説明

トナー供給ローラー及びその製造方法

【課題】ポリウレタン材料の反応性を低下させることなくポリウレタンフォーム層を得ることができ、ポリウレタンフォーム層に残留する触媒による汚染を抑制し、良好な画像得ることができる。しかも、表面に適切な開口セルを有し、現像ローラーとの間で、現像残トナーの掻き取りや、トナー供給を適切に行い、現像ローラー上に均一なトナー薄膜を形成し、良好な画像を得ることができるトナー供給ローラーを提供する。
【解決手段】芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて形成されるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラーにおいて、ポリオール及びポリイソシアネートが、全体で3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の現像装置に備えられるトナー供給ローラーや、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置には、感光体や静電記録誘電体等の潜像担持体に形成した静電潜像の現像を行う現像装置が備えられている。現像装置には、トナー(現像剤)を収納する現像剤容器と、この現像剤容器の開口を閉塞するように、その一部を現像剤容器から露出して設けられる現像ローラーと、現像ローラーに当接して、その上に一定厚さのトナー薄膜を形成する現像ブレードとが備えられる。トナーは現像ローラーの回転に伴い現像ブレード間を通過する際、摩擦帯電され、現像ローラーが現像剤容器から露出した部分で対向する潜像担持体に搬送され、より高電位の静電潜像へ移動し、現像を行うようになっている。
【0003】
このような現像装置には、現像剤容器内において、現像ローラー表面に静電潜像の現像に使用されずに残留するトナーを掻き取り、現像剤容器内の新たなトナーを現像ローラー上に供給するトナー供給ローラーが設けられる。尚、現像ローラーから掻き取られた現像残トナーは、現像剤容器内のトナーと混合され、その帯電が希釈され消失される。
【0004】
この種のトナー供給ローラーには、現像ローラーとの間で、現像残トナーを除去し新たなトナーの供給を滞りなく行うため、低硬度若しくは柔軟性を有し、多量のトナーを搬送することができる搬送性が要求される。このため、トナー供給ローラーの表面には、柔軟で開口を有するものとして、ポリウレタンフォーム等の発泡弾性体等で形成されたポリウレタンフォーム層が設けられている。例えば、現像剤担持体へのトナー供給及び掻き取りを均一にしたポリウレタンフォーム(特許文献1)、安定した微細セルを有する導電性ポリウレタンフォーム部材(特許文献2)、安定した電気抵抗を有する半導電性帯電部材(特許文献3)等が報告されている。
【0005】
このようなポリウレタンフォームからなる表面層を有するトナー供給ローラーは、例えば次のような方法で製造される。まず、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、整泡剤、触媒を混合攪拌し、トナー供給ローラー用成形型内に注入する。これを型内で発泡させ、ついで成形物を脱型することによりトナー供給ローラーを製造することができる(特許文献4)。
【0006】
このようなポリウレタンフォーム層の製造に際し、ポリウレタン材料の重合、硬化に用いる触媒としては、アミン系触媒や、有機金属系触媒が使用されている。具体的には、アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンを挙げることができる。有機金属系触媒としては、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−N−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンを挙げることができる。これら触媒の中で、アミン系触媒は、水との相性がよく、有機金属系触媒に比べて毒性やプレミックス時のライフタイムが長いという長所がある。その反面、使用量が多くポリウレタンフォーム層中に残存するアミン系触媒が、徐々に析出してトナー供給ローラーと接触する現像ローラー等の部品やトナーを汚染する等、画像の悪化の要因となる場合がある。
【特許文献1】特開2004−037630号公報
【特許文献2】特開2002−363237号公報
【特許文献3】特開2001−9958号公報
【特許文献4】特開平09−274373号公報(第8−9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、触媒の使用量を減量又は使用しない場合でも、ポリウレタン材料の反応性を低下させることなくポリウレタンフォーム層を得ることができ、ポリウレタンフォーム層に残留する触媒による汚染を抑制し、良好な画像得ることができる。しかも、表面に適切な開口セルを有し、現像ローラーとの間で、現像残トナーの掻き取りや、トナー供給を適切に行い、現像ローラー上に均一なトナー薄膜を形成し、良好な画像を得ることができるトナー供給ローラーを提供することにある。
【0008】
