説明

ダイシング・ダイボンドフィルム

【課題】薄型又は小サイズの半導体チップでも、ダイシング時のチップ飛びが防止可能な保持力と剥離性とのバランス特性に優れるダイシング・ダイボンドフィルムを提供する。
【解決手段】紫外線透過性の基材1上に粘着剤層2を有するダイシングフィルムと、その上に設けられたダイボンドフィルム3とを有するダイシング・ダイボンドフィルム10において、粘着剤層は、アクリル酸エステルと、アクリル酸エステル100mol%に対する割合が10〜40mol%の範囲内のヒドロキシル基含有モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマー100mol%に対する割合が70〜90mol%の範囲内の分子内にラジカル反応性C−C二重結合を有するイソシアネート化合物とで構成されるアクリル系ポリマーにより形成される粘着剤層前駆体に、エポキシ樹脂からなるダイボンドフィルムを積層した後、基材側から紫外線を照射して硬化させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状ワーク(半導体チップ等)と電極部材とを固着するための接着剤を、ダイシング前にワーク(半導体ウエハ等)に付設した状態で、ワークのダイシングに供するダイシング・ダイボンドフィルム、その製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンを形成した半導体ウェハ(ワーク)は、必要に応じて裏面研磨により厚さを調整した後、半導体チップ(チップ状ワーク)にダイシングされる(ダイシング工程)。ダイシング工程では、切断層の除去のため半導体ウェハを適度な液圧(通常、2kg/cm程度)で洗浄するのが一般的である。次いで、前記半導体チップを接着剤にてリードフレームなどの被着体に固着(マウント工程)した後、ボンディング工程に移される。前記マウント工程においては、接着剤をリードフレームや半導体チップに塗布していた。しかし、この方法では接着剤層の均一化が困難であり、また接着剤の塗布に特殊装置や長時間を必要とする。このため、ダイシング工程で半導体ウェハを接着保持するとともに、マウント工程に必要なチップ固着用の接着剤層をも付与するダイシング・ダイボンドフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のダイシング・ダイボンドフィルムは、支持基材上に接着剤層を剥離可能に設けてなるものである。すなわち、接着剤層による保持下に半導体ウェハをダイシングしたのち、支持基材を延伸して半導体チップを接着剤層とともに剥離し、これを個々に回収してその接着剤層を介してリードフレームなどの被着体に固着させるようにしたものである。
【0004】
この種のダイシング・ダイボンドフィルムの接着剤層には、ダイシング不能や寸法ミスなどが生じないように、半導体ウェハに対する良好な保持力と、ダイシング後の半導体チップを接着剤層と一体に支持基材から剥離しうる良好な剥離性が望まれる。しかし、この両特性をバランスさせることは決して容易なことではなかった。特に、半導体ウェハを回転丸刃などでダイシングする方式などのように、接着剤層に大きな保持力が要求される場合には、上記特性を満足するダイシング・ダイボンドフィルムを得ることは困難であった。
【0005】
そこで、このような問題を克服するために、種々の改良法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、支持基材と接着剤層との間に紫外線硬化が可能な粘着剤層を介在させたウェハ固定部材が開示されている。当該ウェハ固定部材であると、ダイシングの際にはチップ飛びの発生を防止すると共に、ピックアップの際には、紫外線照射により粘着剤層を硬化して、粘着剤層と接着剤層との間の接着力を低下させ、両者間の剥離により半導体チップのピックアップを容易にする旨の開示がある。
【0006】
しかしながら、この改良法によっても、ダイシング時の保持力とその後の剥離性とをうまくバランスさせたダイシング・ダイボンドフィルムとすることは困難な場合がある。例えば10mm×10mm以上の大型の半導体チップや25〜75μmの極めて薄い半導体チップの場合には、一般のダイボンダーでは容易に半導体チップをピックアップすることができない。
【0007】
この様な問題に対し、下記特許文献3では、粘着剤層において半導体ウェハの貼り付け部分に対応する部分に紫外線を照射することにより、当該部分を硬化させてピックアップ性の向上を図ることが開示されている。しかし、特許文献3に記載のダイシング・ダイボンドフィルムであると、ダイシング後の切断面においてダイボンドフィルムを構成する接着剤の糊はみ出しが生じ、これにより切断面同士が再付着(ブロッキング)する場合がある。その結果、半導体チップのピックアップが困難になる。
【0008】
また、近年、半導体チップの薄型化や小型化が求められており、チップサイズが1mm×1mm未満の半導体チップをダイシングにより作製する場合にも、チップ飛びの発生が防止可能なダイシング・ダイボンドフィルムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−57642号公報
【特許文献2】特開平2−248064号公報
【特許文献3】特開2005−5355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体チップが薄型又はチップサイズの小さい場合にも、ダイシング時のチップ飛びの防止が可能な保持力と、当該半導体チップをそのダイボンドフィルムと一体に剥離する際の剥離性とのバランス特性に優れるダイシング・ダイボンドフィルム、その製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、上記従来の問題点を解決すべく、ダイシング・ダイボンドフィルム、その製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法について検討した。その結果、ダイボンドフィルムに積層された後に、紫外線照射により硬化された粘着剤層を備えるダイシング・ダイボンドフィルムであると、チップサイズが1mm角未満の極めて小さい半導体チップをダイシングにより作製する際にもチップ飛びの発生を防止すると共に、25〜75μmの極めて薄い半導体チップをピックアップする際にも剥離性の向上が図れることを見出し、本願発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルムは、前記の課題を解決する為に、紫外線透過性の基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、前記粘着剤層は、主モノマーとしてのアクリル酸エステルと、アクリル酸エステル100mol%に対する割合が10〜40mol%の範囲内のヒドロキシル基含有モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマー100mol%に対する割合が70〜90mol%の範囲内の分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物とで構成されるアクリル系ポリマーにより形成される粘着剤層前駆体に、前記ダイボンドフィルムが積層された後、前記基材側から紫外線を照射して硬化されたものであり、前記ダイボンドフィルムはエポキシ樹脂により形成されるものであることを特徴とする。
【0013】
前記粘着剤層は、ダイボンドフィルムとの貼り合わせ後に紫外線照射により硬化されるので、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の良好な剥離性を維持しつつ、相互の密着性が損なわれない積層状態で貼り合わされている。これにより、両者の粘着性が過度に低下し過ぎるのを防止し、例えば、チップサイズが1mm×1mm未満の半導体チップをダイシングにより作製する場合にも、チップ飛びの発生を防止することが可能になる。また、粘着剤層は硬化状態となっているため、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間で界面破壊を容易に起こさせることができる。その結果、両者の間の剥離性を良好にするので、例えば、25〜75μmの極めて薄い半導体チップをピックアップする際にも、ピックアップ性に優れる。
【0014】
また、前記ダイボンドフィルムはエポキシ樹脂により形成されるので、例えば、ダイシングにより半導体ウェハと共に切断されても、その切断面においてダイボンドフィルムを構成する接着剤の糊はみ出しが生じるのを防止することができる。これにより、切断面同士が再付着(ブロッキング)するのを防止し、半導体チップのピックアップを一層良好なものにできる。
【0015】
また、前記粘着剤層にはアクリル酸エステルを主モノマーとして用いるので剥離力の低減が図れ、良好なピックアップ性を可能にする。更に、ヒドロキシル基含有モノマーの配合割合をアクリル酸エステル100mol%に対し10mol%以上にすることにより、紫外線照射後の架橋が不足するのを抑制する。その結果、例えばダイシングの際に粘着剤層上に貼り付けられるダイシングリングに対し、糊残りが発生するのを防止できる。その一方、前記配合割合を40mol%以下にすることにより、紫外線照射による架橋が進行し過ぎて剥離が困難になりピックアップ性が低下するのを防止できる。また、ポリマーの一部ゲル化に伴う生産性の低下も防止できる。
