説明

トナー供給ローラの製造方法

【課題】 ウレタン原料を発泡硬化させる際に使用する成形型を最適なものとし、脱型性及びセル開口性を両立させたトナー供給ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】 エチレングリコールの接触角が85°以上になる型内表面を有するローラ成形型を用いて成形する。型の離型層としては、少なくともフッ素化合物、ワックス及びシリコーンオイルを含む。またワックス成分が、融点40℃以上120℃未満である。ローラ表面のセル開口率が50〜90%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー供給ローラに関し、特には複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる潜像担持体上に形成した静電潜像を現像して、可視化するのに使用される現像装置に内蔵され、静電潜像が形成されている感光体の如き潜像担持体の表面において、目的とするトナー像を形成するために用いられる現像ローラへ、所定のトナー(現像剤)を供給すると共に現像ローラに現像残りで戻ってくるトナーを掻き取るトナー供給ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタに用いられるローラの中には低硬度乃至は柔軟性と表面セル開口とが要求されているものがある。それらの要求を満足するローラの製法としては、例えば、トナー供給ローラでは芯金外周にウレタンフォーム層を形成し、その形成したスポンジの外面を加工してローラ状に成型すると共に、ローラの表面に開口したセルが形成される。ウレタンフォームのローラ形状への加工、即ち外径加工は、研磨機等の機械加工や熱ニクロム線によるカット等の溶融切断加工により行われる。
【0003】
しかしながら、トナー供給ローラは、現像装置において、現像ローラに対してトナーを供給し、またその不要分を掻き取り、現像ローラ上に均一にトナーを供給する機能が求められているが、研磨による加工方法において得られる弾性ローラにおける表面の毛羽立ちは、トナー供給ローラとしてのトナー搬送量を不安定化し、画像不良の問題を引き起こす他、ローラ表面から毛羽が欠落した場合には、電子写真システムの他の部位に詰まる等の異物となり、画像不良や故障の原因となる。何れも従来の表面セルが開口したローラの製法にあっては、各種の問題点が内在しており、研磨や切削など製造工程が煩雑であり、さらに切断排除部分の廃棄分が多く、寸法精度が悪い等の問題がある。
【0004】
そこで、煩雑な工程を要することなく、良好な開口セルが形成されたローラを製造する方法として、成型品が最終形状となる型を用い、芯金とウレタンフォームとを一体成型するに際し、型内表面をフッ素樹脂コート処理し、さらに、その表面粗さ(Rzjis)を5〜20μmにすることによって、成型品表面でのスキン開口率をコントロールし、ローラ表面のセル開口率を20%以上とする方法が開示されている(例えば、特許文献1)。ここでは、フッ素樹脂をコートし、かつそのコート面粗さを所定とすることにより、セルの開口を行なっている。しかしながら、このようなフッ素樹脂をコーティングした円筒状の成型型を用いてローラを製造しても、フッ素樹脂がうまくコーティングされなかったり、フッ素樹脂の種類によってはセル開口が不均一となったりし、場合によっては全く開口しないこともある。しかも、この方法では型内面形成したフッ素樹脂層の表面にさらに粗し加工を施す必要があり、Rzjisが5μmよりも小さくなると開口部が充分な大きさに形成されにくくなり、20μmよりも大きくなるとウレタンフォーム層が破断するなどの脱型不具合が生じるなど、種々の問題があり好ましくない。
【0005】
また、ウレタンフォーム等の発泡成型品を製造するに際して、金型からの成型品の脱型を容易にするために、予め金型の内面への離型剤の塗布が一般に行われている(例えば、特許文献2)。トナー供給ローラの成型に用いるこれら離型剤は脱型性の他にセル開口性に優れている必要があるが、型との馴染みが悪く均一な塗布が困難な場合があり、部分的にスキン層が形成されたり脱型性が悪い部分のフォームがちぎれたりして寸法精度が悪化する場合があった。その上、本発明が目的とする表面にセル開口したウレタンフォーム製のトナー供給ローラへの適合性の観点からはまったく検討がなされていなかった。
【0006】
そこで、セル開口性及び脱型性が両立した成型型表面を得る方法として、水の接触角が90〜130°である成型表面を有する成型型により成型することにより、セル開口性が良好で脱型性の低下などもなく、効率よくローラを製造できる方法が提案されている(例えば、特許文献3)。しかし、ウレタン原料と水の相溶性は高くなく、成型型表面の水の接触角が高くても、脱型性及び/又はセル開口性が悪い成型表面も有り、脱型性及びセル開口性を規定する評価方法としては十分でなかった。
