説明

ターボチャージャーの可変ノズル制御装置

【課題】可変ノズル制御装置内に備えられているモータや可変ノズルベーンの耐久性を低下させることなく、確実にワイピング動作を実行することができるターボチャージャーの可変ノズル制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン制御装置からワイピング指令が出力されたか否かを判定する判定手段と、判定手段によりワイピング指令が出力されたと判定され、ワイピング禁止フラグがセットされていない場合に、可変ノズルのベーンを全閉側と全開側のストッパに突き当てることによりワイピング動作を実施するワイピング動作制御手段と、ワイピング動作制御手段により、ワイピング動作が実施された後に、ワイピング禁止フラグをセットし、可変ノズル制御装置の電源が切断された場合に、ワイピング禁止フラグをリセットするフラグセット手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されたターボチャージャーの可変ノズルのベーンの開度をエンジン制御装置からの制御信号によって、電子制御アクチュエータで制御するターボチャージャーの可変ノズル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術に於ける一例としては特許文献1に開示された内燃機関の可変ノズルターボチャージャー制御装置が知られている。図5は、従来技術による可変ノズルターボチャージャー制御装置の構成を示す図である。図5において、1はターボチャージャーであって、センターハウジング、コンプレッサハウジング及びタービンハウジングを備えている。ターボチャージャー1には、空気が導入される吸気入口1aと、ターボチャージャー1によって圧縮された空気をエンジン2に供給する圧縮空気供給孔1bとが設けられ、更に、エンジン2から排気が供給される排気ガス吸入口1cと、排気ガスを排出する排出口1dとが設けられている。ターボチャージャー1内に備えられた可変ノズル(図示せず)は、センターハウジングとタービンハウジングとの間に配設されている。
【0003】
3はステッピングモータであり、このステッピングモータ3の駆動により操作片4が操作され、可変ノズルに備えたリングプレートを同方向に押圧し、相互の可変ノズルのベーン間の隙間の大きさを調整し、タービンホイールへ吹き付けられる排気ガスの流速が調節される。5はエンジンのECU(電子制御ユニット)であり、エンジンに設けられた各種のセンサの検出出力を入力し、これらの検出出力に基づいて、エンジンの運転状態を識別してステッピングモータ3を駆動制御し、これによって、可変ノズルの各ノズルのベーンの開度を開閉制御し、タービンホイールへ吹き付けられる排気ガスの流速を調節し、併せて、燃焼のために強制的に送り込まれる空気の量も調整される。6はラジエターであり、エンジン2に接続され、エンジン2の冷却水が該ラジエター6を循環して冷却される。
【0004】
この従来技術によれば、内燃機関の可変ノズルターボチャージャー制御装置の異常発生時又は冷間始動時、若しくはアイドル時には、可変ノズルの全開位置を可変ノズルの初期位置として設定することにより全開位置近傍での各ノズルベーンの位置制御を行なうことができる。
【0005】
また、ターボチャージャーの可変ノズル制御装置おいて、可変ノズルのベーンの通常作動領域以外の作動角範囲にあるノズルリング表面には煤が固着又は滞留することがあり、この煤を除去するため、イグニションスイッチのオフによるエンジンの停止に基づくエンジンECUからのステータス指示情報により当該可変ノズルのベーンの全作動領域に於いて全閉位置を少なくとも1回経由して全開位置までベーンを動作させて、いわゆる煤ばらいを実行することができる可変ノズル制御装置も知られている。(例えば、特許文献2参照)。この煤ばらいを行う動作をワイピング動作という。
【0006】
図6を参照して、特許文献2に記載のワイピング動作のタイミングを説明する。図6は、ワイピング動作のタイミングを示すタイミングチャートである。イグニッションキーがOFFになると、エンジンECUからワイピング指令が出力される。これを受けて、可変ノズルのベーンが全閉側のストッパに突き当たるまで動作させ、その後、全開側のストッパに突き当たるまで動作させて止まる。このワイピング動作が終了すると、電源OFF許可信号が出力されて可変ノズル制御装置の電源がOFFになる。この動作によって、エンジンの停止後に煤ばらいを実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−107738号公報
【特許文献2】特開2004−293537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示すターボチャージャーの可変ノズル制御装置にあっては、ワイピング動作が完全に終了した時点で、電源OFF許可信号が出力されるため、可変ノズル制御装置の電源が「入」状態では、何度もワイピング動作が実行されてしまう。例えば、図7に示すように、ワイピング動作中に、イグニッションキーがOFF状態からON状態になると、エンジンECUからワイピング指令が出力されなくなり、ワイピング動作が中止することになる。そして、再びイグニッションキーがOFFになると、エンジンECUからワイピング指令が出力されることになり、再びワイピング動作が実行されることになる。この動作は、ワイピング動作が完全に終了して電源OFF許可信号が出力されて、可変ノズル制御装置の電源が切断状態になるまで繰り返し実行されてしまう可能性がある。