【0016】
更に、本発明に於いては、多官能性モノマーを用いずに、分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を採用するので、その多官能性モノマーがダイボンドフィルム中に物質拡散をすることがない。その結果、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの境界面が消失するのを防止し、一層良好なピックアップ性を可能にする。
【0017】
前記紫外線照射の際の積算光量は30〜1000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。紫外線の照射を30mJ/cm以上にすることにより粘着剤層の硬化を十分なものにし、ダイボンドフィルムと過度に密着するのを防止する。その結果、良好なピックアップ性能を可能にし、ピックアップ後にダイボンドフィルムに粘着剤が付着(いわゆる糊残り)するのを防止できる。その一方、紫外線の照射を1000mJ/m以下にすることにより基材に対する熱的ダメージを低減することができる。また、粘着剤層の硬化が過度に進行して引張弾性率が大きくなりすぎ、エキスパンド性が低下するのを防止できる。更に、粘着力が低下し過ぎるのを防止し、これによりワークのダイシングの際に、チップ飛びの発生を防止することができる。
【0018】
前記構成において、前記アクリル酸エステルは、CH2=CHCOOR(式中、Rは炭素数が6〜10のアルキル基である。)で表されることが好ましい。アクリル酸エステルとして、CH=CHCOOR(式中のアルキル基Rの炭素数は6〜10の範囲内である。)を使用することにより、剥離力が大きくなり過ぎてピックアップ性が低下するのを防止することができる。
【0019】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも何れか1種であることが好ましい。
【0020】
更に、前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの少なくとも何れかであることが好ましい。
【0021】
また、前記ポリマーの重量平均分子量は、35万〜100万の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量を35万以上にすることにより、低分子量ポリマーの割合を減少させるのを防止し、これにより、例えばダイシングの際に粘着剤層上に貼り付けられるダイシングリングから剥離が生じるのを防止できる。更に、紫外線照射後の架橋が不足するのを防止するので、ダイシングリングを粘着剤層から剥離する際に、糊残りが発生することも防止できる。その一方、重量平均分子量を100万以下にすることにより、粘着剤層を基材上に形成する際の作業性を向上させることができる。粘着剤層の形成は、例えば、前記ポリマーを含む粘着剤組成物の溶液を基材上に塗布した後、乾燥させて行うが、ポリマーの重量平均分子量が100万を超えると、粘着剤組成物の溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、該ポリマーの重合、及び塗工の際の作業性が低下するからである。
【0022】
更に、前記粘着剤層の23℃における引張弾性率が7〜170MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率(23℃)を7MPa以上にすることにより、良好なピックアップ性を維持することができる。その一方、引張弾性率を170MPa以下にすることにより、ダイシングの際のチップ飛びの発生を抑制することができる。
【0023】
前記粘着剤層を構成する前記アクリル系ポリマーはモノマー成分としてはアクリル酸を含まないことが好ましい。これにより、粘着剤層とダイボンドフィルムの反応や相互作用を防止することができ、ピックアップ性の一層の向上が図れる。
【0024】
また、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法は、前記の課題を解決する為に、紫外線透過性の基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法であって、主モノマーとしてのアクリル酸エステルと、アクリル酸エステル100mol%に対する割合が10〜40mol%の範囲内のヒドロキシル基含有モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマー100mol%に対する割合が70〜90mol%の範囲内の分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物とを含むポリマーを含有する粘着剤層前駆体を前記基材上に形成する工程と、前記粘着剤層前駆体上に前記ダイボンドフィルムを貼り合わせる工程と、前記ダイボンドフィルムを貼り合わせた前記粘着剤層前駆体に、前記基材側から紫外線を照射して前記粘着剤層を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0025】
本発明の製造方法は、ダイボンドフィルムを貼り合わせた後に、紫外線を照射して硬化された粘着剤層を形成するものである。これにより、ダイボンドフィルムと粘着剤層の間の密着性が損なわれない積層状態を維持しているので、粘着性が過度に低下するのを抑制して作製可能である。その結果、例えば、チップサイズが1mm×1mm未満の半導体チップをダイシングにより作製する場合にも、チップ飛びの防止が可能になる。また、粘着剤層は硬化されたものであるので、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間で界面破壊を容易に起こさせることができる。その結果、両者の間の剥離性を良好にするので、例えば、25〜75μmの極めて薄い半導体チップをピックアップする際にも、ピックアップ性に優れる。
【0026】
また前記方法では、ダイボンドフィルムの構成材料としてエポキシ樹脂を使用するので、例えば半導体ウェハのダイシングの際には、半導体ウェハとダイボンドフィルムが切断されても、その切断面において接着剤の糊はみ出しの発生が防止可能なダイボンドフィルムが形成される。その結果、ダイボンドフィルムにおける切断面同士が再付着(ブロッキング)するのを防止し、これによりピックアップ性に優れたダイシング・ダイボンドフィルムを作製することができる。
【0027】
また粘着剤層の構成材料としてアクリル酸エステルを主モノマーとして用いるので、粘着力の低減が図れ、良好なピックアップ性を可能にする。更に、ヒドロキシル基含有モノマーの配合割合をアクリル酸エステル100mol%に対し10mol%以上にすることにより、紫外線照射後の架橋が不足するのを抑制する。その結果、例えばダイシングの際に粘着剤層上に貼り付けられるダイシングリングに対しても、糊残りの発生を防止できる。その一方、前記配合割合を40mol%以下にすることにより、紫外線照射による架橋が進行し過ぎて剥離が困難になりピックアップ性が低下するのを防止できる。また、ポリマーの一部ゲル化に伴う生産性の低下も防止できる。
【0028】
更に、本発明に於いては、多官能性モノマーを用いずに、分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を採用するので、その多官能性モノマーがダイボンドフィルム中に物質拡散をすることがない。その結果、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの境界面が消失するのを防止し、一層良好なピックアップ性を可能にする。
【0029】
前記紫外線の照射は30〜1000mJ/cmの範囲内で行うことが好ましい。紫外線の照射を30mJ/cm以上にすることにより粘着剤層の硬化を十分なものにし、ダイボンドフィルムと過度に密着するのを防止する。その結果、良好なピックアップ性能を可能にし、ピックアップ後にダイボンドフィルムに粘着剤が付着(いわゆる糊残り)するのを防止できる。その一方、紫外線の照射を1000mJ/m以下にすることにより基材に対する熱的ダメージを低減することができる。また、粘着剤層の硬化が過度に進行して引張弾性率が大きくなりすぎ、エキスパンド性が低下するのを防止できる。更に、粘着力が低下し過ぎるのを防止し、これによりワークのダイシングの際に、チップ飛びの発生を防止することができる。
【0030】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記の課題を解決する為に、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、前記に記載のダイシング・ダイボンドフィルムを用意し、前記ダイボンドフィルム上に半導体ウェハを圧着する工程と、前記半導体ウェハを前記ダイボンドフィルムと共にダイシングすることにより半導体チップを形成する工程と、前記半導体チップを前記ダイボンドフィルムと共に、前記粘着剤層から剥離する工程とを具備し、前記半導体ウェハの圧着工程から半導体チップの剥離工程までは、前記粘着剤層に紫外線を照射しないことを特徴とする。
