部の固定部に固定するので、例えば以前のように繊維を口金部に多量に巻き付けて固定する必要がない。これにより、その後の繊維の巻き付けで、口金部やその周辺に奇麗になおかつ適正に繊維を巻き付けることができる。このため、以前のように口金部付近への繊維の巻き付けをやり直す必要がなく、繊維の巻き付け工程を簡略化できる。この結果、繊維の巻き付け工程に要する時間を短縮でき、タンクの生産性を向上できる。さらに、途中で繊維を剥ぎ取る作業がないので、ライナへの繊維の巻き付け作業の自動化が可能になる。特に異なる繊維を多重に巻き付ける場合には、工程が複雑になるので、本発明による効果は大きい。
【0009】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた固定部材であってもよい。
【0010】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた他の固定部材に固定するようにしてもよい。
【0011】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であり、前記固定部材と前記他の固定部材の金属端子間に電圧を印加し、ライナの外周面に巻き付けられた繊維の通電状態を検出する工程をさらに有するようにしてもよい。かかる場合、例えば巻き付けられた繊維の破断や破損を検出でき、これによって繊維の巻き付けが適正に行われたか否かを確認できる。
【0012】
上記タンクの製造方法において、前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンであり、前記繊維の先端部は、前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されるようにしてもよい。
【0013】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた穴にピンと共に差し込んで固定するようにしてもよい。
【0014】
前記繊維の先端部と後端部は、共通の穴とピンを用いて固定され、前記繊維の先端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定され、その後ライナの外周面に所定回数の繊維が巻き付けられ繊維がライナに固定され、その後前記ピンが外されて、前記繊維の先端部が口金部から取り外され、その後繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されるようにしてもよい。
【0015】
前記繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定された後に、繊維の後端部の直前の部分が切断され、この繊維の後端部を次の巻き付けの繊維の先端部にするようにしてもよい。
【0016】
上記タンクの製造方法において、前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、前記口金部と前記ライナとの間の隙間であり、前記繊維の先端部は、前記隙間に挟まれて固定されるようにしてもよい。
【0017】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、前記口金部に形成された溝に挟み込んで固定するようにしてもよい。
【0018】
別の観点による本発明は、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、前記口金部の外周面には、繊維の巻き始めの先端部を固定する固定部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
前記口金部の外周面には、繊維の巻き終わりの後端部を固定する他の固定部材が設けられていてもよい。
【0020】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であってもよい。
【0021】
別の観点による本発明は、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、前記口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンを有し、前記繊維の巻き始めの先端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定することを特徴とする。
【0022】
前記繊維の巻き終わりの後端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定するようにしてもよい。
【0023】
別の観点による本発明は、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、前記口金部と前記ライナとの間には、隙間が設けられ、前記繊維の巻き始めの先端部を、前記口金部と前記ライナとの間の隙間に挟んで固定することを特徴とする。
【0024】
前記口金部には、前記繊維の巻き終わりの後端部を挟んで固定する溝が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ライナへの繊維の巻き付け工程を簡略化できるので、繊維の巻き付け工程に要する時間を短縮し、タンクの生産性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るタンク1の構成の概略を示す説明図である。
【0027】
タンク1は、ライナ2と、口金部3、4を有している。ライナ2は、例えばタンク1と同形状の楕円体状に形成されており、長手方向の中央の円筒状の胴部2aと、その両側の端部に接続され、外側に行くほど縮径するドーム状の側部2bを有している。また、口金部3は、例えばライナ2の長手方向の先端部(図1の左端部)に設けられ、口金部4は、ライナ2の長手方向の後端部(図1の右端部)に設けられている。例えば先端部側の口金部3は、略円筒状に形成され、ガスを供給するためのバルブが接続される。後端部側の口金部4は、円柱状に形成され、閉鎖されている。
【0028】