また、本発明は、現像ローラーとの間で、現像残トナーの掻き取りや、トナー供給を適切に行うことができる開口セルを表面に形成することができ、しかも、効率よく製造することができるトナー供給ローラーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリウレタンフォーム層を形成する際、アミノ基を有するポリオールや、アミノ基を有するポリイソシアネートや、又はこれらをプレポリマーにした後にアミノ基を導入したプレポリマーを含有したポリウレタン材料を用いることを試みた。これらのアミノ基がこれらのモノマーを重合硬化させ得る触媒機能を有することの知見を得た。これにより触媒を使用せず、若しくはその使用量を低減させることができ、しかも、触媒を使用しなくても重合反応性の低下を抑制し、開口率が適切な表面を有するポリウレタンフォーム層を効率よく成形することができることの知見を得た。これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて形成されるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラーにおいて、ポリオール及びポリイソシアネートが、全体で3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有することを特徴とするトナー供給ローラーに関する。
【0011】
また、本発明は、芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて形成されるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラーにおいて、ポリオールが、3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有することを特徴とするトナー供給ローラーに関する。
【0012】
また、本発明は、トナー供給ローラーの製造方法であって、クリームタイムが6秒以上20秒以下のポリウレタン材料を用いてポリウレタンフォーム層を成形することを特徴とするトナー供給ローラーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトナー供給ローラーは、触媒の使用量を減量し又は使用せずにポリウレタン材料の反応性や物性を低下させることなくポリウレタンフォーム層を得ることができ、ポリウレタンフォーム層に残留する触媒による汚染を抑制し、良好な画像得ることができる。しかも、表面に適切な開口セルを有し、現像ローラーとの間で、現像残トナーの掻き取りや、トナー供給を適切に行い、現像ローラー上に均一なトナー薄膜を形成し、良好な画像を得ることができる。
【0014】
また、本発明のトナー供給ローラーの製造方法は、現像ローラーとの間で、現像残トナーの掻き取りや、トナー供給を適切に行うことができる開口セルを表面に形成することができ、しかも、効率よくトナー供給ローラーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のトナー供給ローラーは、芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて成形されるポリウレタンフォーム層を有する。
【0016】
本発明のトナー供給ローラーの表面を構成するポリウレタンフォーム層は、低硬度で、トナーを現像ローラー等の現像剤担持体に供給すると共に、現像ローラー上に残留する現像残トナーを掻き取る機能を有する。
【0017】
[ポリウレタン材料]
上記ポリウレタン材料に含まれるポリオール及びポリイソシアネートが、全体で3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有する。ポリオール及びポリイソシアネートの全体のアミン価は、5mgKOH/g以上14mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリウレタン材料に含まれるポリオール及びポリイソシアネートのアミン価が3gKOH/g以上であれば、アミノ基が触媒として十分に機能することができる。ポリオール及びポリイソシアネートの全体のアミン価が15mgKOH/g以下であれば、重合反応の進行を制御することができ、セルの開口率を制御することができる。また、アミン価が15mgKOH/g以上のポリオールを製造するのは容易ではない。
【0018】
上記アミン価は、ポリウレタン材料に含まれるポリオール成分において有することが好ましい。上記アミン価を有するのがポリオールであれば、アミノ触媒としての機能をより顕著に発揮することができる。
【0019】
このようなアミン価を有するポリオールやポリイソシアネートとするためには、ポリオールやポリイソシアネートにアミノ基を導入する。導入するアミンとしては、1級アミン、2級アミンいずれであってもよい。かかるアミノ基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等を挙げることができる。これらのアミノ基は、総てのポリオールに導入されていなくてもよく、一部のポリオールに導入されていてもよい。
【0020】
