説明

チャックテーブルに保持された被加工物の計測装置およびレーザー加工機

【課題】被加工物の上面高さを計測する計測装置および計測装置を装備したレーザー加工機を提供する。
【解決手段】被加工物Wに向けて白色光を発光する白色光源61と、発光した光が有する各波長を回折する回折手段62と、回折された光の中央部を遮蔽して光を環状に形成するマスク手段63と、形成された環状の光の像をリレーするリレーレンズ64と、伝達された環状の光を集光して被加工物に照射する対物レンズ65と、マスク63手段とリレーレンズ64との間に配設され被加工物に照射された光の反射光を分光するビームスプリッター66と、分光された反射光における光軸を通る波長の反射光を通過させる光分別手段67と、通過した反射光を回折光に変換する回折格子68と、回折された回折光の波長を検出する波長検出手段69と、波長検出手段69からの波長信号に基いて被加工物Wの高さ位置を求める制御手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工機等の加工機に装備されるチャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面高さを計測する計測装置およびレーザー加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハ等のストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿って内部に変質層を形成する場合、被加工物の上面から所定の深さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0004】
また、半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にも、被加工物の所定高さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0005】
しかるに、半導体ウエーハ等の板状の被加工物にはウネリがあり、その厚さにバラツキがあるため、均一なレーザー加工を施すことが難しい。即ち、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を形成する場合、ウエーハの厚さにバラツキがあるとレーザー光線を照射する際に屈折率の関係で所定の深さ位置に均一に変質層を形成することができない。また、ウエーハに形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にもその厚さにバラツキがあると、均一な深さのレーザー加工溝を形成することができない。
【0006】
上述した問題を解消するために、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面高さを確実に計測することができる計測装置が下記特許文献3に開示されている。下記特許文献3に開示された計測装置は、色収差レンズを通過した白色光が波長によって異なる焦点距離を有することを利用して、その反射光によって波長を特定することにより焦点距離を求めるので、チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を正確に計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号
【特許文献2】特開平10−305420号公報
【特許文献3】特開2008−170366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、白色光を色収差レンズによって集光すると、光軸上に各波長に対応した集光点が位置付けられるが、波長が長くなるに従って集光レンズの内側 (光軸側)に位置付けられ実質的にNA値が小さくなるため、焦光点がボケて正確な表面高さ位置を検出することが出来ないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面高さを正確に計測することができる計測装置および計測装置を装備したレーザー加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、加工機に装備されるチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出するチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置において、
チャックテーブルに保持された被加工物に向けて白色光を発光する白色光源と、該白色光源が発光した光が有する各波長を回折する回折手段と、該回折手段によって回折された光の中央部を遮蔽して光を環状に形成するマスク手段と、該マスク手段によって形成された環状の光の像をリレーするリレーレンズと、該リレーレンズによって伝達された環状の光を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する対物レンズと、該マスク手段と該リレーレンズとの間に配設され被加工物に照射された光の反射光を分光するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分光された反射光における光軸を通る波長の反射光を通過させる光分別手段と、該光分別手段を通過した反射光を回折光に変換する回折格子と、該回折格子によって回折された回折光の波長を検出する波長検出手段と、該波長検出手段からの波長信号に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する計測装置と、を具備するレーザー加工機において、
該計測装置は、チャックテーブルに保持された被加工物に向けて白色光を発光する白色光源と、該白色光源が発光した光が有する各波長を回折する回折手段と、該回折手段によって回折された光の中央部を遮蔽して光を環状に形成するマスク手段と、該マスク手段によって形成された環状の光の像をリレーするリレーレンズと、該リレーレンズによって伝達された環状の光を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する対物レンズと、該マスク手段と該リレーレンズとの間に配設され被加工物に照射された光の反射光を分光するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分光された反射光における光軸を通る波長の反射光を通過させる光分別手段と、該光分別手段を通過した反射光を回折光に変換する回折格子と、該回折格子によって回折された回折光の波長を検出する波長検出手段と、該波長検出手段からの波長信号に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備し、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該リレーレンズと該対物レンズとの間に配設され該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を該対物レンズに向けて方向変換するダイクロイックミラーと、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置は以上のように構成され、白色光が回折手段によって回折された光をマスク手段によって中央部に位置する波長の長い光を遮蔽して環状の光を形成し、この環状の光をリレーレンズによって対物レンズへリレーし、該リレーレンズによって伝達された環状の光を対物レンズによって集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射するので、対物レンズによって集光される環状の光は波長の短い光が比較的大きなNA値で集光される。従って、集光点がボケることがないため、チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を正確に計測することができる。