口金部3の外周面には、例えば複数の固定部材或いは他の固定部材としての金属端子3aが設けられている。金属端子3aは、例えば図2に示すように雄ねじ形状を有し、口金部3の外周面に形成された雌ねじ部3bに螺合できる。一方、ライナ2に巻き付けられる繊維Fの巻き始めの先端部Faや巻き終わりの後端部Fbには、例えば図3に示すように金属製でリング状の圧着端子Aを取り付けることができ、図2に示すようにこの圧着端子Aの穴に金属端子3aを通して金属端子3aのねじ頭部と口金部3の外周面との間に圧着端子Aを挟み込むことによって、繊維Fの先端部Faや後端部Fbを口金部3に固定できる。
【0029】
図1に示すように口金部4の外周面にも、口金部3の金属端子3aと同様の金属端子4aが設けられている。金属端子4aは、図2に示すように雄ねじ形状を有し、口金部4の外周面に形成された雌ねじ部4bに螺合できる。繊維Fの先端部Faや後端部Fbの圧着端子Aの穴に金属端子4aを通して、金属端子4aのねじ頭部と口金部4の外周面との間に圧着端子Aを挟み込むことによって、繊維Fの先端部Faや後端部Fbを口金部4に固定できる。
【0030】
次に、上記ライナ2の外周面に繊維を巻き付ける繊維巻き付け装置について説明する。図4は、かかる繊維巻き付け装置10の構成の概略を示す説明図である。
【0031】
繊維巻き付け装置10は、例えば繊維ガイド部20と、繊維巻き付け部21を有している。
【0032】
繊維ガイド部20は、繊維Fを繊維巻き付け部21のライナ2の外周面に所定の角度で案内するものである。繊維ガイド部20は、例えば繊維Fの進行方向に対し上下方向、左右方向に往復移動自在で、なおかつ繊維Fの進行方向の軸周りに回転自在であり、ライナ2の外周面に対する繊維Fの進入角度を自由に設定できる。なお、繊維ガイド部20の上流側には、例えば図示しない繊維送出部や樹脂含浸部が設けられており、繊維送出部から送出された繊維Fは、樹脂含浸部において樹脂が含浸され、その後繊維ガイド部20に送られている。本実施の形態では、繊維Fとしては、例えば導電性のある繊維、例えば炭素繊維や金属繊維が用いられる。また、樹脂としては、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。
【0033】
繊維巻き付け部21は、ライナ2の長手方向の回転軸上の両端部を支持する支持部30と、ライナ2を支持部30を介して回転させる回転駆動部31を備えている。
【0034】
支持部30は、例えばライナ2を水平に支持する。回転駆動部31は、例えば可変速モータを有しており、このモータによってライナ2を所定の回転速度で回転できる。このライナ2の回転運動と上記繊維ガイド部20の往復運動とを同期させることにより、繊維Fをライナ2の外周面に所定のパターンで巻き付けることができる。繊維Fの巻き方(パターン)については、特に限定されず、例えばフープ巻きやヘリカル巻き、或いはそれらを組み合わせた巻き方が可能である。
【0035】
次に、上記繊維巻き付け装置10を用いて行われるタンク1の製造方法について説明する。
【0036】
先ず、タンク1が図4に示したように繊維巻き付け部21の支持部30に取り付けられる。次に、図3に示すように繊維Fの先端部Faに圧着端子Aが取り付けられる。その後、繊維Fの先端部Faの圧着端子Aが例えば図2に示すように口金部3の金属端子3aに固定される。
【0037】
その後、ライナ2が回転軸周りに回転され、図4に示すようにライナ2に繊維Fが巻き付けられる。このとき、口金部3、4の一部にも繊維Fが巻き付けられる。
【0038】
図5に示すように口金部3、4の一部を含むライナ2の全体に繊維Fが巻き付けられ、繊維の巻き付けが終了すると、繊維Fが切断される。そして、繊維Fの巻き終わりの後端部Fbに圧着端子Aが取り付けられ、その圧着端子Aが例えば先端部Faの反対側の口金部4の金属端子4aに固定される。こうして、ライナ2の外層に繊維層としての繊維強化樹脂層が形成される。
【0039】
その後、例えば図6に示すようにテスタ40の両電極が口金部3の金属端子3aと口金部4の金属端子4aに接続される。そして、金属端子3a、4a間に電圧が印加され、繊維Fの先端部Faと後端部Fbとの間の通電状態が検出される。繊維Fに破断や破損があると、例えば通電量が変動するので、これにより、繊維Fの断線等の有無を確認できる。
【0040】
その後、タンク1は、繊維巻き付け部21から取り外され、図示しない加熱炉において加熱される。この加熱により、繊維強化樹脂層中の樹脂が固まって繊維強化樹脂層が硬化される。
【0041】
以上の実施の形態によれば、繊維Fの巻き始めの先端部Faを口金部3の金属端子3aに固定するので、以前のように例えば繊維を口金部に多重に巻き付けて固定しその後口金部付近の繊維を剥がして繊維の巻き付けをやり直す必要がなく、ライナ2への繊維Fの巻き付け工程を簡素化できる。これにより、繊維Fの巻き付け工程に要する時間を短縮し、タンク1の生産性を向上できる。さらに、途中で繊維Fを剥ぎ取る手作業がないので、ライナ2への繊維Fの巻き付け作業の自動化が可能になり、省人化を進めて低コスト化を図ることができる。特に、異なる繊維を複数回に亘って多重に巻き付ける場合には、有効である。
【0042】
ところで、従来、繊維の巻き終わりは、下層の繊維層内に織り込んで固定していたが、こうすると、樹脂硬化後に その織り込んだ部分が盛り上がり、タンクの外表面に凹凸ができることがある。タンクの外表面に凹凸ができると、見た目が美しくないばかりか、繊維層の強度も低下してしまう。本実施の形態によれば、繊維Fの巻き終わりの後端部Fbを口金部4の金属端子4aに固定するので、樹脂硬化後に繊維強化樹脂層の表面に凹凸ができることがなく、見た目が美しく、高い強度の繊維強化樹脂層を形成できる。
【0043】
また、口金部3、4の外周面に金属端子3a、4aを設け、繊維Fの先端部Faと後端部Fbに圧着端子Aに形成して、繊維Fの先端部Faと後端部Fbを金属端子3a、4aに固定可能にしたので、繊維Fの先端部Faと後端部Fbの口金部3、4への固定を好適に行うことができる。
【0044】
また、固定部材として金属端子3a、4aを用いたので、繊維Fの先端部Faと後端部Fbとの間に電圧を印加し、ライナ2の外周面に巻き付けられた繊維Fの通電状態を検出することができる。これにより、繊維Fの破断や破損の有無を確認し、ライナ2の外周面に繊維Fが適切に巻き付けられていることを確認できる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、タンク1の製造時に繊維Fの通電状態を検出していたが、例えばタンク1が車両等に搭載され、タンク1が使用されている時に、繊維Fの通電状態を検出し、繊維Fの破断、破損の有無を確認してもよい。こうすることにより、メンテナンス時やトラブル発生時等にタンク1の状態を確認できる。
