説明

ディスプレイ装置

【課題】装置全体として可撓性を有しつつ、かつ、デザイン上の制約が無く、製造上の歩留まりをも向上させることが可能な駆動回路が搭載されたディスプレイ装置を提供すること。
【解決手段】ディスプレイ装置100は、第1フレキシブル基板210上に表示素子層220及び画素駆動用薄膜トランジスタ230を有するディスプレイユニット200と、ディスプレイユニット200の第1面上に接合され、当該ディスプレイユニット200を駆動するデバイスであって、第2面上にディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320を有する薄膜デバイス300と、から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路を搭載した可撓性(フレキシブル性)を有するディスプレイ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ装置または有機ELを用いたディスプレイ装置など、様々なタイプのディスプレイ装置が登場している。特に、最近では、電子ペーパなどの新しい概念のディスプレイ装置も開発され始めており、薄く、軽くかつ変形可能な柔軟性、すなわち、可撓性(フレキシブル性)のあるディスプレイ装置(以下、「フレキシブルディスプレイ」という。)が注目されている。
【0003】
例えば、このフレキシブルディスプレイとしては、フレキシブル基板上に有機TFTから形成される表示装置と、当該フレキシブル基板上であって当該表示装置の周辺に有機TFTを駆動する駆動回路とを有するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、フレキシブルフィルム上に形成された薄膜表示装置(薄膜表示デバイス)と、当該薄膜表示装置に隣接し形成された駆動回路(駆動用ドライバ)とを有するものも知られている(特許文献2)。さらに、液晶素子を駆動する駆動回路を、フレキシブル基板を用いてディスプレイ装置に搭載するものも知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−21939号公報
【特許文献2】特開2004−219551号公報
【特許文献3】特開平11−64881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1または2に記載のディスプレイ装置にあっては、ディスプレイがフレキシブル基板を用いて形成されているものの、当該ディスプレイ装置を駆動する駆動回路についてはガラス基板などの可撓性の無いまたは可撓性が著しく低い不可撓性の基板上に形成されたうえでフレキシブル基板上に搭載されている。
【0007】
また、特許文献3に記載のディスプレイ装置は、ディスプレイユニットと駆動回路との接続についてはフレキシブル基板を用いて形成されているものの、駆動回路自体は、ガラス基板などの可撓性の無いまたは可撓性が著しく低い不可撓性の基板上に形成されている。
【0008】
したがって、これらディスプレイ装置にあっては、撓みまたはねじりなど当該ディスプレイ装置が歪められた場合に駆動回路が破損する可能性がある。また、このようなディスプレイ装置にあっては、ディスプレイ装置が歪められた場合であってもその影響の少ない場所に設けなければならず、デザイン上の制約が多い。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、装置全体として可撓性を有しつつ、かつ、デザイン上の制約が無く、製造上の歩留まりをも向上させることが可能な駆動回路が搭載されたディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するための本発明のディスプレイ装置は、第1フレキシブル基板と、前記第1フレキシブル基板上に形成された複数の表示素子と、前記第1フレキシブル基板上に前記表示素子毎に設けられた表示素子用の薄膜トランジスタと、を有するディスプレイユニットと、
前記第1フレキシブル基板とは別の基板によって形成される第2フレキシブル基板と、前記第2フレキシブル基板上に形成されるとともに前記ディスプレイユニットの表示制御を行うディスプレイ制御用の薄膜トランジスタと、を有する駆動ユニットと、を備え、前記駆動ユニットと前記ディスプレイユニットとが接合されることによって一体的に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、フレキシブル基板上に形成されたディスプレイユニットの表示制御を実行する駆動ユニットについてもフレキシブル基板上に形成することができるので、ディスプレイ装置全体として可撓性を備えている。したがって、本発明は、駆動ユニットにおけるディスプレイユニットに対しての配設場所を選ぶこと無くデザイン上のフレキシブル性を向上させ、かつ、装置全体の撓みにおける耐性をも向上させることができる。また、本発明は、ディスプレイユニットと駆動ユニットがそれぞれ異なるフレキシブル基板上に形成されおり、何れか一方のユニットに対する製造不良について、他のユニットに影響を与えることが無いので、ディスプレイ装置全体としての歩留まりを向上させることができる。
【0012】
(2)本発明のディスプレイ装置は、前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタの少なくとも移動度が10cm/Vs以上である。
【0013】