【0031】
前記方法においては、半導体ウェハのダイシングの際には半導体チップのチップ飛びの発生を防止すると共に、ピックアップ性にも優れたダイシング・ダイボンドフィルムを使用するので、例えば10mm×10mm以上の大型の半導体チップや25〜75μmの極めて薄い半導体チップの場合にも、半導体チップをダイボンドフィルムと共にダイシングフィルムから容易に剥離することができる。即ち、前記方法であると、歩留まりを向上させて半導体装置を製造することができる。
【0032】
また、前記方法ではピックアップの前に粘着剤層に対し紫外線を照射する必要がない。その結果、従来の半導体装置の製造方法と比較して工程数の低減が図れる。更に、半導体ウェハが所定の回路パターンを有する場合にも、紫外線の照射に起因した回路パターンの不具合の発生を防止することができる。その結果、信頼性の高い半導体装置の製造が可能になる。
【0033】
また前記方法では、構成材料としてエポキシ樹脂を用いたダイボンドフィルムを備えるダイシング・ダイボンドフィルムを使用するので、例えば半導体ウェハのダイシングの際にも、ダイボンドフィルムの切断面において接着剤の糊はみ出しに起因した切断面同士の再付着(ブロッキング)を防止することができる。その結果、半導体チップの剥離が一層容易となり、歩留まりの向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る他のダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図3】前記ダイシング・ダイボンドフィルムに於けるダイボンドフィルムを介して半導体チップを実装した例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(ダイシング・ダイボンドフィルム)
本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。図2は、本実施の形態に係る他のダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。但し、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にする為に拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0036】
図1に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム10は、基材1上に粘着剤層2が設けられたダイシングフィルムと、該粘着剤層2上にダイボンドフィルム3を有する構成である。また本発明は、図2に示すように、半導体ウェハ貼り付け部分2aにのみダイボンドフィルム3’を形成した構成であってもよい。
【0037】
前記基材1は紫外線透過性を有し、かつダイシング・ダイボンドフィルム10、11の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0038】
また基材1の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材1を熱収縮させることにより粘着剤層2とダイボンドフィルム3、3’との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0039】
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0040】
前記基材1は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材1には、帯電防止能を付与する為、前記の基材1上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材1は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
【0041】
基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0042】
前記粘着剤層2は紫外線硬化型粘着剤により形成されており、予め紫外線の照射により硬化されている。硬化されている部分は粘着剤層2の全領域である必要はなく、粘着剤層2の半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分2aが少なくとも硬化されていればよい(図1参照)。粘着剤層2はダイボンドフィルム3との貼り合わせ後に紫外線照射により硬化されたものであるので、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の密着性が過度に損なわれない積層状態を維持している。これにより、粘着性の過度な低下を抑制してチップ飛びを防止すると共に、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との間の投錨効果を減少させて剥離性の向上を図る。
【0043】
また、図2に示すダイボンドフィルム3’に合わせて紫外線硬化型の粘着剤層2を予め硬化させておくことにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との界面で過度に密着性が大きくなるのを抑制している。これにより、ピックアップの際には粘着剤層2からダイボンドフィルム3’が容易に剥離する性質を備える。その一方、粘着剤層2の他の部分2bは紫外線が照射されていないため未硬化であり、前記部分2aよりも粘着力が大きい。これにより、他の部分2bにダイシングリング12を貼り付けた場合には、ダイシングリング12を確実に接着固定することができる。
【0044】
前述の通り、図1に示すダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いて、未硬化の紫外線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bはダイボンドフィルム3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に紫外線硬化型粘着剤は、半導体チップを基板等の被着体に固着する為のダイボンドフィルム3を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。図2に示すダイシング・ダイボンドフィルム11の粘着剤層2に於いては、前記部分2bがダイシングリングを固定できる。ダイシングリングは、例えばステンレス製などの金属からなるものや樹脂製のものを使用できる。
【0045】
ダイシング・ダイボンドフィルム10において、粘着剤層2における前記部分2aの半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する粘着力は、前記他の部分2bの半導体ウェハ貼り付け部分3aとは異なる部分3bに対する粘着力よりも小さくなる様に設計されていることが好ましい。常温(23℃)、剥離角度15度、剥離速度300mm/分での条件下における前記部分2aの粘着力は、ウェハの固定保持力や形成したチップの回収性などの点より1〜1.5N/10mmであることが好ましい。粘着力が1N/10mm未満であると半導体チップの接着固定が不十分となるため、チップサイズが1mm×1mm未満の半導体チップにダイシングする際に、チップ飛びを生じる場合がある。また、粘着力が1.5N/10mmを超えると粘着剤層2はダイボンドフィルム3を過度に接着し過ぎるため、半導体チップのピックアップが困難になる場合がある。よって、チップサイズが1mm×1mm未満の半導体チップの作製を考慮すると、前記粘着力は1〜1.5N/10mmであることが好ましい。一方、前記他の部分2bの粘着力は、0.5〜10N/10mm、さらには1〜5N/10mmであるのが好ましい。前記部分2aが低い粘着力であっても、前記他の部分2bの粘着力によりチップ飛びなどの発生を抑え、ウェハ加工の為に必要な保持力を発揮させることができる。
【0046】
ダイシング・ダイボンドフィルム11において、粘着剤層2における前記部分2aの半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する粘着力は、前記他の部分2bのダイシングリング12に対する粘着力よりも小さくなる様に設計されていることが好ましい。半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する前記部分2aの粘着力(常温(23℃)、剥離角度15度、剥離速度300mm/分)は、上記と同様1〜1.5N/10mmであるのが好ましい。一方、ダイシングリング12に対する前記他の部分2bの粘着力は、0.05〜10N/10mm、さらには0.1〜5N/10mmであるのが好ましい。前記部分2aが低いピール粘着力であっても、前記他の部分2bの粘着力によりチップ飛びなどの発生を抑え、ウェハ加工に充分な保持力を発揮させることができる。尚、これらの粘着力は、常温(23℃)、剥離角度15度、引張(剥離)速度300mm/分における測定値に基づく。