【0009】
ワイピング動作は、ノズルベーンをストッパに突き当てる動作であるため、ワイピング動作が何度も実施されると、可変ノズル制御装置内に備えられているモータや可変ノズルベーンの耐久性が低下してしまうという恐れがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、可変ノズル制御装置内に備えられているモータや可変ノズルベーンの耐久性を低下させることなく、確実にワイピング動作を実行することができるターボチャージャーの可変ノズル制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置であって、前記エンジン制御装置からワイピング指令が出力されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記ワイピング指令が出力されたと判定され、ワイピング禁止フラグがセットされていない場合に、前記可変ノズルのベーンを全閉側と全開側のストッパに突き当てることによりワイピング動作を実施するワイピング動作制御手段と、前記ワイピング動作制御手段により、前記ワイピング動作が実施された後に、前記ワイピング禁止フラグをセットし、前記可変ノズル制御装置の電源が切断された場合に、前記ワイピング禁止フラグをリセットするフラグセット手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明は、可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置上で動作する可変ノズル制御プログラムであって、前記エンジン制御装置からワイピング指令が出力されたか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより前記ワイピング指令が出力されたと判定され、ワイピング禁止フラグがセットされていない場合に、前記可変ノズルのベーンを全閉側と全開側のストッパに突き当てることによりワイピング動作を実施するワイピング動作制御ステップと、前記ワイピング動作制御ステップにより、前記ワイピング動作が実施された後に、前記ワイピング禁止フラグをセットし、前記可変ノズル制御装置の電源が切断された場合に、前記ワイピング禁止フラグをリセットするフラグセットステップとをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可変ノズル制御装置の電源が切断状態になるまでに何度もワイピング動作が実施されることを防止することができるため、可変ノズル制御装置内に備えられているモータや可変ノズルベーンの耐久性を低下させることなく、確実にワイピング動作を実行することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示す電子制御アクチュエータ13の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すマイコン130の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】ワイピング動作を実施する場合のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】ターボチャージャーの可変ノズル制御装置の従来例を示す構成図である。
【図6】従来の装置によりワイピング動作を実施する場合のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】従来の装置によりワイピング動作を実施する場合のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態によるターボチャージャーの可変ノズル制御装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示す構成図である。この図において、8はターボチャージャーであって、エンジンへの吸入空気を過給するシステムであり、コンプレッサホイールを有するコンプレッサ及び該コンプレッサと同軸上にロータシャフトにより結合されて、排気ガスにて回転駆動される該ターボチャージャー8のタービンホイールを有するタービンが設けられている。該ターボチャージャー8の空気通路7にはエンジンの吸入空気の吸気圧力、つまり、ブースト圧を検出する圧力センサ9をホース10を介して接続している。また、ターボチャージャー8のタービン内には、タービンホイールを取巻くように、可変ノズル部材が配置されている。可変ノズル部材には、ノズル内を流れる流体の流量を制御するために、開閉するベーンが備えられている。可変ノズル制御装置は、このベーンの開閉を制御するものである。