この発明によれば、駆動ユニットとしてゲート駆動回路及びソース駆動回路をも形成することができる駆動性能の良いトランジスタによって薄膜トランジスタを形成することができるので、装置全体として可撓性を備えつつ、的確にディスプレイユニットを駆動することができる。
【0014】
(3)本発明のディスプレイ装置は、前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタの移動度が前記表示素子用の薄膜トランジスタの移動度より大きい。
【0015】
この発明によれば、駆動ユニットとしてゲート駆動回路及びソース駆動回路をも形成することができる駆動性能の良いトランジスタによって薄膜トランジスタを形成することができるので、装置全体として可撓性を備えつつ、的確にディスプレイユニットを駆動することができる。
【0016】
(4)本発明のディスプレイ装置は、前記第2フレキシブル基板が、導電性の材料から形成されている。
【0017】
この発明によれば、耐熱性の高い材料によって第2フレキシブル基板を生成することができるので、性能の高いディスプレイ制御用の薄膜トランジスタを駆動ユニットに用いることができる。したがって、本発明は、装置全体として可撓性を備えつつ、的確にディスプレイユニットを駆動することができる。
【0018】
(5)本発明のディスプレイ装置は、前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタが、ゲート駆動回路またはソース駆動回路として動作可能な材料で形成されている。
【0019】
この発明によれば、駆動ユニットとしてゲート駆動回路及びソース駆動回路をも形成することができるので、装置全体として可撓性を備えつつ、的確にディスプレイユニットを駆動することができる。
【0020】
(6)本発明のディスプレイ装置は、前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタが、酸化物半導体またはポリシリコンによって形成されている。
【0021】
この発明によれば、駆動ユニットとしてゲート駆動回路及びソース駆動回路をも形成することができるので、装置全体として可撓性を備えつつ、的確にディスプレイユニットを駆動することができる。
【0022】
(7)本発明のディスプレイ装置は、前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタが、前記表示素子用の薄膜トランジスタと異なる半導体材料から形成されている。
【0023】
この発明によれば、ディスプレイユニットについては安価な薄膜トランジスタを用いることができるとともに、駆動ユニットについてはゲート駆動回路及びソース駆動回路をも形成することが可能な薄膜トランジスタを用いることができるので、コストを低減させつつ、ディスプレイユニットを的確に駆動させることができる。
【0024】
(8)本発明のディスプレイ装置は、前記駆動ユニットが、N型及びP型の薄膜トランジスタが混在して形成されていてもよい。
【0025】
この発明によれば、駆動ユニットが、N型及びP型の薄膜トランジスタを混在させて形成することができるので、すなわち、コンプリメンタリであるので、駆動ユニットについて消費電力を抑え、かつ、スイッチングなどの処理速度が向上させつつ、製造上の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るディスプレイ装置は、フレキシブル基板上に形成されたディスプレイユニットの表示制御を実行する駆動ユニットについてもフレキシブル基板上に形成することができるので、ディスプレイ装置全体として可撓性を備えている。したがって、本発明は、駆動ユニットにおけるディスプレイユニットに対しての配設場所を選ぶこと無く、デザイン上のフレキシブル性を向上させ、かつ、装置全体の撓みにおける耐性をも向上させることができる。
【0027】
また、本発明に係るディスプレイ装置は、ディスプレイユニットと駆動ユニットがそれぞれ異なるフレキシブル基板上に形成されおり、何れか一方のユニットに対する製造不良について、他のユニットに影響を与えることが無いので、ディスプレイ装置全体としての歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るディスプレイ装置の一実施形態における構造を示す側面図である。
【図2】一実施形態におけるディスプレイユニット及び薄膜デバイスの製造方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
なお、以下に説明する実施形態は、フレキシブルディスプレイユニット(以下、単に「ディスプレイユニット」という。)に当該ディスプレイユニットの駆動用として薄膜デバイスを搭載したディスプレイ装置に、本発明のディスプレイ装置を適用した場合の実施形態である。
【0031】
<ディスプレイ装置>
まず、図1及び図2を用いて本発明に係るディスプレイ装置100の実施形態について説明する。なお、図1は、本実施形態のディスプレイ装置100の構造を示す側面図であり、図2は、本実施形態のディスプレイユニット200及び薄膜デバイス300の製造方法について説明するための図である。
【0032】
本実施形態のディスプレイ装置100は、図1に示すように、ディスプレイユニット200と、ディスプレイユニット200の一方の面上に接合され、当該ディスプレイユニット200を駆動する薄膜デバイス300と、から形成されている。
【0033】