【0047】
また、ダイシング・ダイボンドフィルム10、11において、半導体ウェハ貼り付け部分3aの、半導体ウェハに対する粘着力は、前記部分2aに対する粘着力よりも大きくなるように設計されていることが好ましい。半導体ウェハに対する粘着力は、その種類に応じて適宜に調整される。半導体ウェハ貼り付け部分3aの前記部分2aに対する粘着力(常温(23℃)、剥離角度15度、剥離速度300mm/分)は、0.05〜10N/10mm、さらには1〜5N/10mmであるのが好ましい。一方、半導体ウェハ貼り付け部分3aの半導体ウェハに対する粘着力(常温(23℃)、剥離角度15度、剥離速度300mm/分)は、ダイシング時、ピックアップ時、ダイボンド時の信頼性、ピックアップ性の点から0.5〜15N/10mm以下、さらには1〜15N/10mmであるのが好ましい。
【0048】
ここで、半導体ウェハ4の直径をrとし、粘着剤層2における前記部分2aの直径をrとし、ダイボンドフィルム3における半導体ウェハ貼り付け部分3a(又はダイボンドフィルム3’)の直径をrとした場合、r<r<rの関係を満たすことが好ましい。これにより、半導体ウェハ4の全面をダイボンドフィルム3、3’上に接着固定すると共に、半導体ウェハ貼り付け部分3a(又はダイボンドフィルム3’)の周縁部を前記他の部分2bに接着固定することができる。前記他の部分2bの粘着力は前記部分2aよりも大きい為、前記周縁部において半導体ウェハ貼り付け部分3a(又はダイボンドフィルム3’)の接着固定が可能になる。その結果、ダイシングの際にチップ飛びの発生を一層防止することができる。
【0049】
前記紫外線硬化型粘着剤は、ベースポリマーとして、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の紫外線硬化型粘着剤である。内在型の紫外線硬化型粘着剤は、低分子量成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる。前記ベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。
【0050】
本発明に於いて、前記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステルを主モノマー成分として用いたものが挙げられる。前記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、イソノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル、ベヘニルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及びアクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)等が挙げられる。これらのモノマーは単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0051】
前記に例示したアクリル酸エステルのうち、本発明に於いては、化学式CH=CHCOOR(式中、Rは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数8〜9のアルキル基である。)で表されるモノマーを用いることが好ましい。炭素数が6以上であると、剥離力が大きくなり過ぎるのを抑制し、ピックアップ性の低下を防止できる。その一方、炭素数が10以下であると、ダイボンドフィルムとの接着性の低下を抑制し、その結果、ダイシングの際にチップ飛びが発生するのを防止できる。また、アクリル酸エステルが化学式CH=CHCOORで表される場合、その配合割合は、アクリル系ポリマーのアクリル酸エステル100mol%に対し50〜91mol%が好ましく、80〜87mol%がより好ましい。配合割合が50mol%未満であると、剥離力が大きくなり過ぎ、ピックアップ性が低下する場合がある。その一方、91mol%を超えると、粘着性が低下しダイシングの際にチップ飛びが発生する場合がある。更に、前記化学式で表されるモノマーのうち、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルが特に好ましい。
【0052】
前記アクリル系ポリマーは、前記アクリル酸エステルと共重合可能なヒドロキシル基含有モノマーを必須成分として含む。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの配合割合は、アクリル酸エステル100mol%に対し10〜40mol%の範囲内であることが好ましく、15〜30mol%の範囲内であることがより好ましい。配合割合が10mol%未満であると、紫外線照射後の架橋が不足し、ピックアップ性が低下する場合がある。その一方、配合割合が40mol%を超えると、粘着剤の極性が高くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難になる。
【0054】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸ペンチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸シクロアルキルエステル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上を使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。但し、前記カルボキシル基含有モノマーの場合、そのカルボキシル基とダイボンドフィルム3中のエポキシ樹脂におけるエポキシ基とが反応することにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との境界面が消失し、両者の剥離性が低下することがある。従って、カルボキシル基含有モノマーの使用量は、全モノマー成分の0〜3重量%以下が好ましい。また、これらのモノマー成分のうち、本発明の粘着剤層2を構成するアクリル系ポリマーはモノマー成分としてはアクリル酸を含まない方が好ましい。アクリル酸はダイボンドフィルム3に物質拡散し、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との境界面を消失させて剥離性を低下する場合があるからである。
【0055】
ここで、前記アクリル系ポリマーは、共重合用モノマー成分として多官能性モノマーを含まないことが好ましい。これにより、多官能性モノマーがダイボンドフィルムに物質拡散をすることがなくなり、粘着剤層2とダイボンドフィルム3の境界面が消失することによるピックアップ性の低下を防止することができる。
【0056】
また、前記アクリル系ポリマーには、分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物が必須成分として使用される。前記イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
前記分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物の配合割合は、ヒドロキシル基含有モノマー100mol%に対し配合割合が70〜90mol%の範囲内であることが好ましく、75〜85mol%の範囲内であることがより好ましい。配合割合が70mol%未満であると、紫外線照射後の架橋が不足し、ピックアップ性が低下する場合がある。その一方、配合割合が90mol%を超えると、粘着剤の極性が高くなりダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難となりピックアップ性が低下する。
【0058】
前記アクリル系ポリマーは、前述のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは35万〜100万、更に好ましくは45万〜80万程度である。重量平均分子量の測定は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により行い、ポリスチレン換算により算出した値である。
【0059】
また、前記粘着剤には、紫外線照射前の粘着力や、紫外線照射後の粘着力を調整する為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、20重量部程度以下、更には0.1〜10重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0060】
前記アクリル系ポリマーへのラジカル反応性炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計の点で容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーにヒドロキシル基を有するモノマーを共重合した後、このヒドロキシル基と反応しうるイソシアネート基及びラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有する前記イソシアネート化合物を、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0061】