上記アミノ基が導入されるポリオールとしては、具体的には、以下のものを挙げることができる。ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキシレンアジペート、エチレンアジペートとブチレンアジペートとの共重合体、ダイマー酸系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール。ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオールや、ポリオキシアルキレングリコール等のポリエーテルポリオール。これらポリオールのうち、ポリエーテルポリオールは耐湿熱耐久性に優れたポリウレタンフォーム層を得るのに好適である。更に、エチレンオキサイド(EO)を末端に5モル%以上グラフトさせたポリエーテルポリオールは、反応性に優れるので好ましい。また、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン等)を重合させて変性したポリマーポリオール(三井武田ケミカル社製)等の市販品を適用することもできる。このポリマーポリオールを一部として使用することによりポリウレタンフォームの湿熱耐久性を低下させることなく、通気性の向上等を図ることができる。
【0021】
これらのポリオールは、数平均分子量が1000以上7500以下であることが好ましく、より好ましくは3000以上7500以下である。ポリオールの数平均分子量が1000以上であれば、充分な架橋密度が得られ、得られるポリウレタンフォーム層の強度、弾力性等の物性が低下するのを抑制することができる。また、数平均分子量が7500以下であれば、充分に低硬度のポリウレタンフォーム層を得ることができる。
【0022】
上記アミン価を有するポリオールは、アミン価が0.1mgKOH/g以下のポリオールを含むことが好ましい。ポリオールがこのような0.1mgKOH/g以下のアミン価を有するポリオールを含有することにより、官能基数や分子量制御を容易に行うことができ、各物性の調整が容易となり、所望の物性を有するポリウレタンフォーム層を得ることができる。アミン価が0.1mgKOH/g以下のポリオールとしては、具体的には、上記ポリオールとして例示したものと同様のポリオールであって、置換基としてアミノ基を有しないもの又はアミノ基の含有量が少ないものを例示することができる。また、アミン価が0.1mgKOH/g以下のポリオールの分子量も、上記と同様の分子量の範囲を好ましい範囲として挙げることができる。
【0023】
アミン価が0.1mgKOH/g以下のポリオールの含有割合としてはポリオール全体に対し、5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。アミン価が0.1mgKOH/g以下のポリオールの含有割合が5質量%以上であれば、充分に低硬度のポリウレタフォーム層を得ることができ、60質量%以下であれば、ポリウレタン材料の重合反応性の低下を抑制することができる。
【0024】
ここで、アミン価は、ポリオール1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表される。
【0025】
アミン価は以下の測定方法による測定値を採用することができる。具体的には、希釈液にエタノール:トルエン=1:4の混合溶媒を用い、滴定液に0.1M塩酸/エタノール溶液を用い、電位差滴定装置(AT−510:京都電子工業社製)を用いて測定した測定値とすることができる。
【0026】
上記ポリオールは、予めポリイソシアネートと反応させたプレポリマーとして用いることもできる。
【0027】
上記ポリウレタン材料に用いるポリイソシアネートは、上記ポリオールと共に全体で3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有するものである。ポリオールが3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有する場合は、ポリイソシアネートはアミノ基を有しない、即ちアミン価が0のものであってもよい。ポリイソシアネートとしては、各種ポリイソシアネートを使用することができ、具体的には、以下のものを挙げることができる。ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ポリイソシアネート。ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート及びその誘導体。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
ポリイソシアネートの数平均分子量としては、174以上7500以下であることが好ましい。数平均分子量が7500以下であれば、ポリイソシアネートが高粘度になり取扱いが困難になるのを抑制することができる。
【0029】
ポリウレタン材料中のポリオールとポリイソシアネートの含有量は、ポリオールが、イソシアネートインデックスとして、60%以上130%以下、好ましくは70%以上115%以下の範囲となる含有割合とすることが好ましい。
【0030】
イソシアネートインデックスは、イソシアネートとの反応において、反応に与る活性水素基に対するNCO基の当量比(NCO基当量/活性水素基当量)×100で表されるものである。
【0031】
ポリウレタン材料は、上記物質の機能を阻害しない範囲で、添加物を含有していてもよい。添加物としては、触媒、発泡剤、整泡剤や、その他、架橋剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、酸化防止剤、導電性付与剤等を必要により使用することができる。