【0007】
また、ローラ表面にセルが開口したトナー供給ローラの製造において、成型キャビティを与える接触角の大きな成型型表面を用いた製造方法(例えば、特許文献4)が提案されているが、接触角測定に用いる試薬が規定されておらず、接触角測定は用いる試薬によって値は大きく異なるため、詳細な検討が不十分である。
【特許文献1】特開平9−274373号公報
【特許文献2】特許第2972824号公報
【特許文献3】特開2003−340849公報
【特許文献4】特開2004−17398公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術における問題点を解決するためであり、その目的とするところは、ウレタン原料を成型型内で発泡硬化させる際に使用する成型型を最適なものとし、脱型性及びセル開口性を両立させたトナー供給ローラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下により、その目的が達成される。
【0010】
即ち、本発明は、円筒成型型にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分として得られるウレタンフォーム材料を注入し、加熱硬化発泡し、脱型し、芯金と該芯金外周にウレタンフォーム層を形成してなるトナー供給ローラの製造方法において、該円筒成型型内表面が、エチレングリコールの接触角で85°以上である成型型により発泡成型して得られることを特徴とするトナー供給ローラの製造方法である。
【0011】
また、本発明は、円筒成型型内面が少なくともフッ素化合物とワックスとシリコーンオイルを有する離型剤塗布層を形成している上記のトナー供給ローラの製造方法である。
【0012】
さらに、本発明は、ワックス成分の融点が40℃以上120℃未満である上記のトナー供給ローラの製造方法である。
【0013】
さらにまた、本発明は、トナー供給ローラのセル開口率が50〜90%である上記のトナー供給ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、円筒形成型内面のスキンレス離型層を適正に評価形成し、これを用いることにより、煩雑な工程を要することなく、確実に脱型性及びセル開口性を両立させたトナー供給ローラの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明のトナー供給ローラの製造方法は、最終ローラ形状である成型キャビティを与える成型型の内面を、ウレタン原料の中のポリエーテルポリオールと類似構造を持つエチレングリコールを用いて測定したエチレングリコールの接触角が85°以上となるように加工し、ポリウレタン原料の発泡成型を行う製造方法である。
【0017】
エチレングリコールの接触角が85°以上である内面を有する成型型を用いることにより、該成型型の少なくとも成型キャビティ内面を構成する、そのウレタンとの非相溶作用ないし表面張力作用により、液状のポリウレタン原料の発泡成型にて生じるセルの型内面に最も近接する部分、換言すればスキン層の厚さが最も薄くなるセル中央部相当部位に、ポリウレタン原料の不存在部分が生じ、これによって、形成されるウレタンフォーム層表面のスキン層に開口部が生じ、この開口部を通じて、セルが外部に開口するようになる。
【0018】
成型型内面のエチレングリコールの接触角が85°よりも小さくなると、充分にウレタン非相溶作用ないし表面張力作用などによる効果が発揮できず、セル開口にムラが生じ、また充分な開口径となりにくい。また、エチレングリコールの接触角が85°よりも小さい型内面だと、ウレタンフォームの発泡時の接着性が強くなり、型内で発泡して得られるウレタンフォームを型から離型することが困難になり好ましくない。
【0019】
ポリウレタン原料であるポリエーテルポリオールとしては特に制限は無く、従来公知のポリエーテルポリオール類の中から適宜選択して使用することが可能であり、1種単独で又は2種以上を組み合せて用いても良い。
【0020】
なお、ポリエーテルポリオールを用いると、耐湿熱耐久性に優れた軟質高弾性ポリウレタン製造に好適である。更に、エチレンオキシドを5モル%以上含有するポリエーテルポリオールを使用すると、成型性が良く好ましい。また、予めポリイソシアネートと重合させたプレポリマーとして用いても差し支えない。
【0021】
本発明のトナー供給ローラの製造方法は、図1に示すような成型型を用いる他は特に限定されない。なお、ここで用いる成型型としては、従来公知の材質、形状の中から適宜選択して製造されたものを使用することができる。例えば、SUS304製で、ベントホール(型内にガスがたまり発泡体に欠肉を生じるのを未然に防止するため設けられた孔径約1mm程度の成型型内外に連通する小孔)を有し、必要により内面が凹凸形状に加工されたパイプ状のものが好ましい。