前記内在型の紫外線硬化型粘着剤は、前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。
【0062】
配合する前記紫外線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合割合は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0063】
前記紫外線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させるのが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合割合は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0064】
ダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いては、前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように粘着剤層2の一部を紫外線照射してもよい。即ち、基材1の少なくとも片面の、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに紫外線硬化型の粘着剤層2を形成した後に紫外線照射して、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分2aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作製することができる。
【0065】
尚、紫外線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、紫外線硬化型の粘着剤層2の表面から酸素(空気)を遮断するのが望ましい。その方法としては、例えば粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の紫外線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0066】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止やダイボンドフィルム3の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0067】
ダイボンドフィルム3は、例えば接着剤層の単層のみからなる構成とすることができる。また、ガラス転移温度の異なる熱可塑性樹脂、熱硬化温度の異なる熱硬化性樹脂を適宜に組み合わせて、2層以上の多層構造にしてもよい。尚、半導体ウェハのダイシング工程では切削水を使用することから、ダイボンドフィルム3が吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。この様な高含水率のまま、基板等に接着させると、アフターキュアの段階で接着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、ダイ接着用接着剤としては、透湿性の高いコア材料をダイ接着剤で挟んだ構成とすることにより、アフターキュアの段階では、水蒸気がフィルムを通じて拡散して、かかる問題を回避することが可能となる。かかる観点から、ダイボンドフィルム3はコア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造にしてもよい。
【0068】
ダイボンドフィルム3の120〜130℃(ダイボンディング時の温度条件)における溶融粘度は、500〜3500MPaであることが好ましく、500〜3300MPaであることがより好ましく、500〜3000MPaであることが特に好ましい。これにより、ダイボンドを行う際に、半導体チップの周縁部に十分な圧力が加えられない場合にも、微小な気泡(マイクロボイド)や局所的なヒケ(窪み)が発生するのを防止することができる。その結果、耐湿はんだリフロー試験における耐久性が向上し、また、モールド樹脂が半導体チップの周縁部に入り込んで、半導体チップを破損することも防止できる。
【0069】
前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0070】
本発明に係るダイボンドフィルム3は、エポキシ樹脂を主成分として形成される。エポキシ樹脂は、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ない点で好ましい。前記エポキシ樹脂としては、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0071】
また、ダイボンドフィルム3は、適宜必要に応じてその他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を併用させることができる。前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0072】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0073】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0074】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―アクリル酸共重合体、エチレン―アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0075】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0076】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0077】
ダイボンドフィルム3の接着剤層には、予めある程度架橋をさせておく為、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのが好ましい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図る。
【0078】
尚、ダイボンドフィルム3の接着剤層には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0079】
ダイボンドフィルム3の厚さは特に限定されないが、例えば、5〜100μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
【0080】
ダイシング・ダイボンドフィルム10、11には、帯電防止能を持たせることができる。これにより、その接着時及び剥離時等に於ける静電気の発生やそれによる半導体ウェハの帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。帯電防止能の付与は、基材1、粘着剤層2乃至ダイボンドフィルム3へ帯電防止剤や導電性物質の添加する方法、基材1への電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層の付設等、適宜な方式で行うことができる。これらの方式としては、半導体ウェハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記ダイボンドフィルム3、3’は、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
【0081】
前記ダイシング・ダイボンドフィルム10、11のダイボンドフィルム3、3’は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルム3、3’を保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、粘着剤層2にダイボンドフィルム3、3’を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイシング・ダイボンドフィルムのダイボンドフィルム3、3’上に半導体ウェハを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0082】
(ダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法)
次に、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法について、ダイシング・ダイボンドフィルム10を例にして説明する。先ず、基材1は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0083】