また、本発明によるレーザー加工機は上記計測装置を装備しているので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を基準とした所定の位置に正確にレーザー加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工機の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工機に装備される高さ計測兼レーザー照射ユニットを構成する高さ位置計測装置およびレーザー光線照射手段のブロック構成図。
【図3】図2に示す高さ位置計測装置を構成するマスク手段の平面図。
【図4】図2に示す高さ位置計測装置を構成する対物レンズによって集光される光における各波長の集光点を示す説明図。
【図5】図1に示すレーザー加工機に装備される制御手段のメモリに格納される高さ位置計測装置を構成する対物レンズにとって集光される光における波長と焦点距離との関係を設定した制御マップを示す図。
【図6】図1に示すレーザー加工機に装備される制御手段のブロック構成図。
【図7】図1に示すレーザー加工機によって加工される被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【図8】図7に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工機のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図。
【図9】図1に示すレーザー加工機に装備されたチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置によって実施される高さ位置検出工程の説明図。
【図10】図1に示すレーザー加工機によって図7に示す半導体ウエーハに変質層を形成する加工工程の説明図。
【図11】被加工物の厚みが厚い場合の加工工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成されたチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置およびレーザー加工機の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成されたチャックテーブルに保持された被加工物の高さを計測する計測装置を装備したレーザー加工機の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工機1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設された高さ計測兼レーザー照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態のおける高さ計測兼レーザー照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられた円筒形状のユニットハウジング52を具備しており、ユニットホルダ51が上記可動支持基台42の装着部422に一対の案内レール423、423に沿って移動可能に配設されている。ユニットホルダ51に取り付けられたユニットハウジング52には、上記チャックテーブル36に保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ計測装置およびチャックテーブル36に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段が配設されている。この高さ計測装置およびレーザー光線照射手段について、図2を参照して説明する。
【0023】
図示の実施形態における高さ計測装置6は、白色光を発光する白色光源61と、該白色光源61が発光した光が有する各波長を回折する回折手段62と、該回折手段62によって回折された光の中央部を遮蔽して光を環状に形成するマスク手段63と、該マスク手段63によって形成された環状の光の像をリレーするリレーレンズ64と、該リレーレンズ64によって伝達された環状の光を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する対物レンズ65と、上記マスク手段63とリレーレンズ64との間に配設され被加工物に照射された白色光の反射光を分光するビームスプリッター66を具備している。
【0024】
上記白色光源61は、白色灯や発光ダイオード(LED)等を用いることができる。上記回折手段62は、第1の色収差レンズ621と、該第1の色収差レンズ621と光軸上に所定の間隔を置いて配設された第2の色収差レンズ622とによって構成されている。回折手段62を構成する第1の色収差レンズ621および第2の色収差レンズ622は、それぞれグラディウムレンズ等の色収差を有するレンズからなり、光の波長によって屈折率が異なる。回折手段62を構成する第1の色収差レンズ621は、光軸上に上記白色光源61から入光する白色光の各波長に対する焦点を形成する。回折手段62を構成する第2の色収差レンズ622は、第1の色収差レンズ621によって各波長に対する焦点を通過し拡がった光を略平行(波長によって拡がり角が異なる)な光束に形成する。このように第1の色収差レンズ621と第2の色収差レンズ622とによって構成された回折手段62は、白色光源61が発光した白色光の波長を光軸側から外側に向けて順次短くなるように回折する。
【0025】
上記マスク手段63は、図2および図3に示すようにガラス板等の透明坂631からなり、その表面中央部に光を遮蔽する円形の遮蔽マスク632が形成されている。なお、光を遮蔽する円形の遮蔽マスク632は、例えば、800nmより長い波長の光を遮蔽する大きさに設定されている。このように構成されたマスク手段63は、円形の遮蔽マスク632が回折手段62を通過する光の光軸上に配設される。従って、回折手段62を通過した光は、800nmより長い波長の光が円形の遮蔽マスク632によって遮断され、800nm以下の波長の光がマスク手段63を通過することにより環状の光に形成される。