【0022】
図1は、本発明を実施するのに好適なトナー供給ローラ成型用の成型型の一例を模式的に表した図である。図において、1は成型型であり、該成型型1は、トナー供給ローラの芯金2を保持し、トナー供給ローラの弾性層用のウレタン原料を該成型型内の弾性層形成キャビティ3に供給するウレタン原料供給路4aを有する駒4及びウレタン原料が該キャビティ3内に供給され、発泡硬化された際にキャビティ3内の空気及びキャビティ3の容積より僅か大目に形成されるウレタンフォームの過剰分が溢れ出る排気路5aを有し、駒4と共に芯金2を保持する駒5、並びに該駒4、5とともに弾性層形成キャビティ3を形成するパイプ状の金型6よりなっている。
【0023】
本発明では、成型型1、特に金型6の内表面に、例えばフッ素樹脂コーティング剤あるいは離型剤を塗布することにより、エチレングリコールの接触角が85°以上である離型層を形成する。フッ素樹脂コーティングの場合、粗面化加工を施すことにより、セル開口性、離型性の効果を得ることができるが、加工工数がかかり、また、粗さを均一に施すことが困難である。また、フッ素樹脂コートは柔らかく、清掃等で表面が傷つくと離型性、セル開口性が低下し、成型型内表面を再度フッ素樹脂コーティング剤などでコートしなければならず、煩雑な工程を要することから好ましくない。離型剤を使用する場合、複雑な加工を用いず、容易に該離型層を得ることができるので好ましい。
【0024】
そして、該離型剤には少なくともフッ素化合物、ワックス及びシリコーンオイルを含有させることが好ましく、フッ素化合物、シリコーンオイルは公知の物で良く、混合して使用することができる。
【0025】
該ワックスは、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ワックス、天然ワックス、流動パラフィンなどのワックス成分が挙げられ、一種類以上のワックス成分を有することが好ましく、ワックスを含有しないフッ素化合物及び/又はシリコーンオイル単独の離型剤の場合、脱型性の効果はあるが、粘度が低く、流動性が良いため、発泡成型中のウレタン原料に入り込み異常発泡を起こす問題がある。また、脱型時に成型物と一緒に剥れ出るおそれがあり、成型物であるトナー供給ローラ表面に多量のフッ素化合物及び/又はシリコーンオイルが付着し、これらがトナー供給ローラと接触する現像ローラやトナーを汚染するので好ましくない。
【0026】
ワックスの融点は40〜120℃であることが好ましい。発泡成型時の成型型温度を120℃以下にするとウレタンのガス化が急激に起こらず発泡コントロールが容易となり、ボイド、エア溜まり等発生しにくく本発明には好適である。また、40℃以上であると短時間で効果的にポリウレタンの発泡成型を行うことができる。
【0027】
特に、ワックスの融点がウレタンフォームで成型型内が充填された時(発泡成型時)の成型型温度以上であることが好ましい。ワックスの融点が、成型型温度以下であるとワックスが成型時に溶解し、ウレタン原料中に溶解したワックスが入り込み、異常発泡を起こし、ウレタンフォーム表面が荒れ、均一なセルを得ることができない。
【0028】
トナー供給ローラは円柱状の芯金と、芯金の両端部を除いて芯金の周りに設けられたウレタンフォーム層を備える。また、必要に応じてウレタンフォーム層はその表面に内部から連通したセル開口部を備えたスキン層を有しても良い。この場合、セル開口率は50〜90%であることが好ましい。前記セル開口率とは、全表面積に対する開口した部分(セル)の割合である。セル開口率が50%以下の場合、トナー搬送量が不安定化し、トナーを均一に供給することができないため好ましくない。また、トナー供給ローラのセル開口率を90%以上とすることは、製造手法上では容易なことではない。
【0029】
(フッ素系化合物)
本発明で使用する離型剤成分としてのフッ素系化合物は特に制限は無く、従来公知の各種フッ素系化合物の中から、適宜選択して使用することができる。例えばフッ素処理された低分子量ポリオレフィン、オレフィンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、低分子量オレフィンとポリテトラフルオロエチレンとの溶融混合物、パーフルオロアルケニルアリールエーテルのスルホン酸塩及びホスホン酸誘導体、フッ素スルホン酸塩及びホスホン酸塩、フッ素を含有する縮合多環化合物(例えばフッ素化ピッチ)、これらの1種を又は2種以上を組み合せて用いても良い。
【0030】
フッ素化合物の離型剤中への配合量は、成型品の原料樹脂の種類、成型温度、成型品の表面状態および離型成分の種類等に応じて適宜選定すればよく、特に限定的ではないが、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましい。
