説明

トレッドトランスファー、及びそれを用いたトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法

【課題】トレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレを、迅速に評価でき、生産ラインの精度低下を早期にフィードバックしうるとともに、装置コストの上昇を最小限に抑えうるトレッドトランスファー、及びそれを用いたトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法を提供する。
【解決手段】トレッドリングを、シェーピングフォーマに保持された生タイヤ基体の半径方向外側のトレッド貼付位置まで搬送しかつ保持するトレッドトランスファーである。トレッドトランスファーのリング状移動台に、トレッド保持リング11の軸心11jとは直角な基準面S0上にて前記軸心11jを通るX軸上に配される第1のレーザ距離センサ21と、このX軸とは直交する向きのY軸上に配される第2のレーザ距離センサ22とを設ける。前記第1、2のレーザ距離センサ21、22にてシェーピングフォーマの支持軸5までの距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレを、迅速にかつ低コストで評価しうるトレッドトランスファー、及びそれを用いたトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアルタイヤにおける生タイヤ(加硫前のタイヤ)の製造工程では、予め形成した円筒状のトレッドリングに、トロイド状に膨張させた生タイヤ基体を押付けて一体に貼り付けすることが必要である。
【0003】
この貼付方法としては、従来、図8(A)に示すように、トレッドトランスファーcを用い、トレッドリングAを、シェーピングフォーマdに保持された円筒状の生タイヤ基体Bの半径方向外側のトレッド貼付位置Qまで搬送して待機させる。その後、内圧充填により前記生タイヤ基体Bを円筒状からトロイド状に膨張させ、その膨張部分BaをトレッドリングAの半径方向内周面に押し付けて貼り付けることにより、前記生タイヤ基体BとトレッドリングAとが接合した生タイヤを形成している(例えば特許文献1、2参照。)。
【0004】
このとき、トレッドトランスファーcの軸心と、シェーピングフォーマdの軸心とが位置ズレしたり、又軸心同士が傾いたりした場合には、タイヤのユニフォミティーの低下を招き、高品質のタイヤを形成することができなくなる。なお本明細書では、前記軸心同士の位置ズレ及び傾きを総称して芯ズレと呼んでいる。
【0005】
そこで従来においては、図8(B)に示すように、シェーピングフォーマdの支持軸d1上にダイヤルゲージなどの測定器eを固定し、トレッドトランスファーcにおけるトレッド保持リングc1の内周面までの半径方向距離kr、及びトレッド保持リングc1の側面までの距離kjを、前記支持軸d1を手動で廻しながら測定している。そして前記支持軸d1を一周させたときの前記距離krのバラツキにより同芯度を評価するとともに、前記距離kjのバラツキにより軸心の傾きを評価している。
【0006】
しかしこのような、評価方法では、測定に時間(例えば1〜2時間)がかかるため、生産性の観点から頻繁に行うことができないなど、生産ラインの精度低下を早期にフィードバックすることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−074778号公報
【特許文献1】特開2011−037135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、トレッドトランスファーのリング状移動台に、トレッド保持リングの軸心とは直角な基準面上においてシェーピングフォーマの支持軸までの距離を測定する第1、第2のレーザ距離センサを、各レーザ光が直交する向きで取り付けることを基本として、トレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレを、迅速に評価でき、生産ラインの精度低下を早期にフィードバックしうるとともに、装置コストの上昇を最小限に抑えうるトレッドトランスファー、及びそれを用いたトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、トレッド成形ドラムから受け取ったトレッドリングを、シェーピングフォーマに保持された円筒状の生タイヤ基体の半径方向外側のトレッド貼付位置まで搬送しかつこのトレッド貼付位置でトレッドリングを保持するトレッドトランスファーであって、