【0016】
11はエンジンECUであって、エンジンに設けられた各種センサ、例えばエンジン水温を検出するための水温センサ、エンジンの回転数を検出するためのものであって、一定のクランク角度毎にパルス信号を出力する回転数センサ、エアフローメーターによる吸入空気量やドライバーのアクセルペダルの踏込み操作量を検出して負荷量を算出するアクセルセンサから、それぞれ水温信号、回転信号及び負荷信号の検出出力を導入する。なお、図1には示していないが、その他、排気ガスの酸素濃度に応じて異なる電圧信号を出力する酸素センサ、エンジン燃焼室内の圧力を検出するための筒内圧センサを備えることもある。
【0017】
電子制御アクチュエータ13は、制御信号線を介してエンジンECU11に接続されている。エンジンECU11は、検出出力に基づいてエンジンの運転状態を識別して、制御信号線を介して、電子制御アクチュエータ13を駆動制御する。電子制御アクチュエータ13は、レバー19及びロッド20を連結しており、その動作により、ターボチャージャー8に備えたベーンの開閉を制御するために、各ベーンに連結されたベーン操作片21の動作を制御する。
【0018】
なお、電子制御アクチュエータ13は、例えば、ターボチャージャー8に取付けられる。また、電子制御アクチュエータ13の構成を図1、図2を参照して説明するに際して、電子制御アクチュエータ13が普通に有する公知の機能・構成については、本発明の説明に直接関わりがない限り、その説明及び構成の図示を省略する。
【0019】
次に、図2を参照して、図1に示す電子制御アクチュエータ13の詳細な構成を説明する。図2は、図1に示す電子制御アクチュエータ13の詳細な構成を示すブロック図である。図2において、130は、電子制御アクチュエータ13の動作を統括して制御するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)である。14は、マイコン130から出力する駆動信号に基づいて、ステッピングモータ(以下、モータという)15を駆動するモータドライバである。モータ15は、モータドライバ14から出力する信号に基づいて回転角度が制御されるステッピングモータ(以下、モータという)である。16は、モータ15の回転軸に接続され、モータの回転軸を減速するギヤである。17は、ギヤ16によって減速された出力軸である。18は、出力軸17の回転角度を検出して出力する角度センサである。角度センサ18の出力は、マイコン130へ入力する。
【0020】
131は、エンジンECU11から出力されるベーンの目標位置(開度)信号を入力し、この目標位置信号をマイコン130内で扱う角度信号に変換して出力する角度信号変換部である。132は、角度信号変換部131が出力する目標位置の角度信号と、角度センサ18が出力する角度信号(現在のベーンの角度(開度))とを比較して、比較結果信号を出力する角度信号比較部である。133は、角度信号比較部132が出力する比較結果信号を入力して、モータに与えるべき信号のデューティ比を演算によって求めて出力するモータ駆動Duty演算部である。134は、モータ駆動Duty演算部133が出力するデューティ比の信号を入力して、モータに与えるべきロジック信号を求めて出力するモータ駆動ロジック生成部である。135は、角度センサ18が出力する角度信号をエンジンECU11へ送信するための通信信号に変換して出力する通信信号変換部である。通信信号変換部135が出力する角度の情報が現在のベーンの実位置情報となる。
【0021】
136は、エンジンECU11から出力するワイピング信号を受信するワイピング信号受信部である。137は、ワイピング信号受信部136がワイピング信号を受信した場合に、ノズルベーンの開閉動作を行うことによりワイピングを実施する動作を制御するワイピング駆動制御部である。138は、角度センサ18の出力値を参照して、ノズルベーンが全開側または全閉側のストッパに突き当たったか否かを判定するストッパ突き当て判定部である。
【0022】
次に、図2を参照して、図2に示す電子制御アクチュエータ13の基本動作を説明する。エンジンECU11から目標位置信号が出力されると、角度信号変換部131は、目標位置信号をマイコン130内で扱う角度信号に変換して出力する。角度信号比較部132は、角度信号変換部131が出力する目標位置の角度信号と、角度センサ18が出力する角度信号(現在のベーンの角度)とを比較して、現在のベーンの角度を目標位置にするべくモータ駆動のデューティを演算によって求めて出力する。これを受けて、モータ駆動ロジック生成部134は、モータ駆動Duty演算部133が出力するデューティの信号を入力して、モータドライバ14に与えるべきロジック信号(モータ駆動信号)を求めて出力する。
【0023】
モータドライバ14は、モータ駆動ロジック生成部134から出力されるモータ駆動信号に基づいてモータ15を駆動する。モータの回転軸は、ギヤ16によって減速されて、出力軸17に伝達する。出力軸17の回転運動は、レバー19、ロッド20を介して、ベーン操作片21へ伝達する。ベーン操作片21が、出力軸17と連動して動作することにより、ノズルベーンの開閉制御動作が行われることになる。一方、角度センサ18が検出した出力軸17の回転角度の情報は、通信信号変換部135を経由して、エンジンECU11へ通知される。エンジンECU11は、この出力軸の回転角度(ノズルベーンの開度)情報を参照して、ターボチャージャー8の動作の制御を行う。