【0031】
(シリコーンオイル)
本発明で用いる離型剤成分としてのシリコーンオイルも特に制限は無く、従来公知の各種シリコーンオイルの中から、適宜選択して使用することができる。シリコーンオイルとして側鎖にアルキル基、フェニル基またはフルオロアルキル基を有するポリシロキサン等が例示され、これらのシリコーンオイルも所望により、二種以上適宜併用してもよい。また、これらのシリコーンオイルは添加剤、例えば、シリコーン樹脂等を含有していてもよい。
【0032】
離型剤中のシリコーンオイルの配合量は0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。これらの範囲内にあることによって、ポリウレタンの良好な発泡成型を行うことができると共に十分な脱型性を有することができる。なお、シリコーンオイルは粘度1〜100000Pa・sであるものが好ましく、10〜10000Pa・sであるものがより好ましい。粘度がこれらの範囲内にあることによって、より効果的に成型型への離型剤の塗布性を向上させることができる。
【0033】
(界面活性剤)
本発明にいう離型剤の成分を水に溶解、分散あるいは乳化分散せしめる界面活性剤は特に制限は無く、従来公知の各種界面活性剤の中から、適宜選択して使用することができる。例えば一般的な乳化剤、分散剤、これらの1種を又は2種以上を組み合せて用いても良い。
【0034】
乳化剤は非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましい。これらの乳化剤を使用することによって、より安定して離型剤の成分を水中に溶解、分散等させることができる。この非イオン性乳化剤としてはポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノアルキレート、ソルビタントリアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタントリアルキレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラアルキレート、グリセローラモノアルキレートなどが例示され、これらは単独で、または二種以上の併用で用いることができる。また、これらの一般的な非イオン性乳化剤のほかにフッ素系乳化剤あるいはシリコーン系非イオン系乳化剤も使用することができるが、この非イオン性乳化剤はHLBが1.5〜20の範囲のものが好ましく、7.0〜15.0の範囲のものとすることがより好ましい。
【0035】
また、イオン性乳化剤として、アニオン性、カチオン性及び両イオン性のものがあり、アニオン性乳化剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム等が、また、カチオン性乳化剤として、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルアミン塩酸塩、ココナットアミン塩酸塩、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド等が示される。
【0036】
さらに、両イオン性乳化剤として、N−アシルアミドプロピル−N、N−ジメチルアンモニオベタイン類、N−アシルアミドプロピル−N、N’−ジメチル−N’−β−ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン類等が例示される。
【0037】
なお、乳化剤はこれらの非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤のいずれか、又はこれらの混合物とすればよい。離型剤中の乳化剤の含量は0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。これらの配合量は離型剤中に0.5質量%以上のとき乳化分散が容易で剥離性能が低下しない。配合量が30質量%以下であると乳化組成物の粘度が高くならずに作業性が損なわれない。
【0038】
(乳化分散助剤)
本発明による離型剤における上記離型成分の乳化分散助剤としては、乾燥性がよい低沸点の水性の極性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン等を適宜使用することができる。
【0039】
(その他の離型剤への添加成分)
本発明の離型剤にはワックスのレベリング性向上のために適当な有機溶剤、例えばシクロヘキサン等を適宜配合してもよく、また、前記の成分以外に必要に応じて、酸化防止剤、アルコール、石油系溶剤、防錆剤、防腐剤、消泡剤、増粘剤等の他の添加剤を適宜添加することができる。
【0040】