前記トレッド成形ドラムとシェーピングフォーマとの間を軸心方向に往復移動しうるリング状移動台と、このリング状移動台に取り付きかつ内周面が縮径することにより前記トレッドリングの外周面に当接して該トレッドリングを同心に保持しうるトレッド保持リングとを具えるとともに、
前記リング状移動台に、
前記トレッド保持リングの軸心とは直角な基準面上にて前記軸心を通るX軸上に配されるとともに、前記シェーピングフォーマの支持軸までのX軸上の距離LXを測定する第1のレーザ距離センサと、
前記基準面上にて前記軸心を通りかつ前記X軸とは直交する向きのY軸上に配されるとともに、前記シェーピングフォーマの支持軸までのY軸上の距離LYを測定する第2のレーザ距離センサとを設けたことを特徴としている。
【0010】
又請求項2の発明は、請求項1に記載のトレッドトランスファーを用いて、トレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレを評価する評価方法であって、
前記第1、2のレーザ距離センサにより、この第1、2のレーザ距離センサから前記支持軸までの距離LX、LYを測定してセンサ測定値Tx、Tyを求める測定ステップ、
及びこのセンサ測定値Tx、Tyに基づき、前記トレッド保持リングとシェーピングフォーマとの同芯度を評価する同芯度評価ステップを含むことを特徴としている。
【0011】
又請求項3の発明では、実測により、前記X軸がトレッド保持リングの内周面と交わる2つの交点Px1、Px2のうちの前記第1のレーザ距離センサが配される側の交点Px1から前記支持軸までのX軸上での距離Lx1の実測値Dx1、及び他方の側の交点Px2から前記支持軸までのX軸上での距離Lx2の実測値Dx2、並びに前記Y軸がトレッド保持リングの内周面と交わる2つの交点Py1、Py2のうちの前記第2のレーザ距離センサが配される側の交点Py1から前記支持軸までのY軸上での距離Ly1の実測値Dy1、及び他方の交点Py2から前記支持軸までのY軸上での距離Ly2の実測値Dy2を、事前に求める第1の事前ステップと、
その時の第1、2のレーザ距離センサから前記支持軸までの距離LX、LYを、第1、2のレーザ距離センサを用いて測定してセンサ測定値Tx0、Ty0をうる第2の事前ステップとにより、
下記式(1)で示す第1のレーザ距離センサの補正値Exと、下記式(2)で示す第2のレーザ距離センサの補正値Eyとを予め求めるとともに、
Ex=Tx0+(Dx2−Dx1)/2 −−−(1)
Ey=Ty0+(Dy2−Dy1)/2 −−−(2)
前記同芯度評価ステップは、前記測定ステップで得たセンサ測定値Tx、Tyを、前記補正値Ex、補正値Eyにて補正した補正データKx(=Ex−Tx)、補正データKy(=Ey−Ty)に基づいて、同芯度を評価することを特徴としている。
【0012】
又請求項4の発明では、前記トレッドトランスファーをシェーピングフォーマに対して軸心方向に所定距離LZを移動させ、その時の前記第1、2のレーザ距離センサから前記支持軸までのセンサ測定値Txの変化量ΔTx、及びセンサ測定値Tyの変化量ΔTyを測定して求める測定ステップと、
この変化量ΔTx、ΔTyに基づき、前記トレッド保持リングとシェーピングフォーマとの軸心の傾きを評価する傾き評価ステップとをさらに含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は叙上の如く、トレッドトランスファーのリング状移動台に、第1、第2の2つのレーザ距離センサを取り付けている。第1のレーザ距離センサは、トレッド保持リングの軸心とは直角な基準面上にて前記軸心を通るX軸上に配される。又第2のレーザ距離センサは、前記基準面上にて前記軸心を通りかつ前記X軸とは直交する向きのY軸上に配される。そして、前記第1、2のレーザ距離センサを用いて、それぞれシェーピングフォーマの支持軸までの距離を測定することで、後述する「発明を実施するための形態」で記載するように、トレッド保持リングの軸心とシェーピングフォーマの軸心との位置ズレ、及び傾きを評価することができる。
【0014】