【0026】
上記リレーレンズ64は、上述したようにマスク手段63によって形成された環状の光の像を対物レンズ65までリレーする。上記対物レンズ65は、該リレーレンズ64によって伝達された環状の光を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する。この対物レンズ65によって集光される環状の光は、図4に示すように800nmより長い波長の光が上述したように円形の遮蔽マスク632によって遮断されているので、800nm以下の波長の光が集光される。この800nm以下の波長の光は、回折手段62によって波長の短い光が外側に回折されているので光軸に近い長い波長の光の集光距離が短く、光軸から遠い短い波長の光の集光距離が長くなる。なお、上記マスク手段63とリレーレンズ64および対物レンズ65の位置関係は、図2に示すようにマスク手段63からリレーレンズ64までの距離を(a)、リレーレンズ64から対物レンズ65までの距離を(b)、リレーレンズ64の焦点距離を(f)とすると、(1/a)+(1/b)=(1/f)の関係を満たす位置に設定される。
【0027】
上記ビームスプリッター66は、上記マスク手段63を通過した環状の光を実線で示すようにリレーレンズ64に向けて透過せしめるとともに、チャックテーブル36に保持された被加工物Wで反射した反射光を破線で示すように90度の角度で反射し分光せしめる。
【0028】
上記ビームスプリッター66によって分光された反射光は、光軸を通る波長の反射光を通過させる光分別手段67、回折格子68を介して波長検出手段69に至る。光分別手段67は、第1の集光レンズ671とマスク672および第2の集光レンズ673とからなっている。第1の集光レンズ671はアクロマテックレンズ等の色収差のないレンズからなり、ビームスプリッター66によって分光された反射光を集光せしめる。マスク672は、第1の集光レンズ671の集光点位置に配設され第1の集光レンズ671によって集光された反射光が通過するピンホール672aを備えている。なお、ピンホール672aは、直径が10〜100μmでよい。第2の集光レンズ673はアクロマテックレンズ等の色収差のないレンズからなり、マスク672のピンホール672aを通過した反射光を集光する。回折格子68は、第2の集光レンズ673によって集光された反射光を回折光に変換する。この回折格子68によって変換された回折光は、波長検出手段69に照射される。波長検出手段69は、CCD、CMOS、PSD等からなり、照射された回折光の波長を検出し、検出した波長信号を後述する制御手段に送る。
【0029】
上述した高さ計測装置6の作用について説明する。
上記白色光源61が発光した白色光(R)は、図2において実線で示すように回折手段62を構成する第1の色収差レンズ621に入光する。第1の色収差レンズ621は、光軸上に白色光源61から入光した白色光の各波長に対する焦点を形成する。このようにして光軸上に各波長に対応した焦点が形成された光は第2の色収差レンズ622に入光し、第2の色収差レンズ622は第1の色収差レンズ621によって各波長に対する焦点を通過し拡がった光を略平行(波長によって拡がり角が異なる)な光束に形成する。このように第1の色収差レンズ621と第2の色収差レンズ622とによって構成された回折手段62は、白色光源61が発光した白色光の波長を光軸側(内側)から外側に向けて順次短くなるように回折する。このようにして回折手段62によって回折された白色光は、マスク手段63によって例えば800nmより長い波長の光が円形の遮蔽マスク632によって遮断され、800nm以下の波長の光が環状の光に形成される。
【0030】
上述したようにマスク手段63によって例えば800nmより長い波長の光が円形の遮蔽マスク632によって遮断され、800nm以下の波長の光が環状に形成された光はビームスプリッター66を透過してリレーレンズ64に入光し、リレーレンズ64は環状の光の像を対物レンズ65までリレーする。対物レンズ65は、リレーレンズ64によって伝達された環状の光を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する。この対物レンズ65によって集光される環状の光は、図4に示すように800nmより長い波長の光が上述したように円形の遮蔽マスク632によって遮断されているので、800nm以下の波長の光が集光される。この800nm以下の波長の光は、光軸に近い長い波長の光程集光距離が短く、光軸から遠い短い波長の光程集光距離が長い。従って、被加工物Wに照射された白色光(R)は被加工物Wの上面で反射するが、このうち被加工物Wの上面に集光点が合致した波長の光が最も小さい直径で反射する。なお、対物レンズ65によって集光される環状の光は、上述したように中心部の800nmより長い波長の光が円形の遮蔽マスク631によって遮断され、800nm以下の波長の光が比較的大きいNA値で集光されるので、焦点がボケることはない。
【0031】
被加工物Wの上面で反射した集光点が合致した波長の反射光(R1)は、破線で示すように対物レンズ65およびリレーレンズ64を通り、ビームスプリッター66によって分光され、光分別手段67を構成する第1の集光レンズ671に入光する。第1の集光レンズ671に入光した反射光(R1)は、集光されマスク672のピンホール672aを通過し、更に第2の集光レンズ673によって再度集光されて回折格子68に至る。なお、被加工物Wの上面に集光点が合致しない波長の反射光は直径が大きいため、第1の集光レンズ671によって集光されてもマスク672によって遮断されピンホール672aを通過する量はほんの僅かとなる。回折格子68に到達した反射光は、波長に対応した回折光に変換され波長検出手段68に照射する。図2に示す実施形態においては、500nmの波長は破線で示すように波長検出手段69における500nmの位置に照射され、300nmの波長は1点鎖線で示すように波長検出手段69における300nmの位置に照射され、700nmの波長は2点鎖線で示すように波長検出手段69における700nmの位置に照射される。波長検出手段69は、回折光が照射された位置に基いて上記反射光の波長を検出し、検出した波長信号を後述する制御手段に送る。なお、マスク672によって遮断されピンホール672aを通過した被加工物Wの上面に集光点が合致しない波長の反射光も回折格子68によってそれぞれ所定の角度を反射し波長検出手段67に到達するが、上述したように光量が極めて少ないため波長検出手段69を作動することはない。後述する制御手段は、入力した波長信号に基いて対物レンズ65から照射される光の波長に対する焦点距離を求めることにより、チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置を求める。
【0032】