【0032】
触媒としては、アミン系化合物、有機金属系化合物等使用可能であり、具体的には、以下のものを挙げることができる。トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール。これらは1種又は組み合わせて使用することができる。これらの触媒は、ポリウレタンフォーム層における残留量が少ないことが、画像形成に使用されるに伴い、ポリウレタンフォーム層から析出するのを抑制できることから好ましい。触媒の使用量としては、ポリウレタン材料中0.4質量%以下であることが好ましい。触媒の含有量が0.4質量%以下であれば、ポリウレタンフォーム層からの析出を抑制し、汚染による不良画像の発生を抑制することができる。
【0033】
上記発泡剤としては、水、クロロフルオロカーボン類(HFC−134A等)、炭化水素(シクロペンタン等)、炭酸ガス等を使用することができ、これらを組み合わせて使用してもよい。これらのうち、水は、ポリイソシアネートと反応してポリウレアを形成すると共に二酸化炭酸を発生し、この二酸化炭酸が発泡剤となる良質な発泡剤であり、取り扱いが容易であるため、好適である。発泡剤としての水の使用量は、ポリオール100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0034】
上記整泡剤は、発泡セルの安定化のために使用され、例えば、以下のものを使用することができる。ポリジメチルシロキサンとEO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体からの水溶性ポリエーテルシロキサン、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体との混合物。これらの中で、ポリジメチルシロキサンとEO/PO共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサンが好適である。整泡剤の使用量はポリオール100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が適当である。整泡剤の使用量が、全ポリオール100質量部に対して、0.01質量部以上であれば、均一な発泡セルが形成され易く、5質量部以下であれば、ポリウレタンフォーム層からの滲出を抑制することができる。
【0035】
[ポリウレタンフォーム層]
上記ポリウレタンフォーム層は上記ポリウレタン材料を用いて形成され、表面の開口率が50%以上90%以下であることが好ましい。ポリウレタンフォーム層が有するセルは、表面の開口率が上記の範囲であればよく、セル同士が相互に連通したものであっても、各セルが独立したものであってもよい。セルの開口率は、ポリウレタンフォーム層の表面を平滑面と仮定したときの平滑面の面積に対し、その平滑面に存在する開口部分の面積の割合である。開口率が50%以上であれば、トナーの搬送量を一定にして搬送することができ、現像ローラーへ一定量のトナーを安定して供給することができ、90%以下であれば、そのようなポリウレタンフォーム層を容易に製造することができる。
【0036】
上記ポリウレタンフォーム層にセルの開口率を上記範囲に形成する方法としては、上記の範囲内でポリオール及びポリイソシアネートのアミン価を調整する方法、発泡剤や整泡剤の使用量や発泡程度を調整する方法等を挙げることができる。
【0037】
ここで開口率は、リアルタイム走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック(株)製、1LM21DW−1)を用いて表面の画像を取り込み、画像解析により2値化処理を行い、下記式により求められるセル開口率[%]とすることができる。
【0038】
セル開口率[%]=セル開口面積/画像範囲×100
上記ポリウレタンフォーム層の密度は、0.05g/cm3以上0.3g/cm3以下であることが好ましい。このような密度のポリウレタンフォーム層を作製するには、使用する発泡剤や整泡剤量を調整し、物理的発泡を使用する場合はその程度を調整すればよい。
【0039】
上記ポリウレタンフォーム層の硬度として、例えば、50g/mm以上350g/mm以下を挙げることができる。このような硬度を有することにより、現像ローラー間において、トナーの授受を良好に行うことができる。
【0040】
ポリウレタンフォーム層の硬度は、以下の測定方法による測定値を採用することができる。図1(a)及び(b)に示すように、トナー供給ローラー1を、その両端の芯金2において支持する。ポリウレタンフォーム層3を、長さ50mm(ローラー長手方向)×幅10mm(厚さ:10mm)の板状押圧面を有する治具4にて、10mm/minの速度で押圧したときの、1mm変位(圧縮)時の荷重(g)を測定する。測定ポイントを、図示のように、軸方向に3ヶ所、各軸方向に於いて周方向の90度毎に4ヶ所、計12ヶ所とし、その平均値を硬度とする。その数値が大きくなるほど、ポリウレタンフォーム層3が硬いことを示している。
【0041】
上記ポリウレタンフォームの厚さとしては、例えば、3mm以上20mm以下を挙げることができる。このような厚さを有することにより、優れたトナーの搬送性を有するものとできる。
【0042】
[トナー供給ローラー]