このレーザ距離センサによる距離の測定は、手間や労力を要することなく自動でかつ迅速に行いうるため、例えば生産ラインの稼働開始毎など頻繁に芯ズレのチェックを行うことができ、生産ラインの精度低下を早期にフィードバックさせることが可能となる。又2つのレーザ距離センサのみで行いうるため、装置コストの上昇を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のトレッドトランスファーを用いた生タイヤ生産ラインの一部を概念的に示す側面図である。
【図2】トレッドトランスファーを示す正面図である。
【図3】(A)はトレッドトランスファーの主要部を拡大して示す断面図、(B)は第1、2のレーザ距離センサの配置を示す正面図である。
【図4】(A)はトレッドトランスファーの拡縮径手段の他の例を示す部分正面図、(B)はその側面図である。
【図5】芯ズレ評価方法における同芯度評価ステップを説明する概念図である。
【図6】(A)、(B)は、距離Lx1、Lx2、Ly1、Ly2の実測方法を説明する概念図である。
【図7】芯ズレ評価方法における傾き評価ステップを説明する概念図である。
【図8】(A)はトレッドリングの貼り付け方法を示す断面図、(B)はトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレの従来の測定方法を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、生タイヤ生産ラインの一部を示し、この生タイヤ形成ラインは、トレッドリングAを形成するトレッド成形ドラム2、生タイヤ基体Bを円筒状からトロイド状に膨張させるシェーピングフォーマ3、及びこのトレッド成形ドラム2とシェーピングフォーマ3との間を往復移動しうる前記トレッドトランスファー1を具える。
【0017】
そして、生タイヤ生産ラインでは、前記トレッドトランスファー1を用い、前記トレッド成形ドラム2から受け取ったトレッドリングAを、前記シェーピングフォーマ3に保持された円筒状の生タイヤ基体Bの半径方向外側のトレッド貼付位置Qまで搬送するとともに、このトレッド貼付位置QにてトレッドリングAを保持して待機する。しかる後、シェーピングフォーマ3によって前記生タイヤ基体Bをトロイド状に膨張させ、その膨張部分を前記トレッドリングAの内周面に押し付けて貼り付ける。これにより、前記生タイヤ基体BとトレッドリングAとが一体に接合された生タイヤが形成される。
【0018】
ここで、前記トレッド成形ドラム2は、拡縮径可能かつ回転自在な円筒状のドラム2Aを有する周知構造をなし、このドラム2A上で、ベルトプライ、トレッドゴムを含むトレッド構成部材を順次積層することにより、円環状のトレッドリングAが形成される。
【0019】
又前記シェーピングフォーマ3は、本例では、所謂セカンドステージ形成方法で使用される周知構造のセカンドフォーマであって、円筒状のバンドドラム上で別途形成された生タイヤ基体Bが移載される。なお生タイヤ基体Bは、例えばインナーライナゴム、カーカスプライ、ビードコア、ビードエーペックスゴム、サイドウォールゴムなどを含むタイヤ構成部材を順次積層することにより形成される。
【0020】
本例のシェーピングフォーマ3は、モータにより回転駆動される支持軸5と、この支持軸5に一体回転可能に支持される軸心方向一方側、他方側のドラム部6、6とを具える。前記支持軸5は一端側が支持され、自由端となる他端側からトレッドトランスファー1が出入りする。又前記ドラム部6、6は、互いに近離可能に軸心方向に相対移動でき、かつ各ドラム部6には、拡径により前記生タイヤ基体Bのビード部をロックする拡縮径自在なビードロックリング(図示しない)が配される。なお前記シェーピングフォーマ3上で、前記タイヤ構成部材を順次積層して生タイヤ基体Bを形成する所謂シングルステージ形成方法を採用することもできる。
【0021】
次に、前記トレッドトランスファー1は、図1〜3に示すように、前記トレッド成形ドラム2とシェーピングフォーマ3との間を往復移動しうるリング状移動台10と、このリング状移動台10に取り付きかつ内周面11Sが縮径することにより前記トレッドリングAの外周面に当接して該トレッドリングAを同心に保持しうるトレッド保持リング11とを具える。
【0022】
具体的には、前記リング状移動台10は、本例では、ガイドレール12に沿って走行移動しうる走行台10Aと、この走行台10A上に立設する環状フレーム10Bとから構成される。この環状フレーム10Bは、前記トレッド成形ドラム2及びシェーピングフォーマ3と同芯に配される。
【0023】