特に、薄膜デバイス300は、ディスプレイユニット200における基板(後述する第1フレキシブル基板210)と対向する対向面に接続端子であって導体突起形状のバンプBを有している。このバンプBは、電極Eを介して当該薄膜デバイス300の各素子と接続されているとともに、ディスプレイユニット200に形成された配線電極のパッドPと位置合わせしつつ、当該パッドPに接合されるようになっている。この位置合わせには、ディスプレイユニット200の基板と駆動回路チップにそれぞれ設けたアライメントマークを用いるとともに、異方性導電接着フィルム(ACF)を介して薄膜デバイス300とディスプレイユニット200が熱圧着されて固定されるようになっている。
【0034】
また、本実施形態のディスプレイユニット200及び薄膜デバイス300は、図2に示すように、それぞれアレイ形状(ディスプレイユニットアレイ250及び薄膜デバイスアレイ350)によって一度に複数のユニットを製造し、それぞれのアレイから個々にディスプレイユニット200及び薄膜デバイス300が分離されてディスプレイ装置100として接合されるようになっている。したがって、このディスプレイ装置100は、効率よく各ユニットを製造することができるとともに、何れか一方のユニットに対する製造不良について、他のユニットに影響を与えることが無いので、装置全体としての歩留まりを向上させることができるようになっている。
【0035】
<ディスプレイユニット>
次に、図1を用いて本実施形態のディスプレイユニット200について説明する。
【0036】
本実施形態のディスプレイユニット200は、複数の画素から形成される表示領域を有し、画素毎に表示制御を行うことによってこの表示領域に所定の画像を表示するためのユニットである。このディスプレイユニット200は、図1に示すように、フレキシブル基板(以下、「第1フレキシブル基板」という。)210と、当該第1フレキシブル基板210上であって薄膜デバイス300との対向面に、画素毎に形成された表示素子層220及び薄膜トランジスタ(以下、「画素駆動用薄膜トランジスタ」という。)230と、を有している。特に、表示素子層220及び画素駆動用薄膜トランジスタ230は、第1フレキシブル基板210上において、薄膜デバイス300が形成された領域と対向面上において異なる領域に積層されている。
【0037】
例えば、このディスプレイユニット200は、画素毎に形成され、ゲート電極231、半導体層233、ソース電極234及びドレイン電極235が積層されて形成されている画素駆動用薄膜トランジスタ230と、画素毎に一対の電極221及び当該電極間221に設けられた表示層222からなる表示素子層220と、を有している。また、このディスプレイユニット200は、第1フレキシブル基板210上に積層された平坦化層240と、当該平坦化層240上に画素駆動用薄膜トランジスタ230とともに積層されたゲート絶縁膜232及び層間絶縁膜250と、を有している。そして、表示素子層220は、層間絶縁膜250上であって、薄膜デバイス300と対向する対向面上に形成されており、電極221bがドレイン電極235と接続している。
【0038】
ディスプレイユニット200のパッドPは、層間絶縁膜250上であって、薄膜デバイス300との対向面に形成されている。ただし、表示素子層220及び画素駆動用薄膜トランジスタ230が形成されている対向面上の領域と異なる領域に形成されている。
【0039】
なお、画素駆動用薄膜トランジスタ230が画素毎に1つ必要な場合(例えば表示素子が液晶素子の場合)には、上述のように、本実施形態のディスプレイユニット200においては、当該画素駆動用トランジスタ230は、図1に示すように形成される。一方、画素駆動用薄膜トランジスタ230が画素毎に2つ必要な場合(例えば、表示素子が有機EL素子の場合)には、上記の画素駆動用薄膜トランジスタ230がフレキシブル基板上の面方向に隣接して形成されるようになっている。また、本実施形態の表示素子層220は、表示素子が有機EL素子の場合には正孔注入輸送層などの表示素子によって必要な層構造を有している。
【0040】
第1フレキシブル基板210は、例えば、PETなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリミド系樹脂またはステンレス(SUS)などの薄膜合金によって形成されている。なお、本実施形態のフレキシブル基板は、可撓性を有する材料で形成れていれば、上記の材料に限定されない。
【0041】
表示素子層220は、有機EL素子、液晶素子、電子ペーパ表示素子などの用途に応じて各種の表示素子から形成されている。
【0042】
画素駆動用薄膜トランジスタ230は、有機EL素子、液晶素子、電子ペーパ表示素子など各表示素子を駆動するために適切な電界効果トランジスタ(TFT)から形成されている。この画素駆動用トランジスタは、各画素における表示素子の点灯及び消灯などの種々の制御を実行するようになっている。
【0043】
例えば、本実施形態においては、表示素子の特性に基づいて1または複数の薄膜トランジスタが画素毎にそれぞれ形成されている。また、薄膜トランジスタのタイプとしては、有機半導体膜を用いた有機TFT、アモルファスシリコンTFT(以下、「a−SiTFT」という。)、ポリシリコンTFT(以下、「p−SiTFT」という。)または酸化物TFTなどの各種のTFTが用いられる。
【0044】
有機TFTは、他のTFTに比べて製造コストが安いので、ディスプレイユニット200の製造コストを低下させることができるとともに、通常、画素駆動用薄膜トランジスタ230として用いられる場合には、トップゲート型で形成されている。