【0046】
また、上記実施の形態では、繊維Fの先端部Faを口金部3に固定し、後端部Fbを口金部4に固定していたが、先端部Fa、後端部Fbの両方を同じ口金部に固定してもよい。
【0047】
さらに、上記実施の形態において、繊維Fの先端部Faと後端部Fbの金属端子3a、4aに対する接続部は、圧着端子Aであったが、金属端子を挟んで止めるクリップ型やコンセント型、金属端子に溶接する溶接型、爪状のもので圧着端子に固着する爪型等であってもよい。
【0048】
以上の実施の形態では、口金部3、4の固定部として金属端子3a、4aが設けられていたが、それに代えて図7に示すように例えば口金部3の外周面に、穴50と、その穴50に差し込み可能なピン51を設け、繊維Fの先端部Faを、ピン51と共に穴50に差し込んで固定してもよい。かかる場合、例えば図7(a)に示すようにピン51と口金部3の穴50との間に繊維Fが配置された状態で、図7(b)に示すように穴50にピン51が差し込まれることによって、繊維Fの先端部Faが口金部3に固定される。かかる場合においても、繊維Fを口金部に多重に巻き付けて固定する必要がなく、繊維Fを剥がす必要がないので、ライナ2への繊維Fの巻き付け工程を簡素化できる。
【0049】
また、上記例において、繊維Fの後端部Fbも、口金部3の穴50にピン51と共に差し込んで固定してもよい。かかる場合、例えば繊維Fの先端部Faがピン51と共に穴50に差し込まれて固定された後に、図8に示すようにライナ2の外周面に所定回数の繊維Fが巻き付けられ繊維Fがライナ2の外周面に固定され、その後に、ピン51が外されて、繊維Fの先端部Faが口金部3から取り外される。その後、ライナ2の全体に繊維Fが巻き付けられた後、図9に示すように繊維Fの後端部Fbが、ピン51と共に例えば先ほど用いた穴50に差し込まれて固定される。かかる場合も、繊維Fの後端部Fbを下層内に織り込む必要がないので、見た目が美しく、高い強度の繊維強化樹脂層を形成できる。
【0050】
さらに上記例において、図10に示すように繊維Fの後端部Fbの直前の部分を切断し、この繊維Fの後端部Fbを次回の巻き付けの繊維Fの先端部Faとしてもよい。この場合も、繊維Fの先端部Faがピン51によって穴50に固定された状態で、次の繊維Fの巻き付けが行われる。かかる場合、ピン51の抜き差しと繊維Fの切断を例えばロボットを用いて自動で行うことにより、複数回の繊維Fの巻き付けをすべて自動化できる。
【0051】
上記実施の形態では、繊維Fの先端部Faを口金部3の金属端子3aに固定していたが、図11に示すように口金部3とライナ2との間に隙間Bを設けて、その隙間Bに繊維Fの先端部Faを挟み込んで固定してもよい。かかる場合、図12に示すように口金部3がライナ2から取り外され、繊維Fの先端部Faが口金部3とライナ2との間に置かれ、図13に示すように口金部3がライナ2に取り付けられる際に、繊維Fの先端部Faが隙間Bに挟み込まれる。なお、繊維Fの先端部Faを挟み込んだときの余分な部分は切断してもよい。
【0052】
また、この場合、図14に示すように口金部4の外周面に溝60が形成され、繊維Fの後端部Fbを、その溝60に挟み込んで固定してもよい。なお、繊維Fの後端部Fbを挟み込んだときの余分な部分は切断してもよい。
【0053】
この例の場合も、繊維Fを口金部に多重に巻き付けて固定する必要がなく、その後繊維Fを剥がす必要がないので、ライナ2への繊維Fの巻き付け工程を簡素化できる。また、繊維Fの後端部Fbを下層内に織り込む必要がないので、見た目が美しく、高い強度の繊維強化樹脂層を形成できる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
以上の実施の形態で記載したタンク1の製造方法は、例えば燃料ガスと酸化ガスの電気化学反応により発電する燃料電池システムで用いられる高圧燃料ガスタンクの製造に適用できる。また、本発明は、他の用途のガスタンクや液体タンクの製造に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】タンクの構成の概略を示す正面図である。
【図2】タンクの口金部付近の構成の概略を示す説明図である。
【図3】繊維の端部に取り付けられる圧着端子を示す説明図である。
【図4】繊維巻き付け装置の構成の概略を示す説明図である。
【図5】繊維巻き付け装置において繊維の巻き付けが終了した状態を示す説明図である。
【図6】タンクにモニタを接続した状態を示す説明図である。
【図7】(a)は、口金部のピンと穴の間に繊維の先端部を配置した状態を示す説明図である。(b)は、ピンと共に繊維の先端部を穴に挟み込んだ状態を示す説明図である。
【図8】繊維が固定された後にピンを外した状態を示す説明図である。
【図9】繊維の後端部をピンと共に口金部の穴に挟み込んだ状態を示す説明図である。
【図10】繊維の後端部の直前の部分を切断した状態を示す説明図である。
【図11】ライナと口金部との間に設けられた隙間を示す説明図である。
【図12】ライナと口金部との間に繊維の先端部を挟み込む様子を示す説明図である。
【図13】ライナと口金部との間の隙間に繊維の先端部が挟み込まれた状態を示す説明図である。
【図14】溝が形成された口金部を示す説明図である。
【図15】口金部の溝に繊維の後端部が挟み込まれた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 タンク
2 ライナ
3 口金部
3a 金属端子
4 口金部
4a 金属端子
A 圧着端子
F 繊維
Fa 先端部
Fb 後端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの製造方法及びタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載される燃料電池システムには、燃料ガスの供給源としての高圧ガスタンクが用いられる。この高圧ガスタンクの製造は、一般に、フィラメントワインディング法(以下、「FW法」という。)を用いて行われる。具体的には、FW法により、例えば熱硬化性の樹脂を含浸させた繊維を、タンクのライナ(内容器)の外周面に巻き付け、その後繊維の樹脂を熱硬化させる。これにより、タンクの外殻に硬い繊維強化樹脂(FRP(Fiber Reinforced Plastics))層が形成され、高圧ガスタンクの強度が確保されている。