又前記トレッド保持リング11は、周方向に分割された複数のセグメント15からなり、各セグメント15は、前記環状フレーム10Bに設けるガイド16によって半径方向内外に移動可能に案内される。従って、トレッド保持リング11は、各セグメント15が半径方向内外に移動することにより、各セグメント15の半径方向内面15Sから構成される前記内周面11Sが拡縮径される。
【0024】
又各セグメント15は、拡縮径手段17によって駆動される。この拡縮径手段17は、本例では、前記環状フレーム10Bの内周面に、軸受け(図示しない。)を介して同心に枢支される回動リング18を具える。この回動リング18には、その外周面から半径方向外側にのびるレバー部18Aが突出するとともに、該レバー部18Aの先端は、前記環状フレーム10Bに取り付くシリンダ19のロッド19Aと連結される。そして前記回動リング18は、前記シリンダ19の伸縮により、該環状フレーム10Bとは同心に回動しうる。
【0025】
又前記拡縮径手段17は、前記回動リング18から半径方向内側に突出する突起部18B先端に設ける枢支点Q1と、各セグメント15から半径方向外側に突出する突起部15A先端に設ける枢支点Q2との間を継ぐリンク20を具える。従って、各セグメント15は、前記回動リング18の回動に伴い、前記リンク20を介して一斉に半径方向内外に移動、即ち拡縮径できる。
【0026】
なお前記拡縮径手段17として、リンク機構に代えてギヤーラック機構を採用することもできる。具体的には、図4(A)、(B)に示すように、前記回動リング18として、内周面に歯溝部30を螺刻した内歯歯車が使用される。又各前記セグメント15には、半径方向外側にのびるラック31が突設されるとともに、このラック30は図示しないガイドによって半径方向内外に案内される。又環状フレーム10Bの側板には、前記回動リング18の歯溝部30と、ラック31の歯溝部31Aとに噛み合う歯車32が枢支される。従って、前記シリンダ19による回動リング18の回動に伴い、歯車32、ラック31を介して各セグメントを一斉に半径方向内外に移動できる。このようなギヤーラック機構のものは、前期リンク機構のものに比して構造簡易であり、かつ半径方向内外のストロークを増大しうるなどの点で好適に採用しうる。
【0027】
又図3に示すように、前記リング状移動台10には、第1、第2の2つのレーザ距離センサ21、22が取り付く。本例では、前記環状フレーム10Bの一側面に、第1、第2のレーザ距離センサ21、22が取り付く場合が例示される。第1のレーザ距離センサ21は、前記トレッド保持リング11の軸心11jとは直角な基準面S0上にて前記軸心11jを通るX軸上に配される。又第2のレーザ距離センサ22は、前記基準面S0上にて前記軸心11jを通りかつ前記X軸とは直交する向きのY軸上に配される。なお第1、第2のレーザ距離センサ21、22は、同構成であり、反射型の種々なタイプのものが採用しうる。
【0028】
そしてこの第1、第2のレーザ距離センサ21、22を用いてトレッドトランスファー1とシェーピングフォーマ3との芯ズレを評価する。
【0029】
この芯ズレ評価方法は、前記第1、2のレーザ距離センサ21、22により、この第1、2のレーザ距離センサ21、22から前記支持軸5までのX軸上及びY軸上の距離LX、LYをそれぞれ測定してセンサ測定値Tx、Tyを求める測定ステップと、このセンサ測定値Tx、Tyに基づきトレッド保持リング11とシェーピングフォーマ3との同芯度を評価する同芯度評価ステップとを含んで構成される。
【0030】
具体的には、前記同芯度評価に先駆け、下記の第1、第2の事前ステップにより、第1、第2のレーザ距離センサ21、22の補正値Ex、Eyを予め求める。この第1、第2の事前ステップは、同芯度評価の度に行う必要はなく、例えばシェーピングフォーマを他のタイヤのシェーピングフォーマと交換するときなどのライン編成時に一度行うだけでよい。
【0031】
前記第1の事前ステップでは、図5に概念的に示すように、前記X軸がトレッド保持リング11の内周面11Sと交わる2つの交点Px1、Px2のうちの前記第1のレーザ距離センサ21が配される側の交点Px1から前記支持軸5までのX軸上での距離Lx1と、他方の側の交点Px2から前記支持軸5までのX軸上での距離Lx2とを実測し、前記距離Lx1の実測値Dx1と、前記距離Lx2の実測値Dx2とを求める。
【0032】