【0045】
a−SiTFTは、製造プロセスをp−SiTFTに比べて短縮化可能であり、かつ、大型基板の製造が可能といった特徴を有しており、画素駆動用薄膜トランジスタ230として用いられる場合には、ボトムゲートタイプの逆スタガ型によって形成されている。
【0046】
p−SiTFTは、半導体特性が良好であるといった特徴を有しており、画素駆動用薄膜トランジスタ230として用いられる場合には、通常、トップゲートタイプの順スタガ型によって形成されている。
【0047】
酸化物TFTは、画素駆動用薄膜トランジスタ230として用いられる場合には、当該TFTを構成するチャネル領域として使用できる程度の移動度を有する酸化物半導体膜を備えていればよい。また、酸化物半導体膜を構成する酸化物としては、例えば、InMZnO(MはGa,Al,Feのうち少なくとも1種)を主たる構成元素とするアモルファス酸化物を挙げることができる。特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましく、この場合、In:Ga:Znの比を1:1:m(m<6)としたもの、または、In:Ga:Znの比を1:2:4としたものが好ましい。また、Mgをさらに含む場合においては、In:Ga:Zn1−xMgの比が1:1:m(m<6)で0<x≦1であることが好ましい。なお、組成割合は、蛍光X線(XRF)装置によって測定したものである。
【0048】
一方、InGaZnO系のアモルファス酸化物については、InとGaとZnの広い組成範囲でアモルファス相を示す。この三元系でアモルファス相を安定して示す組成範囲としては、InGaZn(3x/2+3y/2+z)で比率x/yが0.4〜1.4の範囲であり、比率z/yが0.2〜12の範囲にあるように表すことができる。なお、ZnOに近い組成とInに近い組成で結晶質を示す。
【0049】
また、アモルファス酸化物が、InGa1−x酸化物(0≦x≦1)、InZn1−x酸化物(0.2≦x≦1)、InSn1−x酸化物(0.8≦x≦1)、In(Zn,Sn)1−x酸化物(0.15≦x≦1)から選ばれる何れかのアモルファス酸化物であってもよい。
【0050】
<薄膜デバイス>
次に、図1を用いて本実施形態のディスプレイユニット200について説明する。
【0051】
本実施形態の薄膜デバイス300は、ディスプレイユニット200に所定の画像を表示するための表示制御を行うデバイスであり、ディスプレイユニット200の表示領域において当該表示領域の水平方向に延在する走査線を駆動する走査線駆動回路及び/または当該表示領域の垂直方向に延在するデータ線を駆動するデータ線駆動回路などのディスプレイユニット200の表示制御を行うための周辺回路を形成するデバイスである。
【0052】
この薄膜デバイス300は、第1フレキシブル基板210と上記のように接合されるフレキシブル基板(以下、「第2フレキシブル基板」という。)310と、ディスプレイユニット200が接合されている面、すなわち、対向面上に形成される複数の薄膜トランジスタ(以下、「ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ」という。)320と、から形成される。
【0053】
例えば、この薄膜デバイス300は、第2フレキシブル基板310のディスプレイユニット200との対向面上に、ゲート電極321、ゲート絶縁膜322、半導体膜323、ソース電極324及びドレイン電極325で少なくとも構成された複数のディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320を有している。また、本実施形態の薄膜デバイス300は、第2フレキシブル基板310の対向面上に積層された平坦化層330と、当該平坦化層240上に画素駆動用薄膜トランジスタ320とともに積層されたゲート絶縁膜322及び層間絶縁膜340と、を有している。
【0054】
特に、本実施形態では、このディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320によってシフトレジスタやオペアンプなどのゲート駆動回路及び/またはソース駆動回路を用いた駆動用デバイス回路が形成されるようになっている。なお、薄膜デバイス300の電極E及びバンプBは、層間絶縁膜340上であって、ディスプレイユニット200との対向面に形成されている。
【0055】
第2フレキシブル基板310は、例えば、ステンレス(SUS)などの薄膜合金の可撓性を有する材料によって形成されている。また、第2フレキシブル基板310の第2面上にはディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320が積層されている。本実施形態の第2フレキシブル基板310においては、可撓性を有する材料によって形成されていれば、特に、材料については限定されないが、ステンレスなどの導電性基板であって耐熱性の高い材料(例えば、200℃以上の高温に対して耐熱性を有する材料)によって形成されていることが好ましい。このように導電性の高い基板によって第2フレキシブル基板310を生成すれば、p−SiTFTなど性能の高いディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320を形成することができる。
【0056】
ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320は、電界効果トランジスタであって、ディスプレイユニット200を駆動するための駆動回路の回路構成に合わせて形成されている。
【0057】
例えば、本実施形態においては、画素駆動用薄膜トランジスタ230に用いられたp−SiTFTまたは酸化物TFTなどのゲート駆動回路またはソース駆動回路を形成可能なキャリア移動度の高い各種のTFTがディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320として用いられる。
【0058】
なお、本実施形態の薄膜デバイス300は、各トランジスタを駆動する際に必要な消費電力を抑制し、かつ、動作速度をも高速化するために、N型及びP型のディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320を混在させたコンプリメンタリの回路として形成されていてもよい。
【0059】
<画素駆動用薄膜トランジスタ及びディスプレイ制御用薄膜トランジスタ>
次に、本実施形態のディスプレイ装置100において用いることが可能な薄膜トランジスタについて説明する。
【0060】
本実施形態のディスプレイ装置100においては、ディスプレイユニット200を形成するための画素駆動用薄膜トランジスタ230としては、キャリア移動度が小さいものから大きいものまで何れのものも用いることができる。例えば、上述のように、有機TFT、a−SiTFT、酸化物TFT及びp−SiTFTを、画素駆動用薄膜トランジスタ230として用いることができる。
【0061】
一方、本実施形態のディスプレイ装置100は、ディスプレイユニット200を駆動させるためには、薄膜デバイス300として、ゲート駆動回路及び/またはソース駆動回路を組み込む必要があるためキャリア移動度の高いTFTをディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320を用いる必要がある。
【0062】
例えば、QCIF(Quater Common Intermediate Format)の解像度144×176ドットの動画像形式の画像をディスプレイユニット200に表示するためには、表1に示すように、ゲート駆動回路としては、ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320の実動作周波数が、9kHz以上が必要となり、ソース駆動回路としては、ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320の実動作周波数が、並列度40において40kHz以上必要となる。
【0063】
【表1】

【0064】
したがって、表2に示すように、ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320としては、p−SiTFTまたは酸化物TFTを用いる必要がある。すなわち、p−SiTFTにおいては、実動作周波数が550kHzであるため、ゲート駆動回路またはソース駆動回路に用いることが可能である。また、酸化物TFTにおいては、実動作周波数が55kHzであるため、ゲート駆動回路またはソース駆動回路に用いることが可能である。
【0065】
この結果、表2示すように、画素駆動用薄膜トランジスタ230とディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320の組み合わせとしては、有機TFTとp−SiTFTの組み合わせ、有機TFTと酸化物TFTの組み合わせ、a−SiTFTとp−SiTFTの組み合わせ、a−SiTFTと酸化物TFTの組み合わせ、酸化物TFTと酸化物TFTの組み合わせ、酸化物TFTとp−TFTの組み合わせ、p−SiTFTと酸化物TFTの組み合わせ、p−SiTFTとp−SiTFTの組み合わせが実現可能となる。
【0066】
【表2】

【0067】
一方、p−SiTFTまたは酸化物TFTをディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320に用いた場合には、表2に示すように、遮断周波数がそれぞれ550kHzまたは5500kHzとなるので、薄膜デバイス300に組み込まれた駆動回路においては、高周波数まで取り扱うことが可能となる。ただし、表2における遮断周波数計算条件は、チャネルの長さL=10μm及び幅W=10μmであって、ゲート電極−ソース・ドレイン電極間の容量が1.3×10−14F及び電源電圧Vddが20Vである。
【0068】
なお、有機TFT及びa−SiTFTとも実動作周波数がゲート駆動回路及びソース駆動回路として動作に必要な周波数を下回るので、ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ320としては用いることができない。また、本実施形態においては、汎用性及びコストの面から、画素駆動用薄膜トランジスタ230としては、a−SiTFTまたは酸化物TFTを用いることが好ましい。
【0069】
<作用効果>
以上本実施形態のディスプレイ装置100は、フレキシブル基板上に形成されたディスプレイユニット200の表示制御を実行する薄膜デバイス300についてもフレキシブル基板上に形成することができるので、ディスプレイ装置100全体として可撓性を備えている。したがって、このディスプレイ装置100は、薄膜デバイス300におけるディスプレイユニット200に対しての配設場所を選ぶこと無く、デザイン上のフレキシブル性を向上させつつ、装置全体の撓みにおける耐性をも向上させることができる。