【0003】
タンクのライナへの繊維の巻き付け工程は、一般にライナを軸周りに回転させ、その回転されたライナの外周面に繊維を供給して、繊維をライナの外周面に巻き付けている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−214271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の繊維巻き付け工程では、繊維を巻き付け始めるとき、繊維を、例えばライナの長手方向の端部に取り付けられた口金部に巻き付けて固定していた。口金部は、他の部分に比べて径が小さいため、繊維をしっかり固定するためには、繊維を幾重にも巻き付ける必要があった。そして、口金部に多量の繊維が巻かれた状態で、タンク全体への繊維の巻き付けを行うと、例えば口金部やその周辺の繊維の巻き付けが奇麗になおかつ適正にできなくなる。このため、途中で繊維の巻き付けを中断し、手作業で口金部の繊維を剥ぎ取り、再度口金部付近の巻き付けをやり直す必要があった。このため、繊維の巻き付け工程が複雑になり、時間も掛って、タンクの生産性の低下を招いていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、繊維の巻き付け工程を簡略化できるタンクの製造方法及びタンクを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、タンクの製造方法であって、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層を形成する工程を有し、 前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き始めの先端部を口金部の固定部に固定し、その後前記ライナの外周面に繊維を巻き付けることを特徴とする。なお、本発明における「繊維層を形成する工程」は、口金部の一部にも繊維層を形成するものも含まれる。
【0008】
本発明によれば、繊維の巻き始めの先端部を口金部の固定部に固定するので、例えば以前のように繊維を口金部に多量に巻き付けて固定する必要がない。これにより、その後の繊維の巻き付けで、口金部やその周辺に奇麗になおかつ適正に繊維を巻き付けることができる。このため、以前のように口金部付近への繊維の巻き付けをやり直す必要がなく、繊維の巻き付け工程を簡略化できる。この結果、繊維の巻き付け工程に要する時間を短縮でき、タンクの生産性を向上できる。さらに、途中で繊維を剥ぎ取る作業がないので、ライナへの繊維の巻き付け作業の自動化が可能になる。特に異なる繊維を多重に巻き付ける場合には、工程が複雑になるので、本発明による効果は大きい。
【0009】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた固定部材であってもよい。
【0010】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた他の固定部材に固定するようにしてもよい。
【0011】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であり、前記固定部材と前記他の固定部材の金属端子間に電圧を印加し、ライナの外周面に巻き付けられた繊維の通電状態を検出する工程をさらに有するようにしてもよい。かかる場合、例えば巻き付けられた繊維の破断や破損を検出でき、これによって繊維の巻き付けが適正に行われたか否かを確認できる。
【0012】
上記タンクの製造方法において、前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンであり、前記繊維の先端部は、前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されるようにしてもよい。
【0013】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた穴にピンと共に差し込んで固定するようにしてもよい。
【0014】
前記繊維の先端部と後端部は、共通の穴とピンを用いて固定され、前記繊維の先端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定され、その後ライナの外周面に所定回数の繊維が巻き付けられ繊維がライナに固定され、その後前記ピンが外されて、前記繊維の先端部が口金部から取り外され、その後繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されるようにしてもよい。
【0015】
前記繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定された後に、繊維の後端部の直前の部分が切断され、この繊維の後端部を次の巻き付けの繊維の先端部にするようにしてもよい。
【0016】
上記タンクの製造方法において、前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、前記口金部と前記ライナとの間の隙間であり、前記繊維の先端部は、前記隙間に挟まれて固定されるようにしてもよい。
【0017】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、前記口金部に形成された溝に挟み込んで固定するようにしてもよい。
【0018】
別の観点による本発明は、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、前記口金部の外周面には、繊維の巻き始めの先端部を固定する固定部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
前記口金部の外周面には、繊維の巻き終わりの後端部を固定する他の固定部材が設けられていてもよい。