次に、基材1上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層前駆体を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて種々設定される。具体的には、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層前駆体を形成してもよい。その後、基材1上に粘着剤層前駆体を転写する。
【0084】
次に、ダイボンドフィルム3を形成する為の形成材料を剥離紙上に所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥してダイボンドフィルム3を形成する。このダイボンドフィルム3を前記粘着剤層前駆体上に転写する。
【0085】
続いて、基材1側から粘着剤層前駆体に対し、紫外線照射を行う。これにより粘着剤層2が形成され、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルム10が得られる。紫外線の照射条件としては、その積算光量が30〜10000mJ/cmとなる範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cmとなる範囲内であることがより好ましい。紫外線の照射が30mJ/cm未満であると、粘着剤層の硬化が不十分になる場合がある。その結果、ダイボンドフィルムとの密着性が増大し、ピックアップ性の低下を招来する。またピックアップ後、ダイボンドフィルムに糊残りが発生する。その一方、紫外線の照射が10000mJ/cmを超えると、基材に対し熱的ダメージを与える場合がある。また、粘着剤層の硬化が過度に進行して引張弾性率が大きくなりすぎ、エキスパンド性が低下する。更に、粘着力が過度に低下し、これにより半導体ウェハのダイシングの際に、チップ飛びが発生する場合がある。
【0086】
尚、粘着剤層前駆体上へのダイボンドフィルムの貼り合わせ工程の後、粘着剤層前駆体に対する紫外線照射の工程をすぐに実施しないで放置工程を設けるのが好ましい。これにより、粘着剤層前駆体とダイボンドフィルムの境界における濡れ性を向上させ、酸素などが残存した状態での紫外線照射を回避できる。その結果、酸素に起因した紫外線硬化の阻害を低減し、粘着剤層前駆体に紫外線硬化しない領域が形成されるのを防止することができ、剥離特性の面内に於ける均一化が図れる。
【0087】
前記放置工程における放置時間(放置期間)としては、例えば、温度23±5℃、湿度55±5%RH、遮光された状態において、0.1時間以上の範囲から適宜選択することができ、好ましくは0.5時間以上(さらに好ましくは1時間以上、特に好ましくは3時間以上)である。従って、放置時間としては、温度23±5℃、湿度55±5%RH、遮光された状態において、6時間以上の範囲から選択することもでき、12時間以上(中でも24時間以上)であることが好適である。放置時間が0.1時間未満であると、粘着剤層前駆体とダイボンドフィルムの接触面積が小さい状態で紫外線照射がなされるので、ダイボンドフィルムに対する粘着剤層の粘着力は低下する。その結果、ダイシングの際にチップ飛びが発生する場合がある。但し、放置時間が3ヶ月を超えると、粘着剤層前駆体とダイボンドフィルムとの接触面積が大きくなり過ぎ、紫外線照射により硬化させた粘着剤層を形成しても、ダイボンドフィルムに対する粘着剤層の粘着力が大き過ぎる場合がある。その結果、良好な剥離性が得られず、半導体チップのピックアップの際に、ピックアップ不良が生じる場合がある。
【0088】
(半導体装置の製造方法)
本発明のダイシング・ダイボンドフィルム11を用いた半導体装置の製造方法について、図3を参照しながら説明する。
【0089】
先ず、ダイシング・ダイボンドフィルム11に於けるダイボンドフィルム3’上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(マウント工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0090】
次に、半導体ウェハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を形成する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイボンドフィルム3まで完全に切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。ダイボンドフィルム3はエポキシ樹脂により形成されるので、ダイシングにより切断されても、その切断面において接着剤の糊はみ出しが生じるのを防止することができる。その結果、切断面同士が再付着(ブロッキング)するのを防止し、後述のピックアップを一層良好に行うことができる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハ4はダイボンドフィルム3により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。尚、ダイシングにより粘着剤層2にまで切り込みが行われた場合にも、粘着剤層2は紫外線照射により硬化されているので、糸屑等の発生も防止される。
【0091】
次に、ダイシング・ダイボンドフィルム11のエキスパンドを行う。エキスパンドは、従来公知のエキスパンド装置を用いて行う。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシング・ダイボンドフィルム11を下方に押し下げることが可能なドーナツ状の外リングと、該外リングよりも径が小さくダイシング・ダイボンドフィルム11を支持する内リングとを有している。ダイシング・ダイボンドフィルム11では、粘着剤層2における前記部分2aのみが紫外線照射により硬化され、その他の部分2bは未硬化であるので、破断することなく隣り合う半導体チップ間の隙間を十分に広げることができる。その結果、後述のピックアップの際に、半導体チップ同士が接触して破損するのを防止することができる。
【0092】
ダイシング・ダイボンドフィルム10に接着固定された半導体チップ5を剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップは粘着剤層2に対し紫外線を照射することなく行われる。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。本発明のダイシング・ダイボンドフィルム10では、粘着剤層2とダイボンドフィルム3の剥離性が良好であるので、例えばニードル数を低減したり、突き上げ量を小さくしても歩留まりを向上してピックアップを行うことができる。
【0093】
ピックアップした半導体チップ5は、ダイボンドフィルム3aを介して被着体6に接着固定する(ダイボンド)。被着体6はヒートブロック9上に載置されている。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0094】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0095】
ダイボンドフィルム3が熱硬化型の場合には、加熱硬化により、半導体チップ5を被着体6に接着固定し、耐熱強度を向上させる。尚、ダイボンドフィルム3aを介して半導体チップ5が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。その後、基板の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップを封止樹脂8で封止し、当該封止樹脂8をアフターキュアする。これにより、本実施の形態に係る半導体装置が作製される。
【実施例】
【0096】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0097】
(実施例1)
<粘着剤層前駆体の作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)88.8部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という。)11.2部、過酸化ベンゾイル0.2部及びトルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、重量平均分子量85万のアクリル系ポリマーAを得た。重量平均分子量は下記の通りである。2EHAとHEAとのモル比は、100mol対20molとした。
【0098】
このアクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)12部(HEAに対し80mol%)を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0099】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0100】
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層前駆体を形成した。次いで、当該粘着剤層前駆体表面に、厚さ100μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした。