後述する制御手段は、図5に示すように対物レンズ65によって集光される光の波長と焦点距離との関係を設定した制御マップを備えており、この制御マップを参照して上記波長検出手段69から送られた波長信号に対応した焦点距離を求める。従って、対物レンズ65から焦点距離に対応する位置がチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置となる。例えば、図5に示す制御マップにおいては上記波長検出手段69から送られた波長信号が500nmである場合に集光レンズ65の焦点距離(例えば、29.4mm)であり、チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置は対物レンズ65から29.4mm下方位置となる。図示の実施形態においては、白色光の300nm〜700nmまで波長においては例えば100nm毎の集光点の間隔が5μmとなっており、上記波長検出手段69から送られた波長信号が400nmである場合にはチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置は対物レンズ65から29.395mm下方位置となり、波長検出手段69から送られた波長信号が300nmである場合にはチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置は対物レンズ65から29.390mm下方位置となる。一方、上記波長検出手段69から送られた波長信号が600nmである場合にはチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置は対物レンズ65から29.405mm下方位置となり、波長信号が700nmである場合には、チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置は対物レンズ65から29.410mm下方位置となる。このように、本発明による高さ検出装置6においては、対物レンズ65によって集光される白色光の各波長の集光点は一次直線的に変化するので、対物レンズ65からチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面までの距離、即ちチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置を正確に計測することができる。また、対物レンズ65によって集光される環状の光は、上述したように中心部の800nmより長い波長の光が円形の遮蔽マスク632によって遮断され、800nm以下の波長の光が比較的大きいNA値で集光されるので、焦点がボケることがないため、チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面の高さ位置を正確に計測することができる。
【0033】
図2に戻って説明を続けると、レーザー光線照射手段7は、パルスレーザー光線発振手段71と、該パルスレーザー光線発振手段71から発振されたパルスレーザー光線を上記対物レンズ65に向けて方向変換するダイクロイックミラー72を具備している。パルスレーザー光線発振手段71は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器711と、これに付設された繰り返し周波数設定手段712とから構成されており、例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を発振する。ダイクロイックミラー72は、上記リレーレンズ64と対物レンズ65との間に配設され、リレーレンズ64からの白色光は通過させるが、パルスレーザー光線発振手段71から発振されたパルスレーザー光線を対物レンズ652に向けて方向変換する。従って、パルスレーザー光線発振手段71から発振されたパルスレーザー光線(LB)は、ダイクロイックミラー72によって90度方向変換されて対物レンズ65に入光し、対物レンズ65によって集光されてチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射される。従って、対物レンズ65は、レーザー光線照射手段7を構成する集光レンズとしての機能を有する。
【0034】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、ユニットホルダ51を可動支持基台42の装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な方向に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、上記高さ計測兼レーザー照射ユニット5を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することにより高さ計測兼レーザー照射ユニット5を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することにより高さ計測兼レーザー照射ユニット5を下方に移動するようになっている。
【0035】
上記高さ計測兼レーザー照射ユニット5を構成するユニットハウジング52の前端部には、撮像手段8が配設されている。この撮像手段8は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0036】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、図6に示す制御手段9を具備している。制御手段9はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)91と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)92と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)93と、カウンター94と、入力インターフェース95および出力インターフェース96とを備えている。制御手段8の入力インターフェース95には、上記加工送り量検出手段374、割り出し送り量検出手段384、波長検出手段69および撮像手段8等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース96からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、高さ計測装置6の白色光源61、パルスレーザー光線発振手段71等に制御信号を出力する。なお、上述した図5に示す制御マップは、リードオンリメモリ(ROM)92またはランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納される。