【0020】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であってもよい。
【0021】
別の観点による本発明は、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、前記口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンを有し、前記繊維の巻き始めの先端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定することを特徴とする。
【0022】
前記繊維の巻き終わりの後端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定するようにしてもよい。
【0023】
別の観点による本発明は、口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、前記口金部と前記ライナとの間には、隙間が設けられ、前記繊維の巻き始めの先端部を、前記口金部と前記ライナとの間の隙間に挟んで固定することを特徴とする。
【0024】
前記口金部には、前記繊維の巻き終わりの後端部を挟んで固定する溝が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ライナへの繊維の巻き付け工程を簡略化できるので、繊維の巻き付け工程に要する時間を短縮し、タンクの生産性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るタンク1の構成の概略を示す説明図である。
【0027】
タンク1は、ライナ2と、口金部3、4を有している。ライナ2は、例えばタンク1と同形状の楕円体状に形成されており、長手方向の中央の円筒状の胴部2aと、その両側の端部に接続され、外側に行くほど縮径するドーム状の側部2bを有している。また、口金部3は、例えばライナ2の長手方向の先端部(図1の左端部)に設けられ、口金部4は、ライナ2の長手方向の後端部(図1の右端部)に設けられている。例えば先端部側の口金部3は、略円筒状に形成され、ガスを供給するためのバルブが接続される。後端部側の口金部4は、円柱状に形成され、閉鎖されている。
【0028】
口金部3の外周面には、例えば複数の固定部材或いは他の固定部材としての金属端子3aが設けられている。金属端子3aは、例えば図2に示すように雄ねじ形状を有し、口金部3の外周面に形成された雌ねじ部3bに螺合できる。一方、ライナ2に巻き付けられる繊維Fの巻き始めの先端部Faや巻き終わりの後端部Fbには、例えば図3に示すように金属製でリング状の圧着端子Aを取り付けることができ、図2に示すようにこの圧着端子Aの穴に金属端子3aを通して金属端子3aのねじ頭部と口金部3の外周面との間に圧着端子Aを挟み込むことによって、繊維Fの先端部Faや後端部Fbを口金部3に固定できる。
【0029】
図1に示すように口金部4の外周面にも、口金部3の金属端子3aと同様の金属端子4aが設けられている。金属端子4aは、図2に示すように雄ねじ形状を有し、口金部4の外周面に形成された雌ねじ部4bに螺合できる。繊維Fの先端部Faや後端部Fbの圧着端子Aの穴に金属端子4aを通して、金属端子4aのねじ頭部と口金部4の外周面との間に圧着端子Aを挟み込むことによって、繊維Fの先端部Faや後端部Fbを口金部4に固定できる。
【0030】
次に、上記ライナ2の外周面に繊維を巻き付ける繊維巻き付け装置について説明する。図4は、かかる繊維巻き付け装置10の構成の概略を示す説明図である。
【0031】
繊維巻き付け装置10は、例えば繊維ガイド部20と、繊維巻き付け部21を有している。
【0032】
繊維ガイド部20は、繊維Fを繊維巻き付け部21のライナ2の外周面に所定の角度で案内するものである。繊維ガイド部20は、例えば繊維Fの進行方向に対し上下方向、左右方向に往復移動自在で、なおかつ繊維Fの進行方向の軸周りに回転自在であり、ライナ2の外周面に対する繊維Fの進入角度を自由に設定できる。なお、繊維ガイド部20の上流側には、例えば図示しない繊維送出部や樹脂含浸部が設けられており、繊維送出部から送出された繊維Fは、樹脂含浸部において樹脂が含浸され、その後繊維ガイド部20に送られている。本実施の形態では、繊維Fとしては、例えば導電性のある繊維、例えば炭素繊維や金属繊維が用いられる。また、樹脂としては、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。
【0033】
繊維巻き付け部21は、ライナ2の長手方向の回転軸上の両端部を支持する支持部30と、ライナ2を支持部30を介して回転させる回転駆動部31を備えている。
【0034】
支持部30は、例えばライナ2を水平に支持する。回転駆動部31は、例えば可変速モータを有しており、このモータによってライナ2を所定の回転速度で回転できる。このライナ2の回転運動と上記繊維ガイド部20の往復運動とを同期させることにより、繊維Fをライナ2の外周面に所定のパターンで巻き付けることができる。繊維Fの巻き方(パターン)については、特に限定されず、例えばフープ巻きやヘリカル巻き、或いはそれらを組み合わせた巻き方が可能である。
【0035】
次に、上記繊維巻き付け装置10を用いて行われるタンク1の製造方法について説明する。
【0036】
先ず、タンク1が図4に示したように繊維巻き付け部21の支持部30に取り付けられる。次に、図3に示すように繊維Fの先端部Faに圧着端子Aが取り付けられる。その後、繊維Fの先端部Faの圧着端子Aが例えば図2に示すように口金部3の金属端子3aに固定される。
【0037】
その後、ライナ2が回転軸周りに回転され、図4に示すようにライナ2に繊維Fが巻き付けられる。このとき、口金部3、4の一部にも繊維Fが巻き付けられる。
【0038】
図5に示すように口金部3、4の一部を含むライナ2の全体に繊維Fが巻き付けられ、繊維の巻き付けが終了すると、繊維Fが切断される。そして、繊維Fの巻き終わりの後端部Fbに圧着端子Aが取り付けられ、その圧着端子Aが例えば先端部Faの反対側の口金部4の金属端子4aに固定される。こうして、ライナ2の外層に繊維層としての繊維強化樹脂層が形成される。
【0039】