同様に、前記Y軸がトレッド保持リング11の内周面11Sと交わる2つの交点Py1、Py2のうちの前記第2のレーザ距離センサ22が配される側の交点Py1から前記支持軸5までのY軸上での距離Ly1と、他方の交点Py2から前記支持軸5までのY軸上での距離Ly2とを実測し、前記距離Ly1の実測値Dy1と、前記距離Ly2の実測値Dy2とを求める。
【0033】
なお実測の方法としては、例えば図6(A)に示すように、前記支持軸5上に、ダイヤルゲージなどの測定器eを取り付け、支持軸5をゆっくりと回転しながら、各点Px1、Px2、Py1、Py2までの距離Dx1’、Dx2’、Dy1’、Dy2’を実測する。厳密には、図6(B)に代表して示すように、距離Dx1、Dx2、Dy1、Dy2と距離Dx1’、Dx2’、Dy1’、Dy2’とは相違するが、角度αが極めて0°に近いため、距離Dx1、Dx2、Dy1、Dy2とすることができる。
【0034】
次に、第2の事前ステップでは、その時の第1、2のレーザ距離センサ21、22から前記支持軸5までの距離LX、LYを、第1、2のレーザ距離センサ21、22を用いて測定し、センサ測定値Tx0、Ty0をうる。なお前記「その時」とは、トレッドトランスファー1とシェーピングフォーマ3との位置関係や状態が、前記第1の事前ステップにおいて距離Lx1、Lx2、Ly1、Ly2を実測したときと同一の状態であることを意味し、第1の事前ステップと第2の事前ステップとの間で、トレッドトランスファー1が軸心方向に移動したりしていないことを意味する。
【0035】
そして前記実測値Dx1、Dx2、Dy1、Dy2と、センサ測定値Tx0、Ty0とから、下記式(1)で示す第1のレーザ距離センサ21の補正値Exと、下記式(2)で示す第2のレーザ距離センサ22の補正値Eyとを求める。
Ex=Tx0+(Dx2−Dx1)/2 −−−(1)
Ey=Ty0+(Dy2−Dy1)/2 −−−(2)
【0036】
そして、前記同芯度評価ステップでは、以後の位置ズレ評価の際の測定ステップで得たセンサ測定値Tx、Tyを、前記補正値Ex、補正値Eyにて補正し、補正データKx(=Ex−Tx)、補正データKy(=Ey−Ty)をそれぞれ求めるとともに、この補正データKx、Kyに基づいて、同芯度を評価する。
【0037】
ここで、前記式(1)中の値(Dx2−Dx1)/2は、トレッドトランスファー1の軸心11jとシェーピングフォーマ3の軸心5jとの間の、事前ステップ時におけるX軸方向の実際の位置ズレ量δXに相当する。又式(2)中の値(Dy2−Dy1)/2は、事前ステップ時におけるY軸方向の実際の位置ズレ量δYに相当する。又この実際の位置ズレ量δXは、第1のレーザ距離センサ21ではセンサ測定値Tx0として表示され、又実際の位置ズレ量δYは、第2のレーザ距離センサ22ではセンサ測定値Ty0として表示されている。
【0038】
従って、前記(1)、(2)式の補正値Ex、Eyから、以後の位置ズレ評価時に測定するレーザ距離センサ21、22の測定値(センサ測定値Tx、Ty)を減じることにより、前記位置ズレ評価時における位置ズレ量に換算することができる。即ち、前記補正データKx、Kyは、位置ズレ評価時に測定するセンサ測定値Tx、Tyを位置ズレ量に換算した換算値に相当する。従って、この換算値により、位置ズレ量(同芯度)を直接評価することができる。
【0039】
又前記芯ズレ評価方法では、トレッドトランスファー1の軸心11jとシェーピングフォーマ3の軸心5jとの傾きを評価する傾き評価ステップを含ませることが好ましい。
【0040】
この場合、図7に概念的に示すように、まず、前記トレッドトランスファー1をシェーピングフォーマ3に対して軸心方向に所定距離LZを移動させ、その時の前記第1、2のレーザ距離センサ21、22から前記支持軸5までのセンサ測定値Txの変化量ΔTx、及びセンサ測定値Tyの変化量ΔTyを測定して求める測定ステップを行う。
【0041】
そして、前記傾き評価ステップでは、前記変化量ΔTx、ΔTyに基づき、前記軸心11j、5j間の傾きを評価する。なおX軸方向の傾きθxは、tan−1(ΔTx/Z)にて換算することができ、又Y軸方向の傾きθyは、tan−1(ΔTy/Z)にて換算することができる。
【0042】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0043】
1 トレッドトランスファー
2 トレッド成形ドラム
3 シェーピングフォーマ
10 リング状移動台
11 トレッド保持リング
11S 内周面
11j 軸心
21 第1のレーザ距離センサ
22 第2のレーザ距離センサ
A トレッドリング