【0101】
<ダイボンドフィルムの作製>
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名;EPPN501HY)50部、フェノール樹脂(明和化成(株)製、商品名;MEH7800)50部、アクリル共重合体(ノガワケミカル(株)製、商品名;レビタルAR31、重量平均分子量70万、ガラス転移点−15℃)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;S0−25R、平均粒径0.5μm)70部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%となる様に調製した。
【0102】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ25μmのダイボンドフィルムを作製した。
【0103】
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
前記ダイボンドフィルムを前述のダイシングフィルムにおける粘着剤層前駆体側に転写した。続いて、温度25±3℃、相対湿度85%以下の環境下で24時間放置した。更に、粘着剤層前駆体の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mm)に相当する部分(直径220mm)にのみ、ポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射して粘着剤層を形成した。これにより、本実施例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。尚、紫外線の照射条件は下記の通りとした。
【0104】
<紫外線の照射条件>
紫外線(UV)照射装置:高圧水銀灯
紫外線照射積算光量:500mJ/cm
出力:75W
照射強度150mW/cm
【0105】
<重量平均分子量Mwの測定>
重量平均分子量Mwの測定は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により行った。測定条件は下記の通りである。尚、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
測定装置:HLC−8120GPC(製品名、東ソー社製)
カラム:TSKgel GMH−H(S)×2(品番、東ソー社製)
流量:0.5ml/min
注入量:100μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入試料濃度:0.1重量%
検出器:示差屈折計
【0106】
(実施例2〜14)
各実施例2〜14については、下記表1に示す組成及び配合割合に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にしてダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0107】
(実施例15)
本実施例においては、ダイシングフィルムにおける粘着剤層前駆体にダイボンドフィルムを転写した後における放置工程を、温度25±3℃、相対湿度85%以下の環境下で12時間としたことが以外は、前記実施例1と同様にしてダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0108】
(実施例16)
本実施例においては、ダイシングフィルムにおける粘着剤層前駆体にダイボンドフィルムを転写した後における放置工程を、温度25±3℃、相対湿度85%以下の環境下で0.1時間としたことが以外は、前記実施例1と同様にしてダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0109】
【表1】

【0110】
尚、表1、及び後述の表2中に記載する略称の意味は次の通りである。
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
i−OA:アクリル酸イソオクチル
i−NA:アクリル酸イソノニル
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
AOI:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート
C/L:ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)
T/C:エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学(株)製)
【0111】
(比較例1)
本比較例においては、前記実施例1で使用した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層前駆体を形成した。次いで、当該粘着剤層前駆体表面に、厚さ100μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした。続いて、粘着剤層前駆体の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mm)に相当する部分(直径220mm)にのみ紫外線を照射して粘着剤層を形成した。これにより、本比較例に係るダイシングフィルムを作製した。尚、紫外線の照射条件は実施例1の場合と同様にした。
【0112】
次に、前記実施例1と同様にして、ダイボンドフィルムを作製した。更に、ダイボンドフィルムを前記ダイシングフィルムにおける粘着剤層側に転写して、本比較例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを得た。
【0113】
(比較例2〜14)
各比較例2〜14については、下記表2に示す組成及び配合割合に変更したこと以外は、前記比較例1と同様にしてダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0114】
(比較例15)
本比較例においては、前記実施例1で使用した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層前駆体を形成した。次いで、当該粘着剤層前駆体表面に、厚さ100μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした。
【0115】
次に、前記実施例1と同様にして、ダイボンドフィルムを作製した。更に、ダイボンドフィルムを前記ダイシングフィルムにおける粘着剤層前駆体側に転写した。続いて、粘着剤層前駆体の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mm)に相当する部分(直径220mm)にのみ紫外線を照射して粘着剤層を形成した。これにより、本比較例に係るダイシングフィルムを作製した。尚、紫外線の照射条件は実施例1の場合と同様にした。
【0116】
【表2】

【0117】
(ダイシング)
各実施例及び比較例のそれぞれダイシング・ダイボンドフィルムを用いて、以下の要領で、実際に半導体ウェハのダイシングを行い、各ダイシング・ダイボンドフィルムの性能を評価した。
【0118】
半導体ウェハ(直径8インチ、厚さ0.6mm)を裏面研磨処理し、厚さ0.15mmのミラーウェハをワークとして用いた。ダイシング・ダイボンドフィルムからセパレータを剥離した後、そのダイボンドフィルム上にミラーウェハを40℃でロール圧着して貼り合わせ、更にダイシングを行った。また、ダイシングは1mm角のチップサイズとなる様にフルカットした。切断後の半導体ウェハ及びダイシング・ダイボンドフィルムについて、チップ飛びの有無を確認した。チップ飛びは、半導体チップが一つでも飛散した場合を×とし、飛散しなかった場合を○とした。ウェハ研削条件、貼り合わせ条件及びダイシング条件については、後述する。
【0119】
<ウェハ研削条件>
研削装置:ディスコ社製 DFG−8560
半導体ウェハ:8インチ径(厚さ0.6mmから0.15mmに裏面研削)
【0120】
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:日東精機製、MA−3000II
貼り付け速度計:10mm/min
貼り付け圧力:0.15MPa
貼り付け時のステージ温度:40℃
【0121】
<ダイシング条件>
ダイシング装置:ディスコ社製、DFD−6361
ダイシングリング:2−8−1(ディスコ社製)
ダイシング速度:80mm/sec
ダイシングブレード:
Z1;ディスコ社製2050HEDD
Z2;ディスコ社製2050HEBB
ダイシングブレード回転数:
Z1;40,000rpm
Z2;40,000rpm
ブレード高さ:
Z1;0.215mm(半導体ウェハの厚みによる(ウェハ厚みが75μmの場合、0.170mm))
Z2;0.085mm
カット方式:Aモード/ステップカット
ウェハチップサイズ:0.5mm角
【0122】
(ピックアップ)
各実施例及び比較例のそれぞれダイシング・ダイボンドフィルムを用いて、以下の要領で、実際に半導体ウェハのダイシングを行った後にピックアップを行い、各ダイシング・ダイボンドフィルムの性能を評価した。