その後、例えば図6に示すようにテスタ40の両電極が口金部3の金属端子3aと口金部4の金属端子4aに接続される。そして、金属端子3a、4a間に電圧が印加され、繊維Fの先端部Faと後端部Fbとの間の通電状態が検出される。繊維Fに破断や破損があると、例えば通電量が変動するので、これにより、繊維Fの断線等の有無を確認できる。
【0040】
その後、タンク1は、繊維巻き付け部21から取り外され、図示しない加熱炉において加熱される。この加熱により、繊維強化樹脂層中の樹脂が固まって繊維強化樹脂層が硬化される。
【0041】
以上の実施の形態によれば、繊維Fの巻き始めの先端部Faを口金部3の金属端子3aに固定するので、以前のように例えば繊維を口金部に多重に巻き付けて固定しその後口金部付近の繊維を剥がして繊維の巻き付けをやり直す必要がなく、ライナ2への繊維Fの巻き付け工程を簡素化できる。これにより、繊維Fの巻き付け工程に要する時間を短縮し、タンク1の生産性を向上できる。さらに、途中で繊維Fを剥ぎ取る手作業がないので、ライナ2への繊維Fの巻き付け作業の自動化が可能になり、省人化を進めて低コスト化を図ることができる。特に、異なる繊維を複数回に亘って多重に巻き付ける場合には、有効である。
【0042】
ところで、従来、繊維の巻き終わりは、下層の繊維層内に織り込んで固定していたが、こうすると、樹脂硬化後に その織り込んだ部分が盛り上がり、タンクの外表面に凹凸ができることがある。タンクの外表面に凹凸ができると、見た目が美しくないばかりか、繊維層の強度も低下してしまう。本実施の形態によれば、繊維Fの巻き終わりの後端部Fbを口金部4の金属端子4aに固定するので、樹脂硬化後に繊維強化樹脂層の表面に凹凸ができることがなく、見た目が美しく、高い強度の繊維強化樹脂層を形成できる。
【0043】
また、口金部3、4の外周面に金属端子3a、4aを設け、繊維Fの先端部Faと後端部Fbに圧着端子Aに形成して、繊維Fの先端部Faと後端部Fbを金属端子3a、4aに固定可能にしたので、繊維Fの先端部Faと後端部Fbの口金部3、4への固定を好適に行うことができる。
【0044】
また、固定部材として金属端子3a、4aを用いたので、繊維Fの先端部Faと後端部Fbとの間に電圧を印加し、ライナ2の外周面に巻き付けられた繊維Fの通電状態を検出することができる。これにより、繊維Fの破断や破損の有無を確認し、ライナ2の外周面に繊維Fが適切に巻き付けられていることを確認できる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、タンク1の製造時に繊維Fの通電状態を検出していたが、例えばタンク1が車両等に搭載され、タンク1が使用されている時に、繊維Fの通電状態を検出し、繊維Fの破断、破損の有無を確認してもよい。こうすることにより、メンテナンス時やトラブル発生時等にタンク1の状態を確認できる。
【0046】
また、上記実施の形態では、繊維Fの先端部Faを口金部3に固定し、後端部Fbを口金部4に固定していたが、先端部Fa、後端部Fbの両方を同じ口金部に固定してもよい。
【0047】
さらに、上記実施の形態において、繊維Fの先端部Faと後端部Fbの金属端子3a、4aに対する接続部は、圧着端子Aであったが、金属端子を挟んで止めるクリップ型やコンセント型、金属端子に溶接する溶接型、爪状のもので圧着端子に固着する爪型等であってもよい。
【0048】
以上の実施の形態では、口金部3、4の固定部として金属端子3a、4aが設けられていたが、それに代えて図7に示すように例えば口金部3の外周面に、穴50と、その穴50に差し込み可能なピン51を設け、繊維Fの先端部Faを、ピン51と共に穴50に差し込んで固定してもよい。かかる場合、例えば図7(a)に示すようにピン51と口金部3の穴50との間に繊維Fが配置された状態で、図7(b)に示すように穴50にピン51が差し込まれることによって、繊維Fの先端部Faが口金部3に固定される。かかる場合においても、繊維Fを口金部に多重に巻き付けて固定する必要がなく、繊維Fを剥がす必要がないので、ライナ2への繊維Fの巻き付け工程を簡素化できる。
【0049】
また、上記例において、繊維Fの後端部Fbも、口金部3の穴50にピン51と共に差し込んで固定してもよい。かかる場合、例えば繊維Fの先端部Faがピン51と共に穴50に差し込まれて固定された後に、図8に示すようにライナ2の外周面に所定回数の繊維Fが巻き付けられ繊維Fがライナ2の外周面に固定され、その後に、ピン51が外されて、繊維Fの先端部Faが口金部3から取り外される。その後、ライナ2の全体に繊維Fが巻き付けられた後、図9に示すように繊維Fの後端部Fbが、ピン51と共に例えば先ほど用いた穴50に差し込まれて固定される。かかる場合も、繊維Fの後端部Fbを下層内に織り込む必要がないので、見た目が美しく、高い強度の繊維強化樹脂層を形成できる。
【0050】
さらに上記例において、図10に示すように繊維Fの後端部Fbの直前の部分を切断し、この繊維Fの後端部Fbを次回の巻き付けの繊維Fの先端部Faとしてもよい。この場合も、繊維Fの先端部Faがピン51によって穴50に固定された状態で、次の繊維Fの巻き付けが行われる。かかる場合、ピン51の抜き差しと繊維Fの切断を例えばロボットを用いて自動で行うことにより、複数回の繊維Fの巻き付けをすべて自動化できる。
【0051】
上記実施の形態では、繊維Fの先端部Faを口金部3の金属端子3aに固定していたが、図11に示すように口金部3とライナ2との間に隙間Bを設けて、その隙間Bに繊維Fの先端部Faを挟み込んで固定してもよい。かかる場合、図12に示すように口金部3がライナ2から取り外され、繊維Fの先端部Faが口金部3とライナ2との間に置かれ、図13に示すように口金部3がライナ2に取り付けられる際に、繊維Fの先端部Faが隙間Bに挟み込まれる。なお、繊維Fの先端部Faを挟み込んだときの余分な部分は切断してもよい。
【0052】
また、この場合、図14に示すように口金部4の外周面に溝60が形成され、繊維Fの後端部Fbを、その溝60に挟み込んで固定してもよい。なお、繊維Fの後端部Fbを挟み込んだときの余分な部分は切断してもよい。
【0053】
この例の場合も、繊維Fを口金部に多重に巻き付けて固定する必要がなく、その後繊維Fを剥がす必要がないので、ライナ2への繊維Fの巻き付け工程を簡素化できる。また、繊維Fの後端部Fbを下層内に織り込む必要がないので、見た目が美しく、高い強度の繊維強化樹脂層を形成できる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