本発明のトナー供給ローラーは、芯金と、その外周に上記ポリウレタンフォーム層を有するものであればよい。芯金は、その外周に設けられるポリウレタンフォーム層を支持可能な強度を有するものであればよく、その材質としては、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、樹脂を挙げることができる。金属製の場合は、防錆処理をしたものであってもよい。形状としては、円筒状、円柱状等を挙げることができ、例えば、外径として4mm以上10mm以下を挙げることができる。
【0043】
更に、これらの他、ポリウレタンフォーム層の外周に上記開口率を有するスキン層や、各種機能をトナー供給ローラーに付与することができる機能層をポリウレタンフォーム層の下層に設けることもできる。
【0044】
[トナー供給ローラーの製造方法]
上記ポリウレタンフォームの製造方法は、上記トナー供給ローラーの製造方法であって、クリームタイムが6秒以上20秒以下のポリウレタン材料を用いてポリウレタンフォーム層を成形することを特徴とする。
【0045】
本発明のトナー供給ローラーの製造方法として、ポリウレタンフォーム層を成形するには、クリームタイムが6秒以上20秒以下のポリウレタン材料を用いる。上記クリ−ムタイムは、ポリウレタン材料の反応速度の指標となるものであり、これにより、表面のセルの開口率を調整することができる。クリ−ムタイムが6秒以上であれば、重合反応を進行させ効率よく成形を行うことができ、30秒以下であれば、ポリウレタンフォーム層を重合反応の進行を制御して形状等が良好なポリウレタンフォーム層を得ることができる。クリームタイムはより好ましくは7秒以上17秒以下である。クリ−ムタイムを上記の範囲に調整するには、反応温度、原料温度、撹拌条件、触媒種等を調整して行うことができる。
【0046】
ここでクリームタイムは、具体的には、以下の測定方法により測定した時間とすることができる。室温25±3℃の環境下、内容積500ミリリットルのカップに、ポリイソシアネートを除いたポリウレタン材料の総て、ポリオールと、その他の触媒、整泡剤、発泡剤、架橋剤等の添加剤を量り採り、最後にポリイソシアネートを加える。添加量はポリオールを50gとし、その他の添加物はこれに準じた添加量とする。ポリイソシアネートを添加し、5秒間2000〜3500rpmで攪拌した後、攪拌を停止し、攪拌を開始した時点から、ポリウレタン材料がクリーム状に白濁して泡立ちはじめる時間を測定し、クリームタイムとする。
【0047】
このようなポリウレタン材料を用いて、ポリウレタンフォーム層を成形する一例としては次の通りである。まず、上記ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、必要に応じて、整泡剤、触媒、その他助剤などを均質に混合してポリウレタン材料を調製する。このポリウレタン材料を、芯金を配設した、パイプ状型や割型等のモールド(成形型内の成形キャビティ)に注入し、発泡硬化する方法や、板状若しくは円筒状等の所定の形状に成形した後、芯金に接着する方法等がある。どちらの方法でも、必要に応じて芯金とポリウレタンフォームの間に接着層を設けることができ、この接着層としては、接着剤やホットメルトシート等の公知の材料を用いることができる。ポリウレタンフォーム層の成形方法としては、特に、芯金を配した成形型内の成形キャビティに、ポリウレタン材料を注入してポリウレタンフォーム層を成形する方法が好ましい。
【0048】
ポリウレタン材料の調製の際の温度や時間については特に制限はないが、例えば、混合温度は、10℃以上90℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下の範囲、混合時間は、1秒〜10分間、好ましくは3秒〜1分間程度を挙げることができる。
【0049】
また、発泡方法については特に制限はなく、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法など、いずれの方法をも用いることができる。発泡倍率は、適宜定めることができる。
【0050】
芯金の周囲に接合させたポリウレタンフォーム層を研磨処理により、表面に上記開口率を有するように、開口セルを形成すると共に、所定の寸法にする成形を行うことができる。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明のトナー供給ローラーを具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0052】
使用した原料を以下に示す。
(1)ポリオール1:ポリエーテルポリオール(DVV6340:ダウケミカル(株)製):OH価32、アミン価13.5mgKOH/g。
(2)ポリオール2:ポリエーテルポリオール(アクトコールEP−828:三井化学ポリウレタン(株)製):OH価28、アミン価0mgKOH/g。
(3)ポリイソシアネート:コスモネートTM50:三井化学ポリウレタン(株)製:NCO=39.8%。
(4)整泡剤:シリコーン整泡剤(SRX−274C:東レダウコーニング(株)製)
(5)触媒1:アミン系触媒(TOYOCAT−ET:東ソー(株)製)
(6)触媒2:アミン系触媒(L33:東ソー(株)製)
[実施例1〜4、比較例1〜4]
径5mm、長さ266mmのニッケル化学メッキをした鉄製芯金を配したSUS製円筒状金型内を用意し、50℃に温度調節した。