【0037】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図7にはレーザー加工される被加工物としての半導体ウエーハ10の斜視図が示されている。図7に示す半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなっており、その表面10aに格子状に配列された複数のストリート101によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。
【0038】
上述したレーザー加工機1を用い、上記半導体ウエーハ10のストリート101に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ10の内部にストリート101に沿って変質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、半導体ウエーハ10の内部に変質層を形成する際に、半導体ウエーハの厚さにバラツキがあると、上述したように屈折率の関係で所定の深さに均一に変質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施す前に、上述した高さ計測装置6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の高さ位置を計測する。
即ち、先ず上述した図1に示すレーザー加工機1のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10の裏面10bを上にして載置し、該チャックテーブル36上に半導体ウエーハ10を吸引保持する。半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段8の直下に位置付けられる。
【0039】
チャックテーブル36が撮像手段8の直下に位置付けられると、撮像手段8および制御手段9によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段8および制御手段9は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されているストリート101と、該ストリート101に沿って半導体ウエーハ10の高さ計測兼レーザー照射ユニット5を構成する高さ測定装置6の対物レンズ65との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、高さ検出位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート101に対しても、同様に高さ検出位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10のストリート101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段7が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かしてストリート101を撮像することができる。
【0040】
上述したようにアライメントが行われると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ10は、図8の(a)に示す座標位置に位置付けられた状態となる。なお、図8の(b)はチャックテーブル36即ち半導体ウエーハ10を図8の(a)に示す状態から90度回転した状態を示している。
【0041】
なお、図8の(a)および図8の(b)に示す座標位置に位置付けられた状態における半導体ウエーハ10に形成された各ストリート101の送り開始位置座標値(A1,A2,A3・・・An)と送り終了位置座標値(B1,B2,B3・・・Bn)および送り開始位置座標値(C1,C2,C3・・・Cn)と送り終了位置座標値(D1,D2,D3・・・Dn)は、その設計値のデータが上記ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納されている。
【0042】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ10に形成されたストリート101を検出し、高さ検出位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して図8の(a)において最上位のストリート101を高さ計測兼レーザー照射ユニット5を構成する高さ計測装置6の対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図9で示すようにストリート101の一端(図9において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図8の(a)参照)を対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、高さ計測装置6を作動するとともに、チャックテーブル36を図9において矢印X1で示す方向に移動し、送り終了位置座標値(B1)まで移動する(高さ位置検出工程)。この結果、半導体ウエーハ10の図8の(a)において最上位のストリート101に沿って上面の高さ位置が上述したように計測される。この計測された高さ位置は、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納される。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って高さ位置検出工程を実施し、各ストリート101における上面の高さ位置を上記ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納する。
【0043】
以上のようにして半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って高さ位置検出工程を実施したならば、半導体ウエーハ10の内部にストリート101に沿って変質層を形成するレーザー加工を実施する。
このレーザー加工を実施するには、先ずチャックテーブル36を移動して図8の(a)において最上位のストリート101を高さ計測兼レーザー照射ユニット5を構成するレーザー光線照射手段7の集光レンズとして機能する対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図10の(a)で示すようにストリート101の一端(図10の(a)において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図10の(a)参照)を対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、レーザー光線照射手段7を構成する対物レンズ65から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の裏面10b(上面)から所定の深さ位置に合わせる。次に、レーザー光線照射手段7を作動し、対物レンズ65からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(レーザー加工工程)。そして、図10の(b)で示すように対物レンズ65の照射位置がストリート101の他端(図10の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。このレーザー加工工程においては、制御手段9はランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納されている半導体ウエーハ10のストリート101における高さ位置に基いて、集光点位置調整手段53のパルスモータ532を制御し、高さ計測兼レーザー照射ユニット5をZ軸方向に移動し、レーザー光線照射手段7を構成する対物レンズ65を図10の(b)で示すように半導体ウエーハ10のストリート101における高さ位置に対応して上下方向に移動せしめる。この結果、半導体ウエーハ10の内部には、図10の(b)で示すように裏面10b(上面)から所定の深さ位置に裏面10b(上面)と平行に変質層110が形成される。