(離型剤の製造方法及び塗布方法)
本発明にいう離型剤組成物を調製する場合、その各成分の配合、エマルジョン化の手順は従来公知の方法で行うことができる。ワックスは乳化前に混合してもよく、別々に乳化した後混合してもよい。すなわち、乳化剤と水の混合物を90〜95℃に加熱して石けん液を作製する。別の容器にワックス、酸化防止剤及び溶剤その他添加剤を入れて加熱してワックスを溶解する。この溶液を前記石けん液中に攪拌下で添加して、予備乳化液を調製する。次いで、ホモジナイザー処理を行い、室温まで急冷して離型剤組成物を得ることができる。予備乳化することで使用することが可能となるものである。
【0041】
上記したようにして得た離型剤を成型型内面に塗布するには通常公知の方法を用いれば良く、例えば離型剤液を浸漬、吹付、刷毛塗り等により、あるいはエアゾール化して噴射したり、布に浸み込ませて塗り付けたりすることにより、成型型内面に塗布して、媒体を蒸発除去すればよい。
【0042】
本発明のトナー供給ローラは、ウレタンフォームからなる弾性体層を有するトナー供給ローラであり、前記ウレタンフォームが、少なくともポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン原料から形成されたものである。
【0043】
(ポリイソシアネート)
本発明で使用するポリイソシアネートとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用する。例えば、2、4−及び2、6−トルエンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は二種以上を組み合せて用いても良い。なお、前記ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種又は2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することもできる。
【0044】
ポリウレタン原料のNCOインデックスは60〜120であることが好ましく、70〜100であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除したものに100を乗じた値である。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0045】
(その他のポリウレタンフォーム用原料)
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することができる。例えば、ジラウリルスズジアセテート、ナフテン酸鉛等の金属系触媒、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等のアミン系触媒を挙げることができる。
【0046】
整泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することができる。例えばシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニング社製のSRX−274C、日本ユニカー社製のL−5309、L−520等が使用できる(いずれも商品名)。
【0047】
また、これらポリエーテルポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるウレタン原料には更に、従来と同様に架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、破泡剤等が、目標とする発泡成型後のウレタンフォーム層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い公知の配合となるように添加されて、反応性の発泡原料とされる。また、必要に応じて所望の導電性を付与するための導電性付与剤や帯電防止剤等も、従来と同様に公知のものが添加せしめられる。
【0048】
導電付与剤としては公知の物を使用することができ、例えば、カーボンブラック、グラフアイト等の導電性カーボン、酸化チタン、酸化錫等の導電性の金属酸化物、Cu、Ag等の金属、非導電性の粒子の表面にこれら導電性材料を被覆して導電化した粒子などが挙げられる。これらの導電付与剤は単独で、あるいは複数種を組み合わせて用いることができる。特に、カーボンブラックは、比較的少量(質量比)の添加によって、所望の導電性を付与できる点で好ましい。
【0049】
その他添加剤として、難燃剤、減粘剤、顔料、安定剤、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸化防止剤等も必要に応じて配合することができる。架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の従来公知のものが挙げられる。