【0053】
一方、ポリオール成分としてポリオールを100質量部として、表1に示す触媒、整泡剤をそれぞれ計量し、ポリオール、整泡剤、触媒、水を混合・撹拌し、25℃にした。得られた混合物に25℃に温度調節したポリイソシアネートを添加し、5秒間撹拌混合した後金型へ注入し、50℃に温めた電気炉に入れ、20分間発泡硬化させて外径14mmのポリウレタンフォームローラーを調製した。ポリウレタンフォーム層の長さは22cmで、ポリウレタンフォーム層の密度は0.1g/cm3あった。
【0054】
[成形性]
得られたトナー供給ローラーについて、成形性を、以下の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
○:脱型時に裂け等の不具合が認められず、脱型後のローラー形状が保持される。
△:脱型時に裂け等の不具合が若干認められる、又は脱型後のローラー形状に若干変形が認められる。
×:脱型時に裂け等の不具合が明確に認められ、脱型後のローラー形状に明らかに変形が認められる。
【0055】
[画像評価]
得られたトナー供給ローラーをカートリッジに組み込み、温度40℃、湿度95%の環境下で1ヶ月保管した後、レーザービームプリンター(hp color Laser Jet4600:日本ヒューレット・パッカード社製)を用いて耐久画像評価を行った。
【0056】
5000枚プリントを行い、画像の濃度、画質の一様性を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
○:不具合が全く認められない良好な画像。
△:不具合の予兆が若干認められる画像。
×:不具合が明確に認められる画像。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
実施例1から4では良好な画像が得られた。ポリオール100質量部に対し触媒が0.6質量部含まれている比較例1では触媒の揮発による現像ローラー汚染により画像白抜けが発生し、クリームタイムが早く成形も困難であった。セル開口率が50%未満である比較例3ではベタ黒画像で濃度むらが発生した。比較例2及び4では画像評価は良好であったが、成形性が悪く脱型後ローラー形状が変形し保持が困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】トナー供給ローラーのポリウレタンフォーム層の硬度の測定方法を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図を示す。
【符号の説明】
【0061】
1 トナー供給ローラー
2 芯金
3 ポリウレタンフォーム層
4 冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて形成されるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラーにおいて、
ポリオール及びポリイソシアネートが、全体で3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有することを特徴とするトナー供給ローラー。
【請求項2】
芯金外周に、ポリオールとポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料を用いて形成されるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラーにおいて、
ポリオールが、3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下のアミン価を有することを特徴とするトナー供給ローラー。
【請求項3】
ポリオールが、0.1mgKOH/g以下のアミン価を有するポリオールを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のトナー供給ローラー。
【請求項4】
ポリウレタンフォーム層が、開口率が50%以上90%以下の表面を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のトナー供給ローラー。
【請求項5】
ポリウレタン材料が、0.4質量%以下の範囲で触媒を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のトナー供給ローラー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載のトナー供給ローラーの製造方法であって、クリームタイムが6秒以上20秒以下のポリウレタン材料を用いてポリウレタンフォーム層を成形することを特徴とするトナー供給ローラーの製造方法。
【請求項7】
芯金を配した成形型内の成形キャビティに、ポリウレタン材料を注入してポリウレタンフォーム層を成形することを特徴とする請求項6記載のトナー供給ローラーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−309852(P2008−309852A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155000(P2007−155000)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】