【0044】
なお、上記レーザー加工工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー :YVO4 パルスレーザー
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :100kHz
パルス出力 :2.5μJ
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0045】
なお、半導体ウエーハ10の厚みが厚い場合には、図11に示すように集光点Pを段階的に変えて上述したレーザー加工工程を複数回実行することにより、複数の変質層110a、110b、110cを形成することが望ましい。この変質層110a、110b、110cの形成は、110a、110b、110cの順番でレーザー光線の集光点を段階的に変位して行うことが好ましい。
【0046】
以上のようにして、半導体ウエーハ10の所定方向に延在する全てのストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ10は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0047】
以上、本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置をレーザー加工機に適用した例を示したが、本発明による計測装置は切削ブレードを装備した切削加工機等の他の加工機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:加工送り量検出手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41:案内レール
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:高さ計測兼レーザー照射ユニット
53:集光点位置調整手段
6:高さ計測装置
61:白色光源
62:回折手段
621:第1の色収差レンズ
622:第2の色収差レンズ
63:マスク手段
631:透明坂
632:円形の遮蔽マスク
64:リレーレンズ
65:対物レンズ
66:ビームスプリッター
67:光分別手段
68:回折格子
69:波長検出手段
7:レーザー光線照射手段
71:パルスレーザー光線発振手段
72:ダイクロイックミラー
8:撮像手段
9:制御手段
10:半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機に装備されるチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出するチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置において、
チャックテーブルに保持された被加工物に向けて白色光を発光する白色光源と、該白色光源が発光した光が有する各波長を回折する回折手段と、該回折手段によって回折された光の中央部を遮蔽して光を環状に形成するマスク手段と、該マスク手段によって形成された環状の光の像をリレーするリレーレンズと、該リレーレンズによって伝達された環状の光を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する対物レンズと、該マスク手段と該リレーレンズとの間に配設され被加工物に照射された光の反射光を分光するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分光された反射光における光軸を通る波長の反射光を通過させる光分別手段と、該光分別手段を通過した反射光を回折光に変換する回折格子と、該回折格子によって回折された回折光の波長を検出する波長検出手段と、該波長検出手段からの波長信号に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する計測装置と、を具備するレーザー加工機において、
該計測装置は、チャックテーブルに保持された被加工物に向けて白色光を発光する白色光源と、該白色光源が発光した光が有する各波長を回折する回折手段と、該回折手段によって回折された光の中央部を遮蔽して光を環状に形成するマスク手段と、該マスク手段によって形成された環状の光の像をリレーするリレーレンズと、該リレーレンズによって伝達された環状の光を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する対物レンズと、該マスク手段と該リレーレンズとの間に配設され被加工物に照射された光の反射光を分光するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分光された反射光における光軸を通る波長の反射光を通過させる光分別手段と、該光分別手段を通過した反射光を回折光に変換する回折格子と、該回折格子によって回折された回折光の波長を検出する波長検出手段と、該波長検出手段からの波長信号に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備し、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該リレーレンズと該対物レンズとの間に配設され該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を該対物レンズに向けて方向変換するダイクロイックミラーと、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−33383(P2011−33383A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177624(P2009−177624)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】