B 生タイヤ基体
Q トレッド貼付位置
S0 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド成形ドラムから受け取ったトレッドリングを、シェーピングフォーマに保持された円筒状の生タイヤ基体の半径方向外側のトレッド貼付位置まで搬送しかつこのトレッド貼付位置でトレッドリングを保持するトレッドトランスファーであって、
前記トレッド成形ドラムとシェーピングフォーマとの間を軸心方向に往復移動しうるリング状移動台と、このリング状移動台に取り付きかつ内周面が縮径することにより前記トレッドリングの外周面に当接して該トレッドリングを同心に保持しうるトレッド保持リングとを具えるとともに、
前記リング状移動台に、
前記トレッド保持リングの軸心とは直角な基準面上にて前記軸心を通るX軸上に配されるとともに、前記シェーピングフォーマの支持軸までのX軸上の距離LXを測定する第1のレーザ距離センサと、
前記基準面上にて前記軸心を通りかつ前記X軸とは直交する向きのY軸上に配されるとともに、前記シェーピングフォーマの支持軸までのY軸上の距離LYを測定する第2のレーザ距離センサとを設けたことを特徴とするトレッドトランスファー。
【請求項2】
請求項1に記載のトレッドトランスファーを用いて、トレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレを評価する評価方法であって、
前記第1、2のレーザ距離センサにより、この第1、2のレーザ距離センサから前記支持軸までの距離LX、LYを測定してセンサ測定値Tx、Tyを求める測定ステップ、
及びこのセンサ測定値Tx、Tyに基づき、前記トレッド保持リングとシェーピングフォーマとの同芯度を評価する同芯度評価ステップを含むことを特徴とするトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法。
【請求項3】
実測により、前記X軸がトレッド保持リングの内周面と交わる2つの交点Px1、Px2のうちの前記第1のレーザ距離センサが配される側の交点Px1から前記支持軸までのX軸上での距離Lx1の実測値Dx1、及び他方の側の交点Px2から前記支持軸までのX軸上での距離Lx2の実測値Dx2、並びに前記Y軸がトレッド保持リングの内周面と交わる2つの交点Py1、Py2のうちの前記第2のレーザ距離センサが配される側の交点Py1から前記支持軸までのY軸上での距離Ly1の実測値Dy1、及び他方の交点Py2から前記支持軸までのY軸上での距離Ly2の実測値Dy2を、事前に求める第1の事前ステップと、
その時の第1、2のレーザ距離センサから前記支持軸までの距離LX、LYを、第1、2のレーザ距離センサを用いて測定してセンサ測定値Tx0、Ty0をうる第2の事前ステップとにより、
下記式(1)で示す第1のレーザ距離センサの補正値Exと、下記式(2)で示す第2のレーザ距離センサの補正値Eyとを予め求めるとともに、
Ex=Tx0+(Dx2−Dx1)/2 −−−(1)
Ey=Ty0+(Dy2−Dy1)/2 −−−(2)
前記同芯度評価ステップは、前記測定ステップで得たセンサ測定値Tx、Tyを、前記補正値Ex、補正値Eyにて補正した補正値データKx(=Ex−Tx)、補正データKy(=Ey−Ty)に基づいて、同芯度を評価することを特徴とする請求項2記載のトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法。
【請求項4】
前記トレッドトランスファーをシェーピングフォーマに対して軸心方向に所定距離LZを移動させ、その時の前記第1、2のレーザ距離センサから前記支持軸までのセンサ測定値Txの変化量ΔTx、及びセンサ測定値Tyの変化量ΔTyを測定して求める測定ステップと、
この変化量ΔTx、ΔTyに基づき、前記トレッド保持リングとシェーピングフォーマとの軸心の傾きを評価する傾き評価ステップとをさらに含むことを特徴とする請求項2又は3記載のトレッドトランスファーとシェーピングフォーマとの芯ズレ評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−236392(P2012−236392A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108560(P2011−108560)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】