以上の実施の形態で記載したタンク1の製造方法は、例えば燃料ガスと酸化ガスの電気化学反応により発電する燃料電池システムで用いられる高圧燃料ガスタンクの製造に適用できる。また、本発明は、他の用途のガスタンクや液体タンクの製造に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】タンクの構成の概略を示す正面図である。
【図2】タンクの口金部付近の構成の概略を示す説明図である。
【図3】繊維の端部に取り付けられる圧着端子を示す説明図である。
【図4】繊維巻き付け装置の構成の概略を示す説明図である。
【図5】繊維巻き付け装置において繊維の巻き付けが終了した状態を示す説明図である。
【図6】タンクにモニタを接続した状態を示す説明図である。
【図7】(a)は、口金部のピンと穴の間に繊維の先端部を配置した状態を示す説明図である。(b)は、ピンと共に繊維の先端部を穴に挟み込んだ状態を示す説明図である。
【図8】繊維が固定された後にピンを外した状態を示す説明図である。
【図9】繊維の後端部をピンと共に口金部の穴に挟み込んだ状態を示す説明図である。
【図10】繊維の後端部の直前の部分を切断した状態を示す説明図である。
【図11】ライナと口金部との間に設けられた隙間を示す説明図である。
【図12】ライナと口金部との間に繊維の先端部を挟み込む様子を示す説明図である。
【図13】ライナと口金部との間の隙間に繊維の先端部が挟み込まれた状態を示す説明図である。
【図14】溝が形成された口金部を示す説明図である。
【図15】口金部の溝に繊維の後端部が挟み込まれた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 タンク
2 ライナ
3 口金部
3a 金属端子
4 口金部
4a 金属端子
A 圧着端子
F 繊維
Fa 先端部
Fb 後端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの製造方法であって、
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層を形成する工程を有し、
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き始めの先端部を口金部の固定部に固定し、その後前記ライナの外周面に繊維を巻き付けることを特徴とする、タンクの製造方法。
【請求項2】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた固定部材であることを特徴とする、請求項1に記載のタンクの製造方法。
【請求項3】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた他の固定部材に固定することを特徴とする、請求項2に記載のタンクの製造方法。
【請求項4】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であり、
前記固定部材と前記他の固定部材の金属端子間に電圧を印加し、ライナの外周面に巻き付けられた繊維の通電状態を検出する工程をさらに有することを特徴とする、請求項3に記載のタンクの製造方法。
【請求項5】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンであり、
前記繊維の先端部は、前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されることを特徴とする、請求項1に記載のタンクの製造方法。
【請求項6】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた穴にピンと共に差し込んで固定することを特徴とする、請求項5に記載のタンクの製造方法。
【請求項7】
前記繊維の先端部と後端部は、共通の穴とピンを用いて固定され、
前記繊維の先端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定され、その後ライナの外周面に所定回数の繊維が巻き付けられ繊維がライナに固定され、その後前記ピンが外されて、前記繊維の先端部が口金部から取り外され、その後繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されることを特徴とする、請求項6に記載のタンクの製造方法。
【請求項8】
前記繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定された後に、繊維の後端部の直前の部分が切断され、この繊維の後端部を次の巻き付けの繊維の先端部にすることを特徴とする、請求項7に記載のタンクの製造方法。
【請求項9】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、前記口金部と前記ライナとの間の隙間であり、
前記繊維の先端部は、前記隙間に挟まれて固定されることを特徴とする、請求項1に記載のタンクの製造方法。
【請求項10】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、前記口金部に形成された溝に挟み込んで固定することを特徴とする、請求項9に記載のタンクの製造方法。
【請求項11】
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、
前記口金部の外周面には、繊維の巻き始めの先端部を固定する固定部材が設けられていることを特徴とする、タンク。
【請求項12】
前記口金部の外周面には、繊維の巻き終わりの後端部を固定する他の固定部材が設けられていることを特徴とする、請求項11に記載のタンク。
【請求項13】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であることを特徴とする、請求項12に記載のタンク。
【請求項14】
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、