【0050】
そして、混合操作の容易性や得られるウレタンフォームの特性の見地から、前記ポリイソシアネート、ポリエーテルポリオール、整泡剤の好適な組み合わせは、ポリイソシアネートとしてMDIとTDIを混合したもの、ポリエーテルポリオールとしてポリエーテルポリエーテルポリオール、及び整泡剤として水溶性ポリエーテルシロキサンを用いた組み合せである。
【0051】
(トナー供給ローラの製造方法)
本発明のトナー供給ローラの製造方法は、内面がエチレングリコールの接触角が85°である、例えば図1に示すような成型型を用い、該成型型に予め芯金をセットしておくこと以外特に限定されず、常法によれば良い。その一例を示せば次の通りである。上記ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び所望により用いる整泡剤、水、その他助剤などを均質に混合してウレタン原料を調製した後、これを型に注入し、加熱して発泡硬化させることによりウレタンフォームを形成することができる。
【0052】
前記ウレタン原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0053】
また、加熱しての発泡硬化についても、従来公知の方法でよい。発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法など、いずれの方法をも用いることができる。この発泡硬化時の成型型の温度は35〜100℃にすることが好ましく、40〜80℃にすることがより好ましい。なお、発泡倍率は、ウレタン原料、所望とするウレタンフォームの硬度等に基づき適宜定めればよく、特に制限はない。
【0054】
なお、芯金として、通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼などからなる例えば直径が4〜6mm、長さが200〜400mmの円柱状のものが用いられる。用途によっては、導電性や半導電性、あるいは絶縁性の塗料により、その外側を塗装してもよい。
【0055】
本発明のトナー供給ローラの外径は特に限定されず、その目的によりさまざまな外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径とする。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
本実施例で使用する成型型の内面塗布に用いた成分として下記のものを用いた。
1)F−476:ワックス系離型剤(中京油脂(株)製、融点92〜100℃)
2)URH−511:ワックス系離型剤(コニシ(株)製、融点85〜126℃)
3)フッ素化合物:弗素スルホン酸ナトリウム
4)ワックスA:キシダ化学(株)製パラフィン(融点60〜62℃)
5)ワックスB:三井化学(株)製ポリエチレンワックス(融点108〜111℃)
6)シリコーンA:東レダウコーニングシリコーン(株)製シリコーンオイル(粘度5000mm2/s)
7)シリコーンB:東レダウコーニングシリコーン(株)製シリコーンオイル(粘度500mm2/s)
【0058】
実施例1〜4、比較例1〜4
鏡面とした内面に表1に示す組成の離型剤を塗布した、図1に示す内径12mmのSUS製のパイプ状の成型型を用意した。そのときの成型型内面のエチレングリコールの接触角は、成型型に用いたと同じSUS材で同じ表面加工して作成した5cm角のテストピースにて、23℃で接触角測定装置(協和界面科学(株)製CA−DT型)にて測定したものを用いた。
【0059】
上記で準備した成型型に、接着剤を塗布した径6mmのSUS製の芯金をセットし、インジェクション装置にて下記組成のウレタン原料を25℃で注入し、60℃、5分間発泡硬化した。次いで、成型型を冷ましてからウレタンフォーム層を有するローラを取り出し、注入路及び排気路のウレタン滓を取り除いて、トナー供給ローラを得た。
【0060】
ウレタン原料:
・ポリエーテルポリオール(商品名:FA−718、三洋化成工業(株)製ポリエーテルポリエーテルポリオール、OH価=28) 100質量部
・ポリイソシアネート(商品名:コロネート1021、日本ポリウレタン(株)製、NCO%=44.5) 25.7質量部
・三級アミン触媒(商品名:ToyoCat−ET、東ソー(株)製) 0.3質量部
・三級アミン触媒(商品名:TEDA−L33、東ソー(株)製) 0.5質量部
・シリコーン系整泡剤(商品名:L5366、日本ユニカー(株)製) 0.3質量部
・発泡剤(水) 2質量部
ポリイソシアネートを除く原料を混合したものとポリイソシアネートを、インジェクション装置のそれぞれの原料槽にセットし、成型型へ注入する直前に所定量を予備槽にて混合した後、予備槽内のプランジャーを操作して、成型型へウレタン原料を注入した。