【0024】
このように、角度センサ18により可変ノズルのベーンに連結された出力軸17の回転角度を検出して出力軸17の実角度信号を出力し、角度信号変換部131によりエンジンECU11からの可変ノズルのベーンの開度指示(目標位置信号)を出力軸17の目標角度信号に変換し、この両信号を比較して該両信号の差に応じて、出力軸17の回転角度を制御することにより、可変ノズルのベーンが目標位置になるように制御されることになる。
【0025】
次に、図3を参照して、図2に示すマイコン130がワイピングを実施する動作を説明する。図3は、図2に示すマイコン130がワイピングを実施する動作を示すフローチャートである。まず、ワイピング信号受信部136は、エンジンECU11から出力されるワイピング信号の受信を試みる(ステップS1)。そして、ワイピング信号受信部136は、ワイピング信号がセットされているか否かを判定し(ステップS2)、ワイピング信号がセットされていなければ、ワイピング信号がセットされるまで待機する。一方、ワイピング信号がセットされていた場合、ワイピング信号受信部136は、受信したワイピング信号をワイピング駆動制御部137へ受け渡す。これを受けて、ワイピング駆動制御部137は、内部に保持しているワイピング禁止フラグにフラグがセットされているか否かを判定する(ステップS3)。ワイピング禁止フラグは、1ビットで表現されるフラグであり、「0」(リセット状態)の場合は、ワイピングを実施することができることを意味する。一方、「1」(セット状態)の場合は、ワイピングを禁止することを意味する。
【0026】
ワイピング禁止フラグは、電子制御アクチュエータ13の電源が切断されるとリセット(「0」)状態となる。したがって、イグニッションキーがONになった状態において、ワイピング禁止フラグはリセット状態(「0」)である。ワイピング禁止フラグがリセット状態(「0」)であれば、ワイピング駆動制御部137は、ノズルベーンが全閉側のストッパに突き当たるように、モータ駆動ロジック生成部134に対して、ノズルベーンを全閉側に移動させる駆動信号を出力する(ステップS4)。ストッパ突き当て判定部138は、角度センサ18が出力する出力軸の回転角度情報を参照して、ノズルベーンが全閉側のストッパに突き当たったか否かを判定し、ストッパに突き当たったと判定した場合に、ストッパ突き当て信号をワイピング駆動制御部137へ出力する。これにより、出力軸17の回転が制御されて、ノズルベーンが全閉側のストッパに突き当たることになる。
【0027】
次に、ストッパ突き当て判定部138から全閉側のストッパに突き当たったことを示すストッパ突き当て信号が出力されると、ワイピング駆動制御部137は、ワイピング禁止フラグをセット状態(「1」)にする(ステップS5)。そして、ワイピング駆動制御部137は、ノズルベーンが全開側のストッパに突き当たるように、モータ駆動ロジック生成部134に対して、ノズルベーンを全開側に移動させる駆動信号を出力する(ステップS6)。ストッパ突き当て判定部138は、角度センサ18が出力する出力軸の回転角度情報を参照して、ノズルベーンが全開側のストッパに突き当たったか否かを判定し、ストッパに突き当たったと判定した場合に、ストッパ突き当て信号をワイピング駆動制御部137へ出力する。これにより、出力軸17の回転が制御されて、ノズルベーンが全開側のストッパに突き当たることになる。
【0028】
次に、ストッパ突き当て判定部138から全開側のストッパに突き当たったことを示すストッパ突き当て信号が出力されると、ワイピング駆動制御部137は、ノズルベーンの駆動制御を停止する(ステップS7)。
【0029】
一方、エンジンECU11からワイピング信号が出力され、ステップS3の判定において、ワイピング禁止フラグがセット状態であった場合、ワイピング駆動制御部137は、ワイピングを実施せずに、ノズルベーンの駆動制御を停止する(ステップS7)。ワイピング禁止フラグがセットされており、ワイピングを実施しなかった場合、ワイピング駆動制御部137は、ノズルベーンが全開側で停止するように制御を行ってからノズルベーンの駆動制御を停止する。
【0030】
次に、図4を参照して、図3に示す動作のタイミングを説明する。図4は、ワイピング動作を実施する場合のタイミングを示すタイミングチャートである。イグニッションキーがOFFになると、エンジンECUからワイピング信号が出力される。これを受けて、可変ノズルのベーンが全閉側のストッパに突き当たるまで動作する。全閉側のストッパに突き当たると、ワイピング禁止フラグがセットされる。全閉側のストッパに突き当たるまでに、イグニッションキーがONになり、ワイピング信号が出力されなくなった場合、ワイピング禁止フラグはセットされない。ワイピング禁止フラグがセットされるのは、ストッパに突き当たった場合のみである。
【0031】