【0123】
半導体ウェハ(直径8インチ、厚さ0.6mm)を裏面研磨処理し、厚さ0.075mmのミラーウェハをワークとして用いた。ダイシング・ダイボンドフィルムからセパレータを剥離した後、そのダイボンドフィルム上にミラーウェハを40℃でロール圧着して貼り合わせ、更にダイシングを行った。また、ダイシングは10mm角のチップサイズとなる様にフルカットした。
【0124】
次に、各ダイシング・ダイボンドフィルムを引き伸ばして、各チップ間を所定の間隔とするエキスパンド工程を行った。但し、比較例8のダイシング・ダイボンドフィルムについては、紫外線照射を行った後にエキスパンド工程を行った。また、紫外線の照射条件は、紫外線(UV)照射装置として日東精機(商品名、UM−810製)を用い、紫外線照射積算光量を300mJ/cmとした。また、紫外線照射はポリオレフィンフィルム側から行った。
【0125】
更に、各ダイシング・ダイボンドフィルムの基材側からニードルによる突き上げ方式で半導体チップをピックアップしピックアップ性の評価を行った。具体的には、400個の半導体チップを連続してピックアップし、後述の条件A及びBで行ったときの成功率が共に100%の場合を◎とし、条件Aで行ったときの成功率が100%であり、かつ、条件Bで行ったときの成功率が100%でなかった場合を○とし、条件A及びB共に成功率が100%でなかった場合を×とした。
【0126】
<ウェハ研削条件>
研削装置:ディスコ社製 DFG−8560
半導体ウェハ:8インチ径(厚さ0.6mmから0.075mmに裏面研削)
【0127】
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:日東精機製、MA−3000II
貼り付け速度計:10mm/min
貼り付け圧力:0.15MPa
貼り付け時のステージ温度:40℃
【0128】
<ダイシング条件>
ダイシング装置:ディスコ社製、DFD−6361
ダイシングリング:2−8−1(ディスコ社製)
ダイシング速度:80mm/sec
ダイシングブレード:
Z1;ディスコ社製2050HEDD
Z2;ディスコ社製2050HEBB
ダイシングブレード回転数:
Z1;40,000rpm
Z2;40,000rpm
ブレード高さ:
Z1;0.170mm(半導体ウェハの厚みによる(ウェハ厚みが75μmの場合、0.170mm))
Z2;0.085mm
カット方式:Aモード/ステップカット
ウェハチップサイズ:10.0mm角
【0129】
<ピックアップ条件>
ピックアップ条件については、下記表3に示す条件A及び条件Bによりそれぞれ行った。
【0130】
【表3】

【0131】
(引張弾性率の測定方法)
測定条件として、サンプルサイズを初期長さ10mm、断面積0.1〜0.5mmにし、測定温度23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minでMD方向又はTD方向に引張試験を行い、各方向に於けるサンプルの伸びの変化量(mm)を測定した。その結果、得られたS−S曲線の初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線が100%伸びに相当するときの引張強度を基材フィルムの断面積で割り、引張弾性率とした。尚、各サンプルは、ダイシング・ダイボンドフィルムからダイボンドフィルムを剥離したものを用いた。
【0132】
(ダイシングリングの糊残り)
ダイシングフィルムをダイシングリングから剥がし、ダイシングリングに糊残りが発生しているか否かを目視により確認した。糊残りが確認されたものを×とし、確認されなかったものを○とした。
【0133】
(引き剥がし粘着力)
各ダイシング・ダイボンドフィルムから幅10mmのサンプル片を切り出し、これを40℃のホットプレート上に載置されたシリコンミラーウエハに貼り付けた。約30分間放置して、引張試験機を用い引き剥がし粘着力を測定した。測定条件は、剥離角度:15°、引張速度:300mm/minとした。尚、サンプル片の保存及び引き剥がし粘着力の測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0134】
【表4】

【0135】
【表5】

【符号の説明】
【0136】
1 基材
2 粘着剤層
3 ダイボンドフィルム
4 半導体ウェハ
5 半導体チップ
6 被着体
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 スペーサ
10、11 ダイシング・ダイボンドフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性の基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記粘着剤層は、主モノマーとしてのアクリル酸エステルと、アクリル酸エステル100mol%に対する割合が10〜40mol%の範囲内のヒドロキシル基含有モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマー100mol%に対する割合が70〜90mol%の範囲内の分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物とで構成されるアクリル系ポリマーにより形成される粘着剤層前駆体に、前記ダイボンドフィルムが積層された後、前記基材側から紫外線を照射して硬化されたものであり、
前記ダイボンドフィルムはエポキシ樹脂により形成されるものであることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記紫外線照射の際の積算光量は30〜1000mJ/cmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記アクリル酸エステルは、CH=CHCOOR(式中、Rは炭素数が6〜10のアルキル基である。)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも何れか1種であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記ラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項6】
前記ポリマーの重量平均分子量は、35万〜100万の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層の23℃における引張弾性率が7〜170MPaの範囲内であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層を構成する前記アクリル系ポリマーはモノマー成分としてはアクリル酸を含まないことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項9】
紫外線透過性の基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法であって、
主モノマーとしてのアクリル酸エステルと、アクリル酸エステル100mol%に対する割合が10〜40mol%の範囲内のヒドロキシル基含有モノマーと、ヒドロキシル基含有モノマー100mol%に対する割合が70〜90mol%の範囲内の分子内にラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物とを含むポリマーを含有する粘着剤層前駆体を前記基材上に形成する工程と、
前記粘着剤層前駆体上に前記ダイボンドフィルムを貼り合わせる工程と、
前記ダイボンドフィルムを貼り合わせた前記粘着剤層前駆体に、前記基材側から紫外線を照射して前記粘着剤層を形成する工程とを具備することを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記紫外線の照射は30〜1000mJ/cmの範囲内で行うことを特徴とする請求項9に記載のダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法。
【請求項11】
基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
請求項1〜8に記載のダイシング・ダイボンドフィルムを用意し、
前記ダイボンドフィルム上に半導体ウェハを圧着する工程と、
前記半導体ウェハを前記ダイボンドフィルムと共にダイシングすることにより半導体チップを形成する工程と、
前記半導体チップを前記ダイボンドフィルムと共に、前記粘着剤層から剥離する工程とを具備し、
前記半導体ウェハの圧着工程から半導体チップの剥離工程までは、前記粘着剤層に紫外線を照射しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−56544(P2010−56544A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178074(P2009−178074)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】