【0061】
得られたトナー供給ローラについて、ウレタンフォーム表面のセル開口性、成型型からのウレタンフォーム層を有するローラを取り出す際の容易さ(脱型性)および電子写真装置にトナー供給ローラとして使用したときに得られる画像の良否(画像評価)について評価した。結果を表1に示す。
【0062】
セル開口性:
リアルタイム走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック(株)製、1LM21DW−1)を用いて表面の画像を取り込み、画像解析により2値化処理を行い、下記によりセル開口面積率[%]を求め、下記基準でセル開口性を評価した。
セル開口面積率[%]=セル開口面積/画像範囲×100
「○」セル開口面積率がスキン層表面の50%以上を占め、ムラ無く均一にセルが開口しているもの
「×」セル開口径が10〜1000μmの範囲外及び/又はセル開口面積率がスキン層表面の50%未満のもの
【0063】
脱型性:
同じ成型型を繰り返し用い、成型を行って、成型型から成型後のローラが容易に取り出せる回数、すなわち軽剥離性を保持している回数から脱型性を下記基準で評価した。
「○」成型を10回以上繰り返し使用しても軽剥離性が持続する
「△」軽剥離性の持続が成型回数5回以上10回未満である
「×」成型回数5回以下で剥離が重くなる又は成型初期から脱型できない
【0064】
画像評価:
得られたトナー供給ローラを、フルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製LBP−2510)のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナーカートリッジに組み込み、連続耐久試験用のテキストページを連続4000枚出力した。出力終了後1晩以上放置してから各色ベタ画像を作像して下記基準で評価した。
「○」欠陥(色抜け、濃度むら等)が認められず、良好
「×」欠陥(色抜け、濃度むら等)の発生が一色にでも確認され、不良
なお、「色抜け」とはイメージのあるところにトナーが供給されていないものをいい、また、「濃度むら」とはベタ画像が不均一になることをいう。
【0065】
【表1】

【0066】
本発明に従う実施例1〜4はエチレングリコールの接触角が85°以上であるため、トナー供給ローラにあっては、何れも、均一にセルが開口し、脱型性も良好で、実用可能な画像が得られた。また、表面セル径のローラ内バラツキも改善され、濃度ムラが抑えられ、良好であった。なお、表1に見られるように、セルの開口性はエチレングリコールの接触角に対して、すなわち85°以上の時に良好であり、水の接触角によっていない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のトナー供給ローラを製造するのに適した成型型の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0068】
1 トナー供給ローラ成型型
2 芯金
3 弾性層成型キャビティ
4 駒(ウレタン原料供給側)
4a ウレタン原料注入路
5 駒(排気側)
5a 排気路
6 パイプ状金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒成型型内にポリエーテルポリオールとポリイソシアネートを主成分とするウレタンフォーム材料を注入し、加熱硬化発泡して、芯金外周にウレタンフォーム層を形成してなるトナー供給ローラの製造方法において、
内表面性状がエチレングリコールの接触角85°以上である円筒成型型を用いることを特徴とするトナー供給ローラの製造方法。
【請求項2】
円筒成型型内表面に、少なくともフッ素化合物、ワックス及びシリコーンオイルを含む離型層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトナー供給ローラの製造方法。
【請求項3】
ワックス成分が、融点40℃以上120℃未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー供給ローラの製造方法。
【請求項4】
ローラ表面のセル開口率が50〜90%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー供給ローラの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−187940(P2006−187940A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1352(P2005−1352)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】