全閉側のストッパに突き当たった後に、イグニッションキーがONになり、ワイピング信号が出力されなくなると、ワイピング動作はその時点で中止される。その後、イグニッションキーがOFFになると、エンジンECUからワイピング信号が出力される。この時点で、ワイピング禁止フラグがセットされているため、ワイピング動作は実施しない。そして、イグニッションキーがOFFになった時点から所定時間のタイマを起動し、このタイマがタイムアウトになった時点で、電源OFF許可信号が出力され可変ノズル制御装置の電源がOFFになる。イグニッションキーが2回目のOFFになった時点で、ワイピング禁止フラグがセットされていなければ、従来の装置と同様に、ワイピング動作が実施されることになる。
【0032】
なお、前述した説明においては、イグニッションキーがOFFになったときに、エンジンECUからワイピング信号が出力される例を説明したが、ワイピング信号は、可変ノズル制御装置の電源が「入」になった時点から電源が「切」になるまでの間のどのタイミングで何回出力されてもよい。本発明によれば、可変ノズル制御装置の電源が切断された時点でワイピング禁止フラグがリセットされ、ノズルベーンがストッパに突き当たった場合にワイピング禁止フラグがセットされるため、ワイピング信号が可変ノズル制御装置の電源が「入」になった時点から電源が「切」になるまでの間のどのタイミングで何回出力されてもワイピング動作を1回のみ実施することができる。
【0033】
このように、可変ノズル制御装置の電源が切断状態になるまでにの間に、エンジンECUからワイピング信号が出力される度に何度もワイピング動作が実施されることを防止することができるため、可変ノズル制御装置内に備えられているモータや可変ノズルベーンの耐久性を低下させることなく、確実にワイピング動作を実行することができる。
【0034】
なお、図2に示すマイコン130の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより可変ノズル制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0035】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
11・・・エンジンECU、13・・・電子制御アクチュエータ、130・・・マイクロコンピュータ(マイコン)、131・・・角度信号変換部、132・・・角度信号比較部、133・・・モータ駆動Duty演算部、134・・・モータ駆動ロジック生成部、135・・・通信信号変換部、136・・・ワイピング信号受信部、137・・・ワイピング駆動制御部、138・・・ストッパ突き当て判定部、14・・・モータドライバ、15・・・モータ、16・・・ギヤ、17・・・出力軸、18・・・角度センサ、19・・・レバー、20・・・ロッド、21・・・ベーン操作片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置であって、
前記エンジン制御装置からワイピング指令が出力されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記ワイピング指令が出力されたと判定され、ワイピング禁止フラグがセットされていない場合に、前記可変ノズルのベーンを全閉側と全開側のストッパに突き当てることによりワイピング動作を実施するワイピング動作制御手段と、
前記ワイピング動作制御手段により、前記ワイピング動作が実施された後に、前記ワイピング禁止フラグをセットし、前記可変ノズル制御装置の電源が切断された場合に、前記ワイピング禁止フラグをリセットするフラグセット手段と
を備えたことを特徴とするターボチャージャーの可変ノズル制御装置。
【請求項2】
可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置上で動作する可変ノズル制御プログラムであって、
前記エンジン制御装置からワイピング指令が出力されたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより前記ワイピング指令が出力されたと判定され、ワイピング禁止フラグがセットされていない場合に、前記可変ノズルのベーンを全閉側と全開側のストッパに突き当てることによりワイピング動作を実施するワイピング動作制御ステップと、
前記ワイピング動作制御ステップにより、前記ワイピング動作が実施された後に、前記ワイピング禁止フラグをセットし、前記可変ノズル制御装置の電源が切断された場合に、前記ワイピング禁止フラグをリセットするフラグセットステップと
をコンピュータに行わせることを特徴とする可変ノズル制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−216328(P2010−216328A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62826(P2009−62826)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】