【0070】
また、このディスプレイ装置100は、ディスプレイユニット200と薄膜デバイス300がそれぞれ異なるフレキシブル基板上に形成されおり、何れか一方のユニットに対する製造不良について、他のユニットに影響を与えることが無いので、ディスプレイ装置100全体としての歩留まりを向上させることができる。
【0071】
通常、駆動回路において、当該駆動回路を構成する一つのトランジスタが製品不良となっている場合には、駆動回路全体が製品不良となる。したがって、本実施形態のようなディスプレイユニット200及び薄膜デバイス300が一つの基板に形成されている場合には、駆動回路用の薄膜トランジスタが一つでも製品不良となれば、ディスプレイユニット200が製品不良でなくてもディスプレイ装置100自体が製品不良となってしまう。したがって、本実施形態のディスプレイ装置100は、ディスプレイユニット200と薄膜デバイス300とを別の基板によって個々に作成することによって何れか一方のユニットに対する製造不良について、他のユニットに影響を与えることが無いので、ディスプレイ装置100全体としての歩留まりを向上させることができる。
【0072】
また、このディスプレイ装置100は、ゲート駆動回路及びソース駆動回路をも形成することができる駆動性能の良いトランジスタによって薄膜トランジスタを形成することができるので、ディスプレイユニット200の表示性能を向上させることができる。
【0073】
また、このディスプレイ装置100は、薄膜デバイス300にコンプリメンタリタイプのトランジスタを用いた場合には、薄膜デバイス300の消費電力を抑え、かつ、スイッチングなどの処理速度が向上させつつ、製造上の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0074】
B … バンプ
P … パッド
100 … ディスプレイ装置
200 … ディスプレイユニット
210 … フレキシブル基板
220 … 表示素子層
230 … 画素駆動用薄膜トランジスタ
300 … 薄膜デバイス
310 … 第2フレキシブル基板
320 … ディスプレイ制御用薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フレキシブル基板と、前記第1フレキシブル基板上に形成された複数の表示素子と、前記第1フレキシブル基板上に前記表示素子毎に設けられた表示素子用の薄膜トランジスタと、を有するディスプレイユニットと、
前記第1フレキシブル基板とは別の基板によって形成される第2フレキシブル基板と、前記第2フレキシブル基板上に形成されるとともに前記ディスプレイユニットの表示制御を行うディスプレイ制御用の薄膜トランジスタと、を有する駆動ユニットと、
を備え、
前記駆動ユニットと前記ディスプレイユニットとが接合されることによって一体的に形成されていることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスプレイ装置において、
前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタの少なくとも移動度が10cm/Vs以上である、ディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のディスプレイ装置において、
前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタの移動度が前記表示素子用薄膜トランジスタの移動度より大きい、ディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のディスプレイ装置において、
前記第2フレキシブル基板が、導電性の材料から形成されている、ディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のディスプレイ装置において、
前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタが、ゲート駆動回路またはソース駆動回路として動作可能な材料で形成されている、ディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のディスプレイ装置において、
前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタが、酸化物半導体またはポリシリコンによって形成されている、ディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のディスプレイ装置において、
前記ディスプレイ制御用の薄膜トランジスタが、前記表示素子用の薄膜トランジスタと異なる半導体材料から形成されている、ディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のディスプレイ装置において、
前記駆動ユニットが、N型及びP型の薄膜トランジスタが混在して形成されている、ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−185967(P2011−185967A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47790(P2010−47790)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】