前記口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンを有し、
前記繊維の巻き始めの先端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定することを特徴とする、タンク。
【請求項15】
前記繊維の巻き終わりの後端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定することを特徴とする、請求項14に記載のタンク。
【請求項16】
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、
前記口金部と前記ライナとの間には、隙間が設けられ、
前記繊維の巻き始めの先端部を、前記口金部と前記ライナとの間の隙間に挟んで固定することを特徴とする、タンク。
【請求項17】
前記口金部には、前記繊維の巻き終わりの後端部を挟んで固定する溝が形成されていることを特徴とする、請求項16に記載のタンク。
【請求項1】
タンクの製造方法であって、
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層を形成する工程を有し、
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き始めの先端部を口金部の固定部に固定し、その後前記ライナの外周面に繊維を巻き付けることを特徴とする、タンクの製造方法。
【請求項2】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた固定部材であることを特徴とする、請求項1に記載のタンクの製造方法。
【請求項3】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた他の固定部材に固定することを特徴とする、請求項2に記載のタンクの製造方法。
【請求項4】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であり、
前記固定部材と前記他の固定部材の金属端子間に電圧を印加し、ライナの外周面に巻き付けられた繊維の通電状態を検出する工程をさらに有することを特徴とする、請求項3に記載のタンクの製造方法。
【請求項5】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンであり、
前記繊維の先端部は、前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されることを特徴とする、請求項1に記載のタンクの製造方法。
【請求項6】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、口金部の外周面に設けられた穴にピンと共に差し込んで固定することを特徴とする、請求項5に記載のタンクの製造方法。
【請求項7】
前記繊維の先端部と後端部は、共通の穴とピンを用いて固定され、
前記繊維の先端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定され、その後ライナの外周面に所定回数の繊維が巻き付けられ繊維がライナに固定され、その後前記ピンが外されて、前記繊維の先端部が口金部から取り外され、その後繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定されることを特徴とする、請求項6に記載のタンクの製造方法。
【請求項8】
前記繊維の後端部が前記ピンと共に前記穴に差し込まれて固定された後に、繊維の後端部の直前の部分が切断され、この繊維の後端部を次の巻き付けの繊維の先端部にすることを特徴とする、請求項7に記載のタンクの製造方法。
【請求項9】
前記繊維の先端部が固定される前記口金部の固定部は、前記口金部と前記ライナとの間の隙間であり、
前記繊維の先端部は、前記隙間に挟まれて固定されることを特徴とする、請求項1に記載のタンクの製造方法。
【請求項10】
前記繊維層を形成する工程では、繊維の巻き終わりの後端部を、前記口金部に形成された溝に挟み込んで固定することを特徴とする、請求項9に記載のタンクの製造方法。
【請求項11】
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、
前記口金部の外周面には、繊維の巻き始めの先端部を固定する固定部材が設けられていることを特徴とする、タンク。
【請求項12】
前記口金部の外周面には、繊維の巻き終わりの後端部を固定する他の固定部材が設けられていることを特徴とする、請求項11に記載のタンク。
【請求項13】
前記固定部材と他の固定部材は、金属端子であることを特徴とする、請求項12に記載のタンク。
【請求項14】
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、
前記口金部の外周面に設けられた穴と、その穴に差し込み可能なピンを有し、
前記繊維の巻き始めの先端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定することを特徴とする、タンク。
【請求項15】
前記繊維の巻き終わりの後端部を、前記ピンと共に前記穴に差し込んで前記口金部に固定することを特徴とする、請求項14に記載のタンク。
【請求項16】
口金部が取り付けられたライナの外周面に繊維を巻き付けて、ライナの外層に繊維層が形成されるタンクであって、
前記口金部と前記ライナとの間には、隙間が設けられ、
前記繊維の巻き始めの先端部を、前記口金部と前記ライナとの間の隙間に挟んで固定することを特徴とする、タンク。
【請求項17】
前記口金部には、前記繊維の巻き終わりの後端部を挟んで固定する溝が形成されていることを特徴とする、請求項16に記載のタンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−174554(P2009−174554A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10728(P2008−10728)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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